説明

作業車両搭載用エンジン装置

【課題】パティキュレートフィルタ1(ガス浄化フィルタ)を高剛性に配置でき、エンジン70周りの構造を簡略化できるようにした作業車両搭載用エンジン装置を提供しようとするものである。
【解決手段】エンジン70と、エンジン70の排気ガスを浄化するガス浄化フィルタ1とを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗する走行機体102としてのステップフレーム125に支持脚体19を配置し、支持脚体19にガス浄化フィルタ1を着脱可能に設置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等の排気ガスを浄化するガス浄化フィルタを備えた作業車両搭載用エンジン装置に係り、より詳しくは、排気ガス中に含まれた粒子状物質(すす、パティキュレート)、又はNOx(窒素酸化物)等を除去するガス浄化フィルタ(ディーゼルパティキュレートフィルタ)を備えた作業車両搭載用エンジン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、走行機体等に搭載されるディーゼルエンジンの排気ガス排出径路中に、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等が設けられ、ディーゼルエンジンから排出された排気ガスが、ディーゼルパティキュレートフィルタ(又はNOx触媒)等によって浄化処理されるようにした技術がある(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。また、ケーシング(外側ケース)内にフィルタケース(内側ケース)を設け、フィルタケース内にパティキュレートフィルタを配置する技術も公知である(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−145430号公報
【特許文献2】特開2003−27922号公報
【特許文献3】特開2008−82201号公報
【特許文献4】特開2001−173429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ディーゼルエンジンの排気ガスをパティキュレートフィルタにて浄化する構造において、ディーゼルエンジンの排気ガス排出径路中に配置していた消音器に代えて、ディーゼルエンジンの排気ガス排出径路中にパティキュレートフィルタを配置した場合、消音器に比べてパティキュレートフィルタが重いから、消音器の支持構造を利用しただけでは、パティキュレートフィルタを組付けることができない等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、パティキュレートフィルタ(ガス浄化フィルタ)を高剛性に配置でき、エンジン周りの構造を簡略化できるようにした作業車両搭載用エンジン装置または作業車両またはトラクタを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、エンジンと、エンジンの排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗する走行機体としてのステップフレームの前側に支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを着脱可能に設置したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、前記ガス浄化フィルタのケースは、左右方向に長い横型または上下方向に長い縦型の円筒形状に形成されている構造であって、前記走行機体のうち機体フレームとして設けるステップフレームの前側に支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを横型または縦型に設置したものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、エンジンと、エンジンの排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗する走行機体としてのステップフレームに支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを着脱可能に設置したものであるから、走行機体フレームの余剰スペースを利用して、ガス浄化フィルタを高剛性且つコンパクトに組付けることができる。ガス浄化フィルタの着脱又はメンテナンス等を簡単に実行できる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、前記ガス浄化フィルタのケースは、左右方向に長い横型または上下方向に長い縦型の円筒形状に形成されている構造であって、前記走行機体のうち機体フレームとして設けるステップフレームの前側に支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを横型または縦型に設置したものであるから、横型支持構造では、支持脚体を利用した簡単な支持構造によって、ペダル等の他の構成部品に規制されることなく、ステップフレームにガス浄化フィルタを高剛性且つコンパクトに組付けることができる。また、縦型支持構造では、ボンネットに沿わせてガス浄化フィルタを縦型にコンパクトに設置できる。ガス浄化フィルタによってオペレータの視界が遮られない。例えばトラクタ等の作業車両の対地作業において、作物用のマルチ畝等と前車輪との相対間隔を確認しながら、前進移動させて農作業を実行できる。また、例えば歩み板と前車輪との相対間隔を確認しながら、運搬用トラックの荷台にトラクタ等の作業車両を積み降す作業や、農作業用の圃場にトラクタ等を出入させる作業を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の排気ガス浄化装置の正面視断面図である。
【図2】同外観底面図である。
【図3】同排気ガス流入側から見た左側面図である。
【図4】同排気ガス排出側から見た右側断面図である。
【図5】図1の正面視分解断面図である。
【図6】同排気ガス排出側の正面視拡大断面図である。
【図7】同排気ガス排出側の側面視拡大断面図である。
【図8】同排気ガス流入側の拡大底面図である。
【図9】同排気ガス流入側の平面視拡大断面図である。
【図10】トラクタの側面図である。
【図11】トラクタの平面図である。
【図12】トラクタの排気ガス浄化装置の配置を示す平面図である。
【図13】トラクタの排気ガス浄化装置の配置を示す側面図である。
【図14】図13の拡大側面図である。
【図15】他の実施形態を示すトラクタの側面図である。
【図16】図15の平面図である。
【図17】図15の拡大側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。図1は排気ガス浄化装置の正面視断面図、図2は同外観底面図、図3同排気ガス流入側から見た左側面図、図4は同排気ガス排出側から見た右側断面図、図5は図1の正面視分解断面図、図6は同排気ガス排出側の正面視拡大断面図、図7は同排気ガス排出側の側面視拡大断面図、図8は同排気ガス流入側の拡大底面図、図9は同排気ガス流入側の平面視拡大断面図である。図1乃至図5を参照しながら、排気ガス浄化装置の全体構造について説明する。なお、以下の説明では、排気ガス流入側を単に左側と称し、同じく排気ガス排出側を単に右側と称する。
【0012】
図1乃至図5に示す如く、本実施形態の排気ガス浄化装置としての連続再生式のディーゼルパティキュレートフィルタ1(以下、DPFという)を設けている。DPF1は、排気ガス中の粒子状物質(PM)等を物理的に捕集するためのものである。DPF1は、二酸化窒素(NO2)を生成する白金等のディーゼル酸化触媒2と、捕集した粒子状物質(PM)を比較的低温で連続的に酸化除去するハニカム構造のスートフィルタ3とを、排気ガスの移動方向(図1の左側から右側方向)に直列に並べた構造になっている。DPF1は、スートフィルタ3が連続的に再生されるように構成している。DPF1によって、排気ガス中の粒子状物質(PM)の除去に加え、排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を低減できる。
【0013】
図1及び図5を参照して、ディーゼル酸化触媒2の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのディーゼル酸化触媒2は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒内側ケース4に内設させている。触媒内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型の触媒外側ケース5に内設させている。即ち、ディーゼル酸化触媒2の外側にマット状のセラミックファイバー製触媒断熱材6を介して触媒内側ケース4を被嵌させている。また、触媒内側ケース4の外側に端面I字状の薄板製支持体7を介して触媒外側ケース5を被嵌させている。なお、触媒断熱材6によってディーゼル酸化触媒2が保護される。触媒内側ケース4に伝わる触媒外側ケース5の応力(変形力)を薄板製支持体7にて低減させる。
【0014】
図1及び図5に示す如く、触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部に円板状の左側蓋体8を溶接にて固着している。左側蓋体8に座板体9を介してセンサ接続プラグ10を固着している。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8とをガス流入空間用一定距離L1だけ離間させて対向させる。ディーゼル酸化触媒2の左側端面2aと左側蓋体8との間に排気ガス流入空間11を形成している。なお、センサ接続プラグ10には、図示しない入口側排気ガス圧力センサや入口側排気ガス温度センサ等が接続される。
【0015】
図1、図5、図9に示す如く、排気ガス流入空間11が形成された触媒内側ケース4及び触媒外側ケース5の左側端部に楕円形状の排気ガス流入口12を開口させている。楕円形状の排気ガス流入口12は、排気ガス移動方向(前記ケース4,5の中心線方向)を短
尺直径とし、排気ガス移動方向(前記ケース4,5の円周方向)に直交する方向を長尺直径
に形成している。触媒内側ケース4の開口縁13と触媒外側ケース5の開口縁14の間に閉塞リング体15を挟持状に固着している。触媒内側ケース4の開口縁13と触媒外側ケース5の開口縁14の間の隙間が閉塞リング体15によって閉鎖される。触媒内側ケース4と触媒外側ケース5の間に排気ガスが流入するのを、閉塞リング体15によって防止している。
【0016】
図1、図3、図5、図8に示す如く、排気ガス流入口12が形成された触媒外側ケース5の外側面に排気ガス入口管16を配置している。排気ガス入口管16の小径側の真円形の開口端部16aに排気接続フランジ体17を溶接している。排気接続フランジ体17は、ボルト18を介して、後述するディーゼルエンジン70の排気マニホールド71に締結されている。排気ガス入口管16の大径側の真円形の開口端部16bは、触媒外側ケース5の外側面に溶接されている。排気ガス入口管16は、小径側の真円形の開口端部16aから大径側の真円形の開口端部16bに向けて末広がり形状(ラッパ状)に形成されている。
【0017】
図1、図5、図8に示す如く、触媒外側ケース5の外側面のうち、触媒外側ケース5の開口縁14の左側端部の外側面に、大径側の真円形の開口端部16bの左側端部が溶接されている。即ち、楕円形状の排気ガス流入口12に対して、排気ガス入口管16(大径側の真円形の開口端部16b)が、排気ガス移動下流側(触媒外側ケース5の右側)にオフセットされて配置されている。即ち、楕円形状の排気ガス流入口12は、排気ガス入口管16(大径側の真円形の開口端部16b)に対して、排気ガス移動上流側(触媒外側ケース5の左側)にオフセットされて、触媒外側ケース5に形成されている。
【0018】
上記の構成により、エンジン70の排気ガスが、排気マニホールド71から排気ガス入口管16に入り込み、排気ガス入口管16から排気ガス流入口12を介して排気ガス流入空間11に入り込み、ディーゼル酸化触媒2にこの左側端面2aから供給される。ディーゼル酸化触媒2の酸化作用によって、二酸化窒素(NO2)が生成される。また、後述するディーゼルエンジン70に支持脚体19を介してDPF1を固着させる。
【0019】
図1及び図5を参照して、スートフィルタ3の取付け構造を説明する。図1及び図5に示す如く、エンジン70が排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのスートフィルタ3は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ内側ケース20に内設させている。内側ケース4は、耐熱金属材料製の略筒型のフィルタ外側ケース21に内設させている。即ち、スートフィルタ3の外側にマット状のセラミックファイバー製フィルタ断熱材22を介してフィルタ内側ケース20を被嵌させている。なお、フィルタ断熱材22によってスートフィルタ3が保護される。
【0020】
図1及び図5に示す如く、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)の端部に触媒側フランジ25を溶接する。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の中間と、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部にフィルタ側フランジ26を溶接する。触媒側フランジ25と、フィルタ側フランジ26とを、ボルト27及びナット28によって着脱可能に締結している。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法とが略同一寸法である。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法とが略同一寸法である。
【0021】
図1に示す如く、触媒側フランジ25とフィルタ側フランジ26を介して、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21が連結された状態では、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部に、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、センサ取付け用一定間隔L2だけ離間して対峙する。即ち、触媒内側ケース4の排気ガス移動下流側(右側)の端部と、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部との間に、センサ取付け空間29が形成される。センサ取付け空間29位置の触媒外側ケース5に、センサ接続プラグ50を固着している。センサ接続プラグ50には、図示しないフィルタ入口側排気ガス圧力センサやフィルタ入口側排気ガス温度センサ(サーミスタ)等が接続される。
【0022】
図5に示す如く、触媒内側ケース4の排気ガス移動方向の円筒長さL3よりも、触媒外側ケース5の排気ガス移動方向の円筒長さL4を長く形成している。フィルタ内側ケース20の排気ガス移動方向の円筒長さL5よりも、フィルタ外側ケース21の排気ガス移動方向の円筒長さL6を短く形成している。センサ取付け空間29の一定間隔L2と、触媒内側ケース4の円筒長さL3と、フィルタ内側ケース20の円筒長さL5とを加算した長さ(L2+L3+L5)が、触媒外側ケース5の円筒長さL4と、フィルタ外側ケース21の円筒長さL6とを加算した長さ(L4+L6)に略等しくなるように構成している。フィルタ外側ケース21の排気ガス移動上流側(左側)の端部から、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、それらの長さの差(L7=L5−L6)だけ突出する。即ち、触媒外側ケース5にフィルタ外側ケース21を連結した場合、フィルタ内側ケース20の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、オーバーラップ寸法L7だけ、触媒外側ケース5の排気ガス移動下流側(右側)に内挿される。
【0023】
上記の構成により、ディーゼル酸化触媒2の酸化作用によって生成された二酸化窒素(NO2)が、スートフィルタ3にこの左側端面3aから供給される。スートフィルタ3に捕集されたディーゼルエンジン70の排気ガス中の捕集粒状物質(PM)が、二酸化窒素(NO2)によって、比較的低温で連続的に酸化除去される。ディーゼルエンジン70の排気ガス中の粒状物質(PM)の除去に加え、ディーゼルエンジン70の排気ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)が低減される。
【0024】
なお、上記のように、エンジンが排出した排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとして、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3を設けたが、ディーゼル酸化触媒2及びスートフィルタ3に代えて、尿素(還元剤)の添加にて発生したアンモニア(NH3)によってエンジン70の排気ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元するNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)と、NOx選択還元触媒から排出される残留アンモニアを取り除くアンモニア除去触媒とを設けてもよい。
【0025】
上記のように、ガス浄化フィルタとして、触媒内側ケース4にNOx選択還元触媒(NOx除去触媒)を設け、フィルタ内側ケース20にアンモニア除去触媒を設けた場合、エンジンが排出した排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が還元され、無害な窒素ガス(N2)として排出できる。
【0026】
図1乃至図3、及び図5乃至図7を参照して、消音器30の取付け構造を説明する。図1乃至図3、図5に示す如く、エンジンが排出した排気ガス音を減衰させる消音器30は、耐熱金属材料製の略筒型の消音内側ケース31と、耐熱金属材料製の略筒型の消音外側ケース32と、消音内側ケース31及び消音外側ケース32の右側端部に溶接にて固着した円板状の右側蓋体33とを有する。消音外側ケース32に消音内側ケース31を内設させている。また、円筒形の触媒外側ケース5の直径寸法と、円筒形のフィルタ外側ケース21の直径寸法と、円筒形の消音外側ケース32とが略同一寸法である。円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法と、円筒形の消音内側ケース31とが略同一寸法である。なお、円筒形の触媒内側ケース4の直径寸法と、円筒形のフィルタ内側ケース20の直径寸法と、円筒形の消音内側ケース31とが同一寸法でなくてもよい。
【0027】
図4乃至図7に示す如く、消音内側ケース31及び消音外側ケース32に排気ガス出口管34を貫通させている。排気ガス出口管34の一端側が出口蓋体35によって閉塞されている。消音内側ケース31の内部における排気ガス出口管34の全体に多数の排気孔36が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の排気孔36を介して、排気ガス出口管34に連通されている。図示しない消音器やテールパイプが排気ガス出口管34の他端側に接続される。
【0028】
図6、図7に示す如く、消音内側ケース31には、多数の消音孔37が開設されている。消音内側ケース31の内部が、多数の消音孔37を介して、消音内側ケース31と消音外側ケース32との間に連通されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間の空間は、右側蓋体33と薄板製支持体38によって閉塞されている。消音内側ケース31と消音外側ケース32との間にセラミックファイバー製消音材39が充填されている。消音内側ケース31の排気ガス移動上流側(左側)の端部が、薄板製支持体38を介して、消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に連結されている。
【0029】
上記の構成により、消音内側ケース31内から排気ガス出口管34を介して排気ガスが排出される。また、消音内側ケース31の内部において、多数の消音孔37から消音材39に排気ガス音(主に高周波帯の音)が吸音される。排気ガス出口管34の出口側から排出される排気ガスの騒音が減衰される。
【0030】
図1及び図5に示す如く、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21の排気ガス移動下流側(右側)の端部にフィルタ側出口フランジ40を溶接する。消音外側ケース32の排気ガス移動上流側(左側)の端部に、消音側フランジ41を溶接する。フィルタ側出口フランジ40と、消音側フランジ41とを、ボルト42及びナット43によって着脱可能に締結している。なお、フィルタ内側ケース20とフィルタ外側ケース21にセンサ接続プラグ44を固着している。センサ接続プラグ44には、図示しない出口側排気ガス圧力センサや出口側排気ガス温度センサ(サーミスタ)等が接続される。
【0031】
次に、図10乃至図14を参照して、後述するトラクタ101に搭載されたディーゼルエンジン70の排気ガス排出径路中に前記DPF1を設けた構造を説明する。図10乃至図14に示す如く、ディーゼルエンジン70のシリンダヘッド72の左側面に、排気マニホールド71が配置されている。ディーゼルエンジン70のシリンダヘッド72の右側面に、吸気マニホールド73が配置されている。シリンダヘッド72は、図示しないエンジン出力軸(クランク軸)とピストンを有するシリンダブロック75に上載されている。シリンダブロック75の前側方に冷却ファン76を設ける。エンジン出力軸74の前端側からVベルト77を介して冷却ファン76に回転力が伝達されるように構成している。
【0032】
なお、シリンダブロック75の後面にフライホイールハウジング(図示省略)を固着し、フライホイールハウジング内にフライホイールを設け、エンジン出力軸の後端側にフライホイールを軸支させ、後述する農作業用のトラクタ101の作動部(車輪、作業用PTO軸)に、フライホイールを介してディーゼルエンジン70の動力を取出すように構成している。
【0033】
図12に示す如く、ディーゼルエンジン70に給気するエアクリーナ88を備える。ディーゼルエンジン70の上面の一側の吸気マニホールド73の上方にエアクリーナ88を配置している。エアクリーナ88に吸気接続管90を介して吸気マニホールド73を連結している。エアクリーナ88は、クリーナ支持脚(図示省略)を介してシリンダヘッド72に取付けられている。即ち、エアクリーナ88によって浄化された空気が、吸気接続管90を介して、吸気マニホールド73に供給される。また、エアクリーナ88は、トラクタ101の前後方向に長い円筒形状に形成されていて、ディーゼルエンジン70の上面側に配置されている。シリンダヘッド72における吸気マニホールド73側は外向きに露出していて、メンテナンス作業をし易い状態になっている。
【0034】
次に、図10乃至図14を参照して、作業車両としてのトラクタ101に前記DPF1を搭載した構造を説明する。図10及び図11に示す如く、キャビン付作業車両としてのトラクタ101は、走行機体102を左右一対の前車輪103と同じく左右一対の後車輪104とで支持し、前記走行機体102の前部に搭載したディーゼルエンジン70にて後車輪104及び前車輪103を駆動することにより、前後進走行するように構成される。この場合、走行機体102の進行方向左側に位置する前後車輪103,104の組と、進行方向右側に位置する前後車輪103,104の組とにより、左右一対の走行部が構成される。
【0035】
図10及び図11に示す如く、エンジン70はボンネット106にて覆われている。また、前記走行機体102の上面にはキャビン107が設置され、該キャビン107の内部には、オペレータが着座する操縦座席108と、該操縦座席108の前方に位置する操向手段としての丸ハンドル形状の操縦ハンドル109が設けられている。操縦座席108に着座したオペレータが操縦ハンドル109を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右前車輪103のかじ取り角(操向角度)が変わるように構成されている。キャビン107の底部には、オペレータが搭乗するためのステップ110が設けられている。
【0036】
図10に示す如く、前記走行機体102は、前バンパ112及び前車軸ケース113を有するエンジンフレーム114と、エンジンフレーム114の後部にボルトの締結にて着脱可能に連結する左右の機体フレーム116とにより構成される。前車輪103は、エンジンフレーム114の外側面から外向きに突出するように装着された前車軸ケース113を介して取付けられている。また、機体フレーム116の後部には、前記エンジン70からの出力を適宜変速して後車輪104(前車輪103)に伝達するためのミッションケース117が連結されている。後車輪104は、前記ミッションケース117に対して、当該ミッションケース117の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース118を介して取付けられている。
【0037】
図10に示す如く、ミッションケース117の後部における上面には、耕耘機等の作業機(図示せず)を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構120が着脱可能に取付けられている。耕耘機等の作業機は、ミッションケース117の後部にロワーリンク121及びトップリンク(図示せず)を介して昇降動可能に連結される。さらに、ミッションケース117の後側面に、前記作業機を駆動するPTO軸123が設けられている。
【0038】
詳細には図示していないが、ディーゼルエンジン70の後面側からエンジン出力軸等を介して、ミッションケース117の前面側にディーゼルエンジン70の回転動力を伝達するように構成している。ディーゼルエンジン70の回転動力をミッションケース117に伝達し、次いで、ミッションケース117の油圧無段変速機や走行副変速ギヤ機構にてディーゼルエンジン70の回転動力を適宜変速して、差動ギヤ機構等を介してミッションケース117から後車輪104にこの駆動力を伝達するように構成している。また、前記走行副変速ギヤ機構にて適宜変速したディーゼルエンジン70の回転を、前車軸ケース113の差動ギヤ機構等を介してミッションケース117から前車輪103に伝達するように構成している。
【0039】
図10乃至図14に示すように、DPF1は、キャビン107の前面に沿って左右方向に長い円筒形状に形成されていて、キャビン107の右側の前面に配置されている。また、排気マニホールド71にDPF1を連通させる排気接続管84を備えている。図12に示す如く、排気マニホールド71を上向きに開口させ、排気マニホールド71に排気接続管84を介してDPF1の左側(長手方向一端側)を連結する。DPF1の右側(長手方向他端側)には、テールパイプ85が連結されている。キャビン107の右側の前面に配置された側部支柱体86に沿わせて下方から上方に向けてテールパイプ85を延長している。
【0040】
即ち、テールパイプ85の排気ガス出口は、キャビン107の最上部の近傍で、右外側方に向けて開口されている。ディーゼルエンジン70の排気ガスは、排気マニホールド71、排気接続管84、DPF1、テールパイプ85の排気ガス出口を介して、キャビン107の右側の前面外側の高い位置に排出される。また、テールパイプ85は、側部支柱体86に締結バンド(図示省略)等を介して着脱可能に固着されている。操縦座席108に座乗したオペレータが前方を視たときに、テールパイプ85が側部支柱体86の影に隠れ、前記オペレータによってテールパイプ85が視認されないように構成している。例えば、ボンネット106にテールパイプ85を起立させた従来構造に比べ、操縦座席108に座乗したオペレータの前方視界がテールパイプ85によって妨げられないから、トラクタ101の操縦性を向上できる。
【0041】
図14に示す如く、走行機体102のうち機体フレーム116の左右側方に左右のステップフレーム125を配置する。機体フレーム116にステップフレーム125の一端側を連結する。機体フレーム116の左右外側方にステップフレーム125の他端側を略水平に突出させている。ステップフレーム125に平らな形状のステップ110を支持している。また、右のステップフレーム125の下面側に補助ステップフレーム126が一体的に連結されている。前記右のステップフレーム125と同様に、機体フレーム116に補助ステップフレーム126の一端側を連結する。機体フレーム116の右外側方に補助ステップフレーム126の他端側を略水平に突出させている。補助ステップフレーム126との連結によって前記右のステップフレーム125の強度を向上させている。
【0042】
図14に示す如く、右のステップフレーム125及び補助ステップフレーム126にそれぞれ溶接する台フレーム127と、DPF1のうち触媒外側ケース5の外周面及び消音外側ケース32の外周面にそれぞれ溶接する二組の支持脚体19とを備える。なお、触媒外側ケース5又は消音外側ケース32に代えて、フィルタ外側ケース21の外周面に支持脚体19を溶接してもよい。ボルト128及びナット129を用いて台フレーム127に支持脚体19を着脱可能に締結している。右のステップフレーム125及び補助ステップフレーム126の前側方に、台フレーム127及び支持脚体19を介して、DPF1を設置している。キャビン107の前面側の下方にDPF1が配置される。即ち、DPF1は、複数の支持脚体19を介してステップフレーム125に連結されている。即ち、キャビン107の高剛性部品であるステップフレーム125の利用にてDPF1を高剛性に支持して、振動等によるDPF1の損傷を防止できる。
【0043】
図10、図12、図14に示す如く、ディーゼルエンジン70を覆うボンネット106を備える構造であって、前車輪103とキャビン107とボンネット106とに囲まれたキャビン107の前面側スペースにDPF1を配置し、キャビン107内のオペレータが操縦座席108から前車輪103の後側を目視可能に構成している。即ち、図10に示す如く、操縦座席108に座乗したオペレータから、DPF1越しに、前車輪103の後側の接地部が見えるように、オペレータの目線Sが形成されるように構成している。
【0044】
したがって、操縦座席108に座乗したオペレータの前方視界がDPF1によって遮られない。例えばトラクタ101の対地作業において、圃場に形成された作物育成用のマルチ畝や隣接する既耕地等と前車輪103との相対間隔を確認しながら、前進移動させて農作業を実行できる。また、例えば歩み板と前車輪103との相対間隔を確認しながら、例えば運搬用トラックの荷台にトラクタ103を積み降す作業や、農作業用の圃場にトラクタ103を出入させる作業を実行できる。
【0045】
図12、図14に示す如く、ディーゼルエンジン70の一側面(右側面)に円筒形状のDPF1の一端側(左側端部)を対峙させている。ディーゼルエンジン70の排気マニホールド71に、排気接続管84を介して、DPF1の一端側(左側端部)を連通接続可能に構成している。一方、キャビンフレームとしてのステップフレーム125に沿わせて左右向きにDPF1の他端側(右側)を延長させ、キャビン107の側部支柱体86に沿わせたテールパイプ85にDPF1の他端側を連通接続可能に構成している。したがって、ディーゼルエンジン70やテールパイプ85等にDPF1を簡単に連結できるものでありながら、ステップフレーム125を利用して、DPF1やテールパイプ85をコンパクトに設置できる。また、ステップフレーム125やキャビン107の側部支柱体86にDPF1やテールパイプ85を沿わせることによって、DPF1やテールパイプ85によってオペレータの視界が遮られるのを防止できる。
【0046】
図12、図14に示す如く、ステップフレーム125を下方に延長してフィルタ支持台としての台フレーム127を形成し、台フレーム127に円筒形状のDPF1を横方向に長い横向き姿勢に設置し、ディーゼルエンジン70に近いDPF1の一端側(左側部)にディーゼルエンジン70から排気ガスを送出可能に構成する一方、ディーゼルエンジン70から離れたDPF1の他端側(右側部)にテールパイプ85を連結し、キャビン107の側部支柱体86に沿わせてテールパイプ85を上方に向けて延長させている。したがって、DPF1とテールパイプ85を簡単に連結できるものでありながら、ステップフレーム125を利用して、DPF1やテールパイプ85をコンパクトに且つ高剛性に設置できる。また、ステップフレーム125やキャビン107の側部支柱体86にDPF1やテールパイプ85を沿わせることによって、DPF1やテールパイプ85によってオペレータの前方視界が遮られるのを防止できる。
【0047】
次に、図15乃至図17を参照して、作業車両としてのトラクタ101に前記DPF1を搭載した第2実施形態を説明する。図15乃至図17に示す如く、DPF1は、キャビン107の前面に沿って上下方向に長い縦型の円筒形状に形成されていて、キャビン107の右側の前面とボンネット106の右側の後部との接合隅部に縦型に配置されている。また、図17に示す如く、排気マニホールド71に排気接続管84を介してDPF1の下端側(長手方向一端側)を連結する。DPF1の上端側(長手方向他端側)には、テールパイプ85が連結されている。キャビン107の右側の前面に配置された側部支柱体86に沿わせて下方から上方に向けてテールパイプ85を延長している。
【0048】
キャビン107の右側の前面外側に複数の締結バンド135を介してDPF1を着脱可能に固着している。なお、締結バンド135に代え、図14に示す支持脚体19や台フレーム127等を用いて、キャビン107の右側の前面外側にDPF1を着脱可能に固着してもよい。
【0049】
図10乃至図17に示す如く、ディーゼルエンジン70と、ディーゼルエンジン70の排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとしてのDPF1とを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗するキャビン107の前面側の下方にDPF1を配置している。したがって、キャビン107の下方側の余剰スペースを利用して、DPF1を高剛性且つコンパクトに組付けることができる。DPF1の着脱又はメンテナンス等を簡単に実行できる。また、例えばディーゼルエンジン70を覆うためのボンネット106等を大型化してDPF1の設置スペースを確保する必要もない。
【0050】
図10乃至図17に示す如く、キャビン107のキャビンフレームとしてのステップフレーム125の前面側にDPF1を着脱可能に設置している。したがって、キャビン107内部のペダル等に規制されることなく、簡単な支持構造によって、ステップフレーム125にDPF1を高剛性且つコンパクトに組付けることができる。
【0051】
図10乃至図17に示す如く、ディーゼルエンジン70を覆うボンネット106と前車輪103とキャビン107とに囲まれたキャビン107の前面側スペースにDPF1を配置し、キャビン107内のオペレータが操縦座席108から前車輪103の後側を目視可能に構成している。したがって、DPF1によってオペレータの視界が遮られない。例えばトラクタ101の対地作業において、作物用のマルチ畝等と前車輪103との相対間隔を確認しながら、前進移動させて農作業を実行できる。また、例えば歩み板と前車輪103との相対間隔を確認しながら、運搬用トラックの荷台にトラクタ101を積み降す作業や、農作業用の圃場にトラクタ101を出入させる作業を実行できる。
【0052】
図15乃至図17に示す如く、DPF1の外観形状を縦方向に長い円筒形状に形成し、キャビン107とボンネット106の一側で、キャビン107とボンネット106の接合位置にDPF1を縦方向に長い縦向き姿勢に設置したものであるから、キャビン107の構成フレーム等の高剛性部材を利用して、ボンネット106に沿わせてDPF1をコンパクトに設置できる。また、キャビン107の構成フレームやボンネット106にDPF1を沿わせ、キャビン107の側部支柱体86にテールパイプ85を沿わせることによって、DPF1やテールパイプ85によってオペレータの視界が遮られるのを防止できる。
【0053】
上記の記載並びに図11、図12及び図13から明らかなように、エンジン70と、エンジン70の排気ガスを浄化するガス浄化フィルタ1とを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗する走行機体102としてのステップフレーム125の前側に支持脚体19を配置し、前記支持脚体19に前記ガス浄化フィルタ1を着脱可能に設置したものであるから、走行機体フレーム116の余剰スペースを利用して、ガス浄化フィルタ1を高剛性且つコンパクトに組付けることができる。ガス浄化フィルタ1の着脱又はメンテナンス等を簡単に実行できる。
【0054】
上記の記載並びに図11、図12〜図17から明らかなように、前記ガス浄化フィルタ1のケース4,20は、左右方向に長い横型または上下方向に長い縦型の円筒形状に形成されている構造であって、前記走行機体102のうち機体フレーム116として設けるステップフレーム125の前側に支持脚体19を配置し、前記支持脚体19に前記ガス浄化フィルタを横型または縦型に設置したものであるから、横型支持構造では、支持脚体19を利用した簡単な支持構造によって、ペダル等の他の構成部品に規制されることなく、ステップフレーム125にガス浄化フィルタ1を高剛性且つコンパクトに組付けることができる。また、縦型支持構造では、ボンネット106に沿わせてガス浄化フィルタ1を縦型にコンパクトに設置できる。ガス浄化フィルタ1によってオペレータの視界が遮られない。例えばトラクタ等の作業車両の対地作業において、作物用のマルチ畝等と前車輪103との相対間隔を確認しながら、前進移動させて農作業を実行できる。また、例えば歩み板と前車輪103との相対間隔を確認しながら、運搬用トラックの荷台にトラクタ等の作業車両を積み降す作業や、農作業用の圃場にトラクタ等を出入させる作業を実行できる。
【符号の説明】
【0055】
1 DPF(ディーゼルパティキュレートフィルタ)(ガス浄化フィルタ)
19 支持脚体
70 ディーゼルエンジン
86 側部支柱体
102 走行機体
106 ボンネット
125 ステップフレーム(走行機体フレーム)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、エンジンの排気ガスを浄化するガス浄化フィルタとを備えた作業車両搭載用のエンジン装置において、オペレータが搭乗する走行機体としてのステップフレームの前側に支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを着脱可能に設置したことを特徴とする作業車両搭載用エンジン装置。
【請求項2】
前記ガス浄化フィルタのケースは、左右方向に長い横型または上下方向に長い縦型の円筒形状に形成されている構造であって、前記走行機体のうち機体フレームとして設けるステップフレームの前側に支持脚体を配置し、前記支持脚体に前記ガス浄化フィルタを横型または縦型に設置したことを特徴とする請求項1に記載の作業車両搭載用エンジン装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−36469(P2013−36469A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−212421(P2012−212421)
【出願日】平成24年9月26日(2012.9.26)
【分割の表示】特願2008−289743(P2008−289743)の分割
【原出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】