説明

使い捨て着用物品

【課題】 レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを防止するとともに、排泄物による着用者の身体の汚れを抑制することのできる使い捨て着用物品の提供。
【解決手段】 前後ウエスト域13,14は少なくとも横方向Xへ弾性的に収縮可能であって、クロッチ域15の両側部には、縦方向Yに弾性的に収縮可能な一対のサイド弾性部40が配設されている。吸液構造体35を含むクロッチ域15の略中央部のカンチレバー剛軟度が約15〜140mmであって、サイド弾性部40の一方の内側縁40aから他方の内側縁40aまでの長さ寸法L2が、前後ウエスト域13,14を横方向Xへ伸長させた状態における、前後ウエスト域13,14のいずれか一方におけるウエスト開口縁部21aの横方向Xの長さ寸法L1の約0.5〜1.0倍である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを防止するとともに、排泄物の付着による着用者の身体の汚れを抑制することのできる使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを防止するための構成を有する使い捨て着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、吸液構造体を固定するシャーシと、シャーシのレッグ開口縁部に取り付けられたレッグ弾性要素とを含む使い捨て着用物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−87621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の着用物品によれば、レッグ弾性要素が、レッグ開口縁部の前方側からクロッチ域の中央部に延びる前レッグ弾性要素と、レッグ開口縁部の後方側からクロッチ域の中央部に延びる後レッグ弾性要素とから構成されており、前後レッグ弾性要素が互いにクロッチ域中央部において交差しているので、クロッチ域全体が着用者の身体に密着し、着用中の位置ずれが防止されるとともに、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを防止することができる。
【0005】
しかし、かかる着用物品においては、排泄後においてもクロッチ域全体が着用者の身体に密着された状態となるので、着用者の身体に比較的に長時間排泄物が接触又は付着し、不衛生であり、肌の弱い乳幼児や高齢者が着用する場合には、かぶれや湿疹などの肌トラブルを発生するおそれがある。また、着用中において、クロッチ域全体が着用者の身体に密着された状態で排泄されるので、多量の排泄物を保持することができず、排泄物が着用者の背側に移動して比較的に広範囲に亘って着用者の肌を汚すおそれがある。
【0006】
そこで、本発明は、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを防止するとともに、排泄物の付着による着用者の身体の汚れを抑制することのできる使い捨て着用物品の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明が対象とするのは、縦方向及びそれに直交する横方向を有し、肌対向面及び非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含む使い捨て着用物品である。
【0008】
本発明の特徴とするところは、前記前後ウエスト域は少なくとも前記横方向へ弾性的に収縮可能であって、前記クロッチ域の両側部には、前記縦方向に弾性的に収縮可能な一対のサイド弾性部が配設され、前記一対のサイド弾性部間には吸液構造体が配置されており、前記吸液構造体を含む前記クロッチ域の略中央部のカンチレバー剛軟度が約15〜140mmであって、前記サイド弾性部の内側縁間の前記横方向における長さ寸法が、前後ウエスト域を前記横方向へ伸長させた状態における、前記前後ウエスト域のいずれか一方におけるウエスト開口縁部の前記横方向の長さ寸法の約0.5〜1.0倍である。
【0009】
本発明の実施態様の一つとしては、前記吸液構造体は、吸収性ポリマー粒子を透液性シートで被包したシート形状を有し、その厚さ寸法が約5.0mm以下である。
【0010】
本発明の他の実施態様の一つとしては、前記一対のサイド弾性部には、ストリング状又はストランド状の複数条のレッグ弾性要素が配設されており、前記レッグ弾性要素は、前記サイド弾性部の内側縁に沿って前記縦方向へ直状に延びる第1レッグ弾性要素と、前記第1レッグ弾性要素の前記横方向の外方に位置し、前記クロッチ域の中央部近傍において内方へ凹曲する湾曲形状を有する第2レッグ弾性要素とを有する。
【0011】
本発明の他の実施態様の一つとしては、前記前後ウエスト域が、環状の弾性ウエストパネルによって形成され、前記クロッチ域が前記弾性ウエストパネルに取り付けられたクロッチ本体によって形成されている。
【0012】
本発明の他の実施態様の一つとしては、前記クロッチ本体の前後端部のうちの少なくとも一方が、前記クロッチ本体の前記横方向における中央部に非接合部位を有する接合域を介して前記弾性ウエストパネルの外面に取り付けられており、前記非接合部位において前記弾性ウエストパネルと前記クロッチ本体の前記一方の端部とによって画成された空間部が形成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る使い捨て着用物品によれば、クロッチ本体のサイド弾性部によってレッグ開口縁部からの排泄物の横漏れが防止される。また、吸液構造体の剛性が比較的に低く、かつ、クロッチ本体内には比較的に多量の排泄物を収容することのできる収容スペースが形成されて大きく膨らんだ形状を呈するので、排泄後には、排泄物の自己質量によってクロッチ本体を着用者の身体から離間させ、排泄物によって着用者の身体が汚れるのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつの斜視図。
【図2】おむつのサイドシーム部を剥離して前後方向に伸展した状態をその内面から見た一部破断展開平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】吸液構造体の一部破断分解斜視図。
【図5】図1のV−V線に沿う模式断面図。
【図6】図1のVI−VI線に沿う模式的断面図。
【図7】クロッチ本体の垂れ下がり評価の測定の様子を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜3を参照すれば、本発明の使い捨て着用物品の一例として示す使い捨ておむつ10は、縦方向Y及びそれに直交する横方向Xと、横方向Xの幅寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pと、縦方向Yの長さ寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有する。
【0016】
おむつ10は、肌対向面及びそれに対向する非肌対向面と、ウエスト回り方向に延びる環状の弾性ウエストパネル11と、弾性ウエストパネル11の非肌対向面に取り付けられたクロッチ本体12と、前ウエスト域13と、後ウエスト域14と、前後ウエスト域13,14間を縦方向Yに延びるクロッチ域15とを含む。
【0017】
おむつ10は、仮想中心線P−Pに関して対称に形成されており、弾性ウエストパネル11は、前ウエスト域13を形成する前ウエストパネル16と、後ウエスト域14を形成する後ウエストパネル17とから構成される。
【0018】
前ウエストパネル16は、クロッチ本体12と交差し、横方向Xへ延びる内端縁16aと、縦方向Yにおいて内端縁16aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁16bと、内外端縁16a,16b間において縦方向Yへ延びる両側縁16c,16dとによって横長矩形状に形成される。
【0019】
後ウエストパネル17は、前ウエストパネル16とほぼ同形同大であって、クロッチ本体12と交差し、横方向Xへ延びる内端縁17aと、縦方向Yにおいて内端縁17aと離間対向して横方向Xへ延びる外端縁17bと、内外端縁17a,17b間において縦方向Yへ延びる両側縁17c,17dとによって横長矩形状に形成される。
【0020】
前ウエストパネル16の両側縁16c,16dと後ウエストパネル17の両側縁17c,17dとは、互いに重ね合わされて、縦方向Yに間欠的に並ぶ複数のサイドシーム部20によって連結され、ウエスト開口21及び一対のレッグ開口22とが画成されている(図1参照)。サイドシーム部20は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種の熱溶着手段によってなされる。
【0021】
前ウエストパネル16は、肌対向面側に位置する第1内面シート23と、非肌対向面側に位置する第1外面シート24を有する。第1内外面シート23,24は、質量約10〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スアパンボンド)繊維不織布若しくはスパンボンド不織布、または、プラスチックシートやそれらのラミネートシートとから形成することができる。両シート23,24は、少なくともいずれか一方の内面に間欠的に塗布されたホットメルト接着剤又は前記熱溶着手段によって接合される。
【0022】
両シート23,24間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の前ウエスト弾性要素25が配設されている。前ウエストパネル16は、前ウエス弾性要素25が配設されていることによって少なくとも横方向Xへ弾性的に伸縮可能である。なお、両シート23,24は、前ウエスト弾性要素25のほぼ全周縁に塗布したホットメルト接着剤を介してのみ互いに接合されていてもよい。
【0023】
前ウエスト弾性要素25は、前ウエストパネル16の外端縁16bに沿って横方向Xへ延びる前上方ウエスト弾性要素25Aと、内端縁16aに沿って横方向Xへ延びる前下方ウエスト弾性要素25Bとから構成される。前下方ウエスト弾性要素25Bの上方側は、前上方ウエスト弾性要素25Aに比して密の状態で配設され、前上方ウエスト弾性要素25Aと前下方ウエスト弾性要素25Bとの間には、弾性要素が配設されていない非弾性域26が画成されている。
【0024】
後ウエストパネル17は、肌対向面側に位置する第2内面シート28と、非肌対向面側に位置する第2外面シート29を有する。第2内外面シート28,29は、質量約10〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スアパンボンド)繊維不織布若しくはスパンボンド不織布、または、プラスチックシートやそれらのラミネートシートとから形成される。両シート28,29は、少なくともいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤又は前記熱溶着手段よって接合されている。
【0025】
両シート28,29間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の弾性要素からなる後ウエスト弾性要素30が配設されている。後ウエストパネル17は、後ウエス弾性要素30が配設されていることによって少なくとも横方向Xへ弾性的に伸縮可能である。なお、両シート28,29は、後ウエスト弾性要素30を構成する各弾性要素のほぼ全周縁に塗布したホットメルト接着剤を介してのみ互いに接合されていてもよい。
【0026】
後ウエスト弾性要素30は、後ウエストパネル17の外端縁17bに沿って横方向Xへ延びる後上方ウエスト弾性要素30Aと、内端縁17aに沿って横方向Xへ延びる後下方ウエスト弾性要素30Bとから構成されている。後下方ウエスト弾性要素30Bの上方側は、後上方ウエスト弾性要素30Aよりも密に配設されており、後上方ウエスト弾性要素30Aと後下方ウエスト弾性要素30Bとの間には、弾性要素が配設されていない非弾性域31が画成されている。
【0027】
図1及び2に示すとおり、前後ウエスト域13,14を横方向Xへ伸長させた状態における、前ウエスト域13(後ウエスト域14)のウエスト開口縁部21aの横方向Xの長さ寸法L1は、おむつ10がMサイズの場合において、約450〜550mm、Lサイズの場合において、約550〜650mmである。
【0028】
クロッチ本体12は、縦長の略矩形状であって、前ウエストパネル16の非肌対向面(外面)に取り付けられた前端部12Aと、後ウエストパネル17の非肌対向面に取り付けられた後端部12Bと、前後端部12A,12B間において縦方向Yへ延びる中間部12Cとを有する。また、クロッチ本体12は、クロッチ積層シート34と、クロッチ積層シート34の肌対向面(内面)に配置された吸液構造体35と、吸液構造体35の上面に位置する透液性シートから形成された身体側ライナ36とを有する。
【0029】
なお、後記の本願発明の効果を奏する限りにおいて、本願のおむつ10は、前後ウエスト域13,14とクロッチ域15とが別体ではなく、一体に形成されたシャーシから構成されているものであってもよい。その場合には、吸液構造体35はシャーシの内面に固定又は吊持させることができる。
【0030】
図6に示すとおり、クロッチ積層シート34と吸液構造体35とは、それらの対向面に塗布されたホットメルト接着剤から形成された構造体接合域37を介して互いに接合されている。具体的には、吸液構造体35は、クロッチ域15の中央部に位置する接合部位37Aと、前後ウエスト域13,14に位置する接合部位37B,37Cとにおいてクロッチ積層シート34の内面に固定されており、おむつ10の着用中において、その一部がクロッチ積層シート34の内面から離間して吊持された状態となっている。
【0031】
図2及び3を参照すると、クロッチ積層シート34は、少なくとも一方が不透液性の繊維不織布シート又はプラスチックフィルムから形成された内外面クロッチシート38,39によって形成される。また、内外面クロッチシート38,39は、両シート38,39のうちのいずれか一方のシートの内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合され、それらの両側部は、内方へ折り曲げられて、縦方向へ延びる一対のサイド弾性部40が形成される。
【0032】
各サイド弾性部40には、縦方向Yへ延びる複数条のストランド状又はストリング状からなる第1レッグ弾性要素41と第2レッグ弾性要素42とが配設されており、少なくとも縦方向Yにおいて弾性化されている。第1レッグ弾性要素41はサイド弾性部40の内側縁40aに沿って縦方向Yへ直状に延びており、第2レッグ弾性要素42は、クロッチ域15の中央部において内方へ凹曲し、前後ウエスト域13,14に向かって延びている。第1及び第2レッグ弾性要素41,42は、前記の内外面クロッチシート38,39のうちのいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して両シート38,39間に縦方向Yに伸長された状態で固定される。
【0033】
第2レッグ弾性要素42は、その中央部42aが縦軸Pに向かって凸曲しているので、局所的にそれら弾性部材による伸長応力が高められる。それにより、着用者の脚回りに対向するサイド弾性部40の中央部近傍が着用者の身体に密着し、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを効果的に防止することができる。
【0034】
クロッチ本体12は、前端部12A及び後端部12Bの肌対向面にホットメルト接着剤を塗布して形成された前接合域45と後接合域46とにおいて前後ウエストパネル16,17の外面に取り付けられる。このように、クロッチ本体12の前後端部12A,12Bを前後ウエストパネル16,17の外面に取り付けることによって、それらを前後ウエストパネル16,17の内面に取り付ける場合に比して、排泄物収容スペースSを大きく形成することができる(図6参照)。なお、排泄物収容スペースSが所要の大きさを有する限りにおいて、前後ウエスト域13,14のうちのいずれか一方のみが前後ウエストパネル16,17の外面に取り付けられていればよい。
【0035】
前後接合域45,46は、クロッチ域15に向かって開口した凹状を有し、それぞれ、サイド弾性部40の肌対向面にホットメルト接着剤を塗布して形成された両側部48と、両側部48間において、横方向Xへ延びる中央部49とを有する。中央部49は、吸液構造体35の存在域よりも縦方向Yの外方に位置しており、両側部48と中央部49との間には、ホットメルト接着剤が塗布されていない非接合域50が画成される。なお、本実施形態において、前接合域45の両側部48は段差状、後接合域46の両側部48は矩形状を有しているが、それらの形状に制限されるものではなく、前後接合域45,46の両側部48は、段差状、矩形状、曲状などの各種の形状を有していてもよい。
【0036】
このように、前後接合域45,46間に非接合域50が画成されることによって、図6に示すとおり、非接合域50には前後ウエストパネル16,17とクロッチ本体12との間において前後ポケット(空間部)51,52が形成される。前後ポケット51,52が形成されることによって収容スペースSをより大きくすることができるとともに、後記のように、クロッチ本体12が排泄物の自己質量によって弾性ウエストパネル11に吊持されるような形態を呈することができる。
【0037】
図4に示すとおり、吸液構造体35は、水溶性かつ自己質量の10倍以上の吸水力を有するいわゆる高吸収性ポリマー粒子(単に、吸収性ポリマー粒子ともいう。)のみから形成された吸収性コア60と、肌対向面側に位置する質量約8〜15g/m、好ましくは、質量約10g/mの透水性の繊維不織布から形成された上面シート61と、非肌対向面側に位置する質量約8〜15g/m、好ましくは、11g/mの透水性または難透水性のSMS繊維不織布から形成された下面シート62とを含む。
【0038】
また、吸液構造体35は、吸収性コア60が配置された、縦方向Yへ所与寸法離間する略矩形状に画成された吸液域63と、吸収性コア60が実質的に配置されていない、吸液域63を取り囲むように形成された非吸液域64とを有する。なお、本実施形態において、吸液域63は、8つの区域に区分されているが、吸液構造体35の要する吸収性能に応じてその面積、区域数を適宜変更することができる。また、後記の本発明の効果を奏する限りにおいて、吸収性コア60は、高吸収性ポリマー粒子のみならずフラッフパルプや熱可塑性繊維などの公知の材料を一部に含むものであってもよい。
【0039】
吸液域63では、下面シート62の内面に塗布されたホットメルト接着剤66を介して質量約30〜300g/m、好ましくは、質量約40〜280g/mの高吸水性ポリマー粒子がほぼ一様に固定されている。吸液域63では、上面シート61と下面シート62とが部分的に固定されているか又はそれらが互いに固定されていないことが好ましい。
【0040】
非吸液域64では、すなわち、吸液域63間の離間部位及び吸液構造体35の外周縁沿い全域においては、ホットメルト接着剤66を介して上下面シート61,62が互いに接合されている。
【0041】
このように、吸液構造体35は、高吸収性ポリマー粒子のみから形成された吸収性コア60とそれを被包するシート部材とのみから形成されシート状を有しているので、吸収性コア60が高吸水性ポリマー粒子とフラッフパルプとの混合物から形成されている場合に比して薄く、クロッチ本体12の動きに対する応動性に優れている。また、上下面シート61,62が非吸液域64において安定的に固定されていることによって所要の剥離強度を有するとともに、上下面シート61,62の内面全体が固定されている場合に比して高い可撓性を有するものといえる。さらに、吸液域63において高吸水性ポリマー粒子が一様に固定されていることから、着用者の動作及び姿勢のいかんにかかわらず、その分布に偏りを生じることはない。
【0042】
また、吸液域63において、高吸水性ポリマー粒子が許容量の限度まで配置されてその一部がホットメルト接着剤66を介して固定されておらず、吸液域63内において移動可能に包含されていてもよい。その場合には、吸液域63が袋状を呈し、その内部に包含可能な高吸水性ポリマー粒子の総量の上限は、質量約400g/mである。かかる場合には、非吸液域64は、吸液域63から移動可能な高吸収性ポリマー粒子がこぼれ出るのを防止するために吸液域63の周縁を封止するシール部としての機能を果たしうるが、製造工程において、高吸収性ポリマー粒子の一部が、吸液域63における高吸収性ポリマー粒子の単位面積当たりの所要質量よりも少ない範囲において、非吸液域64に配置されることがある。
【0043】
吸液構造体35を含むクロッチ本体12の略中央部の厚さは、具体的には、約5.0mm以下である。また、そのカンチレバー剛軟度は、約15〜140mmである。
【0044】
<厚さ測定方法>
クロッチ本体12の中央部の厚さは、厚さ測定器(PEACOCK社製)を用いて(測定子の直径約10〜20mm)測定することができる。
【0045】
<カンチレバー剛軟度の測定方法>
JISL1096のカンチレバー法に準拠し、おむつ10のクロッチ本体12の中央部からサンプル(横方向Xの長さ寸法50mm,縦方向Yの長さ寸法150mm)を切り取り、各サンプルの肌対向面と非肌対向面とを測定する。測定回数(n)は、3とする。
【0046】
なお、吸液構造体35は、所要の吸液性能と、上記の厚さ寸法による柔軟性を有する限りにおいて、吸液域63と非吸液域64に区画されたものではなく、吸液域63が全域に形成されたシート状のものであってもよい。
【0047】
図5に示すとおり、サイド弾性部40の一方の内側縁40aから他方の内側縁40aまでの長さ寸法(吸収スペースSの外周囲の長さ寸法)L2は、約380〜450mmである。サイド弾性部40は、おむつ10の着用状態において、吸液構造体35から離間して着用者の鼠径部に当接し、クロッチ本体12は弾性ウエストパネル11に吊持された袋状の形態を呈する。かかる着用状態において、排泄物がクロッチ本体12内に排泄された場合には、自己質量によってクロッチ本体12が着用者の臀部から離間し、着用者と吸液構造体35との間に排泄物を保持するための、通常の使い捨ておむつに比べて大容量の排泄物収容スペースSを形成される。おむつ10は、この種の他の物品に比して大容量の排泄物収容スペースSを有するので、比較的に多量の排泄物を保持することができるとともに、着用者の臀部から離間した状態でクロッチ本体12がハンモック状に吊持され、排泄物によって着用者の臀部が汚れるのを抑えることができる。
【0048】
また、図6に示すとおり、吸液構造体35は吸収性コア60が高吸収性ポリマー粒子のみから形成されていることから比較的に薄く、かつ、剛性が低いシート形状を有するものであるから、着用者の身体の動きに応動し易く、その着用状態において、クロッチ本体12内において吊持された状態となる。したがって、吸液構造体35は、その肌対向面側のみならず非肌対向面側からも体液を吸収することができ、効率的である。また、吸液構造体35は、比較的に可撓性が高いことから、クロッチ積層シート34の動きに応動し、すなわち、サイド弾性部40が伸長されることによって形成された防漏壁部68に沿って湾曲した形状を有し、排泄前においてよりクロッチ本体12が全体的に膨らんだ袋状の形態を呈することができる。
【0049】
図7は、排泄後における、おむつ10のクロッチ域15の垂れ下がり評価に関する測定の様子を示す図である。本評価は、以下の手順に従って行う。
【0050】
まず、エアドール70におむつ10(Lサイズ)を装着させて、クロッチ域15の最下部の位置D1(ウエスト開口縁部21aから最下部までの長さ寸法)を記録する。次に、おむつ10内に150gの人工尿を注入して、3分経過した後のクロッチ域15の最下部の位置D2を記録する。最後に、最初に記録したクロッチ域15の最下部の位置D1と人工尿を注入して3分経過した後のクロッチ域15の最下部の位置D2とを比較して、排泄前後における下方への移動距離T(mm)を測定する。エアドール70は、大人(男女問わず)の標準的な体型を想定したものであって、具体的には、ウエスト回りの長さ寸法は約73mm,臀部の周囲の長さ寸法は約90mm,大腿部の周囲の長さ寸法は約49mmである。また、人工尿の注入量は、大人が1度に排泄する尿の平均量約150gに基づくものである。
【0051】
測定の結果、クロッチ域15の最下部の位置D1,D2の移動距離Tは、約50mmであった。また、従来のおむつ10とほぼ同様の構成を有する他の使い捨ておむつについても同測定を行った場合には、その移動距離Tは約10〜30mmであった。したがって、本発明に係るおむつ10は、他の一般的なおむつと比べて、排泄前との比較において排泄後においてよりクロッチ本体12が下方に垂れ下がり、着用者の身体から離間するものといえる。よって、クロッチ本体12の吸液構造体35に吸収された及び/または吸収スペースSに保持された排泄物が着用者の身体に付着することはないので、着用者に不快感を与えることはなく、長時間排泄物が肌に付着することによるかぶれや発疹が生じるのを防止することができる。
【0052】
また、前記のように、サイド弾性部40の内側縁40a近傍が着用者の鼠径部に密着することによって、サイド弾性部40がクロッチ本体12の下面から上方に立ち上がり、防漏壁68を形成するので、レッグ開口縁部からの排泄物の横漏れを確実に防止することができる。
【0053】
本発明のおむつ10において、かかる効果を奏する理由として、吸液構造体35が比較的に薄くその剛性が低いためにクロッチ積層シート34の動きに応動し、排泄前においてクロッチ本体12が袋のように膨らんだ形状を有し、排泄物の自己質量によってそれが下方に垂れ下がることが挙げられる。また、収容スペースSの外周囲寸法であるサイド弾性部40の一方の内側縁40aから他方の内側縁40aまでの長さ寸法L2がおむつ10の大きさ(サイズ)との関係において、相対的に大きいことが理由であるといえる。したがって、かかる構成を有する限りにおいて、本発明による効果は、前後ウエスト域13,14とクロッチ域15とが別体に形成されたものではなく、それらが一体の部材によって形成された場合においても奏しうるものである。
【0054】
おむつ10全体の大きさに対する収容スペースSの大きさは、おむつのサイズの指標となるウエスト開口21の内周囲の長さ寸法、若しくは、その2分の1の大きさである前後ウエスト域13,14のウエスト開口縁部21aの横方向Xにおける長さ寸法L1と、両サイド弾性部40の一方の内側縁40aから他方の内側縁40aまでの長さ寸法L2との寸法比(L2/L1)によって表すことができると考えられる。
【0055】
すなわち、寸法比(L2/L1)が小さな場合には、おむつ10の大きさ(サイズ)に対してクロッチ本体12内の収容スペースSが比較的に小さいことを意味するので、排泄前においてクロッチ本体12が大きく膨らんだ形状を有することはない。したがって、排泄物の自己質量によってクロッチ本体12が垂れ下がったとしても、その移動距離Tは小さく、クロッチ本体12を着用者の身体から十分に離間させることができない。
【0056】
一方、寸法比(L2/L1)が大きな場合には、おむつ10の大きさ(サイズ)に対して十分な吸収容量を有する吸収スペースSが形成されることを意味するので、排泄前においてクロッチ本体12は大きく膨らんだ形状を有する。したがって、排泄後において排泄物の自己質量によってクロッチ本体12は下方に比較的に大きく垂れ下がり、その移動距離Tは比較的に大きなものとなって、着用者の身体に排泄物が付着しない程度にまで十分にクロッチ本体12を離間させることができる。
【0057】
本発明に係る大人用のおむつ10の各サイズS〜LLにおける長さ寸法比(L2/L1)は、以下の表1に記載のとおりである。なお、本発明におけるサイド弾性部40の一方の内側縁40aから他方の内側縁40aまでの長さ寸法L2は、各サイズにおいて一定であって約410mmである。また、一般的な大人用の各おむつの場合において、具体的には、本実施形態のL1に相当する前ウエスト域の幅寸法が約400〜900mm、L2に相当するレッグ開口縁部の内側縁間の幅寸法が約180〜250mmである各サイズ(Sサイズ〜LLサイズ)のおむつについて、同様の測定を行ったところ、かかる寸法比は、平均して約0.37であった。したがって、L2に相当する幅寸法は、L1に相当する幅寸法に対して約0.37倍であるといえる。
【0058】
【表1】

【0059】
上記表1のとおり、本願発明に係る大人用のおむつ10の各サイズにおける幅寸法L1,L2の比は、約0.5〜1.0の範囲内であって、すなわち、サイド弾性部40の内側縁40a間の長さ寸法(L2)は、前ウエスト域13のウエスト開口縁部の長さ寸法L1の約0.5〜1.0倍であるといえる。このように、一般的なおむつの場合に比べて、おむつ10の全体寸法に対して長さ寸法L2が所要の大きさを有するものであるから、排泄前において十分な収容容量を有する収容スペースSを形成される程度にクロッチ本体12は大きく膨らんだ形状を有するものといえる。したがって、前記のとおり、クロッチ域15の最下部の位置D1,D2の移動距離Tは所要程度の大きさを有するものであって、クロッチ本体12を着用者の身体から十分に離間させることができ、排泄物が身体に付着するのを抑制することができる。
【0060】
おむつ10を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の物品において通常用いられている各種の公知の材料を制限なく用いることができる、また、本発明の明細書及び特許請求の範囲において、「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置などを単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0061】
10 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
11 弾性ウエストパネル
12 クロッチ本体
13 前ウエスト域
14 後ウエスト域
15 クロッチ域
34 クロッチ積層シート(不透液性シート)
35 吸液構造体
40 サイド弾性部
40a サイド弾性部の内側縁
41 第1レッグ弾性要素
42 第2レッグ弾性要素
49 接合域(前後接合域)
50 非接合域(非接合部位)
51,52 空間部(前後ポケット)
X 横方向
Y 縦方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向及びそれに直交する横方向を有し、肌対向面及び非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域とを含む使い捨て着用物品において、
前記前後ウエスト域は少なくとも前記横方向へ弾性的に収縮可能であって、
前記クロッチ域の両側部には、前記縦方向に弾性的に収縮可能な一対のサイド弾性部が配設され、前記一対のサイド弾性部間には吸液構造体が配置されており、
前記吸液構造体を含む前記クロッチ域の略中央部のカンチレバー剛軟度が約15〜140mmであって、
前記サイド弾性部の一方の内側縁から他方の内側縁までの長さ寸法が、前後ウエスト域を前記横方向へ伸長させた状態における、前記前後ウエスト域のいずれか一方におけるウエスト開口縁部の前記横方向の長さ寸法の約0.5〜1.0倍であることを特徴とする前記着用物品。
【請求項2】
前記吸液構造体は、吸収性ポリマー粒子を透液性シートで被包したシート形状を有し、前記吸液性構造体を含む前記クロッチ域の前記略中央部のその厚さ寸法が約5.0mm以下である請求項1に記載の着用物品。
【請求項3】
前記一対のサイド弾性部には、ストリング状又はストランド状の複数条のレッグ弾性要素が配設されており、前記レッグ弾性要素は、前記サイド弾性部の内側縁に沿って前記縦方向へ直状に延びる第1レッグ弾性要素と、前記第1レッグ弾性要素の前記横方向の外方に位置し、前記クロッチ域の中央部近傍において内方へ凹曲する湾曲形状の第2レッグ弾性要素とを有する請求項1又は2に記載の着用物品。
【請求項4】
前記前後ウエスト域が、環状の弾性ウエストパネルによって形成され、前記クロッチ域が前記弾性ウエストパネルに取り付けられたクロッチ本体によって形成されている請求項1〜3のいずれかに記載の着用物品。
【請求項5】
前記クロッチ本体の前後端部のうちの少なくとも一方が、前記クロッチ本体の前記横方向における中央部に非接合部位を有する接合域を介して前記弾性ウエストパネルの外面に取り付けられており、前記非接合部位において前記弾性ウエストパネルと前記クロッチ本体の前記一方の端部とによって画成された空間部が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−213576(P2012−213576A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82309(P2011−82309)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】