説明

作業車両

【課題】トラックフレーム17の軽量化を図る。
【解決手段】本願発明の作業車両10は、エンジン8を搭載した走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けたトラックフレーム17と、前記トラックフレーム17に駆動輪体16及び従動輪体21,23を介して装着された走行クローラ25とを備える。前記トラックフレーム17を、広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体123を締結部材127,129,131,133にて着脱可能に締結した構造にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、エンジン等を搭載した走行機体の後部に左右の走行クローラを装設するトラクタといった作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作業車両における走行機体の後部に、左右の走行クローラを装設すること、つまり、走行機体の前部に左右の前車輪を装設し、走行機体の後部に左右の走行クローラを装設することは、先行技術としての特許文献1〜3等に記載されている。
【0003】
先行技術は、走行機体の後車軸ケースに後車軸を軸支して、後車軸に駆動輪体を取付ける一方、後車軸ケースよりも下方の部位に前後方向に延びるトラックフレームを配設して、トラックフレームに走行クローラを装着した構造であって、トラックフレームの前後中途部を走行機体側(例えば後車軸ケース等)に、後車軸より適宜距離だけ下方の部位に配設した1本の揺動支点軸にて回動自在に枢着し、トラックフレームをその前部及び後部が互いに逆方向に上下動するように構成している。そして、トラックフレームの前端側に設けた前従動輪体と、後端側に設けた後従動輪体と、駆動輪体とにわたって略三角形状に走行クローラを巻掛け、駆動輪体にて走行クローラを回転駆動させることによって、走行機体を前進移動又は後進移動させるという構成にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−45051号公報
【特許文献2】特開2006−96199号公報
【特許文献3】特開2004−217054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、先行技術の構成では、トラックフレームが角パイプ製の重量物であり且つトラックフレームの走行機体への支持が、揺動支点軸による一点支持であるから、揺動支点軸部に荷重が集中し易く、揺動支点軸部の変形等を招来して作動不良を発生させるおそれがあった。また、前進移動時又は後進移動時に、圃場の畦等の凸部を乗り越えるに際して、揺動支点軸部を中心として走行クローラが前上り又は前下りに傾斜し、走行クローラの接地面の前後傾斜角度が大きくなり易いから、走行機体の対地高さも変化し易く、操縦座席に搭乗したオペレータの良好な乗り心地を維持できないという問題もあった。
【0006】
そこで、本願発明は、上記のような現状を検討して改善を施した作業車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の下部に設けたトラックフレームと、前記トラックフレームに駆動輪体及び従動輪体を介して装着された走行クローラとを備えている作業車両において、前記トラックフレームは、広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体を締結部材にて着脱可能に締結した構造になっているというものである。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載した作業車両において、前記走行クローラ接地用の転動輪を回転可能に軸支する転動輪支持体の取付け部が前記一対の鋼板体にて挟持されているというものである。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載した作業車両において、前記走行クローラの外れ防止及び芯金体押さえ用のクローラガイド体が前記一対の鋼板体にて挟持されているというものである。
【0010】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載した作業車両において、前記従動輪体は前後に一対あり、前記前従動輪体を支持する伸縮可能なテンション調節機構の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されているというものである。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載した作業車両において、前記後従動輪体を軸支する軸支部材の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されているというものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によると、エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の下部に設けたトラックフレームと、前記トラックフレームに駆動輪体及び従動輪体を介して装着された走行クローラとを備えている作業車両において、前記トラックフレームは、広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体を締結部材にて着脱可能に締結した構造になっているから、従来のような角パイプ材製のトラックフレームに比べて大幅に軽量化を図れる。また、前記走行クローラの組付け作業性を向上できる。しかも、前記トラックフレームが広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体からなるので、走行時に泥土が前記走行クローラの左右に抜けにくく、横滑り防止に効果を発揮できる。
【0013】
請求項2の発明によると、前記走行クローラ接地用の転動輪を回転可能に軸支する転動輪支持体の取付け部が前記一対の鋼板体にて挟持されているから、前記転動輪支持体の前記取付け部を前記トラックフレームの強度メンバーに利用でき、前記トラックフレームの剛性を高められる。前記トラックフレームに対する前記転動輪の組付け作業性もよい。
【0014】
請求項3の発明によると、前記走行クローラの外れ防止及び芯金体押さえ用のクローラガイド体が前記一対の鋼板体にて挟持されているから、請求項2の場合と同様に、前記クローラガイド体を前記トラックフレームの強度メンバーに利用でき、前記トラックフレームの剛性向上に寄与できる。
【0015】
請求項4の発明によると、前記従動輪体は前後に一対あり、前記前従動輪体を支持する伸縮可能なテンション調節機構の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されているから、この場合も、請求項2や請求項3の場合と同様に、前記テンション調節機構の基端部を前記トラックフレームの強度メンバーに利用でき、前記トラックフレームの剛性向上に寄与できる。
【0016】
請求項5の発明によると、前記後従動輪体を軸支する軸支部材の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されているから、この場合も、請求項2〜4の場合と同様に、前記軸支部材の基端部を前記トラックフレームの強度メンバーに利用でき、前記トラックフレームの剛性向上に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態におけるトラクタの側面図である。
【図2】トラクタの平面図である。
【図3】後クローラ走行装置の拡大側面図である。
【図4】トラックフレーム及びリンク支持体を前方から見た斜視図である。
【図5】トラックフレームの分離斜視図である。
【図6】リンク支持体の分離斜視図である。
【図7】後クローラ走行装置の一部切り欠き背面図である。
【図8】後クローラ走行装置の要部切り欠き背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願発明を具現化した実施形態を、作業車両の一例であるトラクタに適用した場合の図面に基づき説明する。図1〜図3に示す如く、実施形態のトラクタ10は、走行機体11と、走行機体11の前部を支持する左右一対の前車輪12と、前記走行機体11の後部を支持する左右一対の後クローラ走行装置13とを備えている。前記走行機体11には、エンジン8を搭載すると共に操縦座席9を設けている。
【0019】
図1〜図3に示す如く、前記走行機体11の後部にミッションケース40を搭載している。ミッションケース40の左右両側に左右の後車軸ケース14を設けている。走行機体11に後車軸ケース14を介して後クローラ走行装置13を着脱可能に取付ける。図7及び図8に示す如く、後車軸ケース14内に後車軸15の一端側を軸支し、後車軸15の他端側を後車軸ケース14から左右外向きに突出させる。当該後車軸15の他端側に駆動輪体16を取付けている。一方、前記後車軸ケース14よりも下方に、前後方向に延びるトラックフレーム17を配設する。前記後車軸ケース14にリンク支持体18を着脱可能に締結固定する。前記後車軸15よりも前側に配設する前リンク部材19と、前記後車軸15よりも後側に配設する後リンク部材20とを備える。リンク支持体18に各リンク部材19,20を介してトラックフレーム17を前後移動可能に連結している。
【0020】
図1〜図3に示す如く、前記トラックフレーム17の前端側にテンション調節機構22を介して前従動輪体21を取付ける。実施形態では、テンション調節機構22の前端側を構成する二股状前アーム121に、前従動輪体21が回転可能に軸支されている。トラックフレーム17の後端側には、軸支部材としての二股状後アーム122を介して後従動輪体23を取付ける。実施形態の後従動輪体23は、二股状後アーム122の後端側に回転可能に軸支されている。前記駆動輪体16と、前記前従動輪体21と、前記後従動輪体23との三者には、履帯としての合成ゴム製の走行クローラ25を略三角形状に巻き掛けている。前記駆動輪体16(後車軸15)を適宜速度で正回転又は逆回転させ、走行クローラ25を正回転又は逆回転駆動させることによって、走行機体11が前進走行又は後退走行するように構成している。
【0021】
なお、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を備える。前記トラックフレーム17に前記複数の転動輪26を回転自在に設けている。クローラガイド体41は、走行クローラ25の左右方向への外れ防止、及び、走行クローラ25に等間隔に埋設された複数の芯金体95(図7及び図8参照)を押さえるためのものであり、トラックフレーム17に締結固定されている。前記走行クローラ25の内周面のうち前従動輪体21と後従動輪体23との間の内周面(走行クローラ25の接地側の内周面)に、複数の転動輪26及びクローラガイド体41を接触させる。クローラガイド体41は側面視逆T字状に形成されている。クローラガイド体41の下側中央部、すなわち、クローラガイド体41において前側の転動輪26と中央の転動輪26との間の部位は上向きに凹んでいて、走行クローラ25の接地側との接触を回避している。
【0022】
図3及び図4に示す如く、前記リンク支持体18に前後の上端枢着軸27,28を設ける。前記後車軸15と平行に前後の上端枢着軸27,28を延設する。前上端枢着軸27に前リンク部材19の上端側ボス部を回転自在に軸支する。後上端枢着軸28に後リンク部材20の上端側ボス部を回転自在に軸支する。前記トラックフレーム17側に前後の下端枢着軸30,31を設ける。前リンク部材19の下端側が前記トラックフレーム17に前下端枢着軸30にて回転自在に連結される。トラックフレーム17の前部側は、前リンク部材19及び前下端枢着軸30によって片持ち梁状に支持されている。前上端枢着軸26よりも前下端枢着軸30を前側に位置させ、前リンク部材19を前方斜め下向きに傾斜させて支持している。
【0023】
また、図4〜図6に示す如く、二股状後アーム122に軸支された後従動輪体23の回転支軸、すなわち後下端枢着軸31は、後従動輪体23から左右中央側(左右内側)に突出している。当該後下端枢着軸31の突出部が後リンク部材20の下端側に回転可能に差し込み装着されている。後従動輪体23は、後リンク部材20及び後下端枢着軸31によって片持ち梁状に支持されている。後上端枢着軸28よりも後下端枢着軸31を後側に位置させ、後リンク部材20を後方斜め下向きに傾斜させて支持している。なお、後下端枢着軸31を後従動輪体23から左右両側に突出させ、当該左右両突出部に後リンク部材20の下端側を回動可能に軸支して、後従動輪体23を両持ち梁状に支持してもよい。この場合、後従動輪体23を後リンク部材20にてより安定的に支持することが可能になる。
【0024】
従って、前後のリンク部材19,20は、前記トラクタ10の側面視(図3参照)において、末広がりのハ字状の姿勢になっている。なお、走行クローラ25は、トラクタ10の側面視において、前記後車軸15を通る鉛直線から前従動輪体21までの距離が、前記鉛直線から後従動輪体23までの距離よりも大きい略三角形状に張設される。
【0025】
上記の構成において、トラクタ10を前進走行させた場合、走行クローラ25が地面から前進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が前方向に移動し、走行クローラ25が前上り姿勢に傾斜する。すなわち、トラックフレーム17が走行機体11に対して前方向に移動するとき、前リンク部材19は、前上端枢着軸27を支点として水平面に対する傾斜角度が小さくなる倒れ方向に回動する。また、後リンク部材20は、後上端枢着軸28を支点として水平面に対する傾斜角度が大きくなる起立方向に回動する。その結果、トラクタ10(走行機体11)は、走行クローラ25を前上りに傾斜させながら前進移動する。
【0026】
一方、トラクタ10を後進走行させた場合、走行クローラ25が地面から後進反力を受けることによって、走行機体11に対してトラックフレーム17が後方向に移動し、走行クローラ25が前下り姿勢に傾斜する。すなわち、トラックフレーム17が走行機体11に対して後方向に移動するとき、前上端枢着軸27を支点として水平面に対する傾斜角度が大きくなるように、前リンク部材19は起立する方向に回動する。また、後上端枢着軸28を支点として水平面に対する傾斜角度が小さくなるように、後リンク部材20は横倒れする方向に回動する。その結果、トラクタ10(走行機体11)は、走行クローラ25を前下りに傾斜させながら後進移動する。
【0027】
なお、旋回内側の走行クローラ25の駆動を中断して左方向又は右方向に旋回移動するにおいて、前進走行の場合は旋回内側の走行クローラ25が前下りに傾斜し、後進走行の場合は旋回内側の走行クローラ25が前上りに傾斜することになる。
【0028】
図4及び図6に示すように、前後両リンク部材19,20の上端側を回動可能に支持するリンク支持体18には、各リンク部材19,20の前後回動範囲を規制するストッパーとしての規制ピン34a,34b,35a,35bが設けられている。前上端枢着軸27を支点として前リンク部材19の下端側が前後回動する範囲を、第1前規制ピン34a及び第1後規制ピン34bにて設定している。後上端枢着軸28を支点として後リンク部材20の下端側が前後回動する範囲を第2前規制ピン35a及び第2後規制ピン35bにて設定している。走行機体11に対する走行クローラ25の前後移動が前後の規制ピン34a,34b,35a,35bにて制限される。
【0029】
走行機体11が前下りになるようにピッチング動作(前傾動作)をした場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面に対する傾斜角度が小さくなる横倒れ方向に回動する。一方、後リンク部材20は、トラックフレーム17に対して、後下端枢着軸31を支点として水平面に対する傾斜角度が大きくなる起立方向に回動する。その結果、走行クローラ25は走行機体11に対して前上り姿勢に支持される。
【0030】
また、走行機体11が前上りになるようにピッチング動作(後傾動作)をした場合、前リンク部材19は、前下端枢着軸30を支点として水平面に対する傾斜角度が大きくなる起立方向に回動する。一方、後リンク部材20は、下端枢着軸31を支点として水平面に対する傾斜角度が小さくなる倒れ方向に回動する。その結果、走行クローラ25は走行機体11に対して前下り姿勢に支持される。
【0031】
ところで、リンク支持体18、前リンク部材19、後リンク部材20及びトラックフレーム17によって構成される四節リンク機構において、その一つの節であるトラックフレーム17がその長手方向に運動する際の「瞬間中心」は、前上端枢着軸27及び前下端枢着軸30を結ぶ前リンク部材19の仮想延長線と、後上端枢着軸28及び後下端枢着軸31を結ぶ後リンク部材20の仮想延長線との交点に位置する。トラックフレーム17は前記「瞬間中心」を中心にしてその長手方向に運動する。
【0032】
前後のリンク部材19,20は末広がりのハ字状に配設されているから、前記「瞬間中心」は、走行機体11が前下りにピッチング動作をしたときに走行機体11の後方側に移動し、走行機体11が前上りにピッチング動作をしたときに走行機体11の前方側に移動する。前記「瞬間中心」は、後車軸15の高さに近似した高さ位置に保持される。このため、走行機体11がピッチングする際に、トラックフレーム17に対して走行機体11が前後移動する距離を、前記先行技術の場合の前後移動距離に比べて大幅に縮小できる。
【0033】
さて、図1及び図2に示す如く、トラクタ10は、ロータリ耕耘爪2を有するロータリ耕耘作業機1を備える。前記走行機体11の後部から後方側にロワーリンク3及びトップリンク4(三点リンク機構)を突出させ、ロワーリンク3及びトップリンク4にロータリ耕耘作業機1を装着する。前記走行機体11の後部(ミッションケース40上部)に油圧リフト機構5を設ける。油圧リフト機構5のリフトアーム6にリフトロッド7を介してロワーリンク3の前後中間部を連結する。油圧リフト機構5の操作にてロータリ耕耘作業機1を昇降動させる一方、ロータリ耕耘爪2の回転駆動にて圃場の耕土を耕耘するように構成している。なお、ロータリ耕耘作業機1に代えて、例えばプラウといった各種作業機をトラクタ10に装着できることは言うまでもない。
【0034】
次に、図4〜図8を参照しながら、トラックフレーム17の詳細構造を説明する。トラックフレーム17は、広幅面同士を対峙させた平板形状で左右一対の鋼板体123を有している。両鋼板体123は左右で同一形状に形成されている。両鋼板体123は、厚み方向が後車軸15と平行な左右方向になるようにして、広幅面同士を左右方向に適宜間隔で対峙させている。このため、走行クローラ25における内周下部側の比較的広範囲を鋼板体123の広幅面で覆っている(塞いでいる、図3参照)。
【0035】
両鋼板体123の間の下部側には、各転動輪26を回転可能に軸支する転動輪支持体124が配置されている。転動輪支持体124から左右両側に転輪軸125を突出させている。左右両突出端側に転動輪26がそれぞれ連結されている。実施形態では、転動輪支持体124が前後に三つ並べて設けられている。従って、転動輪26は二つ一組の構成で計三組(六個)ある。各転動輪支持体124の上部側に形成された取付け部126を、両鋼板体123の間に位置させている。各転動輪支持体124の取付け部126を両鋼板体123にて挟持した状態で、両鋼板体123に取付け部126を両持ち状にボルト127締結している。
【0036】
前側の転動輪支持体124と中央の転動輪支持体124との間に、クローラガイド体41が配置されている。クローラガイド体41は側面視逆T字状に形成されている。クローラガイド体41の上部側128は両鋼板体123の間に位置している。前記上部側128を両鋼板体123にて挟持した状態で、両鋼板体123に前記上部側128を両持ち状にボルト129締結している。
【0037】
また、両鋼板体123の間の前部上側には、テンション調節機構22の基端部(後方下面側)に設けられた前台座ブラケット130が配置されている。前台座ブラケット130を両鋼板体123にて挟持した状態で、両鋼板体123に前台座ブラケット130を両持ち状にボルト131締結することによって、トラックフレーム17の前端側にテンション調節機構22を介して前従動輪体21が取り付けられている。
【0038】
一方、両鋼板体123の間の後端側には、軸支部材である二股状後アーム122の基端部(前端側)に設けられた後台座ブラケット132が配置されている。後台座ブラケット132を両鋼板体123にて挟持した状態で、両鋼板体123に後台座ブラケット132を両持ち状にボルト133締結することによって、トラックフレーム17の後端側に二股状後アーム122を介して後従動輪体23が取り付けられている。
【0039】
従って、両鋼板体123にて挟持される各部材、すなわち、転動輪支持体124の取付け部126、クローラガイド体41の上部側128、前後の台座ブラケット130,132は、両鋼板体123の広幅面同士を左右方向に適宜間隔で対峙させるスペーサの役割を担っている。また、これら各部材126,128,130,132は、トラックフレーム17の強度メンバーとしても機能している。前述の各ボルト127,129,131,133が請求項に記載した締結部材を構成している。
【0040】
両鋼板体123の間のうちクローラガイド体41の上部側128よりも上方には、前下端枢着軸30に被嵌させる軸受部材としての枢着軸受筒体134が配置されている。枢着軸受筒体134の左右両端部はそれぞれ左右の鋼板体123を貫通している。枢着軸受筒体134の外周側にフランジ部135が溶接固定されている。左右外側の鋼板体123の内向き広幅面にフランジ部135を当接させた状態で、左右外側の鋼板体123にフランジ部135を片持ち状にボルト136締結している。両鋼板体123及び枢着軸受筒体134に前下端枢着軸30を貫通させていて、前下端枢着軸30が枢着軸受筒体134に差し込み固定されている。
【0041】
次に、図4〜図8を参照しながら、後車軸ケース14に対するリンク支持体18の取付け構造を説明する。図7及び図8に示すように、リンク支持体18は、後車軸ケース14の左右最外側部に取り付けられていて、後車軸ケース14を前後から挟み込む平板状鋼板製の第1及び第2ブラケット体51,52と、平板状鋼板製の第3ブラケット体53とを有している。第1及び第2ブラケット体51,52は、後車軸ケース14を前後から挟持した状態で、複数のボルト137(実施形態では4本)にて後車軸ケース14に共締めされている。第1ブラケット体51の前部及び上部側は、後車軸ケース14に直接ボルト159締結されている。
【0042】
第1ブラケット体51と第2ブラケット体52とは、ボルト137で共締めされるだけでなく、第2後規制ピン35bの一端側に形成されたネジ部を貫通させ、当該ネジ部をナット(図示省略)締結することによっても互いに挟持固定されている。第2後規制ピン35bの他端側に形成されたネジ部は第3ブラケット体53を貫通していて、ナット140締結されている。すなわち、第2後規制ピン35bにおける両端のネジ部が、第1及び第2ブラケット体51,52と第3ブラケット体53とに、両持ち状にナット140締結されている。
【0043】
また同様にして、第1前規制ピン34aにおける両端のネジ部は、第1及び第2ブラケット体51,52と第3ブラケット体53とに両持ち状にナット138締結され、第1後規制ピン34bにおける両端のネジ部も、第1及び第2ブラケット体51,52と第3ブラケット体53とに両持ち状にナット139締結されている。第3ブラケット体53は後車軸15の下方に位置していて、その上部側は前後一対のL字ブラケット141を介して後車軸ケース14にボルト142締結されている。
【0044】
前後のリンク部材19,20の上端側ボス部に前後の上端枢着軸27,28を貫通させた状態で、前後の上端枢着軸27,28の一端側を第1ブラケット体51に貫通支持させている。そして、前後の上端枢着軸27,28の他端側が、軸押え板体143を介して第3ブラケット体53に片持ち状にボルト144締結されている。図7及び図8から明らかなように、前後のリンク部材19,20は、走行機体11の進行方向から見てその形態の半分以上が走行クローラ25の左右幅内に収められている。実施形態では、各リンク部材19,20の上端側ボス部が3分の1ほど走行クローラ25から左右中央側にはみ出しているが、各リンク部材19,20の下端側(ボス部)は走行クローラ25の左右幅内に収まっている。
【0045】
なお、第1ブラケット体51の上部側には座板体145が溶接固定されている。座板体145は後車軸ケース14の上面側に被さっていて、防振ゴムを有する防振体146がボルト締結されている。走行機体11の骨組を構成するキャビンフレーム147(図3、図7及び図8参照)は、防振体146を介して座板体145に防振支持される。
【0046】
さて、図8に詳細に示すように、後上端枢着軸28を支点とした後リンク部材20の前方回動を規制する第2前規制ピン35aは、リンク支持体18からミッションケース40に届くまで左右横長の棒状に形成されている。そして、第2前規制ピン35aは、第1及び第3ブラケット体51,53を貫通した状態で、ミッションケース40の側面後部側に形成された側部挿通穴148に差し込まれている。
【0047】
この場合、ミッションケース40の側部挿通穴148には、第2前規制ピン35aの一端側に被嵌させるボス筒体149が挿入固定されている。ボス筒体149の外周側に溶接固定されたフランジ部150をミッションケース40の側面後部側に当接させ、当該フランジ部150をミッションケース40にボルト151締結している。ミッションケース40に固定されたボス筒体149に第2前規制ピン35aの一端側が差し込まれている。第2前規制ピン35aの長手中途部は、第1ブラケット体51に溶接固定された支持筒体152を貫通している。
【0048】
第3ブラケット体53の外側面側には、コ字状の係合ブラケット153が溶接固定されている。第2前規制ピン35aの他端側は、第3ブラケット体53と係合ブラケット153の垂直板部とを横向きに貫通している。第2前規制ピン35aにおいて係合ブラケット153の垂直板部を突き抜けた他端側の部分と、係合ブラケット153の上下水平板部とに、縦向きの抜け止めピン154が差し込み固定されている。従って、第2前規制ピン35aは、第1及び第3ブラケット体51,53とミッションケース40の側部挿通穴148とに抜き差し可能に支持され、抜け止めピン154にて回転不能で且つ抜け不能に保持される。
【0049】
第2前規制ピン35aのうちボス筒体149と支持筒体152との間には、スペーサ筒体155が被嵌されている。第2前規制ピン35aにおけるボス筒体149とスペーサ筒体155との間に、ロワーリンク3の基端側が回動可能に軸支されている。また、第2前規制ピン35aにおけるスペーサ筒体155と支持筒体152との間に、振れ止めブラケット体156が回動可能に軸支されている。振れ止めブラケット体156とロワーリンクとは、ロータリ耕耘作業機1(左右のロワーリンク3)を必要以上に左右揺動するのを防止するスタビライザとしての左右のターンバックル式チェックチェン体45を介して連結されている。ロワーリンク3の長手中途部にチェックチェン体45の一端側をピン157連結し、振れ止めブラケット体156にチェックチェン体45の他端側を着脱可能にピン158連結している。
【0050】
ロワーリンク3やロータリ耕耘作業機1をトラクタ10から取外したい場合は、リフトロッド7との連結を解除すると共に、抜け止めピン154を外してから第2前規制ピン35aを引き抜けば、ロワーリンク3をチェックチェン体45ごと取外しできる。このように、後上端枢着軸28を支点とした後リンク部材20の前方回動を規制する第2前規制ピン35aをロワーリンク3取付け用の部材に共用するから、ロワーリンク3の取付け支持構造が簡略化されることになり、ロワーリンク3ひいては各種作業機の着脱作業性が向上すると共に、部品点数を少なくできてコスト抑制に寄与する。すなわち、第2前規制ピン35aがロワーリンク取付けピンに相当する。
【0051】
以上の構成によると、エンジン8を搭載した走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けたトラックフレーム17と、前記トラックフレーム17に駆動輪体16及び従動輪体21,23を介して装着された走行クローラ25とを備えている作業車両10において、前記トラックフレーム17を、広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体123を締結部材127,129,131,133にて着脱可能に締結した構造にしたから、従来のような角パイプ材製のトラックフレームに比べて大幅に軽量化を図れる。また、前記走行クローラ25の組付け作業性を向上できる。しかも、前記トラックフレーム17が広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体123からなるので、走行時に泥土が前記走行クローラ25の左右に抜けにくく、横滑り防止に効果を発揮できる。
【0052】
実施形態では、前記走行クローラ25接地用の転動輪26を回転可能に軸支する転動輪支持体124の取付け部126が前記一対の鋼板体123にて挟持されているから、前記転動輪支持体124の前記取付け部126を前記トラックフレーム17の強度メンバーに利用でき、前記トラックフレーム17の剛性を高められる。前記トラックフレーム17に対する前記転動輪26の組付け作業性もよい。
【0053】
更に、前記走行クローラ25の外れ防止及び芯金体押さえ用のクローラガイド体41が前記一対の鋼板体123にて挟持されているから、前記転動輪支持体124の前記取付け部126と同様に、前記クローラガイド体41を前記トラックフレーム17の強度メンバーに利用でき、前記トラックフレーム17の剛性向上に寄与できる。
【0054】
また、前記従動輪体21,23は前後に一対あり、前記前従動輪体21を支持する伸縮可能なテンション調節機構22の基端部(前台座ブラケット130)が前記一対の鋼板体123にて挟持されているから、この場合も、前記転動輪支持体124の前記取付け部126や前記クローラガイド体41と同様に、前記テンション調節機構22の基端部(前台座ブラケット130)を前記トラックフレーム17の強度メンバーに利用でき、前記トラックフレーム17の剛性向上に寄与できる。
【0055】
その上、前記後従動輪体23を軸支する軸支部材(二股状後アーム122)の基端部(後台座ブラケット132)が前記一対の鋼板体123にて挟持されているから、この場合も、前記転動輪支持体124の前記取付け部126、前記クローラガイド体41及び前記テンション調節機構22の基端部(前台座ブラケット130)と同様に、前記軸支部材(二股状後アーム122)の基端部(後台座ブラケット132)を前記トラックフレーム17の強度メンバーに利用でき、前記トラックフレーム17の剛性向上に寄与できる。
【0056】
実施形態では、エンジン8を搭載した走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けたトラックフレーム17と、前記トラックフレーム17に駆動輪体16及び従動輪体21,23を介して装着された走行クローラ25とを備えている作業車両10において、前記駆動輪体16に回転動力を伝達する後車軸ケース14に、リンク支持体18が取り付けられており、前記トラックフレーム17は、前後一対のリンク部材19,20を介して、前記リンク支持体18に前後揺動可能に連結されている一方、前記従動輪体21,23は前後に一対あり、前記後従動輪体23の回転支軸(後下端枢着軸31)に前記後リンク部材20の下端側が回動可能に軸支されているから、前記後従動輪体23の前記回転支軸(後下端枢着軸31)を前記後リンク部材20の下側の支点として共用でき、前記トラックフレーム17と前記後リンク部材20との連結支持構造、ひいては、前記トラックフレーム17と前記走行機体11との連結支持構造の簡素化、軽量化及び部品点数の削減を図れる。
【0057】
また、前記回転支軸(後下端枢着軸31)は前記後従動輪体23から左右中央側に突出しており、当該突出部に前記後リンク部材20の下端側を回動可能に軸支して、前記後従動輪体23を片持ち梁状に支持しているから、前記後従動輪体23と前記後リンク部材20との連結支持構造の簡素化、及び、組付け作業性向上の点で効果的である。
【0058】
更に、前記前リンク部材19の下側の支点に対する軸受部材(枢着軸受筒体134)が前記一対の鋼板体123にて挟持されているから、前記軸受部材(枢着軸受筒体134)を前記トラックフレーム17の強度メンバーに利用でき、この点でも、前記トラックフレーム17の剛性向上に寄与できる。
【0059】
実施形態では、エンジン8を搭載した走行機体11と、前記走行機体11の下部に設けたトラックフレーム17と、前記トラックフレーム17に駆動輪体16及び従動輪体21,23を介して装着された走行クローラ25とを備えている作業車両10において、前記駆動輪体16に回転動力を伝達する後車軸ケース14に、リンク支持体18が取り付けられており、前記トラックフレーム17は、前後一対のリンク部材19,20を介して、前記リンク支持体18に前後揺動可能に連結されており、前記リンク支持体18は前記後車軸ケース14の左右最外側部に取り付けられているから、前記走行クローラ25から前記前後のリンク部材19,20が左右中央側に出っ張る出代を少なくできる。前記前後のリンク部材19,20への泥土の付着を抑制して、当該泥土が前後揺動する前記前後のリンク部材19,20周辺の部材に干渉するといった不具合を少なくできる。
【0060】
特に実施形態における前記前後のリンク部材19,20は、前記走行機体11の進行方向から見てその形態の半分以上が前記走行クローラ25の左右幅内に収められているから、例えばトラクタ10の畝跨ぎ作業時に、畝や背の高い作物から十分に離間させて前記前後のリンク部材19,20を支持でき、前記前後のリンク部材19,20にて、畝を壊したり背の高い作物を倒したりするおそれを回避し易い。
【0061】
また、前記走行機体11の後部に設けられるロワーリンク3の基端側を軸支するロワーリンク取付けピン(第2前規制ピン35a)を左右外向きに延長させ、前記ロワーリンク取付けピン(第2前規制ピン35a)の一端側をミッションケース40に着脱可能に支持させ、他端側を前記リンク支持体18に着脱可能に支持させているから、ロワーリンク3の取付け支持構造を簡略化でき、ロワーリンク3ひいては各種作業機の着脱作業性が向上すると共に、部品点数を少なくできてコスト抑制に寄与する。
【0062】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【符号の説明】
【0063】
8 エンジン
11 走行機体
12 前車輪
14 後車軸ケース
15 後車軸
17 トラックフレーム
19 前リンク部材
20 後リンク部材
22 テンション調節機構
25 走行クローラ
26 転動輪
27 前上端枢着軸
28 後上端枢着軸(上の枢着軸)
30 前下端枢着軸(下の枢着軸)
31 後下端枢着軸(下の枢着軸)
41 クローラガイド体
122 二股状後アーム(軸支部材)
123 鋼板体
124 転動輪支持体
126 取付け部
127,129,131,133 ボルト(締結部材)
130 前台座ブラケット
132 後台座ブラケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンを搭載した走行機体と、前記走行機体の下部に設けたトラックフレームと、前記トラックフレームに駆動輪体及び従動輪体を介して装着された走行クローラとを備えている作業車両において、
前記トラックフレームは、広幅面同士を対峙させた一対の鋼板体を締結部材にて着脱可能に締結した構造になっている、
作業車両。
【請求項2】
前記走行クローラ接地用の転動輪を回転可能に軸支する転動輪支持体の取付け部が前記一対の鋼板体にて挟持されている、
請求項1に記載した作業車両。
【請求項3】
前記走行クローラの外れ防止及び芯金体押さえ用のクローラガイド体が前記一対の鋼板体にて挟持されている、
請求項1又は2に記載した作業車両。
【請求項4】
前記従動輪体は前後に一対あり、前記前従動輪体を支持する伸縮可能なテンション調節機構の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されている、
請求項1〜3のうちいずれかに記載した作業車両。
【請求項5】
前記後従動輪体を軸支する軸支部材の基端部が前記一対の鋼板体にて挟持されている、
請求項4に記載した作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−10483(P2013−10483A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−146068(P2011−146068)
【出願日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)