説明

使い捨ておむつ

【課題】ウエスト域全体が適度なフィット性を有し、吸液性コアの存在領域での吸液性能を阻害せず、かつグラフィックシートを変形させない程度の低伸縮域を含む使い捨ておむつに関する。
【解決手段】縦方向Y及び横方向Xと肌当接面及び非肌当接面と前ウエスト域13と後ウエスト域14とクロッチ域15とウエスト開口16及び一対のレッグ開口17a,17bと、ウエスト域13、18を画成する弾性ウエストパネル11と、吸液性コア28を有する吸収性シャーシ12とを含むおむつ10において、ウエストパネル18,19が、肌当接面側の伸縮性シートで形成され、吸収性シャーシの前後端部が伸縮性シートの非肌当接面の側に取り付けられており、ウエスト域13,14のうちの少なくとも後ウエスト域が伸縮性シートの吸液性コアと対向する部位の一部に残余の部位よりも低い伸長応力を有する低伸縮域を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨てのパンツ型おむつやトレーニングパンツ等のパンツ型の着用物品、特に、吸液性コアの吸液性能が阻害されることなく、かつ、外部から視認可能なグラフィックに皺などの変形が生じることのない使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域において、ウエスト方向へ延びる複数条のウエスト弾性部材と、レッグ開口縁部に沿って延びるレッグ弾性部材とを含むパンツ型着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、ウエスト開口縁部に配設された複数条の上部ウエスト弾性部材と、レッグ開口縁部に沿って延びるレッグ弾性部材と、上部ウエスト弾性部材とレッグ開口縁部との間において、吸収体の存在域では伸縮性が発現されないように配設された複数条の下部ウエスト弾性部材とを含む使い捨ておむつが開示されている。
【特許文献1】特開2002−65733号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された発明の着用物品では、前後ウエスト域の吸収体の存在域において下部ウエスト弾性部材の伸縮性が発現されていないので、下部ウエスト弾性部材の収縮が吸液性コアに作用して、吸液性コアに皺が生じるということはなく、吸液性コアの吸液性能が阻害されることはない。
【0004】
また、前後ウエスト域の吸液性コアの存在域において、おむつの外面から視認可能なグラフィックを印刷したシートが貼着されている場合には、シートに下部ウエスト弾性部材の収縮力が作用することはないので、グラフィックに妄りに皺などの変形が生じることはない。
【0005】
しかし、吸液性コアの存在域において下部ウエスト弾性部材の伸縮性が全く発現されていない場合には、おむつのずれ落ちを防止するために、吸液性コアの両側縁部の横方向外方に位置する下部ウエスト弾性部材の伸縮応力を高める必要がある。この場合には、着用者に無用な圧迫感を与えるとともに、おむつを着用するためにウエスト開口を両手で広げた際に過度の力を要するので、おむつのはかせ易さ、はき易さを損なうという問題があった。
【0006】
そこで、本発明では、前後ウエスト域全体が適度なフィット性を有し、前後ウエスト域の吸液性コアの存在領域において、吸液性コアの吸液性能を阻害せず、かつ、該域に配置されたグラフィックシートを変形させない程度の伸縮応力を有する低伸縮域を含む使い捨ておむつの提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、縦方向及び横方向と、肌当接面及び非肌当接面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、ウエスト開口及び一対のレッグ開口と、前記前ウエスト域を画成する弾性の前ウエストパネルと、前記後ウエスト域を画成する弾性の後ウエストパネルとからなる弾性ウエストパネルと、前記前後ウエスト域の一部及び前記クロッチ域を画成し、前記弾性ウエストパネルに取り付けられ、吸液性コアを有する吸収性シャーシとを含む使い捨ておむつである。
【0008】
本発明の特徴とするところは、前記前後ウエストパネルが、前記肌当接面側に位置する伸縮性シートから形成され、前記吸収性シャーシの前後端部が前記伸縮性シートの前記非肌当接面の側に取り付けられており、前記前後ウエスト域のうちの少なくとも前記後ウエスト域において、前記伸縮性シートの前記吸液性コアと対向する部位の一部に残余の部位よりも低い伸長応力を有する低伸縮域が形成されていること、にある。
【0009】
本発明は、前記特徴とする構成のほかに、以下の好ましい実施の態様を含む。
(1)前記伸縮性シートが、非伸縮性不織布と前記非伸縮性不織布に伸長状態で接合された伸縮性不織布とから形成されており、前記低伸縮域が前記伸縮性不織布に画成されている。
(2)前記前後ウエストパネルが、肌当接面側に位置する内層シートと、非肌当接面側に位置する外層シートとから構成された伸縮性シートから形成されており、前記吸収性シャーシの前後端部が前記内層シートと前記外層シートとの間に介在されて少なくとも前記内層シートの前記非肌当接面側に取り付けられ、前記外層シートの前記吸液性コアと対向する部位には、非伸縮域が画成されて
いる。
(3)前記外層シートが、非伸縮性不織布と、前記非伸縮性不織布に伸長状態で取り付けられた前記横方向へ延びる複数条のストランド状の弾性要素とから形成されており、前記非伸縮域が前記弾性要素の一部を切断又は除去することによって形成されている。
(4)前記外層シートの非伸縮域と前記吸収性シャーシとの間には、前記外層シートの外面から視認可能なグラフィックが印刷されたグラフィックシートが配置されている。
(5)前記低伸縮域が、前記伸縮性不織布の一部を切断又は除去することによって形成されている。
(6)前記吸収性シャーシが、前記吸液性コアの両側縁から横方向外方へ延びるサイドフラップと、前記吸液性コアの前後端縁から縦方向外方へ延びるエンドフラップとを有し、前記吸収性シャーシの前後端部において、前記エンドフラップと前記サイドフラップとが前記内層シートの前記非肌当接面側に取り付けられている。
(7)前記吸収性シャーシが、前記サイドフラップに形成された一対のバリヤカフを有し、前記バリヤカフの前後端部が前記内層シートの前記非肌当接面側に取り付けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、前後ウエスト域のうちの少なくとも後ウエスト域において、伸縮性シートの吸液性コアと対向する部位の一部に残余の部位よりも低い伸長応力を有する低伸縮域が形成されているので、吸液性コアの存在域を含む後ウエスト域全体が適度なフィット性を有するとともに、吸液性コアの吸液性能を阻害されることはなく、かつ、該域に配置されたグラフィックシートに皺などの変形が生じるおそれもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、おむつ10の斜視図、図2は、おむつ10を縦方向Yと横方向Xとに伸展したときの展開平面図、図3は、おむつ10の分解斜視図、図4は、後ウエストパネル19を形成する内層シート21の分解斜視図、図5は、図2のV−V線断面図である。なお、以下の記述において、「伸縮性」とは、弾性的に伸縮性を有することを意味する。「非伸縮性」とは、弾性的に非伸縮性であることを意味し、非弾性的に伸長する場合を含む。
【0012】
図1に示すように、おむつ10は、縦方向Y及び横方向Xと、肌当接面側と非肌当接面側と、環状の弾性ウエストパネル11と、弾性ウエストパネル11の肌当接面側に取り付けられた吸収性シャーシ12と、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、前後ウエスト域13,14の間に位置するクロッチ域15と、ウエスト開口16と一対のレッグ開口17a,17bとを含む。ウエスト開口16は、環状の弾性ウエストパネル11で画成されている。
【0013】
図1及び図2に示すとおり、弾性ウエストパネル11は、前ウエスト域13を形成する前ウエストパネル18と、後ウエスト域14を形成する後ウエストパネル19とから形成されている。前ウエストパネル18は、内端縁18aと、外端縁18bと、各外側縁18c,18cと、円弧状に凹曲して、斜めに内方へ延びる各内側縁18d,18dとによって画成されるほぼ台形状を有し、後ウエストパネル19は、内端縁19aと、外端縁19bと、外側縁19c,19cと、斜めに内方へ延びる内側縁19d,19dとによって画成されるほぼ台形状を有している。
【0014】
おむつ10の着用状態において、前ウエストパネル18の各外側縁18c,18cと後ウエストパネル19の各外側縁19c,19cとは互いに重ねられて、縦方向Yへ間欠的に並ぶサイドシーム部24において、公知の手段、例えば、熱エンボス加工、ソニックなどの各種の熱溶着手段で接合されることによって連結され、ウエスト開口16が画成されるとともに、これら前後ウエストパネル18,19と吸収性シャーシ12とによって、一対のレッグ開口17a,17bが画成されている。
【0015】
図3に示すとおり、前後ウエストパネル18,19は、肌当接面側に位置し、横長方形状を有する伸縮性の内層シート20,21と、非肌当接面側に位置し、前後ウエストパネル18,19の外面を形成し、ほぼ台形状を有する、伸縮性の外層シート22,23とから構成されている。内層シート20,21と外層シート22,23とは、それらシート20,21,22,23間に吸収性シャーシ12が介在された状態において互いに重ね合わせられ、内層シート20,21の外端縁20b,21bと外層シート22,23の外端縁22b,23bとがそれぞれホットメルト接着剤(図示せず)で固着され、前後ウエストパネル18,19の外端縁18b,19bを形成し、内層シート20,21の両側縁20c,20c,21c,21cと外層シート22,23の両側縁22c,22c,23c,23cとが互いに重ね合わせられてホットメルト接着剤(図示せず)で固着されることによって、前後ウエストパネル18,19の外側縁18c,18c,19c,19cが形成されている。
【0016】
このように、本実施形態では、前後ウエストパネル18,19は、内外層シート20,21,22,23によって構成されているが、内層シート20,21のみから形成されていてもよい。この場合には、吸収性シャーシ12の前後端部が内層シート20,21の非肌当接面の側に取り付けられる。
【0017】
内層シート20,21には、たとえば、伸縮性のラミネート繊維不織布、外層シート22,23には、疎水性繊維不織布と透湿性又は不透湿性のプラスチックシートを含むラミネートシートが好適に使用される。
【0018】
具体的には、図4に示すとおり、後ウエストパネル19を形成する内層シート21は、非伸縮性不織布25と、伸長状態で非伸縮性不織布25に接合された伸縮性不織布26を含むラミネートシートであって、これらのシート25,26は、非伸縮性不織布25の肌当接面の側に波状に塗布されたホットメルト接着剤27によって接合されている。さらに具体的には、伸縮性不織布26は、エラストマー繊維と非伸縮性繊維を含む混合繊維不織布を公知のロール延伸手段等によって機械的に延伸したものであって、非伸長時の寸法よりも約1.5〜3倍に横方向Xへ伸長された状態で非伸縮性不織布25に接合されていることが好ましい。伸長倍率が1.5倍以下の場合には、非伸縮性不織布25との接合状態、ホットメルト接着剤の分量にもよるが、後記の効果を奏するための所要の弾性伸縮性を発現することができず、伸長倍率が3倍以上の場合には、混合繊維不織布をロール延伸した際に、混合繊維不織布が破断して、加工が困難となるおそれがあるからである。
【0019】
また、非伸縮性不織布25と伸縮性不織布26とを接合するホットメルト接着剤27の量は、1〜10g/mであることが好ましい。ホットメルト接着剤27の量が、1g/m以下の場合には、非伸縮性不織布25と伸縮性不織布26との接合力が不十分なため製造工程中又はおむつ10の着用中にシート25,26どうしが剥がれるおそれがあり、また、ホットメルト接着剤27の量が、10g/m以上の場合には、伸縮性不織布26の伸縮性が阻害され、所要の伸縮力を発現することができなくなるおそれがあるとともに、ホットメルト接着剤27がシート25,26の外面に滲み出るおそれがあるからである。
【0020】
図4では、後ウエストパネル19を形成する内層シート21のみを示しているが、前ウエストパネル18を形成する内層シート20も同様の構成を有している。
【0021】
このように構成された内層シート20,21において、伸縮性不織布26は、吸液性コア28の存在域において、間欠的に切断されており、低伸縮域30a,30bが形成されている。すなわち、吸液性コア28の存在する前後ウエスト域13,14の中央近傍において、伸縮性不織布26は、縦方向Yへ延び、横方向Xへ並列する千鳥状の複数の切断部31によって間欠的に切断されており、切断領域(低伸縮域30a,30b)において、その伸縮性能が低減されている。これによって、低伸縮域30a,30bでは、吸液性コア28の吸液性能を阻害しない程度の比較的に低い伸長応力を発現させることができる。
【0022】
伸縮性不織布26を間欠的に切断する方法としては、各種の切断手段、例えば、熱シールカッター、超音波シールカッター、圧接カッター、ウォータージェットカッターを用いることができる。本実施形態では、切断パターンは、千鳥状であるが、伸縮性不織布26の伸縮力を所要の低伸縮力に低減することができる限りにおいては、ジグザグ状、格子状等の各種の切断パターンを採用することができる。ただし、各切断パターンを形成する各々の切断部31の長さは、伸縮性不織布26の大きさにもよるが、3〜5mmであることが好ましい。各切断部31の長さが3mm以下の場合には、各種のカッターによる面圧が掛かり難く、伸縮性不織布26を形成する繊維の切断が不十分となるおそれがあり、一方、各切断部31の長さが5mm以上の場合には、切断部31によって形成される開孔が大きくなり、おむつ10の使用中に、開孔の縁部から繊維が破れ易くなるおそれがあるからである。
【0023】
また、千鳥状の切断パターンを形成する、縦方向へ延びる複数の切断部(スリット)31からなる列において、縦方向Yへ隣り合う切断部31どうしの離間寸法Rは、1〜7mmであることが好ましい。離間寸法Rが1mm以下の場合には、隣り合う切断部31,31どうしがつながりやすくなり、おむつ10の装着時に伸縮性不織布26が破断するおそれがあり、一方、7mm以上の場合には、切断部31どうしの間に位置する吸液性コア28の部位に伸縮性不織布26の伸縮力が作用して、吸液性コア28の吸液性能を阻害するおそれがあるからである。
【0024】
なお、図示されていないが、内層シート20,21を伸縮性不織布26のみで形成してもよいし、不織布又はプラスチック製の伸縮性シートと伸縮性不織布26とによるラミネートシートから形成してもよい。後者の場合には、内層シート20,21を形成した後に、熱シールカッター等によって切断処理を施すことによって、伸縮性不織布26のみならず、伸縮性シートにも低伸縮域を形成することができる。
【0025】
再び、図3を参照すれば、前ウエストパネル18を形成する外層シート22の肌当接面側には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状の第1ウエスト弾性要素32が、縦方向Yへ所与寸法離間し、かつ、前ウエスト域13の中央部に形成され、低伸縮域30aと対向する位置にある第1非伸縮域34を介して横方向Xに離間対向して配設されており、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して固着されている。第1ウエスト弾性要素32は、内層シート20によって被覆されている。
【0026】
同様に、後ウエストパネル19を形成する外層シート23の内面には、外側縁19c,19c間において横方向Xへ延びる複数条のストランド状の第2ウエスト弾性要素35が、後ウエスト域14の中央部に形成され、低伸縮域30bと対向する位置にある第2非伸縮域36を介して横方向Xへ離間対向して配設されているとともに、内側縁間23d,23dにおいて横方向Xへ延びる複数条のストランド状の第3ウエスト弾性要素37が配設されている。第2ウエスト弾性要素35は内層シート21に被覆され、第3ウエスト弾性要素37は、内側縁23d,23d間を横方向Xへ延びる伸縮性または非伸縮性の略台形状を有する補助シート39によって被覆されている。
【0027】
なお、ここでいう「非伸縮域」とは、弾性要素が切断または除去されて実質的に弾性要素が存在しない場合と、弾性要素の収縮性が発現されていない場合とをいう。後者は、各ウエスト弾性要素32,35,37を外層シート22,23の外側縁22c,22c,23c,23c間に一連に配設し、第1及び第2非伸縮域34,36と対向する部位をホットメルト接着剤等によって固定することによって、実質的にその収縮性が発現しない状態とすることをいう。
【0028】
また、「低伸縮域」とは、第1及び第2ウエスト弾性要素32,35が配設された伸縮領域よりも低い伸長応力を有する場合と、伸縮性不織布26の低伸縮域30a,30bが、伸縮性不織布26の残余の部位よりも低い伸長応力を有する場合とをいう。したがって、低伸縮域30a,30bは、非伸縮性のシートから形成された内層シート20,21に、第1及び第2ウエスト弾性要素32,35が配設された伸縮域よりも伸長応力の低い弾性要素、または伸縮性シートなどを取り付けることによっても形成することができる。
【0029】
さらに、低伸縮域30a,30bは、前後ウエスト域13,14のうちの後ウエスト域14にのみ形成されていてもよく、その場合には、第1非伸縮域34を前ウエスト域13に形成する必要はない。
【0030】
前後ウエスト域13,14の第1非伸縮域34と第2非伸縮域36とにおける外層シート22,23を形成するラミネートシートの間には、外部から透視可能なグラフィックがプリントされたプラスチック製又は不織布製のグラフィックシート40a,40bが配置されている。このように、グラフィックシート40a,40bは、各ウエスト弾性要素32,35,37が実質的に存在していない又はその収縮性が発現されていない第1及び第2非伸縮域34,36に位置していることから、各ウエスト弾性要素32,35,37の収縮作用によって皺などの変形が生じるおそれはない。なお、グラフィックシート40a,40bは、外層シート22,23と吸収性シャーシ12との間に配置されていてもよい。
【0031】
吸収性シャーシ12は、吸液性コア28を有する吸液性構造体42を含み、吸液性構造体42の下面には、ホットメルト接着剤(図示せず)で固着され、クロッチ域15の外面を形成するバックシート43が配置されている。
【0032】
また、吸収性シャーシ12は、吸液性コア28の前後端縁から縦方向Y外方へ延びるエンドフラップと、吸液性コア28の両側縁から横方向X外方へ延びるサイドフラップとをさらに含み、吸収性シャーシ12の前後端部において、エンドフラップとサイドフラップとが内層シート20,21の肌当接面側に取り付けられている。
【0033】
図5に示すとおり、吸液性構造体42は、不透液性のバリヤシート44と、バリヤシート44に被包されるように、その肌当接面側に取り付けられた吸収性パッド45とを有する。
【0034】
図5に示すとおり、バリヤシート44は、両側縁部44a,44bが、それぞれZ字状に折り畳まれた状態で吸収性パッド45の両側部の下面にホットメルト接着剤46を介して固定されており、Z字状に折り畳まれた両側部44a,44bは、互いに横方向Xへ離間対向し、縦方向Yへ延びるバリヤカフ47a,47bを形成している。
【0035】
各バリヤカフ47a,47bでは、吸収性パッド45の両側部において、重ね合わされたバリヤシートの両側部44a,44bの内面の一部がホットメルト接着剤48で固着されており、両側部44a,44bの折曲された部位によってスリーブ状の自由縁部が形成されている。自由縁部は、おむつの展開状態において、外側へ向かって折曲されており、その内面には、縦方向Yへ延びる3本の弾性要素49a,49b,49c,50a,50b,50cがホットメルト接着剤(図示せず)を介してそれぞれ取り付けられている。
【0036】
また、図示されていないが、各バリヤカフ47a,47bは、前後ウエスト域13,14において、内層シート20,21の非肌当接面側にホットメルト接着剤(図示せず)を介して固着されている。これにより、吸液性構造体42上に排泄された排泄物が前後ウエスト域13,14の方向へ向かって流れたとしても、前後ウエスト域13,14から外部へ漏れ出るおそれはない。
【0037】
なお、本実施形態では、各バリヤカフ47a,47bの自由縁部の内部にそれぞれ3本の弾性部材49a,49b,49c,50a,50b,50cが取り付けられているが、おむつ10の着用状態において、各弾性部材49a,49b,49c,50a,50b,50cが自由縁部を着用者の鼠径部を圧接し得る所要の伸長応力を有するものであれば、少なくとも1本が配置されていればよく、また、バリヤカフ47a,47bは、バリヤシート44ではなく、別体の弾性シートによって形成されていてもよい。
【0038】
吸収性パッド45は、透液性の内面シート51と、不透液性の外面シート52と、内外面シート51,52の間に介在された吸液性コア28とを含む。
【0039】
吸液性コア28は、フラッフパルプと、高吸収性ポリマー(SAP)と、必要に応じて熱溶着性ステープル繊維との混合を含み、その保形のために、ティッシュペーパ等の液拡散性のシートで被覆されていることが好ましい。吸液性コア28は、保形性及び吸液拡散性の改善のため、いわば砂時計の輪郭形状に圧縮されており、おむつ10を構成する他の各シート部材より高剛性又は半剛性である。
【0040】
図6は、説明の便宜上、吸液性コア28を除く吸収性シャーシ12を構成する他の部材を全て省略し、外層シート22,23と、グラフィックシート40a,40bと、吸液性コア28と、内層シート20,21とを示した図である。
【0041】
既述のとおり、前後ウエスト域13,14の吸液性コア28の存在域では、第1及び第2非伸縮域34,36が形成されているので、第1〜3ウエスト弾性要素32,35,37の収縮によって、吸液性コア28の吸収性能が阻害されるおそれはなく、また、グラフィックシート40a,40bに皺などの変形が生じて、グラフィックの形状が不明瞭となるおそれもない.
【0042】
しかし、前後ウエスト域13,14の吸液性コア28の存在域において、第1及び第2非伸縮域34,36を形成し、全く弾性要素などの伸縮性が該領域に作用していない場合には、吸液性コア28は他のシート部材に比して剛性が高いので、着用者の身体に密着せず、吸液性コア28と着用者の身体との間に隙間が生じて、排泄物が外部へ漏出するおそれがある。また、非伸縮域を形成することにより、おむつ10全体のフィット性が低下するので、所要のフィット性を確保するために、非伸縮域を除く領域、とりわけ、非伸縮域の両側に位置する伸縮域の伸長応力を大きくする必要がある。この場合には、局部的に伸縮域の伸長応力が大きくなることによって、おむつの着用感を損ねるばかりではなく、着用者の肌に圧迫痕(ギャザー痕)が付くおそれがある。
【0043】
そこで、本発明では、着用者の身体に当接する内層シート20,21に低伸縮域30a,30bが形成されており、これにより、吸液性コア28を着用者の身体に密着させるとともに、前後ウエスト域13,14の吸液性コア28の存在域であっても、その吸液性能を阻害することはない。また、前後ウエスト域13,14全体が、いわば、面圧力によって適度なフィット性を有することで、局所的に過度の伸長応力を付与する必要はなく、着用感を損ねることはない。
【0044】
ここで、伸縮性不織布の低伸縮域30a,30bを外層シート22,23に形成することも考えられるが、その場合には、伸縮性不織布がグラフィックシート40a,40bよりも非肌当接面側に位置することになるので、たとえ低伸縮域30a,30bによって、伸縮性不織布の伸長応力が低減されている場合であっても、低伸縮域30a,30bの収縮によりグラフィックシート40a,40bに皺などの変形が生じるおそれがあり、好ましくない。
【0045】
本発明がその効果を奏するためには、前後ウエスト域13,14の低伸縮域30a,30bそれぞれの横方向Xにおける幅寸法W1,W3が、対向する吸液性コア28の横方向Yにおける幅寸法W2,W4の0.4〜0.95倍であることが好ましい。低伸縮域30a,30bの横方向Xにおける幅寸法W1,W3が、吸液性コア28の横方向Xにおける幅寸法W2,W4の0.4倍以下の場合には、前後ウエスト域14における吸液性コアの存在域には非伸縮域34,36が形成され、第1及び第2ウエスト弾性要素32,35の伸長力が発現されていないので、低伸縮域30a,30bが存在していない領域と重なる吸液性コア28が着用者の身体に密着せず、吸液性コア28と着用者の身体との間に隙間が生じて、体液が外部へ漏れるおそれがある。一方、低伸縮域30a,30bの横方向Xにおける幅寸法W1,W3が、吸液性コア28の横方向Xにおける幅寸法W2,W4の0.95倍以上の場合には、前後ウエスト域13,14の吸液性コア28の全体に低伸縮域30a,30bの伸長応力が作用するので、その吸液性能が低下するおそれがある。
【0046】
本実施形態から構成されたおむつ10を下記の方法により評価した。その結果を表1に示す。
【0047】
<実施例>
本実施形態の構成からなるおむつ10を製造した。内層シート20,21を形成する伸縮性不織布26の低伸縮域30a,30bを各切断部31の長さを4mm、縦方向Yに隣り合う切断部31どうしの離間寸法Rを4mmに設定して千鳥状のパターンで切断した。
【0048】
<比較例1>
外層シートの中央部に非伸縮域が形成されており、内層シートに伸縮性不織布を用いていない従来品をサンプルとした。
【0049】
<比較例2>
外層シートの中央部に非伸縮域が形成されており、内層シートに伸縮性不織布を用いた本実施形態と同様の構成(ただし、伸縮性不織布には低伸縮域が形成されていない)を有するおむつを製造してサンプルとした。
【0050】
<面圧測定>
各おむつの後ウエスト域における吸液性コアの存在域(後ウエスト域の中央部)と、吸液性コアの存在域の両側に位置する、ウエスト弾性要素が配設された部位(後ウエスト域の両側部)の圧力(hpa)を公知の測定方法により測定した。
【0051】
<おむつ着用後の吸液性コアの幅寸法の測定>
比較例1、比較例2及び本実施例の吸収体の幅寸法を同一の寸法(130mm)に設定し、一定時間おむつを着用した後の各寸法を測定した。
【0052】
<おむつ着用後の前後ウエスト域のずれ幅寸法の測定>
各おむつを一定時間着用した後において、前後ウエスト域が着用時の位置から上下方へずれた時のずれ幅を測定した。
【0053】
【表1】

【0054】
表1に示す結果から明らかなように、比較例1では、後ウエスト域の中央部の面圧力がほとんどなく、後ウエスト域の両側部に圧力が集中し、高い面圧力が生じており、比較例2では、後ウエスト域の中央部と両側部とにおいて、ほとんど面圧力の差はないが、実施例では、中央部の面圧力が両側部の面圧力の半分以下である。
【0055】
また、比較例1では、後ウエスト域の中央部においてウエスト弾性要素及び伸縮性不織布による伸縮力が全く発現されていないので、吸液性コアの幅寸法に変化はなく、比較例2では、伸縮性不織布の伸縮力によって吸液性コアが収縮している。一方、実施例では、吸液性コアはわずかに収縮しているが、前後ウエスト域のずれ寸法は比較例1及び2のおむつと比べて小さくなっている。
【0056】
本発明では、内層シート20,21を形成する伸縮性シートとして、伸縮性繊維不織布26を使用しているが、非伸縮性の繊維不織布に複数条からなるストランド状の弾性要素が取り付けられて伸縮性が付与されたシートから形成されていてもよい。
【0057】
弾性ウエストパネル11や吸収性シャーシ12など、おむつ10を構成する各構成部材には、本明細書中に特に記載がされていない限りにおいて、慣用されている各種の材料を制限なく用いることができる。また、本実施形態では、前後ウエスト域13,14は、前後ウエストパネル18,19から構成されているが、それらが一体となっておむつ全体の外形を形成する連続したシート部材から形成されていてもよい。さらに、おむつ10は、本実施例のように、弾性ウエストパネル11と吸収性シャーシ12とが別体で構成されたものではなく、砂時計型のおむつの外形を有する弾性ウエストパネルの間に吸液性コアが直接介在されたものであってもよいし、パンツ型の使い捨ておむつに限らず、前後ウエスト域の両側縁が予め連結されていないオープン型の使い捨ておむつであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】使い捨ておむつの斜視図。
【図2】図1の使い捨ておむつの展開平面図。
【図3】使い捨ておむつの分解斜視図。
【図4】後ウエストパネルを形成する内層シートの分解拡大図。
【図5】図2のV−V線断面図。
【図6】おむつの構成部材の一部を省略した平面図。
【符号の説明】
【0059】
10 使い捨ておむつ
11 弾性ウエストパネル
12 吸収性シャーシ
13 前ウエスト域
14 後ウエスト域
15 クロッチ域
16 ウエスト開口
17a,17b レッグ開口
18 前ウエストパネル
19 後ウエストパネル
20,21 内層シート(伸縮性シート)
22,23 外層シート
25 非伸縮性不織布
26 伸縮性不織布
28 吸液性コア
30a,30b 低伸縮域
34,36 非伸縮域
40a,40b グラフィックシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及び横方向と、肌当接面及び非肌当接面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、ウエスト開口及び一対のレッグ開口と、前記前ウエスト域を画成する弾性の前ウエストパネルと、前記後ウエスト域を画成する弾性の後ウエストパネルとからなる弾性ウエストパネルと、前記前後ウエスト域の一部及び前記クロッチ域を画成し、前記弾性ウエストパネルに取り付けられ、吸液性コアを有する吸収性シャーシとを含む使い捨ておむつにおいて、
前記前後ウエストパネルが、前記肌当接面側に位置する伸縮性シートから形成され、前記吸収性シャーシの前後端部が前記伸縮性シートの前記非肌当接面の側に取り付けられており、
前記前後ウエスト域のうちの少なくとも前記後ウエスト域において、前記伸縮性シートの前記吸液性コアと対向する部位の一部に残余の部位よりも低い伸長応力を有する低伸縮域が形成されていることを特徴とする前記おむつ。
【請求項2】
前記伸縮性シートが、非伸縮性不織布と前記非伸縮性不織布に伸長状態で接合された伸縮性不織布とから形成されており、前記低伸縮域が前記伸縮性不織布に画成されている請求項1記載のおむつ。
【請求項3】
前記前後ウエストパネルが、肌当接面側に位置する内層シートと、非肌当接面側に位置する外層シートとから構成された伸縮性シートから形成されており、前記吸収性シャーシの前後端部が前記内層シートと前記外層シートとの間に介在されて少なくとも前記内層シートの前記非肌当接面側に取り付けられ、前記外層シートの前記吸液性コアと対向する部位には、非伸縮域が画成されている請求項1又は2記載のおむつ。
【請求項4】
前記外層シートが、非伸縮性不織布と、前記非伸縮性不織布に伸長状態で取り付けられた前記横方向へ延びる複数条のストランド状の弾性要素とから形成されており、前記非伸縮域が前記弾性要素の一部を切断又は除去することによって形成されている請求項3記載のおむつ。
【請求項5】
前記外層シートの非伸縮域と前記吸収性シャーシとの間には、前記外層シートの外面から視認可能なグラフィックが印刷されたグラフィックシートが配置されている請求項3又は4記載のおむつ。
【請求項6】
前記低伸縮域が、前記伸縮性不織布の一部を切断又は除去することによって形成されている請求項2〜5いずかに記載のおむつ。
【請求項7】
前記吸収性シャーシが、前記吸液性コアの両側縁から横方向外方へ延びるサイドフラップと、前記吸液性コアの前後端縁から縦方向外方へ延びるエンドフラップとを有し、前記吸収性シャーシの前後端部において、前記エンドフラップと前記サイドフラップとが前記内層シートの非肌当接面側に取り付けられている請求項1〜6いずれかに記載のおむつ。
【請求項8】
前記吸収性シャーシが、前記サイドフラップに形成された一対のバリヤカフを有し、前記バリヤカフの前後端部が前記内層シートの前記非肌当接面側に取り付けられている請求項1〜7いずれかに記載のおむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−57567(P2010−57567A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−224101(P2008−224101)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】