説明

作業車両の作動油タンク

【課題】作動油タンクの底部に備える排油孔から作動油を抜き取る際、作動油中に混入する異物が排出されずに作動油タンクの底面に残留することを防止して、当該作動油タンクの洗浄作業を短時間で効率的に行なえるようにする。
【解決手段】底部に排油孔13を備える作業車両1の作動油タンク11において、該作動油タンク11の底面12aに、前記排油孔13の溜部aに交点が臨む交差状の仕切板14を立設することによって、作動油タンク11を傾けるだけで作動油タンク11の底面11aに残留する異物を仕切板14に沿わせて排油孔13の溜部aに集めることができるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラトラクタや建設機械等の作業車両に備える作動油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クローラトラクタや建設機械等の作業車両には、複数の油圧装置に作動油を供給すると共に、これら油圧装置からの戻り油を還流させる作動油タンクを備えている。そして、前記油圧装置の修理を行う際や作動油が劣化して作動油を交換しなければならない時は、作動油タンクの底部に備える排油孔から作動油を抜き取っている。
【0003】
しかし、上述の如く排油孔から作動油を抜き取る際、作動油中に混入する異物が排出されずに作動油タンクの底面に残留するので、この作動油タンクの底面に残留する異物を排出するための洗浄作業を繰り返し行なわなければならず、作業時間が長く掛かってしまうといった不具合があった。
【0004】
また、自動車等の車両に備える燃料タンクにおいては、燃料タンク底面の中央部分に、燃料タンクの周縁から中央に向かって緩やかに傾斜すると共に、中央の最凹部に水抜き孔を有する漏斗状のセパレータを固着して燃料タンク内を燃料室と水溜り室とに区分けし、当該燃料タンク内に混入した水を比重差により分離して水溜り室に集める一方、車両の走行に伴う振動により水溜り室に溜まった水が水滴となって燃料層に分散されることを防止するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実開昭53−69008号公報(図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、作動油タンクの底部に備えた排油孔から作動油を抜き取る際、作動油中に混入する異物が排出されずに作動油タンクの底面に残留すると、この作動油タンクの底面に残留する異物を排出するための洗浄作業を繰り返し行なわなければならず、作業時間を短縮して効率アップを図る必要があった。また、上述した特許文献1の燃料タンクの底面構造を作動油タンクに採用したとしても、作動油中に混入する異物を排油孔の近傍に集めることができないので改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、底部に排油孔を備えた作業車両の作動油タンクにおいて、該作動油タンク内の作動油中に混入する異物を、前記排油孔の溜部に集める異物捕集体を設けたことを第一の特徴としている。
そして、前記異物捕集体が、排油孔の溜部に交点が臨むように作動油タンクの底面に立設した交差状の仕切板であることを第二の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、メンテナンス等で作動油タンクの底部に備える排油孔から作動油を抜き取る際は、作動油中に混入する異物を、異物捕集体を介して排油孔の溜部に集めることができるので、作動油タンクの底面に残留する異物を排出するための洗浄作業時間を短縮して効率アップが図れる。
そして、請求項2の発明によれば、前記異物捕集体が、排油孔の溜部に交点が臨むように作動油タンクの底面に立設した安価で簡単な構成の交差状の仕切板であり、メンテナンス等で作動油タンクの底部に備える排油孔から作動油を抜き取る際は、作動油タンクを数回傾けることによって、作動油タンクの底面付近に残留する異物を仕切板に沿わせて排油孔の溜部に集めることができるので、当該作動油タンクの底面に残留する異物を排出するための洗浄作業時間を短縮して効率アップが図れる。また、作業車両が走行中の時は、機体の傾斜に伴う作動油タンク内の作動油の応動によって、作動油タンクの底面付近に存在する異物が仕切板に案内されながら自動的に排油孔の溜部に集められる。更に、作動油タンクの底面剛性が向上するといった利点も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、作業車両の一例である農業用クローラトラクタ1の側面図と平面図であって、農業用クローラトラクタ1は、機体フレーム2上に通常の農業用トラクタと同様にエンジン3を内装するボンネット4、及びキャビン5等を備えており、該キャビン5内には、オペレータが着座する図示しない座席を始め、各種操作レバーやスイッチ類を配置した操縦部6を設けている。
【0009】
そして、キャビン5の後方下部には、各種の作業を行う作業機を装着する三点リンク式の作業機昇降装置7を常装している。また、8L,8Rは、左右のクローラ式走行装置であり、該クローラ式走行装置8L,8R上に機体フレーム2を支持している。
【0010】
また、キャビン5の左右両側下部のクローラ式走行装置8L,8Rの上方には、クローラトラクタ1にオペレータが乗り込む際の足場となる左右のステップ9L,9Rを設けると共に、これら左右のステップ9L,9Rの後方の機体フレーム2には、油圧装置用の作動油を貯留する作動油タンク11とエンジン3用の燃料を貯留する燃料タンク12とを左右に振り分けて搭載している。
【0011】
そして、図3は、作動油タンク11の側面図、図4は、一部を破断した作動油タンク11の平面図、及び図5は、一部を破断した作動油タンク11の正面図であって、当該作動油タンク11は、図3に示すように、複数の金属板を一体的に溶接形成せしめた略台形の箱形状をなしており、その底面11a中央の機体外側寄りには、作動油の排油孔13を備えている。
【0012】
更に詳しく説明すると、作動油タンク11を構成する底面11a(内面)には、上述した排油孔13の溜部aに交点が臨むように安価で簡単な構成の交差状の仕切板14を立設している。この仕切板14は、作動油タンク11内の作動油中に混入する異物を、前記排油孔13の溜部aに集める異物捕集体として作用するものであり、例えばメンテナンス等で作動油タンク11の底部11aに備える排油孔13から作動油を抜き取る際は、作動油タンク11を数回傾けることによって、作動油中に混入する異物を仕切板14を介して排油孔13の溜部aに集めることができるので、作動油タンク11の底面11aに残留する異物を排出するための洗浄作業時間を短縮して効率アップが図れる。
【0013】
そして、農業用クローラトラクタ1が走行中の時は、機体の傾斜に伴う作動油タンク11内の作動油の応動によって、作動油タンク11の底面11a付近に存在する異物が仕切板14に案内されながら、図4に示すA矢印の如く自動的に排油孔13の溜部aに集められる。更に、前記仕切板14により作動油タンク11の底面11aの剛性が向上するといった利点も得られる。
【0014】
また、上述した左右のクローラ式走行装置8L,8Rは、機体フレーム2の下部に一体形成した走行フレーム15L,15Rの前端部に駆動スプロケット16を軸支すると共に、走行フレーム15L,15Rの後端部にアイドラ17を装着している。そして、駆動スプロケット16とアイドラ17との間で、且つ走行フレーム15L,15Rの下部には、前後一対のローラ18を備えた二組のイコライザアーム19を上下揺動自在に支持している。更に、走行フレーム15L,15Rの前後略中間位置の上部には、上部ローラ21を軸支しており、これら駆動スプロケット16、アイドラ17、二組のイコライザアーム19に備える前後一対のローラ18、及び上部ローラ21に巻回するクローラベルト22によって左右のクローラ式走行装置8L,8Rを構成している。
【0015】
ところで、農業用クローラトラクタ1で軟弱な圃場を作業走行すると、水分を多く含んだ泥土が、クローラ式走行装置8L,8Rのクローラベルト22によって持ち回られて走行フレーム15L,15Rの上面Bに落下することから、走行フレーム15L,15Rの上面Bを、図8に示すように機体の内側から外側に向けて低くなる傾斜面に形成することによって、走行フレーム15L,15Rの上面Bに泥土が付着して堆積することを防止しようとしている。
【0016】
しかし、上述の如く走行フレーム15L,15Rの上面Bを傾斜面に形成しても、水分を多く含んだ泥土は走行フレーム15L,15Rの上面Bに付着し易く、このように走行フレーム15L,15Rの上面Bに付着した泥土を作業走行後に取り除くことは面倒であった。
【0017】
そこで、エンジン3の排気マニホールドから排出される温度の高い排気ガスを利用して、走行フレーム15L,15Rの上面Bに付着した水分を多く含む泥土を素早く乾燥させることによって、固まった状態の泥土を走行フレーム15L,15Rの上面Bから容易に剥がすことができるように構成してあり、以下その具体的な実施例について説明する。
【0018】
図6は、走行フレーム15L,15Rの構造と排気ガスの流れを矢印で示す平面図であって、走行フレーム15L,15Rは、前後の横フレーム23F,23Rと一体的に連結してそれらの全体形状は略ボックス状に形成されている。そして、前側の横フレーム23Fの左右両側には、図示しない走行用油圧モータを取り付けるために左右のハウジング24L,24Rを突設している。また、後側の横フレーム23Rの中央部分には、三点リンク式の作業機昇降装置7を構成する図示しない左右一組のリフトシリンダやロワリンク等を支持するために後部取付ベース25を固設している。尚、走行フレーム15L,15R及び前後の横フレーム23F,23Rは、何れも略角パイプ状に形成されている。
【0019】
そして、エンジン3のエグゾーストパイプからマフラー26に至る間から分岐させた管路を経て前側の横フレーム23Fの下面側d部に排ガスを導入できるように構成すると共に、この横フレーム23Fの左右両端部の上側には、図7及び図8に示すような走行フレーム15L,15Rの上面Bの下方空間S、即ち両走行フレーム15L,15Rの長手方向に形成された略三角形の断面空間に連通する連通口27を形成してあり、この連通口27を介して排ガスが走行フレーム15L,15Rの上面Bの下方空間Sに導入されるように構成してある。
【0020】
更に走行フレーム15L,15Rの上面Bの下方空間Sに導入された排ガスは、図6及び図9に示すように、両走行フレーム15L,15Rの後部、即ち下方空間Sの機体内側面から平面視で略L字状に延出すると共に、その先端部が後部取付ベース25から突出する排気管28を介して機外に排出されるようになっている。
【0021】
以上説明したように、走行フレーム15L,15Rの上面Bの下方空間Sにエンジン3の排気マニホールドから排出される温度の高い排気ガスを導入すると、両走行フレーム15L,15Rの上面Bの表面温度が上昇して、両走行フレーム15L,15Rの上面Bに付着した水分を多く含む泥土を素早く乾燥させることが可能となり、それによって固まった状態の泥土を走行フレーム15L,15Rの上面Bから容易に剥がすことができるので清掃作業の作業負荷が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】農業用クローラトラクタの側面図。
【図2】農業用クローラトラクタの平面図。
【図3】作動油タンクの側面図。
【図4】一部を破断した作動油タンクの平面図。
【図5】一部を破断した作動油タンクの正面図。
【図6】走行フレームの構造と排気ガスの流れを示す平面図。
【図7】図6におけるEE断面図。
【図8】図6におけるFF断面図。
【図9】走行フレームの構造を示す背面図。
【符号の説明】
【0023】
1 作業車両
11 作動油タンク
13 排油孔
14 異物捕集体(仕切板)
a 溜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部に排油孔(13)を備えた作業車両(1)の作動油タンク(11)において、該作動油タンク(11)内の作動油中に混入する異物を、前記排油孔(13)の溜部(a)に集める異物捕集体(14)を設けたことを特徴とする作業車両の作動油タンク。
【請求項2】
前記異物捕集体(14)が、排油孔(13)の溜部(a)に交点が臨むように作動油タンク(11)の底面(11a)に立設した交差状の仕切板である請求項1に記載の作業車両の作動油タンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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