説明

使い捨てバイオリアクタ及び単回使用撹拌システム

【課題】使い捨てバイオリアクタ及び単回使用撹拌システムの提供。
【解決手段】本発明は、高分子材料製の可撓性袋体と、さらに、上記袋体内に全体が配置された単回使用撹拌システムとを備える使い捨てバイオリアクタであって、上記撹拌システムは、駆動手段と、上記駆動手段により磁気結合を介して回転するように駆動される少なくとも1つの撹拌手段とを含むことを特徴とするバイオリアクタに関する。また、本発明は単回使用撹拌システムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨てバイオリアクタ及び単回使用撹拌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
バイオリアクタとは、例えば、発酵、酵素反応、細胞培養に用いられたり、あるいは組織工学分野で用いられたり、あるいは生物学的製品、化学製品、生物学的製剤、又は微生物の製造に用いられたりする反応器である。上記製品の製造には、洗浄工程、滅菌工程、及び、バイオリアクタや撹拌システムなどの設備の妥当性確認工程、といった極めて厳格で手のかかる工程が必要であり、これらの工程により上記製品の製造費用が大幅に上昇する。その結果として、この課題を解決するため、特に洗浄時間及び確認時間を最小にする目的で、及び/又は汚染の危険性を回避する目的で、滅菌済で使い捨て型のバイオリアクタ及び撹拌システムが開発されてきた。
【0003】
しかしながら、現在市販されている単回使用撹拌システムには、適合する使い捨てバイオリアクタが1種類に限られるという欠点がある。その結果、使い捨てバイオリアクタの使用者は、使用する特定の使い捨てバイオリアクタを販売する製造者から単回使用撹拌システムを入手せざるを得ず、多くの場合、比較的高い値段で入手しなくてはならない。
【0004】
従って、既存のバイオリアクタに対する別の解決策を提案する使い捨てバイオリアクタ、及び、上記欠点のない単回使用撹拌システムを提供して欲しいとの需要が現実にある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、単純な設計の使い捨てバイオリアクタ、及び、上記課題を解決する単回使用撹拌システム、すなわち、任意の使い捨てバイオリアクタに適合する撹拌システムを提供することを第一の目的とする。
【0006】
本発明の使い捨てバイオリアクタ及び単回使用撹拌システムは、工業スケール及び商業スケールで安全に使用でき、かつ信頼性も高いという利点を有するものでなければならず、それらの構造は、使い捨てバイオリアクタ及び安価な単回使用撹拌システムをいずれも安価で製造できるような単純なものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一の目的によれば、本発明は、高分子材料製の可撓性袋体を備える使い捨てバイオリアクタに関する。上記バイオリアクタは、上記袋体内に全体が配置された単回使用撹拌システムも備え、上記撹拌システムは、駆動手段と、上記駆動手段により磁気結合を介して回転するように駆動される少なくとも1つの撹拌手段とを含む。
【0008】
換言すれば、上記撹拌システムの駆動手段と上記少なくとも1つの撹拌手段は、高分子材料製の可撓性袋体内にその全体が配置されている。高分子材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体(EVOH)、及び、二層被覆面を含むプラスチックからなる群から選択されるのが有利である。なお、上記二層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はポリビニルアルコール(PVA)の第一内層と、その内層の上に位置する生物学的に活性な外層とを含む。二層被覆は、袋体を構成するプラスチックと、袋体内で混合される媒体(有利には細胞培養培地)との間の遮断壁を構成しており、タンパク質(有利には細胞)がプラスチックに付着するのを防ぐ。この二層被覆の性質やその使用法は、仏国特許発明第2862979号明細書(B1)に具体的に記載されている。
【0009】
一般的に、「使い捨て(Disposable)」という語は、バイオリアクタが使用前に無菌状態であり、かつ、使用後に廃棄されることを意味することは理解されよう。「単回使用(Single−use)」という表現は、撹拌システムが使用前に無菌状態であり、かつ、撹拌システムを媒体を混合する目的で使用した際に反応が同じ条件(同じ反応物質、同じ反応物質量、同じ溶剤・・・)で起こる限りは数回使用でき、その後廃棄されるものをいうことは理解されるはずである。
【0010】
本発明の有利な一実施形態によれば、上記撹拌システムは、流体又は電流(電荷)供給ラインで構成される、上記駆動手段を作動させる作動手段も含む。
【0011】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、上記流体は、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、二原子酸素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される気体である。上記流体として二酸化炭素、二原子酸素、窒素、又は空気を使用するのが有利であり好ましい。実際、これらの気体はそれぞれ、曝気装置を用いて、バイオリアクタ内で混合される媒体を曝気するのにも使用でき、従って、微生物を増殖させる栄養分として機能する。
【0012】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、上記使い捨てバイオリアクタは、上記袋体の壁面を貫通するように延設された少なくとも1つの管も備える。上記少なくとも1つの管は、駆動手段のところで撹拌システムに取着するか、又は連結するのが有利である。特に好ましい形態では、上記少なくとも1つの管は、上記駆動手段を作動させる作動手段を構成する。
【0013】
本発明の有利な実施形態によれば、上記少なくとも1つの撹拌手段は回転軸を含み、上記回転軸は、着磁面、好ましくは磁石により引きつけることが可能な少なくとも1つの金属面を有する、及び/又は、上記回転軸は、着磁面を少なくとも1つ、好ましくは磁石を少なくとも1つ有する。回転軸の実質的に全面が金属面若しくは着磁面のいずれかで構成されるか、又は、回転軸が金属面と着磁面とが交互に組み合わさった面で構成されるのが有利である。
【0014】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記少なくとも1つの撹拌手段は、ハブと少なくとも1つの羽根とを有する少なくとも1つのプロペラ、好ましくは2つのプロペラを含む。上記少なくとも1つのプロペラは、考えられる様々な形状の羽根のうち、異なる形状を有する羽根を複数備えるのが有利である。上記少なくとも1つの撹拌手段が複数のプロペラを有する場合、各プロペラが備える羽根の数は異なってもよく、その形状も異なってもよい。
【0015】
本発明の他の有利な一実施形態によれば、上記駆動手段は、中空シャフトと一体となった翼を備えるタービンであり、上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸は、上記シャフトの空洞内に配置され、上記中空シャフトの内壁は、
・上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸の上記着磁面により引きつけられる金属面を少なくとも1つ、及び/又は、
・上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸の上記少なくとも1つの金属面若しくは着磁面を引きつける着磁面を少なくとも1つ、好ましくは磁石を少なくとも1つ
有する。
【0016】
従って、中空シャフトの内壁には、回転軸の金属面又は着磁面の1つ又は複数と協働する1つ又は複数の着磁面が設けられているのが有利である。回転軸の実質的に全面が金属面で構成される場合は、中空シャフトの内壁が、その回転軸の金属面と協働する少なくとも1つの着磁面を有するか、あるいは、回転軸の実質的に全面がAという極性を持った着磁面で構成される場合は、中空シャフトの内壁が、その回転軸の着磁面と協働する、少なくとも1つの金属面、又は極性Aとは反対の極性を持った少なくとも1つの着磁面を有することによって、駆動手段が回転を行う場合の回転運動が伝達されるのが特に有利である。
【0017】
中空シャフトの内壁の上記少なくとも1つの金属面又は上記少なくとも1つの着磁面は、翼の位置と共に一直線をなすように上記中空シャフトの内壁上又は内壁内に配置されるのが好ましい。
【0018】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、上記タービンは、ほぼ閉鎖円筒状の固定体も含む。上記固定体は筺体を形成し、その筺体中で上記翼は運動することができる。「ほぼ閉鎖円筒状の」という表現は、円筒を構成するディスクの中心に、円筒の全高にわたって穴が開いている、又は部分的に穴が開いている(すなわち、その2つのディスクのうち、1つには穴が開いていない)閉鎖円筒を意味する。この穿孔によって画定される空間は円筒状であるのが有利であり、これにより、その場所に撹拌手段の回転軸を収容することができる。
【0019】
本発明の別の特に有利な実施形態によれば、上記翼の少なくとも1つは、上記少なくとも1つの撹拌手段の下側面上に配置される少なくとも1つの対向磁石と協働する少なくとも1つの磁石を備えることで、上記駆動手段と上記少なくとも1つの撹拌手段との摩擦を防ぐ。上記下側面は、上記少なくとも1つの撹拌手段の面のうち、上記少なくとも1つの撹拌手段の上記少なくとも1つの羽根がそこから突設されている面の裏側の面に相当する。上記少なくとも1つの磁石は、1つ以上の翼の内側の周囲領域であって、中空シャフトの回転軸の近くではあるが、中空シャフトの壁上又は壁内には位置していない領域に配置されるのが好ましい。
【0020】
本発明の実施において有利な一変形例によれば、上記タービンの上記円筒状の固定体は、上記円筒のディスク面の外周領域に1つ以上の磁石を備える。駆動手段と上記少なくとも1つの撹拌手段との摩擦を防ぐために、この磁石が、撹拌手段の上記少なくとも1つの対向磁石と同極であるのが特に有利である。また、上記少なくとも1つの撹拌手段の下側面に対してより効果的に反発するように、この磁石が、翼に配置された磁石と同極であるのも好ましい。
【0021】
本発明のさらに別の特に有利な実施形態によれば、上記流体供給ラインは、上記袋体内で混合される媒体の曝気装置としても機能する。この実施形態は、駆動手段の作動手段が気体である場合に特に好ましい。曝気装置は、選択された気体が微生物の増殖に貢献する場合、さらにより有利である。
【0022】
本発明の有利な一実施形態によれば、上記袋体内の上記単回使用撹拌システムの高さは可変であり、撹拌中にその高さを変化させることができる。その結果、反応媒体の混合を均一に行え、効率を最適化することができる。
【0023】
本発明の実施において有利な一変形例によれば、上記袋体内の上記単回使用撹拌システムの高さは、上記撹拌システムの取付手段があることによって、上記撹拌システムの使用時又は非作動時に変えることができる。
【0024】
こうして、単回使用撹拌システムは、取付手段を用いて、使い捨てバイオリアクタの可撓性袋体にしっかりと保持することができる。
【0025】
本発明の実施において特に有利な一変形例によれば、上記取付手段によって、流体又は電流供給ラインを上記袋体の頂部で連結させることができる。この場合、取付手段は、金属継ぎ手によって連結した雄部と雌部で構成される。プラスチック製の雌部は袋体に溶接される。プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体(EVOH)からなる群から選択されるのが有利である。雄部は2つの穴を有し、その穴の中に、流体又は電流供給管が実質的に固定された状態(但し、物理力を作用させれば管の高さを変えることができる)で配置される。また雄部は雌部の上に配置されている。共通軸を中心にして旋回可能な2つの半円と螺締具とで構成される金属連結継ぎ手によって、雌部と雄部を連結して一つのブロックにすることができる。なお、このブロックは可撓性袋体と組み合わせられる。場合によっては、剛性及び強度をより高めるために、流体又は電流供給管を補強棒内に配置することもできる。クランプ・ナットシステムを用いて、固定された基部により流体又は電流供給管を支持するのが有利である。上記管は流体供給管であるのが特に好ましい。
【0026】
本発明の実施において特に有利な別の変形例によれば、上記取付手段によって、上記流体又は電流供給管を上記袋体の側部で連結させることができる。取付手段は、二重の管連結部で構成される。この連結部は、2つのスプリンクラーホースコネクタが組み合わさった形態をなしており、すなわち、各々が螺入端部を有する2つの管状雄部で実質的に構成される。また、この雄部は、その管に対して垂直方向に、ほぼ平坦なプラスチック面を有するため、二重連結部を袋体に溶接することができる。ほぼ平坦な面のプラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体(EVOH)からなる群から選択されるのが有利である。端部がねじ込み形であることによって、流体又は電流供給管へ液密的に連結できる。特に好ましい形態では、上記管は流体供給管である。補強棒をねじ込み形でない端部に連結して、クランプ・ナットシステムを用いて、固定された基部により支持することもできる。
【0027】
これらの種々の取付手段のおかげで、撹拌システムを袋体内に非永続的に取り付けておくこと、及び/又は、使用後に袋体から取り出して別の袋体内に取り付けることが可能となる。換言すれば、撹拌システムは、これらの取付手段を介して任意の使い捨てバイオリアクタに適合及び/又は対応できる。
【0028】
第二の目的において、本発明は、
・駆動手段と、
・上記駆動手段により磁気結合を介して回転するように駆動される少なくとも1つの撹拌手段と
を備える単回使用撹拌システムに関する。上記少なくとも1つの撹拌手段は回転軸を含む。上記回転軸は、着磁面、好ましくは磁石により引きつけることが可能な少なくとも1つの金属面を有する、及び/又は、上記回転軸は、着磁面を少なくとも1つ、好ましくは磁石を少なくとも1つ有する。上記駆動手段は、中空シャフトと一体となった翼を備えるタービンである。上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸は、上記シャフトの空洞内に配置され、上記中空シャフトの内壁は、
・上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸の上記着磁面により引きつけられる金属面を少なくとも1つ、及び/又は、
・上記少なくとも1つの撹拌手段の上記回転軸の上記少なくとも1つの金属面若しくは着磁面を引きつける着磁面を少なくとも1つ、好ましくは磁石を少なくとも1つ
有する。
【0029】
回転軸の実質的に全面が金属面若しくは着磁面のいずれかで構成されるか、又は、回転軸が金属面と着磁面とが交互に組み合わさった面で構成されるのが有利である。
【0030】
中空シャフトの内壁には、回転軸の金属面若しくは着磁面の1つ若しくは複数と協働する1つ若しくは複数の着磁面が設けられるか、又は、回転軸の着磁面の1つ若しくは複数と協働する1つ若しくは複数の金属面が設けられる。回転軸の実質的に全面が金属面で構成される場合は、中空シャフトの内壁が、その回転軸の金属面と協働する少なくとも1つの着磁面を有するか、あるいは、回転軸の実質的に全面がAという極性を持った着磁面で構成される場合は、中空シャフトの内壁が、その回転軸の着磁面と協働する、少なくとも1つの金属面、又は極性Aとは反対の極性を有する少なくとも1つの着磁面を有することによって、駆動手段が回転を行う場合の回転運動が伝達されるのが特に有利である。
【0031】
中空シャフトの内壁の上記少なくとも1つの金属面又は上記少なくとも1つの着磁面は、翼の位置と共に一直線をなすように上記中空シャフトの壁上又は壁内に配置されるのが好ましい。
【0032】
本発明の有利な一実施形態によれば、上記少なくとも1つの撹拌手段は、ハブと少なくとも1つの羽根とを有する少なくとも1つのプロペラ、好ましくは2つのプロペラを含む。上記少なくとも1つのプロペラは、考えられる様々な形状の羽根のうち、異なる形状を有する羽根を複数備えるのが有利である。上記少なくとも1つの撹拌手段が複数のプロペラを有する場合、各プロペラが備える羽根の数は異なってもよく、その形状も異なってもよい。
【0033】
本発明の有利な実施形態によれば、上記翼の少なくとも1つは、上記少なくとも1つの撹拌手段の下側面上に配置される少なくとも1つの対向磁石と協働する少なくとも1つの磁石を備えることで、上記駆動手段と上記少なくとも1つの撹拌手段との摩擦を防ぐ。上記下側面は、上記少なくとも1つの撹拌手段の面のうち、上記少なくとも1つの撹拌手段の上記少なくとも1つの羽根がそこから突設されている面の裏側の面に相当する。1つ以上の翼に配置された上記少なくとも1つの磁石は、翼の内側の周囲領域であって、中空シャフトの回転軸の近くではあるが、中空シャフトの壁上又は壁内には位置していない領域に配置されるのが好ましい。
【0034】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記タービンは、ほぼ閉鎖円筒状の固定体も含む。上記固定体は筺体を形成し、その筺体中で上記翼は運動することができる。
【0035】
本発明の実施において有利な一変形例によれば、上記タービンの上記円筒状の固定体は、上記円筒のディスク面の外周領域に1つ以上の磁石を備える。駆動手段と少なくとも1つの撹拌手段との摩擦を防ぐために、この磁石が、撹拌手段の少なくとも1つの対向磁石と同極であるのが特に有利である。また、上記少なくとも1つの撹拌手段の下側面に対してより効果的に反発するように、この磁石が、翼に配置された磁石と同極であるのも好ましい。
【0036】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記撹拌システムは、流体又は電流(電荷)供給ラインで構成される、上記駆動手段を作動させる作動手段も含む。
【0037】
本発明の実施において有利な変形例によれば、上記流体は、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、二原子酸素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される気体である。
【0038】
本発明の有利な実施形態によれば、上記流体供給ラインは、上記袋体内で混合される媒体の曝気装置としても機能する。曝気流体として二酸化炭素、二原子酸素、窒素、空気、又はそれらの気体の組み合わせを使用するのが有利であり好ましい。これらの気体はそれぞれ、微生物を増殖させる栄養分として機能するからである。
【0039】
本発明の別の有利な実施形態によれば、上記袋体内の上記単回使用撹拌システムの高さは可変であり、撹拌中にその高さを変化させることができる。
【0040】
上記説明、及び本発明の現段階で好ましい実施形態を示した以下の図面の説明から導かれる発明によって、発明の目的において述べた技術的課題を解決することができ、従って、工業スケール及び商業スケールで使用できる単純な設計の安価なバイオリアクタ及び単回使用撹拌システムを製造することができるようになる。
【0041】
本発明の他の目的、特徴及び利点は、本発明の現段階で好ましい実施形態を参照して以下の説明から明らかとなるだろう。なお、これらの好ましい実施形態は、本発明の一部ではあるが、説明のために示したものにすぎず、本発明の範囲を限定するものでは決してない。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】現段階で好ましい実施形態による本発明の単回使用撹拌システムの透視図を示す。
【図2】現段階で好ましい実施形態による本発明の単回使用撹拌システムの長手方向断面図を示す。
【図3】現段階で好ましい第一実施形態による本発明の使い捨てバイオリアクタの透視図を示す。
【図4】現段階で好ましい第一実施形態による本発明の使い捨てバイオリアクタの可撓性袋体内に単回使用撹拌システムを取り付けるための取付手段の長手方向断面図を示す。
【図5】現段階で好ましい第二実施形態による本発明の使い捨てバイオリアクタの透視図を示す。
【図6】現段階で好ましい第二実施形態による本発明の使い捨てバイオリアクタの可撓性袋体内に単回使用撹拌システムを取り付けるための取付手段の長手方向断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
図1及び2に、本発明の単回使用撹拌システムの現段階で好ましい実施形態を示す。
【0044】
単回使用撹拌システム1は、
・駆動手段10と、
・上記駆動手段10により磁気結合を介して回転するように駆動される撹拌手段20と
を備え、上記撹拌手段20は回転軸21を含む。回転軸21は、少なくとも2つの磁石22を有する。駆動手段10は、中空シャフト12と一体となった翼11を備えるタービン10である。撹拌手段20の回転軸21は、シャフト12の空洞13内に配置され、中空シャフト12の壁は、撹拌手段20の回転軸21の上記少なくとも2つの磁石22の1つを引きつける磁石14を有し、その磁石14は、各翼11と共に一直線をなすように配置されている。従って、上記中空シャフト12の壁に配置された磁石14と回転軸の磁石22とは、互いに引き合うように正反対の極性を有している。
【0045】
図1及び2に図示される通り、タービン10は、ほぼ閉鎖円筒15状の固定体15も含み、上記固定体15は筺体を形成し、その筺体中で翼11は運動することができる。
【0046】
図1及び2は、撹拌手段20が、ハブ24と4つの羽根23とを有する2つのプロペラ20a、20bを備えていることを示している。当然のことながら、第一プロペラが有する羽根の数は、第二プロペラに対して異なってもよく、その形状も異なってもよい。
【0047】
さらに図1及び2は、各翼11が、撹拌手段20の下側面24i上に配置される対向磁石25と協働する磁石16を備えることで、駆動手段10と撹拌手段20との摩擦を防ぐことを示している。なお、上記下側面24iは、上記少なくとも1つの撹拌手段の面であって、面24s、すなわち撹拌手段の羽根23がそこから突設されている面24sの裏側の面に相当する。翼11上に置かれた磁石16は、翼の内側の周囲領域であって、中空シャフト12の回転軸の近くではあるが、中空シャフトの壁上又は壁内には位置していない領域に配置される。
【0048】
図1及び2に図示される通り、タービン10の円筒状の固定体15は、上記円筒の各ディスク面の外周領域に複数の磁石17を備える。この磁石17が、撹拌手段20の対向磁石25と同極であることで、駆動手段10と上記少なくとも1つの撹拌手段20との摩擦を防ぐ。また、この磁石17が、翼11に配置された磁石16と同極であることで、上記少なくとも1つの撹拌手段20の下側面24iに対してより効果的に反発する。
【0049】
図1〜6は、撹拌システム20が、流体供給ラインで構成される、駆動手段10を作動させる作動手段30も含むことを示している。流体は、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、二原子酸素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される気体である。気体供給ラインは、混合される媒体の曝気装置31としても機能する。この後者の構成では、使用する気体は微生物を増殖させる栄養分として機能する。
【0050】
図3〜6、特に図3〜5に、本発明の使い捨てバイオリアクタの現段階で好ましい第一及び第二実施形態を示す。
【0051】
各実施形態の使い捨てバイオリアクタは、上述の通り、高分子材料製の可撓性袋体40と単回使用撹拌システム1とを備える。
【0052】
図3〜6に示される通り、単回使用撹拌システム1は、取付手段50、60によって、使い捨てバイオリアクタの可撓性袋体40にしっかりと保持される。この取付手段50、60によって、単回使用撹拌システム1の使用時又は非作動時に袋体40内の単回使用撹拌システム1の高さを変えることができる。
【0053】
図3及び4は、使い捨てバイオリアクタの現段階で好ましい第一実施形態における取付手段50(袋体の頂部で気体供給管と連結)を示す。上記取付手段50は、金属継ぎ手53によって連結した雄部51と雌部52で構成される。プラスチック製の雌部52は袋体40に溶接される。プラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体(EVOH)からなる群から選択されるのが有利である。雄部51は2つの穴54を備え、この穴の中に気体供給管30は実質的に固定された状態(但し、物理力を作用させれば管の高さを変えることができる)で配置される。また雄部51は雌部52上に配置されている。共通軸55を中心にして旋回可能な2つの半円と螺締具56とで構成される金属連結継ぎ手53によって、雌部と雄部を連結して一つのブロックにすることができる。なお、このブロックは可撓性袋体40と組み合わせられる。場合によっては、剛性及び強度をより高めるために、気体供給管を補強棒内に配置することもできる。図3及び4には図示していないが、クランプ・ナットシステムを用いて、固定された基部により気体供給管を支持する。
【0054】
図5及び6は、使い捨てバイオリアクタの現段階で好ましい第二実施形態における取付手段60(袋体の側部で気体供給管と連結)を示す。上記取付手段60は、二重の管連結部で構成される。この連結部は、2つのスプリンクラーホースコネクタが組み合わさった形態をなしており、すなわち、各々が螺入端部61fを有する2つの管状雄部61で実質的に構成される。また、この雄部は、その管61に対して垂直方向に、ほぼ平坦なプラスチック面62を有するため、二重連結部を袋体40に溶接することができる。ほぼ平坦な面62のプラスチック材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド類、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及び、エチレンとポリビニルアルコールの共重合体(EVOH)からなる群から選択されるのが有利である。端部61fがねじ込み形であることによって、気体供給管へ液密的に連結できる。図5及び6には図示していないが、補強棒をねじ込み形でない端部に連結して、クランプ・ナットシステムを用いて、固定された基部により支持する。
【0055】
従って、本発明によって、単純な設計の使い捨てバイオリアクタ、及び、任意の形態の使い捨てバイオリアクタに適合できるという利点を有する撹拌システムが得られる。
【符号の説明】
【0056】
1 単回使用撹拌システム
10 駆動手段/タービン
11 翼
12 中空シャフト
13 空洞
14 磁石
15 固定体
16 磁石
17 磁石
20 撹拌手段
20a プロペラ
20b プロペラ
21 回転軸
22 磁石
23 羽根
24 ハブ
24i 撹拌手段20の下側面
24s 撹拌手段の羽根23がそこから突設されている面
25 対向磁石
30 作動手段/気体供給管
31 曝気装置
40 可撓性袋体
50 取付手段
51 雄部
52 雌部
53 金属継ぎ手
54 穴
55 共通軸
56 螺締具
60 取付手段
61 管状雄部
61f 螺入端部
62 ほぼ平坦なプラスチック面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子材料製の可撓性袋体(40)を備える使い捨てバイオリアクタであって、前記袋体(40)内に全体が配置された単回使用撹拌システム(1)も備え、前記撹拌システム(1)は、駆動手段(10)と、前記駆動手段(10)により磁気結合を介して回転するように駆動される少なくとも1つの撹拌手段(20)とを含むことを特徴とするバイオリアクタ。
【請求項2】
前記撹拌システム(1)は、流体又は電流(電荷)供給ラインで構成される、前記駆動手段(10)を作動させる作動手段(30)も含むことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクタ。
【請求項3】
前記流体は、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、二原子酸素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される気体であることを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクタ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの撹拌手段(20)は回転軸(21)を含み、前記回転軸(21)は、着磁面、好ましくは磁石により引きつけることが可能な少なくとも1つの金属面を有する、及び/又は、前記回転軸は、着磁面(22)を少なくとも1つ、好ましくは磁石(22)を少なくとも1つ有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項5】
前記少なくとも1つの撹拌手段(20)は、ハブ(24)と少なくとも1つの羽根(23)とを有する少なくとも1つのプロペラ(20a、20b)、好ましくは2つのプロペラ(20a、20b)を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項6】
前記駆動手段(10)は、中空シャフト(12)と一体となった翼(11)を備えるタービン(10)であり、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記回転軸(21)は、前記シャフトの空洞(13)内に配置され、前記中空シャフト(12)の内壁は、
・前記少なくとも1つの撹拌手段の前記回転軸の前記着磁面により引きつけられる金属面を少なくとも1つ、及び/又は、
・前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記回転軸(21)の前記少なくとも1つの金属面若しくは着磁面(22)を引きつける着磁面(14)を少なくとも1つ、好ましくは磁石(14)を少なくとも1つ
有することを特徴とする請求項4又は5に記載のバイオリアクタ。
【請求項7】
前記タービン(10)は、ほぼ閉鎖円筒(15)状の固定体(15)も含み、前記固定体(15)は筺体を形成し、その筐体中で前記翼(11)は運動することができることを特徴とする請求項6に記載のバイオリアクタ。
【請求項8】
前記翼(11)の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の下側面(24i)上に配置される少なくとも1つの対向磁石(25)と協働する少なくとも1つの磁石(16)を備えることで、前記駆動手段(10)と前記少なくとも1つの撹拌手段(20)との摩擦を防ぎ、前記下側面(24i)は、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の面のうち、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記少なくとも1つの羽根(23)がそこから突設されている面(24s)の裏側の面に相当することを特徴とする請求項6又は7に記載のバイオリアクタ。
【請求項9】
前記流体供給ラインは、前記袋体(40)内で混合される媒体の曝気装置(31)としても機能することを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項10】
前記袋体(40)内の前記単回使用撹拌システム(1)の高さは可変であり、撹拌中にその高さを変化させることができることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイオリアクタ。
【請求項11】
・駆動手段(10)と、
・前記駆動手段(10)により磁気結合を介して回転するように駆動される少なくとも1つの撹拌手段(20)と
を備える単回使用撹拌システム(1)であって、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)は回転軸(21)を含み、前記回転軸(21)は、着磁面、好ましくは磁石により引きつけることが可能な少なくとも1つの金属面を有する、及び/又は、前記回転軸は、着磁面(22)を少なくとも1つ、好ましくは磁石(22)を少なくとも1つ有し;
前記駆動手段(10)は、中空シャフト(12)と一体となった翼(11)を備えるタービン(10)であり、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記回転軸(21)は、前記シャフトの空洞(13)内に配置され、前記中空シャフト(12)の内壁は、
・前記少なくとも1つの撹拌手段の前記回転軸の前記着磁面により引きつけられる金属面を少なくとも1つ、及び/又は、
・前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記回転軸(21)の前記少なくとも1つの金属面若しくは着磁面(22)を引きつける着磁面(14)を少なくとも1つ、好ましくは磁石(14)を少なくとも1つ
有することを特徴とする撹拌システム。
【請求項12】
前記少なくとも1つの撹拌手段(20)は、ハブ(24)と少なくとも1つの羽根(23)とを有する少なくとも1つのプロペラ(20a、20b)、好ましくは2つのプロペラ(20a、20b)を含むことを特徴とする請求項11に記載の撹拌システム。
【請求項13】
前記タービン(10)は、ほぼ閉鎖円筒(15)状の固定体(15)も含み、前記固定体(15)は筺体を形成し、その筐体中で前記翼(11)は運動することができることを特徴とする請求項11又は12に記載の撹拌システム。
【請求項14】
前記翼(11)の少なくとも1つは、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の下側面(24i)上に配置される少なくとも1つの対向磁石(25)と協働する少なくとも1つの磁石(16)を備えることで、前記駆動手段(10)と前記少なくとも1つの撹拌手段(20)との摩擦を防ぎ、前記下側面(24i)は、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の面のうち、前記少なくとも1つの撹拌手段(20)の前記少なくとも1つの羽根(23)がそこから突設されている面(24s)の裏側の面に相当することを特徴とする請求項12又は13に記載の撹拌システム。
【請求項15】
前記撹拌システム(1)は、流体又は電流(電荷)供給ラインで構成される、前記駆動手段(10)を作動させる作動手段(30)も含むことを特徴とする請求項11〜14のいずれか一項に記載の撹拌システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−521210(P2012−521210A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501356(P2012−501356)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050534
【国際公開番号】WO2010/109136
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(511230381)
【Fターム(参考)】