説明

便器周囲への尿飛散防止装置

【課題】男性が排尿する際に、尿が確実に便器内に排出されるようにした便器周囲への尿飛散防止装置を得る。
【解決手段】便器(1)の前部側の床(10)面に足部が嵌合する凹部(11,20)を設け、該凹部(11,20)の上部に踏み板(12,21)を開閉可能又は昇降可能に設ける。前記凹部(11,20)の深さは20cm〜30cmとする。また、前記踏み板(12,21)をスイッチ(16,23)の操作によって開閉又は昇降させる駆動装置(15,22)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、男性が排尿する際に、尿が確実に便器内に排出されるようにした便器周囲への尿飛散防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
男性が排尿する際に、排出方向が狂って尿が便器の縁部、あるいは蓋の内面等に当たって周囲に飛散したり、便器の外面に沿って垂れたりすることがある。従来は、便器が設置された床面に尿を吸収するマットを敷いたり、洋式便器の下部外周にリング状の尿吸収材を取り付けて便器の外面に沿って垂れる尿を吸収するようにしていた。
【0003】
前記従来のものは、マット、あるいはリング状の尿吸収材を定期的に取り外して洗浄したり、また、便器外周への尿の付着を防止することができないため、便器の外周を定期的に清掃する必要があり、衛生の維持に手数を要するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−336164号公報
【特許文献2】特開2007−205107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、男性が便器の前部で起立する床面を凹ませることによって、男性による排尿が確実に便器内に排出されるようにした便器周囲への尿飛散防止装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記目的を達成するために以下の如く構成したものである。即ち、請求項1に係る発明は、便器の前部側の床面に足部が嵌合する凹部を設け、該凹部の上部に踏み板を開閉可能又は昇降可能に設けるようにしたものである。
請求項2に係る発明は、前記凹部の深さを20cm〜30cmとしたものである。
請求項3に係る発明は、前記踏み板をスイッチの操作によって開閉又は昇降させる駆動装置を設けるようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に係る発明は、排尿する男性が足部を凹部に嵌合させて起立すると、排尿源(男性性器)が便器の直上方に位置し、排尿した尿が確実に便器内に排出されることになる。このため、尿が便器から周囲に飛散したり、便器の縁部に付着したりしなくなる。
請求項2に係る発明は、前記凹部の深さを20cm〜30cmにすると、排尿源が便器の直上方に効果的に接近し、便器からの尿の飛散、及び便器への尿の付着が確実に防止されることになる。請求項3に係る発明は、スイッチを操作することによって踏み板が開閉又は昇降することになるので、排尿時における踏み板の開閉又は昇降作業が簡便となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明第1実施例による踏み板の閉じ状態を示す一部断面側面図である。
【図2】本発明第1実施例による排尿姿勢状態を示す一部断面側面図である。
【図3】図1の平面図である。
【図4】本発明第2実施例による踏み板の閉じ状態を示す一部断面側面図である。
【図5】本発明第2実施例による排尿姿勢状態を示す一部断面側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1において、1は洋式便器であり、陶器製の便器本体2、プラスチック製の便座3及び蓋4を有する。前記便座3及び蓋4は、便器本体2の後部に上下回動可能に連結され、便座3は平面視リング状、あるいは前部が分割された分割リング状に形成され、大便をする際には下方に回動されて便器本体2の上縁部に当接し、排便者の臀部を支持するようになっている。また、前記蓋4は下方に回動された際に前記便座3の上面側に重なり、便座3及び便器本体2の上面を閉塞するようになっている。
【0010】
10は前記洋式便器1が設置される床である。該床10の便器本体2の前部側に位置する部位に凹部11を形成する。該凹部11は、排尿する使用者(男性)Mの足部が嵌合できるようにしたもので、本例では、図1、図3に示すように、便器本体2の前部外周を包囲するように平面視凹形に凹ませる。即ち、左右中心部の前後幅W1が20cm〜25cm、左右両側部の前後幅W2が30cm〜40cm、深さS1が20〜30cm、左右幅L1は便器本体2の左右幅よりも広幅となる50cm〜60cmとする。
【0011】
前記凹部11の上面は踏み板12によって開閉される。該踏み板12は、前記凹部11の平面面積よりも若干広くなる異形の長方形状にするとともに、左右中心部で2分割し、これらを左右の端部で支点軸13を介して床面に観音開き状に上下回動可能に支持する。前記各支点軸13はモータ15(駆動装置)に連結され、該モータ15を正逆回転させることによって前記踏み板12を上下に回動させ、凹部11の上面を開閉する。
【0012】
前記モータ15は、凹部11の前部側の床面に取り付けたフットスイッチ(スイッチ)16を1回踏む(押す)とモータ15が正回転し、支点軸13を介して前記踏み板12を上方に回動させて凹部11の上面を開き(図1の仮想線の状態))、前記フットスイッチ16を再度踏むとモータ15が逆回転し、支点軸13を介して前記踏み板12を下方に回動させ、前記凹部11の上面を閉じる(図1の実線の状態)ようになっている。なお、前記フットスイッチ16は、便所内の壁に設置し、使用者が手で操作するようにしてもよい。また、前記踏み板12は床面に沿って摺動するスライド式にしてもよい。
【0013】
前記第1実施例によれば、使用者(男性)Mが凹部11の外側で起立し、一方の足でフットスイッチ16を踏むと、モータ15が正回転して踏み板12が図1の仮想線で示すように上方に回動され、凹部11を開くことになる。この状態で、使用者(男性)Mが足部を凹部11に嵌合させ、この部で起立すると、図2に示すように、排尿源(男性性器)が便器本体2の直上方に位置し、排尿した尿が確実に便器本体2内に排出されることになる。このため、尿が便器本体2から周囲に飛散したり、便器本体2の縁部に付着したりしなくなる。
【0014】
そして、前記使用者Mは、排尿が完了した後、足部を前記凹部11から離脱させ、一方の足でフットスイッチ16を再度踏む。さすれば、モータ15が逆回転し、前記踏み板12が下方に回動し、図1の実線で示すように、凹部11を閉じることになる。これにより、他の使用者が不用意に凹部11に落下しなくなる。
【0015】
図4〜図6は第2実施例を示す。図4〜図6において、1は第1実施例と同様の洋式便器、10は該洋式便器1が設置された床である。該床10の便器本体2の前部側に位置する部位に凹部20を形成する。該凹部20は、前述と同様に、排尿する男性の足部が嵌合できるようにしたもので、図4、図6に示すように、便器本体2の前部外周を包囲するように平面視凹形に凹ませる。即ち、左右中心部の前後幅W1が20cm〜25cm、左右両側部の前後幅W2が30cm〜40cm、深さS1が20〜30cm、左右幅L1は便器本体2の左右幅よりも広幅となる50cm〜60cmとする。
【0016】
前記凹部20の上面は踏み板21によって開閉される。該踏み板21は凹部20の平面形状に略対応して該凹部20内で上下動可能に嵌合する変形長方形状に形成され、凹部20内に設置した左右一対のジャッキ(駆動装置)22によって上下動される。該ジャッキ22は、ねじ軸及び該ねじ軸を正逆回転させるモータを内蔵する電動ねじ式とし、便所内の壁に設置したスイッチ23を1回押すとモータが正回転し、ねじ軸を介して前記踏み板21を降下させて凹部20の上面を開き(図5)、前記スイッチ23を再度押すとモータが逆回転し、ねじ軸を介して前記踏み板21を上昇(図4)させ、前記凹部20の上面が閉じられるようになっている。
【0017】
前記第2実施例によれば、図4に示すように、使用者(男性)Mが上昇している踏み板21に乗って起立し、この状態でスイッチ23を押すと、ジャッキ22が短縮作動して踏み板21が降下し、前記使用者Mは、図5に示すように、足部が凹部20内に嵌合した状態で起立することになる。これにより、使用者Mの排尿源が便器本体2の直上方に位置し、排尿した尿が確実に便器本体2内に排出されることになる。
【0018】
そして、前記使用者Mは、排尿が完了した後、凹部20内で起立した状態で前記スイッチ23を再度押すと、図4に示すように、ジャッキ22が伸長作動して踏み板21が上昇し、凹部20の上面が閉塞されることになる。これにより、他の使用者が不用意に凹部20に落下しなくなる。なお、前記ジャッキ22は油圧ポンプによって伸縮作動する油圧シリンダーに換えてもよい。
【符号の説明】
【0019】
1 洋式便器
2 便器本体
3 便座
4 蓋
10 床
11(20) 凹部
12(21) 踏み板
13 支点軸
15 モータ(駆動装置)
16 フットスイッチ(スイッチ)
22 ジャッキ(駆動装置)
23 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の前部側の床面に足部が嵌合する凹部を設け、該凹部の上部に踏み板を開閉可能又は昇降可能に設けたことを特徴とする便器周囲への尿飛散防止装置。
【請求項2】
凹部の深さを20cm〜30cmとしたことを特徴とする請求項1記載の便器周囲への尿飛散防止装置。
【請求項3】
踏み板をスイッチの操作によって開閉又は昇降させる駆動装置を設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の便器周囲への尿飛散防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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