説明

作業車

【課題】粉粒体の供給を点播でも条播でも行なうことができながら、点播と条播の切り換えが安価にかつ操作容易にできる作業車を提供する。
【解決手段】タンク41から粉粒体を設定量ずつ間欠的に繰り出し、繰り出した粉粒体を自然落下によって排出口62から排出する繰出し機構50を有した粉粒体供給装置が備えられた作業部を、自走車に連結してある。粉粒体供給装置に、繰出し機構50の排出口62からの粉粒体を圃場に落下させて供給する供給経路Rを設けてある。供給経路Rを、排出口62から落下した粉粒体をこれに接触しないで圃場に落下させる点播経路状態と、粉粒体が点播経路状態の場合よりも車体前後方向に広く分散して列状に圃場に落下するように排出口62から落下した粉粒体をこれに接触して案内して圃場に落下させる条播経路状態とに切り換え自在に構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉粒体を圃場に供給する作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した作業車として、従来、たとえば特許文献1に記載されたものがあった。
【0003】
特許文献1に記載されたものでは、走行機体の後部に昇降リンク機構を介して連結された播種装置を備えている。播種装置は、ホッパと、ホッパの下端に連結された繰出しケースを有した繰出し機構とを備えている。繰出し機構は、繰出しケースの内部に回転自在に設けた繰出しロールを備え、この繰出しロールが回転駆動されることにより、繰出しロールの外周に所定のピッチで並べて形成してある8個の繰出し凹部によってホッパから種子を繰出し、繰出した種子を繰出しケースの下部に設けてある排出口に排出する。繰出しケースの排出口は、整地フロートに設けてある作溝器に供給ホースによって接続されている。
【0004】
つまり、特許文献1に記載されたものでは、繰出し機構によってホッパから種子を設定量ずつ間欠的に繰出し、繰出し機構が繰り出した種子を供給ホースによって作溝器に供給して作溝器が圃場に形成した溝に供給する。すなわち、繰出しロールの繰出し凹部の容量で設定される設定量ずつの種子が繰出し機構の繰り出し間隔に対応した走行機体進行方向での供給間隔を隔てて走行機体進行方向に並ぶように点播の形態で播種を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−209260号公報(段落〔0017〕〜〔0025〕、図1〜5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
たとえば、稲用の種子を圃場に播くに当たり、稲株どうしの間の通風を図るなどのために、設定量ずつの種子が車体進行方向での供給間隔を隔てて車体進行方向に並ぶように点播の形態で播種することを要望される他、品種によっては、点播の形態で播種すれば、稲株が大きくなり過ぎることがあるなどにより、種子が車体進行方向に列状に並ぶように条播の形態で播種することを要望される場合がある。
【0007】
上記した従来の技術を基に点播の形態および条播の形態による粉粒体の供給が可能な作業車を得るには、繰出し凹部が大ピッチで周方向に並んだ点播用の繰出しロールと、繰出し凹部が小ピッチで周方向に並んだ条播用の繰出しロールとを準備し、繰出しケースに点播用の繰出しロールと条播用の繰出しロールとを付け替えることにより、繰出し機構を点播仕様と条播仕様とに切り換えることが考えられる。
【0008】
この場合、点播用の繰出しロールと条播用の繰出しロールとを準備する必要があり、経済面で不利となる。また、繰出しケースを開放して点播用の繰出しロールと条播用の繰出しロールとを付け替えるという煩わしい手間が必要になる。
【0009】
本発明の目的は、圃場への粉粒体の供給を点播の形態でも条播の形態でも行なうことができながら、点播形態での粉粒体供給を点播精度がよい状態で行うことができ、かつ点播仕様と条播仕様の切り換えを安価にかつ操作容易に行なことができる作業車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本第1発明は、作業車において、圃場に供給する粉粒体を貯留するタンクから粉粒体を設定量ずつ間欠的に繰り出し、繰り出した粉粒体を自然落下によって排出口から排出する繰出し機構を有した粉粒体供給装置が備えられた作業部を、自走車に連結し、
前記粉粒体供給装置に、前記繰出し機構の前記排出口からの粉粒体を圃場に落下させて供給する供給経路を設け、
前記供給経路を、前記排出口から落下した粉粒体をこれに接触しないで圃場に落下させる点播経路状態と、粉粒体が前記点播経路状態の場合よりも車体前後方向に広く分散して列状に圃場に落下するように前記排出口から落下した粉粒体をこれに接触して案内して圃場に落下させる条播経路状態とに切り換え自在に構成してある。
【0011】
本第1発明の構成によると、供給経路を点播経路状態に切り換えると、繰出し機構がタンクから設定量ずつ間欠的に繰出して排出口から自然落下させる粉粒体を、供給経路が粉粒体に接触しないで圃場に落下させるので、排出口から設定量ずつ間欠的に落下した粉粒体が供給経路に干渉されないで排出口の直下に位置する箇所で圃場に落下することになり、粉粒体が排出口を間欠的に落下する落下間隔に精度よく対応した供給間隔で車体進行方向に並んで点在する供給箇所に粉粒体を供給することができ、かつ繰出し機構の排出口を粉粒体が纏まって落下したときのその纏まりの状態で粉粒体を圃場に供給することができる。
【0012】
供給経路を条播経路状態に切り換えると、繰出し機構がタンクから設定量ずつ間欠的に繰出して排出口から自然落下させる粉粒体を供給経路が粉粒体に接触して案内し、繰出し機構が粉粒体を設定量ずつ間欠的に繰り出しても、この粉粒体が供給経路を点播供給状態に切り換えた場合よりも車体前後方向に広く分散して列状になった状態で圃場に位置する状態で粉粒体を圃場に供給することができる。
【0013】
従って、粉粒体を圃場に点播の形態でも条播の形態でも供給することができるのであり、たとえば稲の種子を播く場合、稲株が株間隔を隔てて通風のよい状態で生育するように播種することも、稲株が大きくなり過ぎないで生育するように播種することもできる。しかも、粉粒体の供給間隔が所望の供給間隔に精度よくなる良好な仕上がりの点播の形態で粉粒体供給を行なうことができ、さらに繰出し機構の仕様変更を行なわなくても、供給経路の切り換えを行なうだけで安価にかつ操作容易に点播仕様と条播仕様とに切り換えることができる優れた作業車を得ることができる。
【0014】
本第2発明では、前記供給経路を前記点播経路状態に構成する車体上下向きの筒状部と、前記供給経路を前記条播経路状態に構成するよう下端側ほど車体後方側に位置した傾斜状態のシュート部とを有した筒体を、前記筒状部が前記供給経路を構成する取り付け姿勢と、前記シュート部が前記供給経路を構成する取り付け姿勢とに前記排出口に付け替え自在に構成して備えてある。
【0015】
本第2発明の構成によると、筒体をこれの筒状部が供給経路を構成する取り付け姿勢で排出口に取り付けることにより、供給経路を点播経路状態に構成できて、点播の形態での粉粒体供給を行なうことができ、筒体をこれのシュート部が供給経路を構成する取り付け姿勢で排出口に取り付けることにより、供給経路を条播経路状態に構成できて、条播の形態での粉粒体供給を行なうことができる。
【0016】
従って、粉粒体を圃場に点播の形態でも条播の形態でも供給することができるものでありながら、筒体を準備するだけで安価に得ることができ、かつ筒体の取り付け姿勢を変更するだけで操作簡単に点播仕様と条播仕様とに切り換えることができる。
【0017】
本第3発明は、前記作業部に接地フロートを設け、前記粉粒体供給装置に前記タンクを設け、
前記タンクの後端の車体前後方向での位置と、前記接地フロートの後端の車体前後方向での位置とを一致またはほぼ一致させてある。
【0018】
本第3発明の構成によると、自走車の前後傾斜などにかかわらず、粉粒体供給装置の対地高さが一定化しやすいように粉粒体供給装置を接地フロートによって安定させることができる。
【0019】
この場合、自走車を畦際で旋回させた後など畦際から作業を開始するに当たり、畦に極力近い箇所から作業を開始するように接地フロートの後端側を畦に接近させても、粉粒体供給装置の供給経路が接地フロートの後端から車体前方側に大きく離れて位置していると、供給経路と接地フロートの後端との間隔にほぼ等しい長距離を備えた広い未作業箇所が畦際に発生する。
【0020】
本第3発明の構成によると、タンクの後端の車体前後方向での位置と、接地フロートの後端の車体前後方向での位置とを一致またはほぼ一致させてあるから、接地フロートの後端側を畦に接近させた場合、タンクの後端側が畦に接近してもタンクと畦とが当たることを回避できるようにした状態で、供給経路を接地フロートの後端に極力寄せて配置することができ、供給経路と接地フロートの後端との車体前後方向での間隔を極力小さい間隔にして、畦際から作業を開始する場合に畦際に発生する未作業箇所を極力狭く済ませることができる。
【0021】
従って、粉粒体供給装置を接地フロートによって安定させ得るものでありながら、畦際に発生した未作業箇所に粉粒体を人為的に供給する手間を極力少なく済ませ得る良好な仕上がりで粉粒体供給を行なうことができる。
【0022】
本第4発明では、前記繰出し機構を、周面に形成された繰出し凹部によって粉粒体の繰出しを行なう繰出しロールを一回転方向に駆動回転自在に備えて構成し、
前記繰出しロールが前記タンクからの粉粒体を前記繰出し凹部に受け入れるように前記繰出しロールの上側に位置する受け入れ箇所よりも繰出しロール回転方向下手側に、摺り切りブラシを前記繰出しロールの周面に作用するように設け、
前記受け入れ箇所よりも繰出しロール回転方向上手側に、清掃ブラシを前記繰出し凹部に作用するように設けてある。
【0023】
周面に繰出し凹部が設けられた繰出しロールを採用した場合、繰出し凹部に粉粒体が入り過ぎたり、粉粒体の排出を行った繰出し凹部に粉粒体が付着して残ったままになったりした場合、繰出しロールによる粉粒体の繰出し量が設定量よりも多くなる、あるいは少なくなり、供給箇所における粉粒体の供給量に過不足が発生するという供給不良が発生し、殊に、条播の形態での粉粒体供給の場合、粉粒体列が途切れたり、粉粒体が過大密度で存在したりする供給不良が発生しやすい。
【0024】
本第4発明の構成によると、繰出し凹部に粉粒体が入り過ぎることがあっても、繰出し凹部が受け入れ箇所から移動していくに伴って摺り切りブラシが作用し、繰出し凹部がさらに移動して排出する際の粉粒体を設定量になっているようにできる。粉粒体を排出した後の繰出し凹部に粉粒体が付着して残ることがあっても、繰出し凹部が受け入れ箇所に向かって移動していくに伴って清掃ブラシが作用し、繰出し凹部が再度、粉粒体を受け入れて収容した粉粒体を排出する際、収容した粉粒体の全量を排出するようにできる。
【0025】
従って、繰出し凹部への粉粒体の入り過ぎや付着が発生してもそれを解消して設定量での粉粒体の排出を行わせ、粉粒体の供給が点播の形態で行なわれる場合も条播の形態で行なわれる場合も、粉粒体の供給量の過不足が発生しにくい良好な供給精度で行なわせることができる。
【0026】
本第5発明は、前記受け入れ箇所から下降移動する前記繰出し凹部に閉じ作用するように前記繰出しロールの周面に沿って位置して、前記繰出しロールが前記繰出し凹部から粉粒体を落下させる排出箇所を前記繰出しロールの下側に設定するガイドを設け、
前記ガイドの作用終端箇所を、前記繰出しロールの回転軸芯を通る水平線と前記繰出しロールの回転軸芯を通る鉛直線との間の前記水平線よりも前記鉛直線に近い箇所に配置してある。
【0027】
周面に繰出し凹部が設けられた繰出しロールによって粉粒体の繰出しを行なうものにおいて、繰出しロールの上側に設定された受け入れ箇所に位置して粉粒体を受け入れた繰出し凹部が受け入れ箇所から繰出しロールの下側に向かって移動し、繰出し凹部が水平向きや斜め下向きに開口した姿勢になるに伴って繰出し凹部から粉粒体が自然落下によって排出されるものにあっては、繰出し凹部からの粉粒体の排出が一気に行われず、繰出し凹部の下降移動に伴って粉粒体が徐々に流れ出る状態で行なわれることになり、圃場に点播の形態で供給するべき粉粒体が供給箇所において車体前後方向に分散しやすくなって、点播の形態での供給間隔が狭くなるか、圃場の供給箇所での粉粒体の纏まりが悪くなるという供給不良が発生しやすくなる。
【0028】
本第5発明の構成によると、受け入れ箇所から下降移動する繰出し凹部に閉じ作用するように繰出しロールの周面に沿って位置して繰出し凹部の排出箇所を設定するガイドの作用終端箇所を、繰出しロールの回転軸芯を通る水平線と繰出しロールの回転軸芯を通る鉛直線との間の水平線よりも鉛直線に近い箇所に配置してあるものだから、受け入れ箇所から下降移動した繰出し凹部が水平向きや少し斜め下向きに開口した状態になっても繰出し凹部から粉粒体が排出されず、繰出し凹部が繰出しロールの回転軸芯を通る鉛直線の近くまで下降して下向きに開口してから粉粒体が排出されることになって、繰出し凹部から粉粒体が繰出し凹部から一気に落下する状態に近い状態で排出されるようにでき、点播の形態で圃場に供給される粉粒体が供給箇所において纏まりやすくなる。
【0029】
従って、供給間隔が設定間隔またはそれに近い間隔になるように、かつ供給箇所に粉粒体が纏まって存在するように点播精度がよい点播の形態での粉粒体供給を行なうことができる。
【0030】
本第6発明は、前記受け入れ箇所から粉粒体を取り出すドレン通路を設け、
前記清掃ブラシを、前記繰出しロールに作用するとともに前記受け入れ箇所と前記ドレン通路を仕切る仕切り状態と、前記ドレン通路を前記受け入れ箇所に連通させる仕切り解除状態とに切り換え自在に構成してある。
【0031】
本第6発明の構成によると、清掃ブラシを仕切り状態に切り換えると、受け入れ箇所とドレン通路とが清掃ブラシによって仕切られ、受け入れ箇所からドレン通路に粉粒体が漏れ出なくて粉粒体供給を支障なく行なうことができる。清掃ブラシを仕切り解除状態に切り換えると、受け入れ箇所にドレン通路が連通され、受け入れ箇所やタンクに残った粉粒体をドレン通路に流入させてドレン通路を介して取り出すことができる。
【0032】
従って、タンクや繰出し機構に残った粉粒体の取り出しをドレン通路から簡単に行うことができ、しかも、清掃ブラシをバルブ手段に利用して安価にできる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】作業車の全体を示す側面図である。
【図2】作業部を示す後面図である。
【図3】作業部を示す側面図である。
【図4】粉粒体供給装置を示す後面図である。
【図5】伝動装置を示す線図である。
【図6】粉粒体供給装置を示す縦断側面図である。
【図7】粉粒体供給装置を示す縦断後面図である。
【図8】筒体の繰出し機構に条播用の取り付け姿勢で取り付けた状態を示す縦断側面図である。
【図9】図6のIX−IX断面矢視図である。
【図10】図8のX−X断面矢視図である。
【図11】清掃ブラシの仕切り解除状態を示す側面図である。
【図12】(a)は、筒体を示す側面図、(b)は、筒体のシュート部を示す正面図、(c)は、筒体を示す平面図、(d)は、筒体の下端部を示す横断面図である。
【図13】別の実施形態を備えた作業車の作業部を示す側面図である
【図14】(a)は、別の実施形態を備えた筒体の供給経路を点播経路状態に構成する状態を示す側面図、(b)は,別の実施形態を備えた筒体の供給経路を条播経路状態に構成する状態を示す側面図である。
【図15】(a)は、さらに別の実施形態を備えた筒体の供給経路を点播経路状態に構成する状態を示す側面図、(b)は、さらに別の実施形態を備えた筒体の供給経路を条播経路状態に構成する状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0035】
図1は、本発明の実施形態に係る作業車の全体を示す側面図である。この図に示すように、本発明の実施形態に係る作業車は、左右一対の操向操作及び駆動自在な前車輪1,1と左右一対の駆動自在な後車輪2,2とによって自走する自走車と、この自走車の車体フレーム3の後部にリンク機構4を介して連結された作業部20と、自走車の車体後部に位置する肥料タンク31が装備された施肥装置30とを備えて構成してある。
【0036】
自走車は、車体フレーム3の前部に設けたエンジン5を備え、このエンジン5が出力する駆動力を車体前部に位置するミッションケース6に入力し、このミッションケース6に入力した駆動力をミッションケース6の内部に位置する走行ミッションから前輪駆動ケース7に伝達して左右一対の前車輪1,1を駆動し、ミッションケース6に入力した前記エンジン5からの駆動力を前記走行ミッションから回転軸8を介して車体後部に位置する後輪駆動ケース9に伝達して左右一対の後車輪2,2を駆動する。自走車は、車体後部に設けた運転座席10aを有した運転部10を備え、この運転部10に搭乗して運転するように乗用型になっている。自走車は、前記ミッションケース6に入力した前記エンジン5からの駆動力を、ミッションケース6の内部に位置する作業ミッションから車体フレーム3の下方に位置する回転軸11と、この回転軸11の後端部から作業部20に延出した回転軸12とを介して作業部20に伝達する。
【0037】
リンク機構4は、車体フレーム3とリンク機構4のロワーリンク4aの後端側とに連結された油圧シリンダ13を備え、この油圧シリンダ13によって車体フレーム3に対して上下に揺動操作されることにより、作業部20を、作業部20の下部に車体横方向に並んで位置する4つの接地フロート21が圃場面に接地した下降作業位置と、各接地フロート21が圃場面から上昇した上昇非作業位置とに昇降操作する。
【0038】
作業車は、作業部20を下降作業位置に下降させて自走車を走行させると、作業部20により、稲用の種子であって、鉄コーティング処理が行われた種子を圃場に八条で供給する播種作業を行い、施肥装置30により、各条の種子に対する肥料供給を行なう施肥作業を行なう。
【0039】
作業部20について説明する。
【0040】
図2は、作業部20を示す後面図である。図3は作業部20を示す側面図である。これらの図及び図1に示すように、作業部20は、接地フロート21を備える他、車体横向き及び車体前後向きの鋼管材を組み合わせて成る枠組み形の作業部フレーム22と、この作業部フレーム22の後部に車体横方向に並べて支持させた八つの粉粒体供給装置40とを備えて構成してある。
【0041】
接地フロート21は、作業部20を接地支持し、自走車の前後傾斜などにかかわらず安定した対地姿勢を作業部20に維持させる。各接地フロート21は、圃場面を滑って移動することにより、圃場面の播種箇所を整地する。
【0042】
図4は、粉粒体供給装置40を示す後面図である。この図及び図3に示すように、前記八つの粉粒体供給装置40のそれぞれは、粉粒体供給装置40の最上部に位置するタンク41と、このタンク41の底部42に上端側が連結された繰出し機構50と、この繰出し機構50の下端部に上端側が取り付けられた車体上下向きの筒体70とを備えて構成してある。
【0043】
図2,3,4に示すように、各粉粒体供給装置40のタンク41は、漏斗形の底部42を有したタンク本体43と、タンク本体43の投入口を開閉するようにタンク本体43の上端部に揺動開閉自在に支持された蓋体44とを備えて構成してある。8個のタンク41のうちの2個ずつは、2個のタンク本体43,43を一体成形されて1つのタンク本体として備え、かつ2個の蓋体44,44を一体成形されて1つの蓋体として備えた1つのタンク構成体によって構成してある。すなわち、8つの粉粒体供給装置40のうちの2つずつの粉粒体供給装置40,40のタンク41が共用のタンクになっている。
【0044】
図6は、粉粒体供給装置40を示す縦断側面図である。図7は、粉粒体供給装置40を示す縦断後面図である。これらの図及び図3,4に示すように、各粉粒体供給装置40の繰出し機構50は、タンク41の底部42に上端部が連結された繰出しケース51と、この繰出しケース51の内部に設けた繰出しロール52と、繰り出しロール52の周面に沿わせて設けたガイド53とを備えて構成してある。
【0045】
繰出しロール52は、この繰出しロール52の周面に繰出しロール52の回転方向A(図6参照)に所定間隔を隔てて並べて設けた4つの繰出し凹部54を備えている。繰出しロール52は、繰出しケース51の左右一対の支持部51a,51aに回転自在に支持された車体横向きのロール駆動軸55に一体回転自在に支持されており、このロール駆動軸55によって回転方向Aに回転駆動される。
【0046】
図7に示すように、繰出しロール52は、4つの繰出し凹部54が設けられたロール本体52aと、4つの繰出し凹部54に各別に係入した4つの容量調整バー56が設けられた容量調整ロール52bとを備えて構成してある。容量調整ロール52bの内周側に設けてある操作ネジ部が、ロール駆動軸55に相対回転自在に外嵌した調整筒軸57の外周側に設けた送りネジ部57aに係合しており、容量調整ロール52bは、調整筒軸57が回転操作されることにより、送りネジ部57aによる送り作用によってロール本体52aに対して移動操作されて各容量調整バー56を繰出し凹部54に対して摺動させ、各容量調整バー56の繰出し凹部54に対する入り込み長さを変更して繰出し凹部54の容量を変更する。繰出しロール52がタンク41から種子を設定量ずつ繰り出すその設定量は、繰出し凹部54の容量によって設定される。
【0047】
各繰出し機構50の調整筒軸57は、この調節筒軸57の端部に一体回転自在に設けられた調整ギヤ59を有したキヤ機構を介して、車体横向きの一本の調整操作軸100に連動されている。つまり、調整操作軸100の端部に設けられた調整ハンドル101によって調整操作軸110が回転操作されることにより、8つの繰出し機構50の繰出しロール52の各繰出し凹部54による種子の繰出し量が一挙に変化する。
【0048】
図6に示すように、繰出しケース51は、繰出しケース51の前側に設けた取り付け部51bにおいて作業部フレーム22に連結されている。
【0049】
図6,7に示すように、繰出しケース51は、この繰出しケース51の内側の上部に設けた傾斜案内壁58、摺り切りブラシ60及び清掃ブラシ61を備えている。傾斜案内壁58と摺り切りブラシ60と清掃ブラシ61とは、繰出しロール52の上側に受け入れ箇所Bを形成している。この受け入れ箇所Bは、タンク41の取り出し口45に連通しており、タンク41に貯留された種子をこれの自然流出によって取り出し口45から繰出しロール52の上側に流出させ、繰出しロール52の上側に流出した種子を繰出しロール52の繰出し凹部54に受け入れさせるように繰出しロール52の上側に滞留させる。繰出しケース51は、この繰出しケース51の下端部に設けられた筒状部により、繰出し機構50の排出口62を繰出しロール52の下方に位置させて形成している。
【0050】
図6に示すように、ガイド53は、受け入れ箇所Bに対して繰出しロール52の回転方向下手側に位置する箇所に繰出しロール52に周面に沿って位置しており、受け入れ箇所Bから下降移動して摺り切りブラシ60を通過した繰出しロール52の繰出し凹部54から種子がこぼれ出ることを阻止するように繰出し凹部54に対して閉じ作用する。ガイド53の作用終端箇所53aを、繰出しロール52の回転軸芯Pを通る水平線Cよりも下方に位置する箇所であって、繰出しロール52の回転軸芯Pを通る水平線Cと繰出しロール52の回転軸芯Pを通る鉛直線Dとの間の前記水平線Cよりも前記鉛直線Dに近い箇所に配置してあり、ガイド53は、繰出しロール52の種子の排出箇所Eを繰出しロール52の下側に、繰出しロール52の回転軸芯Pを通る水平線Cと繰出しロール52の回転軸芯Pを通る鉛直線Dとの間の水平線Cよりも鉛直線Dに近い箇所に設定している。
【0051】
摺り切りブラシ60は、受け入れ箇所Bよりも繰出しロール回転方向下手側に設けてあり、受け入れ箇所Bにおいて繰出しロール52の繰出し凹部54に設定量を超えた量の種子が入り込む事態が発生した場合、繰出し凹部54から余剰分の種子を取り除くように繰出しロール52に周面に摺り切り作用する。
【0052】
清掃ブラシ61は、繰出しケース51の内部に設けた支軸63に連結部で取り付けられたブラシ支持部61aと、このブラシ支持部61aに植設されたブラシ本体61bとを備えて構成してある。この清掃ブラシ61のブラシ本体61bは、受け入れ箇所Bよりも繰出しロール回転方向上手側に設けてあり、清掃ブラシ61は、排出箇所Eを通過した繰出しロール52の繰出し凹部54に種子が付着して残っていることが発生した場合、繰出し凹部54に残留した種子をブラシ本体61bによって繰出し凹部54から取り除く。
【0053】
ロール駆動軸55が駆動されると、繰出しロール52がロール駆動軸55によって回転方向Aに回転駆動されて繰出しロール52の各繰出し凹部54が受け入れ箇所Bと排出箇所Eとを移動する。繰出し凹部54が受け入れ箇所Bに位置すると、繰出し凹部54が上向きに開口した状態となり、受け入れ箇所Bに滞留している種子が繰出し凹部54に入り込む。種子が入り込んだ繰出し凹部54は、摺り切りブラシ60による摺り切り作用とガイド53による閉じ作用とを受けて設定量の種子を収容した状態で下降して排出箇所Eに移動する。繰出し凹部54が排出箇所Eに位置すると、繰出し凹部54が下向きに開口した状態となり、繰出し凹部54に収容されていた種子が自然流出によって繰出し凹部54から排出されて排出口62から落下する。排出箇所Eで種子を排出した繰出し凹部54は、種子の残留があっても清掃ブラシ61による清掃を受け、種子の残留が無くなった状態で受け入れ箇所Bに戻る。
【0054】
従って、各粉粒体供給装置40の繰出し機構50は、ロール駆動軸55が駆動されることにより、ロール駆動軸55の駆動力によって繰出しロール52を回転方向Aに回転駆動し、繰出しロール52の繰出し凹部54による設定量ずつの繰出しによって、かつ繰出し凹部54の配設ピッチに対応した間欠的な繰出しによってタンク41から種子を繰出し、繰出した種子を排出口62から自然落下によって排出する。
【0055】
図12(a)は、各粉粒体供給装置40の筒体70を示す側面図である。図12(b)は、各粉粒体供給装置40の筒体70のシュート部を示す正面図である。図12(c)は、各粉粒体供給装置40の筒体70を示す平面図である。図12(d)は、各粉粒体供給装置40の筒体70の下端部を示す横断面図である。これらの図に示すように、各粉粒体供給装置40の筒体70は、筒体70の車体前後方向での一端側に位置する車体上下向きの筒状部71と、筒体70の車体前後方向での他端側に位置するシュート部72とを備えて構成してある。
【0056】
筒状部71は、一枚の鉛直姿勢の前後向き壁板71aと、前後向き壁板71aの両横側に別れて位置する左右一対の横向き壁板71b,71bとを備えて構成してあり、筒状部71の横断面形状がコの字形になっている。
【0057】
シュート部72は、一枚の傾斜姿勢の前後向きシュート板72aと、前後向きシュート板72aの両横側に別れて位置する左右一対の傾斜姿勢の横向きシュート板72b,72bとを備えて構成してあり、シュート部72の横断面形状がほぼ三角形になり、かつシュート部72の横断面積がシュート部72の下端側ほど徐々に小になっている。
【0058】
図12(a),(b),(c)に示すように、各粉粒体供給装置40の筒体70は、筒体70の上端部に設けた連結筒部75、位置決めフランジ76及び左右一対の連結ピン77,77を備え、連結筒部75と位置決めフランジ76と連結ピン77とによって繰出し機構50の排出口62に点播用の取り付け姿勢と条播用の取り付け姿勢とに付け替えて取り付けるようになっている。
【0059】
図6は、筒体70を繰出し機構50に点播用の取り付け姿勢で取り付けた状態を示している。図9は、図6のIX−IX断面矢視図である。これらの図に示すように、筒体70は、筒状部71がシュート部72よりも車体前方側に位置する取り付け向きにして、連結筒部75を繰出し機構50の排出口62に嵌め込み、位置決めフランジ76が繰出しケース51の下端に当接すると、繰出しケース51の下端部の両横側に揺動自在に取り付けてあるフック78を連結ピン77に係止させることにより、繰出し機構50の排出口62に点播用の取り付け姿勢で取り付けた状態になる。
【0060】
筒体70を繰出し機構50に点播用の取り付け姿勢で取り付けた場合、筒状部71の前後向き壁板71aが左右一対の横向き壁板71bよりも車体前方側に位置し、かつ筒状部71の内部空間が繰出し機構50の排出箇所E及び排出口62の直下に位置し、繰出し機構50に点播用の取り付け姿勢で取り付けた筒体70は、筒状部71により、繰出し機構50の排出口62から車体下方向きに延出した供給経路Rを形成するとともにこの供給経路Rを点播経路状態に構成する。
【0061】
点播経路状態に構成された供給経路Rは、作業部20が下降作業位置に位置した状態において、供給経路Rの延出端が圃場面から上方に少し離れた箇所に位置する対地高さになる。点播経路状態に構成された供給経路Rは、繰出し機構50の排出口62から落下した種子に前後向き壁板71a及び横向き壁板71bが接触せず、繰出し機構50から落下した種子を繰出し機構50の排出箇所E及び排出口62の直下において圃場に落下させる。つまり、点播経路状態に構成された供給経路Rは、繰出し機構50の種子の落下間隔に対応した供給間隔で、繰出し機構0が間欠的に繰り出す設定量ずつに対応した設定量ずつで種子が圃場面に落下するように点播の形態で圃場に種子を供給する。
【0062】
図8は、筒体70の繰出し機構50に条播用の取り付け姿勢で取り付けた状態を示す縦断側面図である。図10は、図8のX−X断面矢視図である。これらの図に示すように、筒体70は、シュート筒部72が筒状部71よりも車体前方側に位置する取り付け向きにして、連結筒部75を繰出し機構50の排出口62に嵌め込み、位置決めフランジ76が繰出しケース51の下端に当接すると、繰出しケース51の両横側のフック78を連結ピン77に係止させることにより、条播用の取り付け姿勢で取り付け状態になる。
【0063】
筒体70を繰出し機構50に条播用の取り付け姿勢で取り付けた場合、シュート部72の前後向きシュート板72aが左右一対の横向きシュート板72b,72bよりも車体前方側に位置し、かつ、シュート部72は、下端側ほど車体後方側に位置して傾斜状態となって、シュート部72の下端側が繰出し機構50の排出箇所E及び排出口62の直下に位置し、繰出し機構50に条播用の取り付け姿勢で取り付けた筒体70は、シュート部72により、繰出し機構50の排出口62から車体下方向きに延出した供給経路Rを形成するとともに供給経路Rを条播経路状態に構成する。
【0064】
条播経路状態に構成された供給経路Rは、作業部20が下降作業位置に位置した状態において、供給経路Rの下端が圃場面から上方に少し離れた箇所に位置する対地高さになる。条播経路状態に構成された供給経路Rは、繰出し機構50の排出口62から自然落下した種子に前後向きシュート板72a及び左右一対の横向きシュート板72b,72bの下端側が接触して案内し、繰出し機構50から落下した種子を圃場に落下させる。つまり、条播経路状態に構成された供給経路Rは、繰出し機構50が設定量ずつ間欠的に落下させた種子をシュート部72によって案内して圃場に落下させ、供給経路Rが点播経路状態の場合よりも車体前後方向に分散して圃場面に列状に落下するように条播の形態で圃場に種子を供給する。
【0065】
作業部20は、図3に示す如く作業部フレーム22の前端側の車体横方向での中央部に設けた入力ケース81が備えられた伝動装置80を備えている。
【0066】
図5は、伝動装置80を示す線図である。この図に示すように、伝動装置80は、前記入力ケース81を備える他、この入力ケース81の出力ギヤ81aの駆動力が車体横向きの回転軸82を介して入力される減速ケース83と、この減速ケース83の出力ギヤ83aに一端側が連結された車体横向きの伝動軸84と、この伝動軸84と各粉粒体供給装置40のロール駆動軸55とにわたって設けた繰出しオン・オフ機構85とを備えて構成してある。
【0067】
図3,5に示すように、入力ケース81は、自走車と作業部20とにわたる前記回転軸12に前端側が連結された車体前後向きの入力軸81bを備え、この入力軸81bによってエンジン5からの駆動力を入力し、入力した駆動力を、出力ギヤ81aから回転軸82に出力する。
【0068】
図4,5に示すように、各繰出しオン・オフ機構85は、ロール駆動軸55に一体回転自在に設けたロール駆動ギヤ86と、このロール駆動ギヤ86に咬み合った状態で伝動軸84に相対回転自在に支持された伝動ギヤ87と、伝動軸84に一体回転及び摺動操作自在に支持されたクラッチ体88を備えて構成してある。各クラッチ体88は、伝動ギヤ87に係脱するようにクラッチ体88の側面に設けたクラッチ爪を備えており、伝動軸84に沿わせて摺動操作されることにより、クラッチ爪によって伝動ギヤ87と係合し合って、伝動軸84と伝動ギヤ87とを一体回転させるようにオン状態に切り換わり、あるいは、伝動ギヤ87と離脱し合って、伝動軸84と伝動ギヤ87とを相対回転させるようにオフ状態に切り換わる。
【0069】
したがって、伝動装置80は、前記回転軸12の駆動力を入力軸81bによって入力ケース81に入力し、入力ケース81に入力した駆動力を出力ギヤ81a及び回転軸82によって減速ケース83に伝達して減速し、減速後の駆動力を伝動軸84から各粉粒体供給装置40の繰出し機構50に繰出しオン・オフ機構85を介して伝達する。
【0070】
つまり、作業部20は、エンジン5から作業ミッション及び回転軸11を介して回転軸12に伝達された駆動力を入力ケース81に入力し、入力ケース81に入力した駆動力を回転軸82及び減速ケース83を介して伝動軸84に伝達し、この伝動軸84の駆動力を繰出しオン・オフ機構85がオン状態に操作されている粉粒体供給装置40のロール駆動軸55に繰出しオン・オフ機構85を介して伝達し、繰出しオン・オフ機構85がオン状態になっている粉粒体供給装置40において、タンク41に貯留されている種子を繰出し機構50によって設定量ずつ間欠的に繰出して排出口62から落下させ、筒体70によって形成されている供給経路Rを介して、接地フロート21によって整地された圃場面に落下させて供給する。
【0071】
繰出し機構50の排出口62に筒体70を点播用の取り付け姿勢で取り付けておけば、供給経路Rが筒体70の筒状部71によって点播経路状態に構成されていることから、粉粒体供給装置40は、繰出し機構50が設定量ずつ繰り出した種子を供給経路Rの作用により、繰出し機構50が排出口62から間欠的に落下させる落下間隔に対応した供給間隔で、かつ繰出し機構50が繰り出す設定量ずつのままで圃場面に供給するように点播の形態で圃場に種子を供給する。
【0072】
繰出し機構50の排出口62に筒体70を条播用の取り付け姿勢で取り付けておけば、供給経路Rが筒体70のシュート部72によって条播経路状態に構成されていることにより、粉粒体供給装置40は、繰出し機構50が設定量ずつ繰り出す種子を供給経路Rの作用により、車体前後方向に列状に分散させて圃場面に供給するよう条播の形態で圃場に供給する。
【0073】
図1に示すように、施肥装置30は、前記肥料タンク31を備える他、肥料タンク31の下部に連結された繰出し機構32と、繰出し機構32の車体横方向に並ぶ8つの送出口に送風ダクトを介して搬送風を供給する電動ブロワ33と、繰出し機構32の各送出口から作業部20に延出された施肥ホース34とを備えて構成してある。8本の施肥ホース34は、8つの粉粒体供給装置40に一つずつ対応させた配置で4つの接地フロート21に振り分けて取り付けてある8つの作溝施肥器35に各別に接続されている。
【0074】
施肥装置30は、繰出し機構32をミッションンケース6から伝達されるエンジン5からの駆動力によって駆動し、肥料タンク31に貯留された粉粒状の肥料を繰出し機構32によって肥料タンク31から繰出し、繰出し機構32が各送出口に繰出した肥料を電動ブロワ33からの搬送風によって送出口から施肥ホース34に送り出し、各作溝施肥器35が粉粒体供給装置40によって供給された種子の横側近くで圃場に形成した溝に施肥ホース34から供給する。
【0075】
図3に示すように、各粉粒体供給装置40におけるタンク41の蓋体44での後端44aの車体前後方向での位置と、各接地フロート21のパーティングラインでの後端21aの車体前後方向での位置とがほぼ一致する状態、すなわち蓋体44の後端44aから少し後方に突出したハンドル41aの閉じロック状態での後端が接地フロート21のパーティングラインでの後端21aよりも少し前側に位置する状態で粉粒体供給装置40及び接地フロート21を作業部20に設けてある。ハンドル41aは、蓋体44を閉じロック状態と閉じロック解除とに切り換えるものである。
【0076】
つまり、自走車を畦際で旋回させた後など畦際から作業を開始するに当たり、タンク41と畦とが当たることを回避しながら接地フロート21の後端側を畦に接近させ、畦際に発生する未作業箇所を極力狭く済ませながら畦に極力近い箇所から作業を開始できる。
【0077】
この場合、蓋体44の後端44aから少し後方に突出したハンドル41aの閉じロック状態での後端の車体前後方向での位置と、接地フロート21のパーティングラインでの後端21aの車体前後方向での位置とが一致する状態で、粉粒体供給装置40及び接地フロート21を作業部20に設けてもよい。また、タンク41の蓋体44の後端44aから後方に突出するものが無い場合、タンク41の蓋体44の後端44aの車体前後方向での位置と、各接地フロート21のパーティングラインでの後端21aの車体前後方向での位置とが一致する状態で。粉粒体供給装置40及び接地フロート21を作業部20に設けてもよい。
【0078】
図3、図1及び図11に示すように、各粉粒体供給装置40における繰出し機構50の落下箇所E及び排出口62が前記入力ケース81の入力軸81bよりも低い配置高さに位置する状態で入力ケース81及び各粉粒体供給装置40を作業部20に設けてある。作業部20が下降作業位置に位置した状態において、前記入力ケース81の入力軸81bが自走車の後車輪2の車軸芯2aよりも低い配置高さに位置する状態で入力ケース81を作業部20に設けてある。
【0079】
つまり、点播経路状態にある供給経路Rの車体上下方向での距離が長くなった場合、繰出し機構50から圃場に向かって供給経路Rを落下する種子に飛散が発生しやすくなり、この飛散が発生すると、供給間隔や供給密度が設定のものと大きく相違した状態で種子が圃場に落下しやすくなる。
【0080】
これに対し、作業部20が下降作業位置に位置した状態において、繰出し機構50の落下箇所E及び排出口62が車軸芯2aよりも低い配置高さに位置するから、繰出し機構50の落下箇所E及び排出口62の対地高さを極力低くして点播経路状態にある供給経路Rの車体上下方向での距離を極力短く済ませ、繰出し機構50から圃場に向かって供給経路Rを落下する種子を飛散しないとか飛散しにくい状態で落下させることができ、点播精度を高くできる。
【0081】
図6に示すように、繰出し機構50における繰出しケース51の内部に、繰出しロール52の後側を車体上下方向に通ったドレン通路90を設けてある。ドレン通路90の上端側に位置する入口は、清掃ブラシ61が位置する箇所に開口し、ドレン通路90の下端側に位置する出口は、繰出しケース51の排出口62に開口している。
【0082】
前記清掃ブラシ61は、支軸63を介して繰出しケース51に枢支されている。支軸63が繰出しケース51の外部に設けてある操作レバー(図示せず)によって回転操作されることにより、清掃ブラシ61は、支軸63の軸芯まわりに揺動操作されて仕切り状態と仕切り解除状態とに切り換え操作可能に構成され、かつ、仕切り状態及び仕切り解除状態で保持(固定)可能に構成されている。繰出しケース51は、清掃ブラシ61の交換など繰出しケース51の内部に対する点検作業を行うように繰出しケース51の車体後方向き壁部に設けた点検口91、及び点検口91に脱着自在に設けた蓋体92を備えている。
【0083】
図6に示すように、清掃ブラシ61は、支軸63の軸芯まわりに揺動操作されて、ブラシ本体61bの毛先側が繰出しロール52の周面に接触した取り付け姿勢になると、仕切り状態となる。仕切り状態になった清掃ブラシ61は、ブラシ本体61bによって繰出しロール52の繰出し凹部54に清掃作用し、かつ前記受け入れ箇所Bに滞留した種子がドレン通路90に流下しないように受け入れ箇所Bとドレン通路90の入口側とを支持部61aとブラシ本体61bとによって仕切る。
【0084】
図11は、清掃ブラシ61の仕切り解除状態を示す側面図である。この図に示すように、清掃ブラシ61は、支軸63の軸芯まわりに揺動操作されて、ブラシ本体61bが繰出しロール52から後方に離間した取り付け姿勢になると、仕切り解除状態になる。仕切り解除状態になった清掃ブラシ61は、受け入れ箇所Bに滞留した種子が自然流下によってドレン通路90に流下するように受け入れ箇所Bとドレン通路90の入口側とを連通させ、タンク41や繰出しケース51に残留した種子を受け入れ箇所Bからドレン通路90を介して繰出しケース51の排出口62に流下させてこの排出口62や筒体70から取り出すことを可能にする。
〔別の実施形態〕
(1)図13は、別の実施形態を備えた作業車の作業部20を示す側面図である。この図に示すように、別の実施形態を備えた作業車の作業部20は、車体横方向に並んだ粉粒体供給装置40を備える他、作業部フレーム22の車体横方向での中央部から車体上方向きに立設された支柱95、この支柱95に支持された粉粒体散布装置96を備えている。
【0085】
粉粒体散布装置96は、タンク97と、タンク97の下部に連結された散布器98とを備え、タンク97に貯留された肥料あるいは薬剤を、散布器98によってタンク97から取り出して粉粒体供給装置40による種子供給が行なわれた圃場に散布する。
【0086】
(2)上記した筒体70に替え、供給経路Rを点播経路状態に構成する点播用の筒体と、供給経路Rを条播経路状態に構成するシュート形の条播用の筒体とを別々に備えて、点播用の筒体と点播用の筒体とを繰出し機構50の排出口62に付け替える構成を採用して実施してもよい。
【0087】
(3)図14(a)は,別の実施形態を備えた筒体70の供給経路Rを点播経路状態に構成する状態を示す側面図である。図14(b)は,別の実施形態を備えた筒体70の供給経路Rを条播経路状態に構成する状態を示す側面図である。これらの図に示すように、別の実施形態を備えた筒体70は、繰出しケース51に装着される連結筒部75及び位置決めフランジ76を有した筒本体部70Aと、この筒本体部70Aの車体前方側に脱着自在なフード部70B及びガイド部70Cとを備えて構成してある。フード部70Bは、図12(a),(b),(c),(d)に示す筒体70の筒状部71と同一の構成を備えている。ガイド部70Cは、図12(a),(b),(c),(d)に示す筒体70のシュート部72と同一の構成を備えている。
【0088】
つまり、図14(a)に示すように、筒体70は、筒本体部70Aにフード部70Bが取り付けられることにより、供給経路Rを点播経路状態に構成する。
【0089】
図14(b)に示すように、筒体70は、筒本体部70Aにガイド部70Cが取り付けられることにより、供給経路Rを条播経路状態に構成する。
【0090】
(4)図15(a)は,さらに別の実施形態を備えた筒体70の供給経路Rを点播経路状態に構成する状態を示す側面図である。図15(b)は、さらに別の実施形態を備えた筒体70の供給経路Rを条播経路状態に構成する状態を示す側面図である。これらの図に示すように、さらに別の実施形態を備えた筒体70は、繰出しケース51に装着される連結筒部75及び位置決めフランジ76を有した筒本体部70Aと、この筒本体部70Aの内部に脱着自在なガイド部73とを備えて構成してある。筒本体部70Aは、図12(a),(b),(c),(d)に示す筒体70の筒状部71と同一の構成を備えている。ガイド部73は、図12(a),(b),(c),(d)に示す筒体70のシュート部72と同一の構成を備えている。
【0091】
図15(a)に示すように、筒体70は、筒本体部70Aからガイド部73が取り外されることにより、供給経路Rを点播経路状態に構成する。
【0092】
図15(b)に示すように、筒体70は、筒本体部70Aの内部にガイド部73が取り付けられることにより、供給経路Rを条播経路状態に構成する。
【0093】
(5)繰出しロール52を利用して繰出し機構50を構成するに替え、車体上下向きの軸芯周りに回転する目皿を利用して繰出し機構を構成して実施してもよい。
【0094】
(6)鉄コーティング処理が行われた種子は、カルパコーティング処理が行われた種子及びコーティング処理が行われていない種子よりも比重が大であり、また鳥に啄ばまれない特性を備えている。従って、鉄コーティング処理が行われた種子を供給対象の種子として構成した粉粒体供給装置の場合、供給間隔の面、及び種子の纏まりの面においてより点播精度がよい点播形態での播種を行うことができ有利であり、かつ圃場に供給された種子を埋める必要がなくて有利であるが、カルパコーティング処理が行われた種子やコーティング処理が行われていない種子を供給対象の種子として構成して実施してもよい。すなわち、供給経路Rの下端側を圃場泥土に突入させたり、作溝器を採用したりして、圃場に落下した種子を埋める構成を採用して実施してもよい。
【0095】
(7)種子を圃場面に供給して埋めない場合、接地フロート21を省略して実施してもよい。
【0096】
(8)上記した実施形態では、第1〜第6発明(請求項1〜6)のすべての構成を備えた作業車を例に示したが、第1及び第2発明の構成を備えないで、第3発明の構成を備えた作業車であってもよく、第1及び第2発明の構成を備えないで第4〜第6発明の構成を備えた作業車であってもよい。
【0097】
具体的には、例えば、点播経路状態及び条播経路状態のいずれか一方のみ現出可能な作業車において、第3発明の構成のみ、第4〜第6発明の構成のみを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
粉粒体供給装置が種子を供給対象物とした作業車の他、粉粒体供給装置が粉粒状の肥料や薬剤を供給対象物とした作業車にも本発明は利用できる。したがって、種子、肥料、薬剤などを総称して粉粒体と呼称する。
【符号の説明】
【0099】
2a 車軸芯
20 作業部
21 接地フロート
40 粉粒体供給装置
41 タンク
44a タンクの後端
50 繰出し機構
52 繰出しロール
53 ガイド
53a ガイドの作用終端箇所
54 繰出し凹部
60 摺り切りブラシ
61 清掃ブラシ
62 排出口
70 筒体
71 筒状部
72 シュート部
81 入力ケース
81b 入力軸
90 ドレン通路
B 受け入れ箇所
C 水平線
D 鉛直線
E 排出箇所
P 回転軸芯
R 供給経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に供給する粉粒体を貯留するタンクから粉粒体を設定量ずつ間欠的に繰り出し、繰り出した粉粒体を自然落下によって排出口から排出する繰出し機構を有した粉粒体供給装置が備えられた作業部を、自走車に連結し、
前記粉粒体供給装置に、前記繰出し機構の前記排出口からの粉粒体を圃場に落下させて供給する供給経路を設け、
前記供給経路を、前記排出口から落下した粉粒体をこれに接触しないで圃場に落下させる点播経路状態と、粉粒体が前記点播経路状態の場合よりも車体前後方向に広く分散して列状に圃場に落下するように前記排出口から落下した粉粒体をこれに接触して案内して圃場に落下させる条播経路状態とに切り換え自在に構成してある作業車。
【請求項2】
前記供給経路を前記点播経路状態に構成する車体上下向きの筒状部と、前記供給経路を前記条播経路状態に構成するよう下端側ほど車体後方側に位置した傾斜状態のシュート部とを有した筒体を、前記筒状部が前記供給経路を構成する取り付け姿勢と、前記シュート部が前記供給経路を構成する取り付け姿勢とに前記排出口に付け替え自在に構成して備えてある請求項1記載の作業車。
【請求項3】
前記作業部に接地フロートを設け、前記粉粒体供給装置に前記タンクを設け、
前記タンクの後端の車体前後方向での位置と、前記接地フロートの後端の車体前後方向での位置とを一致またはほぼ一致させてある請求項1又は2記載の作業車。
【請求項4】
前記繰出し機構を、周面に形成された繰出し凹部によって粉粒体の繰出しを行なう繰出しロールを一回転方向に駆動回転自在に備えて構成し、
前記繰出しロールが前記タンクからの粉粒体を前記繰出し凹部に受け入れるように前記繰出しロールの上側に位置する受け入れ箇所よりも繰出しロール回転方向下手側に、摺り切りブラシを前記繰出しロールの周面に作用するように設け、
前記受け入れ箇所よりも繰出しロール回転方向上手側に、清掃ブラシを前記繰出し凹部に作用するように設けてある請求項1〜3のいずれか一項に記載の作業車。
【請求項5】
前記受け入れ箇所から下降移動する前記繰出し凹部に閉じ作用するように前記繰出しロールの周面に沿って位置して、前記繰出しロールが前記繰出し凹部から粉粒体を落下させる排出箇所を前記繰出しロールの下側に設定するガイドを設け、
前記ガイドの作用終端箇所を、前記繰出しロールの回転軸芯を通る水平線と前記繰出しロールの回転軸芯を通る鉛直線との間の前記水平線よりも前記鉛直線に近い箇所に配置してある請求項4記載の作業車。
【請求項6】
前記受け入れ箇所から粉粒体を取り出すドレン通路を設け、
前記清掃ブラシを、前記繰出しロールに作用するとともに前記受け入れ箇所と前記ドレン通路を仕切る仕切り状態と、前記ドレン通路を前記受け入れ箇所に連通させる仕切り解除状態とに切り換え自在に構成してある請求項4又は5記載の作業車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−78339(P2011−78339A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231790(P2009−231790)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】