説明

作業車両のコントロールボックス

【課題】 コントロールボックス内におけるヒートバランスを、良好な状態に保つことができる作業車両のコントロールボックスを提供する。
【解決手段】 運転席2の左側部に配されたコントロールボックス6は、内部に収納する第一制御機器22a、第二制御機器22bを支持固定する取付板6aと、内部に収納した第一制御機器22a、第二制御機器22b及び取付板6aを被装するコントロールカバー6bとから構成されている。車体フレームに固定された取付板6aの側縁部には、複数個の長孔8が上下方向に並んで形成され、各長孔8は、座部2aの側面部やユーティリティーボックス5の側面部によって覆われている。コントロールカバー6bの傾斜面7aに形成された開口部9は、車体カバー10の端面部10aによって覆われている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、作業車両のコントロールボックスに関するものであり、運転席の側部に設けられる作業車両のコントロールボックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ミニショベル等と称されている小型油圧ショベル等においては、小型油圧ショベル本体をできる限りコンパクトに構成するため、車体カバー内に設けられるエンジンを運転席下方に配置した構成にするとともに、運転席の側方側には、コントロールボックスを配置した構成が採用されている。
【0003】
この種の運転席の側方側にコントロールボックスを配置した作業車両としては、例えば、特許文献1に記載された小型建設機械などが提案されている。特許文献1に記載された小型建設機械を本願発明における従来技術として、その全体構成を示す側面図を図5に示している。
【0004】
図5に示すように、上部旋回体40上には運転席41が設けられており、運転席41の座席下方である本体カバー42内には、図示しないエンジンユニットや油圧機器、電装品等が収納されている。運転席41の左右両側には、操作レバー44を備えたコントロールボックス43が配されている。本体カバー42の側壁には、冷却風を取り入れるためのスリット状の冷却風取入口42aが複数形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−107394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された小型建設機械では、本体カバー42の側壁には、冷却風を取り入れるためのスリット状の冷却風取入口42aが複数形成されているが、コントロールボックス43内でのヒートバランスに関しては、特に考慮が払われていない。
【0007】
コントロールボックス43内に配設した制御機器の点数が少ない状態では、コントロールボックス43内における発熱量も少なくてすみ、コントロールボックス43内におけるヒートバランスに関して特に注意を払わなくても、問題とならない場合がある。しかし、最近の小型建設機械も含めた作業車両では、作業車両の操作性の向上や安全性を高めるため、更には、盗難防止機能等を持たせておくなどの理由から、各種の制御が行えるように構成されてきている。
【0008】
そして、各種の制御が行えるように複数の制御機器を用いることになっても、コントロールボックスが大型化することを防止する構成、あるいは、コントロールボックスが複数個所に分散して配設されるのを防止する構成が求められている。そのため、コントロールボックス内における制御機器の配設構成として、例えば、制御機器を複数層に重ねて配設する構成が採用されつつある。
【0009】
特に、小型油圧ショベル等においては、小型油圧ショベル本体をできる限りコンパクトに構成しておくため、運転席の側方側には、コントロールボックスを配置した構成が採用されている。このため、コントロールボックスが運転席の側方側に配設されている構成においては、例えば、制御機器を複数層に重ねて配設することによって、コントロールボックスが大型化することを防止することができる。
【0010】
しかし、コントロールボックス内に制御機器を複数層に重ねて配設すると、コントロールボックス内におけるヒートバランスを、良好な状態に保てなくなってしまう。そこで、本願発明では、コントロールボックス内に制御機器を複数層に重ねて配設したとしても、コントロールボックス内におけるヒートバランスを、良好な状態に保つことができる作業車両のコントロールボックスを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明の課題は、請求項1に記載した作業車両のコントロールボックスにより、達成することができる。
即ち、本願発明は、運転席の側部に配されている作業車両のコントロールボックスであって、前記コントロールボックスは、前記コントロールボックスの裏面側に設けられ、前記作業車両の車体フレームに固定される取付板と、前記コントロールボックスの表面側に設けられ、前記取付板に取付けられる制御機器と前記取付板とを被装し、前記取付板に対して着脱自在に取付けられるコントロールカバーと、を有し、
前記作業車両の前進方向側に位置する、前記取付板の側縁部近傍には、前記側縁部に沿って上下方向に並んで配された、複数個の廃熱用の長孔が形成され、前記各長孔は、運転席支持台上に配されるユーティリティーボックスの側面部と、ユーティリティーボックスの上面に配されるオペレータが着座する座部の側面部とによって、覆われてなり、
前記コントロールカバーは、前記作業車両の後進方向側に位置する端縁側から前記作業車両の前進方向側に向かって上り勾配の傾斜面を有する箱型形状に構成され、前記傾斜面における下端側の端面部には、空気吸排用の開口部が形成され、前記開口部は、前記作業車両の前進方向側における車体カバーの端面部によって、覆われてなることを最も主要な特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本願発明のコントロールカバーでは、車体カバーの端面部によって覆われている空気吸排用の開口部と、取付板の側縁部近傍に複数個の廃熱用の長孔とが形成された構成となっている。
そして、空気吸排用の開口部は、箱型形状としたコントロールカバーにおける傾斜面の下端側における端面部に形成されている。
【0013】
また、複数個形成した廃熱用の各長孔は、作業車両の前進方向側に位置する取付板の側縁部近傍に形成されており、しかも、前記各長孔は、前記側縁部に沿って上下方向に並んで配された構成となっている。その上、前記各長孔は、運転席支持台上に配されるユーティリティーボックスの側面部と、ユーティリティーボックスの上面に配されるオペレータが着座する座部の側面部とによって、前方側が完全に覆われている配置構成になっている。
【0014】
このようにコントロールボックスが構成されているので、運転席の周囲がドアや壁等によって覆われていない場合であっても、雨水や作業車両を洗車するときのジェット水流がコントロールボックスにかかったとしても、各長孔や空気吸排用の開口部からコントロールボックス内に流入するのを防止しておくことができる。
【0015】
また、空気吸排用の開口部から取り入れられた外気は、コントロールボックスにおける箱型形状に構成した傾斜面に沿って流れることができる。そして、傾斜面に沿って流れた外気は、コントロールボックス内の制御機器から発熱した暖気を伴って、各長孔からコントロールボックスの外部に排出することができる。
【0016】
このようにして、コントロールボックスの両端部側に、それぞれ空気吸排用の開口部と廃熱用の各長孔とを構成しておくことができるので、コントロールボックス内に取り入れられた外気によって、コントロールボックスの箱型形状に構成した傾斜面を利用して、コントロールボックス内での空気の流れを構成することができる。そして、コントロールボックス内で発生した熱を、この空気の流れに乗せて取り去ることができる。
【0017】
このように本願発明では、コントロールボックス内に、例えば、制御機器を複数層に重ねて配設したとしても、コントロールボックス内におけるヒートバランスを良好な状態に維持しておくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】運転席の側面側から見た運転席周辺の斜視図である。(実施例)
【図2】運転席の正面側から見た運転席周辺の正面図である。(実施例)
【図3】運転席の前方側から見たコントロールボックスの斜視図である。(実施例)
【図4】運転席の斜め前方側から見たコントロールボックスの斜視図である。(実施例)
【図5】小型建設機械の全体構成を示す側面図である。(従来例)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明に係わる作業車両のコントロールボックスの構成としては、以下で説明する形状、構成以外にも本願発明の課題を解決することができる形状、構成であれば、それらの形状、構成を採用することができるものである。このため、本願発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0020】
本発明の実施の形態に係るコントロールボックスが、小型作業車両としての小型油圧ショベルの運転席に設けられている場合を例に挙げて、図1には、運転席の要部構成を斜視図で示している。尚、コントロールボックス6内での第一制御機器22a及び第二制御機器22bの配置構成を示すため、コントロールボックス6を構成するコントロールカバー6bを透明の状態として、その輪郭だけを示している。実際のコントロールカバー6bとしては、着色された合成樹脂材や金属板等によって構成しておくことができる。
【0021】
図1に示すように、運転席2の右側部には、操作レバー15を備えた操作ボックス14が配置されており、運転席2の左側部には、コントロールボックス6と肘掛用のパイプ12とが配置されている。運転席2は、オペレータが着座する座部2aと、背当部2bとを有した構成となっており、座部2aは、運転席2の下面に配したユーティリティーボックス5の上面に支持レール23を介して支持されている。
【0022】
ユーティリティーボックス5は、車体フレームに構成した運転席支持台4上に載置固定されており、運転席の前面側に形成した扉の取手5aを引くことによって、ユーティリティーボックス5の前面側を開閉させる扉の操作を行うことができる。ユーティリティーボックス5の構成としては、引き出し式の構成としておくこともできる。
【0023】
コントロールボックス6は、内部に収納する第一制御機器22a、第二制御機器22bを支持固定する取付板6aと、内部に収納した第一制御機器22a、第二制御機器22b及び取付板6aを被装するコントロールカバー6bとから構成されている。取付板6aは、車体フレームに固定されており、コントロールカバー6bは、ボルト等を介して取付板6aに対して着脱自在に取り付けることができる。
【0024】
コントロールカバー6bは、上面7b、左側面7c、前面7d、右側面である傾斜面7a及び底面7eとからなる箱状体に構成されており、傾斜面7aの下端側には、外気の吸排を行う開口部9(図4参照)が形成されている。第一制御機器22a及び第二制御機器22bは、コントロールカバー6bの底面7eに接続した連通部28内を通るハーネス16を介して、コントロールボックス6の外部に配した検出器や制御装置、表示装置等と接続している。
【0025】
また、取付板6aの運転席の前面側における側縁部近傍には、後述する複数個の長孔8が、前記側縁部に沿って上下方向に形成されている。複数個の長孔8は、コントロールボックス6内で発生した熱を排気するための孔として構成されている。ただし、各長孔8としては、複数個の長孔8を通って外気が、コントロールボックス6内に流入するのを妨げるものではない。コントロールボックス6を正面から見て右側面には、車体カバー10が配されている。
【0026】
略U字状に屈曲形成された肘掛用のパイプ12の一端部は、運転席2の図示せぬ屋根を支える支柱19に固定されており、他端部には、フランジ部12aが設けられている。フランジ部12aは、ボルト26を介して、車体フレームに取り付けたパイプ固定部24に固定することができる。
【0027】
図2に示すように、取付板6aの側縁部近傍に形成した複数個の各長孔8の開口部前面に対峙して、それぞれ運転席2の座部2aにおける側面部やユーティリティーボックス5の側面部が配されている。そして、運転席2側から各長孔8を通って、雨水等がコントロールボックス6内に進入するのを、座部2aの側面部やユーティリティーボックス5の側面部によって防いでいる。
【0028】
また、図2に示すように、第一制御機器22aはボルト18を介して取付板6aに取り付けられており、第二制御機器22bは、取付板6aに取り付けられた支持片27を介して、取付板6aに取り付けられている。そして、支持片27の高さ寸法によって、第一制御機器22aと第二制御機器22bとの間に、隙間が形成されている。尚、第二制御機器22b及び支持片27の取り付け用には、ボルト18が用いられている。
【0029】
次に、コントロールボックス6の要部構成を示している図3、図4を用いて、コントロールボックス6の構成について、更に説明する。
図3では、コントロールカバー6b内の構成を示すため、コントロールカバー6bの輪郭だけを図示しており、図4では、車体カバー10で覆われる開口部9を示すため、車体カバー10の輪郭だけを図示している。
【0030】
図3に示すように、車体フレーム3に取り付けられたパイプ固定部24をコントロールカバー6bで塞がないようにするため、コントロールカバー6bには、パイプ固定部24を外すように凹部20が形成されている。ただし、凹部20を介して雨水や作業車両1(図1参照)の洗浄水等が、コントロールボックス6内に進入するのを防止するため、凹部20と車体フレーム3との間にはシール材等が設けられている。
【0031】
また、車体フレーム3に取り付けた取付板6aの上端縁から雨水等がコントロールボックス6内に進入するのを防止するため、コントロールカバー6bの上面7bにおける取付板6aの上端縁と当接する端縁部は、下向きに延設した逆L字状の突起縁部として構成されている。この逆L字状に形成した突起縁部を、取付板6aの上端縁に引っ掛けた状態でコントロールカバー6bを取付板6aに固定することができる。
【0032】
このように構成することにより、取付板6aの上端縁を逆L字状に形成した突起縁部によって塞いでおくことができ、取付板6aの上端縁から雨水等がコントロールボックス6内に進入するのを、防止しておくことができる。
【0033】
図4に示すように、コントロールカバー6bの傾斜面7aにおける下端側には、開口部9が大きく形成されている。そして、この開口部9を通して空気の吸排気を行わせることができる。この開口部9は、車体カバー10の端面部10aによって覆われている構成となっており、車体カバー10の端面部10aの形状としては、下方に向かって下り勾配の傾斜面として構成されている。しかも、車体カバー10の端面部10aに対向するコントロールカバー6bの傾斜面7aにおける部位も、車体カバー10の端面部10aにおける形状と補完する形で逆勾配の傾斜面として構成されている。
【0034】
このため、車体カバー10の端面部10aに沿って雨水等が流れ込んだとしても、コントロールカバー6bに形成した開口部9は、車体カバー10の端面部10aの面よりも上方に位置した配置関係となっているので、車体カバー10の端面部10aを流れる雨水等がコントロールボックス6内に進入するのを、防止しておくことができる。
【0035】
開口部9を通ってコントロールボックス6内に流入した外気は、コントロールカバー6bの傾斜面7aにおける内面を伝わりながら、コントロールカバー6bの内面に沿って流れていくことができる。このとき、コントロールカバー6b内に配設されている第一制御機器22a、第二制御機器22bからの発熱によって暖められた空気は、コントロールカバー6bの内面に沿って流れる空気によって、一緒に流れ去っていくことになる。
【0036】
コントロールボックス6内には、開口部9の他に複数個の長孔8が形成されているので、コントロールカバー6bの内面に沿って流れる空気は、最終的には長孔8を通って、大気中に排出されることになる。尚、開口部9を通ってコントロールボックス6内に流入した外気は、コントロールカバー6bの内面に沿って流れる旨の説明を行っているが、コントロールボックス6内に流入した外気の一部は、第一制御機器22aと第二制御機器22bとの間を通ったりもする。また、外気の流れ方によっては、長孔8を通ってコントロールボックス6内に流入する場合や、コントロールボックス6内の空気が、開口部9を通って大気中に排出される場合もある。
【0037】
このように、コントロールボックス6の両サイドにそれぞれ複数個の長孔8と開口部9とを形成しており、しかも、コントロールカバー6bに傾斜面7aを形成しているので、コントロールボックス6内において空気の流れを作ることができる。従って、コントロールボックス6内にある空気が滞留してしまうことがなくなり、第一制御機器22a及び第二制御機器22bによって暖められた空気を、効率的に排出することができる。そして、コントロールボックス6内におけるヒートバランスを良好な状態に維持しておくことができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本願発明は、ボックス内でのヒートバランスを良好な状態に保つことが求められているものに対して好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0039】
2・・・運転席、2a・・・座部、5・・・ユーティリティーボックス、6・・・コントロールボックス、6a・・・取付板、6b・・・コントロールカバー、7a・・・傾斜面、8・・・長孔、9・・・開口部、10・・・車体カバー、10a・・・端面部、22a・・・第一制御機器、22b・・・第二制御機器、40・・・上部旋回体、41・・・運転席、42・・・本体カバー、43・・・コントロールボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転席の側部に配されている作業車両のコントロールボックスであって、
前記コントロールボックスは、前記コントロールボックスの裏面側に設けられ、前記作業車両の車体フレームに固定される取付板と、前記コントロールボックスの表面側に設けられ、前記取付板に取付けられる制御機器と前記取付板とを被装し、前記取付板に対して着脱自在に取付けられるコントロールカバーと、を有し、
前記作業車両の前進方向側に位置する、前記取付板の側縁部近傍には、前記側縁部に沿って上下方向に並んで配された、複数個の廃熱用の長孔が形成され、
前記各長孔は、前記車体フレームに設けた運転席支持台上に配されるユーティリティーボックスの側面部と、前記ユーティリティーボックスの上面に配されるオペレータが着座する座部の側面部とによって、覆われてなり、
前記コントロールカバーは、前記作業車両の後進方向側に位置する端縁側から前記作業車両の前進方向側に向かって上り勾配の傾斜面を有する箱型形状に構成され、
前記傾斜面における下端側の端面部には、空気吸排用の開口部が形成され、
前記開口部は、前記作業車両の前進方向側における車体カバーの端面部によって、覆われてなることを特徴とする作業車両のコントロールボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−229739(P2010−229739A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79632(P2009−79632)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】