説明

便器及びその配管における尿石の付着防止方法

【課題】 洗浄水に特別な薬品を添加したり配管等に特別な設備を設けることなしに、長期にわたり尿石の付着を抑制すると共に、配管等の目詰まりを防止するようにした便器及びその配管における尿石の付着防止方法を提供する。
【解決手段】 便器及びその配管の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料又は合成樹脂で構成し、金属材料製とした場合の排泄物と接触する部分における表面粗さRzを1.65以下とし、合成樹脂製とした場合の排泄物と接触する部分の表面に導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成し、その表面粗さRzを1.65以下とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は便器及びその配管における尿石の付着防止方法に関し、さらに詳しくは、洗浄水に薬品等を添加したり配管等に特別な設備を設けることなしに、長期にわたり尿石の付着を抑制すると共に、配管等の目詰まりを防止するようにした便器及びその配管における尿石の付着防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機、船舶、車両などに設置されている便器(特に、小便器)及びその配管には、排泄された尿の中に含まれるカルシウムを主成分とする尿石が付着し、これが蓄積されて配管などを詰まらせてしまうという問題がある。
【0003】
この対策として、従来から、洗浄水に尿石の抑制や溶解を促進する薬品を添加したり(例えば、特許文献1、2参照)、排泄物を電気的に処理して尿石の発生を抑制するようにした(例えば、特許文献3、4参照)提案がなされている。
【0004】
しかしながら、前者の提案では特別な薬品の調達とその維持管理に多くの時間と費用を投入する必要があり、後者の提案では新たに特別な設備を導入する必要があり、いずれも簡単な対応策とはいえず、未だ改善の余地を残していた。
【特許文献1】特開平7−304604号公報
【特許文献2】特開2001−172682号公報
【特許文献3】特開平11−336169号公報
【特許文献4】特開2000−157943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の目的は、かかる従来の問題点を解消し、洗浄水に特別な薬品を添加したり配管等に特別な設備を設けることなしに、長期にわたり尿石の付着を抑制すると共に、配管等の目詰まりを防止するようにした便器及びその配管における尿石の付着防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためのこの発明の便器及びその配管における尿石の付着防止方法は2つの発明からなり、第1の発明は、便器及びその配管の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料で構成すると共に、少なくとも該便器及びその配管の排泄物と接触する部分における表面粗さRzを1.65以下とすることを要旨とする。
【0007】
また、第2の発明は、便器及びその配管の本体を合成樹脂で構成すると共に、少なくとも該便器及びその配管の排泄物と接触する部分の表面に導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成し、該皮膜の表面粗さRzを1.65以下とすることを要旨とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明の便器及びその配管における尿石の付着防止方法は、便器及びその配管の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料又は合成樹脂で構成し、金属材料製とした場合の排泄物と接触する部分における表面粗さRzを1.65以下とし、合成樹脂製とした場合の排泄物と接触する部分の表面に導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成し、その表面粗さRzを1.65以下としたので、尿の中のカルシウム分が変化して生成した尿石が便器や配管の表面に付着し難くなり、洗浄水に特別な薬品を添加したり配管等に特別な設備を設けることなく、長期にわたり尿石の付着を抑制すると共に、配管等の目詰まりを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照してこの発明の実施形態を説明する。
【0010】
図1は航空機に搭載される循環式トイレの概要を示す説明図で、1は便器、2は循環式貯槽、3は配管、4はフィルターである。
【0011】
この発明の便器及びその配管における尿石の付着防止方法(以下、単に尿石付着防止方法という)は、便器1及びその配管3の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料又は合成樹脂により構成する。
【0012】
そして、便器1及びその配管3の本体を金属材料で構成する場合には、少なくとも排泄物と接触する部分の表面粗さRzを1.65以下、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.8〜1.4となるように形成する。一方、便器1及びその配管3の本体を合成樹脂で構成する場合には、少なくとも排泄物と接触する部分の表面に導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成し、その表面粗さRzを1.65以下、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.8〜1.4となるように形成する。
【0013】
これにより、尿の中のカルシウム分が変化して生成された尿石が便器1や配管3の表面に付着し難くなり、洗浄水に特別な薬品を添加したり配管3等に特別な設備を設けることなしに、長期にわたり尿石の付着を抑制すると共に、配管3等の目詰まりを防止することができる。
【0014】
ここで、金属材料の表面粗さRz及び皮膜の表面粗さRzが1.65超では尿石が付着し易くなる。なお、この発明において、皮膜の表面粗さRzは0.05程度にすることもできる。この発明における表面粗さRzとは、JIS B0031に規定する10点平均粗さをいう。
【0015】
この発明において、金属材料としては、ステンレス合金、インコネル合金、チタン合金等の導電性及び耐蝕性を備えた材料が好ましく使用される。そして、これら金属材料は、電気抵抗率が0.7〜0.8μΩ・mのものを使用するとよい。これにより便器1及びその配管3への尿石の付着を一層抑制することができる。
【0016】
また、この発明における合成樹脂としては、通例、ポリフェニレンオキサイドやポリアミドなどを使用するとよい。合成樹脂などの絶縁体をそのまま使用すると、表面に尿石の付着が顕著になるため、合成樹脂の表面には導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成する。皮膜の材料としては、クロム又はニッケルとすることが好ましい。ここで、クロム又はニッケルの微粒子を付着させる方法は特に限定されるものではないが、スパッタリングや電気鍍金により施工するとよい。
【0017】
さらに、合成樹脂の表面に形成する皮膜の材料としては、電気抵抗率が0.1〜0.5μΩ・mのものを使用するとさらによい。これにより、便器1及びその配管3への尿石の付着を一層抑制することができる。
【0018】
上述するように、この発明の尿石付着防止方法は、便器及びその配管の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料又は合成樹脂により構成し、合成樹脂製とした場合には導電性及び耐蝕性を有する微粒子からなる皮膜を形成して、排泄物と接触する部分における表面粗さを特定することにより長期にわたって尿石の付着を防止するもので、洗浄水に特別な薬品等を添加したり配管等に特別な設備を設けることなく、特別な維持管理を必要としないことから、航空機、船舶、車両などに設置される便器(特に、小便器)及びその配管等に広く適用することができる。
【実施例】
【0019】
6種の合成樹脂(A〜F)を母材として板状体(12mm×15mm)を作製し、表1に示すように、表面に皮膜を形成した試料1〜8と表面に皮膜を形成しなかった試料9〜12とをそれぞれ用意した。
【0020】
これら12種類の試料を加速付加方式により尿石の発生し始めた尿中に浸した後、各試料を取り出して尿を乾燥させる一連の作業を3回繰り返して行なった。その後、各試料をパレット上で毎分5リットル程度の水を3分間注いで水洗し、水洗直後と、表面に残存した水を軽く拭い取った後とで尿石の付着状況を観察し、その結果を、明らかに付着が確認されたものを「×」、僅かに付着が認められたものを「△」、全く付着が認められなかったものを「○」として、表1に記載した。
【0021】
【表1】

【0022】
表1より、この発明の方法を適用した試料1〜4は、付着する微粒子の表面粗さを粗くした試料5〜8及び表面に皮膜を形成しなかった試料9〜12に比較して尿石の付着が抑制されていることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】航空機に搭載される循環式トイレの概要を示す説明図である。
【符号の説明】
【0024】
1 便器
2 循環式貯槽
3 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器及びその配管の本体を導電性及び耐蝕性を備えた金属材料で構成すると共に、少なくとも該便器及びその配管の排泄物と接触する部分における表面粗さRzを1.65以下とする便器及びその配管における尿石の付着防止方法。
【請求項2】
前記金属材料の電気抵抗率が0.7〜0.8μΩ・mである請求項1に記載の便器及びその配管における尿石の付着防止方法。
【請求項3】
便器及びその配管の本体を合成樹脂で構成すると共に、少なくとも該便器及びその配管の排泄物と接触する部分の表面に導電性及び耐蝕性を備えた材料からなる微粒子を付着して皮膜を形成し、該皮膜の表面粗さRzを1.65以下とする便器及びその配管における尿石の付着防止方法。
【請求項4】
前記皮膜の材料の電気抵抗率が0.1〜0.5μΩ・mである請求項3に記載の便器及びその配管における尿石の付着防止方法。

【図1】
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