説明

供給ユニットおよび装置

【課題】記録材を一枚ずつ分離して供給できる供給ユニットを提供する。
【解決手段】供給ユニット20は、複数枚のシート状の記録材9を積み上げた状態で収納するためのトレイ21と、トレイに積み上げられた記録材90の主たる重量を受ける位置で、積み上げられた記録材90の最下の記録材91に接し、給紙方向Xに最下の記録材91を搬送するように配置された第1のフィードローラ31と、積み上げられた記録材90の給紙方向Xの端側で最下の記録材91に接し、最下の記録材91を搬送するように配置された第2のフィードローラ32と、記録材9の給紙方向の端が当たり、最下の記録材91を下側に導くように傾いた分離壁41とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷用紙などの記録材を印刷機構などの記録機構へ供給するための供給ユニットおよび装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置の用紙トレイから用紙を一枚ずつ給送する給紙装置としては、用紙の給送方向に回転する給紙ローラと、この給紙ローラに圧接され対をなすと共にトルクリミッタを介して給送方向とは逆方向に駆動力を付与される分離ローラとを有する摩擦分離ローラ方式の給紙装置が周知であることが記載されている。この特許文献1には、給紙部に装着された用紙トレイが開示されており、用紙トレイ内の用紙は、最上の用紙が駆動源により回転駆動される呼出しローラによって呼び出され、給紙ローラと分離ローラとのニップに送られ1枚ずつに捌かれて縦搬送装置によってレジストローラ対まで搬送され、さらに感光体ドラムに形成された画像先端とタイミングを取って画像形成部の転写位置に搬送される。
【0003】
特許文献2には、原稿搬送装置が開示されており、給紙トレイ部に堆積状態にて載置された複数枚の原稿から1枚の原稿を分離して第1の搬送方向に搬送するための第1の回転駆動部材としての2つの回転駆動ローラ(搬送上流側に吸入ローラ、下流側に分離ローラ)と第2の回転駆動部材としての大径の反転ローラとが、押圧板体の上面であって、原稿の搬送方向と直交する方向(原稿の横幅方向)の略中央部位に配置されているものが開示されている。
【特許文献1】特開2003−2474号公報(段落番号0002、0021、図1)
【特許文献2】特開2008−189476号公報(段落番号0044−46、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されているように、大量の用紙が収納された用紙トレイから用紙を一枚ずつ給送する給紙装置は、最上の用紙を一枚ずつピックアップする方式が採用される。したがって、複写機またはプリンタなどの大量の用紙をハンドリングするシステムでは、印刷機構に対して給紙装置は通常下側に配置され、用紙トレイを前後に引き出して用紙を補給する形態が採用される。
【0005】
一方、原稿は少量であり出し入れが容易であることが好ましい。このため、複写機または複合機では印刷機構の上に原稿搬送装置が配置される。原稿搬送装置においても、上記の給紙装置と同様に最上の用紙を一枚ずつピックアップする方式が採用されるが、特許文献2のように最下の原稿を送る方式もある。
【0006】
印刷機構の上に大量の用紙を収納可能な用紙トレイを配置したシステムは、用紙の交換が便利である。しかしながら、用紙を分離する方向と、分離した用紙を送る方向が合わないので、用紙の供給ルートが複雑になるなどの理由により実現されていない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、複数枚のシート状の記録材を積み上げた状態で収納するための収納体を有する供給ユニットである。この供給ユニットは、さらに、収納体に積み上げられた記録材の主たる重量を受ける位置で、積み上げられた記録材の最下の記録材に接し、給紙方向に最下の記録材を搬送するように配置された第1のフィードローラと、積み上げられた記録材の給紙方向の端側で最下の記録材に接し、最下の記録材を第1のフィードローラの給紙速度以下で給紙方向へ搬送するように配置された第2のフィードローラと、積み上げられた記録材の少なくとも最下層の複数の記録材の給紙方向の端が当たり、最下の記録材を下側に導くように傾いた分離壁体とを有する。
【0008】
この供給ユニットにおいては、第1のフィードローラにより、上に積み上げられた記録材の主たる重量を受ける。したがって、積み上げられた記録材が大量であっても、最下の記録材を第1のフィードローラにより搬送できる。さらに、第2のフィードローラが積み上げられた記録材の給紙方向の端側に位置するので、第1のフィードローラにより搬送された最下の記録材を最後まで給紙ユニットから出力できる。第2のフィードローラは積み上げられた記録材の端側を支持する。積み上げられた記録材は、第1のフィードローラと第2のフィードローラとの間で自重により下側に凸になるように湾曲するが、第1のフィードローラと第2のフィードローラとにより搬送することにより、最下の記録材を、その上の記録材とは分離して搬送できる。さらに、分離壁体により最下の記録材を効率よく分離して、記録材を一枚ずつ、高い信頼性で下側に供給できる。
【0009】
分離壁体に最下の記録材の給紙方向の端が当たる位置、すなわち、分離壁体の分離位置と第1のフィードローラとの間隔は、積み上げられた記録材の給紙方向の長さ、すなわち、記録材の給紙長の1/4〜3/4倍の範囲内であることが望ましい。分離位置と第1のフィードローラとの間隔は、記録材の給紙長の1/3〜2/3倍の範囲内であることがさらに好ましい。上記の範囲に第1のフィードローラを配置することにより、第1のフィードローラで積み上げられた記録材の主な荷重を受けることができる。第1のフィードローラは、積み上げられた記録材の重心近傍、すなわち、分離位置と第1のフィードローラとの間隔は、記録材の給紙長の1/2倍の前後の適当な範囲内であることが望ましい。
【0010】
第1のフィードローラの位置が重心近傍から後方に、分離位置から離れ過ぎると第1および第2のフィードローラとの距離が開き過ぎたり、記録材の湾曲が大きくなり過ぎて記録材を支持できなくなったり、スムーズに給紙できなくなる。一方、第1のフィードローラの位置が前方に、分離位置に近すぎると、第1および第2のフィードローラとの距離が短過ぎて記録材の主な荷重をフィードローラで支持できず、スムーズに給紙できなくなる可能性がある。第1のフィードローラと第2のフィードローラとにより、少なくとも第1のフィードローラと第2のフィードローラとの間では積み上げられた記録材が支持されることが有用である。
【0011】
また、積み上げられた記録材の最上の記録材の給紙方向の端側を加圧するための押さえ部材を設けることが望ましい。積み上げられた記録材の端側に上から圧力を加えて第2のフィードローラへ押しつけることにより、積み上げられた記録材の枚数が減ったときに第2のフィードローラの駆動力を確保できる。
【0012】
第1のフィードローラへ駆動力を供給し、給紙方向に最下の記録材を搬送するように駆動した後、最下の記録材の反給紙方向の端が第1のフィードローラを通過する前または直後に第1のフィードローラへの駆動力を止める駆動ユニットを有することが望ましい。次の紙が送りだされ前の紙と一部が重なって送られること(重送)を防止できる。最下の記録材の反給紙方向の端が第1のフィードローラを通過する前または直後のタイミングは、適当なところに設置した紙センサー、第1のフィードローラの負荷が瞬間的に増加したり、第1のフィードローラに接している記録材の動きが瞬間的に停止したりすることなどにより検出できる。
【0013】
本発明の他の態様の1つは、上記の供給ユニットと、供給ユニットの下側に配置された印刷機構と、供給ユニットから印刷機構へ記録材を導くための供給路とを有する装置、たとえばプリンタである。
【0014】
本発明のさらに異なる態様の1つは、上記の供給ユニットを複数有する供給装置(マルチトレイ)である。これら複数の供給ユニットは上下に積み重ねることができる。複数の供給ユニットをそれぞれの分離壁体が上下に並ぶように積み上げ、それぞれの分離壁体から出力された記録材を下側に導くための記録材ガイドを設けることが望ましい。
【0015】
さらに、本発明の異なる態様の1つは、上記の供給装置(マルチトレイ)と、供給装置の下側に配置された印刷機構と、供給装置から印刷機構へ記録材を導くための供給路とを有する装置である。このマルチトレイを備えた装置は、サイズの異なる記録用紙、封筒、薬袋などに印刷する装置に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1に本発明の実施形態の1つのプリンタの概略構成を示している。このプリンタ1は、ハウジング2と、ハウジング2の上に搭載されたマルチトレイ10と、ハウジング2の下側に挿入されたシングルトレイ3と、ハウジング2に収納された印刷機構5とを備えている。印刷機構5は、たとえば、インクジェット方式であり、レーザプリンタ、サーマルプリンタなどの他の方式であってもよい。プリンタ1は、ハウジング2の上に搭載されたマルチトレイ10から下側に向かって出力された記録材を印刷機構5に導くための供給路6を備えている。マルチトレイ10は、幾つかのサイズの薬袋9を記録材として収納可能な供給装置であり、マルチトレイ10から、所望のサイズの薬袋9が供給路6を介して印刷機構5に供給される。プリンタ1では、マルチトレイ10から供給された薬袋9に処方および/または注意事項などが印刷され、ハウジング2の前方の排出トレイ4に出力される。プリンタ1は、供給路6を切り替えることにより、ハウジング2の下側に挿入されたシングルトレイ3の中の印刷用紙8を印刷機構5に供給し、印刷することができる。マルチトレイ10には、薬袋9に限らず、種々のサイズの印刷用紙8などのシート状の記録材を収納することができる。以降では、これらシート状の印刷対象物を記録材9と呼ぶことにする。
【0017】
図2にマルチトレイ10の外観を示している。このマルチトレイ10はハウジング2に着脱可能であり、上下に積み重ねられた3つの供給ユニット20と、それぞれの供給ユニット20から出力された記録材9を印刷機構5に繋がる供給路6に導くためのガイド(記録材ガイド)11とを備えている。ガイド11に形成される出力路12の下端近傍には、記録材9の先端が通過することを検出するためのセンサー(紙センサー)15が配置されている。
【0018】
図3に、供給ユニット20の1つの外観を示している。図4に、供給ユニット20の収納体21からカバー29と、押さえ部材50と、駆動機構60とを取り外した状態を展開図により示している。図5に、収納体21から第1のフィードローラ31と、第2のフィードローラ32と、分離壁体40とを取り外した状態を展開図により示している。さらに、図6に、供給ユニット20の概略構成を断面図により示している。
【0019】
収納体(トレイ)21は、底壁22と、両側壁23aおよび23bとを備え、給紙方向Xに長く、内部に複数枚のシート状、たとえばA4版の長方形の記録材9を積み上げた状態で収納できるようになっている。以降では、記録材90は積み上げられた状態の記録材9の束を示し、記録材91は最下の記録材9を示し、記録材99は最上の記録材9を示す。
【0020】
トレイ21の給紙方向Xの端には分離壁体40が取り付けられている。横長の分離壁体40のほぼ下半分は、前方(給紙方向Xのプラス方向、図面上の右側)に向かって傾き、記録材9の供給方向となる下側に向かって開いた分離壁41が形成されている。記録材9の剛性などの条件によるが、分離壁41は、トレイ21の底壁(底面)22に垂直な方向に対し15〜25度程度傾いていることが望ましい。典型的には、分離壁41は、底壁(底面)22に垂直な方向に対し20度程度傾いていることが望ましい。トレイ21に収納された最下層92の複数の記録材9の給紙方向Xの端9aが分離壁41にあたり、最下の記録材91が分離され、トレイ21の底壁22と分離壁41との間の出力口(供給口)49からガイド11に形成される出力路12に出力される。
【0021】
トレイ21の底壁22には、第1のフィードローラ31と、第2のフィードローラ32とが配置されている。第1のフィードローラ31は、トレイ21の給紙方向Xのほぼ中央の積み上げられた記録材90の主たる重量を受ける位置に配置されている。第1のフィードローラ31は積み上げられた記録材90の最下の記録材91に接し、給紙方向Xに最下の記録材91を搬送する。第1のフィードローラ31は、シャフト31sと、シャフト31sにより駆動される複数のゴムローラ部31gとを含む。
【0022】
第2のフィードローラ32は、積み上げられた記録材90の給紙方向Xの端側90sで最下の記録材91に接するように配置されている。第2のフィードローラ32は、最下の記録材91を第1のフィードローラ31の給紙速度V1以下、すなわち、同じ速度または若干低い速度で給紙方向Xへ搬送する。第2のフィードローラ32も、シャフト32sと、シャフト32sにより駆動される複数のゴムローラ部32gとを含む。
【0023】
これら第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32は、側壁23bに装着された駆動機構60により駆動される。駆動機構60は、マルチトレイ10の状態ではカバー69により覆われている。駆動機構60は、モータ61と、モータ61と第1のフィードローラ31のシャフト31sおよび第2のフィードローラ32のシャフト32sとを接続する輪列63とを含む。輪列63は、第2のフィードローラ32の搬送速度(給紙速度)V2が第1のフィードローラ31の搬送速度(給紙速度)V1と同じまたは若干低くなるようにモータ61の動力を伝達する機能と、モータ61から第1のフィードローラ31への伝達動力を適当なタイミングでカットできる切り替え機構65とを含む。切り替え機構65は遊星ギアなどの公知の構成を使用できる。
【0024】
駆動機構60は、さらに、第1のフィードローラ31の回転速度を検出するための速度センサー66を含む。駆動機構60では、メカ的または電気的な制御により、速度センサー66により第1のフィードローラ31の回転速度が瞬間的に低下したこと、または、紙センサー15により記録材9の先端9aが出力路12の所定の位置に達したことにより、第1のフィードローラ31への動力の供給を停止する。したがって、第1のフィードローラ31は最下の記録材91を給紙方向Xへ搬送した後、最下の記録材91の反給紙方向の端9bが第1のフィードローラ31を通過する前または直後に回転が止まる。このため、第2のフィードローラ32により最下の記録材91を搬送している間に、第1のフィードローラ31により次の記録材9を搬送することを防止できる。
【0025】
第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32は、それぞれ軸受け35によりトレイ21の底壁22に固定されている。軸受け35は、トレイ21に記録材9を挿入する方向、すなわち、トレイ21の後方(Xマイナス方向)に傾斜している。このため、軸受け35は、記録材9またはその束90をトレイ21に入れたときに、記録材9または束90を第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32の上にスムーズに積み上げる紙ガイドとしての機能を備えている。
【0026】
この供給ユニット10に採用されている押さえ部材50は、積み上げられた記録材(記録材の束)90の最上の記録材99の上に乗せられる錘タイプの部材である。押さえ部材50は、後方に延びたフック状の部分51と、平坦な錘となる部分52とを含み、錘となる部分52が記録材の束90の給紙方向Xの端側(前方)、すなわち、第2のフィードローラ32の上方を中心として、第1のフィードローラ31の上方にかかる領域に乗り、記録材の束90を上方から加圧する。トレイ21の両側壁23aおよび23bの給紙方向Xの端側には下側に凸で後方に傾斜した台形状の開口24が設けられており、押さえ部材50の両側の突き出た部分55が開口24に入るようになっている。このため、押さえ部材50のフック状の部分51を持って後方に引くと、押さえ部材50は開口24に沿って上方に移動し、押さえ部材50とトレイ21の底壁22との間が開き、記録材の束90を後方から挿入し、記録材9をトレイ21に補給できる。その後、押さえ部材50を開放すると、開口24に沿って押さえ部材50の錘となる部分52が前方へ移動し、記録材の束90の前方の部分を錘となる部分52により上から加圧できる。
【0027】
図7に、供給ユニット20において記録材9が分離されて一枚ずつ下側へ供給される状態を示している。この供給ユニット20においては、第1のフィードローラ31により、上に積み上げられた記録材90の主たる重量を受ける。したがって、積み上げられた記録材90が大量であっても、少なくとも最下の記録材91を第1のフィードローラ31により搬送できる。たとえば、記録材9が記録用紙であれば数10枚から100枚程度あるいはそれ以上の記録用紙をトレイ21に収納し、一枚ずつ供給できる。
【0028】
さらに、第2のフィードローラ32により、積み上げられた記録材90の給紙方向Xの端側(前方)9aを支持し、最下の記録材91を搬送する。したがって、第1のフィードローラ31により搬送された最下の記録材91を、最後まで(後ろ端まで)供給ユニット(給紙ユニット)20から出力できる。
【0029】
第2のフィードローラ32と、分離壁体40の分離壁41に最下の記録材91の給紙方向の端が当たる位置、すなわち、分離壁体40の分離位置45との距離L2は、5mm〜35mm程度が好ましく、10〜30mm程度がさらに好ましく、15〜25mm程度がいっそう好ましく、この例では20mm程度にしている。また、分離壁41の角度(トレイ21の底面22の垂線に対する角度)θは、15〜25度程度が好ましく、この例では20度に設定している。分離壁41の角度θと、分離壁41から第2のフィードローラ32までの距離L2の最適な値は、記録材9の剛性あるいは柔軟性、たとえば、記録材9が紙であれば紙腰の強さなどにより変わる可能性がある。しかしながら、上記の組み合わせは一般的な記録用紙あるいは封筒において有用である。
【0030】
供給ユニット20において、第1のフィードローラ31と第2のフィードローラ32とにより支持され、積み上げられた記録材の束90は、第1のフィードローラ31と第2のフィードローラ32との間95で自重により(重力により)下側に凸になるように湾曲する。しかしながら、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32により上に積み上げられた記録材90を搬送することにより、最下の記録材91のみを搬送することができる。すなわち、第2のフィードローラ32単独では、記録材同士の摩擦力により最下の記録材91を引っ張りだすことができない。さらに、第2のフィードローラ32単独で引っ張ることにより最下の記録材91に張力が加わり最下層92の記録材と最下の記録材91が密着するので、上下の記録材9の摩擦力は増大し、ますます最下の記録材91を搬送することが難しくなる。
【0031】
これに対し、記録材の束90の荷重が加わる第1のフィードローラ31を駆動することにより、最下の記録材91に張力が加わることを防止でき、最下の記録材91を下側に凸の状態で給紙方向Xに送り出すことができる。さらに、第2のフィードローラ32が最下の記録材91を搬送できない状態であると、最下の記録材91はさらに下側に凸に撓み(湾曲し)、その上の記録材9と分離され、その上の記録材9との摩擦力が減り、第2のフィードローラ32が最下の記録材91を搬送し易い状況を作り出す。このため、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32の搬送力は、最下の記録材9にはそれぞれのローラ31および32と記録材9との接触により効率よく伝達されるが、上層の記録材9に伝達されにくくなる。したがって、最下の記録材91に加わる搬送力に対し、その上の記録材9に加わる搬送力を低減でき、分離壁41により最下の記録材91を効率よく分離できる。このため、供給ユニット20においては、記録材9を一枚ずつ、高い信頼性で下側に供給できる。
【0032】
第1のフィードローラ31により記録材90の荷重を主に受けるためには、分離壁41の分離位置45と、第1のフィードローラ31との間隔(距離)L1は、積み上げられた記録材90の給紙方向の長さ(給紙長)L0の1/4〜3/4倍の範囲内であることが望ましい。この距離L1は、記録材の給紙長L0の1/3〜2/3倍の範囲内であることがさらに好ましい。第1のフィードローラ31で積み上げられた記録材90の主な荷重を最も効率よく受けることができるのは、第1のフィードローラ31を、積み上げられた記録材90の重心あるいはその近傍に配置することである。すなわち、分離位置45と第1のフィードローラ31との間隔L1は、記録材の給紙長L0の1/2あるいはその近傍であることがさらに望ましい。しかしながら、幾つかのタイプのサイズの記録材9に対して同じ供給ユニット20が使用できることが好ましく、さらに、供給ユニット20に、あるサイズの記録材9を縦でも横でもセットできることが望ましい。
【0033】
本例の供給ユニット20においては、分離位置45と第1のフィードローラ31との間隔L1は、100mmに設定している。この距離L1であれば、A4版(210mm×297mm)を縦にセットした場合のL1/L0は0.34であり、横にセットした場合のL1/L0は0.48である。A5版(148mm×210mm)を縦にセットした場合のL1/L0は0.48であり、横にセットした場合のL1/L0は0.67である。したがって、A4版、B5版(182mm×257mm)およびA5版程度の記録材9であれば、縦でも横でもセットできる。
【0034】
比L1/L0が上記の範囲より大きいと、第1のフィードローラ31の位置が重心近傍から後方に離れ、また、分離位置45から離れ過ぎる。比L1/L0が上記の範囲を超えると、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32との距離L12が長くなりすぎる。したがって、最下層の記録材92の湾曲が大きくなり過ぎて、記録材の束90をこれらのローラ31および32で支持できなくなる可能性がある。たとえば、最下層の記録材92が湾曲して、トレイ21の底壁22に接すると、底壁22との摩擦が発生し搬送できなくなる可能性がある。また、底壁22に接する最下層の記録材92が上下に分離されないので、記録材9を一枚ずつ分離できず、重送される可能性がある。
【0035】
比L1/L0が上記の範囲より小さいと、第1のフィードローラ31の位置が前方になり、分離位置45に近すぎる。比L1/L0が上記の範囲より小さいと、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32との距離L12が短過ぎて、第1のフィードローラ31が前方にあるので、記録材の束90の主な荷重を第1のフィードローラ31で支持できず、第1のフィードローラ31の搬送力が不足する可能性がある。
【0036】
このように、本例の供給ユニット20は、積み上げられた記録材90を前後に配置された2つのフィードローラ31および32で支持することにより、2つのフィードローラ31および32の間で下に湾曲する記録材であっても最下の記録材91を分離して搬送できる。さらに、平板状の錘52により記録材の束90の上側を加圧することにより、記録材9の残量が少ないときは、錘52により記録材9を上から加圧することにより、フィードローラ31および32による搬送力を確保できる。
【0037】
第1のフィードローラ31の搬送速度V1よりも第2のフィードローラ32の搬送速度V2を遅くすることが好ましい。この速度差により、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32の間95で最下層の複数の記録材92をさらに強制的に下側に湾曲できる。このため、最下層の記録材92をいっそう上下に分離しやすい。速度差は、第1のフィードローラ31および第2のフィードローラ32の間の記録材95が湾曲し過ぎてトレイ21の底壁22に接してしまわない程度にすることが望ましい。
【0038】
このように供給ユニット20は、フィードローラの上に大量の記録材を搭載することができ、一枚ずつ分離して下方に供給できる。また、大きさが同じ、または大きさの異なる複数の供給ユニット20を上下に積み、分離壁41の方向を合わせ出力口49の向きを揃えることにより、複数のサイズの記録材9や向きの異なる記録材9をあらかじめ収納しておくことができるマルチトレイ(供給装置)10を提供できる。そして、供給ユニット20またはマルチトレイ10は、プリンタ1のハウジング2の上にセットすることができ、印刷機構5の上にマルチトレイ10が設置された新しいタイプのプリンタ1を提供できる。
【0039】
マルチトレイ10が上側にあるプリンタ1は、マルチトレイ10にアクセスしやすくなるので、種類の異なる記録材9をマルチトレイ10にセットしたり、種類の異なる記録材9をマルチトレイに入れ替えたりするのが容易である。したがって、このプリンタ1は、多種多様なサイズの記録材9を入れ替えて印刷する必要があるプリンタ、たとえば、薬袋、封筒などに印刷するプリンタに適している。また、印刷機構を下、給紙用のトレイを上というデザインを採用することが可能となるので、記録用紙の補給が高い位置で行え、作業員の労力を低減できる。このため、多量の記録用紙を取り扱う必要のある業務用の印刷装置にも適している。
【0040】
プリンタの床面積を最小にする方法は給紙装置をプリンタの下、あるいは上に載せる方法である。上に載せる場合には紙を下の紙から供給しなければならない。この方法は紙の重みのため大容量を扱うことは難しい。本発明により、下の紙を送り出す大容量の給紙装置を提供できる。なお、一番下の紙の後端が第1のフィードローラを通過すると、第1のフィードローラの回転を停止しなければならない。このため、紙の後ろ端が第1のフィードローラを通過したときの検出方法として、紙の先端の位置を光検出器などの紙センサーで検出すること、第1のフィードローラの近辺における紙の動きを、ローラの速度や負荷により検出することを示しているが、検出方法はこれらに限定されるものではない。たとえば、第1のフィードローラの後方に光学式のセンサーを設け、反射光で紙が動いているか否かを検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】マルチトレイを搭載したプリンタの概略構成を示す図。
【図2】マルチトレイの外観を示す斜視図。
【図3】マルチトレイを構成する1つの供給ユニットの外観を示す斜視図。
【図4】供給ユニットの収納体(トレイ)からカバーと、押さえ部材と、駆動機構とを取り外した状態を示す展開図。
【図5】トレイから第1のフィードローラと、第2のフィードローラと、分離壁体とを取り外した状態を示す展開図。
【図6】供給ユニットの概略構成を示す断面図。
【図7】記録材が供給される様子を示す断面図。
【符号の説明】
【0042】
1 プリンタ、 5 印刷機構
10 供給装置(マルチトレイ)
20 供給ユニット
31 第1のフィードローラ、 32 第2のフィードローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のシート状の記録材を積み上げた状態で収納するための収納体と、
前記収納体に積み上げられた記録材の主たる重量を受ける位置で、前記積み上げられた記録材の最下の記録材に接し、給紙方向に前記最下の記録材を搬送するように配置された第1のフィードローラと、
前記積み上げられた記録材の前記給紙方向の端側で前記最下の記録材に接し、前記最下の記録材を前記第1のフィードローラの給紙速度以下で前記給紙方向へ搬送するように配置された第2のフィードローラと、
前記積み上げられた記録材の少なくとも最下層の複数の記録材の前記給紙方向の端が当たり、前記最下の記録材を下側に導くように傾いた分離壁体とを有する供給ユニット。
【請求項2】
請求項1において、前記分離壁体に前記最下の記録材の前記給紙方向の端が当たる位置と前記第1のフィードローラとの間隔は、前記積み上げられた記録材の前記給紙方向の長さの1/4〜3/4倍の範囲内である、供給ユニット。
【請求項3】
請求項1または2において、前記分離壁体に前記最下の記録材の前記給紙方向の端が当たる位置と前記第1のフィードローラとの間隔は、前記積み上げられた記録材の前記給紙方向の長さの1/3〜2/3倍の範囲内である、供給ユニット。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記第1のフィードローラは、前記積み上げられた記録材の重心近傍に接するように配置されている、供給ユニット。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれかにおいて、前記積み上げられた記録材の最上の記録材の前記給紙方向の端側を加圧するための押さえ部材を有する供給ユニット。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかにおいて、前記第1のフィードローラへ駆動力を供給し、前記給紙方向に前記最下の記録材を搬送するように駆動した後、前記最下の記録材の反給紙方向の端が前記第1のフィードローラを通過する前または直後に前記第1のフィードローラへの駆動力を止める駆動ユニットを有する供給ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の供給ユニットと、
前記供給ユニットの下側に配置された印刷機構と、
前記供給ユニットから前記印刷機構へ記録材を導くための供給路とを有する装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載の供給ユニットを複数有する供給装置であって、
前記複数の供給ユニットのそれぞれの前記分離壁体が上下に並ぶように、前記複数の供給ユニットは上下に積み重ねられており、
さらに、前記それぞれの分離壁体から出力された記録材を下側に導くための記録材ガイドを有する供給装置。
【請求項9】
請求項8に記載の供給装置と、
前記供給装置の下側に配置された印刷機構と、
前記供給装置から前記印刷機構へ記録材を導くための供給路とを有する装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−149998(P2010−149998A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−330211(P2008−330211)
【出願日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【出願人】(599020519)株式会社イーエムシステムズ (4)
【出願人】(597103067)有限会社エフ・アンド・エフ (18)
【Fターム(参考)】