説明

供試体作成方法

【課題】実際の施工時に近い状態の供試体で圧縮試験を行うことができる供試体作成方法を得る。
【解決手段】本発明の供試体作成方法は、現地地盤の評価対象層から採取した採取土壌とセメントを混合した混合試料Lを、透水性を有する袋体10に入れる詰込み工程と、混合試料Lが入れられた袋体10を内部が加圧可能とされた養生容器20に配置する配置工程と、養生容器20内の圧力が現地地盤の評価対象層の土水圧に相当する圧力となるように養生容器20内を加圧し、袋体10に入れた混合試料Lを所定期間養生する加圧養生工程と、を有している。この供試体作成方法によれば、混合試料Lから染み出した水は、袋体10の側面又は底面から外側の水Wに向けて各方向に均等に染み出る。これにより、供試体30内部の疎密状態が、現地地盤の評価対象層とほぼ同等となり、実際の施工時に近い状態の供試体30で圧縮試験を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供試体作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤改良やプレボーリング拡大根固め工法では、ソイルセメント部分の必要となる強度が決まっている。地盤の状態は施工場所により様々に変化するため、実際の地盤を採取し、セメント量を変化させた数種類のセメントミルクと採取地盤とを調合して供試体を作成し、この供試体の一軸圧縮強度を確認することで、対象地盤に用いるセメントの配合量を決定する室内配合試験が行われている。
【0003】
室内配合試験に用いる供試体の作成方法として、作成した供試体に圧力を作用させて養生する方法がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
特許文献1の供試体作成方法は、モールドに土と安定材を入れて固めた後、対象物をモールドから取り出して内部の気圧が高められている養生室入れ、空気中養生又は水浸養生により供試体を作成している。
【0005】
しかし、特許文献1の供試体作成方法では、供試体となる対象物を養生室内で保持する袋の透水性が考慮されていないため、養生中に対象物に圧力が作用しているときに、対象物の内側からしみ出る水の排水状態が実際の地盤と同様とはならず、実際の地盤に近い構成の供試体が得られなかった。
【0006】
一方、特許文献2の供試体作成方法は、処理土を円筒形型枠に充填すると共に上部及び下部の少なくとも一方に水のみを通す多孔板を設け、上部から荷重を負荷することで供試体を作成している。
【0007】
しかし、特許文献2の供試体作成方法では、供試体となる対象物の上部から加圧するのみで側面(横方向)からの加圧を行っていないため、対象物の内側からしみ出る水の排水状態が実際の地盤と同様とはならず、実際の地盤に近い構成の供試体が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−157670
【特許文献2】特開2001−279653
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、実際の施工時に近い状態の供試体で圧縮試験を行うことができる供試体作成方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の請求項1に係る供試体作成方法は、地盤の評価対象層から採取した採取土壌とセメントを混合した混合試料を、透水性を有する袋体に入れる詰込み工程と、前記混合試料が入れられた前記袋体を内部が加圧可能とされた養生容器の中に吊下げる吊下げ工程と、前記養生容器内の圧力が地盤の評価対象層の土水圧に相当する圧力となるように前記養生容器内を加圧し、前記袋体に入れた混合試料を所定期間養生する加圧養生工程と、を有する。
【0011】
上記構成によれば、袋体に入れた混合試料に地盤の評価対象層と同等の圧力が作用するため、混合試料から染み出た水は、透水性を有する袋体の外側へ染み出る。これにより、製作された供試体内部の疎密状態が、地盤の評価対象層とほぼ同等となり、実際の施工時に近い状態の供試体で圧縮試験を行うことができる。
【0012】
本発明の請求項2に係る供試体作成方法は、前記加圧養生工程は、前記養生容器内に水を充填してから地盤の評価対象層の土水圧に相当する上載圧を水に作用させる。この構成によれば、袋体から染み出た水が水中に拡散していくので、地盤の評価対象層に近い状態で袋体の内側の水の染み出しが行える。また、水槽を養生容器として利用できるので、供試体の製作コストを低減できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、上記構成としたので、実際の施工時に近い状態の供試体で圧縮試験を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係る供試体作成方法の手順を示した説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係る袋体に混合試料を注入して密封した状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る養生容器内の混合試料の養生状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の供試体作成方法の実施形態を図面に基づき説明する。まず、供試体作成方法の手順について説明する。
【0016】
図1(a)に示すように、袋体10を準備する。袋体10は、麻又はポリエステル等の繊維からなる円筒状の土嚢袋で構成されている。また、袋体10は、上端に開口部10Aが形成されており、この開口部10Aの外周面に紐(図示省略)が設けられている。これにより、袋体10では、内側に試料を注入後、紐を縛ることで開口部10Aが閉塞され、袋体10内が密閉されるようになっている。
【0017】
袋体10の透水性は、袋体10の一部を切り取って採取した試料の透水係数k1をJIS_A_1218(土の透水試験方法)により測定することで得られる。透水係数kの単位はcm/sである。ここで、JIS_A_1218の土の透水試験方法は、定水位透水試験と変水位透水試験の2種類ある。
【0018】
定水位透水試験は、一定の断面と長さをもつ供試体の中を、一定の水位差の下で一定時間内に浸透する水量を測定する試験である。具体的には、越流水槽の内側に透水円筒を配置し、透水円筒の中に供試体を配置すると共に供試体の上下を金網、フィルター、及び有孔板で挟み、越流水槽内の水位と透水円筒内の水位との差が一定(ただし、越流水槽内の水位<透水円筒内の水位)となるように透水円筒内に注水し、時間を計測しながら越流水槽から溢れた水量をメスシリンダーで測定する試験である。
【0019】
変水位透水試験は、一定の断面と長さをもつ供試体の中を、ある水位差を初期状態として浸透するときの水位の降下量と、その経過時間を測定する試験である。具体的には、越流水槽の内側に透水円筒を配置し、透水円筒の中に供試体を配置すると共に供試体の上下を金網、フィルター、及び有孔板で挟み、透水円筒の上部に真っ直ぐにスタンドパイプを配置して、スタンドパイプから透水円筒内に水を供給したときの時刻t1での越流水槽内の水位とスタンドパイプ中の水位との差h1を測定し、さらに水を供給したままで、時刻t2での越流水槽内の水位とスタンドパイプ中の水位との差h2を測定する試験である。
【0020】
一般的に、定水位透水試験は透水係数kの比較的大きいものに対して適用され、変水位透水試験は透水係数の比較的小さいものに適用される。
【0021】
ここで、予め、地盤改良対象である現地地盤から採取した試料の透水係数k2をJIS_A_1218により測定しておき、材質の異なる複数の袋体10について得られた透水係数k1と、現地地盤の透水係数k2とを比較して、値の近いものを選定することで、現地地盤の透水性に近い透水性を有する袋体10が選定される。
【0022】
続いて、図1(b)に示すように、現地地盤から採取した採取土壌(砂質土)と配合割合が既知のセメントスラリーとを撹拌混合して混合試料Lとし、この混合試料Lを袋体10の内部に注入する。そして、混合試料Lの注入が完了した後、袋体10の紐(図示省略)を縛り、袋体10の内部を密閉する。
【0023】
図2に示すように、袋体10の混合試料Lが注入された部位は、底面の直径Dが50mmの円柱状となっている。ここで、袋体10には、底面から上方へ高さh1(h1=100mm)の位置に切断線C1が表示されており、さらに切断線C1の位置から上方へ高さh2(h2=100mm)の位置に切断線C2が表示されている。なお、混合試料Lは、切断線C2の位置から上方へ高さh3(h3=100mm)の位置まで注入されており、混合試料Lの注入高さは、合計でh1+h2+h3=300mmとなっている。
【0024】
続いて、図1(c)に示すように、養生容器20内に袋体10を配置する。養生容器20は、上部が開口された直方体状の容器であり、内側には吊し棒22が水平方向に取り付けられている。袋体10は、上端にフック24が取り付けられ、吊し棒22にフック24が引っ掛けられることにより吊下げられる。
【0025】
袋体10を吊下げた後、袋体10全体が水没するレベルまで養生容器20内に水Wを注入する。水Wの注入終了後、養生容器20の内壁面と隙間をあけないようにして水Wの水面上に載荷板26を配置する。そして、載荷板26上に載荷物28を載せて養生容器20内を加圧する。なお、載荷物28の重さは、養生容器20内の圧力が現地地盤の評価対象層の土水圧に相当する圧力となるように選定されている。このように養生容器20内を加圧した状態で、一定期間(例えば、4週間)の養生を行う。
【0026】
続いて、図1(d)、(e)、(f)に示すように、一定期間の養生後、養生容器20から袋体10を取り出し、袋体10内の固化した混合試料Lを取り出す。取り出された混合試料Lは、前述の切断線C1、C2に合わせて切断され、供試体30が得られる。なお、供試体30は、混合試料L中のセメント量が変えられて数種類準備される。
【0027】
続いて、得られた数種類の供試体30は、図示しない圧縮試験機によって一軸圧縮試験が行われる。一軸圧縮試験は、供試体30の上面から一軸圧縮力Pを鉛直方向下向きに加えることで行われ、一軸圧縮強さqは、q=P/A(Aは供試体30の水平断面積)で求められる。
【0028】
次に、本発明の実施形態の作用について説明する。
【0029】
図3に示すように、袋体10を養生容器20内で養生している間は、袋体10の透水性が現地地盤の透水性に近い状態であり、且つ袋体10内の混合試料Lに作用する圧力が現地地盤の評価対象層の土水圧に相当する圧力となっているため、袋体10内の混合試料Lから染み出した水は、袋体10の側面又は底面から外側の水Wに向けて各方向に均等に染み出る。これにより、従来のような混合試料Lの上面側にのみブリージング水が染み出すことを防ぐことができ、製作された供試体30内部の疎密状態が、現地地盤の評価対象層とほぼ同等となる。このため、実際の施工時に近い状態の供試体30で一軸圧縮試験を行うことができる。
【0030】
また、上記の加圧養生工程では、養生容器20内に水Wを充填してから現地地盤の評価対象層の土水圧に相当する上載圧を水に作用させているため、袋体10から染み出た水が水W中に拡散していく。これにより、現地地盤の評価対象層に近い状態で袋体10の内側から水の染み出しを行える。さらに、一般の水槽を養生容器20として利用できるので、特別な養生容器を準備する必要が無く、供試体30の製作コストを低減できる。
【0031】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
【0032】
養生容器20内の袋体10の加圧は、水Wに換えて空気を介して行ってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10 袋体
20 養生容器
30 供試体
L 混合試料
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤の評価対象層から採取した採取土壌とセメントを混合した混合試料を、透水性を有する袋体に入れる詰込み工程と、
前記混合試料が入れられた前記袋体を内部が加圧可能とされた養生容器の中に吊下げる吊下げ工程と、
前記養生容器内の圧力が地盤の評価対象層の土水圧に相当する圧力となるように前記養生容器内を加圧し、前記袋体に入れた混合試料を所定期間養生する加圧養生工程と、
を有する供試体作成方法。
【請求項2】
前記加圧養生工程は、前記養生容器内に水を充填してから地盤の評価対象層の土水圧に相当する上載圧を水に作用させる請求項1に記載の供試体作成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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