説明

使い捨て着用物品

【課題】前後ウエスト域と、これらの間に位置するクロッチ域とを有する使い捨て着用物品を、吸収性パッドとして利用する場合であっても、前後ウエスト域が着用の妨げになるのを防止することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】
着用物品1は、前ウエスト域2、後ウエスト域3、クロッチ域4を有するシャーシ10と、シャーシの身体側に取り付けられた一対の漏れバリアカフ20と、前後フラップシート30,40とを含む。着用物品1には、ウエスト折曲線80が形成され、前後ウエスト域2,3がウエスト折曲線80に沿って横方向X内側に折り畳まれる。ウエスト折曲線80は、前後端縁5,6から両側縁7へと延びるとともに、仮想縦中心線P−Pに対して傾斜している。ウエスト折曲線80に沿って前後ウエスト域2,3を折り畳むことによって、ウエスト折畳領域81が形成され、前後ウエスト域2,3の横方向Xの長さ寸法は、クロッチ域4のそれよりも小さくされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、吸収性パッドとして利用することも可能な使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後ウエスト域とこれらの間に位置するクロッチ域とを有するシャーシによって形成される使い捨ておむつは公知である。例えば、特許文献1には、クロッチ域の横方向長さ寸法を前後ウエスト域のそれよりも小さくされたおむつが開示されている。クロッチ域の横方向長さ寸法を小さくすることによって、おむつの着用時には、クロッチ域が着用者の股下に密着し易くしている。また、前後ウエスト域の横方向長さ寸法を大きくすることによって、着用者のウエストを広い範囲で覆うことができ、これら前後ウエスト域を着用者に密着させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−168564公報(JP H9−168564 A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1では、前後ウエスト域の側縁を互いに係合して立体的なパンツ形状として用いることとしている。しかし、これを立体的にすることなく、吸収性パッドとして使用する態様も考えられる。吸収性パッドとして使用する場合には、これを着用者の肌と着衣等との間に挿入する。このように挿入すると、クロッチ域から横方向外側に大きくされている前後ウエスト域が着衣に引っかかったり、それが折れたりして、挿入の妨げになる可能性があった。
【0005】
この発明では、前後ウエスト域と、これらの間に位置するクロッチ域とを有する使い捨て着用物品を、吸収性パッドとして利用する場合であっても、前後ウエスト域が着用の妨げになるのを防止することができる使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、いずれか他方である第2ウエスト域と、前記第1および第2ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含むシャーシを有し、前記シャーシは、前記第1および第2ウエスト域の前記横方向に延びる第1および第2端縁と、前記縦方向に延びる両側縁とを有する使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0007】
本発明は、前記使い捨て着用物品において、前記第1および第2ウエスト域の少なくとも前記第1ウエスト域には、前記シャーシから前記横方向外側へと延出する一対の第1フラップが形成され、前記第1フラップは、前記縦方向に延びるフラップ折曲線に沿って前記横方向内側に折り畳まれ、折り畳まれた前記第1フラップには、その折り畳んだ状態を維持する仮止め手段が形成され、前記第1および第2ウエスト域の少なくともいずれか一方が、ウエスト折曲線に沿って前記第1および第2端縁とともに前記横方向内側に折り畳まれて、ウエスト折畳領域が形成され、前記ウエスト折畳領域が形成された部分では、前記横方向の長さ寸法が、前記クロッチ域のそれよりも小さくされることを特徴とする。
【0008】
この発明の実施態様のひとつとして、前記仮止め手段は、前記第1フラップを折り畳んだ状態で前記横方向に対向する少なくとも前記第1フラップの両側縁に形成される。
【0009】
他の実施態様のひとつとして、前記ウエスト折曲線は、折り畳まれた前記第1フラップに重なって形成される。
【0010】
他の実施態様のひとつとして、一対の前記第1フラップは、その横方向外側に延出する第1係合手段を含み、前記第1係合手段は、前記第1フラップに接合される接合端と、その反対側に位置する延出端とを有し、前記第1フラップが前記フラップ折曲線に沿って折り畳まれることにより、前記第1係合手段が前記シャーシに重なるとともに、前記延出端が互いに当接される。
【0011】
他の実施態様のひとつとして、一対の前記延出端は、互いに離間可能に接合される。
【0012】
他の実施態様のひとつとして、前記横方向に離間する一対の前記第1フラップは、前記横方向に連続する第1フラップシートを含み、前記第1フラップシートは、前記横方向外側に位置し前記第1フラップを形成する一対のフラップ部と、前記フラップ部の間に位置する連結部とを有し、前記連結部は、前記シャーシに重なる。
【0013】
他の実施態様のひとつとして、前記第1フラップシートは、熱可塑性合成樹脂を含み、前記接合手段は、前記フラップ部と前記連結部との少なくとも一部を熱溶着させることによって形成される。
【0014】
他の実施態様のひとつとして、前記第1フラップシートは、前記縦方向外側に位置し前記横方向に延びる外端縁と、前記縦方向内側に位置し前記横方向に延びる内端縁とを有し、前記内端縁であって、前記前記連結部に対応する部分には、前記シャーシに接合されない非接合領域が形成される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、前後ウエスト域のいずれか一方がウエスト折曲線に沿って横方向内側に折り畳まれ、そのウエスト折畳領域が形成された部分においては、横方向長さ寸法が、クロッチ域のそれよりも小さくされる。したがって、ウエスト折畳領域が形成されたウエスト域を着用者の背中と着衣との間に挿入するようにすれば、この着用物品を吸収性のパッドと使用する際であっても、前後ウエスト域が着用の妨げになることがない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】使い捨て着用物品の平面図。
【図2】図1の着用物品の一部を展開した図。
【図3】着用物品の分解斜視図。
【図4】着用物品の使用例の説明図。
【図5】着用物品の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明に係る使い捨て着用物品の平面概略図、図2は、着用物品1の一部を展開した平面図、図3は、着用物品1の分解斜視図である。着用物品1は、横方向Xの長さ寸法を二等分した仮想縦中心線P−P、縦方向Yの長さ寸法を二等分した仮想横中心線Q−Qを有し、仮想縦中心線P−Pに関してほぼ対称とされている。図2,3は、各弾性体をその収縮力に抗して伸長させた状態を例示したものである。
【0018】
着用物品1は、着用者の身体側およびその反対側である着衣側と、前ウエスト域2、後ウエスト域3、これら前後ウエスト域2,3の間に位置するクロッチ域4とを有するシャーシ10によって形成される。着用物品1は、互いに仮想横中心線Q−Qに関して対向し、横方向Xに延びる前後端縁5,6と、互いに仮想縦中心線P−Pに関して対向し、縦方向Yへ延びる両側縁7とを有する。
【0019】
図3に示したように、シャーシ10は、着衣側に位置するバックシート11と、バックシート11の身体側に取り付けられた吸収体12と、吸収体12とバックシート11との間に配置された漏れ防止シート13とを有する。バックシート11は、前ウエスト域2からクロッチ域4を介して後ウエスト域3にまで延びている。バックシート11としては、例えばスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布等の疎水性の繊維不織布を用いることができ、この実施形態では、単位面積当たりの質量が約10〜15g/m、好ましくは約13g/mの繊維不織布を用いている。
【0020】
漏れ防止シート13は、不透液性のプラスチックフィルムを用いることができ、例えば、単位面積当たりの質量を約10〜20g/m、好ましくは約18g/mとすることができる。漏れ防止シート13は、バックシート11よりも、その面積が小さく、バックシート11でその全体が覆われるようにされている。このように漏れ防止シート13をバックシート11で覆うことによって、着用物品1の肌触りを向上させることができる。バックシート11と漏れ防止シート13とは、図示しないホットメルト接着剤によって互いに接合されている。
【0021】
バックシート11の両側縁11aは、その内側に折り曲げられスリーブ14を形成している。スリーブ14内には、複数本のレッグ弾性体15が取り付けられている。レッグ弾性体15は、縦方向Yに延びるとともに、少なくともクロッチ域4において、収縮可能に伸長状態で取り付けられている。このレッグ弾性体15の収縮によって、バックシート11の少なくともスリーブ14が着用者の身体へと密着することができ、クロッチ域4からの尿等の漏れを防止することができる。レッグ弾性体15は、図示しないホットメルト接着剤によって、間欠的にスリーブ14内に接合されている。
【0022】
吸収体12は、図示しない吸液性の芯材をトップシート16で覆うことによって形成されている。芯材は、液拡散シートで覆われたフラッフパルプと超吸収性ポリマー粒子等との混合物によって構成されている。吸収体12は、クロッチ域4において、横方向Xの長さ寸法が小さくされ、着用者の股部に密着しやすいようにされている。このような吸収体12の底面全体を漏れ防止シート13で覆って、尿等の排泄物が着用物品1から漏れるのを防止している。吸収体12は、図示しないホットメルト接着剤によって漏れ防止シート13に接合されている。
【0023】
吸収体12の吸収面側には、一対の漏れバリアカフ20が、横方向Xに離間して取り付けられている。漏れ防止カフ20は、吸収体12の横方向X外側であって、漏れ防止シート13に図示しないホットメルト接着剤等で接合された外側縁21と、吸収体12に重なるとともにトップシート16から離間可能にされた内側縁22とを有する。内側縁22は、吸収体12等には接合されず、その内側縁22に沿ってカフ弾性体23が伸長状態で収縮可能に取り付けられている。カフ弾性体23は、少なくともクロッチ域4に対応する位置に取り付けられる。上記のようにカフ弾性体23を取り付けることによって、内側縁22が起立するように吸収体12から離間可能となり、内側縁22が着用者の鼠蹊部近傍に密着することによって、そこから尿等の排泄物が漏れるのを防止することができる。
【0024】
漏れバリアカフ20には、横方向Xに延びるとともに縦方向Yに離間する前後フラップシート30,40が積層されている。前後フラップシート30,40は、例えば、単位面積当たりの質量が約10〜20g/m、好ましくは約15g/mのスパンボンド・メルトブロー・スパンボンド(SMS)繊維不織布を用いることができる。前後フラップシート30,40は、前後ウエスト域2,3にそれぞれ取り付けられるとともに、前後ウエスト域2,3を形成するバックシート11の横方向Xの長さ寸法よりも大きく、それを広げた場合には、バックシート11の両側縁から延出する大きさを有している。
【0025】
前フラップシート30は、前端縁5に重なって横方向Xに延びる外端縁30aと、外端縁30aに対向して横方向Xに延びる内端縁30bと、縦方向Yに延びる両側縁30cとを有する。後フラップシート40も同様に、後端縁6に重なって横方向Xに延びる外端縁40aと、外端縁40aに対向して横方向Xに延びる内端縁40bと、縦方向Yに延びる両側縁40cとを有する。また、前後フラップシート30,40は、バックシート11から延出可能であって両側縁30c、40c側に位置する一対の前後フラップ部31,41と、バックシート11に重なるとともに一対の前後フラップ部31,41を連結する連結部32,42とを有する。
【0026】
前後フラップシート30,40は、前後フラップ部31,41と連結部32,42との間に、縦方向Yに延びる前後フラップ折曲線33,43が形成され、前後フラップ折曲線33,43に沿って前後フラップ部31,41が横方向X内側に折り畳まれている。前後フラップ折曲線33,34は、両側縁7とほぼ重なる位置に形成されている。折り畳まれた前後フラップ部31,41は、連結部32,42に重なり、連結部32,42との間で仮止め手段50によって仮止めされている。仮止め手段50は、例えば、縦方向Yおよび横方向Xに離間された複数の加熱・加圧によるドットによって形成されている。このように仮止めすることによって、前後フラップ部31,41と連結部32,42とは、互いに仮着されているが、これらを剥離しようとした場合には、容易に手で剥離することができる。すなわち、容易に前後フラップ部31,41を横方向Xの外側に広げることができる。
【0027】
仮止め手段50としては、ドット状のほか、縦方向Yまたは横方向Xに連続して延びる線状のものが縦方向Yまたは横方向Xに複数並んでいるものであってもよい。加熱・加圧によって仮止め手段50を形成する場合には、前後フラップシート30,40は、熱可塑性合成樹脂を含むことによって、これらシートを形成する繊維が熱溶融し、互いに接合可能とすることができる。また、ホットメルト接着剤等の接着手段によって接合されているものであってもよく、この場合には、前後フラップシート30,40が熱可塑性合成樹脂を含まないものであってもよい。
【0028】
前後フラップ部31,41と連結部32,42との仮止めは、その接合強度が約0.03〜1.0N、好ましくは約0.1〜0.5Nとされている。接合強度が0.03Nよりも小さいと、前後フラップ部31,41と連結部32,42との仮止めが、その剥離以外のときに妄りに剥がれてしまい、1.0Nよりも大きいと、前後フラップ部31,41を剥離し難いからである。また、仮止めの接合強度は、両側縁30c,40c近傍で大きく、前後フラップ折曲線33,43近傍で小さくなるようにすることもできる。両側縁30c,40c近傍で大きくすることによって、全体の接合強度を大きくすることなく、前後フラップ部31,41を剥がれ難くすることができる。さらに、両側縁30c,40c近傍で、前後フラップ部31,41が仮止めされることによって、この前後フラップ部31,41がめくれるのを防止することができるので、仮止め手段50は、少なくとも両側縁30c,40c近傍において形成され、その他の領域においての仮止め手段50の形成は必須ではない。
【0029】
加熱・加圧によって形成されたドットは、両側縁30c,40cから約5〜20mm離間されるようにしている。この離間距離が5mmよりも小さい場合には、前後フラップ部を展開する際のつまみ代が小さく、挟持しにくくなり、20mmよりも大きいと、両側縁30c,40cがめくれたり皺になったりしやすいからである。
【0030】
連結部32,42は、外端縁30a,40aおよび前後フラップ折曲線33,43の横方向X内側近傍のみが、図示しないホットメルト接着剤等の接着手段によって漏れバリアカフ20およびシャーシ10に接合され、内端縁30b,40bは接合されずに非接合領域34,44が形成されている。前後フラップシート30,40と吸収体12との間には、起立するように離間する漏れバリアカフ20が取り付けられているから、この漏れバリアカフ20が離間すると、前後フラップシート30,40の連結部32,42も吸収体12から離間させるように移動し、これら吸収体12と連結部32,42との間には、ポケットを形成することができる。ポケットは、便等の排泄物を収容することができるので、これら排泄物が着用物品1の前後端縁5,6から漏れるのを防止することができる。
【0031】
後フラップシート40の側縁40cには、一対の第1係合手段60がそれぞれ取り付けられている。図2に示したように、第1係合手段60は、横方向Xに延びるシート片61と、シート片61に取り付けられたフック要素62とを有する。シート片61は、例えば、単位面積当たりの質量が約50〜80g/m、好ましくは約70g/mのポリプロピレン・スパンボンド(PPSB)繊維不織布によって形成され、接合端63が後フラップ部41に取り付けられるとともに、接合端63の横方向Xに対向する延出端64にフック要素62が取り付けられている。延出端64は、後フラップ部41の折畳状態においては、互いに当接し、接合されている。
【0032】
フック要素62は、後フラップ部41が後フラップ折曲線43に沿って折り畳まれている場合には、後フラップシート40連結部42に対向するとともに、連結部42を形成する繊維に係合することができる。このようにフック要素62が連結部42に係合することによって、第1係合手段60が妄りにめくれたりするのを防止することができる。フック要素62と連結部42との係合力は、約2.4N以下、好ましくは約0.5〜1.0Nとしている。係合力は、島津システムソリューションズ株式会社製 オートグラフを用いて測定した。詳細には、チャック間60mm、引っ張り速度300mm/minに設定し、係合力(N)を測定した。
【0033】
互いに当接した第1係合手段60の延出端64の間には、縦方向Yに間欠的に複数のスリット65が形成され、スリット65の間で、延出端64が互いに接合されている。接合された延出端64は、それらを横方向X外側に引っ張ることで、スリット65の間を裂くことができ、容易にこれらを離間することができる。スリット65の縦方向Yの長さは約5mmとし、スリット65間の離間寸法は約0.3mmとしている。このようにスリット65を形成することによって、延出端64の間の引っ張り強度を約1〜20N、好ましくは約6〜16Nとすることができる。引っ張り強度は、インストロンジャパン カンパニイリミテッド社製 インストロンを用いて測定した。詳細には、チャック間距離30mm、引っ張り速度100mm/minに設定し、最大強度(N)を測定した。第1係合手段60の測定サンプルとして、スリット65形成部分を含むように、縦方向Yの長さ寸法が約25mmとなるように切断したものを用いた。
【0034】
上記のような第1係合手段60に係合可能な第2係合手段70が、バックシート11の着衣側面に形成されている。第2係合手段70は、ループ要素を含み、後ウエスト域3の両側縁7の間で横方向Xに延びている。
【0035】
図1に示したように、着用物品1において、折り畳まれた前後フラップ部31,41に重なる位置には、ウエスト折曲線80が形成され、前後ウエスト域2,3がウエスト折曲線80に沿って横方向X内側に折り畳まれる。なお、この実施形態においては、図1の状態において、着用物品1の両側縁7が少なくともクロッチ域4において、横方向X内側に倒伏しているが、必ずしもこれに限らず、両側縁7が横方向X外側に展開されているものであってもよい。ウエスト折曲線80は、前後端縁5,6から両側縁7へと延びるとともに、仮想縦中心線P−Pに対して傾斜している。ウエスト折曲線80に沿って前後ウエスト域2,3を折り畳むことによって、ウエスト折畳領域81が形成され、前後ウエスト域2,3の横方向Xの長さ寸法は、少なくとも、各弾性体の収縮状態、すなわち、着用物品1の着用前の状態であって各弾性体をその収縮力に抗して伸長させていない状態において、クロッチ域4のそれよりも小さくされる。
【0036】
上記のような着用物品1は、ウエスト折畳領域81が形成された状態においては、それを吸収性パッドとして使用するのに適している。すなわち、図1に示した状態で、着用物品1を着用者の股にあてがい、その上から例えばおむつカバーで着用物品1を固定させることができる。着用物品1を吸収性パッドとして使用する場合であって、これを交換する際には、仰向けにさせた着用者の腹側でのみおむつカバーを展開し、使用後の着用物品1を背中側から引き抜く。新しい着用物品1は、おむつカバーと着用者の背中との間に挿入して着用させる。このように、挿入するとき、着用物品1の前後ウエスト域2,3の横方向Xの長さ寸法が、クロッチ域4のそれよりも小さくされているので、挿入しやすく、前後ウエスト域2,3、特に、前後フラップ部31,41が邪魔になるということがない。また、ウエスト折畳領域81が形成されることによって、尿等の排泄物が横方向X外側に流れるのを防止することができる。なお、着用物品1を挿入した後に、ウエスト折畳領域81を横方向X外側に開いて、吸収面積を広くして使用することもできる。
【0037】
後フラップシート40の縦方向Yの長さ寸法は、シャーシ10の縦方向Yの長さ寸法の約40%以下、好ましくは約20〜30%としている。後フラップシート40の縦方向Yの長さ寸法が40%を越えると、吸収性パッドとして着用物品1を使用した場合に、吸収体12の広い範囲が後フラップシート40の連結部42と後フラップ部41とに覆われて吸収可能な領域が少なくなってしまうからである。また、吸収体12に重なった後フラップシート40上に便等が排泄され、これが後端縁6から漏れやすくなるからである。
【0038】
前フラップシート30の縦方向Yの長さ寸法は、シャーシ10の縦方向Yの長さ寸法の約25%以下、好ましくは約15〜20%としている。前フラップシート30の縦方向Yの長さ寸法が25%を越えると、特に男性の着用者の場合に、尿が前フラップシート30上に排泄され、これが前端縁5から漏れやすくなるからである。
【0039】
上記のような着用物品1は、おむつカバーを使用する場合だけでなく、例えば、中国で使用されることが多い、いわゆる股割れズボンにも好適である。股割れズボンは、特に幼児に用いられることが多く、ズボンの股下部分の一部が縫合されずに開口し、脚を広げると着用者の股部分が露出されるようになっている。このようなズボンの開口部分から着用物品1を挿入し、吸収性パッドとして使用する場合にも、着用物品の前後ウエスト域2,3が折れ曲がったり、引っかかったりすることなく、容易に着用することができる。
【0040】
上記のような着用物品1は、パンツ型のおむつとして利用することも可能である。すなわち、図4(a)の状態から図4(b)の状態へと、ウエスト折畳領域81を横方向X外側に展開する。このように展開すると、図4(b)に示したように、第1係合手段60が露出される。図4(b)の状態から図4(c)の状態へと変形させるために、連結している一対の延出端64をスリット65を介して互いに離間させるとともに、後フラップ部41を連結部42から離間させるように横方向X外側に展開させる。後フラップ部41と連結部42とは、仮止め手段50によって連結されているが、このように展開させることによって、容易にこれらが剥離される。図4(c)に示したように、着用物品1は、後フラップ部41が展開されて、シャーシ10の横方向X外側に延出される。
【0041】
図示しないが、前ウエスト域2においても、後ウエスト域3と同様に、ウエスト折畳領域81を展開し、前フラップ部31を展開することによって、前フラップ部31をシャーシ10の横方向X外側に延出することができる。また、横方向Xに対向する折り畳まれたウエスト折畳領域81は、その折畳状態が維持されるように、互いに仮止めすることもできる。また、折り畳まれたウエスト折畳領域81を連結部32,42にそれぞれ仮止めすることもできる。仮止め手段50としては、加熱・加圧によって部分的に、前後フラップシート30,40を熱溶着することもできるし、ホットメルト接着剤等の接着剤を間欠的に塗布することもできる。このように仮止めすることによって、着用時にウエスト折畳領域81が妄りに剥がれるのを防止することができるとともに、これを展開させようとした場合には、容易にこの仮止めを解くことができる。また、仮止め手段50を形成することによって、着用物品1の製造時に、前後フラップ部31,41が製造装置に引っかかったり、巻き込まれたりするのを防止することができる。
【0042】
上記のように、前後フラップ部31,41がシャーシ10の横方向X外側に延出された着用物品1は、後フラップ部41の第1係合手段60のフック要素62を、第2係合手段70のループ要素に係合させることによって、図5に示した立体的なパンツ型のおむつとして着用者に着用させることができる。前後フラップ部31,41がシャーシ10の横方向Xから延出することによって、着用物品1は広い範囲で着用者に密着することができ、着用時の着用物品のずれを防止することができるとともに、尿等の排泄物が着用物品1から漏れるのを防止することができる。
【0043】
上記のような着用物品1において、前後フラップ部31,41は、前後フラップシート30,40によってそれぞれ一体的に形成されているが、これに限ったものではなく、前フラップ部31および後フラップ部41がそれぞれ横方向Xに離間し、別々のシートで形成されていてもよい。また、前後フラップ部31,41は、必須の構成ではなく、さらに、いずれか一方のみが形成されるようにしてもよい。その場合には、後ウエスト域3に形成されるのが好ましい。
【0044】
仮止め手段50は、前後フラップシート30,40の前後フラップ部31,41と連結部32,42とを接合することとしているが、第1係合手段60を連結部32,42に接合させて仮止め手段50とすることもできるし、対向する第1係合手段60を互いに接合させて仮止め手段50とすることもできる。このように第1係合手段60に仮止め手段50を形成した場合には、前後フラップシート30,40に仮止め手段50を形成しなくてもよい。この場合には、後フラップ部41が第1係合手段60を含み、後フラップ部41の両側縁の一部を形成する第1係合手段60に仮止め手段50が形成されることとなる。
【0045】
第1係合手段60に仮止め手段50を形成する場合には、その他の領域の仮止め手段よりもその強度を大きくして、より一層第1係合手段60が妄りに剥離するのを防止することが望ましい。第1係合手段60の仮止めが妄りに外れて前後フラップ部31,41から剥がれてしまうと、フック要素62が着用者の肌に接触し、刺激を与えてしまう可能性があるからである。
【0046】
第1係合手段60のフック要素62は、後フラップ折曲線43に沿って後フラップシート40を折り畳んだ場合に、連結部42に対向する面に形成されているが、その反対の面に形成されるようにしてもよい。このように形成することによって、フック要素62を身体側に露出させることができ、これを例えば着用者の着衣に係合することができ、パッドとして使用した着用物品1がずれるのを防止することができる。第1係合手段60の延出端64が、スリット65を介して互いに接合するようにされ、使用時にこれを離間するようにしているが、これら延出端64が始めから離間されていてもよい。
【0047】
着用物品1を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。
【0048】
本発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1」および「第2」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。さらに、本発明の明細書および特許請求の範囲において、用語「第1ウエスト域」は、前後ウエスト域の一方を意味し、「第2ウエスト域」はその他方を意味する。
【符号の説明】
【0049】
1 使い捨ての着用物品
2 前ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)
3 後ウエスト域(第1又は第2ウエスト域)
4 クロッチ域
5 前端縁
6 後端縁
7 両側縁
10 シャーシ
30 前フラップシート(第2フラップシート)
30a 外端縁
30b 内端縁
31 前フラップ部(第2フラップ部)
32 連結部
33 前フラップ折曲線
34 非接合領域
40 後フラップシート(第1フラップシート)
40a 外端縁
40b 内端縁
41 後フラップ部(第1フラップ部)
42 連結部
43 後フラップ折曲線
44 非接合領域
50 仮止め手段
60 第1係合手段
63 接合端
64 延出端
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向と、身体側およびその反対側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、いずれか他方である第2ウエスト域と、前記第1および第2ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含むシャーシを有し、前記シャーシは、前記第1および第2ウエスト域の前記横方向に延びる第1および第2端縁と、前記縦方向に延びる両側縁とを有する使い捨て着用物品において、
前記第1および第2ウエスト域の少なくとも前記第1ウエスト域には、前記シャーシから前記横方向外側へと延出する一対の第1フラップが形成され、前記第1フラップは、前記縦方向に延びるフラップ折曲線に沿って前記横方向内側に折り畳まれ、折り畳まれた前記第1フラップには、その折り畳んだ状態を維持する仮止め手段が形成され、
前記第1および第2ウエスト域の少なくともいずれか一方が、ウエスト折曲線に沿って前記第1および第2端縁とともに前記横方向内側に折り畳まれて、ウエスト折畳領域が形成され、前記ウエスト折畳領域が形成された部分では、前記横方向の長さ寸法が、前記クロッチ域のそれよりも小さくされることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記仮止め手段は、前記第1フラップを折り畳んだ状態で前記横方向に対向する少なくとも前記第1フラップの両側縁に形成される請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記ウエスト折曲線は、折り畳まれた前記第1フラップに重なって形成される請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
一対の前記第1フラップは、その横方向外側に延出する第1係合手段を含み、前記第1係合手段は、前記第1フラップに接合される接合端と、その反対側に位置する延出端とを有し、前記第1フラップが前記フラップ折曲線に沿って折り畳まれることにより、前記第1係合手段が前記シャーシに重なるとともに、前記延出端が互いに当接される請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
一対の前記延出端は、互いに離間可能に接合される請求項4記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記横方向に離間する一対の前記第1フラップは、前記横方向に連続する第1フラップシートを含み、前記第1フラップシートは、前記横方向外側に位置し前記第1フラップを形成する一対のフラップ部と、前記フラップ部の間に位置する連結部とを有し、前記連結部は、前記シャーシに重なる請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記第1フラップシートは、熱可塑性合成樹脂を含み、前記接合手段は、前記フラップ部と前記連結部との少なくとも一部を熱溶着させることによって形成される請求項6記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記第1フラップシートは、前記縦方向外側に位置し前記横方向に延びる外端縁と、前記縦方向内側に位置し前記横方向に延びる内端縁とを有し、前記内端縁であって、前記前記連結部に対応する部分には、前記シャーシに接合されない非接合領域が形成される請求項1〜7のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−234886(P2011−234886A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108755(P2010−108755)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】