説明

使い捨ての体液吸収性着用物品

【課題】湿潤感を軽減可能な使い捨ての体液吸収性着用物品。
【解決手段】使い捨ての体液吸収性着用物品の股下域が液透過性シート2と液不透過性シート3とこれら両シート2,3間に介在する液吸収性の芯材4とを含む。液透過性シート2において芯材4に対向する面の反対側である非対向面2aが液透過性の被覆シート5によって覆われる。被覆シート5は前後方向へ平行して延びる複数条の山部34と谷部36とを有する。被覆シート5はまた、股下域6の幅方向Bの非対向面2aに接合している中央域41と、中央域41の両側それぞれの外側にあって非対向面2aに対して非接合状態にある側域42とを有する。側域42は、少なくとも一条の谷部36と、谷部36よりも幅方向Bの外側に位置する少なくとも一条の山部34とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨ての体液吸収性着用物品に関し、より詳しくは着用しているときの湿潤感を軽減可能な前記体液吸収性着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
尿等の排泄物を吸収させるための使い捨ての体液吸収性着用物品において、透液性表面シートと着用物品着用者の肌との接触面積を小さくすることによって、表面シートが肌に接触したときに生じる湿潤感を軽減にしようとするものは公知である。例えば、特開2008−25079号公報(JP2008−25079A、特許文献1)の図17に記載されたおむつでは、透液性表面シートとして、表面シートの肌接触面に互いに平行して前後方向へ延びるとともに横方向において交互に現れる複数条の山部と谷部とを有する不織布が使用されている。このおむつが着用されると、表面シートは山部において肌に接触する一方、谷部においては肌から離間することが可能になる。
【0003】
また、特開平5−59601号公報(JP05−59601A、特許文献2)に記載のトレニングパンツでは、透液性内面シートの表面の少なくとも中央域に湿潤保持シートが設けられている。その湿潤保持シートは、内面シートに対して、部分的に接合されているとともに部分的に浮き上がっている。このトレニングパンツでは、湿潤保持シートの浮き上がり部分に吸収された排泄液のほとんどがコアに吸収されることなく、浮き上がり部分に残留する。その浮き上がり部分は、トレニングパンツを着用している幼児の肌に接触して不快感を与えるので、幼児には尿意のあることを他人に知らせる習慣が付く。
【特許文献1】特開2008−25079号公報
【特許文献2】特開平5−59601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のおむつでは、おむつの両側部分に表面シートとは別体のシート片によって周知の防漏堤を作ろうとするときに、そのシート片を表面シートの肌接触面に接合しようとしても、肌接触面は山部と谷部とが形成されていて平坦ではないから速やかに接合することが難しいという場合がある。また、おむつを着用したときに、股下域よりも幅の広い胴周り域の側部において上下方向に延びている谷部は、体液が下方に向かって流れ易く、体液漏れの原因になるという場合もある。
【0005】
特許文献2に例示のトレニングパンツは、湿潤保持シートが内面シートの表面の中央域にのみ接合されているものであって、湿潤保持シートの内面シートに対する接合態様の一例を教示してはいるが、その湿潤保持シートは部分的に内面シートから浮き上がっており、そこには排泄液が残留する。つまり、このトレニングパンツの湿潤保持シートは、着用者にとって湿潤感が増大するように作用するものであって、湿潤感を軽減するように作用するものではない。
【0006】
この発明が課題とするところは、着用時における湿潤感の軽減と体液の漏れ防止とに優れた使い捨ての体液吸収性着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するためにこの発明が対象とするのは、前後方向とこれに直交する横方向とを有し、前記前後方向には股下域と前記股下域の前方に位置する前胴周り域と前記股下域の後方に位置する後胴周り域とが形成されており、これら各域のうちの少なくとも前記股下域には液透過性シートと液不透過性シートとこれら両シートの間に介在する液吸収性の芯材とが含まれており、前記液透過性シートは前記芯材と向かい合う対向面と前記対向面の反対面である非対向面とを有し、前記非対向面の少なくとも一部分が熱可塑性合成繊維を含む不織布で形成された透液性の被覆シートによって覆われている使い捨ての体液吸収性着用物品である。
【0008】
かかる着用物品において、この発明が特徴とするところは、以下のとおりである。前記液透過性シートは、前記非対向面が平坦なものである。前記被覆シートは、前記着用物品の着用者の肌と向かい合う表面と前記液透過性シートの前記非対向面と向かい合う裏面とを有し、前記表面には前記前後方向へ互いに平行して延びていて前記幅方向において交互に現われる山部と谷部とのそれぞれが複数条形成されていて、前記裏面は平坦に形成されており、前記股下域における前記幅方向には前記裏面が前記液透過性シートの前記非対向面に接合している中央域と、前記中央域の両側それぞれの外側にあって前記裏面が前記非対向面に対して非接合状態にある側域とを有する。前記側域は、少なくとも一条の前記谷部と前記谷部よりも前記横方向の外側に位置する少なくとも一条の前記山部とを含んでいて、前記液透過性シートの厚さ方向において前記非対向面から離間することが可能である。
【0009】
この発明の実施形態の一つにおいて、前記不織布は、前記谷部における前記幅方向の中央部分の密度が前記山部における前記幅方向の中央部分の密度よりも低いものである。
【0010】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記股下域の前記前後方向における中央において、前記被覆シートが前記芯材の前記幅方向の両側縁にまで広がっていて、前記被覆シートの前記側域における前記幅方向の寸法が10〜50mmの範囲にある。
【0011】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記股下域の前記前後方向における中央において、前記被覆シートの前記側域が前記芯材の前記幅方向の両側縁よりも内側にある。
【0012】
この発明の実施形態の他の一つにおいて、前記股下域における前記幅方向の両側部分には、前記前後方向へ弾性的に伸長・収縮可能に延びていて前記着用者の脚周りに弾性的に接触可能な防漏堤が形成され、前記前後方向における前記防漏堤の両端部と前記被覆シートにおける前記側域の前記前後方向における両端部とが接合している。
【0013】
この発明の実施形態のさらに他の一つにおいて、前記被覆シートは、前記中央域が親水性であり、前記側域が疎水性である。
【発明の効果】
【0014】
この発明に係る使い捨ての体液吸収性着用物品において、透液性の被覆シートは、肌に接触する表面に互いに平行して前後方向へ延びる山部と谷部とを有するから、表面が平坦である場合の被覆シートに比べて肌に対する接触面積が少なく、体液で濡れている被覆シートが肌に接触して生じる湿潤感を軽減することができる。この発明における被覆シートはまた、裏面が平坦であって、中央域における裏面が液透過性シートの平坦な非対向面に対して接合しているから、体液は被覆シートの山部と谷部とから液透過性シートへと移動し、さらに芯材へと速やかに移動することが可能であって、着用物品は体液の吸収が速やかで体液の漏れ防止効果の高いものになる。加えて、被覆シートは、側域がその下方にある液透過性シートの非対向面に対して離間可能であるから、その側域では芯材から肌への体液の逆流が抑えられ、逆流した体液によって肌を濡らすことが少なくなる。側域が、芯材の側縁にまで広がっている態様および芯材の側縁よりも内側にある態様では、被覆シートが存在していても防漏堤を作ることが容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明に係る使い捨ての体液吸収性着用物品として使い捨てのおむつを例にとり、その詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0016】
図1は、使い捨ておむつ1の部分破断平面図である。おむつ1は、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、これら両シート2,3の間に介在する体液吸収性芯材4とを有し、トップシート2の一部分はホットメルト接着剤43を介して取り付けられた液透過性の被覆シート5によって覆われている。トップシート2とバックシート3とは、芯材4の周縁から延出して重なり合う部分においてホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合している。おむつ1はまた、互いに直交する前後方向Aと、幅方向Bと、厚さ方向C(図2参照)とを有し、前後方向Aには、股下域6と、股下域6の前方に位置する前胴周り域7と、股下域6の後方に位置する後胴周り域8とが形成されている。股下域6の両側縁部11は幅方向Bの内側に向かって凸となるように湾曲しており、その両側縁部11におけるトップシート2とバックシート3との間には脚周り弾性部材12が伸長状態で延びていて、これら両シート2,3の少なくとも一方にホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合している。後胴周り域8の両側縁部13には、前後胴周り域7,8を連結するためのファスニングテープ14が取り付けられている。前後胴周り域7,8の端縁部17,18におけるトップシート2とバックシート3との間には胴周り弾性部材7a,8aが伸長状態で幅方向Bへ延びていて、これら両シート2,3の少なくとも一方にホットメルト接着剤(図示せず)を介して接合している。被覆シート5は、おむつ1の幅を二等分する前後方向中心線P−Pに関して対称となるようにトップシート2に取り付けられていて、端縁部17と端縁部18との間に延びている。
【0017】
図2は、図1のII−II線に沿う切断面を示す図であって、II−II線はおむつ1の前後方向Aの寸法を二等分する横方向中心線Q−Qに一致している。図2において、トップシート2は芯材4と向かい合う対向面2bとその反対面である非対向面2aとを有し、非対向面2aは平坦に形成されている。芯材4は粉砕パルプや高吸水性ポリマー粒子等の吸液性材料21の集合体をティシューペーパ等の液透過性シート22で包むことにより形成されている。被覆シート5は、厚さ方向Cにおむつ着用者の肌(図示せず)に接触する表面31と、表面シート2の非対向面2aと向かい合う裏面32とを有し、幅方向Bには中央域41と両側域42とを有する。表面31は、肌に向かって凸となって前後方向Aへ延びる山部34と、凹となって前後方向Aへ延びる谷部36とを有し、これら山部34と谷部36とが幅方向Bにおいて交互に現れるように複数条ずつ形成されている(図3,4参照)。裏面32のうちで、中央域41における裏面32はトップシート2の非対向面2aに対してホットメルト接着剤43を介して接合しており、両側域42のそれぞれにおける裏面32は非対向面2aに対して非接合状態にあって、非対向面2aから離間可能である。ホットメルト接着剤43は、被覆シート5とトップシート2とに対してそれらの透液性を実質的な意味において妨げることがないように間欠的に塗布されている。図示例において、両側域42のそれぞれは、芯材4の側縁4aよりも内側にある。
【0018】
図3,4は、おむつ1を着用するときのトップシート2と被覆シート5との動きを例示する図2と同様な図である。図3において、おむつ1が例えば体圧を受けて股下域6の側縁部11が芯材4とともに厚さ方向Cの下方に向かって湾曲すると、図2においてほぼ水平であったトップシート2も同じように湾曲する。しかし、被覆シート5の側域42は、水平な状態またはそれに近い状態を維持してその非対向面2aから離間することが可能である。また、図4に示されているように側域42に横方向の力Fが加わるときには、側域42がカールしたり折れ曲がったりするように変形して非対向面2aから離間することが可能である。側域42は、このように水平な状態を維持したり、カールしたりすることが容易となるように、山部34と谷部36とを少なくとも一条ずつ含んでいる。山部34は、側域42において剛性の高い部分となって、側域42を水平な状態に維持するように作用することが可能である。谷部36は、側域42において剛性の低い部分となって、側域42が幅方向Bにおいてカールしたり折れ曲がったりすることを容易にする。おむつ1の股下域6において、図3,4が示すように非対向面2aから離間した側域42は、非対向面2Aよりも肌に接近した位置にあって、湿潤状態にある非対向面2aが肌に触れることを防ぐことができる。
【0019】
図5,6は、被覆シート5として使用されるシート片51の部分斜視図と、シート片51の端面を部分的に示す図である。シート片51は、60〜100重量%の熱可塑性合成繊維52と、40〜0重量%の天然繊維またはレーヨン繊維等の半合成繊維とからなる親水性繊維(図示せず)を含み、20〜100g/mの坪量を有する不織布で形成されているもので、図示例では熱可塑性合成繊維52が100重量%の場合の不織布が使用されている。シート片51はまた、それを使用するときにおむつ1の前後方向Aに一致させる第1方向Lと、幅方向Bに一致させる第2方向Mと、厚さ方向Cに一致させる第3方向Nとを有している。シート片51の上面51aは、被覆シート5の表面31となる部分であり、下面51bは被覆シート5の裏面32となる部分であって、上面51aには図2における山部34と谷部36とが形成され、下面51bが平坦に形成されている。複数条の山部34は高さがほぼ同じものであって、シート片51は山部34の頂部において厚さjを有する。複数条の谷部36は山部34の頂部からの深さがほぼ同じものであって、シート片51は谷部36の底部において厚さkを有する。好ましいシート片51において、厚さkは厚さjの1/3を超えることがなく、厚さjは1.5〜5mmの範囲にあり、シート片51の第2方向Mにおける長さ10mmに対して、山部34が2〜5条形成される。シート片51には、図2における中央域41となる部分41aと両側域42となる部分42aとが含まれている。シート片51は、それを透液性が良好なものとするために、部分41aと部分42aとのうちの少なくとも部分41aにおける熱可塑性合成繊維52が親水化処理されている。シート片51のうちの部分42aにおいては、熱可塑性合成繊維52が親水化処理されているものであってもよいが、部分42aが側域42として使用されたときに体液で簡単に濡れることがないようにするために、熱可塑性合成繊維52は親水化処理されることなく疎水性のものとして使用されるかまたは撥水化処理されて使用されていることが好ましい。
【0020】
シート片51ではまた、それが図4に示されるように変形することを容易にするために、谷部36における密度を山部34における密度よりも低くしたり、谷部36における密度と山部34における密度とが同じではあるが谷部36の厚さkの値を山部34における厚さjの値よりも小さくしたりすることができる。ただし、図示例のシート片51は、谷部36の密度が山部34の密度よりも低く、したがって第2方向Mにおいて、密度の低い部分と密度の高い部分とが交互に現れるように作られている。シート片51において、山部34の密度と谷部36の密度とは、次のようにして比較される。すなわち、図4のシート片51を水平面の上に置いて断面の拡大写真を撮り、その写真から、山部34において厚さjの頂部を通る垂線Rを求め、その垂線Rを横切る熱可塑性合成繊維52の本数Qを計測する。次に、谷部36において厚さkの底部を通る垂線Rを求め、その垂線Rを横切る熱可塑性合成繊維52の本数Qを計測する。その後に、本数Qと厚さjとの比(Q/j)を求めて山部34の密度とし、本数Qと厚さkとの比(Q/k)を求めて谷部36の密度とする。
【0021】
このように形成されている図1のおむつ1を着用するときには、被覆シート5のうちの山部34が肌に接触する一方、谷部36が肌から離間することによって、トップシート2が直接肌に接触する場合よりも肌との接触面積が少なくなり、おむつ1が湿潤状態にあるときに生じる湿潤感を軽減することが可能になる。また、図示例の如く被覆シート5が前胴周り域7の端縁部17から後胴周り域8の端縁部18にまで延びていると、谷部36と肌との間に形成される間隙が通気路となって、おむつ1がその前後において大気に開放された状態になるので、おむつ1は内外の通気性が良好になる。ただし、この発明は、被覆シート5が端縁部17,18のいずれかまたは両方に届くことのない態様で実施することもできる。被覆シート5に向かって排泄された体液は、被覆シート5のうちの中央域41からトップシート2を通過して、芯材4に吸収される。体液の一部には、被覆シート5において幅方向Bへ拡散するものや、トップシート2において幅方向Bへ拡散するものがあり得る。しかし、被覆シート5の山部34における密度が谷部36における密度よりも高い場合の被覆シート5では、谷部36が被覆シート5における体液の幅方向Bへの拡散を抑えて、股下域6の両側縁部11において肌が体液で汚れることを防ぐことができる。加えて、おむつ1の着用中に芯材4に体圧がかかると、芯材4に吸収されていた体液が芯材4から被覆シート5に向かって逆流して肌を濡らすことがあるが、被覆シート5の両側域42は、トップシート2に接合しておらず図3,4に示されるようにトップシート2から離間する傾向にあるので、芯材4からトップシート2にまで逆流してきた体液は、中央域41においては比較的容易に被覆シート5に移行しても、両側域42では被覆シート5に移行することが難しくなる。それゆえ、両側域42は、逆流した体液で湿潤状態になるということが少なくなり、両側域42で肌を濡らすということがない。特に、両側域42において、熱可塑性合成繊維52が疎水性または撥水性の状態にあるときには、体液で両側域42が湿潤状態になるということがなく、肌を濡らすことがないという効果が一層向上する。両側域42はまた、被覆シート5とトップシート2とを接合しているホットメルト接着剤43を覆い隠すことのできる柔軟な部分であって、おむつ1の着用中に接着剤43が肌に触れて刺激を与えることを防いでいる。図示例の被覆シート5はまた、股下域6の両側縁部11よりも内側において前後方向Aへ延びるものであるから、おむつ1を着用したときに体液が谷部36に沿って流れても、その体液がおむつ1の外へ向かって流れるということは生じ難い。
【0022】
おむつ1の被覆シート5として使用するシート片51の製造方法の一例は、次のとおりである。まず、熱可塑性合成繊維52で形成された一様な厚さのカードウエブを機械方向へ走行させながら機械方向に対する交差方向に所要のピッチで配置された複数のノズルから加熱空気または柱状水流をカードウエブの片面に対して噴射する。カードウエブは、通気性または通水性のベルトに載せて、そのベルトとともに機械方向へ走行させる。ノズルのピッチは、シート片51における谷部36のピッチに一致させておく。そのカードウエブでは、ノズルの直下で熱可塑性合成繊維52が交差方向へ移動することにより、密度の低い谷部36が形成され、隣り合うノズルとノズルとの間に密度の高い山部34が形成される。熱可塑性合成繊維52には、ポリエチレンやナイロン、ポリエステル等の繊維やポリエチレンとナイロンまたはポリエステルとの複合繊維等が使用される。おむつ1のトップシート2には、熱可塑性合成繊維で形成された不織布や開孔プラスチックフィルム等を使用することができる。バックシート3には、プラスチックフィルムやプラスチックフィルムと不織布とのラミネートシート等を使用することができる。芯材4には、粉砕パルプや高吸水性ポリマー粒子等の吸液性材料を単独で使用したり、混合して使用したりすることができる。その吸液性材料は、ティシューペーパ等の液透過性であってかつ拡散性のよいシートで被覆しておくことが好ましい。
【0023】
図7は、実施形態の一例を示す図2と同様な図である。図7のおむつ1では、被覆シート5の側域42が芯材4の側縁4aにまで届くように、または側縁4aを越えるように横方向Bへ広がっている。このようなおむつ1は、図2のおむつ1と同様な作用効果を有することに加えて、次のような作用効果を有する。すなわち、芯材4に吸収されている体液が表面シート2にまで逆流してくるとか、被覆シート5の中央域41において排泄された体液が表面シート2や芯材4に吸収された後に芯材4の側縁4aに届くほどにまで横方向Bへ拡散してくることがあっても、側縁4aが被覆シート5の側域42で覆われているので、側縁4aとその近傍に含まれる体液で肌を濡らすということがない。このように作用する側域42は、おむつ1の大きさにもよるが、横中心線Q−Q上において、10〜50mmの寸法を有していることが好ましい。
【0024】
図8,9は、この発明の実施形態の一例を示す図1と同様な図と、図8のIX−IX線切断面を示す図である。図8のおむつ1では、股下域6の両側縁部11に防漏堤80が形成されている。防漏堤80は、プラスチックフィルムや不織布等であって実質的に液不透過性であるシート片によって形成されているもので、外側縁部82と前端部83と後端部84とがこれらと重なり合うトップシート2または被覆シート5に対してホットメルト接着剤85を介して接合している。防漏堤80の内側縁部81には、前後方向Aへ伸長状態で延びる弾性部材86が伸長・収縮可能に取り付けられている。防漏堤80において、そのシート片が実質的に液不透過性であるとは、シート片が防漏堤80として必要とされる最小限度の液不透過性かそれよりも優れた液不透過性を有していることを意味している。
【0025】
かような防漏堤80は、図8,9において被覆シート5の上に倒伏した状態にあるが、おむつ1が着用されて前後方向Aにおいて湾曲すると弾性部材86が収縮し、図9に仮想線で示されているように内側縁部81が被覆シート5から着用者の肌(図示せず)に向かって起立し、体液の横方向Bへの流れを止めて股下域6においての体液の横漏れを防ぐことができる。また、被覆シート5における側域42は、倒伏した状態にある防漏堤80の内側縁部81に対してその下側に位置しており、起立した状態にある内側縁部81に対してもその下側においてトップシート2から離間するように動くことができる(図9参照)。それゆえ、防漏堤80の内側縁部81は、被覆シート5の側域42と干渉し合うことなく、起立することができる。その被覆シート5は、幅方向Bの寸法がトップシート2の幅方向Bの寸法よりも小さく作られているのみならず、一対の防漏堤80の外側縁部82間の寸法よりも小さく作られているから、防漏堤80を形成するシート片をおむつ1に取り付けるときに、被覆シート5は邪魔になるということがない。また、このおむつ1では、防漏堤80の前後端部83,84の近傍において、内側縁部81と、それが重なる被覆シート5の側域42における前後端部45,46とをホットメルト接着剤87によって接合することができる。このような状態にある防漏堤80は、内側縁部81が起立するときに、被覆シート5の側域42の少なくとも一部分をトップシート2から離間させるように作用する。
【0026】
これまでに図示したおむつ1は開放型のものであったが、この発明はパンツ型のおむつで実施することも可能である。また、おむつ1を例にとって説明したこの発明は、生理用ナプキン等の使い捨ての体液吸収性物品で実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】使い捨ておむつの部分破断平面図。
【図2】図1のII−II線切断面を拡大して示す図。
【図3】実施形態の一例を示す図2と同様な図。
【図4】実施形態の一例を示す図2と同様な図。
【図5】シート片の部分斜視図。
【図6】シート片の部分端面図。
【図7】実施形態の一例を示す図2と同様な図。
【図8】実施形態の一例を示す図1と同様な図。
【図9】図8のIX−IX線切断面を示す図。
【符号の説明】
【0028】
1 使い捨ての体液吸収性着用物品(おむつ)
2 液透過性シート(トップシート)
2a 非対向面
2b 対向面
3 液不透過性シート(バックシート)
4 芯材
4a 側縁
5 被覆シート
6 股下域
7 前胴周り域
8 後胴周り域
11 両側部分
31 表面
32 裏面
34 山部
36 谷部
41 中央域
42 側域
45 前端部
46 後端部
80 防漏堤
81 内側縁部
82 外側縁部
83 前端部
84 後端部
A 前後方向
B 横方向
C 厚さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向とこれに直交する横方向とを有し、前記前後方向には股下域と前記股下域の前方に位置する前胴周り域と前記股下域の後方に位置する後胴周り域とが形成されており、これら各域のうちの少なくとも前記股下域には液透過性シートと液不透過性シートとこれら両シートの間に介在する液吸収性の芯材とが含まれており、前記液透過性シートは前記芯材と向かい合う対向面と前記対向面の反対面である非対向面とを有し、前記非対向面の少なくとも一部分が熱可塑性合成繊維を含む不織布で形成された透液性の被覆シートによって覆われている使い捨ての体液吸収性着用物品であって、
前記液透過性シートは、前記非対向面が平坦なものであり、
前記被覆シートは、前記着用物品の着用者の肌と向かい合う表面と前記液透過性シートの前記非対向面と向かい合う裏面とを有し、前記表面には前記前後方向へ互いに平行して延びていて前記幅方向において交互に現われる山部と谷部とのそれぞれが複数条形成されていて、前記裏面は平坦に形成されており、前記股下域における前記幅方向には前記裏面が前記液透過性シートの前記非対向面に接合している中央域と、前記中央域の両側それぞれの外側にあって前記裏面が前記非対向面に対して非接合状態にある側域とを有し、
前記側域は、少なくとも一条の前記谷部と前記谷部よりも前記横方向の外側に位置する少なくとも一条の前記山部とを含んでいて、前記液透過性シートの厚さ方向において前記非対向面から離間することが可能であることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記不織布は、前記谷部における前記幅方向の中央部分の密度が前記山部における前記幅方向の中央部分の密度よりも低いものである請求項1記載の着用物品。
【請求項3】
前記股下域の前記前後方向における中央において、前記被覆シートが前記芯材の前記幅方向の両側縁にまで広がっていて、前記被覆シートの前記側域における前記幅方向の寸法が10〜50mmの範囲にある請求項1または2記載の着用物品。
【請求項4】
前記股下域の前記前後方向における中央において、前記被覆シートの前記側域が前記芯材の前記幅方向の両側縁よりも内側にある請求項1または2記載の着用物品。
【請求項5】
前記股下域における前記幅方向の両側部分には、前記前後方向へ弾性的に伸長・収縮可能に延びていて前記着用者の脚周りに弾性的に接触可能な防漏堤が形成され、前記前後方向における前記防漏堤の両端部と前記被覆シートにおける前記側域の前記前後方向における両端部とが接合している請求項1〜4のいずれかに記載の着用物品。
【請求項6】
前記被覆シートは、前記中央域が親水性であり、前記側域が疎水性である請求項1〜5のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−119460(P2010−119460A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−293717(P2008−293717)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】