使い捨ておむつ
【課題】あせも等の湿疹の発生を効果的に抑制する使い捨ておむつを提供する。
【解決手段】抗菌剤含有ポリマー塗工部31を非肌面側に設けた液透過性シート17をおむつ本体の後胴周り域に貼着する。着用者が汗をかくと、液透過性シート17を透過して抗菌剤含有ポリマー塗工部31にまで汗が浸透する。すると、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の抗菌剤が汗中に流出して、表皮ブドウ球菌を抗菌する。
【解決手段】抗菌剤含有ポリマー塗工部31を非肌面側に設けた液透過性シート17をおむつ本体の後胴周り域に貼着する。着用者が汗をかくと、液透過性シート17を透過して抗菌剤含有ポリマー塗工部31にまで汗が浸透する。すると、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の抗菌剤が汗中に流出して、表皮ブドウ球菌を抗菌する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あせも等の湿疹を効果的に防止する使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使い捨ておむつを着用した場合、着用者の腰周り等にあせもなどの湿疹が発生しやすいことが知られている。特に、汗をかきやすい夏場において、おむつの後胴周り域に接触する背中部分に生じやすい。このあせもが発生する原因として、皮膚上の汗や埃などが着用者の汗管を塞ぐこと等が報告されてきた。
【0003】
このあせもを防止するため、従来は、汗を吸収する通気性液透過性シートを後胴周り域の肌面側などに接着した使い捨ておむつが知られている(例えば、特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−189454公報
【特許文献2】特開2004−358099公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の研究では、多量に汗をかくことにより、皮膚上に存在する表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が過剰に増殖することがあせも発生の一要因であることが判ってきた。
【0006】
この表皮ブドウ球菌は、常在菌であり、皮膚病を引き起こす黄色ブドウ球菌等の増殖を抑制するいわゆる善玉菌である。通常時は、過剰に増殖することなく、あせもを発生させることがない。しかし、夏場におけるおむつ内のように、多量の汗が皮膚上に残ると、過剰に増殖して着用者の皮膚にあせもを発生させる要因となる。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1及び2に記載された技術では、汗を吸収することはできても、表皮ブドウ球菌の過剰増殖を防止することが困難であるため、あせもを十分に防ぐことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、あせも等の湿疹の発生を効果的に抑制する使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明にあっては、着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された内面シートと、該内面シートに対し、前記肌面側の反対側となる非肌面側に配置された外面シートと、これらの内面シートおよび外面シートの間に介在された吸液性コアとを有すると共に、胴周り域と脚周り域とが形成されたおむつ本体を備えた使い捨ておむつにおいて、前記おむつ本体における前記胴周り域および脚周り域のうち、前記着用者の肌に面する肌面側の少なくとも一部に、水分の透過を許容する液透過部を設けると共に、該液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設け、前記外面シートにおける胴周り域および脚周り域の少なくともいずれかの端部を延設して折り返すことにより折り返し部を形成し、該折り返し部を前記おむつ本体の肌面側に取り付けると共に、この折り返し部を前記液透過部に設定すると共に、前記折り返し部の非肌面側と、この折り返し部に対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明に係る使い捨ておむつでは、前記液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けている。このため、着用者が汗をかいた場合、この汗が液透過部に浸透して抗菌剤含有ポリマー塗工部に到達する。ここで、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部は、水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含んでいるため、抗菌剤含有ポリマー塗工部の水溶性ポリマーが溶解して抗菌剤が液透過部の中に放出される。この抗菌剤によって、着用者の皮膚上の表皮ブドウ球菌が過剰に増殖することを抑制し、あせも等の湿疹を効果的に防止することができる。
【0011】
なお、液透過部の肌面は、着用者の肌が直接触れるため、この肌面に抗菌剤含有ポリマー部を塗工すると、微量の発汗によっても抗菌剤が放出される。前述したように、表皮ブドウ球菌は有用な、いわゆる善玉菌であるため、適正な範囲で皮膚上に存在する必要があり、微量の発汗によっても抗菌剤が放出されて表皮ブドウ球菌を抗菌することは好ましくない。従って、本発明のように、液透過部の肌面と外面シートとの間に抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】図1の使い捨ておむつを展開した平面図である。
【図3】図2のA−A線による断面図である。
【図4】他の実施形態による、図3に相当する断面図である。
【図5】2層からなる液透過性シートの断面図である。
【図6】3層からなる液透過性シートの断面図である。
【図7】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図8】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図9】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図10】疎水性シートを介して液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図11】疎水性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図12】内面シートの非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたオープン型おむつの平面図である。
【図13】液透過性シートによる抗菌作用を示す断面図であり、(a)は汗を吸収する前の状態を示し、(b)は液透過性シートが汗で湿潤した状態を示し、(c)は汗によって抗菌剤含有ポリマー塗工部中の抗菌剤が拡散している状態を示している。
【図14】実施例における、被験者の皮膚の状態を示す概略図である。
【図15】実施例における、被験者の皮膚の体温分布を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による使い捨ておむつを示す斜視図である。また、図2は、図1の使い捨ておむつの左右両側縁部を切り離して展開し、着用時に着用者の肌に面する肌面側から見た平面図である。また、図3は、図2のA−A線による断面図である。
【0015】
図1に示すように、この使い捨ておむつは、軸中心線CLを介して左右両側が対称に形成されたパンツ型おむつ1である。なお、後述するように、本発明は、左右両側縁部が接合されないオープン型おむつにも適用することができる。
【0016】
前記パンツ型おむつ1は、前胴周り域3と後胴周り域5とからなる胴周り域、股下域7、および、脚周り域13とから構成されたおむつ本体15(図2参照)を備えている。前記前胴周り域3及び後胴周り域5の左右両側縁部9,9が接合されており、おむつ本体1の上端には、胴側開口部11が形成されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態によるパンツ型おむつ1は、汗等の体液や排泄物を吸収及び保持するおむつ本体15と、該おむつ本体15の後胴周り域5の肌面側に貼着された液透過性シート(液透過部)17とを備えている。この液透過性シート17は、水分の透過を許容する液透過部に設定されており、後胴周り域5の肌面側に限らず、前胴周り域3の肌面側、脚周り域13の肌面側のいずれに設けても良い。さらに、肌面側とは、おむつを着用した場合に、着用者の肌に面する側をいい、非肌面側とは、前記肌面側の反対側をいうものとする。
【0018】
なお、前記液透過部は、蒸留水に表面張力調整剤を添加して表面張力を30mN/mに調整した場合において耐水圧が100mm以下となる部位を示すものとし、疎水性を有するものも含まれる。具体的には、前記液透過部には、親水性繊維を含む不織布、親水性繊維を含む不織布を親水化したシート、又は、疎水性繊維を含む不織布を親水化したシートを用いることが好ましく、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布を用いることがさらに好ましい。これらのティッシュペーパー又はスパンレース不織布は、水素結合によってシートの強度を確保している。ここで、抗菌剤を含む溶液中に前記ティッシュペーパー等を浸漬させると、ティッシュペーパー等の水素結合を低下させてしまう。すると、ティッシュペーパー等の強度が低下するため、表面が毛羽立つなどの問題が生じるおそれがある。従って、液透過部を、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布から形成し、この液透過部に抗菌剤含有ポリマーを塗工することが好ましい。
【0019】
図3に示すように、肌面側には、内面シート25が設けられ、非肌面側には、外面シート23が設けられている。図3では、これらの外面シート23と内面シート25とは一体に形成されている。図3において、外面シート23が上方に延びて上端部27にまで至っている。また、内面シート25は、この上端部27から折り返された折り返し部であり、上端部から下方に延び、吸液性コア29の上部を覆っている。そして、内面シート25の肌面側には、液透過部である液透過性シート17が貼着されている。該液透過性シート17の非肌面側には、抗菌剤含有ポリマー塗工部31が形成されており、図外の接着剤によって内面シート25の肌面側に貼着されている。また、外面シート23の肌面側には、内部シート33が設けられ、該内部シート33と吸液性コア29との間には、排泄物等の水分が外部に漏れることを防止するフィルム35が設けられている。そして、外面シート23の上端部と内部シート33の上端部との間には、ゴム等の弾性体37が配設されている。そして、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、液透過性シート17に対面する部位の内面シート25の肌面側に設けても良い。このように、液透過性シート17を内面シート25とは別体に構成することにより、液透過性シート17の高さや幅寸法、又は厚みを容易に変更することができる。例えば、多量の汗をかいた場合に水溶性ポリマーを溶解させて抗菌剤を分散させたい場合には、厚みを大きく設定した液透過性シート17を用いれば良い。前記液透過性シートは、セルロース繊維を含み、前記抗菌剤はカチオン系界面活性剤であることが好ましく、また、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布を用いることが好ましい。ただし、疎水性繊維からなる不織布や疎水性繊維を含む不織布を親水化したシートであっても、汗を透過させて吸収することができるため、前記液透過性シートとして用いることができる。
【0020】
なお、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部31を明確に示すため、層状に形成されているように記載したが、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、液透過性シート17を形成する繊維に抗菌剤含有ポリマーが微少な粒状の状態で付着している部位である。以下の図においても、抗菌剤含有ポリマー塗工部31を簡略化して層状に示すこととする。また、このように、抗菌剤含有ポリマーを点在した状態で液透過部に塗工することにより、吸収した汗によって水溶性ポリマーを効率的に溶解させることができるという効果が得られる。
【0021】
また、本発明では、図4に示す構造を採用することもできる。
【0022】
この構造では、折り返し部である内面シート25を液透過部に設定しており、前記内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を設けている。この内面シート25は、疎水性繊維からなる不織布を用いることができる。このようなシートであっても、汗によって湿潤し、水分を透過させることができる。なお、内面シート25は、親水化したり、孔を設けると汗等が透過しやすくなり更に好ましい。従って、内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成することにより、内面シート25で吸収した汗が抗菌剤含有ポリマー塗工部31に浸透し、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の抗菌剤を放出させることができる。なお、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、内面シート25に対面する部位のおむつ本体15(内部シート33及び吸液性コア29)の肌面側に設けても良い。このように、折り返し部である内面シート25を液透過部に設定し、前記内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を設けることにより、構成物品数を少なくして簡単な構造とすることができるという効果が得られる。
【0023】
そして、図示は省略したが、液透過性シート17を内面シート25の非肌面側とおむつ本体15の肌面側との間に配置しても良い。即ち、図4における吸液性コア29の上部の肌面側から内部シート33の上端部の肌面側に液透過性シート17を貼着し、該液透過性シート17の肌面側の少なくとも一部を内面シート25で覆う構造としても良い。ここで、前記液透過性シート17と内面シート25のうち前記液透過性シート17を覆った部分とを液透過部に設定する。この場合、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、前記内面シート25のうち液透過性シート17を覆った部分の非肌面側、液透過性シート17の肌面側、液透過性シート17の非肌面側、および、液透過性シート17に対面する部位のおむつ本体(吸液性コア29の上部および内部シート33の上端部)の肌面側のうち、少なくともいずれかの側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設ける。このように、液透過性シート17の肌面側の少なくとも一部を内面シート25で覆う構造にすれば、液透過性シート17が着用者の肌に直接触れないため、液透過性シート17の位置ずれを防止することができる。
【0024】
さらに、図4の内面シート25は、折り返し部によって形成したが、これに限定されず、内面シートと外面シートとを別体とし、内面シートを液透過部に設定すると共に、この内面シートの非肌面側と、該内面シートに対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくともいずれかの側に前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けても良い。これによれば、おむつ本体の内面シートを液透過部とするため、構成物品数を少なくして簡単な構造とすることができる。
【0025】
次に、図5及び図6を用いて、液透過部の断面構造を説明する。
【0026】
図5は、2層からなる液透過性シートの断面図である。
【0027】
この液透過性シート17は、肌面側に配置された肌面側層41と、該肌面側層41の非肌面側に配置され、主としてセルロース繊維からなる非肌面側層であるセルロース層39とからなる。肌面側層41は、セルロース層39のよりも親水度が低く設定されている。また、前記セルロース層39の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成している。このように、セルロース層39の方が肌面側層41よりも親水度が高いという親水勾配を有するため、汗が肌面側層41からセルロース層39に移動しやすく、汗の吸収性が高くなる。なお、図5は、抗菌剤含有ポリマー塗工部31をセルロース層39の非肌面側に塗工した場合を示したが、本発明はこれに限定されず、セルロース層39と肌面側層41との間に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を塗工しても良い。
【0028】
図6は、3層からなる液透過性シートの断面図である。
【0029】
この液透過性シート17は、肌面側に配置された肌面側層47と、該肌面側層47の非肌面側に配置され、主としてセルロース繊維からなるセルロース層(中間層)45と、該セルロース層45の非肌面側に配置された非肌面側層43とからなる。セルロース層45の親水度を肌面側層47及び非肌面側層43よりも高く設定し、前記非肌面側層43の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成している。非肌面側層43と肌面側層47の親水度はセルロース層45よりも低いため、液透過性シート17が汗で湿潤した場合でも、非肌面側層43は湿潤しにくく、液透過性シート17とおむつ本体15との接合強度を高く維持することができる。
【0030】
次に、図7〜図9を用いて、本実施形態による液透過性シート17を貼着する部位を説明する。ここで示した使い捨ておむつは、オープン型おむつ(展開型おむつ)である。
【0031】
図7〜図9に示すように、オープン型おむつ49は、おむつ本体の肌面側に配置された内面シート55と、非肌面側に配置された外面シート57と、これらの内面シート55および外面シート57の間に配置された吸液性コア59とを有している。
【0032】
液透過性シート17は、図7に示すように、オープン型おむつ49における後胴周り域51の肌面側に胴周り方向に沿って貼着することが好ましい。具体的には、内面シート55の肌面側に接着剤を介して接合することが好ましい。液透過性シート17の形状は、胴周り方向に沿った細長い矩形状であり、後胴周り域51の全長の50%以上配置することが好ましい。
【0033】
また、図8に示すように、後胴周り域51における中央部分に液透過性シート17を配置しても良い。液透過性シート17の胴周り方向の長さは、後胴周り域全長の約50%程度に設定しても良い。
【0034】
さらに、図9に示すように、液透過性シート17をオープン型おむつ49における左右一対の固定端縁部にそれぞれ貼着しても良い。
【0035】
図10〜図12は、オープン型おむつにおける液透過部の形態を示す平面図である。
【0036】
まず、図10に示すように、オープン型おむつ49の肌面側に設けられた内面シート55の後胴周り域51の肌面側に疎水性シート61を貼着し、該疎水性シート61の更に肌面側に液透過性シート17を貼着しても良い。また、抗菌剤含有ポリマー塗工部(図示せず)は、液透過性シート17の非肌面側と疎水性シート61の肌面側の少なくとも一方側に形成しても良く、疎水性シート61の非肌面側とおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に形成しても良い。
【0037】
次に、図11に示すように、後胴周り域51の肌面側に疎水性シート61を貼着しても良い。この場合、疎水性シート61の非肌面側と該疎水性シート61に対面する部位のおむつ本体の肌面側の少なくとも一方側に抗菌剤含有ポリマー塗工部(図示せず)を形成する。
【0038】
さらに、図12に示すように、オープン型おむつ49の肌面側に設けられた内面シート55の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31(破線で示す)を形成しても良い。
【0039】
以上説明したように、液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部は、おむつ本体における後胴周り域に配置することが好ましい。これは、後胴周り域の肌面側は、あせも等の湿疹が最も生じやすい着用者の背中部分に対面する部位であるため、効率的に湿疹の発生を防止することができるからである。
【0040】
次いで、液透過部による抗菌作用を、液透過性シートを例にとって説明する。
【0041】
図13は、液透過性シートによる抗菌作用を示す断面図である。
【0042】
図13(a)に示すように、液透過性シート17の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31が形成されている。着用者の汗Sが液透過性シート17に吸収されると、図13(b)に示すように、液透過性シート17が湿潤する。すると、図13(c)に示すように、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の水溶性ポリマーが汗Sによって溶解し、図13(c)の矢印に示すように、水溶性ポリマーと共に抗菌剤が液透過性シート17中に拡散する。これによって、汗中の表皮ブドウ球菌が抗菌剤によって抗菌される。
【0043】
ここで、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの誘導体の群から選択される一種又は二種以上であることが好ましい。また、人体の体温近傍である37℃において、100ccの溶液中に1g溶解させた場合に、完全に溶解するものが好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物などである。ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマーは、抗菌剤を汗中に運ぶキャリアーとして有用である。また、水溶性ポリマーは、抗菌剤を混合させる際の混合剤となり、抗菌剤を、例えば不織布からなる液透過性シートに付着させるためのバインダーとしても有用である。また、水溶性ポリマーの分子量は、100〜50,000が好ましく、600〜30,000が更に好ましい。
【0044】
そして、抗菌剤としては、少なくとも表皮ブドウ球菌の増殖を抑制できるものであれば、任意の抗菌剤を使用することができ、この任意の抗菌剤のうち2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで「抗菌」は、殺菌、滅菌、静菌を含む概念である。なお、前記表皮ブドウ球菌以外に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、アンモニア産生菌などの細菌の増殖を抑制できるものが更に好ましい。
【0045】
具体的には、以下のものが例示できる。
【0046】
N,N’,N’’−トリス(ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、4,4−ジメチルオキサゾリジン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン、1,3−ジモルホリノ−2−ニトロ−2−エチルプロパン等のホルムアルデヒド放出剤;
1,3−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニロリル等のハロゲン化合物;
4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、3−ヨードプロパギルブチルカルバメート等のヨードプロパギル誘導体;
2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のチオシアナト化合物;
2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾロン−3、N−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾロン−3等のイロチアゾリノン誘導体;
N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド等のトリハロメチルチオ化合物;
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド(塩化セチルピリジニウム)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)等の第4アンモニウム塩;
塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロロヘキシジン、クロロヘキシジン塩酸塩等のビグアニド化合物;
ホルムアルデヒド、1,5−ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)、α−ブロモシンナムアルデヒド等のアルデヒド類;
3−メチル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)等のフェノール類;
2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル等のベンズイミダゾール誘導体;
ピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛等のピリジンオキシド;
3,4,4’−トリクロロカルバニリド、4,4’−ジクロロ−3−(トリフルオロメチル)カルバニリド等のカルバニリド;
2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル;
ソルビン酸、プロピオン酸、10−ウンデシレン酸、安息香酸等のカルボン酸;
10,10’−オキシビスフェノキシアルシン等の有機金属化合物。
【0047】
さらに、インチンコウ、ウイキョウ、メンオウギ、オウレン、オウバク、オウゴン、ガイヨウ、カンゾウ、キョウニン、ケイヒ、コウボク、シソ葉、シャクヤク、センキュウ、ダイオウ、チョウジ、トウニン、ボタンピなどの抗菌作用を示す漢方用薬;エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、ペクチン分解物、プロタミン、ポリリジン、柑橘種子抽出物、ショウガ抽出物、茶抽出物、生大豆抽出物、紅麩分解物、ホッコシ抽出物、孟宗竹抽出物、モミガラ抽出物、リゾチーム、ペッパー抽出物、プロポリスなどの食品に添加される天然抗菌剤;カラシ抽出物などのその他の天然抗菌剤を使用することもできる。
【0048】
さらに、この食品に添加される天然抗菌剤にα−ポリリジン、ε−ポリリジンを用いることもできる。
【0049】
特に好ましい抗菌剤としては、汗疹の原因とされる表皮ブドウ球菌を吸着し細菌の細胞膜を破壊するカチオン系界面活性剤、たとえば塩化セチルピリジニウム(CPC)等が挙げられる。
【0050】
なお、液透過性シート17をおむつ本体15に接着剤を介して接合する場合、接着剤の塗布形状は、斑点状(ドット状)、線状、らせん状などの種々の形状にすることが好ましい。
【0051】
また、液透過性シート17にゴム等の弾性部材を直接的又は間接的に配設することが好ましい。後胴周り域の肌面側に液透過性シートを配置する場合、着用者の背部は窪んでいるため、液透過性シート17が背部に接触しにくい。従って、弾性部材を配設することにより、液透過性シート17を着用者の背部に確実に密着させることができる。また、液透過性シート17を波状若しくは凹凸状に形成することにより、液透過性シート17を着用者の背部に確実に密着させたり、着用者の身体と液透過性シート17との接触頻度を高めることができる。
【0052】
また、液透過部はセルロース繊維を含み、抗菌剤はカチオン系抗菌剤を用いても良い。これによれば、カチオン系界面活性剤はセルロース繊維に吸着するため、汗によって溶解したカチオン系界面活性剤は、セルロース繊維を含む液透過部内に多く残留し、該液透過部内で抗菌作用を発揮する。よって、カチオン系界面活性剤が液透過部から流出して着用者の皮膚にまで至ることが非常に少なくなり、皮膚上の表皮ブドウ球菌を抗菌することを抑制することができる。
【0053】
なお、前記実施形態では、液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部を胴周り域に設定する場合を中心に説明した。しかし、脚周り域に液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部を設定しても良く、胴周り域に設定した場合と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例を通して具体的に説明する。
【0055】
[実施例1]
まず、本発明による抗菌剤含有ポリマーによって表皮ブドウ球菌の増殖をどの程度抑制できるかを検証した。
【0056】
(1)最初に、下記表1に示す試験菌株を血液寒天培地を用いて、35℃で20時間培養した。
【表1】
【0057】
次に、各試験菌をMcFarland0.5(約108CFU/ml)となるように滅菌生理食塩液に懸濁し、供試菌液とした。
【0058】
(2)供試菌液を約104CFU/mlとなるように 1/10 Mueller Hinton broth
(MHB)に添加し、径が24mmの平底の穴を有するマイクロプレートの各ウェルに0.5mlずつ分注した。
【0059】
(3)各ウェルの液面に各試験サンプルを浸し、35℃で静置培養した。また、比較例1である発育コントロールとして試験サンプルを浸さないウェルを設けた。
【0060】
なお、表1において、本発明例1は、PEGに対して1wt%のCPCを混合した抗菌剤含有ポリマーを、1m2あたり0.5g塗布したものである。また、本発明例2は、1m2あたり1.0g塗布したものであり、本発明例3は、1m2あたり1.5g塗布したものである。
【0061】
(4)各試験サンプルを浸漬した直後、浸漬してから2時間培養後、4時間培養後、8時間培養後、及び24時間培養後における各ウェルの培養液を採取し、生菌数を測定した。
【0062】
その結果、表1に示すように、本発明例1では、4時間経過後には生菌数がほぼゼロとなり、本発明例2,3では、2時間経過後に生菌数がほぼゼロとなった。一方、比較例1では、24時間経過した後でも多量の生菌数が残存していることが確認された。
【0063】
[実施例2]
次いで、実際におむつを使用して被験者にあせもが発症するかを検証した。
【0064】
(液透過性シートの作製)
実施例2においては、液透過性シートとして不織布を用いた。この不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)とレーヨンとをスパンレース法を用いて作製したものである。外形形状は、矩形状とし、寸法は、285mm×60mmとした。
【0065】
この不織布の非肌面側に、水溶性ポリマーに抗菌剤を混合させた抗菌剤含有ポリマーを塗工した。水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた。このPEGは、分子量が600のものが30wt%と、分子量が4000のものが70wt%とからなる。
【0066】
また、抗菌剤として塩化セチルピリジウム(CPC)を用いた。塗工量は1.0g/m2であり、PEGとの重量比は、PEG:CPC=99:1とした。さらに、抗菌剤含有ポリマーの塗工方法は、スプレー塗工とした。
【0067】
なお、液透過性シートの非肌面側に、ドライエッジを5mmとしてホットメルト接着剤を塗布し、おむつ本体の後胴周り域の肌面側に接着させた。
【0068】
(実施方法)
前記液透過性シートを接着したおむつを、Lサイズのおむつを使用している月齢24ケ月前後の被験者50人が着用し、母親が被験者のあせも発症状況を確認した。被験者は、男女25人ずつであり、今年の夏に既にあせもを発症した経験を有する幼児を抽出して行った。実施期間は、最もあせもが発症しやすい時期である8月1日〜7日とした。おむつは、主としてパンツ型おむつを使用し、その使用枚数は25枚とした。
【0069】
結果を下記表2に示す。
【表2】
【0070】
表2において、本発明例4は、抗菌剤含有ポリマーを液透過性シートの非肌面側に塗工し、この液透過性シートを貼着したおむつを使用した場合である。比較例2は、抗菌剤含有ポリマーを塗工しない液透過性シートを貼着したおむつを使用した場合である。比較例3は、銀イオンを担持したゼオライトからなる抗菌剤を含有するポリプロピレン繊維を用いたスパンボンド不織布を貼着したおむつを使用した場合である。なお、この抗菌剤は、株式会社シナネンゼオミック製である。比較例4は、液透過性シートを全く貼着していないおむつを使用した場合である。
【0071】
なお、図14は、実施例2を行った被験者の背中から臀部近傍を示す概略図である。図中、丸で囲った、尾てい骨周辺の略三角状に窪んだ部位にあせもが発症する場合が多かった。この部位は、図15に示すように、皮膚温が高いため、汗をかきやすく、また三角状に窪んだ形状になっているために、汗が溜まりやすいからだと考えられる。なお、図15において、最も中央側に配置された等温線は36.0〜36.5℃を示し、その外側に向かうにつれて徐々に体温が低下していることが判る。
【0072】
また、表2に示すように、本発明例4の場合、あせもの全体発症率は18%であり、程度が大きいあせもの発症率は10%に留まり、良好であった。ここで、「程度が大きいあせも」とは、母親が被験者にあせも対処用薬剤を塗布するなどの何らかの処置を施すほど、程度が大きい場合を示す。なお、「発症率」とは、あせもが発症した被験者の人数を、被験者全員の人数で割った割合をいう。
【0073】
一方、比較例2〜4は、あせもの全体発症率及び程度が大きいあせもの発症率ともに、良好な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0074】
3・・・前胴周り域(胴周り域)
5・・・後胴周り域(胴周り域)
13・・・脚周り域
15・・・おむつ本体
17・・・液透過性シート(液透過部)
25・・・内面シート(液透過部)
31・・・抗菌剤含有ポリマー塗工部
39,43・・・非肌面側層
45・・・セルロース層(中間層)
41,47・・・肌面側層
【技術分野】
【0001】
本発明は、あせも等の湿疹を効果的に防止する使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、使い捨ておむつを着用した場合、着用者の腰周り等にあせもなどの湿疹が発生しやすいことが知られている。特に、汗をかきやすい夏場において、おむつの後胴周り域に接触する背中部分に生じやすい。このあせもが発生する原因として、皮膚上の汗や埃などが着用者の汗管を塞ぐこと等が報告されてきた。
【0003】
このあせもを防止するため、従来は、汗を吸収する通気性液透過性シートを後胴周り域の肌面側などに接着した使い捨ておむつが知られている(例えば、特許文献1,2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−189454公報
【特許文献2】特開2004−358099公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年の研究では、多量に汗をかくことにより、皮膚上に存在する表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)が過剰に増殖することがあせも発生の一要因であることが判ってきた。
【0006】
この表皮ブドウ球菌は、常在菌であり、皮膚病を引き起こす黄色ブドウ球菌等の増殖を抑制するいわゆる善玉菌である。通常時は、過剰に増殖することなく、あせもを発生させることがない。しかし、夏場におけるおむつ内のように、多量の汗が皮膚上に残ると、過剰に増殖して着用者の皮膚にあせもを発生させる要因となる。
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1及び2に記載された技術では、汗を吸収することはできても、表皮ブドウ球菌の過剰増殖を防止することが困難であるため、あせもを十分に防ぐことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、あせも等の湿疹の発生を効果的に抑制する使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明にあっては、着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された内面シートと、該内面シートに対し、前記肌面側の反対側となる非肌面側に配置された外面シートと、これらの内面シートおよび外面シートの間に介在された吸液性コアとを有すると共に、胴周り域と脚周り域とが形成されたおむつ本体を備えた使い捨ておむつにおいて、前記おむつ本体における前記胴周り域および脚周り域のうち、前記着用者の肌に面する肌面側の少なくとも一部に、水分の透過を許容する液透過部を設けると共に、該液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設け、前記外面シートにおける胴周り域および脚周り域の少なくともいずれかの端部を延設して折り返すことにより折り返し部を形成し、該折り返し部を前記おむつ本体の肌面側に取り付けると共に、この折り返し部を前記液透過部に設定すると共に、前記折り返し部の非肌面側と、この折り返し部に対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明に係る使い捨ておむつでは、前記液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けている。このため、着用者が汗をかいた場合、この汗が液透過部に浸透して抗菌剤含有ポリマー塗工部に到達する。ここで、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部は、水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含んでいるため、抗菌剤含有ポリマー塗工部の水溶性ポリマーが溶解して抗菌剤が液透過部の中に放出される。この抗菌剤によって、着用者の皮膚上の表皮ブドウ球菌が過剰に増殖することを抑制し、あせも等の湿疹を効果的に防止することができる。
【0011】
なお、液透過部の肌面は、着用者の肌が直接触れるため、この肌面に抗菌剤含有ポリマー部を塗工すると、微量の発汗によっても抗菌剤が放出される。前述したように、表皮ブドウ球菌は有用な、いわゆる善玉菌であるため、適正な範囲で皮膚上に存在する必要があり、微量の発汗によっても抗菌剤が放出されて表皮ブドウ球菌を抗菌することは好ましくない。従って、本発明のように、液透過部の肌面と外面シートとの間に抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けることが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態による使い捨ておむつの斜視図である。
【図2】図1の使い捨ておむつを展開した平面図である。
【図3】図2のA−A線による断面図である。
【図4】他の実施形態による、図3に相当する断面図である。
【図5】2層からなる液透過性シートの断面図である。
【図6】3層からなる液透過性シートの断面図である。
【図7】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図8】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図9】液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図10】疎水性シートを介して液透過性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図11】疎水性シートを貼着したオープン型おむつの平面図である。
【図12】内面シートの非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたオープン型おむつの平面図である。
【図13】液透過性シートによる抗菌作用を示す断面図であり、(a)は汗を吸収する前の状態を示し、(b)は液透過性シートが汗で湿潤した状態を示し、(c)は汗によって抗菌剤含有ポリマー塗工部中の抗菌剤が拡散している状態を示している。
【図14】実施例における、被験者の皮膚の状態を示す概略図である。
【図15】実施例における、被験者の皮膚の体温分布を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態による使い捨ておむつを示す斜視図である。また、図2は、図1の使い捨ておむつの左右両側縁部を切り離して展開し、着用時に着用者の肌に面する肌面側から見た平面図である。また、図3は、図2のA−A線による断面図である。
【0015】
図1に示すように、この使い捨ておむつは、軸中心線CLを介して左右両側が対称に形成されたパンツ型おむつ1である。なお、後述するように、本発明は、左右両側縁部が接合されないオープン型おむつにも適用することができる。
【0016】
前記パンツ型おむつ1は、前胴周り域3と後胴周り域5とからなる胴周り域、股下域7、および、脚周り域13とから構成されたおむつ本体15(図2参照)を備えている。前記前胴周り域3及び後胴周り域5の左右両側縁部9,9が接合されており、おむつ本体1の上端には、胴側開口部11が形成されている。
【0017】
図2に示すように、本実施形態によるパンツ型おむつ1は、汗等の体液や排泄物を吸収及び保持するおむつ本体15と、該おむつ本体15の後胴周り域5の肌面側に貼着された液透過性シート(液透過部)17とを備えている。この液透過性シート17は、水分の透過を許容する液透過部に設定されており、後胴周り域5の肌面側に限らず、前胴周り域3の肌面側、脚周り域13の肌面側のいずれに設けても良い。さらに、肌面側とは、おむつを着用した場合に、着用者の肌に面する側をいい、非肌面側とは、前記肌面側の反対側をいうものとする。
【0018】
なお、前記液透過部は、蒸留水に表面張力調整剤を添加して表面張力を30mN/mに調整した場合において耐水圧が100mm以下となる部位を示すものとし、疎水性を有するものも含まれる。具体的には、前記液透過部には、親水性繊維を含む不織布、親水性繊維を含む不織布を親水化したシート、又は、疎水性繊維を含む不織布を親水化したシートを用いることが好ましく、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布を用いることがさらに好ましい。これらのティッシュペーパー又はスパンレース不織布は、水素結合によってシートの強度を確保している。ここで、抗菌剤を含む溶液中に前記ティッシュペーパー等を浸漬させると、ティッシュペーパー等の水素結合を低下させてしまう。すると、ティッシュペーパー等の強度が低下するため、表面が毛羽立つなどの問題が生じるおそれがある。従って、液透過部を、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布から形成し、この液透過部に抗菌剤含有ポリマーを塗工することが好ましい。
【0019】
図3に示すように、肌面側には、内面シート25が設けられ、非肌面側には、外面シート23が設けられている。図3では、これらの外面シート23と内面シート25とは一体に形成されている。図3において、外面シート23が上方に延びて上端部27にまで至っている。また、内面シート25は、この上端部27から折り返された折り返し部であり、上端部から下方に延び、吸液性コア29の上部を覆っている。そして、内面シート25の肌面側には、液透過部である液透過性シート17が貼着されている。該液透過性シート17の非肌面側には、抗菌剤含有ポリマー塗工部31が形成されており、図外の接着剤によって内面シート25の肌面側に貼着されている。また、外面シート23の肌面側には、内部シート33が設けられ、該内部シート33と吸液性コア29との間には、排泄物等の水分が外部に漏れることを防止するフィルム35が設けられている。そして、外面シート23の上端部と内部シート33の上端部との間には、ゴム等の弾性体37が配設されている。そして、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、液透過性シート17に対面する部位の内面シート25の肌面側に設けても良い。このように、液透過性シート17を内面シート25とは別体に構成することにより、液透過性シート17の高さや幅寸法、又は厚みを容易に変更することができる。例えば、多量の汗をかいた場合に水溶性ポリマーを溶解させて抗菌剤を分散させたい場合には、厚みを大きく設定した液透過性シート17を用いれば良い。前記液透過性シートは、セルロース繊維を含み、前記抗菌剤はカチオン系界面活性剤であることが好ましく、また、ティッシュペーパー又はスパンレース不織布を用いることが好ましい。ただし、疎水性繊維からなる不織布や疎水性繊維を含む不織布を親水化したシートであっても、汗を透過させて吸収することができるため、前記液透過性シートとして用いることができる。
【0020】
なお、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部31を明確に示すため、層状に形成されているように記載したが、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、液透過性シート17を形成する繊維に抗菌剤含有ポリマーが微少な粒状の状態で付着している部位である。以下の図においても、抗菌剤含有ポリマー塗工部31を簡略化して層状に示すこととする。また、このように、抗菌剤含有ポリマーを点在した状態で液透過部に塗工することにより、吸収した汗によって水溶性ポリマーを効率的に溶解させることができるという効果が得られる。
【0021】
また、本発明では、図4に示す構造を採用することもできる。
【0022】
この構造では、折り返し部である内面シート25を液透過部に設定しており、前記内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を設けている。この内面シート25は、疎水性繊維からなる不織布を用いることができる。このようなシートであっても、汗によって湿潤し、水分を透過させることができる。なお、内面シート25は、親水化したり、孔を設けると汗等が透過しやすくなり更に好ましい。従って、内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成することにより、内面シート25で吸収した汗が抗菌剤含有ポリマー塗工部31に浸透し、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の抗菌剤を放出させることができる。なお、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、内面シート25に対面する部位のおむつ本体15(内部シート33及び吸液性コア29)の肌面側に設けても良い。このように、折り返し部である内面シート25を液透過部に設定し、前記内面シート25の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を設けることにより、構成物品数を少なくして簡単な構造とすることができるという効果が得られる。
【0023】
そして、図示は省略したが、液透過性シート17を内面シート25の非肌面側とおむつ本体15の肌面側との間に配置しても良い。即ち、図4における吸液性コア29の上部の肌面側から内部シート33の上端部の肌面側に液透過性シート17を貼着し、該液透過性シート17の肌面側の少なくとも一部を内面シート25で覆う構造としても良い。ここで、前記液透過性シート17と内面シート25のうち前記液透過性シート17を覆った部分とを液透過部に設定する。この場合、抗菌剤含有ポリマー塗工部31は、前記内面シート25のうち液透過性シート17を覆った部分の非肌面側、液透過性シート17の肌面側、液透過性シート17の非肌面側、および、液透過性シート17に対面する部位のおむつ本体(吸液性コア29の上部および内部シート33の上端部)の肌面側のうち、少なくともいずれかの側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設ける。このように、液透過性シート17の肌面側の少なくとも一部を内面シート25で覆う構造にすれば、液透過性シート17が着用者の肌に直接触れないため、液透過性シート17の位置ずれを防止することができる。
【0024】
さらに、図4の内面シート25は、折り返し部によって形成したが、これに限定されず、内面シートと外面シートとを別体とし、内面シートを液透過部に設定すると共に、この内面シートの非肌面側と、該内面シートに対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくともいずれかの側に前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けても良い。これによれば、おむつ本体の内面シートを液透過部とするため、構成物品数を少なくして簡単な構造とすることができる。
【0025】
次に、図5及び図6を用いて、液透過部の断面構造を説明する。
【0026】
図5は、2層からなる液透過性シートの断面図である。
【0027】
この液透過性シート17は、肌面側に配置された肌面側層41と、該肌面側層41の非肌面側に配置され、主としてセルロース繊維からなる非肌面側層であるセルロース層39とからなる。肌面側層41は、セルロース層39のよりも親水度が低く設定されている。また、前記セルロース層39の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成している。このように、セルロース層39の方が肌面側層41よりも親水度が高いという親水勾配を有するため、汗が肌面側層41からセルロース層39に移動しやすく、汗の吸収性が高くなる。なお、図5は、抗菌剤含有ポリマー塗工部31をセルロース層39の非肌面側に塗工した場合を示したが、本発明はこれに限定されず、セルロース層39と肌面側層41との間に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を塗工しても良い。
【0028】
図6は、3層からなる液透過性シートの断面図である。
【0029】
この液透過性シート17は、肌面側に配置された肌面側層47と、該肌面側層47の非肌面側に配置され、主としてセルロース繊維からなるセルロース層(中間層)45と、該セルロース層45の非肌面側に配置された非肌面側層43とからなる。セルロース層45の親水度を肌面側層47及び非肌面側層43よりも高く設定し、前記非肌面側層43の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31を形成している。非肌面側層43と肌面側層47の親水度はセルロース層45よりも低いため、液透過性シート17が汗で湿潤した場合でも、非肌面側層43は湿潤しにくく、液透過性シート17とおむつ本体15との接合強度を高く維持することができる。
【0030】
次に、図7〜図9を用いて、本実施形態による液透過性シート17を貼着する部位を説明する。ここで示した使い捨ておむつは、オープン型おむつ(展開型おむつ)である。
【0031】
図7〜図9に示すように、オープン型おむつ49は、おむつ本体の肌面側に配置された内面シート55と、非肌面側に配置された外面シート57と、これらの内面シート55および外面シート57の間に配置された吸液性コア59とを有している。
【0032】
液透過性シート17は、図7に示すように、オープン型おむつ49における後胴周り域51の肌面側に胴周り方向に沿って貼着することが好ましい。具体的には、内面シート55の肌面側に接着剤を介して接合することが好ましい。液透過性シート17の形状は、胴周り方向に沿った細長い矩形状であり、後胴周り域51の全長の50%以上配置することが好ましい。
【0033】
また、図8に示すように、後胴周り域51における中央部分に液透過性シート17を配置しても良い。液透過性シート17の胴周り方向の長さは、後胴周り域全長の約50%程度に設定しても良い。
【0034】
さらに、図9に示すように、液透過性シート17をオープン型おむつ49における左右一対の固定端縁部にそれぞれ貼着しても良い。
【0035】
図10〜図12は、オープン型おむつにおける液透過部の形態を示す平面図である。
【0036】
まず、図10に示すように、オープン型おむつ49の肌面側に設けられた内面シート55の後胴周り域51の肌面側に疎水性シート61を貼着し、該疎水性シート61の更に肌面側に液透過性シート17を貼着しても良い。また、抗菌剤含有ポリマー塗工部(図示せず)は、液透過性シート17の非肌面側と疎水性シート61の肌面側の少なくとも一方側に形成しても良く、疎水性シート61の非肌面側とおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に形成しても良い。
【0037】
次に、図11に示すように、後胴周り域51の肌面側に疎水性シート61を貼着しても良い。この場合、疎水性シート61の非肌面側と該疎水性シート61に対面する部位のおむつ本体の肌面側の少なくとも一方側に抗菌剤含有ポリマー塗工部(図示せず)を形成する。
【0038】
さらに、図12に示すように、オープン型おむつ49の肌面側に設けられた内面シート55の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31(破線で示す)を形成しても良い。
【0039】
以上説明したように、液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部は、おむつ本体における後胴周り域に配置することが好ましい。これは、後胴周り域の肌面側は、あせも等の湿疹が最も生じやすい着用者の背中部分に対面する部位であるため、効率的に湿疹の発生を防止することができるからである。
【0040】
次いで、液透過部による抗菌作用を、液透過性シートを例にとって説明する。
【0041】
図13は、液透過性シートによる抗菌作用を示す断面図である。
【0042】
図13(a)に示すように、液透過性シート17の非肌面側に抗菌剤含有ポリマー塗工部31が形成されている。着用者の汗Sが液透過性シート17に吸収されると、図13(b)に示すように、液透過性シート17が湿潤する。すると、図13(c)に示すように、抗菌剤含有ポリマー塗工部31中の水溶性ポリマーが汗Sによって溶解し、図13(c)の矢印に示すように、水溶性ポリマーと共に抗菌剤が液透過性シート17中に拡散する。これによって、汗中の表皮ブドウ球菌が抗菌剤によって抗菌される。
【0043】
ここで、水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びそれらの誘導体の群から選択される一種又は二種以上であることが好ましい。また、人体の体温近傍である37℃において、100ccの溶液中に1g溶解させた場合に、完全に溶解するものが好ましい。例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコール、及びこれらの混合物などである。ポリエチレングリコール等の水溶性ポリマーは、抗菌剤を汗中に運ぶキャリアーとして有用である。また、水溶性ポリマーは、抗菌剤を混合させる際の混合剤となり、抗菌剤を、例えば不織布からなる液透過性シートに付着させるためのバインダーとしても有用である。また、水溶性ポリマーの分子量は、100〜50,000が好ましく、600〜30,000が更に好ましい。
【0044】
そして、抗菌剤としては、少なくとも表皮ブドウ球菌の増殖を抑制できるものであれば、任意の抗菌剤を使用することができ、この任意の抗菌剤のうち2種以上を組み合わせて使用することができる。ここで「抗菌」は、殺菌、滅菌、静菌を含む概念である。なお、前記表皮ブドウ球菌以外に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、アンモニア産生菌などの細菌の増殖を抑制できるものが更に好ましい。
【0045】
具体的には、以下のものが例示できる。
【0046】
N,N’,N’’−トリス(ヒドロキシエチル)ヘキサヒドロ−s−トリアジン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、4,4−ジメチルオキサゾリジン、1,3−ジ(ヒドロキシメチル)−5,5−ジメチルヒダントイン、トリス(ヒドロキシメチル)ニトロメタン、4−(2−ニトロブチル)モルホリン、1,3−ジモルホリノ−2−ニトロ−2−エチルプロパン等のホルムアルデヒド放出剤;
1,3−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、ジヨードメチル−p−トリルスルホン、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニロリル等のハロゲン化合物;
4−クロロフェニル−3−ヨードプロパギルホルマール、3−ヨードプロパギルブチルカルバメート等のヨードプロパギル誘導体;
2−(4−チオシアノメチルチオ)ベンゾチアゾール等のチオシアナト化合物;
2−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾロン−3、N−ブチル−1,2−ベンズイソチアゾロン−3等のイロチアゾリノン誘導体;
N−(フルオロジクロロメチルチオ)フタルイミド、N,N−ジメチル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)−N’−フェニルスルファミド、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N’,N’−ジメチル−N−p−トリルスルファミド等のトリハロメチルチオ化合物;
アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ドデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、塩化ベンゼトニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド、デシルイソノニルジメチルアンモニウムクロライド、ヘキサデシルピリジニウムクロライド(塩化セチルピリジニウム)、4,4’−(テトラメチレンジカルボニルアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)、N,N’−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)等の第4アンモニウム塩;
塩酸ポリヘキサメチレンビグアニド、グルコン酸クロロヘキシジン、クロロヘキシジン塩酸塩等のビグアニド化合物;
ホルムアルデヒド、1,5−ペンタンジアール(グルタルアルデヒド)、α−ブロモシンナムアルデヒド等のアルデヒド類;
3−メチル−4−クロロフェノール、4−クロロ−3,5−ジメチルフェノール、p−ヒドロキシ安息香酸アルキル(メチル、エチル、プロピル、ブチル)等のフェノール類;
2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、2−ベンズイミダゾリルカルバミン酸メチル等のベンズイミダゾール誘導体;
ピリジン−2−チオール−1−オキシドナトリウム、ビス(2−ピリジルチオ−1−オキシド)亜鉛等のピリジンオキシド;
3,4,4’−トリクロロカルバニリド、4,4’−ジクロロ−3−(トリフルオロメチル)カルバニリド等のカルバニリド;
2,4,4’−トリクロロ−2’−ヒドロキシジフェニルエーテル等のジフェニルエーテル;
ソルビン酸、プロピオン酸、10−ウンデシレン酸、安息香酸等のカルボン酸;
10,10’−オキシビスフェノキシアルシン等の有機金属化合物。
【0047】
さらに、インチンコウ、ウイキョウ、メンオウギ、オウレン、オウバク、オウゴン、ガイヨウ、カンゾウ、キョウニン、ケイヒ、コウボク、シソ葉、シャクヤク、センキュウ、ダイオウ、チョウジ、トウニン、ボタンピなどの抗菌作用を示す漢方用薬;エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、ペクチン分解物、プロタミン、ポリリジン、柑橘種子抽出物、ショウガ抽出物、茶抽出物、生大豆抽出物、紅麩分解物、ホッコシ抽出物、孟宗竹抽出物、モミガラ抽出物、リゾチーム、ペッパー抽出物、プロポリスなどの食品に添加される天然抗菌剤;カラシ抽出物などのその他の天然抗菌剤を使用することもできる。
【0048】
さらに、この食品に添加される天然抗菌剤にα−ポリリジン、ε−ポリリジンを用いることもできる。
【0049】
特に好ましい抗菌剤としては、汗疹の原因とされる表皮ブドウ球菌を吸着し細菌の細胞膜を破壊するカチオン系界面活性剤、たとえば塩化セチルピリジニウム(CPC)等が挙げられる。
【0050】
なお、液透過性シート17をおむつ本体15に接着剤を介して接合する場合、接着剤の塗布形状は、斑点状(ドット状)、線状、らせん状などの種々の形状にすることが好ましい。
【0051】
また、液透過性シート17にゴム等の弾性部材を直接的又は間接的に配設することが好ましい。後胴周り域の肌面側に液透過性シートを配置する場合、着用者の背部は窪んでいるため、液透過性シート17が背部に接触しにくい。従って、弾性部材を配設することにより、液透過性シート17を着用者の背部に確実に密着させることができる。また、液透過性シート17を波状若しくは凹凸状に形成することにより、液透過性シート17を着用者の背部に確実に密着させたり、着用者の身体と液透過性シート17との接触頻度を高めることができる。
【0052】
また、液透過部はセルロース繊維を含み、抗菌剤はカチオン系抗菌剤を用いても良い。これによれば、カチオン系界面活性剤はセルロース繊維に吸着するため、汗によって溶解したカチオン系界面活性剤は、セルロース繊維を含む液透過部内に多く残留し、該液透過部内で抗菌作用を発揮する。よって、カチオン系界面活性剤が液透過部から流出して着用者の皮膚にまで至ることが非常に少なくなり、皮膚上の表皮ブドウ球菌を抗菌することを抑制することができる。
【0053】
なお、前記実施形態では、液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部を胴周り域に設定する場合を中心に説明した。しかし、脚周り域に液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部を設定しても良く、胴周り域に設定した場合と同様の効果を得ることができる。
【実施例】
【0054】
以下に、本発明を実施例を通して具体的に説明する。
【0055】
[実施例1]
まず、本発明による抗菌剤含有ポリマーによって表皮ブドウ球菌の増殖をどの程度抑制できるかを検証した。
【0056】
(1)最初に、下記表1に示す試験菌株を血液寒天培地を用いて、35℃で20時間培養した。
【表1】
【0057】
次に、各試験菌をMcFarland0.5(約108CFU/ml)となるように滅菌生理食塩液に懸濁し、供試菌液とした。
【0058】
(2)供試菌液を約104CFU/mlとなるように 1/10 Mueller Hinton broth
(MHB)に添加し、径が24mmの平底の穴を有するマイクロプレートの各ウェルに0.5mlずつ分注した。
【0059】
(3)各ウェルの液面に各試験サンプルを浸し、35℃で静置培養した。また、比較例1である発育コントロールとして試験サンプルを浸さないウェルを設けた。
【0060】
なお、表1において、本発明例1は、PEGに対して1wt%のCPCを混合した抗菌剤含有ポリマーを、1m2あたり0.5g塗布したものである。また、本発明例2は、1m2あたり1.0g塗布したものであり、本発明例3は、1m2あたり1.5g塗布したものである。
【0061】
(4)各試験サンプルを浸漬した直後、浸漬してから2時間培養後、4時間培養後、8時間培養後、及び24時間培養後における各ウェルの培養液を採取し、生菌数を測定した。
【0062】
その結果、表1に示すように、本発明例1では、4時間経過後には生菌数がほぼゼロとなり、本発明例2,3では、2時間経過後に生菌数がほぼゼロとなった。一方、比較例1では、24時間経過した後でも多量の生菌数が残存していることが確認された。
【0063】
[実施例2]
次いで、実際におむつを使用して被験者にあせもが発症するかを検証した。
【0064】
(液透過性シートの作製)
実施例2においては、液透過性シートとして不織布を用いた。この不織布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)とレーヨンとをスパンレース法を用いて作製したものである。外形形状は、矩形状とし、寸法は、285mm×60mmとした。
【0065】
この不織布の非肌面側に、水溶性ポリマーに抗菌剤を混合させた抗菌剤含有ポリマーを塗工した。水溶性ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた。このPEGは、分子量が600のものが30wt%と、分子量が4000のものが70wt%とからなる。
【0066】
また、抗菌剤として塩化セチルピリジウム(CPC)を用いた。塗工量は1.0g/m2であり、PEGとの重量比は、PEG:CPC=99:1とした。さらに、抗菌剤含有ポリマーの塗工方法は、スプレー塗工とした。
【0067】
なお、液透過性シートの非肌面側に、ドライエッジを5mmとしてホットメルト接着剤を塗布し、おむつ本体の後胴周り域の肌面側に接着させた。
【0068】
(実施方法)
前記液透過性シートを接着したおむつを、Lサイズのおむつを使用している月齢24ケ月前後の被験者50人が着用し、母親が被験者のあせも発症状況を確認した。被験者は、男女25人ずつであり、今年の夏に既にあせもを発症した経験を有する幼児を抽出して行った。実施期間は、最もあせもが発症しやすい時期である8月1日〜7日とした。おむつは、主としてパンツ型おむつを使用し、その使用枚数は25枚とした。
【0069】
結果を下記表2に示す。
【表2】
【0070】
表2において、本発明例4は、抗菌剤含有ポリマーを液透過性シートの非肌面側に塗工し、この液透過性シートを貼着したおむつを使用した場合である。比較例2は、抗菌剤含有ポリマーを塗工しない液透過性シートを貼着したおむつを使用した場合である。比較例3は、銀イオンを担持したゼオライトからなる抗菌剤を含有するポリプロピレン繊維を用いたスパンボンド不織布を貼着したおむつを使用した場合である。なお、この抗菌剤は、株式会社シナネンゼオミック製である。比較例4は、液透過性シートを全く貼着していないおむつを使用した場合である。
【0071】
なお、図14は、実施例2を行った被験者の背中から臀部近傍を示す概略図である。図中、丸で囲った、尾てい骨周辺の略三角状に窪んだ部位にあせもが発症する場合が多かった。この部位は、図15に示すように、皮膚温が高いため、汗をかきやすく、また三角状に窪んだ形状になっているために、汗が溜まりやすいからだと考えられる。なお、図15において、最も中央側に配置された等温線は36.0〜36.5℃を示し、その外側に向かうにつれて徐々に体温が低下していることが判る。
【0072】
また、表2に示すように、本発明例4の場合、あせもの全体発症率は18%であり、程度が大きいあせもの発症率は10%に留まり、良好であった。ここで、「程度が大きいあせも」とは、母親が被験者にあせも対処用薬剤を塗布するなどの何らかの処置を施すほど、程度が大きい場合を示す。なお、「発症率」とは、あせもが発症した被験者の人数を、被験者全員の人数で割った割合をいう。
【0073】
一方、比較例2〜4は、あせもの全体発症率及び程度が大きいあせもの発症率ともに、良好な結果が得られなかった。
【符号の説明】
【0074】
3・・・前胴周り域(胴周り域)
5・・・後胴周り域(胴周り域)
13・・・脚周り域
15・・・おむつ本体
17・・・液透過性シート(液透過部)
25・・・内面シート(液透過部)
31・・・抗菌剤含有ポリマー塗工部
39,43・・・非肌面側層
45・・・セルロース層(中間層)
41,47・・・肌面側層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された内面シートと、該内面シートに対し、
前記肌面側の反対側となる非肌面側に配置された外面シートと、これらの内面シートおよび外面シートの間に介在された吸液性コアとを有すると共に、胴周り域と脚周り域とが形成されたおむつ本体を備えた使い捨ておむつにおいて、
前記おむつ本体における前記胴周り域および脚周り域のうち、前記着用者の肌に面する肌面側の少なくとも一部に、水分の透過を許容する液透過部を設けると共に、該液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設け、
前記外面シートにおける胴周り域および脚周り域の少なくともいずれかの端部を延設して折り返すことにより折り返し部を形成し、該折り返し部を前記おむつ本体の肌面側に取り付けると共に、この折り返し部を前記液透過部に設定すると共に、
前記折り返し部の非肌面側と、この折り返し部に対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記液透過部は、
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された肌面側層と、該肌面側層の非肌面側に配置された非肌面側層とを備え、前記非肌面側層の親水度を前記肌面側層の親水度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記液透過部は、
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された肌面側層と、該肌面側層の非肌面側に配置された中間層と、該中間層の非肌面側に配置された非肌面側層とを備え、前記中間層の親水度を、前記肌面側層および非肌面側層の親水度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記抗菌剤含有ポリマー塗工部は、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを点在した状態で塗工して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部は、おむつ本体における後胴周り域に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項1】
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された内面シートと、該内面シートに対し、
前記肌面側の反対側となる非肌面側に配置された外面シートと、これらの内面シートおよび外面シートの間に介在された吸液性コアとを有すると共に、胴周り域と脚周り域とが形成されたおむつ本体を備えた使い捨ておむつにおいて、
前記おむつ本体における前記胴周り域および脚周り域のうち、前記着用者の肌に面する肌面側の少なくとも一部に、水分の透過を許容する液透過部を設けると共に、該液透過部の肌面側の面である肌面と外面シートとの間に、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを塗工した抗菌剤含有ポリマー塗工部を設け、
前記外面シートにおける胴周り域および脚周り域の少なくともいずれかの端部を延設して折り返すことにより折り返し部を形成し、該折り返し部を前記おむつ本体の肌面側に取り付けると共に、この折り返し部を前記液透過部に設定すると共に、
前記折り返し部の非肌面側と、この折り返し部に対面する部位のおむつ本体の肌面側との少なくとも一方側に、前記抗菌剤含有ポリマー塗工部を設けたことを特徴とする使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記液透過部は、
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された肌面側層と、該肌面側層の非肌面側に配置された非肌面側層とを備え、前記非肌面側層の親水度を前記肌面側層の親水度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記液透過部は、
着用時に着用者の肌に面する肌面側に配置された肌面側層と、該肌面側層の非肌面側に配置された中間層と、該中間層の非肌面側に配置された非肌面側層とを備え、前記中間層の親水度を、前記肌面側層および非肌面側層の親水度よりも高く設定したことを特徴とする請求項1又は2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記抗菌剤含有ポリマー塗工部は、熱可塑性を有する水溶性ポリマーおよび抗菌剤を含む抗菌剤含有ポリマーを点在した状態で塗工して形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【請求項5】
前記液透過部および抗菌剤含有ポリマー塗工部は、おむつ本体における後胴周り域に設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の使い捨ておむつ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−236090(P2012−236090A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198581(P2012−198581)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2007−203376(P2007−203376)の分割
【原出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2007−203376(P2007−203376)の分割
【原出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】
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