説明

便器洗浄装置及び便器システム

【課題】短時間の間に十分な水量による便器の繰り返し洗浄を可能とする。
【解決手段】便器洗浄装置は、タンク3と、該タンク内の水を便器5に供給するポンプ4と、便器の洗浄を指令する指令信号に応答してポンプの駆動を制御する制御手段10とを有する。制御手段は、タンク内の水量が第1の水量である第1の状態で指令信号が入力された場合は、タンク内の水量が第2の水量に減少するまでの所定水量がタンクから流出するようにポンプを駆動し、タンク内の水量が第1の水量より少ない第2の状態で指令信号が入力された場合は、該タンク内の水量が第2の水量より少ない第3の水量に減少するまでのポンプの駆動を許容する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンク内の水をポンプを用いて便器に供給する便器洗浄装置及びこれを備えた便器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような便器洗浄装置(ポンプ式便器洗浄装置)としては、特許文献1,2において開示されているものがある。
【0003】
これら従来のポンプ式便器洗浄装置では、タンク内の水位が所定の高水位(例えば、満水水位)か否かを水位検出器により検出する。そして、高水位状態において洗浄を指令する信号が入力されることに応じてポンプを駆動し、所定の水位(洗浄水位)までの水量の洗浄水を便器に供給してこれを洗浄する。これにより、毎回の便器洗浄において、ポンプ駆動による安定した量の洗浄水を便器に供給する。
【0004】
なお、ここにいう洗浄水位は、タンク内の水量がポンプが正常に動作可能な下限水量に対してある程度大きな余裕量を見込んで設定されるのが一般的である。
【特許文献1】特開平6−264482号公報(段落0003,0014等)
【特許文献2】特開平5−311715号公報(段落0033,0043等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような従来のポンプ式便器洗浄装置では、一度便器に洗浄水を供給した後はタンクが所定の高水位になったことを検出するまでポンプを駆動することができない。このため、便器を再洗浄するためには、タンク内の水量が所定の高水位になるまで待たなければならない。つまり、短時間の間に便器を繰り返し洗浄することができない。
【0006】
一方、タンク内の水量が所定の高水位に満たない状態でポンプ駆動を許容することも考えられる。しかし、ポンプ駆動を停止させるタンク内の水位が常に同じ(洗浄水位)に設定されていると、ポンプ駆動の開始時でのタンク内の水位が低かった場合には再洗浄のために便器に供給される水量が極端に少なくなる。
【0007】
本発明は、短時間の間に十分な水量による便器の繰り返し洗浄を可能としたポンプ式の便器洗浄装置を提供することを目的の1つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面としての便器洗浄装置は、タンクと、該タンク内の水を便器に供給するポンプと、便器の洗浄を指令する指令信号に応答してポンプの駆動を制御する制御手段とを有する。そして、制御手段は、タンク内の水量が第1の水量である第1の状態で指令信号が入力された場合は、タンク内の水量が第2の水量に減少するまでの所定水量がタンクから流出するようにポンプを駆動し、タンク内の水量が第1の水量より少ない第2の状態で指令信号が入力された場合は、該タンク内の水量が第2の水量より少ない第3の水量に減少するまでのポンプの駆動を許容することを特徴とする。
【0009】
これにより、指令信号が入力された時点でのタンク内の水量(以下、タンク水量という)が第1の水量よりも少ない場合には、該時点でのタンク水量が第1の水量である場合に比べてタンク水量が少なくなるまでのポンプ駆動が許容される。このため、タンク水量が第1の水量になるまで待つことなく、短時間の間に十分な水量での便器の繰り返し洗浄を行うことができる。
【0010】
上記便器洗浄装置においては、第1の水量及び第3の水量に関する情報を検出する検出手段を設けてもよい。そして、第1の水量に関する情報が検出された上記第1の状態で指令信号が入力された場合は上記所定水量がタンクから流出するようにポンプを駆動し、第1の水量に関する情報が検出されない上記第2の状態で指令信号が入力された場合は、第3の水量に関する情報が検出されるまでのポンプの駆動を許容する。
【0011】
これにより、第1及び第3の水量という2つの水量に関する情報を検出する検出手段を設けるだけで、短時間の間に十分な水量での便器の繰り返し洗浄を行うことができるようになる。
【0012】
また、上記第2の状態において、タンク水量が第3の水量まで減少しない場合には上記所定水量をタンクから流出させるようにポンプを駆動し、該所定水量がタンクから流出する前にタンク水量が第3の水量に減少した場合はポンプの駆動を停止させるようにしてもよい。
【0013】
これにより、第2の状態においてタンク水量が第1の水量近くまで増加していた場合は、第1の状態と同じ水量を便器に供給することができる。一方、タンク水量が第1の水量近くまでは増加していなかった場合でも、第3の水量に減少するまでのタンクからの水の流出を行わせることで、ある程度十分な水量を便器に供給することができる。しかも、タンクが空の状態でポンプが駆動されることを防止して、ポンプを保護することができる。
【0014】
また、タンクに給水するタンク給水手段を有する場合は、少なくとも第2の状態においてポンプの駆動中に該タンク給水手段からのタンクへの水の供給を行わせるとよい。これにより、特に第2の状態においてタンク水量が第1の水量近くまで増加していなかった場合に、便器に供給される水量をより十分なものとすることができる。
【0015】
また、タンクおよびポンプを介さずに便器に水を供給する便器給水手段を有する場合には、少なくとも第2の状態において、指令信号が入力された後ポンプを駆動する前に、該便器給水手段からの便器への水の供給を行わせてもよい。これにより、ポンプから便器への供給水量を補って全体としてより十分な水量を便器に供給することができる。
【0016】
なお、上記便器洗浄装置と、該便器洗浄装置から水が供給される便器とを有する便器システムも本発明の他の側面を構成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、タンク水量が第1の水量になるまで待つことなく、短時間の間に十分な水量での便器の繰り返し洗浄を行えるポンプ式便器洗浄装置及び便器システムを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0019】
図1には、本発明の実施例1であるポンプ式便器洗浄装置と便器を含む便器システムの全体構成を示している。また、図2には、該便器洗浄装置におけるタンク周辺の構成を示している。
【0020】
これらの図において、Lは水道配管に接続された給水路であり、1は該給水路L上に設けられた定流量弁である。2は給水ユニットであり、水路開閉用の電磁弁と流路を切り換える流路切換部を有する。電磁弁で給水状態と止水状態を制御して、流路切換部で第1の導水路L1に流す状態(以下、リム側給水状態という)と、第2の導水路L2に流す状態(以下、タンク側給水状態という)とに切り換える。
【0021】
なお、給水ユニット2と第1の導水路L1により便器給水手段が構成され、該給水ユニット2と第2の導水路L2によりタンク給水手段が構成される。
【0022】
第1の導水路L1は、便器5のリム部5aに水を供給するための管路である。リム部は、便器5の上部開口の周縁部であり、該リム部5aに沿って水を流すことで、ボウル部5bの上方から渦巻き状の水流を生じさせることができる。第2の導水路L2は、タンク3に水を供給するための管路である。
【0023】
タンク3には、該タンク3の上部に設けられた給水口3aを通じて第2の導水路L2から水が供給される。これにより、タンク3内に水が貯まる。タンク3内に貯まった水を、以下の説明ではタンク水Wという。
【0024】
タンク3の下部には、ポンプ4の吸込みポート4aが接続されている。ポンプ4としては、渦巻きポンプ、ディフューザポンプ、カスケードポンプ等、様々な種類のポンプを使用することができる。
【0025】
ポンプ4の吐出ポート4bから吐出された水は、便器5のボウル部5bの前側下部に形成されたゼット孔5cに供給される。ゼット孔5cからは、ボウル部5bの後側につながったトラップ排水部5dに向けて水が噴出する。
【0026】
なお、実際には、上記導水路L1,L2を含む各管路には、逆流防止弁やフラッパ弁、絞り、エア逃がし弁、水抜き弁等の部品が設けられているが、図1及び図2ではこれらを省略して示している。
【0027】
6はタンク3内の上部に設けられたフロートスイッチであり、タンク水Wが、満水水位に相当する水量(第1の水量)まで貯まったことを検出する満水水位検出器である。満水水位は、タンク3内に貯留可能な(タンク3から溢れ出ない)上限水量に基づいて、つまりは該上限水量に対して若干の余裕を見込んだ低めの水位に設定される。ここで言う低めの水位とは、上限水量に対して、給水ユニット2が閉じるまでの時間吐水される量を見込んだ水位を示す。
【0028】
7はタンク3内の下部に設けられたフロートスイッチであり、タンク水Wが下限水位に相当する水量まで減少したことを検出する下限水位検出器である。下限水位は、ポンプ4が空転せずに正常に動作可能な(ポンプ4の駆動が許容される)下限水量に基づいて、つまりは該下限水量に対して若干の余裕を見込んだ高めの水位に設定される。ここで言う高めの水位とは、下限水量に対して、ポンプ4が停止信号を受けてから慣性で動く時間に排出される量を見込んだ水位を示す。
【0029】
10はCPUやメモリ等により構成される制御手段としてのコントローラであり、メモリ内に格納されたコンピュータプログラムに従って給水ユニット2やポンプ4の駆動を制御する。
【0030】
9はコントローラ10からの駆動信号に応じてポンプ4を駆動するポンプ駆動回路である。
【0031】
15は操作パネルであり、便器洗浄を開始させる洗浄スイッチや、不図示の洗浄便座部を動作させるためのスイッチが設けられている。洗浄スイッチが操作されると、操作パネル15からコントローラ10に対して洗浄指令信号が出力される。なお、操作パネル15は、電気配線によりコントローラ10に接続されていてもよいし、コントローラ10に接続された不図示の受信部に対してリモートコントロール信号としての洗浄指令信号を送信するリモコン操作パネルであってもよい。
【0032】
次に、図2を用いて、本実施例において特徴的なポンプ4の駆動制御について説明する。前述したように、タンク3内には、「満水水位」を検出する満水水位検出器6と、「下限水位」を検出する下限水位検出器7とが設けられている。
【0033】
また、図2に示す「洗浄水位」は、通常状態、すなわちタンク水Wが「満水水位」まで貯まった状態において、ポンプ4を所定時間駆動して便器洗浄を行うことで減少したタンク水Wの量(第2の水量)に相当する水位である。言い換えれば、通常時に便器洗浄を行う場合、コントローラ10は、ポンプ4を所定時間駆動することで、タンク水量が「満水水位」に相当する水量から「洗浄水位」に相当する水量に減少するまでの所定水量をタンク3から流出させる。タンク3から流出した水量の大部分が便器5に供給される。
【0034】
「洗浄水位」に相当するタンク水量は、「下限水位」に相当する水量に対してある程度の余裕水量を加えて設定される。
【0035】
ここで、本実施例では、ポンプ4の駆動中に、給水ユニット2を給水状態かつタンク側給水状態に制御して、第2の導水路L2を通じてタンク3に給水を行う。これにより、ポンプ4の駆動中にタンク3への給水を行わない場合に比べて、便器5への供給水量を多くしながらタンク3を小さくすることができる。
【0036】
そして、図2に示す「洗浄水位」は、このようにポンプ4の駆動中にタンク3への給水を行った場合の水位である。この場合、実際のタンク3からの流出する所定水量は、
(「満水水位」に相当する水量)+(ポンプ駆動中のタンク3への給水量)−(「洗浄水位」に相当する水量)
となる。
【0037】
なお、ポンプ4の駆動中に給水ユニット2を止水状態に制御してタンク3への給水を行わなくてもよい。この場合、タンク3からの流出する所定水量は、
(「満水水位」に相当する水量)−(「洗浄水位」に相当する水量)
となる。
【0038】
さらに、本実施例では、低水位状態、すなわちタンク水Wが「満水水位」に満たない状態においてもポンプ4の駆動を許容する。そして、この場合のタンク3からの流出水量は、「下限水位」までの水量とする。ポンプ駆動開始時の水位と「下限水位」との差に相当する水量がある程度多い場合は、通常状態と同様のポンプ4の所定時間の駆動によって、上記所定水量をタンク3から流出させることができる。一方、ポンプ駆動開始時の水位と「下限水位」との差に相当する水量が少ない場合は、上記所定水量がタンク3から流出する前に水位が「下限水位」まで下がるので、この時点でポンプ駆動を停止させる。ただし、この場合でも、「洗浄水位」にてポンプ駆動を停止させる場合に比べて十分な水量を便器5に供給することができる。
【0039】
以上のことをまとめると、本実施例のコントローラ10は以下のようにポンプ4の駆動を制御する。タンク水量が「満水水位」に相当する第1の水量である第1の状態(通常状態)において操作パネル15から洗浄指令信号が入力された場合、コントローラ10は、タンク水量が「洗浄水位」に相当する第2の水量に減少するまでの所定水量がタンク3から流出するようにポンプ4を駆動する。以下、この動作を第1洗浄モードという。
【0040】
また、タンク水量が第1の水量より少ない第2の状態(低水位状態)で洗浄指令信号が入力された場合、コントローラ10は、タンク水量が「洗浄水位」より低い「下限水位」に相当する第3の水量に減少するまでのポンプ4の駆動を許容する。許容するとは、第3の水量に減少するまでポンプ駆動を行ってもよいし、そこまでポンプ駆動を行わなくてもよいとの意味である。タンク3内の水位が「下限水位」まで下がったことに応じて、そこでポンプ4の駆動を停止する。以下、この動作を第2洗浄モードともいう。
【0041】
さらにこれらをより具体的に言い換えると、本実施例では、水位検出器6,7により第1の水量及び第3の水量に関する情報(水位)を取得する。そして、第1の水量に関する情報(「満水水位」)が検出された第1の状態で操作パネル15から洗浄指令信号が入力された場合、コントローラ10は、上記所定水量がタンク3から流出するようにポンプ4を駆動する(第1洗浄モード)。
【0042】
また、第1の水量に関する情報が検出されない第2の状態で洗浄指令信号が入力された場合は、第3の水量に関する情報(「下限水位」)が検出されるまでのポンプ4の駆動を許容する。そして、第3の水量に関する情報が検出されたことに応じてポンプ4の駆動を停止する。
【0043】
次に、コントローラ10によって行われる上記ポンプ制御を含む便器洗浄動作の具体的な流れについて、図3及び図4A,図4Bを用いて説明する。図3は、便器洗浄動作の全体の流れを示すフローチャートであり、コントローラ10内に格納されたコンピュータプログラムの概要を示す。また、図4及び図4Bは、便器洗浄動作のタイミングチャートである。ここでは、一度通常状態又は低水位状態での便器洗浄が行われた後からの動作を説明する。
【0044】
図3のステップ(図では「S」と略記する)1では、コントローラ10は、給水ユニット2を給水状態かつタンク側給水状態に切り換える。これにより、タンク3への給水が開始され、図4A及び図4Bに示すようにタンク水量が増加していく。
【0045】
ステップ2では、コントローラ10は、満水検出器6により「満水水位」が検出されたか否かを判別する。「満水水位」が検出された場合はステップ3に進み、これが検出されない場合はステップ10に進む。
【0046】
ステップ3では、コントローラ10は、タンク水位が「満水水位」に到達したため、給水ユニット2を止水状態に切り換える(図4A中の時刻T1)。そして、ステップ4aに進み、第1洗浄モードに入る。
【0047】
ステップ4aでは、コントローラ10は、操作パネル15の洗浄スイッチがオンされたか否か、すなわち洗浄指令信号が入力されたか否かを判別する。洗浄指令信号が入力された場合は、ステップ4bで、給水ユニット2を給水状態かつリム側給水状態へ切り換える。これにより、第1の導水路L1を通じてリム部5aに水道配管からの給水が開始される。また、リム洗浄時間Taのカウントを開始してステップ5に進む。洗浄指令信号が入力されていない場合はステップ3,4aを繰り返す。
【0048】

ステップ5では、コントローラ10は、内部タイマーによりリム洗浄時間Taが経過したか否かを判別する。ここで、リム洗浄時間Taとは、タンク3及びポンプ4を介さずに便器5のリム部5aに水を供給する時間である。
【0049】
リム洗浄時間Taがまだ経過していない場合は、本ステップでの判別を繰り返す。リム洗浄時間Taが経過した場合は、コントローラ10は、ステップ6に進み、給水ユニット2をタンク側給水状態に切り換える。また、ステップ7で、ポンプ4の駆動を開始する(図4A中の時刻T2)。これにより、第2の導水路L2を通じたタンク3への給水とポンプ4によるタンク3内の水の便器5への送出とが開始される。また、コントローラ10は、所定の洗浄時間Tbのカウントを開始する。
【0050】
そして、ステップ8では、コントローラ10は、内部タイマーにより所定の洗浄時間Tbが経過したか否かを判別する。ここにいう所定の洗浄時間Tbは、ポンプ駆動によってタンク3から上述した所定水量が流出する時間である。すなわち、本実施例では、ポンプ駆動の時間制御によって所定水量がタンク3から流出するように制御する。所定の洗浄時間Tbがまだ経過していない場合は本ステップでの判別を繰り返す。所定の洗浄時間Tbが経過した場合はステップ20に進む(図4A中の時刻T3)。
【0051】
ステップ20では、コントローラ10は、ポンプ4の駆動を停止する。これにより、タンク水位は、「洗浄水位」となる。
【0052】
なお、本実施例では、上述したようにポンプ駆動の時間制御によってタンク3からの流出流量を制御しているが、「洗浄水位」を検出するフロートスイッチ等の検出器を設け、この検出器を用いて所定水量をタンク3から流出させるようにしてもよい。
【0053】
ステップ20からはステップ2に戻る。
【0054】
次に、ステップ2において、「満水水位」が検出されない場合の動作(第2洗浄モード)について説明する。
【0055】
ステップ10に進むと、コントローラ10は、操作パネル15の洗浄スイッチがオンされたか否か、すなわち洗浄指令信号が入力されたか否かを判別する。洗浄指令信号が入力された場合は、リム洗浄時間Taのカウントを開始するとともにステップ11に進み、入力されていない場合はステップ2に戻る。
【0056】
ステップ11では、コントローラ10は、給水ユニット2を給水状態かつリム側給水状態に切り換える(図4B中の時刻T4)。これにより、タンク3への給水が停止し、リム部5aへの水道配管からの給水が開始される。
【0057】
そして、ステップ12に進み、コントローラ10は、リム洗浄時間Taが経過したか否かを判別する。リム洗浄時間Taは第1洗浄モードと同じである。リム洗浄時間Taがまだ経過していない場合は、本ステップでの判別を繰り返す。リム洗浄時間Taが経過した場合は、コントローラ10は、ステップ13に進む。
【0058】
ステップ13では、給水ユニット2をタンク側給水状態に切り換える。また、ステップ14で、ポンプ4の駆動を開始する(図4B中の時刻T5)。これにより、第2の導水路L2を通じたタンク3への給水とポンプ4によるタンク3内の水の便器5への送出とが開始される。また、コントローラ10は、所定の洗浄時間Tbのカウントを開始する。
【0059】
そして、ステップ15では、コントローラ10は、所定の洗浄時間Tbが経過したか否かを判別する。ここにいう所定の洗浄時間Tbは、ステップ8で説明した洗浄時間と同じ時間とする。所定の洗浄時間Tbがまだ経過していない場合はステップ16に進む。所定の洗浄時間Tbが経過した場合はステップ20に進む。
【0060】
ステップ16では、コントローラ10は、下限水位検出器7により「下限水位」が検出されたか否かを判別する。「下限水位」が検出されない場合はステップ15に戻り、これが検出された場合はステップ20に進む。
【0061】
ステップ20では、コントローラ10は、ポンプ4の駆動を停止する(図4B中の時刻T6)。ステップ20からはステップ2に戻る。
【0062】
ここで、ステップ15で所定の洗浄時間Tbの経過が判別されてステップ20に進んだ場合は、第2洗浄モードでのタンク3からの流出水量は、第1洗浄モードと同じポンプ駆動の時間制御による所定水量となる。すなわち、ポンプ駆動によるタンク水量の減少を「洗浄水位」よりも低い「下限水位」に相当する水量まで許容したことで、第1洗浄モードと同じ十分な水量を便器5に供給してこれを再洗浄することができる。
【0063】
一方、ステップ16で「下限水位」が検出されてステップ20に進んだ場合は、第2洗浄モードでのタンク3からの流出水量は、
(ポンプ駆動の開始時のタンク水量)+(ポンプ駆動中のタンク3への給水量)−(「下限水位」に相当する水量)
となる。
【0064】
この場合、便器5への供給水量は上記所定水量より少なくなるが、「洗浄水位」でポンプ駆動を停止させる場合に比べれば多くの水量を便器5に供給できる。しかも、ポンプ駆動中にもタンク3への給水を行うことで、ある程度十分な便器5への供給水量を確保することができる。さらに、ポンプ駆動を開始する前にリム部5aを通じて便器5に水が供給されるので、その水量とポンプ駆動による便器5への供給水量を合わせれば、より十分な水量での便器5の再洗浄を行うことができる。
【0065】
ただし、前述したように、ポンプ駆動中のタンク3への給水は必ずしも行わなくてもよい。
【0066】
以上のように、本実施例によれば、便器5の洗浄後、タンク3内の水位が「満水水位」まで増加することを待つことなく、十分な水量での便器2の繰り返し洗浄を行うことができる。
【0067】
なお、本実施例では、「下限水位」においてポンプ4の駆動を必ず停止させるので、タンク水量が少なくなりすぎてポンプ4に空気が混入してポンプ4から流出する水量が減少し、最後まで汚物を排出することができず洗浄性能が落ちることを防止できる。また、空のままでポンプを動作させるとポンプにダメージを与えるおそれがあるので、これも確実に防止できる。
【0068】
また、万一、満水水位検出器6が動作不良状態となって「満水水位」を検出できなくなっても、第2の洗浄モードによって便器5を洗浄することができる。
【実施例2】
【0069】
上記実施例1では、満水水位検出器6及び下限水位検出器7により得られるタンク水量に関する情報を用いてポンプ4の駆動を制御する場合について説明したが、これ以外の方法でポンプ制御を行うことも可能である。例えば、タンク3への給水流量及びポンプ4によるタンク3からの水の送出流量が予め分かっており、かつ安定している場合には、タンク3への給水時間及びポンプ4の駆動時間のカウントによって実施例1と同様の制御を行うこともできる。これにより、基本的には満水水位検出器6及び下限水位検出器7が不要となる。ただし、安全のためにこれらの検出器を設けてもよい。
【0070】
図5には、時間制御のみによるポンプ駆動制御のフローチャートを示す。なお、図3に示したフローチャートと同じ処理を行うステップについては、図3と同符号を付して説明に代える。
【0071】
図3のステップ3に代わるステップ22において、コントローラ10は、ステップ1での給水ユニット2の給水状態かつタンク側給水状態への切り換えとともに内部タイマーによりカウントを開始した所定の満水時間が経過したか否かを判別する。
【0072】
満水時間は、前回の洗浄が第1洗浄モードで行われた場合は、「洗浄水位」から「満水水位」までのタンク水量の増加(所定水量分の増加)に要するタンク3への給水時間として算出できる。また、前回の洗浄が第2洗浄モードで行われ、「下限水位」にてポンプ駆動が停止された場合は、「下限水位」から「満水水位」までの水量増加に要するタンク3への給水時間として算出できる。
【0073】
なお、前回の洗浄が第2洗浄モードで行われ、「下限水位」に到達する前にポンプ駆動が停止された場合は、その前回のポンプ駆動開始時の水位は「満水水位」に近かったはずである。このため、前回のポンプ駆動停止時の水位を「洗浄水位」とみなして「満水水位」までの水量増加に要するタンク3への給水時間として算出できる。もちろん、この繰り返し洗浄の初回の洗浄(第1洗浄モードでの洗浄)からのポンプ駆動時間とタンク3への給水時間を積算して前回のポンプ駆動停止時の水位を求め、その水位から「満水水位」までの水量増加に要するタンク3への給水時間として満水時間を算出してもよい。
【0074】
満水時間が経過した場合(図4A中の時刻T1)はステップ3に進み、経過していない場合はステップ10に進む。
【0075】
ステップ3及びステップ4a以降の第1洗浄モードでの処理は実施例1と同じである。
【0076】
一方、ステップ10に進んで第2洗浄モードに入った場合において、ステップ10〜15までの処理は実施例1と同じである。図3のステップ16に代わるステップ26において、コントローラ10は、ステップ13,14での給水ユニット2のタンク側給水状態への切り換え及びポンプ4の駆動開始とともに内部タイマーによりカウントを開始した下限水位時間が経過したか否かを判別する。
【0077】
下限水位時間は、前回の洗浄におけるポンプ駆動停止時からの経過時間(タンク3への給水時間)により求めた今回の第2洗浄モードでの水位がポンプ駆動により「下限水位」まで低下する時間として算出できる。
【0078】
下限水位時間が経過していない場合はステップ15に進、経過した場合はステップ20に進む(図4B中の時刻T6)。
【0079】
このように、本実施例では、コントローラ10は、給水ユニット2及びポンプ4の時間制御によって、タンク水量が第1の水量(「満水水位」)である第1の状態とタンク水量が第1の水位より少ない第2の状態かを判別する。そして、第1の状態で洗浄指令信号が入力された場合は、タンク水量が第2の水量(「洗浄水位」)に減少するまでの所定水量がタンク3から流出するようにポンプ4を駆動する。また、第2の状態で洗浄指令信号が入力された場合は、タンク水量が第3の水量(「下限水量」)に減少するまでのポンプ4の駆動を許容する。さらに、第3の水量に関する情報が検出されたことに応じてポンプ4の駆動を停止する。これにより、水位検出器を必要とすることなく、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0080】
上記実施例1では、タンク水量に関する情報として、フロートスイッチを用いて水位を検出する場合について説明した。しかし、タンク水量に関する情報は水位に限られず、またその検出方法もフロートスイッチを用いた方法に限られない。
【0081】
また、タンク水量に関する情報とは、タンク水量そのもの及びタンク水量の変化に応じて変動する情報を意味する。例えば、流量センサを用いてタンク3への給水量とタンク3からの流出量(ポンプ4による送水量)を検出し、これらの差をタンク水量に関する情報として用いてもよい。また、実施例2でも説明したように、タンク3への給水時間とポンプ4の駆動時間をそれぞれカウントし、これらの時間をタンク水量に関する情報として用いてもよい。
【0082】
さらに、水圧センサを用いてタンク3内の水圧を検出し、これをタンク水量に関する情報として用いてもよい。また、水位を検出する場合でも、光学センサや磁気センサを用いて検出することも可能である。
【0083】
また、上記実施例1では、第1洗浄モードと第2洗浄モードとで所定の洗浄時間Tbを同じ時間に設定した場合について説明したが、第2洗浄モードでの所定の洗浄時間を第1洗浄モードでのそれよりも短くしてもよい。
【0084】
以上説明した実施例は例示にすぎず、本発明は請求項の内容の範囲で様々な形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の実施例1である便器システムの構成を示すブロック図。
【図2】実施例1の便器システムを構成する便器洗浄装置の構成を示すブロック図。
【図3】実施例1の便器洗浄装置の動作を示すフローチャート。
【図4A】実施例1の便器洗浄装置の動作(第1洗浄モード)を示すタイミングチャート。
【図4B】実施例1の便器洗浄装置の動作(第2洗浄モード)を示すタイミングチャート。
【図5】本発明の実施例2である便器洗浄動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0086】
1 定流量弁
2 給水ユニット
3 タンク
4 ポンプ
5 便器
6 満水水位検出器
7 下限水位検出器
10 コントローラ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンクと、
該タンク内の水を便器に供給するポンプと、
前記便器の洗浄を指令する指令信号に応答して前記ポンプの駆動を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、
前記タンク内の水量が第1の水量である第1の状態で前記指令信号が入力された場合は、前記タンク内の水量が第2の水量に減少するまでの所定水量が前記タンクから流出するように前記ポンプを駆動し、
前記タンク内の水量が前記第1の水量より少ない第2の状態で前記指令信号が入力された場合は、該タンク内の水量が前記第2の水量より少ない第3の水量に減少するまでの前記ポンプの駆動を許容することを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記第1の水量及び前記第3の水量に関する情報を検出する検出手段を有し、
前記制御手段は、
前記第1の水量に関する情報が検出された前記第1の状態で前記指令信号が入力された場合は前記所定水量が前記タンクから流出するように前記ポンプを駆動し、
前記第1の水量に関する情報が検出されない前記第2の状態で前記指令信号が入力された場合は前記第3の水量に関する情報が検出されるまでの前記ポンプの駆動を許容することを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記第2の状態において、
前記タンク内の水量が前記第3の水量まで減少しない場合には前記所定水量を前記タンクから流出させるように前記ポンプを駆動し、
前記所定水量が前記タンクから流出する前に前記タンク内の水量が前記第3の水量に減少した場合は前記ポンプの駆動を停止させることを特徴とする請求項1又は2に記載の便器洗浄装置。
【請求項4】
前記第1の水量は、前記タンク内に貯留可能な上限水量に基づいて設定された水量であり、
前記3の水量は、前記ポンプの駆動が許容される下限水量に基づいて設定された水量であり、
前記第2の水量は、前記第3の水量に対して余裕水量を加えて設定された水量であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
【請求項5】
前記タンクに給水するタンク給水手段を有し、
前記制御手段は、少なくとも前記第2の状態において、前記ポンプの駆動中に前記タンク給水手段に前記タンクへの水の供給を行わせることを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
【請求項6】
前記タンク及び前記ポンプを介さずに前記便器に水を供給する便器給水手段を有し、
前記制御手段は、少なくとも前記第2の状態において、前記ポンプの駆動を開始する前に、前記便器給水手段に前記便器への水の供給を行わせることを特徴とする請求項1から5のいずれか1つに記載の便器洗浄装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の便器洗浄装置と、
該便器洗浄装置からの水が供給される便器とを有することを特徴とする便器システム。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−214904(P2008−214904A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51432(P2007−51432)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】