説明

使い捨て着用物品

【課題】身体へかかる圧力を部分的に低減することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ての尿取用パッド1は、内面シート17および外面シート18と、これらシートの間に位置する吸液構造体20とを有する。吸液構造体20は、体液吸収面21には、内面シート17側に突出する一対の第1凸部31が形成されている。第1凸部31は、後ウエスト域に位置するとともに、吸液構造体20の両側部25において、縦方向Yに延びている。第1凸部31は、吸液構造体20の芯材23と同じ材質、すなわちフラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子との混合物によって形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、吸液構造体に特徴を有する使い捨て尿取り用パッド、使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域と、これら前後ウエスト域の間に位置するクロッチ域とを有する使い捨ておむつにおいて、着用者の仙骨に接触する部分に、嵩だか部材を取り付けることは公知である。例えば、特許文献1には、表面シートと、裏面シートと、これらシートの間に介在された吸収体と、個の吸収体と表面シートとの間に介在された嵩だか部材とを有するおむつが開示されている。嵩だか部材は、着用時に着用者の仙骨に対応する位置である仙骨あたり部に設けられ、着用者の仙骨と床との間にクッションが形成された状態にすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−101895号公報(JP 2006−101895 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたおむつでは、嵩だか部材は、仙骨あたり部に形成され、常に仙骨におむつが接触した状態になる。仙骨は他の部分よりも外側に突出しているから、自重で仙骨が床側に押し付けられることによって褥瘡を発症し易く、褥瘡が発生した部分がおむつに接触することによって、着用者への刺激が大きくなるとともに、褥瘡の治癒を遅らせる可能性もある。
【0005】
この発明では、身体へかかる圧力を部分的に低減することができる使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記横方向に延びる前後端部および前記縦方向に延びる両側部とを含むシャーシと、少なくとも前記クロッチ域に位置するとともに体液吸収面および底面を有する吸液構造体とを有する使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0007】
この発明は、前記吸液構造体の前記体液吸収面および底面の少なくともいずれか一方には、前記後ウエスト域の前記縦方向に延びる第1凸部が形成され、前記第1凸部は、前記両側部にそれぞれ位置することを特徴とする。
【0008】
この発明の実施態様のひとつとして、前記吸液構造体の前記体液吸収面および底面の少なくともいずれか一方には、前記第1凸部よりも前記クロッチ域側に位置し、前記吸液構造体の前記横方向の中央部に第2凸部が形成される。
【0009】
他の実施態様のひとつとして、前記第1凸部の間には、これら第1凸部を連結する連結凸部が形成され、前記連結凸部は、前記後端部側に位置する。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、前記吸液構造体は、吸液性芯材と、前記芯材を覆う被覆シートとを有し、前記第1、第2凸部および連結凸部の少なくともいずれかは、前記芯材と同一材料によって形成される。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、前記第1、第2凸部および連結凸部の少なくともいずれかは、高分子材料によって形成される。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記高分子材料は、発泡性ポリウレタンである。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記シャーシの前記身体側には、肌当シートが取り付けられ、前記肌当シートは、前記縦方向に延びる両側部が前記シャーシに接合されるとともに、前記第1および第2凸部の少なくともいずれか一方に重なって位置される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、吸液構造体の後ウエスト域には、体液吸収面および底面の少なくともいずれか一方から突出する第1凸部が形成され、第1凸部は、両側部に位置して縦方向に延びている。すなわち、横方向中央近傍には、縦方向に延びる凹部が形成される。仙骨は、着用者の幅方向中央部近傍に位置するから、本願発明の着用物品を着用した際には、吸液構造体が直接仙骨に接触してこの仙骨を強く圧迫することがない。したがって、吸液構造体が着用者の肌に擦れることによる刺激を緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施形態の使い捨て着用物品の一例である使い捨ての尿取り用パッドの平面図。
【図2】図1の分解組立図。
【図3】図1のIII−III線断面図。
【図4】パッドの着用状態を示す説明図。
【図5】パッドの着用状態を示す説明図。
【図6】第2の実施形態の吸液構造体の分解組立図。
【図7】第3の実施形態の吸液構造体の斜視図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】図7のIX−IX線断面図。
【図10】第4の実施形態の吸液構造体の平面図。
【図11】第5の実施形態の吸液構造体の平面図。
【図12】第6の実施形態の吸液構造体の平面図。
【図13】第7の実施形態のパッドの平面図。
【図14】図13のXIV−XIV線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1の実施形態>
図1は、本発明に係る使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ての尿取用パッド1の斜視図、図2は、パッド1の一部を破断した分解斜視図、図3は、図1のII−II線断面図、図4および5は、パッド1の着用例を示した図である。パッド1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P−P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q−Qを有し、仮想縦中心線P−Pに関してほぼ対称とされている。対称の部分では、その一方にのみ符号を付し、他方では一部省略している。
【0017】
パッド1は、着用者の身体側およびその反対側である着衣側と、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13とを有するシャーシ10と、クロッチ域13から前後ウエスト域11,12に延びるパネル状の吸液構造体20とを含む。
【0018】
シャーシ10は、互いに仮想横中心線Q−Qに関して対向し、横方向Xに延びる前後端部14,15と、互いに仮想縦中心線P−Pに関して対向し、縦方向Yへ延びる両側部とを有する。両側部は、前ウエスト域11に位置する前側部16aと、後ウエスト域12に位置する後側部16bと、クロッチ域13に位置するクロッチ側部16cとを有する。前後側部16a,16bは、仮想縦中心線P−Pにほぼ平行に延びるとともに、クロッチ側部16cは、着用者の大腿部に沿ってフィットするように凹曲状に形成されている。
【0019】
シャーシ10は、身体側を形成する内面シート17と、その反対側である着衣側を形成する外面シート18とを含む。これら内外面シート17,18の間には、吸液構造体20が配置されている。吸液構造体20は、内面シート17に対向する体液吸収面21と、外面シート18に対向する底面22とを有している。底面22と外面シート18との間には、底面22を覆う漏れ防止フィルム19が介在されている。内面シート17と吸液構造体20、吸液構造体20と漏れ防止フィルム19、漏れ防止フィルム19と外面シート18は、それぞれ互いにホットメルト接着剤等によって間欠的に接合されている。
【0020】
内外面シート17,18は、スパンボンド繊維不織布、スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(SMS)繊維不織布、エアスルー不織布等を用いることができる。漏れ防止フィルム19は、透湿性を有する不透液性のプラスチックフィルムを用いることができる。吸液構造体20は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子等との混合物を圧縮形成した吸液性の芯材23を液拡散性の被覆シート24で覆うことによって形成される。
【0021】
吸液構造体20は、少なくともクロッチ域13に位置するとともに、前後ウエスト域11,12に向かって縦方向Yに延びている。吸液構造体20は、クロッチ域13において、横方向Xの長さ寸法が小さくなり、仮想横中心線Q−Qに向かってくびれた形状を有している。この実施形態では、クロッチ域13の多くが仮想横中心線Q−Qよりも縦方向Yの前方に位置し、後ウエスト域12の縦方向Yの長さ寸法は、前ウエスト域11のそれよりも大きくされている。
【0022】
吸液構造体20は、体液吸収面21には、内面シート17側に突出する一対の第1凸部31が形成されている。第1凸部31は、後ウエスト域11に位置するとともに、吸液構造体20の両側部25において、縦方向Yに延びている。第1凸部31は、吸液構造体20の芯材23と同じ材質、すなわちフラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子との混合物によって形成されるとともに、その厚さ方向の長さ寸法が約8mm〜30mmとされている。
【0023】
上記のような第1凸部31および吸液構造体20は、型枠に芯材23の材料を積層することによって、一体的に形成可能である。すなわち、型枠に、吸液構造体20に対応する凹部に、さらに第1凸部31に対応する凹部を形成し、この型枠に芯材23を積層して圧縮することによって、第1凸部31と吸液構造体20とを形成することができる。このような製法によれば第1凸部31と吸液構造体20とを同時に作成することができる。
【0024】
上記のように形成された吸液構造体20は、所要の圧力で圧縮成形される。吸液構造体20の芯材23の単位面積当たりの質量は、例えば約200g/m、第1凸部31と吸液構造体20とが重なった部分における単位面積当たりの質量は、例えば約600〜800g/mとすることができる。これら単位面積当たりの質量の差を400〜600g/mとすることによって、第1凸部31が形成された部分では、形成されない部分よりも約8mm厚くすることができる。また、この実施形態において、一対の第1凸部31の離間寸法は約100mmとされている。なお、芯材の単位面積当たりの質量は、上記範囲に限られることなく、この技術分野において通常用いられる程度において適宜変更可能である。
【0025】
図4および5は、パッド1の着用状態を例示し、着用者Bを仮想線にて示したものである。図示したように、クロッチ域13を着用者Bの股下にあてがい、前ウエスト域11が着用者Bの腹側に、後ウエスト域12が背側に位置するようにする。パッド1は、その上からさらにおむつやおむつカバーなどで覆われて、着用者に密着させて使用されるのが一般的である。図4,5では、おむつまたはおむつカバーを省略している。この実施形態では、パッド1の前側部16aと後側部16bとは互いに接触することなく、着用者Bの腹側と背側との間で離間している。
【0026】
パッド1は、後ウエスト域12が前ウエスト域11に比べて、縦方向Yの長さ寸法が大きくされているので、背側が広い範囲で覆われるようになる。具体的には、着用者Bの仙骨を覆う長さを有していることが望ましい。パッド1は、着脱が容易であることから、ベッド等に寝ている時間が多い着用者に好適であるが、着用者が仰向けで寝ている場合には、尿は背中側へと流れるから、後ウエスト域12の縦方向Yの長さ寸法を大きくすることによって、着用者の背中側に流れた尿を吸収することができる。
【0027】
上記のようなパッド1には、第1凸部31が形成されているから、着用者Bには、第1凸部31が当接する。第1凸部31は、吸液構造体20の両側部25にのみ取り付けられているから、それら第1凸部31の間には凹部36が形成される。したがって、着用時において、着用者Bの身体の中心近傍に位置する仙骨は、凹部36に位置される。着用者が仰向けになっていたとしても、仙骨部分に体圧が作用しにくく、褥瘡の発生を抑制することができる。また、たとえ褥瘡ができていたとしても、仙骨部分において着用者の肌とパッド1とが強く擦れることがないので、肌に対する刺激を低減することができる。
【0028】
吸液構造体20の両側部25に縦方向Yにのびて第1凸部31を形成することとしたので、凹部36も、縦方向Yに延びて形成される。着用者がベッドを起こして背もたれとして使用し、この際に仙骨とパッド1との位置が相対的に縦方向Yにずれてしまった場合であっても、仙骨は、凹部36に納まり、他の部分に接触することがない。したがって、このような場合であっても、着用者とパッド1との接触による刺激を抑制することができる。
【0029】
第1凸部31と吸液構造体20とが重なる位置において、芯材の単位面積当たりの質量が、他の領域よりも大きくされているから、その分、圧縮抵抗および復元弾性を高くすることができる。したがって、第1部分31が押圧されても押しつぶされ難く、第1凸部31の間に形成された凹部36の形状を維持することができる。また、両側部25に第1凸部31を形成することによって、この第1凸部31が壁となって尿等が横方向X外側に漏れるのを防止することもできる。
【0030】
この実施形態では、第1凸部31と吸液構造体20とを一体的に形成しているが、これらを別々に形成し、吸液構造体20に第1凸部31を積層させることもできる。この場合、吸液構造体20の被覆シート24の外側に第1凸部31を形成することもできるし、被覆シート24の内側に第1凸部31を形成することもできる。また、第1凸部31を、吸液構造体20よりも高圧力で圧縮し、第1凸部31の芯材の単位面積当たりの質量を吸液構造体20の芯材のそれよりも大きくすることもできる。この場合には、第1凸部31の圧縮抵抗が高くなり、第1凸部31の変形を防止することができる。
【0031】
第1凸部31を芯材によって形成した場合には、この芯材に熱可塑性繊維を混合することもできる。熱可塑性繊維を混合した第1凸部31を加熱・加圧して成形した場合には、熱可塑性繊維の一部が互いに融着し、ネット構造となるからフラッフパルプや超吸収性ポリマー粒子が零れ落ちるのを防止することもできる。また、熱可塑性繊維がネット構造を形成することによって、復元弾性が向上することも期待できる。
【0032】
<第2の実施形態>
図6は、第2の実施形態のパッド1に用いられる吸液構造体20を例示したものである。第1の実施形態と同様の構成については、第1の実施形態と同じ符号を用い、その詳細な説明を省略する。
【0033】
吸液構造体20は、吸液性の芯材23と、この芯材23を覆う液拡散性の被覆シート24とによって形成される。第1凸部31は、高分子材料の一例である発泡性ポリウレタンによって形成され、被覆シート24にホットメルト接着剤等(図示せず)によって接合されている。第1凸部31として、撥水性の発泡性ポリウレタンを用いることによって、尿等の体液の横方向X外側への漏れおよびにじみを防止することができる。また、圧縮抵抗および復元弾性の高い発泡性ポリウレタンを使用することによって、第1凸部31による着用者の身体に対する刺激を低減することができるとともに、体圧が作用した場合でもその形状が崩れるのを防止できる。
【0034】
高分子材料として、発泡性ポリウレタンのほかに、帝人ファイバー(株)製エルク(商標)、大和紡績(株)製ミラクルファイバー(商標)等のポリエステル/ポリオレフィン複合繊維によって形成されたクッション材料を用いることができる。このようなクッション材料を用いることによって、通気性を向上させることができ、パッド1内の蒸れを防止することができる。
【0035】
<第3の実施形態>
図7〜9は、この発明の第3の実施形態を例示したものであり、図7は吸液構造体20の平面斜視図、図8は図7のVIII−VIII線断面図、図9は図7のIX−IX線断面図である。この実施形態では、吸液構造体20の底面22に第1凸部31を形成したことを特徴とする。他の構成要素は、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同様の構成要素については、それと同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0036】
第1凸部31は、吸液構造体20の両側部25であって、底面22に形成されている。第1凸部31は、後ろウエスト域12に形成されるとともに、吸液構造体20の芯材23と同じ材料が用いられている。このようなパッド1が着用者に着用されると、第1凸部31が重なる吸液構造体22は、着用者に比較的強く接触するが、第1凸部31が重ならない部分においては、接触しないか、弱い接触力で接触する。第1凸部分31が重ならない横方向Xの中央部分で、吸液構造体20が着用者の肌に沿って弱く接触する場合には、接触しない場合に比べて、排泄された尿等を速やかに吸収することができる。したがって、尿が着用者の肌を伝って移動することがなく、この伝いによる漏れを防止することができる。
【0037】
第1凸部31の横方向Xの間では、吸液構造体20が自重または着用者の体圧によって、底面22側に向かってへこむように撓んでいる(図8参照)。また、第1凸部31の縦方向Yに隣接するクロッチ域13側端部でも、底面22側に向かってへこむように撓んでいる(図9参照)。このように、なだらかな角度を持って撓むことによって、第1凸部31の着用者に対する違和感を軽減することができる。第1凸部31は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子の混合物等によって形成されていてもよいし、高分子化合物で形成されていてもよい。この実施形態の構成要素は、他の実施形態の構成要素との組み合わせが可能である。
【0038】
<第4の実施形態>
図10は、第4の実施形態の吸液構造体20を例示したものであり、第1凸部31の横方向Xの間に連結凸部32を形成したことを特徴とする。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、第1の実施形態と同様の構成要素については、それと同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0039】
連結凸部32は、第1凸部31の後端部31aを横方向Xに連結するものであって、第1凸部31と同様に吸液構造体20の体液吸収面21に形成される。このように、連結凸部32によって、第1凸部31の間には、横方向Xに延びる壁を形成することができ、第1凸部31の間の凹部36に尿等がたまった場合であっても、この尿が後端部31aから流出するのを防止することができる。また、第1凸部31と連結凸部32とが着用者の体圧を受けることになるので、第1凸部31のみの場合に比べて、その体圧を分散することができ、第1凸部31の変形を抑制することができる。連結凸部32と第1凸部31とを同一材料によって形成する場合には、それらを一体的に形成することができる。第1凸部31および連結凸部32は、少なくともいずれか一方は高分子材料によって形成することもできる。この実施形態において、他の実施形態の構成要素との組み合わせがそれぞれ可能である。
【0040】
<第5の実施形態>
図11は、第5の実施形態の吸液構造体20を例示したものであり、横方向Xの中央部分に第2凸部33を形成することを特徴とする。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、同様の構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0041】
吸液構造体20の両側部25には、後ウエスト域12に位置する第1凸部31が形成されている。第2凸部33は、第1凸部31の縦方向Yに隣接して形成され、後ウエスト域12からクロッチ域13に延在して位置されている。第2凸部33は、横方向Xのほぼ中央部に位置し、縦方向Yに延びて形成され、第1凸部31と第2凸部33とによって、ほぼY字を形成している。これら第1凸部31および第2凸部33は、吸液構造体20の体液吸収面21に形成されている。
【0042】
第1凸部31と第2凸部33によって、後ウエスト域12とクロッチ域13との間であって、吸液構造体20の両側部25には、一対の溝部34が形成される。この溝部34は、着用者がパッド1を着用した際に、着用者の坐骨に位置することが好ましい。坐骨も仙骨同様、他の部分よりも突出しており、特に坐骨は、着用者が座ったときに、いすやベッドに接触しやすい部分である。そうすると、坐骨部分でも褥瘡が発生したり、接触による刺激が強くなったりするが、この部分で溝部34が形成されているので、褥瘡の発生を抑制し、刺激を低減することができる。また、第1凸部31によって形成された凹部36の前端部26側が第2凸部33で封鎖されるので、凹部36に排泄された尿等が前端部26側に移動するのを防止することができる。第1凸部および第2凸部は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子の混合物等によって形成されていてもよいし、高分子化合物で形成されていてもよく、第1〜第4のそれぞれの実施形態の構成との組み合わせが可能である。
【0043】
<第6の実施形態>
図12は、第6の実施形態の吸液構造体を例示したものである。この実施形態では、吸液構造体20に第1凸部31、第2凸部33および第3凸部35が形成されていることを特徴とする。その他の構成要素については、第1の実施形態と同様であるので、その構成要素については、第1の実施形態と同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0044】
第1凸部31は、吸液構造体20の両側部25であって、後ウエスト域12に位置している。第2凸部33は、第1凸部31の縦方向Yに隣接するとともに、吸液構造体20の中央部に位置し、後ウエスト域12からクロッチ域13に延在している。第3凸部35は、第2凸部33の縦方向Yに隣接し、前ウエスト域11に位置するとともに、前ウエスト域11においては吸液構造体20にほぼ全体が重なっている。このような第1〜第3凸部31,33,35が形成されることによって、吸液構造体20に積層される積層体30が形成される。
【0045】
第1〜第3凸部31,33,35を形成することによって、第1凸部31の横方向の間では凹部36を形成し、第1凸部31と第2凸部33の間では溝部34を形成することができ、着用者の仙骨および坐骨に対する刺激を低減することができる。また、第1〜第3凸部31,33,35のほぼ全体が肌に接触するから、その接触面積を大きくすることができ、その分、着用者の体圧を分散することができる。第1〜第3凸部31,33,35は、フラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子の混合物等によって形成されていてもよいし、高分子化合物で形成されていてもよく、第1〜第5の実施形態の構成要素のそれぞれとの組み合わせが可能である。
【0046】
<第7の実施形態>
図13および14は、第7の実施形態を例示したものであり、第1凸部31の対応する位置に、肌当シート40を取り付けたことを特徴とする。その他の構成は、第1の実施形態と同様であるので、その構成については第1の実施形態と同じ符号を用い、詳細な説明を省略する。
【0047】
吸液構造体20の体液吸収面21には、第1凸部31が形成されている。第1凸部31は、後ウエスト域12であって、吸液構造体20の両側部25に縦方向Yに延びている。第1凸部31には、内面シート17が積層され、内面シート17の内側に肌当シート40が取り付けられている。具体的には、肌当シート40は、内面シート17の一方の後側部16bと他方の後側部16bとの間に延びるとともに、その両側部43のみが内面シート17にホットメルト接着剤などの接合手段44によって接合されている。したがって、両接合手段44の間は、肌当シート40と内面シート17とが非接合となっている。このような肌当シート40は、例えば、スパンボンド繊維不織布、SMS繊維不織布等、着用者の肌に対して摩擦・刺激が少ない材料を用いることができる。
【0048】
肌当シート40は、その両側部43のみ内面シート17に接合されているから、それら接合部の間では内面シート17に対して離間可能となり、肌当シート40は内面シート17と相対的に移動することができる。
【0049】
パッド1を着用すると、第1凸部および接触シート30は着用者の背側であって、好ましくは仙骨に対応するように位置する。この状態において、例えばベッドをリクライニングさせ、上半身を起こすと、着用者の体重によって臀部が前方に移動することがある。このような場合であっても、肌当シート40と内面シート17とがずれるように相対的に縦方向Yまたは横方向Xに移動し、肌当シート40は着用者の背側に追従して移動することができる。
【0050】
上記のように、肌当シート40が内面シート17と相対的に移動することによって、着用者の肌に摩擦による刺激が生じることがなく、より一層褥瘡の発生を抑制することができる。また、第1凸部31が肌に対して比較的強く接触するような場合であっても、この摩擦による刺激を低減することができ、第1凸部31を形成することの違和感を軽減することができる。
【0051】
第1凸部31は、第1〜第6の実施形態に示したものと同じものをそれぞれ用いることができ、第2凸部、第3凸部、連結凸部をそれぞれ形成することもできる。
【0052】
肌当シート40は、縦方向Yまたは横方向Xに弾性的に収縮可能とすることができる。このようにすることで、より一層、肌当シート40は、着用者の身体に追従して移動しやすくなる。弾性的に収縮可能とする手段としては、弾性体を肌当シート40に取付けたり、肌当シート40として伸縮性不織布等を用いたりすることがあげられる。
【0053】
第1〜第7の実施形態おいて、おむつの内側に使用されるパッドを用いて説明しているが、使い捨ておむつ等の他の着用物品に応用することも可能である。また、おむつとしては、あらかじめ両側部が接合されたいわゆるプルオン・パンツ型、または、両側部15が接合されていないオープン型に適用することも可能である。
【0054】
クロッチ域13において横方向Xの長さ寸法が小さくされた使い捨ての着用物品について説明したが、横方向Xの長さ寸法が、前後ウエスト域11,12およびクロッチ域13でほぼ等しい、略矩形の着用物品を排除するものではない。このような矩形の着用物品の場合には、着用時に着用者の股下に位置する部分をクロッチ域13とし、クロッチ域13よりも腹側に位置する部分を前ウエスト域11、背側に位置する部分を後ウエスト域12とすることができる。また、この場合には、少なくとも仮想横中心線Q−Qよりも後端部側に第1凸部31が位置することが好ましい。
【0055】
パッド1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【0056】
以上の実施形態において、ひとつの実施形態に他の実施形態の要素、構成を付加または組み合わせることができる。例えば、第7の実施形態の肌当シート40は、他の実施形態にも適用することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 尿取り用パッド(使い捨ての着用物品)
10 シャーシ
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
14 前端部
15 後端部
16b 後側部
20 吸液構造体
21 体液吸収面
22 底面
23 芯材
24 被覆シート
31 第1凸部
32 連結凸部
33 第2凸部
35 第3凸部
40 肌当シート
43 両側部
44 接合手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前記縦方向に連なる前後ウエスト域および前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記横方向に延びる前後端部および前記縦方向に延びる両側部とを含むシャーシと、少なくとも前記クロッチ域および前記後ウエスト域に位置するとともに体液吸収面および底面を有する吸液構造体とを有する使い捨て着用物品において、
前記吸液構造体の前記体液吸収面および底面の少なくともいずれか一方には、前記後ウエスト域の前記縦方向に延びる第1凸部が形成され、前記第1凸部は、前記両側部にそれぞれ位置することを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記吸液構造体の前記体液吸収面および底面の少なくともいずれか一方には、前記第1凸部よりも前記クロッチ域側に位置し、前記吸液構造体の前記横方向の中央部に第2凸部が形成される請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記第1凸部の間には、これら第1凸部を連結する連結凸部が形成され、前記連結凸部は、前記後端部側に位置する請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記吸液構造体は、吸液性芯材と、前記芯材を覆う被覆シートとを有し、前記第1、第2凸部および連結凸部の少なくともいずれかは、前記芯材と同一材料によって形成される請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記第1、第2凸部および連結凸部の少なくともいずれかは、高分子材料によって形成される請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記高分子材料は、発泡性ポリウレタンである請求項5に記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記シャーシの前記身体側には、肌当シートが取り付けられ、前記肌当シートは、前記縦方向に延びる両側部が前記シャーシに接合されるとともに、前記第1および第2凸部の少なくともいずれか一方に重なって位置される請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−167416(P2011−167416A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35353(P2010−35353)
【出願日】平成22年2月19日(2010.2.19)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】