説明

便器本体及び洋風水洗式便器

【課題】設置作業を容易に行なうことのできる洋風水洗式便器を提供する。
【解決手段】便器本体1は、床面Fに載置される外周壁1Wと、外周壁1W内に形成された便鉢2と、外周壁1W内に形成され、便鉢2の下端の流入口3iと連通して上昇する上昇流路3と、外周壁1W内で便鉢2より後方に形成され、洗浄水供給装置50及び吸気装置40を収納する収納空間1Wとを備えている。収納空間1Wは上下が開放されており、上昇流路3は、最上位部3a又はそれより下流側に設けられ、略垂直方向下方に開く連通口41を有する連通管40を備えている。洋風水洗式便器は、床面Fから収納空間1W内に立ち上げられた床排水管20に収納空間1W内で接続され、連通管40と収納空間1W内で上下に接続される排水接続管10を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は便器本体及び洋風水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の図2に従来の洋風水洗式便器が開示されている。この洋風水洗式便器に採用されている便器本体は、床面に載置される外周壁と、外周壁内に形成された便鉢とを備えている。この便鉢は下端から水平方向に延びる連通管を有している。また、便器本体は、便鉢より後方に形成され、便器洗浄装置を収納する収納空間を備え、この収納空間は上下が開放されている。洋風水洗式便器は、連通管と収納空間内で左右に接続される汚水排出装置も具備している。この汚水排出装置の内部には弁が配設されている。この弁を閉弁することにより便鉢内に洗浄水が貯留される。また、この弁を開弁することにより、便鉢に貯留された洗浄水が排出される。
【0003】
このような構成である従来の洋風水洗式便器では、収納空間の上方の開口から便器洗浄装置及び汚水排出装置のメンテナンスを行なうことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平8−193347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洋風水洗式便器では、便鉢に洗浄水が貯留されている状態において、連結管と汚水排出装置との接続部の内部に洗浄水が滞留している。つまり、連結管と汚水排出装置との接続部には、便器洗浄時を除き、常に洗浄水が滞留していることになるため、この接続部は厳重に水密性が確保されなければならない。また、この接続部は収納空間の下方に位置している。これらのことから、洋風水洗式便器を設置する際において、連結管と汚水排出装置との接続作業に手間を要する。
【0006】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、設置作業を容易に行なうことのできる洋風水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の便器本体は、床面に載置される外周壁と、該外周壁内に形成された便鉢と、該外周壁内に形成され、該便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、該外周壁内で該便鉢より後方に形成され、機能装置を収納する収納空間とを備えた便器本体であって、
前記収納空間は上下が開放されており、前記上昇流路は、最上位部又はそれより下流側に設けられた連通口によって該収納空間に連通していることを特徴とする。
【0008】
このような構成である本発明の便器本体では、上昇流路の最上位部より上流側に洗浄水を滞留させることにより便鉢内に水封部が形成される。このため、上昇流路の最上位部又はそれより下流側に設けられた連通口には洗浄水が滞留しないため、連通口と連通口の下流部材との接続部は、洗浄水が滞留する部分に比べ、簡易な構造で容易に接続され得る。また、連通口を収納空間の上方に位置させることができるため、接続作業を収納空間の上方の開口から容易に行なうことができる。
【0009】
したがって、本発明の便器本体によれば、設置作業の容易な洋風水洗式便器が得られる。
【0010】
なお、便器本体の収納空間の下部内面に面状ヒーターを貼付しても良い。このようにすれば収納空間内に収納される機能装置の凍結を防止することができる。
【0011】
本発明の洋風水洗式便器は、上記便器本体は連通口が略垂直方向下方に開くように形成された連通管を備え、床面から収納空間内に立ち上げられた床排水管に収納空間内で接続され、連通管と収納空間内で上下に接続される排水接続管とを具備していることを特徴とする。
【0012】
このような構成である本発明の洋風水洗式便器では、床排水管に接続された排水接続管に対して、上方から便器本体を下降させながら、連通管の下流端開口を排水接続管の上流端の上流口に接続することができる。つまり、便器本体を床面に配置するのと同時に連通管と排水接続管とを接続することができるため、洋風水洗式便器の設置作業を容易に行なうことができる。また、収納空間の上方の開口から連通管と排水接続管との接続部を目視しながら便器本体を下降させることができるため、確実に連通管と排水接続管とを接続することができ、洋風水洗式便器の設置作業を容易に行なうことができる。
【0013】
また、本発明の洋風水洗式便器は、上記便器本体は連通口が略垂直方向下方に開くように形成された連通管を備えているとともに、外周壁には収納空間と外部とを連通する開口が形成され、外部から開口を挿通して収納空間内に引き込まれた床上排水管に収納空間内で接続され、連通管と収納空間内で上下に接続される排水接続管を具備していることを特徴とする。
【0014】
このような構成である本発明の洋風水洗式便器でも、床上排水管に接続された排水接続管に対して、上方から便器本体を下降させながら、連通管の下流端開口を排水接続管の上流端の上流口に接続することができる。つまり、便器本体を床面に配置するのと同時に連通管と排水接続管とを接続することができるため、洋風水洗式便器の設置作業を容易に行なうことができる。また、収納空間の上方の開口から連通管と排水接続管との接続部を目視しながら便器本体を下降させることができるため、確実に連通管と排水接続管とを接続することができ、洋風水洗式便器の設置作業を容易に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の便器本体及びこれを用いた洋風水洗式便器の実施例1及び2を図面を参照しつつ説明する。
【実施例1】
【0016】
図1に示すように、実施例1の洋風水洗式便器は、便器本体1と、排水接続管10とを備えている。なお、便座及び便蓋の図示は省略する。
【0017】
便器本体1は、床面Fに載置される外周壁1Wと、外周壁1W内に形成された便鉢2と、便鉢2の下端の流入口3iと連通して上昇する上昇流路3とを備えている。また、便器本体1は、外周壁1W内で便鉢2より後方に形成され、図示しない機能装置を収納する収納空間1Sを備えている。この収納空間1Sは上下が開放されている。また、収納空間1Sの下部内面に面状ヒーター70が貼付されている。
【0018】
便器本体1は上昇流路3に連通する連通管40を備えている。連通管40の上流端開口には、パッキン40pを介して上昇流路3の便器排水口3bが挿入されている。便器排水口3bは上昇流路3の最上位部3aの下流側に位置している。連通管40は略垂直方向下方に開く連通口41を有している。図2に示すように、便鉢2内に洗浄水が貯留されて水封部6が形成された際、上昇流路3の最上位部3aより下流の連通口41には洗浄水が滞留しない。また、連通管40の中間には略垂直方向上方に開く吸気口42が形成されている。吸気口42の上端にはパッキン42pが嵌め付けられている。
【0019】
排水接続管10は、上流端の上流口からこの上流口より低い第1位置の第1連通口まで延びる第1下降流路と、第1連通口と接続される第1被連通口からこの第1被連通口より高い第2位置の第2連通口まで延びる上昇流路と、第2連通口と接続される第2被連通口から下流端の下流口まで延びる第2下降流路とを備え、第1下降流路、上昇流路及び第2下降流路は、第1位置及び第2位置の位置関係を満たしながら、渦巻き状になっている。すなわち、第1下降流路、上昇流路及び第2下降流路はとぐろを巻いている。このため、排水接続管10は、途中に洗浄水が滞留して上流側と下流側とを封鎖する滞留部12を有している。排水接続管10の上流口は略垂直方向上方に開き、そこにはパッキン10pが嵌め付けられている。排水接続管10の上流口には、管径を縮小するオリフィス部材11が嵌め込まれている。
【0020】
排水接続管10の下流口は、床排水接続ソケット15に接着されている。床排水接続ソケット15は、床面Fから立ち上げられた床排水管20に接着され、かつ床面Fに先端の尖った固定ビス15b(図3参照)により固定されている。このようにして、排水接続管10は床排水管20に接続されている。
【0021】
図2に示すように、洋風水洗式便器は、機能装置として、洗浄水供給装置50及び吸気装置60を有している。洗浄水供給装置50は、水道管に連通されており、開閉弁を有している。また、洗浄水供給装置50は、便器本体1のリム5に連通され、開閉弁の開閉により便鉢2へ洗浄水を供給可能にされている。
【0022】
吸気装置60は、下部に吸気接続管64を有する吸引タンク63と、吸引タンク63に開閉弁62を介して接続され、機械式ポンプにより負圧を発生する負圧発生装置61とを有している。吸気接続管64は、パッキン42pを介して吸気口42に挿入されている。吸気装置60は、便器洗浄が実行されると、適切なタイミングで開閉弁62が開閉され、連通管40から空気を吸引する。これにより、上昇流路3、連通管40の内部及び滞留部12より上流側の排水接続管10の内部を洗浄水で満水にすることができ、早期にサイホン作用を発生させることができる。
【0023】
次に、この洋風水洗式便器の設置手順について説明する。
【0024】
図1及び図2に示すように、先ず、床排水接続ソケット15に接着された排水接続管10と、連通管40が上昇流路3の便器排水口3bに接続された便器本体1とを用意する。
【0025】
次に、床面Fから立ち上げられた床排水管20の上端開口に床排水接続ソケット15の接続部を挿入しながら、床排水接続ソケット15を床面Fの適切な位置に配置する。そして、床面Fに固定ビス15bにより床排水接続ソケット15を固定する。
【0026】
次に、便器本体1の収納空間1Sに排水接続管10を収納しながら、便器本体1を排水接続管10の上方から下降させ、床面Fに配置する。この際、図3に示すように、収納空間1Sの上方の開口から排水接続管10の上流口を目視しながら、連通管40の連通口41を排水接続管10の上流口に挿入することができる。このため、確実に連通管40と排水接続管10とを接続することができる。
【0027】
次に、便器本体1を上面から固定ビス1b(図3参照)により床面Fに固定する。その後、収納空間1S内に上方から洗浄水供給装置50及び吸気装置60を挿入し、組み付ける。この際、吸引タンク63の吸気接続管64を吸気口42に上方から挿入しながら収納空間1S内に吸引タンク63を収納する。
【0028】
以上の洋風水洗式便器では、上昇流路3の便器排水口3bと連通管40の上流端開口との接続部及び連通管40の連通口41と排水接続管10の上流口との接続部に洗浄水が滞留しない。このため、パッキンを介して挿入するのみで各接続部を接続することができる。また、各接続部は収納空間1Sの中央部より上方に位置している。
【0029】
したがって、実施例1の洋風水洗式便器は、設置作業を容易に行うことができる。
【実施例2】
【0030】
図4に示すように、実施例2の洋風水洗式便器では、便器本体1の後方下部の外周壁1Wに収納空間1Sと外部とを連通する開口1Xが形成されている。この開口1Xを挿通して外部から収納空間1S内に床上排水管200が引き込まれている。
【0031】
排水接続管100は、上流端の上流口からこの上流口より低い第1位置の第1連通口まで延びる第1下降流路と、第1連通口と接続される第1被連通口からこの第1被連通口より高い下流端の下流口まで延びる上昇流路とを備えている。このため、排水接続管100は、途中に洗浄水が滞留して上流側と下流側とを封鎖する滞留部120を有している。排水接続管100の上流口は略垂直方向上方に開き、そこにはパッキン100pが嵌め付けられている。排水接続管100の下流口は略水平方向後方に開き、パッキンを介して床上排水管200が挿入されている。排水接続管100は支持部材110が一体に形成されている。支持部材110は図示しない固定ビスにより床面Fに固定されている。他の構成は実施例1と同様である。このため、同一の構成については、同一の符号を付し詳細な説明は省略する。
【0032】
次に、この洋風水洗式便器の設置手順について説明する。
【0033】
先ず、排水接続管100と、連通管40が上昇流路3の便器排水口3bに接続された便器本体1とを用意する。次に、床上排水管200の上流端開口を排水接続管100の下流口に挿入しながら、床排水接続管200を床面Fの適切な位置に配置する。そして、床面Fに固定ビスにより排水接続管100に一体に形成された支持部材110を固定する。
【0034】
次に、便器本体1の開口1Xに床上排水管200を挿通し、収納空間1Sに排水接続管100を収納しながら、便器本体1を上方から下降させ、床面Fに配置する。この際、収納空間1Sの上方の開口から排水接続管100の上流口を目視しながら、連通管40の連通口41を排水接続管10の上流口に挿入することができる。このため、確実に連通管40と排水接続管100とを接続することができる。
【0035】
次に、便器本体1を上面から固定ビスにより床面Fに固定する。その後、収納空間1S内に上方から洗浄水供給装置50及び吸気装置60を挿入し、組み付ける。この際、吸引タンク63の吸気接続管64を吸気口42に上方から挿入しながら収納空間1S内に吸引タンク63を収納する。
【0036】
以上の洋風水洗式便器では、上昇流路3の便器排水口3bと連通管40の上流端開口との接続部及び連通管40の連通口41と排水接続管10の上流口との接続部に洗浄水が滞留しない。このため、パッキンを介して挿入するのみで各接続部を接続することができる。また、各接続部は収納空間1Sの中央部より上方に位置している。
【0037】
したがって、この洋風水洗式便器は、実施例1と同様、本発明の作用効果を奏することができる。
【0038】
以上において、本発明を実施例1及び2に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0039】
例えば、連通管40と上昇流路3とを一体に形成することが可能である。また、吸気装置60を有しない洋風水洗式便器に本発明を適用することが可能である。さらに、滞留部12を有さない排水接続管にも本発明を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は洋風水洗式便器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】実施例1の洋風水洗式便器の設置作業の途中を示す横断面図である。
【図2】実施例1の洋風水洗式便器の横断面図である。
【図3】実施例1の洋風水洗式便器の設置作業の途中を示す平面図である。
【図4】実施例2の洋風水洗式便器の横断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1…便器本体
1S…収納空間
1W…外周壁
2…便鉢
3i…流入口
3…上昇流路
3a…最上位部
40…連通管
41…連通口
50、60…機能装置(50…洗浄水供給装置、60…吸気装置)
F…床面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に載置される外周壁と、該外周壁内に形成された便鉢と、該外周壁内に形成され、該便鉢の下端の流入口と連通して上昇する上昇流路と、該外周壁内で該便鉢より後方に形成され、機能装置を収納する収納空間とを備えた便器本体であって、
前記収納空間は上下が開放されており、前記上昇流路は、最上位部又はそれより下流側に設けられた連通口によって該収納空間に連通していることを特徴とする便器本体。
【請求項2】
請求項1記載の便器本体は、前記連通口が略垂直方向下方に開くように形成された連通管を備え、
前記床面から前記収納空間内に立ち上げられた床排水管に該収納空間内で接続され、該連通管と該収納空間内で上下に接続される排水接続管を具備していることを特徴とする洋風水洗式便器。
【請求項3】
請求項1記載の便器本体は、前記連通口が略垂直方向下方に開くように形成された連通管を備えているとともに、前記外周壁には前記収納空間と外部とを連通する開口が形成され、
該外部から該開口を挿通して該収納空間内に引き込まれた床上排水管に該収納空間内で接続され、該連通管と該収納空間内で上下に接続される排水接続管を具備していることを特徴とする洋風水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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