説明

使い捨ておむつ

【課題】 美観を損なうことなく、また製造コストを増加させることなく、吸収体における排泄物の有無や広がりを外部から視認可能にする。
【解決手段】 使い捨ておむつ1の吸収体130の裏面シート120側の表面には、表面シート110側に向けて凹んだ裏面側凹部135が形成される。裏面側凹部135は、吸収体130の長手方向に連続した溝135a,135bを有する。裏面側凹部135は、使い捨ておむつ1の使用前の状態において裏面シート120の外側から視認可能であるとともに、裏面側凹部135の深さDは、吸収体が液体を吸収することによって、吸収体130が液体を吸収する前よりも浅くなるように構成される。吸収体130が液体を吸収すると、親水性繊維、及び粒子状の高分子吸収体が膨張することによって、吸収体130は、少なくとも厚さ方向に膨らむため、外部からは裏面側凹部135が消失して見える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体における排泄物の有無や広がりを外部から視認可能とする使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、尿や便などの排泄物の有無や広がりを裏面シートの外部から視認可能にしたインジケータを備えた使い捨ておむつが知られている(例えば、特許文献1参照)。インジケータは、吸収体と液不透過性の裏面シートとを接合するホットメルト接着剤に水素イオン濃度指数(PH)によって色が変化する成分を混入した塗工剤であり、吸収体の衣服側の所定の領域に塗布されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−341020号公報(第1図、第5頁など)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、インジケータは、上述のような特殊な塗工剤であるため、インジケータの塗布範囲が広範囲に亘ると、製造コストが増加する。また、インジケータは有色であるため、インジケータを広範囲に塗布すると、吸収性物品の衣服側の表面にプリントされた他の絵柄と調和せず、美観を損なうという問題もあった。
【0005】
そこで、本発明は、美観を損なうことなく、また製造コストを増加させることなく、吸収体における排泄物の有無や広がりを外部から確実に視認可能にする使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するために、本発明に係る使い捨ておむつは、液透過性を有する表面シート(表面シート110)と、液不透過性を有する裏面シート(裏面シート120)と、前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、液体を吸収することによって少なくとも厚さ方向に膨らむ吸収体(吸収体130)とを備える使い捨ておむつ(使い捨ておむつ1)であって、前記吸収体の前記裏面シート側の表面には、前記表面シート側に向けて凹んだ裏面側凹部(裏面側凹部135、溝135a、溝135b)が形成され、前記裏面側凹部の表面の少なくとも一部には、前記裏面側凹部の形状に沿って前記裏面シートを前記吸収体と接合する接合材(接合材140)が配置され、前記裏面側凹部は、前記使い捨ておむつの使用前の状態において前記裏面シートの外側から視認可能であるとともに、前記裏面側凹部の深さは、前記吸収体が液体を吸収することによって、前記吸収体が液体を吸収する前よりも浅くなるように構成されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、使い捨ておむつの美観を損なうことなく、また製造コストを増加させることなく、吸収体における排泄物の有無や広がりを正確に知らせることができる使い捨ておむつを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつを着用者の肌に当接する表面側からみた斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつを着用者の肌当接面側の反対側からみた斜視図である。
【図3】図3は、図1に示す領域Sの拡大図である。
【図4】図4は、図1のA−A線における断面図である。
【図5】図5は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図6】図6は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつの吸収体が排泄物を吸収した状態を説明する斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつの吸収体が排泄物を吸収した状態を説明する断面図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る使い捨ておむつの製造方法の一部を説明する図である。
【図9】図9は、第1ロールと第2ロールとを図8における矢印F8方向からみた側面図である。
【図10】図10は、本発明の他の実施形態に係る使い捨ておむつを着用者の肌に当接する表面側からみた斜視図である。
【図11】図11は、図10に示す使い捨ておむつ2のA−A線における断面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施形態に係る使い捨ておむつを着用者の肌当接面側の反対側からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係る使い捨ておむつについて、図面を参照しながら説明する。以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
(使い捨ておむつの構成)
本発明の実施形態に係る使い捨ておむつ1の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、使い捨ておむつ1の着用者の肌当接面側からみた斜視図である。
【0011】
使い捨ておむつ1は、着用者の腹側に対応する前胴回り部10と、着用者の背中側に対応する後胴回り部20と、着用者の股下に対応する股下部30とを有する。使い捨ておむつ1は、前胴回り部10と、後胴回り部20と、股下部30とが一体に成形された、いわゆる1ピースタイプである。
【0012】
後胴回り部20の肌当接面側の幅方向W端部には、係止テープ41,42が配設される。また、前胴回り部10の肌当接面の反対側の幅方向W端部には、係止テープ41,42が係止される係止部43,44が配設される。前胴回り部10と後胴回り部20は、係止テープ41,42及び係止部43,44によって、着用者の腰回りの側部において互いに接合される。
【0013】
使い捨ておむつ1の長手方向Lの縁部には、ウエストギャザー51,52が形成される。ウエストギャザー51,52には、糸状の弾性部材511,521が伸長された状態で配置されている。使い捨ておむつ1の股下部30の幅方向Wの縁部には、レッグギャザー53,54が形成される。レッグギャザー53,54には、糸状の弾性部材531,541が伸長された状態で配置されている。
【0014】
使い捨ておむつ1は、液透過性を有する表面シート110と、液不透過性を有する裏面シート120と、吸収体130とを有する。
【0015】
図2は、使い捨ておむつ1の着用者の肌当接面側の反対側からみた斜視図である。図2に示すように、使い捨ておむつ1の吸収体130の裏面シート120側の表面には、表面シート110側に向けて凹んだ裏面側凹部135が形成されている。裏面側凹部135は、吸収体130の長手方向Lに連続した溝135a,135bを有する。また、溝135a,135bに平行であって、吸収体130の長手方向Lに連続した複数の溝を有する。
【0016】
溝135aは、吸収体130の長手方向Lに沿った中央線CLよりもレッグギャザー53側に傾斜している。また、溝135bは、中央線CLよりもレッグギャザー54側に傾斜している。溝135a,135bは、吸収体130の長手方向Lに連続しており、互いに交差している。このように、裏面側凹部135は、裏面シート120の平面視において格子状である。
【0017】
図3は、図2の領域Sを拡大した拡大図である。図3に示すように、本実施形態では、溝135a,135bが交差して格子状が形成されている。格子の窓に相当する窓部分136は、裏面シート120の平面視において、菱形である。本実施形態では、菱形の対角線la,lbは、使い捨ておむつ1の長手方向Lと幅方向Wに略一致する。本実施形態では、対角線lbよりも対角線laの方が長い。菱形形状を有する窓部分136の頂点は、円弧状に形成されている。例えば、溝の幅w=1.0mm,la=21mm,lb=18mmとする。
【0018】
図4は、図1のA−A線における断面図である。表面シート110は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造のシート状の材料であれば、特に限定されない。織布や不織布の素材としては、天然繊維、化学繊維のいずれも使用できる。
【0019】
天然繊維の例としては、粉砕パルプ、コットン等のセルロースが挙げられる。化学繊維の例としては、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、熱可塑性疎水性化学繊維、又は親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維などが挙げられる。熱可塑性疎水性化学繊維の例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の単繊維、ポリエチレンとポリプロピレンをグラフト重合してなる繊維、芯鞘構造等の複合繊維が挙げられる。
【0020】
不織布を作成する方法としては、乾式(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)及び湿式のいずれか一つの方法を用いることができる。乾式法と湿式法のうち、複数の方法を組み合わせてもよい。また、サーマルボンディング、ニードルパンチ、ケミカルボンディング等の方法が挙げられる。不織布を作成する方法は、上述の方法に限定されない。
【0021】
裏面シート120は、図4に示すように、衣服に当接するバック不織布121と、バック不織布121よりも肌側に位置する液不透過性のバックフィルム122とから構成される。バック不織布121は、SMS不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布から構成された疎水性の不織布である。バックフィルム122は、透湿又は非透湿性のフィルムからなる。バック不織布121とバックフィルム122とは、図示しないが、HMA等で接合されている。カンチレバー測定法(JIS L−1096剛軟性A法)により測定した裏面シート120の剛軟度は、30mm以上110mm以下であることが好ましい。
【0022】
吸収体130は、表面シート110と裏面シート120との間に配置される。吸収体130は、着用者から排出される尿、排泄物などの液体を吸収することによって、少なくとも厚さ方向に膨らむ。吸収体130は、液体を吸収する吸収性コア131と、吸収性シート132とを有する。
【0023】
吸収性コア131は、親水性繊維、粒子状の高分子吸収体(以下、高吸収性ポリマー(SAP)という)を含む。親水性繊維の例としては、粉砕パルプ、コットン等のセルロース、レーヨン、フィブリルレーヨン等の再生セルロース、アセテート、トリアセテート等の半合成セルロース、粒子状ポリマー、繊維状ポリマー、熱可塑性疎水性化学繊維、又は、親水化処理を施した熱可塑性疎水性化学繊維等を単独又は混合して用いることができる。これらの中でも、低コストと吸収体の成形し易さとを考慮すると、粉砕パルプを使用することが好ましい。親水性繊維に高吸収性ポリマーを混合したものを使用してもよい。吸収性コア131は、液体を吸収することのできるティッシュなどの吸収性シート132によって包まれている。
【0024】
吸収体130の坪量は、150g/m以上320g/m以下であることが好ましい。320g/m以上であると、吸収体130に、後述する裏面側凹部135を形成しようとしても、裏面側凹部135の形状が裏面シート120を介して認識可能な程度な凹部の深さが形成できない。また、親水性繊維に対する高吸収性ポリマーの配合比率は、30%〜70%であることが好ましい。高吸収性ポリマーの配合比率が30%以下であると、裏面側凹部135が形成されにくく、裏面側凹部135の形状が保持されにくくなる。また、高吸収性ポリマーの配合比率が70%を超えると、裏面側凹部135が硬くなりすぎて着用者の動きに追従しにくくなるため、装着時の違和感が顕著になる。また、高吸収性ポリマーが多くなると、吸収性シート132が破れることがある。
【0025】
吸収体130は、液体を吸収することによって、少なくとも厚さ方向に膨らむ。そのため、図4に示す裏面側凹部135の深さDは、吸収体130が液体を吸収することによって、吸収体130が液体を吸収する前よりも浅くなる。
【0026】
裏面側凹部135は、吸収体130における凹部形成部137に形成される。凹部形成部137には、粒子状の高吸収性ポリマーが凝集している。
【0027】
液体を吸収する前において、裏面側凹部135の吸収体130の厚みd1は、0.6mm以上1.3mm以下であることが好ましい。より好ましくは、1.0mm以下である。吸収体130の厚みd1が1.3mmよりも厚い場合、使い捨ておむつ1を着用した着用者が動くと、排尿の有無に関係なく、裏面側凹部135の凹部形状が認識しにくくなる。窓部分136における吸収体130の厚さd3は、裏面側凹部135における吸収体130の厚さd1よりも厚い。すなわち、窓部分136の表面は、裏面側凹部135の表面よりも裏面シート120から離れる方向に突出している。裏面側凹部135の形成方法の詳細は、後述する。
【0028】
図4に示すように、裏面側凹部135の表面の少なくとも一部には、裏面側凹部135の形状に沿って裏面シート120を吸収体130と接合する接合材140が配置されている。このため、裏面シート120は、接合材140によって裏面側凹部135の表面の形状に沿って接合されている。接合材140は、裏面側凹部135の表面の少なくとも一部に配置されていればよい。
【0029】
接合材140は、任意のパターンで容易に塗布できるホットメルト接着剤(Hot Melt Adhesive)であることが好ましい。ホットメルト接着剤は、スチレン系ポリマー、粘着付与剤、可塑剤から構成される。スチレン系ポリマーとしては、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体、などを用いることができる。粘着材は上記のものに限られないが、柔らかく、常温で被着体の繊維と繊維の間にめり込んで付着できる常温感圧性ホットメルト接着剤を使用することが好ましい。
【0030】
塗布方法としては、カーテン塗工、スパイラル塗工、Ω塗工などがあげられる。Ω塗工とは、Ω字が連続した形状でHMAを塗布する方法である。なかでも、カーテン塗工を用いることが好ましい。例えば、カーテン塗工の場合、吸収体130の裏面シート120側の全面に、0.8g/mのHMAを霧状に塗布することがあげられる。
【0031】
図5は、使い捨ておむつ1の着用時の状態を示す斜視図である。ただし、着用者の身体は、図示していない。図5に示すように、裏面側凹部135(溝135a,135b)は、使い捨ておむつ1の使用前の状態において、裏面シート120の外側から視認可能に形成されている。裏面側凹部135は、吸収体130が液体を吸収することによって消失するように構成されている。
【0032】
図6,図7を用いて、使い捨ておむつ1の吸収体130が排泄物(ここでは、単に液体という)を吸収した状態について説明する。図6に示す領域Aにおいて、吸収体130が液体を吸収すると、親水性繊維、及び粒子状の高吸収性ポリマーが膨張することによって、吸収体130が少なくとも厚さ方向に膨らむ。
【0033】
このため、溝135a,135bが形成された凹部形成部137において、吸収体130が液体を吸収した後の厚みd2は、液体を吸収する前の厚みd1よりも厚くなる(図7参照、d2>d1)。図6に示す領域Aにおいて、裏面側凹部135の厚みd2がd1よりも厚くなった結果、裏面側凹部135(溝135a,135b)の深さD(図4参照)は、液体を吸収する前よりも浅くなる。これにより、溝135a,135bにおける吸収体130の厚さと窓部分136における吸収体130の厚さとの差が小さくなり、使用前の状態に比べて、溝135a,135bが裏面シート120側から目立たなくなる。吸収体130に十分に液体が吸収された状態においては、溝135a,135bが消失する。
【0034】
以上説明したように、使い捨ておむつ1の吸収体130の裏面シート120側の表面には、表面シート110側に向けて凹んだ裏面側凹部135(溝135a,135b)が形成されており、接合材140によって裏面側凹部135の表面の形状に沿って裏面シート120が接合されている。
【0035】
溝135a,135bは、使い捨ておむつ1の使用前の状態において裏面シート120の外側から視認可能であるが、吸収体130が液体を吸収することによって、溝135a,135bの深さDが液体を吸収する前よりも浅くなる。これにより、溝135a,135bと窓部分136との厚み差が無くなり、使用前の状態に比べて、溝135a,135bが裏面シート120側から目立たなくなる。
【0036】
このため、吸収体130が尿、排泄物などの液体を吸収したこと、及び排泄物の及ぶ範囲を外部から視認できる。すなわち、使い捨ておむつ1において、裏面側凹部135は、いわゆる、インジケータとして機能することができる。
【0037】
また、裏面側凹部135は、無色であるため、他の絵柄に干渉しない。従って、使い捨ておむつ1の美観を損なうことがない。また、水素イオン濃度指数(PH)によって色が変化する成分を混入した塗工剤などを使用しないため、製造コストを抑えることができる。
【0038】
裏面側凹部135は、吸収体130の長手方向Lに連続する。実施形態では特に、裏面側凹部135は、裏面シート120の平面視において格子状であるため、尿、排泄物などの液体が裏面側凹部135を伝って拡散し易い。これにより、例えば、少量の尿が配設された場合でも、広範囲の裏面側凹部135が目立たなくなり、インジケータとしての役割を確実に発揮することができる。
【0039】
吸収体130は、パルプと、粒子状の高吸収性ポリマーとを含み、パルプに対する高吸収性ポリマーの配合比率が30%〜70%である。また、凹部形成部137には、粒子状の高吸収性ポリマーが凝集している。例えば、エンボス加工により裏面側凹部135を形成する場合には、圧力により高吸収性ポリマーが変形し、高吸収性ポリマーの周囲に存在する親水性繊維を取り込んで絡み易くなる。これにより、凹部形成部137においては、高吸収性ポリマーと親水性繊維が分離しにくくなり、吸収体130の内側へ向けて窪んだ形状が維持され易くなる。
【0040】
従って、液体を吸収する前の裏面側凹部135の形状と、液体を吸収した後の裏面側凹部135の形状との差異を際立たせることができ、排泄物の有無や広がりを外部から確実に視認できる。
【0041】
実施形態では、吸収体130の坪量が150g/m以上、320g/m以下である。これにより、裏面側凹部135の形状が裏面シート120を介して認識可能な程度の深さの窪みを形成することができる。
【0042】
使い捨ておむつ1では、カンチレバー測定法により測定した裏面シート120の剛軟度は、30mm以上110mm以下とすることにより、裏面側凹部135の形状に沿って裏面シート120が馴染み易くなるため、裏面側凹部135の形状が裏面シート120の外部から一層視認し易くなる。
【0043】
裏面側凹部135は、エンボス加工などの圧縮加工により形成されることが好ましい。吸収体130にエンボス加工により裏面側凹部135を形成すると、使用前の状態において、裏面側凹部135の凹部の形状を見やすくすることができる。
【0044】
(吸収体に裏面側凹部を形成する方法)
次に、使い捨ておむつ1の吸収体130に裏面側凹部135を形成する方法について説明する。図8は、使い捨ておむつ1を製造する装置の一部を説明する模式図である。装置200は、第1ロール210と、第2ロール220とを有する。
【0045】
第1ロール210は、例えば、吸収体130を形成する吸収性シート132の連続体300に吸収性コア131が包まれることによって形成された中間連続体400と接しながら使い捨ておむつ1の製造工程の流れ方向に沿った機械方向MDに回転する。第1ロール210は、中間連続体400を介して、後述する第2ロール220に押し当てられる。
【0046】
第2ロール220は、第2ロール220の表面に、第2ロール220の法線方向に突出した凸部221が設けられている。凸部221は、裏面側凹部135の形状に対応する格子状に形成されている。
【0047】
中間連続体400は、所定間隔で配置された第1ロール210と第2ロール220の2つのローラの間を通過することにより、吸収体130の裏面シート120側の表面は、凸部221により表面シート110側に向けて圧縮される。
【0048】
図9は、第1ロール210と第2ロール220とを図8における矢印F8方向からみた側面図である。但し、図9には、中間連続体400は図示していない。第1ロール210と第2ロール220の凸部221の先端との間隔Cは、0.15mm〜0.6mmであることが好ましい。この間隔Cが0.15mmよりも狭いと、中間連続体400が2つのロールの間を通過できない。また、第1ロール210と第2ロール220の凸部221の先端との間隔Cが0.6mmを超えると、吸収体130を十分に挟むことができず、裏面側凹部135における吸収体130の厚みを1.3mm以下にすることができない。
【0049】
また、第1ロール210と第2ロール220とによって中間連続体400を押さえる押圧力は、1.6MPa〜6.3MPaであることが好ましい。押圧力が1.6MPaよりも小さいと、液体を吸収する前の状態において、裏面側凹部135の形状を保持することが難しい。6.3MPaを超えると、裏面側凹部135が硬くなり、装着感の低下を招く。
【0050】
凸部221の第2ロール220の表面からの突出高さhは、0.3mm〜2.5mmであることが好ましい。突出高さhが0.3mmよりも低いと、裏面側凹部135と窓に相当する菱形部分との高さ差が付きにくく、裏面側凹部135を裏面シート120の外側から認識しにくくなる。突出高さhが2.5mmを超えると、凸部221が折れやすくなり、製造装置の不良を生じやすくなる。
【0051】
(使い捨ておむつの別の実施形態1)
図10は、本発明の他の実施形態に係る使い捨ておむつ2を着用者の肌に当接する表面側からみた斜視図である。以下の説明において、図1に示した使い捨ておむつ1と同様の作用を有する構成については、同一の番号を付して詳細な説明を省略する。
【0052】
使い捨ておむつ2は、吸収体130Aの表面シート110側の表面に、裏面側と同様の溝が形成されていてもよい。使い捨ておむつ2では、吸収体130Aの表面シート110側に、裏面シート120側に向けて凹んだ表面側凹部138が形成される。表面側凹部138は、吸収体130Aの長手方向Lに連続した溝138a,138bを有する。また、溝138a,138bに平行であって、吸収体130Aの長手方向Lに連続した複数の溝を有する。溝138a,138bは、表面シート110の平面視において交差し、格子状に形成されている。格子の窓に相当する窓部分139は、菱形である。
【0053】
図11は、図10に示す使い捨ておむつ2のA−A線における断面図である。実施形態では、表面側凹部138は、裏面側凹部135と対向する位置に形成されている。表面側凹部138の深さD1は、裏面側凹部135の深さDと同じか、深さDよりも大きい。
【0054】
表面側凹部138は、裏面側凹部135を形成した上述の第1ロール210と第2ロール220とを使用して形成することができる。例えば、図9に示した第1ロール210と第2ロール220の凸部221との間隔Cを、0.15mm〜0.4mmの範囲に設定した状態でエンボス処理を行うと、第1ロール210の表面が平面状であっても吸収体130の表裏両面側に凹部を形成できる。
【0055】
このように、吸収体130の表面シート110側に溝が形成されていることにより、液体が吸収体130の吸収面の全域に亘って拡散されやすくなる。そのため、吸収体130の吸収量が局所的に飽和に達することによる吸収量の低下を防止することができる。また、溝を伝って排泄物が広く拡散することで、少量の排泄物でも広い範囲でエンボスが消失し、インジケータとしての役割を確実に発揮することができる。
【0056】
また、表面側凹部138の深さD1が裏面側凹部135の深さD以上であると、液体が表面側凹部138から裏面側凹部135に向けて吸収体130の厚み方向に吸収されやすくなるため、裏面側凹部135が裏面シート120側から目立たなくなる効果が促進される。
【0057】
(使い捨ておむつの別の実施形態2)
使い捨ておむつ1では、裏面側凹部135は、裏面側からの平面視において、菱形形状であると説明したが、裏面側凹部の形状は、菱形に限定されない。図12は、本発明の他の実施形態に係る使い捨ておむつ3を着用者の肌当接面側の反対側からみた平面図である。使い捨ておむつ3では、吸収体130Bの裏面シート120側の表面に裏面側凹部135’が形成されている。裏面側凹部135’は、ハニカム形状になっている。裏面側凹部135’に囲まれた窓部分136’は、裏面シート120側に突出している。
【0058】
使い捨ておむつ3では、裏面側凹部135’をハニカム形状にしたことにより、例えば、着用者の動きによって、使い捨ておむつ3の幅方向W外側から中央に向かう力を受けた場合、力がハニカム形状の溝を伝って分散するため、吸収体130の一箇所に力が集中しにくくなる。従って、裏面側凹部135’の形状が保持されやすく、着用者の動きによる裏面側凹部135’の窪みの消失が起こりにくい。
【0059】
また、使い捨ておむつ3では、裏面側凹部135’がハニカム形状であるため、美観を損なわない方法によって、交換時期を正確に示唆できるという効果に加えて、使い捨ておむつ1よりも、着用者の肌面に沿って馴染み易くなるため、フィット性が向上する。
【0060】
(評価試験)
吸収体の裏面シート側の表面の所定領域に形成された裏面側凹部が裏面シートの外側から視認可能になるか否かは、裏面シートが裏面側凹部の形状に馴染むか否かによって決まると言える。そこで、本発明の発明者らは、使い捨ておむつに適した裏面シートとして使用可能な資材を選択するための指標を見出した。
【0061】
表1は、裏面シートを構成する資材の種類と、資材の剛軟度と、裏面シート外側から裏面側凹部が視認できたか否かとを対応付けている。視認性は、優(A)、良(B)、不良(D)で表した。剛軟度は、カンチレバー測定法により測定した平均移動距離から、下式により算出した。
【0062】
剛軟度(mm)=(表側の平均移動距離(mm)+裏側の平均移動距離(mm))/2
剛軟度を求める資材の試験片(25mm×150mm)を用意し、5mm/secの速さで試験面上を滑らせて移動距離を測定した。試験片の長手方向と幅方向とで5回ずつ行い、方向毎の平均を求めた。更に、長手方向の平均値と幅方向の平均値の平均を求めた。この値を資材の剛軟度とした。結果を表1に示す。
【0063】
【表1】

【0064】
以上、表1に示した結果から、吸収体の裏面シート側の表面に形成された裏面側凹部が視認可能になる表面シートの剛軟度は、30mm以上110mm以下であることが好ましい。裏面シートの剛軟度を上記範囲にすると、吸収体に形成される裏面側凹部の形状に沿って裏面シートが追従しやすく、裏面側凹部を裏面シートの外側から視認し易くすることができる。一例として、18.5g/mの非通気フィルムと13g/mのSMS不織布とを5g/mのHMA(カーテン塗工)により接合した資材は、裏面シートとして良好である。
【0065】
(その他の実施形態)
上述したように、本発明の実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0066】
使い捨ておむつ1は、前胴回り部と、後胴回り部と、股下部とが組み合わされることによって形成される、いわゆる、3ピースタイプであってもよい。また、本実施形態の使い捨ておむつの係止テープ部分が予め接合されたパンツタイプであってもよい。
【0067】
実施形態では、長手方向に連続している裏面側凹部(溝)について説明した。長手方向に連続し、拡散性が良好な形状であればよく、裏面側凹部(溝)は、菱形形状、ハニカム形状に限定されない。液体の拡散性を考慮すると、溝が吸収体の長手方向に連続していることが好ましいが、長手方向に不連続な、例えば、円形、矩形などのドットであってもよい。そのほか、模様、図柄などが溝によって形成されていてもよい。
【0068】
例えば、吸収体130の坪量に応じて裏面側凹部(溝)の深さを変更したり、形成する範囲を変更したりすれば、例えば、大人用おむつ、子供用おむつなどのように吸収量の異なるおむつに適したインジケータ機能を簡便に付与することができる。
【0069】
実施形態では、裏面側凹部(溝)は、吸収体130の裏面側のほぼ中央部分に形成されていると説明した。しかし、例えば、尿や排泄物が到達しては不都合なウェストギャザーの周囲や、レッグギャザーの周囲に主として配置してもよい。
【0070】
実施形態では、裏面側凹部は、エンボス加工により形成するとして説明した。しかし、裏面側凹部の形成方法は、エンボス加工に限定されない。例えば、吸収体に空気を吹き付けることによって厚さ方向に圧縮する方法によって形成されてもよい。
【0071】
実施形態では、表面側凹部135は、表面シート110側に位置するロールの表面に凸部が設けられていなくても形成可能であると説明したが、表面側を押圧する第1ロールの表面に凸部を設け、裏面を形成する第2ロールの表面を平面状のアンビルとしても実現できる。また、表面、裏面それぞれの面に対向するローラの両方に凸部が設けられていてもよい。
【0072】
使い捨ておむつの別の実施形態2では、使い捨ておむつ3の吸収体130Bの裏面シート120側の表面にハニカム形状の裏面側凹部135’が形成されていると説明した。しかし、表面シート110側にハニカム形状の表面側凹部が形成されていてもよい。また、吸収体130の表面シート110側に形成される表面側凹部と裏面シート120側に形成される裏面側凹部の平面形状が互いに異なっていてもよい。
【0073】
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【符号の説明】
【0074】
1…使い捨ておむつ、 10…前胴回り部、 20…後胴回り部、 30…股下部、 41,42…係止テープ、 43,44…係止部 51,52…ウエストギャザー、 53,54…レッグギャザー、 110…表面シート、 120…裏面シート、 121…バック不織布、 122…バックフィルム、 130…吸収体、 130A…吸収体、 130B…吸収体、 131…吸収性コア、 132…吸収性シート、 135,135’…裏面側凹部、 135a,135b…溝、 136,136’…窓部分、、 137…凹部形成部、 138…表面側凹部、 138a,138b…溝、 139…窓部分、 139A…窓部分、 140…接合材、 200…装置、 210…第1ロール、 220…第2ロール、 221…凸部、 300…連続体、 400…中間連続体、 511,521…弾性部材、 531,541…弾性部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性を有する表面シートと、
液不透過性を有する裏面シートと、
前記表面シートと前記裏面シートとの間に設けられ、液体を吸収することによって少なくとも厚さ方向に膨らむ吸収体と
を備える使い捨ておむつであって、
前記吸収体の前記裏面シート側の表面には、前記表面シート側に向けて凹んだ裏面側凹部が形成され、
前記裏面側凹部の表面の少なくとも一部には、前記裏面側凹部の形状に沿って前記裏面シートを前記吸収体と接合する接合材が配置され、
前記裏面側凹部は、前記使い捨ておむつの使用前の状態において前記裏面シートの外側から視認可能であるとともに、前記裏面側凹部の深さは、前記吸収体が液体を吸収することによって、前記吸収体が液体を吸収する前よりも浅くなるように構成されることを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記裏面側凹部は、前記吸収体が液体を吸収することによって消失する請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記裏面側凹部は、前記吸収体の長手方向に連続する請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記裏面側凹部は、前記裏面シートの平面視において格子状である請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記吸収体は、パルプと、粒子状の高分子吸収体とを含み、前記パルプに対する前記高分子吸収体の配合比率が30%〜70%である請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項6】
前記粒子状の高分子吸収体は、前記裏面側凹部を形成する凹部形成部に凝集している請求項5に記載の使い捨ておむつ。
【請求項7】
前記吸収体の坪量が150g/m以上、320g/m以下である請求項1乃至6の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項8】
前記凹部形成部における前記吸収体の厚さは、0.6mm以上、1.3mm以下である請求項1乃至7の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項9】
カンチレバー測定法による前記裏面シートの剛軟度は、30mm以上110mm以下である請求項1乃至8の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項10】
前記吸収体の前記表面シート側には、前記裏面シート側に向けて凹んだ表面側凹部が形成され、
前記表面側凹部は、前記裏面側凹部と対向する位置に形成され、
前記表面側凹部の深さは、前記裏面側凹部の深さ以上である請求項1乃至9の何れか1項に記載の使い捨ておむつ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−115245(P2011−115245A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272977(P2009−272977)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】