説明

作業車両の散布装置

【課題】 左右の円盤間に耕耘爪を介在させることによって撹拌する従来構成に対し、該耕耘爪の代わりに左右の仕切円盤に工夫をこらして撹拌機能をもたらすようにし、構成の簡素化を図る。
【解決手段】 圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(10)と、ロータリ耕耘部のロータリ軸(11)に左右相対向して架設する一対の仕切円盤(24)と、肥料を収容する施肥タンク(21)と、施肥タンク(21)内の肥料を左右の仕切円盤(24,24)間に散布する散布ノズル(23)と、耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板(18)を備え、前記左右の仕切円盤(24,24)にはこの仕切円盤間に散布された肥料を土壌ごと撹拌する撹拌爪(25)を屈曲形成して設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、畝を立てて栽培する作物列に沿って粒状や粉状の肥料や薬剤を帯状に散布する作業車両の散布装置に関し、農業機械の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、左右の円盤(仕切り板)間に肥料を散布する装置が開示され、また、左右の円盤間には耕耘爪を介在する構成が示されている。
【特許文献1】特開2005−6550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
肥料を土壌と共に撹拌する技術として、従来は、左右の円盤間に耕耘爪を介在させることによって撹拌するものであるため、構成が複雑となり、安価に実施することができない問題があった。
【0004】
この発明は、耕耘爪の代わりに左右の仕切円盤(円盤)に工夫をこらして撹拌機能をもたらすようにし、上記問題点を解消せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(10)と、ロータリ耕耘部のロータリ軸(11)に左右相対向して架設する一対の仕切円盤(24)と、肥料を収容する施肥タンク(21)と、施肥タンク(21)内の肥料を左右の仕切円盤(24,24)間に散布する散布ノズル(23)と、耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板(18)を備え、前記左右の仕切円盤(24,24)にはこの仕切円盤間に散布された肥料を土壌ごと撹拌する撹拌爪(25)を屈曲形成して設けてあることを特徴とする。
【0006】
圃場の土面を耕耘しながら肥料を散布する散布作業にあたり、ロータリ軸(11)に架設した左右一対の仕切円盤(24,24)間に、散布ノズル(23)によって施肥タンク(21)からの肥料を散布し、更に、この散布された肥料を仕切円盤(24,24)間において撹拌爪(25)により帯状に撹拌し、土壌と混合させる。左右の仕切円盤(24,24)間の後方では、畝成形板(18)により所定幅の畝が成形される。この時、土壌と撹拌された肥料は、常に畝の中央にくるように畝立て作用が行われる
左右の仕切円盤(24,24)間では、各仕切円盤自体に形成された撹拌爪(25)により肥料を土壌と共に撹拌することができ、これは仕切円盤自体の形状に改良を加えるだけの簡単な構成でもって可能であり、これにより従来のような複雑で高価な耕耘爪を介在させる必要がなくなる。
【0007】
請求項2記載の本発明は、圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(10)と、ロータリ耕耘部のロータリ軸(11)に左右相対向して架設する一対の仕切円盤(24)と、肥料を収容する施肥タンク(21)と、施肥タンク(21)内の肥料を左右の仕切円盤(24,24)間に散布する散布ノズル(23)と、耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板(18)を備え、前記左右の仕切円盤(24,24)は複数のフィン(32,32…)の組み合わせからなり、各フィン間には土導入可能な所定の隙間(33)を確保してあることを特徴とする。
【0008】
左右の仕切円盤(24,24)が数枚のフィン(32,32…)から構成されるので、撹拌機能がより効果的に行われる。各フィン(32,32…)との間には所定の隙間(33)が確保されているので、その隙間から仕切円盤(24,24)の外側の土が入り易くなり、左右の仕切円盤間での土不足をなくすことができる。
【発明の効果】
【0009】
以上要するに、請求項1の本発明によれば、左右の仕切円盤(24,24)自体に撹拌爪(25)を屈曲形成するので、構成が極めて簡単であり、左右の仕切円盤間に従来のような耕耘爪を介在させる必要がなく安価に実施でき、撹拌作用も効果的に行うことができる。
【0010】
また、請求項2の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、左右の仕切円盤が複数のフィン(32,32…)から構成されるので、肥料の撹拌作用をより効果的に行うことができる。しかも、各フィンとの間には所定の隙間(33)が確保されているので、その隙間から仕切円盤の外側の土が入り易くなり、左右の仕切円盤間での土不足問題を解消することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は、作業車両の一例としてトラクタを示すものであり、この車体1の前部のボンネット2内にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4と後輪5とに伝えるようにしている。操作ボックス6近くにステアリングハンドル7が装備され、その後方には運転席8が設置されている。
【0012】
車体後部には圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(ロータリ耕耘装置)10が車体1に対して昇降可能に装備されている。
ロータリ耕耘部10には、ロータリ軸11が回転自在に架設され、ロータリ軸の外周に多数の耕耘爪12が放射状に突設されている。ロータリ耕耘部10への回転動力は、トラクタのPTO軸から動力伝動ケース13、チエンケース14内の伝動系を介してロータリ軸11に伝達され、ロータリ軸11を所定方向に回転させて耕耘爪12により圃場の土壌を耕耘するようになっている。
【0013】
ロータリ耕耘部10の後方には耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板18が耕耘部のロータリフレーム19から突設する支持フレーム20に着脱自在に取付られている。
また、ロータリ耕耘部10の上方位置には肥料(又は薬剤)を収容する施肥タンク21が設置され、施肥タンク21の下部にはモータにより駆動される繰り出し部が設けられ、該繰り出し部に接続された施肥ホース22の下端には散布ノズル23が設けられている。
【0014】
一方、ロータリ軸11には、相対向する左右一対の円盤形状からなる仕切円盤24が所定の間隔をあけて設けられ、ロータリ軸11と一体的に回転するよう固着されている。そして、この仕切円盤24,24には、数箇所において撹拌機能をもたらす撹拌爪25,25…が切欠き屈曲形成して設けられている。
【0015】
前記施肥ホース22の散布ノズル23は、左右の仕切円盤24,24間に臨ませてあり、施肥タンク21から繰り出される肥料が施肥ホース22内を落下し、散布ノズル23より仕切円盤24,24間内へ導かれるようになっている。そして、この散布ノズル23から吐出される肥料は、機体が前進することによって圃場面に帯状に散布されることになる。また、左右の仕切円盤24,24間に導入される肥料は、仕切円盤24から突設する撹拌爪25によって土壌と撹拌される。
【0016】
仕切円盤24,24の間隔調節は、ロータリ軸11に対する取付位置を軸方向に移動させて行うが、ロータリ軸に所定間隔置きに穿設した調節孔30と調節ピン31とによって行なえるようにし、作物の種類や作物の大きさ等の条件に応じて適宜に調節できる構成としている。
【0017】
次に、第2実施例の仕切円盤の構成例について説明する。本例の仕切円盤24は、図4に示すように、数枚のフィン32,32…を適宜組み合わせることによって成立ち、各フィン間に所定の隙間33を確保し、且つ、各フィンが互いに対向側に向けて傾斜するよう構成して砕土の導入を可能にしている。これにより、フィン32とフィン32との間の隙間33から外側の土が入りやすくなり、土を内側に寄せる効果と相俟って仕切円盤間内での土不足問題が解消できることになる。
【0018】
なお、図6、図7に示すように、各フィン32,32…に撹拌爪25を突設しておくと、撹拌効果を一層高めることができる。
また、図8に示す仕切円盤24は、耕耘爪12の強制回転とは別に自転回転させることができるようにロータリ軸11に対しボールベアリング34を介して軸受保持させている。つまり、仕切円盤を地面に接地させることで自転させ、これにより、駆動回転し埋込み性はやや劣るが、その効果を維持しつつ仕切円盤間での土詰まりを軽減できる。仕切円盤と耕耘爪が同回転では湿った土での作業時、仕切円盤間での土詰まりがおきやすくなるが、かかる問題点を解消することができる。
【0019】
図9(イ)に示すように、小畝用帯状施肥構成においては、施肥位置の中心のズレはなくなるが、図9(ロ)に示すように幅広平畝においては、施肥位置の中心のズレが生じる。そのため、本例では、図10に示すように、仕切円盤24,24の後方部にズレ防止板38を設けることによって中心のズレを防止する構成としている。
【0020】
また、図11に示す実施例では、幅広平畝の対応策として、一対の畝成形板に対し数対の仕切円盤を設ける構成としている。例えば、玉ねぎは平畝4条移植が一般的であるが、一畝一対の仕切円盤では対応不可であるが、図11に示すように一畝複数対の仕切円盤とすることで対応可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】トラクタの側面図
【図2】同上要部の背面図
【図3】第1実施例の仕切円盤の斜視図
【図4】第2実施例の仕切円盤の背面図
【図5】同上仕切円盤の側面図
【図6】図5の仕切円盤とはフイン形状を変えた例を示す側面図
【図7】同上背面図
【図8】仕切円盤の軸受装置を示す断面図
【図9】ロータリ耕耘部の要部の平面図
【図10】同上要部の平面図
【図11】同上耕耘部の要部平面図
【符号の説明】
【0022】
10 ロータリ耕耘部 11 ロータリ軸
12 耕耘爪 18 畝成形板
21 施肥タンク 22 施肥ホース
23 散布ノズル 24 仕切円盤
25 撹拌爪 32 フイン
33 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(10)と、ロータリ耕耘部のロータリ軸(11)に左右相対向して架設する一対の仕切円盤(24)と、肥料を収容する施肥タンク(21)と、施肥タンク(21)内の肥料を左右の仕切円盤(24,24)間に散布する散布ノズル(23)と、耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板(18)を備え、前記左右の仕切円盤(24,24)にはこの仕切円盤間に散布された肥料を土壌ごと撹拌する撹拌爪(25)を屈曲形成して設けてあることを特徴とする作業車両の散布装置。
【請求項2】
圃場の土壌を耕耘するロータリ耕耘部(10)と、ロータリ耕耘部のロータリ軸(11)に左右相対向して架設する一対の仕切円盤(24)と、肥料を収容する施肥タンク(21)と、施肥タンク(21)内の肥料を左右の仕切円盤(24,24)間に散布する散布ノズル(23)と、耕耘後の土壌を畝立て成形する畝成形板(18)を備え、前記左右の仕切円盤(24,24)は複数のフィン(32,32)…の組み合わせからなり、各フィン間には土導入可能な所定の隙間(33)を確保してあることを特徴とする作業車両の散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−89523(P2007−89523A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−285665(P2005−285665)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】