説明

使い捨て着用物品

【課題】排尿等があった場合でもずり下がることがない使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】おむつ1の吸収体40は、表裏面シート20,30よりもその表面積が小さくされ、その縦方向Y外側および横方向X外側には、吸収体40が存在しない前後フラップ74,75およびサイドフラップが形成され、クロッチサイドフラップ73には、サイドフラップ弾性体76が取り付けられる。フック要素81は、支持シート83を介して後ウエスト域12に取り付けられ、支持シート83は、第2サイドフラップ72に固定される固定部84と、固定部84から側縁16の横方向X外側に延出する延出部85とを有する。固定部84の外側縁84bと前端縁84cとの交点Aと、吸収体40の側縁43と仮想横中心線Q−Qとの交点Bとを結ぶ仮想線Rは、第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73上に位置し、サイドフラップ弾性体76と仮想線Rとが互いに交差されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、連結部材で前後ウエスト域を連結して使用するオープンタイプの使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、締結部材で前後ウエスト域を連結して使用するいわゆるオープンタイプの使い捨て着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、液透過性の表面シートと、液不透過性の防漏シートと、液保持性の吸収体と、吸収体の両側部に形成されたサイドフラップとを有する使い捨ておむつが開示されている。サイドフラップには、ファスニングテープが設けられ、このファスニングテープによって、背側部分と腹側部分とが連結され、パンツ形状のおむつとすることができる。サイドフラップには、縦方向に延びるフラップ部弾性部材が取り付けられ、サイドフラップを縦方向に弾性化している。特許文献2には、吸収性本体と、吸収性本体の幅方向外方に延出するフラップ部とを有する使い捨ておむつが開示されている。フラップ部には、ファスニングテープが設けられ、このファスニングテープによっておむつの背側と腹側とが連結され、パンツ形状のおむつとすることができる。フラップ部には、複数本のフラップ弾性部材がおむつの幅方向に沿って配されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−212175号公報(JP2001−212175A)
【特許文献2】特開2008−161527号公報(JP2008−161527A)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような特許文献1および2記載の使い捨ておむつは、サイドフラップに縦方向または横方向に延びる弾性部材を取り付けることによって、サイドフラップが着用者の身体に密着し、これがめくれたりしないようにしている。このようなおむつは、尿等を吸収体が吸収して重くなると、おむつの股下部分が下がってしまい、おむつ全体がずり下がるという問題があった。
【0005】
この発明では、排尿等があった場合でもずり下がることがない使い捨て着用物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、縦方向および横方向を有し、身体側およびその反対側である非身体側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、いずれか他方である第2ウエスト域と、これら第1および第2ウエスト域の間に位置するクロッチ域と、前記縦方向における寸法を二等分する仮想横中心線とを有するシャーシと、少なくとも前記クロッチ域に位置する吸水性の吸収体と、前記吸収体の前記横方向外側に位置するサイドフラップと、前記第2ウエスト域に取り付けられ前記第1および第2ウエスト域を互いに連結する連結手段とを含む使い捨て着用物品の改良にかかわる。
この発明は、前記使い捨て着用物品において、前記サイドフラップは、前記第2ウエスト域に位置する第2サイドフラップと、前記クロッチ域に位置するクロッチサイドフラップとを有し、前記連結手段は、前記第2サイドフラップに固定される固定部と、前記固定部から前記横方向外側に延びて前記第1ウエスト域に連結可能な延出部とを有し、前記固定部は、前記縦方向に延びる内外側縁と、前記横方向に延びる前後端縁とによって画定され、前記外側縁と前記前端縁との交点と、前記吸収体の側縁および前記仮想横中心線の交点とを結ぶ仮想線が、前記第2サイドフラップおよび前記クロッチサイドフラップ上に位置し、前記第2サイドフラップの前記縦方向における曲げ剛性が0.10〜0.20N/mであり、前記横方向における曲げ剛性が0.05〜0.10N/mであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この発明の特にそのひとつ以上の実施態様によれば、第2サイドフラップおよびクロッチサイドフラップの縦方向における曲げ剛性が0.10〜0.20N/mであり、横方向における曲げ剛性が0.05〜0.10N/mであるので、第2サイドフラップおよびクロッチサイドフラップが捲れにくい。また、仮想線の端部が第2サイドフラップ上に位置するので、第2サイドフラップに位置する連結手段で前後ウエスト域を連結させることによって、着用物品を着用者のウエストで確実に保持することができる。したがって、着用物品がずり下がり難い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】使い捨て着用物品の一実施形態である使い捨ておむつのパンツ型にした状態を示す斜視図。
【図2】展開したおむつの平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】図2のIV−IV線切断端面図。
【図5】図2のV-V線切断端面図。
【図6】おむつの着用状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、この発明の使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつ1の前後ウエスト域を連結部材で連結しパンツ型にした状態の斜視図、図2は展開したおむつ1の平面図、図3はおむつ1の分解斜視図、図4は図2のIV−IV線切断端面図、図5は図2のV−V線切断端面図である。図2〜5において、各弾性体は、その収縮力に抗して伸長させた状態で示している。図6は、おむつ1の着用状態を着用者の側方から見た図である。
【0010】
図1に示したように、おむつ1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、前ウエスト域11および後ウエスト域12、これら前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13と、横方向Xに延びる前後端縁14,15と、縦方向Yに延びる両側縁16とを有する。前ウエスト域11がこの発明の第1ウエスト域であり、後ウエスト域12が第2ウエスト域である。おむつ1は、後ウエスト域12に取り付けられたフック要素81と、前ウエスト域に取り付けられたループ要素82とを連結することによって、パンツ型とすることができる。
【0011】
図2〜5に示したように、おむつ1は、横方向Xにおける寸法を二等分する仮想縦中心線P−Pと、縦方向Yにおける寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有し、仮想縦中心線P−Pにおいて、ほぼ対称にされている。対称に形成された構成要素の何れか一方については、その符号を一部省略している。
【0012】
図3に示したように、おむつ1は、身体側に位置する液透過性の表面シート20と、その反対側である非身体側(着衣側)に位置する不透液性の裏面シート30と、これら表裏面シート20,30の間に位置する吸水性の吸収体40と、吸収体40および裏面シート30の間に位置する漏れ防止シート50とを有する。表面シート20の身体側には、横方向Xに離間する一対の漏れバリアカフ60が形成されている。表面シート20と裏面シート30とによって、この発明のシャーシ10を形成している。
【0013】
表面シート20としては、例えば、質量約15〜35g/mのポイントボンド繊維不織布を用いることができる。裏面シート30としては、質量約10〜30g/mのスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(SMS)繊維不織布もしくはスパンボンド繊維不織布、または、プラスチックシートやそれら繊維不織布とプラスチックシートのラミネートを用いることができる。
【0014】
漏れバリアカフ60としては、質量約10〜30g/mのスパンボンド・メルトブローン・スパンボンド(SMS)繊維不織布を用いることができる。漏れバリアカフ60の前後端縁61,62は、表面シート20の前後端縁21,22と一致して積層され、図示しないホットメルト接着剤等によって互いに接合されている。漏れバリアカフ60の外側縁63は、裏面シート30の両側縁33に重なり、図示しないホットメルト接着剤等によって互いに接合されている。漏れバリアカフ60の内側縁64は、横方向Xに離間して配置され、これら内側縁64は、表面シート20に重なるが、これとは接合されず、表面シート20から離間可能にされている。内側縁64には、縦方向Yに延びるカフ弾性体65が伸長状態で収縮可能に取り付けられる。このようにカフ弾性体65を取り付けることによって、内側縁64が表面シート20から起立するように離間して着用者の肌に密着し、尿等がおむつ1の外側に漏れるのを防止する。
【0015】
吸収体40は、少なくとも後ウエスト域12およびクロッチ域13に位置し、この実施形態では、クロッチ域13から前後ウエスト域11,12へと延出している。図5に示したように、吸収体40は、吸水性の芯材44と、芯材44を覆うティッシュペーパ45,46とを有する。芯材44としてフラッフパルプ、高吸収性ポリマー粒子、またはこれらの混合物を用いることができる。図2に示したように、吸収体40は、前後ウエスト域11,12の横方向Xにおける寸法が、仮想横中心線Q−Qにおける寸法よりも大きくされている。より詳細には、吸収体40は、少なくとも前後ウエスト域11,12においては、その横方向Xにおける寸法が等しく、クロッチ域13において、その横方向Xに寸法が仮想横中心線Q−Qに向かって徐々に小さくされている。
【0016】
表裏面シート20,30と吸収体40とは、図示しないホットメルト接着剤等の接合手段によって、互いに接合されている。吸収体40は、表裏面シート20,30よりもその表面積が小さくされ、吸収体40の前後端縁41,42および両側縁43から表裏面シート20,30が延出する。したがって、吸収体40の縦方向Y外側および横方向X外側には、吸収体40が存在しない前後フラップ74,75およびサイドフラップが形成される。サイドフラップは、前ウエスト域11に位置する第1サイドフラップ71と、後ウエスト域12に位置する第2サイドフラップ72と、クロッチ域13に位置するクロッチサイドフラップ73とを有する。クロッチサイドフラップ73には、縦方向Yに延びるサイドフラップ弾性体76が取り付けられている。サイドフラップ弾性体76は、表裏面シート20,30の少なくともいずれか一方にホットメルト接着剤等の接着手段を介して接合され、縦方向Yに伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
【0017】
吸収体40と裏面シート30との間には漏れ防止シート50が配置されている。漏れ防止シート50は、不透液性かつ非通気性のプラスチックフィルムを用いることができる。漏れ防止シート50は吸収体40よりもその面積が大きくされている。したがって、吸収体40で吸収された尿等がおむつ1外に漏れるのを防止することができる。
【0018】
裏面シート30と漏れ防止シート50とは、ホットメルト接着剤等の接合手段90によって、互いに接合される。接合手段90の両側縁93は、裏面シート30の両側縁33よりも横方向X内側に位置するとともに、漏れ防止シート50の両側縁53よりも横方向X内側に位置する。これら両側縁33,53の近傍には、接合手段90が形成されてない非接合領域94が形成される。非接合領域94では、裏面シート30と漏れ防止シート50とが互いに接合されていない。漏れ防止シート50の裏面シート30に対向する面とは反対側の面であって、非接合領域94に重なる位置にサイドフラップ弾性体76が取り付けられる。この実施形態では、ストリング状またはストランド状の複数本のサイドフラップ弾性体76が取り付けられ、これらサイドフラップ弾性体76と接合手段90とは重ならないようにされている。なお、少なくともサイドフラップ弾性体76の一部が接合手段90の横方向X外側に位置すればよく、その一部が接合手段90に重なっていてもよい。接合手段90は、例えば裏面シート30にコーター塗工等によって連続的に形成されるものであってもよいし、スパイラルスプレー等によって間欠的に形成されるものであってもよい。
【0019】
フック要素81は、支持シート83を介して後ウエスト域12に取り付けられている。支持シート83は、第2サイドフラップ72に固定される固定部84と、固定部84から側縁16の横方向X外側に延出する延出部85とを有し、延出部85にフック要素81が取り付けられる。固定部84は、漏れバリアカフ60と裏面シート30との間に位置し(図3および4参照)、縦方向Yに延びる内外側縁84a,84bと、横方向Xに延びる前後端縁84c,84dとによって画定されている。
【0020】
固定部84の外側縁84bと前端縁84cとの交点Aと、吸収体40の側縁43と仮想横中心線Q−Qとの交点Bとを結ぶ仮想線Rは、第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73上に位置している。すなわち、仮想線Rは、吸収体40には重ならず、その横方向X外側に位置する。
【0021】
サイドフラップ弾性体76は、後端76bが仮想線Rよりも後ウエスト域12側に延びている。すなわち、サイドフラップ弾性体76と仮想線Rとが互いに交差されている。サイドフラップ弾性体76の前端76aは、クロッチ域13から前ウエスト域11側に延びている。
【0022】
第1および第2サイドフラップ71,72およびクロッチサイドフラップ73の縦方向Yにおける曲げ剛性は、約0.10〜0.20N/mであって、横方向Xにおける曲げ剛性は、約0.05〜0.10N/mである。これら曲げ剛性は、以下の方法によって測定した。
【0023】
<曲げ剛性の測定方法>
曲げ剛性は、KES試験によって測定した。KES試験はKES−FB2−AUTO−A 自動純曲げ試験機(カトーテック株式会社)を用いて測定した。仮想線Rを含む範囲で10mm×10mmをサンプル片として用い、温度20℃、湿度60%の条件下で測定した。より詳細には、サンプル片として、クロッチサイドフラップ73に位置し、裏面シート30、漏れ防止シート50および漏れバリアカフ60が積層された部分を縦方向Yにおいて10mm、横方向Xおいて10mmとなるように切断して用いている。
このようなサンプル片は、KES試験機にセットされ、フルスケール10gf/cm/10vまでのトルク感度を有するSEN10のセンサを用い、曲率(1/cm)で測定された。サンプル片は、縦方向Yおよび横方向Xにおける曲げ剛性がそれぞれ測定された。
【0024】
図6に示したように、おむつ1はフック要素81をループ要素82に連結させることによって、前後ウエスト域11,12が連結されパンツ型のおむつ1として着用者Hに着用させることができる。このようなおむつ1の着用時に排尿があった場合、吸収体40は尿を吸収して重くなり、おむつ1全体が図の下方へと引っ張られる。仮想線Rの一方の端部に位置する交点Aにおいては、フック要素81によって着用者のウエストでおむつ1が保持され、仮想線Rの他方の端部に位置する交点Bにおいては、おむつ1が下方へ引っ張られるから、おむつ1は仮想線Rに沿って引っ張られることになる。交点Aが着用者Hに確実に保持されるとともに、仮想線Rが位置する第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73の縦方向Yにおける曲げ剛性が約0.10〜0.20N/m、横方向Xにおける曲げ剛性が約0.05〜0.10N/mとされているので、おむつ1は、排尿があったとしてもその重さで垂れ下がることがない。おむつ1が吸収体の重さで垂れ下がらないので、これが着用者のウエストに対してずり下がることもなく、着用者に密着した着用状態を維持することができる。
【0025】
第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73の曲げ剛性を上記のようにしているので、これらサイドフラップが折れ曲がり難く、裏面シート30側に捲れ上がったり、表面シート20側に巻き込まれたりするのを防止することができる。したがって、これら第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73は、着用者の臀部に沿ってこれを覆うことができる。着用者の臀部がフラップで覆われることによって、仮に排泄物がこれらサイドフラップから漏れたとしても、これを保持し、着衣に付着するのを防止することができる。また、臀部をフラップで覆うことによって、見た目にも良好なおむつ1を提供することができる。さらに、これらフラップが表面シート20側に巻き込まれた場合には、巻き込まれた部分がおむつ1の内側に入り、排泄物が付着する可能性があるが、これを未然に防止することができる。
【0026】
上記のようなおむつ1は、その着用時には、引っ張られた仮想線Rが着用者Hの太股付け根に沿って密着する。仮想線Rは、脚の動きの基点となる太股付け根に密着するので、着用者Hの脚の動きの妨げになることなく、尿等の漏れを防止することができる。また、下がろうとするおむつ1を仮想線Rによって着用者Hの太股付け根で保持することができ、おむつ1のずり下がりを防止することができる。第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73の縦方向Yにおける曲げ剛性が0.20N/m、横方向Xにおける曲げ剛性が0.10N/mよりそれぞれ大きい場合には、その全体が硬くなることで着用時にサイドフラップに作用する張力が仮想線Rに集中しなくなるから、サイドフラップの仮想線Rは着用者の身体に密着しにくくなる。
【0027】
仮想線Rは、吸収体40の横方向X外側に位置し、吸収体40とは重ならないようにされている。したがって、仮想線Rが吸収体40で分断されることがない。仮想線Rが吸収体40と重なった場合には、交点Aから交点Bまでの連続した引っ張り力が分断されてしまうから、サイドフラップの緊張状態が崩れ、サイドフラップがおむつ1の外側に捲れたり、内側に巻き込まれたりする可能性がある。この発明では、仮想線Rによってサイドフラップの伸張状態を維持することができるので、これらが捲れたり巻き込まれたりすることがない。
【0028】
仮想線Rとサイドフラップ弾性体76とが交差されているので、サイドフラップ弾性体76が仮想線Rによって保持され、サイドフラップ弾性体76が下方に垂れ下がるのを防止することができる。したがって、サイドフラップ弾性体76およびこれが取り付けられたクロッチサイドフラップ73は、着用者の鼠蹊部に密着することができ排泄物がおむつ1外に漏れるのを防止することができる。また、おむつ1の前後端縁14,15を掴んで引っ張り上げた際には、仮想線Rに沿っておむつ1のクロッチ域13も引き上げられるので、容易に着用状態を整えることもできる。
【0029】
サイドフラップ弾性体76は、接合手段90が形成されない非接合領域94に取り付けられている。非接合領域94では、接合手段90が形成された領域に比べてその曲げ剛性が小さくされる。したがって、サイドフラップ弾性体76の伸縮に順応してクロッチサイドフラップ73が着用者の脚に柔軟に密着することができる。さらに、サイドフラップ弾性体76は漏れ防止シート50に取り付けられ、裏面シート30とは離間して着用者に密着することができるので、より一層密着しやすい。また、曲げ剛性が小さい領域にサイドフラップ弾性体76を取り付けているので、おむつ1を引っ張り上げた際に、その引き上げる力がサイドフラップ弾性体76に伝達されやすく、クロッチサイドフラップ73を着用者の鼠蹊部に密着させることができる。複数本のサイドフラップ弾性体76のうちの一部が接合手段90と重なった場合には、その重なったサイドフラップ弾性体76が、漏れ防止シート50および裏面シート30を着用者側へと押し付けるとともに、接合手段90に重ならないサイドフラップ弾性体76に順応することができるから、より一層クロッチサイドフラップ73を着用者の身体に密着させることができる。
【0030】
この実施形態におけるサイドフラップ弾性体76として、弾性糸を用いているが、これに限ったものではなく、弾性を有するシート等を用いることもできる。また、サイドフラップ弾性体76の後端76bが仮想線Rよりも後ウエスト域12側に位置することとしているが、ここでいう後端76bとは、サイドフラップ弾性体76において弾性を実質的に発現する部分の後端を意味する。
【0031】
仮想線Rとシャーシ10の側縁16との離間寸法は、約5〜20mmとされている。なお、仮想線Rと側縁16とは、必ずしも平行に形成されているものではないので、これらが最も接近する部分であっても約5mmよりも大きく、最も離間する部分であっても約20mmよりも小さくされる。したがって、第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73は安定的に着用者の臀部を覆うことができる。離間寸法が5mmよりも小さい場合には、フラップがおむつ1の内側に巻き込まれやすく、20mmよりも大きい場合には、着用者の脚の動きに引っ張られておむつ1がずれやすくなってしまう。
【0032】
図2に示したように、シャーシ10は、仮想横中心線Q−Qにおける寸法W1が約180〜300mmであり、この実施形態では約205mmとされ、吸収体40は、仮想横中心線Q−Qにおける寸法W2が約70〜100mmであり、この実施形態では約80mmとされている。吸収体40の寸法W2は、シャーシ10の寸法W1の約0.2〜0.4倍にされている。すなわち、W2/W1=0.2〜0.4とされている。このようにすることによって、クロッチサイドフラップ73は、おむつ1の内側に巻き込まれず、かつ、着用者の臀部を覆うことができる。
【0033】
仮想線Rと仮想横中心線Q−Qとのなす角度は約45〜60°とされている。したがって、臀部全体を第2サイドフラップ72およびクロッチサイドフラップ73で覆うことができる。上記角度が45°よりも小さい場合には、仮想線Rが着用者鼠蹊部よりも太股側に位置し、着用者の動きに合わせておむつ1を下方へと引っ張り、おむつ1が下方へとずれてしまう。上記角度が60°よりも大きい場合には、仮想線Rが着用者の臀部に位置してしまい、十分に臀部を覆うことができない。
【0034】
後ウエスト域12の縦方向Yにおける寸法L1と、おむつ1の後端縁15から仮想横中心線Q−Qまでの寸法L2とを比較した場合、寸法L1がL2の約0.4〜0.7倍となるようにされている。すなわち、L1/L2=0.4〜0.7となるようにしている。後ウエスト域12とは、両側縁が平行に延びる部分である。上記L1/L2が0.4よりも小さい場合には、第2サイドフラップ72の面積が小さくなってしまい、着用者の臀部を十分に覆うことができず、また、この第2サイドフラップ72がおむつ1の内側に巻き込まれやすくなる。L1/L2が0.7よりも大きい場合には、第2サイドフラップ72の面積が大きすぎて、これが着用者の脚の動きに引っ張られておむつ1がずれやすくなる。
【0035】
支持シート83が取り付けられた後ウエスト域12において、支持シート83の下端縁に沿って仮想横中心線Q−Qに平行な仮想平行線S−Sと仮想線Rと吸収体40の側縁43とによって画定された領域S1と、仮想線Rと側縁16と仮想横中心線Q−Qとによって画定された領域S2とを比較すると、領域S2は領域S1の約0.41〜0.8倍とされている。すなわち、S2/S1=0.41〜0.8とされている。上記領域S1は着用者の臀部に密着し易く、領域S2は着用者の臀部から離間して臀部を覆う。S2/S1が0.41よりも小さいと臀部を覆う領域が小さくなり、着用者の臀部を十分に覆うことができない。また、おむつ1の内側に巻き込まれやすくなってしまう。S2/S1が0.8よりも大きいと、臀部を覆う領域S2が大きすぎ、着用者の脚の動きに引っ張られておむつ1がずれやすくなってしまう。また、おむつ1の着用時に着用者の足に引っかかって、はき難い可能性がある。
【0036】
以上に記載したこの発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
この発明は、以下の使い捨て着用物品1の改良にかかわる。使い捨て着用物品1は、縦方向Yおよび横方向Xを有し、身体側およびその反対側である非身体側と、前後ウエスト域11,12のいずれか一方である第1ウエスト域と、いずれか他方である第2ウエスト域と、これら第1および第2ウエスト域の間に位置するクロッチ域13と、前記縦方向Yにおける寸法を二等分する仮想横中心線Q−Qとを有するシャーシ10と、少なくとも前記クロッチ域13に位置する吸水性の吸収体40と、前記吸収体40の前記横方向X外側に位置するサイドフラップ71,72,73と、前記第2ウエスト域に取り付けられ前記第1および第2ウエスト域を互いに連結する連結手段81,82とを含む。
【0037】
この発明は、上記使い捨て着用物品1において、前記サイドフラップは、前記第2ウエスト域12に位置する第2サイドフラップ72と、前記クロッチ域13に位置するクロッチサイドフラップ73とを有する。前記連結手段は、前記第2サイドフラップ72に固定される固定部84と、前記固定部84から前記横方向X外側に延びて前記第1ウエスト域に連結可能な延出部85とを有し、前記固定部84は、前記縦方向Yに延びる内外側縁84a,84bと、前記横方向Xに延びる前後端縁84c,84dとによって画定される。前記外側縁84bと前記前端縁84cとの交点Aと、前記吸収体40の側縁43および前記仮想横中心線Q−Qの交点Bとを結ぶ仮想線Rが、前記第2サイドフラップ72および前記クロッチサイドフラップ73上に位置し、前記第2サイドフラップ72の前記縦方向Yにおける曲げ剛性が0.10〜0.20N/mであり、前記横方向Xにおける曲げ剛性が0.05〜0.10N/mである。
【0038】
上記の発明は、少なくとも下記の実施態様を含むことができる。
(1)前記仮想線Rは、前記吸収体40の側縁43よりも前記横方向X外側に位置する。
(2)前記シャーシ10は、前記身体側に位置する表面シート20と、前記非身体側に位置する裏面シート30とを有する。これらシート20,30の間には、漏れ防止シート50が取り付けられ、前記裏面シート30と前記漏れ防止シート50とが、接合手段90によって互いに接合されるとともに、前記接合手段90の前記横方向X外側には、前記裏面シート30と前記漏れ防止シート50とが互いに接合されない非接合領域94が形成される。前記漏れ防止シート50の前記裏面シート30に対向する面とは反対側の面であって、前記非接合領域94に重なる位置には、少なくとも前記クロッチサイドフラップ73に位置するとともに、前記縦方向Yに伸長状態で収縮可能なサイドフラップ弾性体76が取り付けられる。
(3)前記サイドフラップ弾性体76は、前記仮想線Rと交差される。
(4)前記仮想線Rと、前記シャーシ10の側縁16との前記横方向Xにおける離間寸法が5〜20mmである。
(5)前記仮想線Rと、前記仮想横中心線Q-Qとのなす角度が45°〜60°である。
(6)前記吸収体40の前記第2ウエスト域12の前記横方向Xにおける寸法が、前記仮想横中心線Q−Qにおけるそれよりも大きくされる。
(7)前記仮想横中心線Q−Qにおいて、前記吸収体40の寸法は、前記シャーシ10の寸法の0.2〜0.4倍である。
【0039】
使い捨て着用物品の一例である使い捨ておむつ1を構成する各構成部材には、この明細書に記載されている材料のほかに、この種の分野において通常用いられている、各種の公知の材料を制限なく用いることができる。また、この発明の明細書において、用語「第1」および「第2」は、同様の要素、位置等を単に区別するために用いられている。
【符号の説明】
【0040】
1 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
10 シャーシ
11 前ウエスト域(第1ウエスト域)
12 後ウエスト域(第2ウエスト域)
13 クロッチ域
16 両側縁
20 表面シート
30 裏面シート
40 吸収体
43 両側縁
50 漏れ防止シート
71 第1サイドフラップ
72 第2サイドフラップ
73 クロッチサイドフラップ
76 サイドフラップ弾性体
81 連結手段(フック要素)
82 連結手段(ループ要素)
83 連結手段(支持シート)
84 固定部
85 延出部
90 接合手段
94 非接合領域
R 仮想線
X 横方向
Y 縦方向
P−P 仮想縦中心線
Q−Q 仮想横中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向および横方向を有し、身体側およびその反対側である非身体側と、前後ウエスト域のいずれか一方である第1ウエスト域と、いずれか他方である第2ウエスト域と、これら第1および第2ウエスト域の間に位置するクロッチ域と、前記縦方向における寸法を二等分する仮想横中心線とを有するシャーシと、少なくとも前記第2ウエスト域および前記クロッチ域に位置する吸水性の吸収体と、前記吸収体の前記横方向外側に位置するサイドフラップと、前記第2ウエスト域に取り付けられ前記第1および第2ウエスト域を互いに連結する連結手段とを含む使い捨て着用物品において、
前記サイドフラップは、前記第2ウエスト域に位置する第2サイドフラップと、前記クロッチ域に位置するクロッチサイドフラップとを有し、
前記連結手段は、前記第2サイドフラップに固定される固定部と、前記固定部から前記横方向外側に延びて前記第1ウエスト域に連結可能な延出部とを有し、前記固定部は、前記縦方向に延びる内外側縁と、前記横方向に延びる前後端縁とによって画定され、
前記外側縁と前記前端縁との交点と、前記吸収体の側縁および前記仮想横中心線の交点とを結ぶ仮想線が、前記第2サイドフラップおよび前記クロッチサイドフラップ上に位置し、前記第2サイドフラップの前記縦方向における曲げ剛性が0.10〜0.20N/mであり、前記横方向における曲げ剛性が0.05〜0.10N/mであることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記仮想線は、前記吸収体の側縁よりも前記横方向外側に位置する請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記シャーシは、前記身体側に位置する表面シートと、前記非身体側に位置する裏面シートとを有し、
これらシートの間には、漏れ防止シートが取り付けられ、前記裏面シートと前記漏れ防止シートとが、接合手段によって互いに接合されるとともに、前記接合手段の前記横方向外側には、前記裏面シートと前記漏れ防止シートとが互いに接合されない非接合領域が形成され、
前記漏れ防止シートの前記裏面シートに対向する面とは反対側の面であって、前記非接合領域に重なる位置には、少なくとも前記クロッチサイドフラップに位置するとともに、前記縦方向に伸長状態で収縮可能なサイドフラップ弾性体が取り付けられる請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記サイドフラップ弾性体は、前記仮想線と交差される請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記仮想線と、前記シャーシの側縁との前記横方向における離間寸法が5〜20mmである請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記仮想線と、前記仮想横中心線とのなす角度が45°〜60°である請求項1〜5のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記吸収体の前記第2ウエスト域の前記横方向における寸法が、前記仮想横中心線におけるそれよりも大きくされる請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記仮想横中心線において、前記吸収体の寸法は、前記シャーシの寸法の0.2〜0.4倍である請求項1〜7のいずれかに記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34550(P2013−34550A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171276(P2011−171276)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】