説明

使い捨て内視鏡システム及び内視鏡用スコープ

【課題】簡易な構造を有する使い捨て内視鏡システムを提供する。
【解決手段】使い捨て内視鏡システムは、一端がプロセッサ40に着脱自在に取り付けられ、プロセッサ40から供給された光によって被写体を照射し、得られた画像信号をプロセッサ40に送信する使い捨てのスコープ10を備える。スコープ10は、スコープ10の使用の有無を検知するセンサ28と、センサ28を覆うカバーと、スコープ10の使用の有無に関する情報を記憶するメモリ27と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡スコープの再利用を前提としない使い捨ての内視鏡用スコープ及びこの使い捨て内視鏡用スコープを用いた内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
体内に挿入される内視鏡スコープを使い捨てにした内視鏡装置が知られている。通常、使い捨て内視鏡スコープは使用後に廃棄されるため、滅菌処理や洗浄を施す必要がない。しかし、誤って使用済みの内視鏡スコープが使用される可能性がある。この場合、安全、衛生面で問題が生じる可能性がある。
【0003】
そこで、誤って使用されることを防ぐために、滅菌処理後の工程で生じる圧力差により破損する内視鏡スコープが提案されている(特許文献1参照)。この内視鏡スコープは、使用後に滅菌処理を施すと破損するため、滅菌処理が施されることにより、再利用を確実に防止することが可能となる。
【0004】
また、内視鏡が様々なユーザに貸し出される内視鏡レンタルシステムにおいて、所定の使用者のみに使用されることを目的として、貸し出される内視鏡に使用制限を課すシステムが提案されている(特許文献2参照)。このシステムでは、通信ネットワークや使用制限のための認証カード等が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−38324号公報
【特許文献2】特開2009−160312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記装置及びシステムは、構成が複雑であるため、コストの増大を招くとともに、操作が煩雑になる。
【0007】
したがって、本発明は、簡易な構造を有する使い捨ての内視鏡用スコープとこの内視鏡用スコープを用いた使い捨て内視鏡システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る使い捨て内視鏡システムは、一端がプロセッサに着脱自在に取り付けられ、プロセッサから供給された光によって被写体を照射し、得られた画像信号をプロセッサに送信する使い捨てスコープを備える使い捨て内視鏡システムであって、スコープは、スコープの使用の有無を検知するセンサ と、センサを覆うカバーと、スコープの使用の有無に関する情報を記憶するメモリと、を備えることを特徴とする。
【0009】
スコープは、通電によりセンサから送信された検出信号を検知する検出部を更に備え、検出部の信号がメモリに書き込まれることが好ましい。
【0010】
カバーが外れた状態で通電すると使用済みであると判断され、メモリに記憶されることが好ましい。
【0011】
センサは第一の導電部材と第二の導電部材とを備え、カバーは導電性材料を含むことが好ましい。
【0012】
センサは磁気センサであり、カバーは磁性体であっても良い。
【0013】
プロセッサは電源と光源とを備え、使用の有無に関する情報に基づいて電源と光源の動作が制御されることが好ましい。
【0014】
また、本発明に係る内視鏡用スコープは、一端がプロセッサに着脱自在に取り付けられ、プロセッサから供給された光によって被写体を照射し、得られた画像信号をプロセッサに送信する使い捨ての内視鏡用のスコープであって、スコープは、スコープの使用の有無を検知するセンサと、センサを覆うカバーと、スコープの使用の有無に関する情報を記憶するメモリと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡易な構造を有する簡易な構造を有する使い捨ての内視鏡用スコープと使い捨て内視鏡システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る使い捨て内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】(a)本発明の実施の形態に係る内視鏡スコープの先端部を拡大して示す外観図である。(b)スコープ 先端面の正面図である。
【図3】(a)本発明の実施の形態に係る内視鏡スコープの先端部を拡大して示す側面図である。(b)内視鏡スコープの先端部を挿入したカバーの断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る使い捨て内視鏡システムで用いる使い捨てスコープの使用の有無の判別方法を示すフローチャートである。
【図5】(a)本発明の他の実施の形態に係る内視鏡スコープのカバーを外した状態での先端部を拡大して示す側面図である。(b)内視鏡スコープの先端部を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る使い捨て内視鏡システムは、スコープ10と、スコープ10が着脱自在に取り付けられるプロセッサ40及びモニタ50とを備える。スコープ10は、プロセッサ40に設けられた光源41から供給された光によって被写体(不図示)を照射し、得られた画像信号を処理してモニタ50に表示する。また、スコープ10は使い捨てを前提としており、一度使用された後には、原則として廃棄される。
【0019】
スコープ10は、スコープ本体20と、スコープ本体20の先端部21に取り付けられたカバー30を備える(図2参照)。スコープ本体20は、被写体である患者の体内に挿入される可撓管である(図2参照)。スコープ本体20の先端部21と反対の端部は、プロセッサ40から延伸する接続部(不図示)によりプロセッサ40に着脱自在に取り付けられる。接続部はライトガイド11を含む。スコープ10に挿通された、照明光導光用の多数の光ファイバから成るライトガイド11は、プロセッサ40にある光源41からの光が被観察体に照明光として照射される。本実施形態では、プロセッサ40の中に光源41が含まれる形態を説明するが、プロセッサ40と別体構造であってもよい。また、光源41として使用されるのは、発光部の駆動量により出射光量が調整可能なものであれば良く、例えばLEDがあげられる。
【0020】
スコープ本体20は、先端部21に撮像素子としてCCD22を有する。更に、スコープ本体20は、CCD22を駆動するCCD駆動部23、CCD22で得られた画像信号を処理する画像信号処理部24、画像信号処理部24に接続されたアンプ25、スコープの使用の有無に関する情報を記憶する不揮発性のメモリ27を有する。CCD駆動部23、画像信号処理部24及びメモリ27は、制御部26により制御される。制御部26は、マイクロプロセッサ等が使用可能である。
【0021】
画像信号処理部24は、CCD22により取得された画像信号に対してモニタ50で表示可能な画像を生成する所定の画像処理を施す。被観察体からの反射光は対物光学系(不図示)を介してCCD22に入射し、CCD22の入射面に被観察体の光学像が結像される。撮像素子では入射した被観察体の光学像が光電変換され、この光学像に基づいた画像信号が出力される。
【0022】
図3に示すように、スコープ本体20は、先端部21にスコープ本体20の使用の有無を検知するセンサ28を備える。本実施の形態では、センサ28は金属部材28a(第一の導電部材)と、金属部材28b(第二の導電部材)とから構成される。金属部材28a、28bは、それぞれ先端部21の外周に沿って平行して配置される。センサ28は、金属部材28a、28bのいずれか一方又は両方に導線(不図示)が接続されている。センサ28を覆うカバー30は、センサ28と同様に導電性材料を含む。センサ28とカバー30は導電性を有する材料であれば、金属以外の他の材料でも使用可能である。また、金属部材28a、28b及びカバー30は、電気的に接続可能であれば、同じ材料で形成されていても、又はそれぞれが異なる材料で形成されていてもよい。
【0023】
図2に示すように、本実施の形態では、カバー30はセンサ28を含む先端部21の外周を覆うように円筒状に形成される。カバー30の形状は、先端部21にカバー30を取り付けることにより、センサ28と接触し、スコープ本体20の先端部21が人体への挿入が困難な形状に形成される。カバー30の外径は、スコープ本体20の先端部21の外径よりも大きく、例えば先端部21の外径の2倍以上になるように設定する。カバー30の表面は、滑らかであっても良く、また、人体への挿入が困難となるように、外側に突出する突起物が設けられた構造であっても良い。また、カバー30は、センサ28に接触する形状であれば円筒状に限られず、角柱状でもかまわない。また、本実施の形態では円筒状に形成され、先端が開口した形状であるが、CCD22に受光できる範囲において先端に開口が形成されていない形状でもかまわない。
【0024】
センサ28とカバー30は、接触することで通電する。スコープ本体20は、この通電によりセンサ28から送信された検出信号を検知する検出部29を備える。検出部29は制御部26により制御される。
【0025】
例えば、カバー30が装着された状態で通電すると、センサ28とカバー30が電気的に接続された状態となり、センサ28が動作したことを示す検出信号を検出部29が検知する。カバー30を外すと、センサ28の通電が解除され、センサ28の通電が解除されたことを示す検出信号を検出部29が検知する。検出部29で検出された信号により、メモリ27において使用済みビットを立て、スコープ10を使用した履歴としてメモリ27に記憶される。再度、スコープ10を使用するためにプロセッサ40に接続して通電すると、メモリ27から使用済みのビットが読み出され、使用済みスコープであることが表示された後、動作が終了 して映像は表示されない。このように、スコープの使用の有無の判断として、スコープ10にカバー30を装着した状態で通電され、通電した状態でカバー30が外れたことを記憶する手段を備えていれば、センサ28とカバー30は簡単な構成でかまわない。また、メモリ27は使用の履歴のみを記憶する手段であり、使用の有無の判別が可能であれば、簡単な構成でかまわない。また、不揮発性のメモリに限られず、他のメモリも使用可能である。
【0026】
プロセッサ40は、光源41、電源42及び絶縁回路43を備える。光源41、電源42は、上述した使用の有無に関する情報に基づいて動作が制御される。絶縁回路43は、スコープ10の挿入により、挿入された患者の安全を確保するために設けられている。
【0027】
CCD22から出力された画像信号は、画像信号処理部24に送られ、モニタ50で表示可能な画像を生成する所定の画像処理が施される。画像処理後の信号は、絶縁回路43を介してモニタ50へ出力され、モニタ50に被観察体像が表示される。なお、スコープ本体20は、画像信号処理が施された後に画像データとして格納する画像メモリを有してもよい。この場合、画像メモリ内の画像データは、適時読み出されて所定の信号処理が施され、絶縁回路43を介してモニタ50へ出力される。
【0028】
次に、本発明の実施形態に係る使い捨て内視鏡システムで用いる使い捨てスコープの使用の有無の判別方法について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0029】
スコープ10とプロセッサ40が接続され、使い捨て内視鏡システムの電源がオン状態に定められるとスコープ10が通電される。ステップS11でメモリ27の使用済みビットが読み出されて、ステップS12でスコープ10が使用済みか未使用なのかを判断する。スコープ10が未使用だと判断されるとステップS13に進み、使用済みだと判断されるとステップS14に進む。ステップS14に進むと、スコープ10は使用済みであるため再利用ができず、ここで動作は終了する。この際、モニタ50には、通常画面ではなく、スコープ10が使用済みであるため、動作を終了する旨のメッセージが表示される。
【0030】
ステップS13以降のステップでは、モニタ50に通常画面を出力して、カバー30が外されるまで、使用前点検を行う。
【0031】
ステップS13で使用前点検を行い、ステップS15に進む。ステップS15では、通電した状態でカバー30が外れたか否かを判別する。カバー30が外れた場合には、ステップS16に進む。カバー30が外れていない場合には、カバー30が外れるまでステップS15の処理を繰り返す。
【0032】
ステップS16では、タイマーがセットされてステップS17に進む。ステップS17では、スコープ10の使用承認確認のメッセージをモニタ50に表示する。オペレータがこの表示を見て、使用承認のための指示を出す。指示の方法は、例えば、ボタンを押す操作やキーボード操作があげられる。オペレータから使用承認のための指示が出ると、ステップS18に進む。
【0033】
ステップS18では、カバー30が外れた状態か否かを判別する。カバー30が外れた場合には、ステップS19に進む。カバー30が外れた状態ではない場合には、カバー30が外れるまでステップS15〜ステップS18の処理を繰り返す。
【0034】
ステップS19では、使用承認なしか又はタイマーオーバーかを判別する。使用承認がないか、又はタイマーオーバーの場合には、ステップS20に進む。使用承認済み又はタイマーオーバーしていない場合には、カバー30が外れるまでステップS18〜ステップS19の処理を繰り返す。この処理は、スコープ10をプロセッサ40に接続して通電してカバー30を外しても、使用しなかった場合には使用済みと記憶されないために行う。
【0035】
ステップS20では、スコープ10を体内に挿入するために、スコープ10からカバー30が外れたことを確認して、メモリ27に使用済みビットを立てて、ステップS21に進む。ステップS21では、スコープ10とプロセッサ40の接続が解除するまで、体内を内視鏡で観察するという通常動作を行う。スコープ10の電源がオフ状態になると、動作は終了する。
【0036】
以上により、本発明の実施の形態によれば、スコープの使用の有無の判断として、スコープにカバーを装着した状態で通電され、通電した状態でカバーが外れたことを記憶する手段を備えていれば、例えば、プロセッサやその他に、画像を記憶する手段や、使用した履歴を表示する手段として、患者の名前を入力する手段等の特別な構成を備える必要がない。本実施の形態では、プロセッサは、光源、電源及び絶縁回路を備えていればよく、他の機能を備える必要がない。このため、本発明の実施の形態によれば、簡易な構造を有する使い捨て内視鏡システムの実現が可能となる。また、カバーを取り付けたままでは、体内への挿入が困難であるため、過失頻度が減る。
【0037】
なお、本実施の形態では、センサ28及びカバー30は導電性材料で形成され、通電により使用の有無を判断したが、使用の履歴が分かれば導電性材料に限定されない。例えば、図5に示すように、スコープ本体20の先端部51に設けられたセンサ52は磁気センサであり、センサ52を覆うカバー53は磁性体で構成することも可能である。この場合にも、カバー53が装着された状態で通電されることでセンサ52が動作し、メモリ27において使用済みビットを立て、スコープ10を使用した履歴としてメモリ27に記憶される。再度、スコープ10を使用するためにプロセッサ40に接続して通電すると、メモリ27から使用済みのビットが読み出され、使用済みスコープであることが表示され、動作が終了する。
【0038】
また、スコープの先端は、元々体内に挿入する限界の大きさに設定されているため、カバーの外径は、スコープ本体20の先端部51の外径よりも大きければ挿入が不可能となる。例えば、先端部51の外径が10mm程度の場合には、カバー53の外径は15〜20mm程度に設定する。
【符号の説明】
【0039】
10 スコープ
20 スコープ本体
21 先端部
22 CCD
23 CCD駆動部
24 画像信号処理部
26 制御部
27 メモリ
28 センサ
28a 金属部材(第一の導電部材)
28b 金属部材(第二の導電部材)
29 検出部
30 カバー
40 プロセッサ
50 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端がプロセッサに着脱自在に取り付けられ、前記プロセッサから供給された光によって被写体を照射し、得られた画像信号を前記プロセッサに送信する使い捨てのスコープを備える使い捨て内視鏡システムであって、
前記スコープは、前記スコープの使用の有無を検知するセンサと、前記センサを覆うカバーと、前記スコープの使用の有無に関する情報を記憶するメモリと、
を備えることを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
前記スコープは、通電により前記センサから送信された検出信号を検知する検出部を更に備え、前記検出部の信号が前記メモリに書き込まれることを特徴とする請求項1に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項3】
前記カバーが外れた状態で通電すると使用済みであると判断され、前記メモリに記憶されることを特徴とする請求項2に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項4】
前記センサは第一の導電部材と第二の導電部材とを備え、前記カバーは導電性材料を含むことを特徴とする請求項1に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項5】
前記センサは磁気センサであり、前記カバーは磁性体であることを特徴とする請求項1に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項6】
前記プロセッサは電源と光源とを備え、前記使用の有無に関する情報に基づいて前記電源と前記光源の動作が制御されることを特徴とする請求項1に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項7】
前記カバーの外径は、前記先端部の外径よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の使い捨て内視鏡システム。
【請求項8】
一端がプロセッサに着脱自在に取り付けられ、前記プロセッサから供給された光によって被写体を照射し、得られた画像信号を前記プロセッサに送信する使い捨ての内視鏡用のスコープであって、
前記スコープは、前記スコープの使用の有無を検知するセンサと、前記センサを覆うカバーと、前記スコープの使用の有無に関する情報を記憶するメモリと、
を備えることを特徴とする内視鏡用スコープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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