説明

作業車両の除草作業機

【課題】圃場条件等によって除草作業機の地面側への張圧力を任意に無段調整することができ、チゼルの土中への入り込みや中耕ディスクの土寄せ作用が効果的に行えるようにする。
【解決手段】本発明は、進行方向前側から順に配置したゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15からなる除草作業機9を作業部側メインフレーム10に対して上下に平行移動すべく昇降可能に装備し、除草作業機を支持するアッパーフレーム17と前記作業部側メインフレーム10との間には、このアッパーフレーム17を常時対地面側に向けて張圧保持する張圧手段21と、この張圧力を任意に変更調整できる張圧力無段調整手段34を設けてあることを特徴とする作業車両の除草作業機の構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農業用トラクタや乗用管理機等に利用される作業車両の除草作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、進行方向前側からチゼル、第1中耕ディスク、第2中耕ディスクの順に配置して備えた中耕除草機を、車体側から突設するフレーム機構に対して平行リンクを介して連結支持させ、中耕支持ロッドには衝撃吸収用バネを設けた構成のものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−259812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の除草作業機では、対地面に対する衝撃を吸収するためのバネが設けられているが、圃場条件等によって除草作業機の地面側への張圧力が調整できないため、チゼルの土中への入り込みや中耕ディスクの土寄せ作用が効果的に行い難い問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1記載の本発明は、進行方向前側から順に配置したゲージ輪(12)、第1中耕ディスク(13)、チゼル(14)、第2中耕ディスク(15)からなる除草作業機(9)を作業部側メインフレーム(10)に対して上下に平行移動すべく昇降可能に装備し、除草作業機を支持するアッパーフレーム(17)と前記作業部側メインフレーム(10)との間には、このアッパーフレーム(17)を常時対地面側に向けて張圧保持する張圧手段(21)と、この張圧力を任意に変更調整できる張圧力無段調整手段(34)を設けてあることを特徴とする作業車両の除草作業機とする。
【0006】
作業車両の前進に伴い除草作業機(9)が作物の条間を進行すると、先行するゲージ輪(12)に後続して移動する第1中耕ディスク(13)によって中耕しながら左右方向への土寄せ作用が行われ、続いて、チゼル(14)の作用によって条間の土が掘り起こされ、そして、更に第2中耕ディスク(15)によって掘り起こされた土が左右方向に寄せられ、仕上げ培土が行われる。
【0007】
除草作業機(9)は、作業部全体が圃場面に対して上下に平行移動し、常時、対地面側に向けて張圧保持されているので、チゼル(14)の土中への入り込みや第1・第2中耕ディスク(13),(15)の土寄せ作用が効果的に行え、圃場の硬軟度やその他の条件によっては除草作業機の地面への張圧力を容易、且つ、無段階に調整することができる。
【0008】
請求項2記載の本発明は、前記除草作業機(9)は、複数個を各条毎に左右に並設し、各除草作業機個々に張圧力無段調整手段(34)を設けてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両の除草作業機とする。
【0009】
各条における除草作業機の張圧力は、各条毎に独立して最適に調整でき、各条の圃場硬さに適した張圧力に容易に設定することができる。
請求項3記載の本発明は、機体の中央部後方に配置した除草作業機(9C)の張圧力に対し、左右両サイドに配置した除草作業機(9L),(9R)の張圧力を強く設定してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両の除草作業機とする。
【0010】
左右両サイドの除草作業機は(9L),(9R)は、本機の左右走行輪の通過跡を中耕除草するので、圃場面が車輪によって踏み固められて硬くなっており、中央に位置する除草作業機(9C)よりも下方への張圧力を高めに設定する必要がある。従って、機体中央の畝間とこれに隣接する両サイドの畝間の土寄せ量がほぼ同じとなり均一化される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、除草作業機は、作業部全体が圃場面に対して上下に平行移動し、対地面側に向けて常時張圧保持されているので、チゼルの土中への入り込みや第1・第2中耕ディスクの土寄せ作用が効果的に行え、しかも、圃場面側への張圧力を任意に変更調整することができるので、圃場の硬軟度やその他の条件によって除草作業機の張圧力を容易に無段階に設定調整することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、請求項1の発明効果を奏するものでありながら、複数の除草作業機全てに張圧力調整手段を設けてあるので、各条における除草作業機の張圧力を各条毎に独立して最適に調整でき、各条の圃場硬さに適した張圧力に容易に設定することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、請求項1又は請求項2の発明効果を奏するものでありながら、左右走行輪の通過跡は圃場面が硬くなっているため、左右両サイドの除草作業機の張圧力を中央のそれよりも高めに設定することで、中央の畝間と両サイドの畝間の土寄せ量を略均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】除草作業機を備えたトラクタの側面図
【図2】同上平面図
【図3】トラクタ後部に除草作業機を備えた要部の側面図
【図4】同上トラクタの除草作業機要部の側面図
【図5】同上要部の平面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施例を図面に基づき説明する。
図1は作業車両の一例としてトラクタを示し、車体1前部のボンネット2内部にエンジンEを搭載し、このエンジンEの回転動力をミッションケ−ス3内の変速装置に伝え、この変速装置で減速された回転動力を前輪4及び後輪5とに伝えるようにしている。エンジンEの後方に前輪4,4を操舵するステアリングハンドル6が装備され、更に、その後方には運転席7が設置されている。
【0016】
車体側後部の取付ヒッチ部8には、後記する除草作業機9を支持するための作業部側メインフレーム10が装着支持されていて、耕深調節ハンドル11(又は上下制御シリンダ)の操作によって横軸芯Qを支点として上下方向に昇降動し耕深調節が行えるようになっている。
【0017】
除草作業機9は、進行方向の前側から順に配置したゲージ輪12、第1中耕ディスク13、チゼル14、第2中耕ディスク15からなり、本例では3条の条間分の中耕を行いながら除草する構成としている。ゲージ輪12、第1中耕ディスク13及びチゼル14は、アンダーフレーム16によって支持され、第2中耕ディスク15は、前記アンダーフレーム16と一体構成のアッパーフレーム17によって支持されている。中央に位置するメインフレーム10と一体でこれより左右横方向に延びるツールバー18には、左右の除草作業機を支持する左右フレーム10L,10Rが装着支持されている。
【0018】
また、該ツールバー18からは支持アーム19が後方上方に向けて延設されている。支持アーム19の先端は、前記チゼル14の鉛直方向上方位置でアッパーフレーム17に連結された支持ロッド20に接続されている。支持ロッド20には、下方のチゼル14側に向けて張圧付勢する張圧手段(張圧スプリング21)が設けられている。支持ロッド20と張圧スプリング21との間には、張圧スプリングの張圧力を無段階に調整するボス体31、ネジ部32、回転ナックル33等からなる無段調整手段(アジャスタ装置)34が具備され、回転ナックル33を回すだけでスプリング張圧力を任意、無段階に調整することができる。
【0019】
また、中央、左右3連の除草作業機9C,9L,9Rには、各除草作業機毎の無段階調節が個々独立的に行えるように張圧力無段調整手段34がそれぞれ設けられている。更に、各除草作業機9L,9C,9Rのスプリング張圧力は、中央のスプリング張圧力よりも、左右両サイドのスプリン張圧力の方が強くなるように設定してある。これは、両サイドの除草作業機9L,9Rが本機後輪5,5の走行跡を中耕除草するので、圃場面が硬くなり、中央の除草機よりスプリング張圧力を高めに設定する必要があるからである。
【0020】
また、前記メインフレーム10(左右フレーム10L,10R)とアッパーフレーム17との間には、各除草作業機10の重心位置G近くを吊り下げ状態に連結支持する平行リンク機構22が介装されている。除草作業機は、平行リンク機構により上下に平行移動しながら対地面の凹凸に対して滑らかに順応する。
【0021】
チゼル14を挟んで前側の第1中耕ディスク13と後側の第2中耕ディスク15との離間距離L1,L2を略同等としている。これにより、前後の両ディスクは共に土の反転量を同じにすることができ、作物への土寄せ量調整が行い易くなる。
【0022】
第1中耕ディスク13は、作物の条間を進行しながら左右一対のディスクによって条間の土を中耕しながら除草するもので、周面が丸型で平面視ハの字型に配設されて左右方向への土寄せが行えるように構成されている。又、第2中耕ディスク15は、第1中耕ディスクと同様に、作物の条間を進行しながら左右一対のディスクによって条間の土を中耕しながら除草するものであり、周面が凹凸のある花型で平面視ハの字型に配設され左右側への土寄せが行えるように構成されている。
【0023】
なお、前後のディスク13,15の外径を同一にしておくと、進行方向との角度を統一できるので、作業時の土寄せ量の調節が容易にできる。また、第2中耕ディスク15は、上下方向に伸縮調節可能な伸縮調節具23を介してアッパーフレーム17に連結支持させた構成としている。
【0024】
図4及び図5に示すように、前後の中耕ディスク13,15は、平面視でハの字に配置され、そして、これらの外方側には、ヒンジ36を回動中心として上下に開閉調節可能に構成された土寄せ調節板35が取付板37に付設されている。従来はディスクのハの字角度を変更して作物への土寄せ量を調整しているが、この調節では、特に小さな作物への土の飛び量を調節するのが難しく、作業速度を落とさないと適正な土寄せができない欠点がある。上記の土寄せ調節板によれば、作業速度を落とさなくても土寄せ量の微調整ができ、調節も容易である。
【0025】
また、土寄せ調節板35は、ディスクの回転中心より後方に位置させ、ディスクの回転中心を通る水平線よりやや上方向に配置することによって土の飛び量制御を行い易くしている。また、側面視において、土寄せ調節板35の前側が低く、後側ほど高くなるように後方上り傾斜とすることによって土の流れがスムースとなり、近くから遠くまで土を略均一に分散させる効果がある。
【0026】
畝高さが高い場合には、土寄せ調節板35は、地面より高い位置にセットする必要がある。そのため、この土寄せ調節板35は畝の高さに応じて前記取付板37に設けられた調節用長穴部38に沿って高さ調節が行えるように構成している。なお、土寄せ調節板の高さ調節は、ディスクの円周方向に沿って調節する構成とすることにより、土を均一に飛ばす性能を保持でき、飛ばす高さのみ変更できるので、土寄せがコントロールし易くなる。
【0027】
第1・第2中耕ディスク13,15には、ディスクに付着する泥土を削り落とすスクレーパ機能を持つ排土板39が前記土寄せ調節板35と一体的に設けられている。
チゼル14は、前後2連に配置されていてアンダーフレーム16に固着された取付ベース24に取り付けられ、作物の条間を進行しながら左右複数のチゼルによって条間の土を掘り起こすようになっている。
【0028】
ゲージ輪12の周面に泥土が付着すると、ゲージ輪の径が徐々に大きくなって除草作業機が浮き上がるので、ディスクの土中への入り込み量が浅くなり土の反転量が小さくなる。また、土寄せ量も低下する。そこで、図例(図1)に示すように、このゲージ輪12には、これに付着する泥土を削ぎ落とすスクレーパ26を該ゲージ輪の外周面適所に設けることによって解消することができる。このスクレーパ26はゲージ輪軸受アーム25に固着している。
【0029】
図3に示すゲージ輪12は、この軸受アーム25が横軸27を支点として上下に揺動変位することによって昇降するようになっており、螺旋軸などによる伸縮可能な無段階調節部28を備え、昇降ハンドル29を回すことによってゲージ輪12が無段階に上下動し、除草作業機の高さ調節が簡単に行えるように構成している。
【0030】
前記除草作業機9は、車体後部の中央部において前後方向に架設されたローリング軸30周りに左右ローリング自在に懸架された構成になっている。車体が左右に傾いても除草作業機はその影響を受けないので、作業姿勢が安定し追従性が向上する。
【0031】
作業部側メインフレーム10側には、平行リンク22の角度を検出する除草作業機の自動高さ制御用の角度センサ40が設置されている。地面に対する作業機の高さは、地面凹凸に関係なく一定に高さ制御するので、作業機の地面を押す力も一定で、土寄せ量のムラが発生しない利点があり、また、地面の硬さに最適な張圧スプリングの張圧力(荷重)調節も容易に行うことができ、圃場条件に関係なく良好な精度で作業が行える。
【0032】
なお、前記角度センサ40は、メインフレーム10の側板に設けるが、この角度センサの進行方向前側には、角度センサをカバーするセンサカバー45を設けることによって、角度センサの作物に対する干渉を無くし、角度センサの誤作動を防止するようにしている。
【0033】
図4に示すように、本機後部の取付ヒッチ部8に作業機を昇降する目的で設けられた昇降リンクのカウンタヒッチ42(ローリング軸30回りに回動可能)と、作業部側メインフレーム10間を上下制御シリンダ43にて接続し、運転席より小型スイッチ操作で作業機の姿勢を遠隔操作できるように構成したものにおいて、作業部側メインフレーム10の水平面上には、前後、左右の傾きを検出する水平センサ41を設けることにより、除草作業機の前後左右の姿勢制御が行えるように構成している。つまり、水平センサ41は、作業部側メインフレーム10の前後左右の傾き角度を検出するもので、作業部側メインフレーム10の左右の傾きは、カウンタヒッチ42の横側部に設けられた水平制御シリンダ44にて制御し、作業部側メインフレーム10の前後の傾きは、前記上下制御シリンダ43にて制御する構成としている。
【0034】
本機の走行路の凹凸や起伏によって作業部側メインフレームの姿勢が常に変化し、除草作業機の作業姿勢が乱れ、作物への土寄せ量が一定しない。作業部側メインフレームの上面は、常に水平になるようコントロールされるので、平行リンク22を介して設けられた除草作業機の姿勢は不変で圃場の凹凸や起伏に影響されず、作物への土寄せ量が一定で安定する。特に第2中耕ディスクの圃場面からの高さが変わらないので土寄せ精度が向上する。
【0035】
中央左右3連の除草作業機において、前記角度センサ40と水平センサ41を組み合わせて、作業部の高さ制御及び水平制御を行う時、各センサは中央の除草作業機9C側に配置し、中央の除草作業機を制御の基準とすることで、3連の除草作業機の除草、土寄せ精度のバランスが良好に保持される。
【0036】
なお、作業部側メインフレーム10の水平面上に前後左右の角速度を検出する角速度センサを設け、前後左右の傾きを調節する水平シリンダにて水平制御を行う構成とすることもできる。これによれば、角速度センサは角速度発生と同時に出力信号を出すため、応答性が良いとされ、素早く水平シリンダの作動が行われるので水平制御の応答性が高く、追従性精度が高くなるメリットがある。
【符号の説明】
【0037】
1 車体
9 除草作業機
10 作業部側メインフレーム
12 ゲージ輪
13 第1中耕ディスク
14 チゼル
15 第2中耕ディスク
17 アッパーフレーム
20 支持ロッド
21 張圧手段(張圧スプリング)
34 張圧力無段調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
進行方向前側から順に配置したゲージ輪(12)、第1中耕ディスク(13)、チゼル(14)、第2中耕ディスク(15)からなる除草作業機(9)を作業部側メインフレーム(10)に対して上下に平行移動すべく昇降可能に装備し、除草作業機を支持するアッパーフレーム(17)と前記作業部側メインフレーム(10)との間には、このアッパーフレーム(17)を常時対地面側に向けて張圧保持する張圧手段(21)と、この張圧力を任意に変更調整できる張圧力無段調整手段(34)を設けてあることを特徴とする作業車両の除草作業機。
【請求項2】
前記除草作業機(9)は、複数個を各条毎に左右に並設し、各除草作業機個々に張圧力無段調整手段(34)を設けてあることを特徴とする請求項1記載の作業車両の除草作業機。
【請求項3】
機体の中央部後方に配置した除草作業機(9C)の張圧力に対し、左右両サイドに配置した除草作業機(9L),(9R)の張圧力を強く設定してあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両の除草作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−5416(P2012−5416A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143965(P2010−143965)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】