便器洗浄システム
【課題】 洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸をより早く、確実に初期位置まで戻す。
【解決手段】 排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータ42と、モータ42の出力を減速する減速手段41とを有し、減速手段41からの駆動出力により排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、モータ42の出力を制御する制御信号を便器洗浄装置に供給する制御部500と、を備えた便器洗浄システムにおいて、制御部500は、モータ42の出力軸を第1の方向に回転させることにより排水バルブを開状態にする第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、モータ42の出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行する。
【解決手段】 排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータ42と、モータ42の出力を減速する減速手段41とを有し、減速手段41からの駆動出力により排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、モータ42の出力を制御する制御信号を便器洗浄装置に供給する制御部500と、を備えた便器洗浄システムにおいて、制御部500は、モータ42の出力軸を第1の方向に回転させることにより排水バルブを開状態にする第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、モータ42の出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄システムに関し、より詳細には、水洗便器に取り付けて、電動によりロータンクから水洗便器に洗浄水を供給可能とした便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
すでに市場には、各種のロータンクが出回っている。これらのできるだけ多くの機種に適合でき、取り付けも容易な便器洗浄システムが実現できれば、ユーザは、ロータンクを買い換えることなく電動洗浄の恩恵に浴することができる。
【0003】
しかし、これら既存のロータンクの形状、構造、サイズは、実に多種多様である。このため、これらに共通に取り付けて動作させることができる便器洗浄システムを実現するためには、本出願人は下記特許文献1のような発明をなし、特許出願を行なった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−23715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載した発明についても、改善の余地があり、例えば、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すように制御することが求められている。
そこで、本発明は、便器洗浄システムに関し、洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸をより早く、確実に初期位置まで戻すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目標を達成するため、本発明の便器洗浄システムは、排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップと、を順次実行することを特徴とする。
【0007】
このようにすれば、便器洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる。
【0008】
また、請求項2の発明は、排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行することを特徴とする。
【0009】
上記構成においても、請求項1の発明と同様、便器洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したように、本発明によれば、便器洗浄システムの制御部の洗浄モードにおいて、第1ステップでの回転方向とは逆方向に回転させるステップを連続的に、あるいは所定の時間をおいて順次実行することにより、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる。よって、動作が安定した便器洗浄システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便器洗浄システムの全体構成を例示した概念図である。
すなわち、本発明の便器洗浄システムは、便器洗浄装置10と、これに接続された制御部500と、を有する。便器洗浄装置10は、モータを内蔵している。そして、水洗便器システムのロータンクに取り付けられ、その排水バルブをモータにより動作させる。
一方、制御部500は、洗浄モードに応じた制御信号を、便器洗浄装置10に内蔵されたモータに対して供給し、その動作を制御する。
図2は、本実施形態の便器洗浄システムを水洗便器に取り付けた状態を例示する模式図である。すなわち、図2に表した具体例の場合、制御部500は、便座400に内蔵されている。使用者または設定者は、便器洗浄装置10をロータンク200に取り付け、一方、便座400(制御部500)を便器300に取り付けて、これらを接続コードで接続する。そして、制御部500に対して所定の初期設定操作を実行する。そして、便器洗浄装置10を取り付けたロータンク200の洗浄モードに適合した制御信号を便器洗浄装置10に供給し、適切な動作をさせることができる。
【0012】
図3は、市場に出回っている各種のロータンクの洗浄モードの典型的なものをまとめた一覧表である。
すなわち、同図には、代表的な6種類の洗浄モードを表した。例えば、「洗浄モード1」の場合、「大」の洗浄水を流すためには、便器洗浄装置10の出力軸(図2の挿入図参照)をCW(時計回り)に回転させる制御信号(例えば、DC24ボルト)を1秒間供給する。また、「小」の洗浄水を流すためには、便器洗浄装置10の出力軸を反時計回り(CCW)に回転させる制御信号を1秒間供給する。このため、便器洗浄装置10に内蔵するモータとして、DCブラシモータなどを用いた場合、モータに供給する制御信号(例えば、DC24ボルト)の極性を、洗浄モードに応じて適宜変える必要がある。
【0013】
また、例えば「洗浄モード5」における「小洗浄」の場合、便器洗浄装置10の出力軸を反時計回りに回転させる信号を4秒間供給する。これは、いわゆる「ホールドモード」であり、ロータンク200の小洗浄水用の排水バルブを約4秒間、開けた状態に保持させる動作に対応する。つまり、便器洗浄装置10のモータに対して供給する制御信号の長さも、洗浄モードに応じて適宜変える必要がある。
【0014】
また、このホールド動作の場合、4秒間の間、連続的な制御信号(例えば、DC24ボルト)を供給してもよいが、モータの発熱を防ぐためには、PWM(pulse width modulation:パルス幅制御)により制御することが望ましい。つまり、排水バルブを開状態に保持しうるデューティ範囲で、パルス状の制御信号を便器洗浄装置10に供給することより、モータの発熱を抑制しつつホールド動作を実行させることができる。つまり、モータに供給する制御信号のパルス波形も、洗浄モードに応じて適宜変えることが望ましい。
【0015】
以上説明したように、市場に出回っているロータンクの洗浄モードは多種多様である。これに対して、これら洗浄モードを予め便器洗浄システムの制御部500に記憶させ、所定の初期設定操作により、それらのうちの最適なものを選択し設定することができる。例えば、「洗浄モード2」の形式のロータンク200に、本発明の便器洗浄装置10を取り付けた場合、使用者または設定者は、初期設定操作として、制御部500を操作し、「洗浄モード2」を選択して設定することができる。すると、「大」または「小」の洗浄の指令に対応して、「洗浄モード2」の制御信号が便器洗浄装置10に供給され、適正な洗浄動作を実行させることができる。
【0016】
制御部500は、便器洗浄装置10を次のように動作制御する。
便器洗浄システムの制御部500に格納する洗浄モードは、図8のように、前記モータの出力軸を第一の方向に回転させるように駆動させて排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップを、順次実行する。
上記構成によれば、図7に示した従来例の第1の回転方向への駆動のみの場合と比較して、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる(図10参照)。よって、便器洗浄装置の駆動系の動作が安定した便器洗浄システムを提供することができる。
【0017】
また、図9の洗浄モードは、前記モータの出力軸を第一の方向に回転させるように駆動させて排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第3のステップとを、順次実行するものである。このような構成としても、図8の構成と同様の作用・効果が得られる。
【0018】
以下、本発明の便器洗浄システムについて、実施例を挙げつつさらに詳細に説明する。
図4は、本実施例の便器洗浄装置の要部を表す斜視図である。すなわち、この便器洗浄装置10は、螺合突出部20と、駆動部40と、を有する。螺合突出部20の先端には、シャフト22が突出している。一方、駆動部40のタンク内向面には、第1の出力軸70と第2の出力軸72とが設けられている。
【0019】
また、駆動部40には、制御部500から制御信号を供給するための接続用コード76が接続されている。
【0020】
ロータンクの外側に突出するシャフト22には、図示しない操作ハンドル100が装着される。この操作ハンドルを手動により操作した場合にも、シャフト22を介して手動回転トルクが出力軸70、72にそれぞれ伝達される。この際に、駆動部40に内蔵されるモータのコギングトルクの付加を防ぐため、モータの動作軸に所定の空転角を与えたり、またはクラッチ機構などを付加するとよい。この点については、本発明者らが先に出願した特願2002−292508号に記載した構成を採用することができる。
【0021】
次に、本実施例の便器洗浄装置10の内部構造について具体例を挙げて説明する。
図5は、本実施例の便器洗浄装置の内部構造を模式的に表した概念図である。なお、同図は、動力伝達関係を説明するための概念図であり、各要素の寸法や配置関係などは、必ずしも実際の通りとは限らない。
本実施例の便器洗浄装置10の内部には、駆動源であるモータ42と、減速手段41として5段のギア43〜47が設けられている。4段目のギア46の回転トルクが第1の出力軸70に出力される。また、5段目のギア47の回転トルクが、第2の出力軸72として出力される。モータ42として、DC24ボルトで動作するブラシ型の高速モータを用いた場合、1段目から4段目までの減速比は、およそ1/100程度とすることができる。
また、5段目のギアの減速比は、概ね1/2程度とすると各種のロータンクに適合させることが容易となる。
【0022】
また、シャフト22には、シャフトリターンスプリング52が設けられ、中立状態に付勢される。同様に、4段目のギア46にはギアリターンスプリング53が設けられ、中立状態に付勢される。
【0023】
また、操作ハンドル100を用いた手動操作の際にモータ42のコギングトルクの付加を防ぐため、4段目のギア46は、シャフト22に対して所定の空転角をもって結合されている。
【0024】
図6は、4段目のギア46とシャフト22との結合断面を表す模式図である。すなわち、4段目のギア46の内心にシャフト22が配置されている。シャフト22は、操作ハンドル100及び第1の出力軸70に結合されている。そして、これらシャフト22の外面とギア46の内面には、凸部22P、46Pがそれぞれ設けられている。図6は、中立状態を表し、この状態から矢印の方向にシャフト22(すなわち操作ハンドル100)を回転させた場合、その凸部22Pがギア46の凸部46Pと当接するまでの範囲においては、ギア46から独立に回転させることができる。つまり、この範囲においては、シャフト22は、モータ42のコギングトルクや、ギアリターンスプリング53の付加を受けることなく、回転させることができる。このようにして、操作ハンドル100による手動操作を軽快に行うことができる。
【0025】
一方、モータ42により駆動させる際には、図6に表した中立状態からギア46が矢印の方向に空転し、その凸部46Pがシャフト22の凸部22Pに当接すると、シャフト22に結合されてトルクが出力軸に伝達される。つまり、凸部46Pが凸部22Pに当接するまでの範囲が空転角として設けられている。
【0026】
次に、洗浄動作の具体例について説明する。
図8のように、まず第1のステップにおいて、モータ42の出力軸を第1の方向に回転させるため、デューティ100%とした駆動を1秒間実施する。これにより、便器洗浄装置10の出力軸は迅速に排水バルブを開状態位置まで回転させる。
【0027】
そして、第1のステップの後、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に10〜30m秒程度逆転させる第2ステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0028】
さらに、図9により、別の具体例について説明する。排水バルブを開放するための第1のステップは前述した例と同様であるが、その後の実行内容が異なる。すなわち、、第2ステップにて前記モータ42への通電を5〜100m秒程度停止し、第3ステップにて前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に10〜30m秒程度逆転させることにより、上記構成においても、請求項1の発明と同様の効果が得られる。さらに、この場合には、第1ステップから第2ステップに連続的に移行することで生じうる、モータ42及び制御部への異常電流の発生を回避することができる。
【0029】
図11に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第3の具体例を表す。
この例によれば、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転を短時間内に複数回繰返す第2のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0030】
図12に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第4の具体例を表す。
この例では、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転を短時間内に複数回繰返す第3のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0031】
図13に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第5の具体例を表す。
この例では、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転と、第1のステップと同一方向への回転と、第2の回転方向へのモータ逆転と、を短時間内に順次繰返す第2のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0032】
図14に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第6の具体例を表す。
この例においては、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転と、モータ42への通電停止、第1のステップと同一方向への回転と、モータ42への通電停止と、第2の回転方向へのモータ逆転と、を短時間内に順次繰返す第3のステップにより、これも、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便器洗浄システムの全体構成を例示した概念図である。
【図2】本発明の実施形態の便器洗浄システムを水洗便器に取り付けた状態を例示する模式図である。
【図3】市場に出回っている各種のロータンクの洗浄モードの典型的なものをまとめた一覧表である。
【図4】本発明の実施例の便器洗浄装置の要部を表す斜視図である。
【図5】本発明の実施例の便器洗浄装置の内部構造を模式的に表した概念図である。
【図6】4段目のギア46とシャフト22との結合断面を表す模式図である。
【図7】従来例の通電ステップを表す。
【図8】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第1の具体例を表す。
【図9】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第2の具体例を表す。
【図10】従来例と本発明による実施例の比較による効果を表した図。
【図11】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第3の具体例を表す。
【図12】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第4の具体例を表す。
【図13】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第5の具体例を表す。
【図14】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第6の具体例を表す。
【図15】既存のロータンクの形態のいくつかを例示する模式図である。
【符号の説明】
【0034】
10 便器洗浄装置
20 螺合突出部
22 シャフト
40 駆動部
41 減速手段
42 モータ
70 第1の出力軸
72 第2の出力軸
100 操作ハンドル
200 ロータンク
300 便器
400 便座
500 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器洗浄システムに関し、より詳細には、水洗便器に取り付けて、電動によりロータンクから水洗便器に洗浄水を供給可能とした便器洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
すでに市場には、各種のロータンクが出回っている。これらのできるだけ多くの機種に適合でき、取り付けも容易な便器洗浄システムが実現できれば、ユーザは、ロータンクを買い換えることなく電動洗浄の恩恵に浴することができる。
【0003】
しかし、これら既存のロータンクの形状、構造、サイズは、実に多種多様である。このため、これらに共通に取り付けて動作させることができる便器洗浄システムを実現するためには、本出願人は下記特許文献1のような発明をなし、特許出願を行なった。
【0004】
【特許文献1】特開2005−23715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載した発明についても、改善の余地があり、例えば、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すように制御することが求められている。
そこで、本発明は、便器洗浄システムに関し、洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸をより早く、確実に初期位置まで戻すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目標を達成するため、本発明の便器洗浄システムは、排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップと、を順次実行することを特徴とする。
【0007】
このようにすれば、便器洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる。
【0008】
また、請求項2の発明は、排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、を備えた便器洗浄システムにおいて、前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行することを特徴とする。
【0009】
上記構成においても、請求項1の発明と同様、便器洗浄動作実施後の便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能である。
【発明の効果】
【0010】
以上詳述したように、本発明によれば、便器洗浄システムの制御部の洗浄モードにおいて、第1ステップでの回転方向とは逆方向に回転させるステップを連続的に、あるいは所定の時間をおいて順次実行することにより、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる。よって、動作が安定した便器洗浄システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に示す実施例に基づいて本発明を説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便器洗浄システムの全体構成を例示した概念図である。
すなわち、本発明の便器洗浄システムは、便器洗浄装置10と、これに接続された制御部500と、を有する。便器洗浄装置10は、モータを内蔵している。そして、水洗便器システムのロータンクに取り付けられ、その排水バルブをモータにより動作させる。
一方、制御部500は、洗浄モードに応じた制御信号を、便器洗浄装置10に内蔵されたモータに対して供給し、その動作を制御する。
図2は、本実施形態の便器洗浄システムを水洗便器に取り付けた状態を例示する模式図である。すなわち、図2に表した具体例の場合、制御部500は、便座400に内蔵されている。使用者または設定者は、便器洗浄装置10をロータンク200に取り付け、一方、便座400(制御部500)を便器300に取り付けて、これらを接続コードで接続する。そして、制御部500に対して所定の初期設定操作を実行する。そして、便器洗浄装置10を取り付けたロータンク200の洗浄モードに適合した制御信号を便器洗浄装置10に供給し、適切な動作をさせることができる。
【0012】
図3は、市場に出回っている各種のロータンクの洗浄モードの典型的なものをまとめた一覧表である。
すなわち、同図には、代表的な6種類の洗浄モードを表した。例えば、「洗浄モード1」の場合、「大」の洗浄水を流すためには、便器洗浄装置10の出力軸(図2の挿入図参照)をCW(時計回り)に回転させる制御信号(例えば、DC24ボルト)を1秒間供給する。また、「小」の洗浄水を流すためには、便器洗浄装置10の出力軸を反時計回り(CCW)に回転させる制御信号を1秒間供給する。このため、便器洗浄装置10に内蔵するモータとして、DCブラシモータなどを用いた場合、モータに供給する制御信号(例えば、DC24ボルト)の極性を、洗浄モードに応じて適宜変える必要がある。
【0013】
また、例えば「洗浄モード5」における「小洗浄」の場合、便器洗浄装置10の出力軸を反時計回りに回転させる信号を4秒間供給する。これは、いわゆる「ホールドモード」であり、ロータンク200の小洗浄水用の排水バルブを約4秒間、開けた状態に保持させる動作に対応する。つまり、便器洗浄装置10のモータに対して供給する制御信号の長さも、洗浄モードに応じて適宜変える必要がある。
【0014】
また、このホールド動作の場合、4秒間の間、連続的な制御信号(例えば、DC24ボルト)を供給してもよいが、モータの発熱を防ぐためには、PWM(pulse width modulation:パルス幅制御)により制御することが望ましい。つまり、排水バルブを開状態に保持しうるデューティ範囲で、パルス状の制御信号を便器洗浄装置10に供給することより、モータの発熱を抑制しつつホールド動作を実行させることができる。つまり、モータに供給する制御信号のパルス波形も、洗浄モードに応じて適宜変えることが望ましい。
【0015】
以上説明したように、市場に出回っているロータンクの洗浄モードは多種多様である。これに対して、これら洗浄モードを予め便器洗浄システムの制御部500に記憶させ、所定の初期設定操作により、それらのうちの最適なものを選択し設定することができる。例えば、「洗浄モード2」の形式のロータンク200に、本発明の便器洗浄装置10を取り付けた場合、使用者または設定者は、初期設定操作として、制御部500を操作し、「洗浄モード2」を選択して設定することができる。すると、「大」または「小」の洗浄の指令に対応して、「洗浄モード2」の制御信号が便器洗浄装置10に供給され、適正な洗浄動作を実行させることができる。
【0016】
制御部500は、便器洗浄装置10を次のように動作制御する。
便器洗浄システムの制御部500に格納する洗浄モードは、図8のように、前記モータの出力軸を第一の方向に回転させるように駆動させて排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップを、順次実行する。
上記構成によれば、図7に示した従来例の第1の回転方向への駆動のみの場合と比較して、便器洗浄装置の出力軸を早く、確実に初期位置まで戻すことが可能となる(図10参照)。よって、便器洗浄装置の駆動系の動作が安定した便器洗浄システムを提供することができる。
【0017】
また、図9の洗浄モードは、前記モータの出力軸を第一の方向に回転させるように駆動させて排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第3のステップとを、順次実行するものである。このような構成としても、図8の構成と同様の作用・効果が得られる。
【0018】
以下、本発明の便器洗浄システムについて、実施例を挙げつつさらに詳細に説明する。
図4は、本実施例の便器洗浄装置の要部を表す斜視図である。すなわち、この便器洗浄装置10は、螺合突出部20と、駆動部40と、を有する。螺合突出部20の先端には、シャフト22が突出している。一方、駆動部40のタンク内向面には、第1の出力軸70と第2の出力軸72とが設けられている。
【0019】
また、駆動部40には、制御部500から制御信号を供給するための接続用コード76が接続されている。
【0020】
ロータンクの外側に突出するシャフト22には、図示しない操作ハンドル100が装着される。この操作ハンドルを手動により操作した場合にも、シャフト22を介して手動回転トルクが出力軸70、72にそれぞれ伝達される。この際に、駆動部40に内蔵されるモータのコギングトルクの付加を防ぐため、モータの動作軸に所定の空転角を与えたり、またはクラッチ機構などを付加するとよい。この点については、本発明者らが先に出願した特願2002−292508号に記載した構成を採用することができる。
【0021】
次に、本実施例の便器洗浄装置10の内部構造について具体例を挙げて説明する。
図5は、本実施例の便器洗浄装置の内部構造を模式的に表した概念図である。なお、同図は、動力伝達関係を説明するための概念図であり、各要素の寸法や配置関係などは、必ずしも実際の通りとは限らない。
本実施例の便器洗浄装置10の内部には、駆動源であるモータ42と、減速手段41として5段のギア43〜47が設けられている。4段目のギア46の回転トルクが第1の出力軸70に出力される。また、5段目のギア47の回転トルクが、第2の出力軸72として出力される。モータ42として、DC24ボルトで動作するブラシ型の高速モータを用いた場合、1段目から4段目までの減速比は、およそ1/100程度とすることができる。
また、5段目のギアの減速比は、概ね1/2程度とすると各種のロータンクに適合させることが容易となる。
【0022】
また、シャフト22には、シャフトリターンスプリング52が設けられ、中立状態に付勢される。同様に、4段目のギア46にはギアリターンスプリング53が設けられ、中立状態に付勢される。
【0023】
また、操作ハンドル100を用いた手動操作の際にモータ42のコギングトルクの付加を防ぐため、4段目のギア46は、シャフト22に対して所定の空転角をもって結合されている。
【0024】
図6は、4段目のギア46とシャフト22との結合断面を表す模式図である。すなわち、4段目のギア46の内心にシャフト22が配置されている。シャフト22は、操作ハンドル100及び第1の出力軸70に結合されている。そして、これらシャフト22の外面とギア46の内面には、凸部22P、46Pがそれぞれ設けられている。図6は、中立状態を表し、この状態から矢印の方向にシャフト22(すなわち操作ハンドル100)を回転させた場合、その凸部22Pがギア46の凸部46Pと当接するまでの範囲においては、ギア46から独立に回転させることができる。つまり、この範囲においては、シャフト22は、モータ42のコギングトルクや、ギアリターンスプリング53の付加を受けることなく、回転させることができる。このようにして、操作ハンドル100による手動操作を軽快に行うことができる。
【0025】
一方、モータ42により駆動させる際には、図6に表した中立状態からギア46が矢印の方向に空転し、その凸部46Pがシャフト22の凸部22Pに当接すると、シャフト22に結合されてトルクが出力軸に伝達される。つまり、凸部46Pが凸部22Pに当接するまでの範囲が空転角として設けられている。
【0026】
次に、洗浄動作の具体例について説明する。
図8のように、まず第1のステップにおいて、モータ42の出力軸を第1の方向に回転させるため、デューティ100%とした駆動を1秒間実施する。これにより、便器洗浄装置10の出力軸は迅速に排水バルブを開状態位置まで回転させる。
【0027】
そして、第1のステップの後、前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に10〜30m秒程度逆転させる第2ステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0028】
さらに、図9により、別の具体例について説明する。排水バルブを開放するための第1のステップは前述した例と同様であるが、その後の実行内容が異なる。すなわち、、第2ステップにて前記モータ42への通電を5〜100m秒程度停止し、第3ステップにて前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に10〜30m秒程度逆転させることにより、上記構成においても、請求項1の発明と同様の効果が得られる。さらに、この場合には、第1ステップから第2ステップに連続的に移行することで生じうる、モータ42及び制御部への異常電流の発生を回避することができる。
【0029】
図11に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第3の具体例を表す。
この例によれば、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転を短時間内に複数回繰返す第2のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0030】
図12に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第4の具体例を表す。
この例では、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転を短時間内に複数回繰返す第3のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0031】
図13に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第5の具体例を表す。
この例では、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転と、第1のステップと同一方向への回転と、第2の回転方向へのモータ逆転と、を短時間内に順次繰返す第2のステップにより、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【0032】
図14に、本発明の便器洗浄装置の通電ステップの第6の具体例を表す。
この例においては、排水バルブを開状態にするためにモータ42を第1の方向に回転させる第1のステップと、モータ42への通電を停止する第2のステップと、第1のステップの方向とは逆の第2の回転方向へのモータ逆転と、モータ42への通電停止、第1のステップと同一方向への回転と、モータ42への通電停止と、第2の回転方向へのモータ逆転と、を短時間内に順次繰返す第3のステップにより、これも、出力軸を速やかに初期位置まで戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便器洗浄システムの全体構成を例示した概念図である。
【図2】本発明の実施形態の便器洗浄システムを水洗便器に取り付けた状態を例示する模式図である。
【図3】市場に出回っている各種のロータンクの洗浄モードの典型的なものをまとめた一覧表である。
【図4】本発明の実施例の便器洗浄装置の要部を表す斜視図である。
【図5】本発明の実施例の便器洗浄装置の内部構造を模式的に表した概念図である。
【図6】4段目のギア46とシャフト22との結合断面を表す模式図である。
【図7】従来例の通電ステップを表す。
【図8】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第1の具体例を表す。
【図9】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第2の具体例を表す。
【図10】従来例と本発明による実施例の比較による効果を表した図。
【図11】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第3の具体例を表す。
【図12】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第4の具体例を表す。
【図13】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第5の具体例を表す。
【図14】本発明の実施例の便器洗浄装置の通電ステップの第6の具体例を表す。
【図15】既存のロータンクの形態のいくつかを例示する模式図である。
【符号の説明】
【0034】
10 便器洗浄装置
20 螺合突出部
22 シャフト
40 駆動部
41 減速手段
42 モータ
70 第1の出力軸
72 第2の出力軸
100 操作ハンドル
200 ロータンク
300 便器
400 便座
500 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、
を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップと、を順次実行することを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項2】
排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、
を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行することを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項1】
排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、
を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に逆転させる第2のステップと、を順次実行することを特徴とする便器洗浄システム。
【請求項2】
排水バルブを有するロータンクに取り付け可能とされ、モータと、前記モータの出力を減速する減速手段とを有し、前記減速手段からの駆動出力により前記排水バルブの開動作を実行可能な便器洗浄装置と、
前記モータの出力を制御する制御信号を前記便器洗浄装置に供給する制御部と、
を備えた便器洗浄システムにおいて、
前記制御部は、前記モータの出力軸を第1の方向に回転させることにより前記排水バルブを開状態にする第1のステップと、前記モータへの通電を停止する第2のステップと、前記モータの前記出力軸を前記第1の回転方向とは逆の、第2の回転方向に逆転させる第3のステップと、を順次実行することを特徴とする便器洗浄システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−23709(P2007−23709A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−211058(P2005−211058)
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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