便器洗浄装置
【課題】自動吐水のタイミングを適切なものとし、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減する。
【解決手段】人体検知センサ12と、洗浄水の供給通路を開閉する電磁弁11と、電磁弁11の開閉動作を制御するコントローラ13と、コントローラ13に電磁弁11の開閉動作を制御するための操作信号を供給するリモコン装置14とを備えた便器洗浄装置1であって、コントローラ13は、オフディレイ時間経過した時に電磁弁11を動作させて便器2に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、リモコン装置14の洗浄操作が行われた場合、自動洗浄による電磁弁11の動作に優先して、電磁弁11を動作させて便器2に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、あらかじめ設定された所定の期間の間、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数を記憶し、記憶した自動洗浄の回数および意思洗浄の回数に基づき、オフディレイ時間を変更する。
【解決手段】人体検知センサ12と、洗浄水の供給通路を開閉する電磁弁11と、電磁弁11の開閉動作を制御するコントローラ13と、コントローラ13に電磁弁11の開閉動作を制御するための操作信号を供給するリモコン装置14とを備えた便器洗浄装置1であって、コントローラ13は、オフディレイ時間経過した時に電磁弁11を動作させて便器2に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、リモコン装置14の洗浄操作が行われた場合、自動洗浄による電磁弁11の動作に優先して、電磁弁11を動作させて便器2に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、あらかじめ設定された所定の期間の間、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数を記憶し、記憶した自動洗浄の回数および意思洗浄の回数に基づき、オフディレイ時間を変更する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器への吐水を行うことで便器を洗浄する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄装置として、便器の使用者(以下単に「使用者」という。)の用便後におけるリモコン装置の操作等、便器洗浄のための操作に基づいて便器への吐水を行うことで、便器を洗浄する装置が広く用いられている。このような便器洗浄装置においては、使用者が便器洗浄のための操作を行うことを忘れた場合、便器の洗浄が行われず、次の使用者が快適に便器を使用できないときがある。
【0003】
そこで、便器洗浄装置においては、用便後に使用者によって便器洗浄のための操作による洗浄が行われなかった場合、自動的に便器の洗浄を行う技術がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、用便後に使用者が弁座から離れたことが着座センサによって感知されてから所定時間経過後に、自動的に便器の洗浄を行う技術が開示されている。また、特許文献1の便器洗浄装置では、自動的に便器の洗浄を行う制御モードにおいて、使用者による便器洗浄のための操作が行われた場合には、自動的な便器の洗浄がキャンセルされ直ちに便器の洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−195356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の便器洗浄装置のように、用便後の自動吐水(自動的な便器の洗浄としての便器への吐水)が行われる構成においては、自動吐水の開始タイミングは、用便後における使用者の動作との関係で一定であった。すなわち、例えば特許文献1のように、用便後における使用者の動作として使用者が弁座から離れたことが検知される場合、使用者が弁座から離れた時から、自動吐水の開始時までの時間が一定であった。
【0006】
このため、用便後の自動吐水が行われる構成においては、例えば、使用者が健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい場合であっても、所定時間が経過すると自動吐水が行われ、便が流れてしまうという問題がある。すなわち、用便後において、使用者による便器洗浄のための操作が行われない場合であっても、所定時間が経過すると自動吐水によって便が強制的に流されてしまい、使用者が便の状態を確認するための時間が確保されない場合がある。
【0007】
また、用便後の自動吐水が行われる構成においては、例えば特許文献1の便器洗浄装置のように、自動吐水が開始される前に、使用者による便器洗浄のための操作が行われると、自動吐水がキャンセルされ、即座に便器の洗浄が行われる構成のものがある。このような構成においては、自動吐水が開始される前に、使用者が便器の洗浄を行いたい場合、使用者は便器洗浄のための操作を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、使用者が便器洗浄のための操作を行うことは、使用者の状況等によっては煩わしい場合がある。また、使用者による便器洗浄のための操作が行われる都度、リモコン装置等、便器洗浄のための操作部における電力消費が増加する。このため、使用者による便器洗浄のための操作の回数が増えることは、電力消費削減の観点から好ましくない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る便器洗浄装置は、便器の使用者を検知する人体検知部と、前記便器に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁と、前記人体検知部からの検知信号を受け、前記洗浄弁の開閉動作を制御する制御部と、該制御部に前記洗浄弁の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部と、を備えた便器洗浄装置であって、前記制御部は、人体検知部により前記使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、前記操作部の前記便器の洗浄のための操作が行われた場合、前記自動洗浄による前記洗浄弁の動作に優先して、前記洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、あらかじめ設定された所定の期間の間、前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数を記憶し、記憶した前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数に基づき、前記所定時間を変更するものである。このような構成により、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る便器洗浄装置においては、好ましくは、前記制御部は、記憶した前記自動洗浄の回数と前記意思洗浄の回数との合計に対する前記自動洗浄の回数の割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、前記所定時間を短縮し、前記自動洗浄の回数の割合が、前記基準割合以下でない場合は、前記所定時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う。このような構成により、自動吐水が開始されるまでの所定時間を自動的に最適な時間にすることができる。
【0012】
また、本発明に係る便器洗浄装置においては、好ましくは、前記所定時間は、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する。このような構成により、所定時間を適正な範囲に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の適用例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図4】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図6】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の動作ルーチンを示すフロー図。
【図7】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のオフディレイ時間変更ルーチンを示すフロー図。
【図8】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のオフディレイ時間変更ルーチンの変形例を示すフロー図。
【図9】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、使用者による便器洗浄のための操作によって便器に洗浄水が吐水される意思洗浄と、意思洗浄が行われなかった場合に自動的に便器に洗浄水が吐水される自動洗浄とが行われる構成において、意思洗浄の回数と自動洗浄の回数とに基づいて、自動洗浄としての便器への吐水が開始されるタイミングを変更しようとするものである。これにより、本発明は、自動吐水のタイミングの適正化、および電力削減を図る。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[便器洗浄装置の構成]
図1に示すように、本実施形態の便器洗浄装置1は、便器2への吐水を行うことで便器2を洗浄する。便器洗浄装置1は、給水管3から供給される水を、便器2の洗浄水として、便器2に吐水する。給水管3によって供給される水は、止水栓4を介して流入管5によって便器洗浄装置1に流れ込む。便器洗浄装置1から吐水される洗浄水は、便器2に接続される流出管6により便器2に流れ込む。
【0017】
図1および図2に示すように、便器洗浄装置1は、電磁弁11を含む装置本体10と、人体検知センサ12と、コントローラ13と、リモコン装置14とを備える。便器洗浄装置1においては、装置本体10、人体検知センサ12、およびコントローラ13は、略直方体状の外形を有するケーシング15内に設けられる。リモコン装置14は、図1に示すように、例えば便器2が設置される部屋の壁に取り付けられること等により、便器2の使用者(以下単に「使用者」という。)が操作可能な位置に設けられる。
【0018】
本実施形態の便器洗浄装置1においては、使用者がリモコン装置14において便器洗浄のための操作を行うことによって便器2に洗浄水が吐水される意思洗浄と、意思洗浄が行われなかった場合に自動的に便器2に洗浄水が吐水される自動洗浄とが行われる。ここで、自動洗浄としての便器2への吐水は、使用者の用便後等において、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した後に行われる。以下、便器洗浄装置1の各部の詳細について説明する。
【0019】
図2に示すように、装置本体10は、洗浄水の供給を受ける入水口16と、便器2へ吐水される洗浄水の流出口としての出水口17とを有する。入水口16には、給水管3(図1)によって供給される水を便器洗浄装置1に導く流入管5(図1)が接続される。出水口17には、洗浄水を便器2へと導く流出管6(図1)が接続される。
【0020】
装置本体10においては、給水管3から供給される洗浄水が、流入管5を介して入水口16から流れ込む(矢印A1参照)。入水口16から流れ込んだ洗浄水は、装置本体10内に形成される水の通路を通って、出水口17から流れ出て(矢印A2参照)、流出管6を介して便器2へと供給される。以下の説明では、装置本体10において入水口16と出水口17との間に設けられる洗浄水の通路を「本体内通水路」という。
【0021】
装置本体10は、ピストンバルブ18を有する。ピストンバルブ18は、本体内通水路において入水口16の下流側に設けられる。ピストンバルブ18は、本体内通水路内において上下方向に移動可能に設けられる。ここで、上下方向とは、便器2が設置される床面に対して略垂直方向、つまり略鉛直方向である。以下の説明では、ピストンバルブ18の移動方向である上下方向を、便器洗浄装置1における上下方向とする。
【0022】
ピストンバルブ18は、パッキン18aを有する。パッキン18aは、装置本体10においてピストンバルブ18の摺動面として形成される壁面と、ピストンバルブ18の外周面との間をシールする。
【0023】
装置本体10において、ピストンバルブ18の上側には、背圧室19が設けられている。背圧室19は、ピストンバルブ18の内部に形成される連通路18bを介して入水口16と連通する。ピストンバルブ18の下側には、二次側水路20が設けられている。二次側水路20に流れ込む水は、出水口17から流れ出る。入水口16と二次側水路20とは、ピストンバルブ18が最下端に位置することで非連通状態となり、ピストンバルブ18が最下端の位置から上昇することで連通状態となる。
【0024】
背圧室19は、バイパス流路21によって二次側水路20に連通する。このバイパス流路21に、電磁弁11が設けられる。電磁弁11は、バイパス流路21の開閉を行う。つまり、電磁弁11の開閉により、バイパス流路21を介する背圧室19と二次側水路20との連通状態・非連通状態が切り換えられる。
【0025】
このような構成を備える装置本体10においては、次のようにして、便器2への洗浄水の吐水が行われる。電磁弁11が閉じている状態では、給水管3から流入管5を介して入水口16に流れ込む水が、ピストンバルブ18の連通路18bを介して、電磁弁11の上流側の背圧室19に流れ込み、背圧室19内に溜まる。
【0026】
背圧室19内に水が溜まることにより、背圧室19内の水圧によって背圧室19内の圧力が二次側水路20内の圧力よりも高くなってピストンバルブ18が押し下げられる。これにより、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられる(非連通状態となる)。つまり、電磁弁11が閉じている状態においては、入水口16から流れこむ水が電磁弁11とピストンバルブ18とによってせき止められ、出水口17からの吐水は行われない。
【0027】
このように電磁弁11が閉状態であり、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられている状態から、電磁弁11が開状態とされると、背圧室19内の水がバイパス流路21を介して二次側水路20に流れ込む。これにより、背圧室19内の圧力が低下し、入水口16内の水によりパッキン18aが押し上げられることで、ピストンバルブ18が上昇(背圧室19側に移動)する。ピストンバルブ18が上昇することで、入水口16と二次側水路20とが連通状態となり、入水口16に流れ込む水が、二次側水路20へと流れ、出水口17から流れ出て便器2に供給される。
【0028】
そして、電磁弁11の開弁によって出水口17から水が流れ出ている状態から、電磁弁11が閉じられることで、入水口16から流れ込む水の一部は、ピストンバルブ18の連通路18bから背圧室19に流れ込み、背圧室19に溜まり始める。これにより、背圧室19内の圧力が上昇するとともに二次側水路20内の圧力が低下し、ピストンバルブ18が押し下げられる。そして、最終的には入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられ、出水口17からの吐水が行われない止水状態となる。
【0029】
このような電磁弁11の開閉による便器2への洗浄水の吐水においては、電磁弁11の開時間(厳密には励磁時間)の制御により、便器2へ吐水される洗浄水の水量が調整される。したがって、電磁弁11の開時間は、小便洗浄の場合に比べて大便洗浄の場合の方が長い。
【0030】
このように、本実施形態の便器洗浄装置1においては、装置本体10が有する電磁弁11は、本体内通水路の開閉を行うための開閉弁であり、便器2に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁として機能する。電磁弁11の開閉によって、本体内通水路の開閉、つまり便器洗浄装置1の吐水状態と止水状態とが切り換わる。
【0031】
電磁弁11の開閉動作は、コントローラ13によって制御される。このため、電磁弁11は、コントローラ13に接続される。電磁弁11は、コントローラ13からの制御信号に従って電気的に制御され、バイパス流路21の開閉を行う。電磁弁11によるバイパス流路21の開閉は、上述したような本体内通水路の開閉をともなう。
【0032】
人体検知センサ12は、使用者を検知する人体検知部として機能する。人体検知センサ12は、使用者の存在を自動で検知する非接触センサである。本実施形態では、人体検知センサ12は、赤外線センサである。このため、人体検知センサ12は、赤外線を発光する発光素子と、発光した赤外線の反射光を受光する受光素子とを有する。
【0033】
人体検知センサ12は、ケーシング15内において、赤外線を送受する側が使用者の方向を向くように配置される。ケーシング15には、使用者が位置する側の壁面に、人体検知センサ12による赤外線の送受を確保するための検知窓12aが設けられている(図1参照)。
【0034】
本実施形態では、人体検知センサ12により、便器2の弁座2aに着座している使用者の存在の有無が検知される。したがって、弁座2aに着座している使用者は、人体検知センサ12の検知範囲内に位置する。そして、人体検知センサ12によれば、使用者が人体検知センサ12の検知範囲内に存在すること、および弁座2aに着座している使用者が離座し、人体検知センサ12の検知範囲から出たことが検知される。本実施形態では、使用者が人体検知センサ12の検知範囲から出たことが検知されたことを、使用者の離座が検知されたこととする。
【0035】
人体検知センサ12は、コントローラ13に接続される。人体検知センサ12から出力される信号が、コントローラ13に入力され、コントローラ13により、使用者の存在・非存在が検知される。
【0036】
なお、本実施形態では、人体検知センサ12は赤外線センサであるが、使用者を検知する人体検知部としては、赤外線センサのほか、公知の非接触センサや接触センサ等の各種センサを採用することができる。また、使用者を検知する人体検知部は、本実施形態の人体検知センサ12のように、装置本体10等とともにケーシング15に収納されることなく、例えば弁座2aに一体的に内蔵される構成等であってもよい。
【0037】
コントローラ13は、人体検知センサ12からの検知信号を受け、電磁弁11の開閉動作を制御する制御部として機能する。具体的には、コントローラ13は、人体検知センサ12から出力される信号や、リモコン装置14における操作等に基づいて、電磁弁11の動作を制御する。このため、コントローラ13には、人体検知センサ12からの検知信号、およびリモコン装置14からの操作信号が入力される。また、コントローラ13からは、電磁弁11に対する制御信号が出力される。
【0038】
コントローラ13は、データ通信用のバス等により互いに接続されるCPU(Central Processing Unit)やメモリや入出力インターフェイス等の各種機能部分を有する。コントローラ13は、入出力インターフェイスとして、人体検知センサ12およびリモコン装置14からの入力信号を受けるための入力インターフェイス、ならびに電磁弁11に対する制御信号を出力するための出力インターフェイスを有する。
【0039】
コントローラ13は、制御プログラムや後述するような自動洗浄についての制御に用いられる各種データ等を記憶する記憶部13aを有する。記憶部13aは、例えばCPUに接続されるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される。コントローラ13が有するCPUは、制御プログラム等に従って所定の演算を行う演算部として機能する。なお、コントローラ13は、図示せぬACアダプタを介して電力の供給を受ける。
【0040】
リモコン装置14は、コントローラ13に電磁弁11の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部として機能する。具体的には、リモコン装置14は、コントローラ13に供給する操作信号として、赤外線信号を発信する。このため、リモコン装置14は、赤外線信号を発信する発信部22を有する。本実施形態では、リモコン装置14は、図1に示すように、矩形厚板状の外形を有し、設置された状態で上側となる両側の角部の2箇所に、発信部22が設けられている。
【0041】
一方、図2に示すように、装置本体10においては、リモコン装置14の発信部22から発信された赤外線信号を受信する受信部23が設けられる。受信部23は、コントローラ13に接続され、受信部23により受信された赤外線信号は、電気信号に変換される等してコントローラ13に入力される。
【0042】
リモコン装置14は、便器洗浄、つまり便器2への洗浄水の吐水を行うための操作スイッチとして、洗浄スイッチ24を有する。洗浄スイッチ24が使用者等によって操作されることで、上述したように電磁弁11が開いて便器洗浄装置1が吐水状態となり、入水口16から便器2への洗浄水の吐水が行われる。本実施形態では、洗浄スイッチ24は、大便洗浄用のスイッチとする。ただし、図示は省略するが、リモコン装置14は、例えば小便洗浄用のスイッチ等、他の操作スイッチも有する。
【0043】
リモコン装置14は、駆動電力の供給を受けるための電池を内蔵する。ただし、リモコン装置14の駆動電力は、便器洗浄装置1の外部に設けられる電源から供給されてもよい。また、本実施形態では、リモコン装置14からコントローラ13に供給される操作信号は、赤外線信号であるが、この方式に限定されない。リモコン装置14からの操作信号としては、例えば、他の波長の電磁波を利用した信号や、超音波を利用した信号や、有線方式により送信される信号等であってもよい。
【0044】
以上のような構成を備える便器洗浄装置1においては、コントローラ13により、自動洗浄についての制御が行われる。具体的には、自動洗浄の制御において、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2への吐水が開始されるまでの時間の変更が、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行われる。人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2への吐水が開始されるまでの時間の変更は、ある一定の期間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とに基づいて行われる。以下、本実施形態の便器洗浄装置1において行われる自動洗浄についての制御の具体的な内容について説明する。
【0045】
[制御内容]
本実施形態の便器洗浄装置1においては、上述したように、コントローラ13は、自動洗浄と意思洗浄とを行う。本実施形態の便器洗浄装置1では、自動洗浄は、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、電磁弁11を動作させ、便器2に洗浄水を吐水させる吐水制御(第1の吐水制御)である。また、意思洗浄は、リモコン装置14の便器2の洗浄のための操作が行われた場合、自動洗浄(第1の吐水制御)による電磁弁11の動作に優先して、便器2の洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、電磁弁11を動作させ、便器2に洗浄水を吐水させる吐水制御(第2の吐水制御)である。ここで、リモコン装置14の便器2の洗浄のための操作(以下「洗浄操作」という。)は、本実施形態の場合、リモコン装置14の洗浄スイッチ24の操作である。
【0046】
以下の説明では、第1の吐水制御としての自動洗浄に関し、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2に洗浄水を吐水させるために電磁弁11を動作させた時、つまり電磁弁11の開動作によって便器2への吐水が開始された時までの時間を「オフディレイ時間」とする。また、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時を「離座時」とし、電磁弁11の開動作によって便器2への吐水が開始された時を「吐水開始時」とする。したがって、自動洗浄において、オフディレイ時間は、離座時から吐水開始時までの経過時間である所定時間に相当する。
【0047】
図3に示すグラフは、離座時から吐水開始時までの時間と、所定の期間の間における時間帯ごとの累積の洗浄回数との関係を示す。具体的には、図3に示すグラフにおいて、横軸は、離座時を基準(0秒)として、1秒ごとの時間帯に区切られている。つまり、図3に示すグラフにおいて、各時間帯の時間幅Δtは1秒である。
【0048】
図3に示すグラフにおいて、離座時からの経過時間である時間To(秒)が、オフディレイ時間を示す(直線O1参照)。つまり、図3に示す例では、Δt=1秒であることから、オフディレイ時間は20秒(To=20秒)である。したがって、オフディレイ時間である20秒経過前に行われた洗浄、つまり図3のグラフの横軸について直線O1よりも左側の時間で行われた洗浄が意思洗浄である。また、オフディレイ時間である20秒経過後に行われた洗浄、つまり図3のグラフの横軸について直線O1よりも右側の時間で行われた洗浄が自動洗浄である。
【0049】
すなわち、オフディレイ時間経過前に使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われない限り、オフディレイ時間が経過することで自動洗浄が行われる。また、オフディレイ時間経過前に使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われることで、自動洗浄に先立って便器2への洗浄水の吐水が行われる。
【0050】
図3のグラフに示すように、オフディレイ時間(To)経過までの洗浄の回数、つまり意思洗浄の回数の時間分布に関し、離座時直後に比較的大きなピークがあり(符号P1参照)、その後、オフディレイ時間の直前辺りに比較的小さなピークがある(符号P2参照)。このような意思洗浄の回数の分布は、各使用者の使用態様や習慣等を反映している。
【0051】
具体的には、最初のピーク(符号P1)は、大部分の使用者が、用便後、比較的離座の直後にリモコン装置14において洗浄操作を行い、便器2の洗浄を行うことを反映している。このように、便器2の使用回数の大部分では、使用者によって用便後比較的すぐに(離座時から10秒程度以内で)リモコン装置14の洗浄操作が行われ、便器2の洗浄が行われる。
【0052】
また、次のピーク(符号P2)は、使用者の一部は、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認するため、用便後、離座してからある程度の時間(15秒程度)が経過した後に、リモコン装置14において洗浄操作を行い、便器2の洗浄を行うことを反映している。このように、用便後比較的すぐに使用者によってリモコン装置14の洗浄操作による洗浄が行われない場合については、使用者が用便後に便の状態を確認する等の理由により、使用者のリモコン装置14の洗浄操作による吐水開始時がある時間帯に集中する傾向にある。図3に示す例では、離座時から15〜17秒後付近の時間帯に集中している。なお、例えば使用者が便器2の洗浄を忘れた場合等、リモコン装置14による意思洗浄が行われないまま、離座時からオフディレイ時間が経過した場合、自動洗浄が行われる。図3に示すように、自動洗浄の回数は、意思洗浄の回数に比べてかなり少ない。
【0053】
本実施形態の便器洗浄装置1における自動洗浄についての制御では、上述したような分布を示す、所定の期間の間における意思洗浄の回数と自動洗浄の回数とに基づいて、オフディレイ時間が変更される。このため、自動洗浄についての制御を行う制御部として機能するコントローラ13は、あらかじめ設定された所定の期間の間、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数を記憶し、記憶した自動洗浄の回数および意思洗浄の回数に基づき、オフディレイ時間を変更する。
【0054】
コントローラ13による自動洗浄についての制御において、あらかじめ設定された所定の期間の間の自動洗浄および意思洗浄のそれぞれの回数は、コントローラ13が有する記憶部13aに記憶される。また、この自動洗浄についての制御で用いられる所定の期間(以下「データ保持期間」という。)は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。
【0055】
コントローラ13は、タイマを有し、便器2への吐水動作が行われた時間と、その洗浄の種類(自動洗浄か意思洗浄か)とを含むデータを時間軸に沿ってデータ保持期間の間記憶することで、データ保持期間の間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とを記憶する。つまり、コントローラ13は、現時点から、あらかじめ設定されたデータ保持期間遡った時までの期間の間の、自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とを履歴情報として記憶する。
【0056】
したがって、コントローラ13において記憶される自動洗浄および意思洗浄の回数は、現時点と、現時点からデータ保持期間前の時点との間で実行された自動洗浄および意思洗浄の回数であり、データ保持期間を過ぎた記憶データは随時削除される。つまり、自動洗浄または意思洗浄のデータとしてコントローラ13に記憶されたデータは、記憶された時点からデータ保持期間が経過すると削除される。データ保持期間は、例えば1週間から数カ月の範囲で設定される。
【0057】
このようにコントローラ13において記憶される自動洗浄と意思洗浄の回数に基づくオフディレイ時間の変更制御は、例えば次のようにして行われる。自動洗浄の回数が少なくなる傾向にある場合は、オフディレイ時間が短縮され、自動洗浄の回数が多くなる傾向にある場合は、オフディレイ時間が延長される。
【0058】
オフディレイ時間として理想的な時間は、例えば次のような時間である、すなわち、図3に示すグラフにおいて後発のピーク(符号P2)付近に分布されるような、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認するための時間を要する使用者に対して、便の状態を確認し終えた直後に、吐水開始時が訪れるような時間である。
【0059】
そこで、上記のとおり自動洗浄の回数が少なくなる傾向にあるということは、離座時からオフディレイ時間が経過するまでの間に、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作によって吐水開始時が訪れる場合が増えているということである。つまり、自動洗浄が発動する前に意思洗浄が行われる場合が増えているということである。
【0060】
このような傾向にある場合は、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとした時から、自動洗浄による便器2への吐水が開始される吐水開始時までの間に余裕があるといえる。つまり、この場合、用便後に便の状態を確認する使用者に対しては、便の状態を確認するための時間は確保されるものの、自動洗浄を待てない使用者によってリモコン装置14の洗浄操作が行われ、自動洗浄が発動されないというような状況ということができる。
【0061】
したがって、このような場合、オフディレイ時間を短縮することで、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとする時から吐水開始時までの時間を詰め、なるべく使用者によるリモコン装置14における洗浄操作の回数を減らす。
【0062】
一方、上記のとおり自動洗浄の回数が多くなる傾向にあるということは、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作が行われる前に、オフディレイ時間が経過し、自動洗浄としての吐水開始時が訪れる場合が増えているということである。つまり、意思洗浄が行われる前に自動洗浄が行われる場合が増えているということである。
【0063】
このような傾向にある場合、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとする時には、すでにオフディレイ時間が経過し、自動洗浄が開始される状況にあるといえる。つまり、この場合、用便後に便の状態を確認する使用者に対しては、便を確認した後に使用者によってリモコン装置14の洗浄操作が行われないものの、便の状態を確認するための時間が確保されないというような状況ということができる。
【0064】
したがって、このような場合、オフディレイ時間を延長することで、自動洗浄としての吐水開始時を遅らせ、便の状態を確認するための時間を確保する。
【0065】
自動洗浄と意思洗浄の回数に基づくオフディレイ時間の変更制御において、オフディレイ時間を変更する処理は、上記のとおり所定の更新時間ごとに行われる。この所定の更新時間は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。所定の更新時間は、データ保持期間よりも短い期間であり、例えば30分から数時間程度の範囲で設定される。
【0066】
また、オフディレイ時間の変更制御において、1回の変更処理でオフディレイ時間を短縮したり延長したりする時間の長さ(以下「変更時間長」という。)は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。変更時間長は、特に限定されるものではないが、例えば0.5秒から数秒程度の範囲で設定される。
【0067】
ここで、図3に示す洗浄回数の時間分布においてオフディレイ時間が変更した場合を仮定し、オフディレイ時間の変更にともなう自動洗浄の回数の増減について説明する。なお、ここでは、オフディレイ時間についての変更時間長をΔtと同じ1秒とする。
【0068】
図3に示す洗浄回数の時間分布において、オフディレイ時間を短縮する処理が1回行われた場合、オフディレイ時間は、図3に示すようにTo=20秒(直線O1参照)の状態から、図4に示すようにTo1=19秒(直線Oa参照)に変化する(矢印B1参照)。このようにオフディレイ時間が短縮することで、オフディレイ時間の変更前においてオフディレイ時間経過直前の時間帯の意思洗浄の回数分(符号C1参照)が、自動洗浄の回数に足されることになる。
【0069】
一方、図3に示す洗浄回数の時間分布において、オフディレイ時間を延長する処理が1回行われた場合、オフディレイ時間は、図3に示すようにTo=20秒(直線O1参照)の状態から、図5に示すようにTo2=21秒(直線Ob参照)に変化する(矢印B2参照)。このようにオフディレイ時間が延長することで、オフディレイ時間の変更前においてオフディレイ時間経過直後の時間帯の自動洗浄の回数分(符号C2参照)が、意思洗浄の回数から引かれることになる。
【0070】
なお、ここでのオフディレイ時間が変更した場合について説明は、あくまで洗浄回数の分布が図3に示す分布で一定であるとの仮定のもとでオフディレイ時間だけが変化した場合についての説明であり、実際のオフディレイ時間の変更制御では、洗浄回数の分布の変化にともなって、オフディレイ時間が変更される。
【0071】
以上のようにオフディレイ時間の変更制御を行う本実施形態に係る便器洗浄装置1によれば、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水(自動洗浄としての便器2への吐水)を行うことができ、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【0072】
具体的には、上述したようなオフディレイ時間の変更制御が行われることで、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとした時から自動洗浄としての吐水開始時までの間に余裕がある場合は、オフディレイ時間が短縮される。また、使用者によるリモコン装置14における洗浄操作が行われる時よりも前にオフディレイ時間が経過してしまうような場合は、オフディレイ時間が延長される。
【0073】
このような制御により、オフディレイ時間が、使用者が便の確認をし終えた直後に吐水開始時が訪れるような理想的な時間に近付き、より適切なタイミングで自動吐水が行われる。結果として、自動洗浄が発動される前における使用者によるリモコン装置14の洗浄操作の回数を減らすことができるので、リモコン装置14における電力消費を削減することができ、省電力化を図ることができる。
【0074】
以下では、本実施形態の便器洗浄装置1において行われる制御内容の詳細について説明する。まず、図6に示すフロー図を用いて、便器洗浄装置1において行われる制御のメインルーチンとしての便器洗浄装置1の動作ルーチンについて説明する。なお、以下に説明する制御処理は、コントローラ13のCPUが記憶部13a等に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0075】
(動作ルーチン)
図6に示すように、便器洗浄装置1においては、まず、オフディレイ時間の初期値を設定することが行われる(S10)。ここでは、例えば便器洗浄装置1の出荷時において、オフディレイ時間が、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。設定されたオフディレイ時間の初期値は、便器洗浄装置1の電源投入時に自動的に読み出され、自動洗浄に用いられる。
【0076】
便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて、便器洗浄装置1は、使用者によって便器2が使用されない限り、使用者による使用を待つ待機中となる(S20)。
【0077】
また、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、上述したように、データ保持期間の間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とが記憶される。このため、便器洗浄装置1の待機中においては、一定期間(データ保持期間)経過した意思洗浄の回数と自動洗浄の回数の記憶データが削除されていく(S30)。つまり、コントローラ13において記憶される自動洗浄の回数および意思洗浄の回数は、現時点と、現時点からデータ保持期間前の時点との間における回数であり、データ保持期間を過ぎた記憶データは随時削除される。なお、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の記憶の処理については後述する。
【0078】
そして、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、サブルーチンとして、オフディレイ時間を変更するためのオフディレイ時間変更ルーチンが行われる(S40)。オフディレイ時間変更ルーチンについては後述する。
【0079】
ここで、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて行われる自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の記憶の処理について説明する。かかる処理においては、まず、意思洗浄の入力があったか否かが判断される(S50)。ここで、意思洗浄の入力とは、リモコン装置14における洗浄操作、つまり洗浄スイッチ24の操作による操作信号のコントローラ13に対する入力である。したがって、ステップS50では、リモコン装置14の洗浄スイッチ24の操作による操作信号がコントローラ13に入力されたか否かが判断される。
【0080】
ステップS50において、意思洗浄の入力があった場合(S50、Yes)、意思洗浄の回数が1回分加算され(S60)、便器2の洗浄、つまり便器2への洗浄水の吐水が行われる(S90)。すなわち、意思洗浄の入力があった場合は、便器2への洗浄水の吐水に際し、意思洗浄の回数がカウントされ、コントローラ13の記憶部13aに記憶される意思洗浄の回数に「1」加算される。ここで加えられた洗浄回数のデータは、上述したようにデータ保持期間の間保持される。
【0081】
一方、ステップS50において、意思洗浄の入力がない場合(S50、No)、オフディレイ時間が経過したか否かが判断される(S70)。ここで、オフディレイ時間が経過した場合(S70、Yes)、自動洗浄の回数が1回分加算され(S80)、便器2の洗浄が行われる(S90)。すなわち、意思洗浄の入力がない状態でオフディレイ時間が経過した場合は、便器2への洗浄水の吐水に際し、自動洗浄の回数がカウントされ、コントローラ13の記憶部13aに記憶される自動洗浄の回数に「1」加算される。ここで加えられた洗浄回数のデータは、上述したようにデータ保持期間の間保持される。
【0082】
ステップS70において、オフディレイ時間が経過していない場合(S70、No)、便器洗浄装置1は待機中となる(S20)。つまり、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、意思洗浄の入力があったか否かの判断(S50)と、オフディレイ時間が経過したか否かの判断(S70)とが並行して行われ、オフディレイ時間の経過前に意思洗浄の入力があった場合は意思洗浄が実行され、意思洗浄の入力前にオフディレイ時間が経過した場合は自動洗浄が実行される。そして、意思洗浄または自動洗浄が実行される都度、データ保持期間の間保持される洗浄回数のデータに、意思洗浄または自動洗浄の回数が加算される。
【0083】
(オフディレイ時間変更ルーチン)
オフディレイ時間変更ルーチン(図6、S40)について説明する。このオフディレイ時間変更ルーチンは、上述したような便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて行われる処理であり、データ保持期間の間保持される自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とに基づいて所定の更新時間ごとにオフディレイ時間を変更する処理である。
【0084】
具体的には、本実施形態のオフディレイ時間変更ルーチンでは、データ保持期間の間記憶保持される履歴情報としての自動洗浄の回数および意思洗浄の回数(以下「履歴回数」という。)について、全体の合計回数に対する自動洗浄の回数の割合が用いられる。つまり、履歴回数についての、自動洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)という値が用いられる。以下の説明では、履歴回数について、自動洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)により算出される値を、「自動洗浄回数割合」という。
【0085】
そして、オフディレイ時間変更ルーチンでは、自動洗浄回数割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮され、自動洗浄回数割合が基準割合以下でない場合は、オフディレイ時間が一定時間延長される。
【0086】
オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合の比較対象となる基準割合は、履歴回数について自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の分布との関係において理想的なオフディレイ時間が得られるように設定される。理想的なオフディレイ時間は、用便後に便の状態を確認する使用者に対して、便の状態を確認するための時間が確保されるとともに、使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われる前に自動洗浄を発動させるような時間である。理想的なオフディレイ時間は、例えば、図3に示すグラフにおいては、後発のピーク(符号P2)の山の直後辺りに位置する。
【0087】
したがって、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合が基準割合以下であるということは、傾向として、自動洗浄の回数が少ないということであり、オフディレイ時間が経過する前に、使用者によるリモコン装置14における洗浄操作によって意思洗浄が行われてしまう回数が多いということである。リモコン装置14の洗浄操作の回数が多くなることは、省電力の観点から好ましくない。したがって、この場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮される。
【0088】
逆に、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合が基準割合以下でないということは、傾向として、自動洗浄の回数が多いということであり、意思洗浄のための使用者によるリモコン装置14における洗浄操作が行われる前に、オフディレイ時間が経過している回数が多いということである。リモコン装置14における洗浄操作の前にオフディレイ時間が経過する回数が多くなることは、便の状態を確認するための時間の確保が十分でないといえる。したがって、この場合は、オフディレイ時間が一定時間延長される。
【0089】
オフディレイ時間変更ルーチンで自動洗浄回数割合の比較対象として用いられる基準割合は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。基準割合は、各使用者の使用態様や習慣等にもよるが、例えば90%に設定される。
【0090】
このように、本実施形態の便器洗浄装置1においては、オフディレイ時間変更ルーチンを実行するコントローラ13は、記憶した自動洗浄の回数と意思洗浄の回数との合計に対する自動洗浄の回数の割合(自動洗浄回数割合)が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、オフディレイ時間を短縮し、自動洗浄の回数の割合が、基準割合以下でない場合は、オフディレイ時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う。オフディレイ時間変更ルーチンについて、図7に示すフロー図を用いて説明する。
【0091】
オフディレイ時間変更ルーチンは、上記のとおり所定の更新時間ごとにオフディレイ時間を変更する処理である。このため、図7に示すように、オフディレイ時間変更ルーチンでは、まず、前回のオフディレイ時間の変更処理時から、所定の更新時間が経過したか否かが判断される(S110)。ここで、所定の更新時間が経過していた場合、オフディレイ時間の変更処理が実行され、所定の更新時間が経過していない場合(S110、No)、オフディレイ時間変更ルーチンは終了する。なお、ステップS110において、便器洗浄装置1の電源投入時からオフディレイ時間の変更処理が1回も行われていない場合、つまりオフディレイ時間の変更処理が初回の場合、所定の更新時間の基準は、例えば便器洗浄装置1の電源投入時とされる。
【0092】
ステップS110において、所定の更新時間が経過したと判断された場合(S110、Yes)、自動洗浄回数割合が、基準割合以下であるか否かが判断される(S120)。ステップS120において、自動洗浄回数割合が基準割合以下であると判断された場合(S120、Yes)、オフディレイ時間が一定時間短縮される(S130)。つまりこの場合、オフディレイ時間が上述した変更時間長の分だけ短縮される。
【0093】
一方、ステップS120において、自動洗浄回数割合が基準割合以下でないと判断された場合(S120、No)、オフディレイ時間が一定時間延長される(S140)。つまりこの場合、オフディレイ時間が上述した変更時間長の分だけ延長される。
【0094】
このようにオフディレイ時間変更ルーチンを行う本実施形態の便器洗浄装置1によれば、自動吐水が開始されるまでのオフディレイ時間を自動的に最適な時間にすることができる。すなわち、上述したように自動洗浄回数割合の比較対象となる基準割合を、履歴回数について自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の分布との関係において理想的なオフディレイ時間が得られるように設定することで、オフディレイ時間を各使用者の使用態様や習慣等に即した時間に制御することが可能となる。
【0095】
なお、オフディレイ時間変更ルーチンにおいては、自動洗浄回数割合に代えて、全体の回数に対する意思洗浄の回数の割合が用いられてもよい。つまり、履歴回数についての、意思洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)という値が用いられてもよい。この場合、例えば、意思洗浄の回数の割合の比較対象となる基準の割合が設定され、意思洗浄の回数の割合が基準の割合以下の場合は、オフディレイ時間が一定時間延長され、意思洗浄の回数の割合が基準の割合以下でない場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮される。
【0096】
また、上述したようなオフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合の比較対象として用いられる基準割合は、所定の幅を有する値であってもよい。つまり、基準割合を数値範囲とすることで、基準割合に幅を持たせてもよい。この場合、オフディレイ時間変更ルーチンにおいては、自動洗浄回数割合が、基準割合としての数値範囲外であるときに、オフディレイ時間が変更され、自動洗浄回数割合が基準割合としての数値範囲内であるときは、オフディレイ時間が変更されない。基準割合が所定の幅を有する場合、基準割合は、例えば85〜95%に設定される。
【0097】
このように自動洗浄回数割合の比較対象である基準割合が所定の幅を有する場合について、図8に示すフロー図を用いて説明する。なお、以下の説明では、所定の幅を有する基準割合の下限値を値Aとし、上限値を値Bとする。つまり、基準割合が値A〜値Bの数値範囲として設定される場合について説明する。また、上述したオフディレイ時間変更ルーチンと重複する部分については適宜説明を省略する。
【0098】
図8に示すように、前回のオフディレイ時間の変更処理時から所定の更新時間が経過したか否かの判断(S210)において、所定の更新時間が経過していた場合(S210、Yes)、まず、自動洗浄回数割合が基準割合の下限値である値A以下であるか否かが判断される(S220)。ステップS220において、自動洗浄回数割合が値A以下であると判断された場合(S220、Yes)、オフディレイ時間が一定時間短縮される(S230)。
【0099】
ステップS220において、自動洗浄回数割合が値A以下でないと判断された場合(S220、No)、次に、自動洗浄回数割合が基準割合の上限値である値B以下であるか否かが判断される(S240)。ステップS240において、自動洗浄回数割合が値B以下であると判断された場合(S240、Yes)、オフディレイ時間は変更されない(S250)。つまり、この場合は、自動洗浄回数割合が基準割合である値A〜値Bの数値範囲内(値Aを上回り、値B以下)の値ということであり、オフディレイ時間の短縮や延長は行われず、オフディレイ時間が維持される。
【0100】
一方、ステップS240において、自動洗浄回数割合が値B以下でないと判断された場合(S240、No)、オフディレイ時間が一定時間延長される(S260)。
【0101】
このように、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて用いられる基準割合に所定の幅を持たせることにより、基準割合の設定によって、自動洗浄回数割合が特に大きく変動しない場合等、オフディレイ時間について最適な値の状態を維持させることができる。
【0102】
また、上述したようなオフディレイ時間変更ルーチンにおいては、変更されるオフディレイ時間について、上限値と下限値とを設けてもよい。つまり、オフディレイ時間変更ルーチンにより変更されるオフディレイ時間を、その上限値と下限値との間の範囲内で変更させてもよい。
【0103】
この場合、コントローラ13において、オフディレイ時間を短縮する際の下限値と、オフディレイ時間を延長する際の上限値とが設定される。これらのオフディレイ時間についての上限値および下限値は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。そして、コントローラ13により、上限値と下限値との間で、オフディレイ時間が制御される。
【0104】
具体的には、図9に示すように、オフディレイ時間について、所定の時間(直線O1参照)を基準として、下限値(直線Ox参照)と、上限値(直線Oy参照)とを設定する。図9に示す例では、Δt=1秒であり、基準のオフディレイ時間(直線O1参照)が20秒であることから、オフディレイ時間の下限値(直線Ox参照)は、15秒であり、上限値(直線Oy参照)は25秒である。
【0105】
このような場合において、例えば、オフディレイ時間が20秒の状態(直線O1参照)から、履歴回数における自動洗浄回数割合が基準割合以下である場合、つまりオフディレイ時間が短縮される場合が比較的多く、オフディレイ時間が下限値の15秒(直線Ox参照)に達したとする。そして、オフディレイ時間が15秒の状態(直線Ox参照)から、さらにオフディレイ時間変更ルーチンにおいてオフディレイ時間を一定時間短縮する場合(例えば、図7のS120、Yesの場合)になったとき、オフディレイ時間は短縮されずに15秒を維持する。つまり、オフディレイ時間は15秒を下限値とし、その下限値よりも短縮されない。
【0106】
オフディレイ時間が上限値に達した場合も同様である。すなわち、例えば、オフディレイ時間が20秒の状態(直線O1参照)から、履歴回数における自動洗浄回数割合が基準割合以下でない場合、つまりオフディレイ時間が延長される場合が比較的多く、オフディレイ時間が上限値の25秒(直線Oy参照)に達したとする。そして、オフディレイ時間が25秒の状態(直線Oy参照)から、さらにオフディレイ時間変更ルーチンにおいてオフディレイ時間を一定時間延長する場合(例えば、図7のS120、Noの場合)になったとき、オフディレイ時間は延長されずに25秒を維持する。つまり、オフディレイ時間は25秒を上限値とし、その上限値よりも延長されない。
【0107】
このように、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、オフディレイ時間に上限値と下限値とを設定することで、例えばある期間で自動洗浄回数割合が急激に増減した場合等であっても、オフディレイ時間が過剰に長くなったり短くなったりすることがないので、オフディレイ時間を適正な範囲に維持することが可能となる。
【0108】
なお、オフディレイ時間の上限値および下限値については、上限値または下限値のいずれかが設定されて用いられてもよい。つまり、オフディレイ時間は、好ましくは、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する。
【0109】
以上説明したオフディレイ時間変更ルーチンでは、自動洗浄回数割合の算出に用いられる履歴回数は、データ保持期間という一定の期間における洗浄回数であるが、履歴として保持する洗浄回数は、期間ではなく合計の洗浄回数が一定となる洗浄回数であってもよい。つまり、自動洗浄回数割合の算出に用いる洗浄回数の合計を所定の回数として、その所定の回数分だけ直近のデータを保持するようにしてもよい。
【0110】
この場合、例えば所定の回数が100回であるとすると、直近の100回の洗浄の種類が記憶保持され、その100回についての自動洗浄と意思洗浄との回数から、自動洗浄回数割合が算出される。つまり、この場合、履歴として記憶される洗浄回数の合計は所定の回数で一定であり、その合計の回数の自動洗浄と意思洗浄との割合が変化することで、自動洗浄回数の割合が変化し、オフディレイ時間が調整される。
【符号の説明】
【0111】
1 便器洗浄装置
2 便器
11 電磁弁(洗浄弁)
12 人体検知センサ(人体検知部)
13 コントローラ(制御部)
14 リモコン装置(操作部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器への吐水を行うことで便器を洗浄する便器洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器洗浄装置として、便器の使用者(以下単に「使用者」という。)の用便後におけるリモコン装置の操作等、便器洗浄のための操作に基づいて便器への吐水を行うことで、便器を洗浄する装置が広く用いられている。このような便器洗浄装置においては、使用者が便器洗浄のための操作を行うことを忘れた場合、便器の洗浄が行われず、次の使用者が快適に便器を使用できないときがある。
【0003】
そこで、便器洗浄装置においては、用便後に使用者によって便器洗浄のための操作による洗浄が行われなかった場合、自動的に便器の洗浄を行う技術がある(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1には、用便後に使用者が弁座から離れたことが着座センサによって感知されてから所定時間経過後に、自動的に便器の洗浄を行う技術が開示されている。また、特許文献1の便器洗浄装置では、自動的に便器の洗浄を行う制御モードにおいて、使用者による便器洗浄のための操作が行われた場合には、自動的な便器の洗浄がキャンセルされ直ちに便器の洗浄が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−195356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の便器洗浄装置のように、用便後の自動吐水(自動的な便器の洗浄としての便器への吐水)が行われる構成においては、自動吐水の開始タイミングは、用便後における使用者の動作との関係で一定であった。すなわち、例えば特許文献1のように、用便後における使用者の動作として使用者が弁座から離れたことが検知される場合、使用者が弁座から離れた時から、自動吐水の開始時までの時間が一定であった。
【0006】
このため、用便後の自動吐水が行われる構成においては、例えば、使用者が健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい場合であっても、所定時間が経過すると自動吐水が行われ、便が流れてしまうという問題がある。すなわち、用便後において、使用者による便器洗浄のための操作が行われない場合であっても、所定時間が経過すると自動吐水によって便が強制的に流されてしまい、使用者が便の状態を確認するための時間が確保されない場合がある。
【0007】
また、用便後の自動吐水が行われる構成においては、例えば特許文献1の便器洗浄装置のように、自動吐水が開始される前に、使用者による便器洗浄のための操作が行われると、自動吐水がキャンセルされ、即座に便器の洗浄が行われる構成のものがある。このような構成においては、自動吐水が開始される前に、使用者が便器の洗浄を行いたい場合、使用者は便器洗浄のための操作を行う必要がある。
【0008】
しかしながら、使用者が便器洗浄のための操作を行うことは、使用者の状況等によっては煩わしい場合がある。また、使用者による便器洗浄のための操作が行われる都度、リモコン装置等、便器洗浄のための操作部における電力消費が増加する。このため、使用者による便器洗浄のための操作の回数が増えることは、電力消費削減の観点から好ましくない。
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであって、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる便器洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る便器洗浄装置は、便器の使用者を検知する人体検知部と、前記便器に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁と、前記人体検知部からの検知信号を受け、前記洗浄弁の開閉動作を制御する制御部と、該制御部に前記洗浄弁の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部と、を備えた便器洗浄装置であって、前記制御部は、人体検知部により前記使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、前記操作部の前記便器の洗浄のための操作が行われた場合、前記自動洗浄による前記洗浄弁の動作に優先して、前記洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、あらかじめ設定された所定の期間の間、前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数を記憶し、記憶した前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数に基づき、前記所定時間を変更するものである。このような構成により、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【0011】
また、本発明に係る便器洗浄装置においては、好ましくは、前記制御部は、記憶した前記自動洗浄の回数と前記意思洗浄の回数との合計に対する前記自動洗浄の回数の割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、前記所定時間を短縮し、前記自動洗浄の回数の割合が、前記基準割合以下でない場合は、前記所定時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う。このような構成により、自動吐水が開始されるまでの所定時間を自動的に最適な時間にすることができる。
【0012】
また、本発明に係る便器洗浄装置においては、好ましくは、前記所定時間は、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する。このような構成により、所定時間を適正な範囲に維持することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水を行うことができ、使用者による便器洗浄のための操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の適用例を示す図。
【図2】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の構成を示す模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図4】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図5】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【図6】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置の動作ルーチンを示すフロー図。
【図7】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のオフディレイ時間変更ルーチンを示すフロー図。
【図8】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置のオフディレイ時間変更ルーチンの変形例を示すフロー図。
【図9】本発明の一実施形態に係る便器洗浄装置における洗浄回数の時間分布とオフディレイ時間の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、使用者による便器洗浄のための操作によって便器に洗浄水が吐水される意思洗浄と、意思洗浄が行われなかった場合に自動的に便器に洗浄水が吐水される自動洗浄とが行われる構成において、意思洗浄の回数と自動洗浄の回数とに基づいて、自動洗浄としての便器への吐水が開始されるタイミングを変更しようとするものである。これにより、本発明は、自動吐水のタイミングの適正化、および電力削減を図る。以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
[便器洗浄装置の構成]
図1に示すように、本実施形態の便器洗浄装置1は、便器2への吐水を行うことで便器2を洗浄する。便器洗浄装置1は、給水管3から供給される水を、便器2の洗浄水として、便器2に吐水する。給水管3によって供給される水は、止水栓4を介して流入管5によって便器洗浄装置1に流れ込む。便器洗浄装置1から吐水される洗浄水は、便器2に接続される流出管6により便器2に流れ込む。
【0017】
図1および図2に示すように、便器洗浄装置1は、電磁弁11を含む装置本体10と、人体検知センサ12と、コントローラ13と、リモコン装置14とを備える。便器洗浄装置1においては、装置本体10、人体検知センサ12、およびコントローラ13は、略直方体状の外形を有するケーシング15内に設けられる。リモコン装置14は、図1に示すように、例えば便器2が設置される部屋の壁に取り付けられること等により、便器2の使用者(以下単に「使用者」という。)が操作可能な位置に設けられる。
【0018】
本実施形態の便器洗浄装置1においては、使用者がリモコン装置14において便器洗浄のための操作を行うことによって便器2に洗浄水が吐水される意思洗浄と、意思洗浄が行われなかった場合に自動的に便器2に洗浄水が吐水される自動洗浄とが行われる。ここで、自動洗浄としての便器2への吐水は、使用者の用便後等において、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した後に行われる。以下、便器洗浄装置1の各部の詳細について説明する。
【0019】
図2に示すように、装置本体10は、洗浄水の供給を受ける入水口16と、便器2へ吐水される洗浄水の流出口としての出水口17とを有する。入水口16には、給水管3(図1)によって供給される水を便器洗浄装置1に導く流入管5(図1)が接続される。出水口17には、洗浄水を便器2へと導く流出管6(図1)が接続される。
【0020】
装置本体10においては、給水管3から供給される洗浄水が、流入管5を介して入水口16から流れ込む(矢印A1参照)。入水口16から流れ込んだ洗浄水は、装置本体10内に形成される水の通路を通って、出水口17から流れ出て(矢印A2参照)、流出管6を介して便器2へと供給される。以下の説明では、装置本体10において入水口16と出水口17との間に設けられる洗浄水の通路を「本体内通水路」という。
【0021】
装置本体10は、ピストンバルブ18を有する。ピストンバルブ18は、本体内通水路において入水口16の下流側に設けられる。ピストンバルブ18は、本体内通水路内において上下方向に移動可能に設けられる。ここで、上下方向とは、便器2が設置される床面に対して略垂直方向、つまり略鉛直方向である。以下の説明では、ピストンバルブ18の移動方向である上下方向を、便器洗浄装置1における上下方向とする。
【0022】
ピストンバルブ18は、パッキン18aを有する。パッキン18aは、装置本体10においてピストンバルブ18の摺動面として形成される壁面と、ピストンバルブ18の外周面との間をシールする。
【0023】
装置本体10において、ピストンバルブ18の上側には、背圧室19が設けられている。背圧室19は、ピストンバルブ18の内部に形成される連通路18bを介して入水口16と連通する。ピストンバルブ18の下側には、二次側水路20が設けられている。二次側水路20に流れ込む水は、出水口17から流れ出る。入水口16と二次側水路20とは、ピストンバルブ18が最下端に位置することで非連通状態となり、ピストンバルブ18が最下端の位置から上昇することで連通状態となる。
【0024】
背圧室19は、バイパス流路21によって二次側水路20に連通する。このバイパス流路21に、電磁弁11が設けられる。電磁弁11は、バイパス流路21の開閉を行う。つまり、電磁弁11の開閉により、バイパス流路21を介する背圧室19と二次側水路20との連通状態・非連通状態が切り換えられる。
【0025】
このような構成を備える装置本体10においては、次のようにして、便器2への洗浄水の吐水が行われる。電磁弁11が閉じている状態では、給水管3から流入管5を介して入水口16に流れ込む水が、ピストンバルブ18の連通路18bを介して、電磁弁11の上流側の背圧室19に流れ込み、背圧室19内に溜まる。
【0026】
背圧室19内に水が溜まることにより、背圧室19内の水圧によって背圧室19内の圧力が二次側水路20内の圧力よりも高くなってピストンバルブ18が押し下げられる。これにより、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられる(非連通状態となる)。つまり、電磁弁11が閉じている状態においては、入水口16から流れこむ水が電磁弁11とピストンバルブ18とによってせき止められ、出水口17からの吐水は行われない。
【0027】
このように電磁弁11が閉状態であり、入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられている状態から、電磁弁11が開状態とされると、背圧室19内の水がバイパス流路21を介して二次側水路20に流れ込む。これにより、背圧室19内の圧力が低下し、入水口16内の水によりパッキン18aが押し上げられることで、ピストンバルブ18が上昇(背圧室19側に移動)する。ピストンバルブ18が上昇することで、入水口16と二次側水路20とが連通状態となり、入水口16に流れ込む水が、二次側水路20へと流れ、出水口17から流れ出て便器2に供給される。
【0028】
そして、電磁弁11の開弁によって出水口17から水が流れ出ている状態から、電磁弁11が閉じられることで、入水口16から流れ込む水の一部は、ピストンバルブ18の連通路18bから背圧室19に流れ込み、背圧室19に溜まり始める。これにより、背圧室19内の圧力が上昇するとともに二次側水路20内の圧力が低下し、ピストンバルブ18が押し下げられる。そして、最終的には入水口16と二次側水路20との間がピストンバルブ18によって閉じられ、出水口17からの吐水が行われない止水状態となる。
【0029】
このような電磁弁11の開閉による便器2への洗浄水の吐水においては、電磁弁11の開時間(厳密には励磁時間)の制御により、便器2へ吐水される洗浄水の水量が調整される。したがって、電磁弁11の開時間は、小便洗浄の場合に比べて大便洗浄の場合の方が長い。
【0030】
このように、本実施形態の便器洗浄装置1においては、装置本体10が有する電磁弁11は、本体内通水路の開閉を行うための開閉弁であり、便器2に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁として機能する。電磁弁11の開閉によって、本体内通水路の開閉、つまり便器洗浄装置1の吐水状態と止水状態とが切り換わる。
【0031】
電磁弁11の開閉動作は、コントローラ13によって制御される。このため、電磁弁11は、コントローラ13に接続される。電磁弁11は、コントローラ13からの制御信号に従って電気的に制御され、バイパス流路21の開閉を行う。電磁弁11によるバイパス流路21の開閉は、上述したような本体内通水路の開閉をともなう。
【0032】
人体検知センサ12は、使用者を検知する人体検知部として機能する。人体検知センサ12は、使用者の存在を自動で検知する非接触センサである。本実施形態では、人体検知センサ12は、赤外線センサである。このため、人体検知センサ12は、赤外線を発光する発光素子と、発光した赤外線の反射光を受光する受光素子とを有する。
【0033】
人体検知センサ12は、ケーシング15内において、赤外線を送受する側が使用者の方向を向くように配置される。ケーシング15には、使用者が位置する側の壁面に、人体検知センサ12による赤外線の送受を確保するための検知窓12aが設けられている(図1参照)。
【0034】
本実施形態では、人体検知センサ12により、便器2の弁座2aに着座している使用者の存在の有無が検知される。したがって、弁座2aに着座している使用者は、人体検知センサ12の検知範囲内に位置する。そして、人体検知センサ12によれば、使用者が人体検知センサ12の検知範囲内に存在すること、および弁座2aに着座している使用者が離座し、人体検知センサ12の検知範囲から出たことが検知される。本実施形態では、使用者が人体検知センサ12の検知範囲から出たことが検知されたことを、使用者の離座が検知されたこととする。
【0035】
人体検知センサ12は、コントローラ13に接続される。人体検知センサ12から出力される信号が、コントローラ13に入力され、コントローラ13により、使用者の存在・非存在が検知される。
【0036】
なお、本実施形態では、人体検知センサ12は赤外線センサであるが、使用者を検知する人体検知部としては、赤外線センサのほか、公知の非接触センサや接触センサ等の各種センサを採用することができる。また、使用者を検知する人体検知部は、本実施形態の人体検知センサ12のように、装置本体10等とともにケーシング15に収納されることなく、例えば弁座2aに一体的に内蔵される構成等であってもよい。
【0037】
コントローラ13は、人体検知センサ12からの検知信号を受け、電磁弁11の開閉動作を制御する制御部として機能する。具体的には、コントローラ13は、人体検知センサ12から出力される信号や、リモコン装置14における操作等に基づいて、電磁弁11の動作を制御する。このため、コントローラ13には、人体検知センサ12からの検知信号、およびリモコン装置14からの操作信号が入力される。また、コントローラ13からは、電磁弁11に対する制御信号が出力される。
【0038】
コントローラ13は、データ通信用のバス等により互いに接続されるCPU(Central Processing Unit)やメモリや入出力インターフェイス等の各種機能部分を有する。コントローラ13は、入出力インターフェイスとして、人体検知センサ12およびリモコン装置14からの入力信号を受けるための入力インターフェイス、ならびに電磁弁11に対する制御信号を出力するための出力インターフェイスを有する。
【0039】
コントローラ13は、制御プログラムや後述するような自動洗浄についての制御に用いられる各種データ等を記憶する記憶部13aを有する。記憶部13aは、例えばCPUに接続されるROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等により構成される。コントローラ13が有するCPUは、制御プログラム等に従って所定の演算を行う演算部として機能する。なお、コントローラ13は、図示せぬACアダプタを介して電力の供給を受ける。
【0040】
リモコン装置14は、コントローラ13に電磁弁11の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部として機能する。具体的には、リモコン装置14は、コントローラ13に供給する操作信号として、赤外線信号を発信する。このため、リモコン装置14は、赤外線信号を発信する発信部22を有する。本実施形態では、リモコン装置14は、図1に示すように、矩形厚板状の外形を有し、設置された状態で上側となる両側の角部の2箇所に、発信部22が設けられている。
【0041】
一方、図2に示すように、装置本体10においては、リモコン装置14の発信部22から発信された赤外線信号を受信する受信部23が設けられる。受信部23は、コントローラ13に接続され、受信部23により受信された赤外線信号は、電気信号に変換される等してコントローラ13に入力される。
【0042】
リモコン装置14は、便器洗浄、つまり便器2への洗浄水の吐水を行うための操作スイッチとして、洗浄スイッチ24を有する。洗浄スイッチ24が使用者等によって操作されることで、上述したように電磁弁11が開いて便器洗浄装置1が吐水状態となり、入水口16から便器2への洗浄水の吐水が行われる。本実施形態では、洗浄スイッチ24は、大便洗浄用のスイッチとする。ただし、図示は省略するが、リモコン装置14は、例えば小便洗浄用のスイッチ等、他の操作スイッチも有する。
【0043】
リモコン装置14は、駆動電力の供給を受けるための電池を内蔵する。ただし、リモコン装置14の駆動電力は、便器洗浄装置1の外部に設けられる電源から供給されてもよい。また、本実施形態では、リモコン装置14からコントローラ13に供給される操作信号は、赤外線信号であるが、この方式に限定されない。リモコン装置14からの操作信号としては、例えば、他の波長の電磁波を利用した信号や、超音波を利用した信号や、有線方式により送信される信号等であってもよい。
【0044】
以上のような構成を備える便器洗浄装置1においては、コントローラ13により、自動洗浄についての制御が行われる。具体的には、自動洗浄の制御において、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2への吐水が開始されるまでの時間の変更が、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行われる。人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2への吐水が開始されるまでの時間の変更は、ある一定の期間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とに基づいて行われる。以下、本実施形態の便器洗浄装置1において行われる自動洗浄についての制御の具体的な内容について説明する。
【0045】
[制御内容]
本実施形態の便器洗浄装置1においては、上述したように、コントローラ13は、自動洗浄と意思洗浄とを行う。本実施形態の便器洗浄装置1では、自動洗浄は、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、電磁弁11を動作させ、便器2に洗浄水を吐水させる吐水制御(第1の吐水制御)である。また、意思洗浄は、リモコン装置14の便器2の洗浄のための操作が行われた場合、自動洗浄(第1の吐水制御)による電磁弁11の動作に優先して、便器2の洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、電磁弁11を動作させ、便器2に洗浄水を吐水させる吐水制御(第2の吐水制御)である。ここで、リモコン装置14の便器2の洗浄のための操作(以下「洗浄操作」という。)は、本実施形態の場合、リモコン装置14の洗浄スイッチ24の操作である。
【0046】
以下の説明では、第1の吐水制御としての自動洗浄に関し、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時から、便器2に洗浄水を吐水させるために電磁弁11を動作させた時、つまり電磁弁11の開動作によって便器2への吐水が開始された時までの時間を「オフディレイ時間」とする。また、人体検知センサ12により使用者が検知されなくなった時を「離座時」とし、電磁弁11の開動作によって便器2への吐水が開始された時を「吐水開始時」とする。したがって、自動洗浄において、オフディレイ時間は、離座時から吐水開始時までの経過時間である所定時間に相当する。
【0047】
図3に示すグラフは、離座時から吐水開始時までの時間と、所定の期間の間における時間帯ごとの累積の洗浄回数との関係を示す。具体的には、図3に示すグラフにおいて、横軸は、離座時を基準(0秒)として、1秒ごとの時間帯に区切られている。つまり、図3に示すグラフにおいて、各時間帯の時間幅Δtは1秒である。
【0048】
図3に示すグラフにおいて、離座時からの経過時間である時間To(秒)が、オフディレイ時間を示す(直線O1参照)。つまり、図3に示す例では、Δt=1秒であることから、オフディレイ時間は20秒(To=20秒)である。したがって、オフディレイ時間である20秒経過前に行われた洗浄、つまり図3のグラフの横軸について直線O1よりも左側の時間で行われた洗浄が意思洗浄である。また、オフディレイ時間である20秒経過後に行われた洗浄、つまり図3のグラフの横軸について直線O1よりも右側の時間で行われた洗浄が自動洗浄である。
【0049】
すなわち、オフディレイ時間経過前に使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われない限り、オフディレイ時間が経過することで自動洗浄が行われる。また、オフディレイ時間経過前に使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われることで、自動洗浄に先立って便器2への洗浄水の吐水が行われる。
【0050】
図3のグラフに示すように、オフディレイ時間(To)経過までの洗浄の回数、つまり意思洗浄の回数の時間分布に関し、離座時直後に比較的大きなピークがあり(符号P1参照)、その後、オフディレイ時間の直前辺りに比較的小さなピークがある(符号P2参照)。このような意思洗浄の回数の分布は、各使用者の使用態様や習慣等を反映している。
【0051】
具体的には、最初のピーク(符号P1)は、大部分の使用者が、用便後、比較的離座の直後にリモコン装置14において洗浄操作を行い、便器2の洗浄を行うことを反映している。このように、便器2の使用回数の大部分では、使用者によって用便後比較的すぐに(離座時から10秒程度以内で)リモコン装置14の洗浄操作が行われ、便器2の洗浄が行われる。
【0052】
また、次のピーク(符号P2)は、使用者の一部は、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認するため、用便後、離座してからある程度の時間(15秒程度)が経過した後に、リモコン装置14において洗浄操作を行い、便器2の洗浄を行うことを反映している。このように、用便後比較的すぐに使用者によってリモコン装置14の洗浄操作による洗浄が行われない場合については、使用者が用便後に便の状態を確認する等の理由により、使用者のリモコン装置14の洗浄操作による吐水開始時がある時間帯に集中する傾向にある。図3に示す例では、離座時から15〜17秒後付近の時間帯に集中している。なお、例えば使用者が便器2の洗浄を忘れた場合等、リモコン装置14による意思洗浄が行われないまま、離座時からオフディレイ時間が経過した場合、自動洗浄が行われる。図3に示すように、自動洗浄の回数は、意思洗浄の回数に比べてかなり少ない。
【0053】
本実施形態の便器洗浄装置1における自動洗浄についての制御では、上述したような分布を示す、所定の期間の間における意思洗浄の回数と自動洗浄の回数とに基づいて、オフディレイ時間が変更される。このため、自動洗浄についての制御を行う制御部として機能するコントローラ13は、あらかじめ設定された所定の期間の間、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数を記憶し、記憶した自動洗浄の回数および意思洗浄の回数に基づき、オフディレイ時間を変更する。
【0054】
コントローラ13による自動洗浄についての制御において、あらかじめ設定された所定の期間の間の自動洗浄および意思洗浄のそれぞれの回数は、コントローラ13が有する記憶部13aに記憶される。また、この自動洗浄についての制御で用いられる所定の期間(以下「データ保持期間」という。)は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。
【0055】
コントローラ13は、タイマを有し、便器2への吐水動作が行われた時間と、その洗浄の種類(自動洗浄か意思洗浄か)とを含むデータを時間軸に沿ってデータ保持期間の間記憶することで、データ保持期間の間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とを記憶する。つまり、コントローラ13は、現時点から、あらかじめ設定されたデータ保持期間遡った時までの期間の間の、自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とを履歴情報として記憶する。
【0056】
したがって、コントローラ13において記憶される自動洗浄および意思洗浄の回数は、現時点と、現時点からデータ保持期間前の時点との間で実行された自動洗浄および意思洗浄の回数であり、データ保持期間を過ぎた記憶データは随時削除される。つまり、自動洗浄または意思洗浄のデータとしてコントローラ13に記憶されたデータは、記憶された時点からデータ保持期間が経過すると削除される。データ保持期間は、例えば1週間から数カ月の範囲で設定される。
【0057】
このようにコントローラ13において記憶される自動洗浄と意思洗浄の回数に基づくオフディレイ時間の変更制御は、例えば次のようにして行われる。自動洗浄の回数が少なくなる傾向にある場合は、オフディレイ時間が短縮され、自動洗浄の回数が多くなる傾向にある場合は、オフディレイ時間が延長される。
【0058】
オフディレイ時間として理想的な時間は、例えば次のような時間である、すなわち、図3に示すグラフにおいて後発のピーク(符号P2)付近に分布されるような、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認するための時間を要する使用者に対して、便の状態を確認し終えた直後に、吐水開始時が訪れるような時間である。
【0059】
そこで、上記のとおり自動洗浄の回数が少なくなる傾向にあるということは、離座時からオフディレイ時間が経過するまでの間に、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作によって吐水開始時が訪れる場合が増えているということである。つまり、自動洗浄が発動する前に意思洗浄が行われる場合が増えているということである。
【0060】
このような傾向にある場合は、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとした時から、自動洗浄による便器2への吐水が開始される吐水開始時までの間に余裕があるといえる。つまり、この場合、用便後に便の状態を確認する使用者に対しては、便の状態を確認するための時間は確保されるものの、自動洗浄を待てない使用者によってリモコン装置14の洗浄操作が行われ、自動洗浄が発動されないというような状況ということができる。
【0061】
したがって、このような場合、オフディレイ時間を短縮することで、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとする時から吐水開始時までの時間を詰め、なるべく使用者によるリモコン装置14における洗浄操作の回数を減らす。
【0062】
一方、上記のとおり自動洗浄の回数が多くなる傾向にあるということは、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作が行われる前に、オフディレイ時間が経過し、自動洗浄としての吐水開始時が訪れる場合が増えているということである。つまり、意思洗浄が行われる前に自動洗浄が行われる場合が増えているということである。
【0063】
このような傾向にある場合、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとする時には、すでにオフディレイ時間が経過し、自動洗浄が開始される状況にあるといえる。つまり、この場合、用便後に便の状態を確認する使用者に対しては、便を確認した後に使用者によってリモコン装置14の洗浄操作が行われないものの、便の状態を確認するための時間が確保されないというような状況ということができる。
【0064】
したがって、このような場合、オフディレイ時間を延長することで、自動洗浄としての吐水開始時を遅らせ、便の状態を確認するための時間を確保する。
【0065】
自動洗浄と意思洗浄の回数に基づくオフディレイ時間の変更制御において、オフディレイ時間を変更する処理は、上記のとおり所定の更新時間ごとに行われる。この所定の更新時間は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。所定の更新時間は、データ保持期間よりも短い期間であり、例えば30分から数時間程度の範囲で設定される。
【0066】
また、オフディレイ時間の変更制御において、1回の変更処理でオフディレイ時間を短縮したり延長したりする時間の長さ(以下「変更時間長」という。)は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。変更時間長は、特に限定されるものではないが、例えば0.5秒から数秒程度の範囲で設定される。
【0067】
ここで、図3に示す洗浄回数の時間分布においてオフディレイ時間が変更した場合を仮定し、オフディレイ時間の変更にともなう自動洗浄の回数の増減について説明する。なお、ここでは、オフディレイ時間についての変更時間長をΔtと同じ1秒とする。
【0068】
図3に示す洗浄回数の時間分布において、オフディレイ時間を短縮する処理が1回行われた場合、オフディレイ時間は、図3に示すようにTo=20秒(直線O1参照)の状態から、図4に示すようにTo1=19秒(直線Oa参照)に変化する(矢印B1参照)。このようにオフディレイ時間が短縮することで、オフディレイ時間の変更前においてオフディレイ時間経過直前の時間帯の意思洗浄の回数分(符号C1参照)が、自動洗浄の回数に足されることになる。
【0069】
一方、図3に示す洗浄回数の時間分布において、オフディレイ時間を延長する処理が1回行われた場合、オフディレイ時間は、図3に示すようにTo=20秒(直線O1参照)の状態から、図5に示すようにTo2=21秒(直線Ob参照)に変化する(矢印B2参照)。このようにオフディレイ時間が延長することで、オフディレイ時間の変更前においてオフディレイ時間経過直後の時間帯の自動洗浄の回数分(符号C2参照)が、意思洗浄の回数から引かれることになる。
【0070】
なお、ここでのオフディレイ時間が変更した場合について説明は、あくまで洗浄回数の分布が図3に示す分布で一定であるとの仮定のもとでオフディレイ時間だけが変化した場合についての説明であり、実際のオフディレイ時間の変更制御では、洗浄回数の分布の変化にともなって、オフディレイ時間が変更される。
【0071】
以上のようにオフディレイ時間の変更制御を行う本実施形態に係る便器洗浄装置1によれば、例えば健康管理等のために用便後に便の状態を確認したい使用者等に対して、適切なタイミングで自動吐水(自動洗浄としての便器2への吐水)を行うことができ、使用者によるリモコン装置14の洗浄操作の回数を抑え、電力消費を削減することができる。
【0072】
具体的には、上述したようなオフディレイ時間の変更制御が行われることで、使用者がリモコン装置14における洗浄操作を行おうとした時から自動洗浄としての吐水開始時までの間に余裕がある場合は、オフディレイ時間が短縮される。また、使用者によるリモコン装置14における洗浄操作が行われる時よりも前にオフディレイ時間が経過してしまうような場合は、オフディレイ時間が延長される。
【0073】
このような制御により、オフディレイ時間が、使用者が便の確認をし終えた直後に吐水開始時が訪れるような理想的な時間に近付き、より適切なタイミングで自動吐水が行われる。結果として、自動洗浄が発動される前における使用者によるリモコン装置14の洗浄操作の回数を減らすことができるので、リモコン装置14における電力消費を削減することができ、省電力化を図ることができる。
【0074】
以下では、本実施形態の便器洗浄装置1において行われる制御内容の詳細について説明する。まず、図6に示すフロー図を用いて、便器洗浄装置1において行われる制御のメインルーチンとしての便器洗浄装置1の動作ルーチンについて説明する。なお、以下に説明する制御処理は、コントローラ13のCPUが記憶部13a等に記憶された所定の制御プログラムを読み出して実行することにより行われる。
【0075】
(動作ルーチン)
図6に示すように、便器洗浄装置1においては、まず、オフディレイ時間の初期値を設定することが行われる(S10)。ここでは、例えば便器洗浄装置1の出荷時において、オフディレイ時間が、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。設定されたオフディレイ時間の初期値は、便器洗浄装置1の電源投入時に自動的に読み出され、自動洗浄に用いられる。
【0076】
便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて、便器洗浄装置1は、使用者によって便器2が使用されない限り、使用者による使用を待つ待機中となる(S20)。
【0077】
また、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、上述したように、データ保持期間の間における自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とが記憶される。このため、便器洗浄装置1の待機中においては、一定期間(データ保持期間)経過した意思洗浄の回数と自動洗浄の回数の記憶データが削除されていく(S30)。つまり、コントローラ13において記憶される自動洗浄の回数および意思洗浄の回数は、現時点と、現時点からデータ保持期間前の時点との間における回数であり、データ保持期間を過ぎた記憶データは随時削除される。なお、自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の記憶の処理については後述する。
【0078】
そして、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、サブルーチンとして、オフディレイ時間を変更するためのオフディレイ時間変更ルーチンが行われる(S40)。オフディレイ時間変更ルーチンについては後述する。
【0079】
ここで、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて行われる自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の記憶の処理について説明する。かかる処理においては、まず、意思洗浄の入力があったか否かが判断される(S50)。ここで、意思洗浄の入力とは、リモコン装置14における洗浄操作、つまり洗浄スイッチ24の操作による操作信号のコントローラ13に対する入力である。したがって、ステップS50では、リモコン装置14の洗浄スイッチ24の操作による操作信号がコントローラ13に入力されたか否かが判断される。
【0080】
ステップS50において、意思洗浄の入力があった場合(S50、Yes)、意思洗浄の回数が1回分加算され(S60)、便器2の洗浄、つまり便器2への洗浄水の吐水が行われる(S90)。すなわち、意思洗浄の入力があった場合は、便器2への洗浄水の吐水に際し、意思洗浄の回数がカウントされ、コントローラ13の記憶部13aに記憶される意思洗浄の回数に「1」加算される。ここで加えられた洗浄回数のデータは、上述したようにデータ保持期間の間保持される。
【0081】
一方、ステップS50において、意思洗浄の入力がない場合(S50、No)、オフディレイ時間が経過したか否かが判断される(S70)。ここで、オフディレイ時間が経過した場合(S70、Yes)、自動洗浄の回数が1回分加算され(S80)、便器2の洗浄が行われる(S90)。すなわち、意思洗浄の入力がない状態でオフディレイ時間が経過した場合は、便器2への洗浄水の吐水に際し、自動洗浄の回数がカウントされ、コントローラ13の記憶部13aに記憶される自動洗浄の回数に「1」加算される。ここで加えられた洗浄回数のデータは、上述したようにデータ保持期間の間保持される。
【0082】
ステップS70において、オフディレイ時間が経過していない場合(S70、No)、便器洗浄装置1は待機中となる(S20)。つまり、便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいては、意思洗浄の入力があったか否かの判断(S50)と、オフディレイ時間が経過したか否かの判断(S70)とが並行して行われ、オフディレイ時間の経過前に意思洗浄の入力があった場合は意思洗浄が実行され、意思洗浄の入力前にオフディレイ時間が経過した場合は自動洗浄が実行される。そして、意思洗浄または自動洗浄が実行される都度、データ保持期間の間保持される洗浄回数のデータに、意思洗浄または自動洗浄の回数が加算される。
【0083】
(オフディレイ時間変更ルーチン)
オフディレイ時間変更ルーチン(図6、S40)について説明する。このオフディレイ時間変更ルーチンは、上述したような便器洗浄装置1の動作ルーチンにおいて行われる処理であり、データ保持期間の間保持される自動洗浄の回数と意思洗浄の回数とに基づいて所定の更新時間ごとにオフディレイ時間を変更する処理である。
【0084】
具体的には、本実施形態のオフディレイ時間変更ルーチンでは、データ保持期間の間記憶保持される履歴情報としての自動洗浄の回数および意思洗浄の回数(以下「履歴回数」という。)について、全体の合計回数に対する自動洗浄の回数の割合が用いられる。つまり、履歴回数についての、自動洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)という値が用いられる。以下の説明では、履歴回数について、自動洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)により算出される値を、「自動洗浄回数割合」という。
【0085】
そして、オフディレイ時間変更ルーチンでは、自動洗浄回数割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮され、自動洗浄回数割合が基準割合以下でない場合は、オフディレイ時間が一定時間延長される。
【0086】
オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合の比較対象となる基準割合は、履歴回数について自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の分布との関係において理想的なオフディレイ時間が得られるように設定される。理想的なオフディレイ時間は、用便後に便の状態を確認する使用者に対して、便の状態を確認するための時間が確保されるとともに、使用者によってリモコン装置14における洗浄操作が行われる前に自動洗浄を発動させるような時間である。理想的なオフディレイ時間は、例えば、図3に示すグラフにおいては、後発のピーク(符号P2)の山の直後辺りに位置する。
【0087】
したがって、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合が基準割合以下であるということは、傾向として、自動洗浄の回数が少ないということであり、オフディレイ時間が経過する前に、使用者によるリモコン装置14における洗浄操作によって意思洗浄が行われてしまう回数が多いということである。リモコン装置14の洗浄操作の回数が多くなることは、省電力の観点から好ましくない。したがって、この場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮される。
【0088】
逆に、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合が基準割合以下でないということは、傾向として、自動洗浄の回数が多いということであり、意思洗浄のための使用者によるリモコン装置14における洗浄操作が行われる前に、オフディレイ時間が経過している回数が多いということである。リモコン装置14における洗浄操作の前にオフディレイ時間が経過する回数が多くなることは、便の状態を確認するための時間の確保が十分でないといえる。したがって、この場合は、オフディレイ時間が一定時間延長される。
【0089】
オフディレイ時間変更ルーチンで自動洗浄回数割合の比較対象として用いられる基準割合は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。基準割合は、各使用者の使用態様や習慣等にもよるが、例えば90%に設定される。
【0090】
このように、本実施形態の便器洗浄装置1においては、オフディレイ時間変更ルーチンを実行するコントローラ13は、記憶した自動洗浄の回数と意思洗浄の回数との合計に対する自動洗浄の回数の割合(自動洗浄回数割合)が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、オフディレイ時間を短縮し、自動洗浄の回数の割合が、基準割合以下でない場合は、オフディレイ時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う。オフディレイ時間変更ルーチンについて、図7に示すフロー図を用いて説明する。
【0091】
オフディレイ時間変更ルーチンは、上記のとおり所定の更新時間ごとにオフディレイ時間を変更する処理である。このため、図7に示すように、オフディレイ時間変更ルーチンでは、まず、前回のオフディレイ時間の変更処理時から、所定の更新時間が経過したか否かが判断される(S110)。ここで、所定の更新時間が経過していた場合、オフディレイ時間の変更処理が実行され、所定の更新時間が経過していない場合(S110、No)、オフディレイ時間変更ルーチンは終了する。なお、ステップS110において、便器洗浄装置1の電源投入時からオフディレイ時間の変更処理が1回も行われていない場合、つまりオフディレイ時間の変更処理が初回の場合、所定の更新時間の基準は、例えば便器洗浄装置1の電源投入時とされる。
【0092】
ステップS110において、所定の更新時間が経過したと判断された場合(S110、Yes)、自動洗浄回数割合が、基準割合以下であるか否かが判断される(S120)。ステップS120において、自動洗浄回数割合が基準割合以下であると判断された場合(S120、Yes)、オフディレイ時間が一定時間短縮される(S130)。つまりこの場合、オフディレイ時間が上述した変更時間長の分だけ短縮される。
【0093】
一方、ステップS120において、自動洗浄回数割合が基準割合以下でないと判断された場合(S120、No)、オフディレイ時間が一定時間延長される(S140)。つまりこの場合、オフディレイ時間が上述した変更時間長の分だけ延長される。
【0094】
このようにオフディレイ時間変更ルーチンを行う本実施形態の便器洗浄装置1によれば、自動吐水が開始されるまでのオフディレイ時間を自動的に最適な時間にすることができる。すなわち、上述したように自動洗浄回数割合の比較対象となる基準割合を、履歴回数について自動洗浄の回数および意思洗浄の回数の分布との関係において理想的なオフディレイ時間が得られるように設定することで、オフディレイ時間を各使用者の使用態様や習慣等に即した時間に制御することが可能となる。
【0095】
なお、オフディレイ時間変更ルーチンにおいては、自動洗浄回数割合に代えて、全体の回数に対する意思洗浄の回数の割合が用いられてもよい。つまり、履歴回数についての、意思洗浄回数/(自動洗浄回数+意思洗浄回数)という値が用いられてもよい。この場合、例えば、意思洗浄の回数の割合の比較対象となる基準の割合が設定され、意思洗浄の回数の割合が基準の割合以下の場合は、オフディレイ時間が一定時間延長され、意思洗浄の回数の割合が基準の割合以下でない場合は、オフディレイ時間が一定時間短縮される。
【0096】
また、上述したようなオフディレイ時間変更ルーチンにおいて、自動洗浄回数割合の比較対象として用いられる基準割合は、所定の幅を有する値であってもよい。つまり、基準割合を数値範囲とすることで、基準割合に幅を持たせてもよい。この場合、オフディレイ時間変更ルーチンにおいては、自動洗浄回数割合が、基準割合としての数値範囲外であるときに、オフディレイ時間が変更され、自動洗浄回数割合が基準割合としての数値範囲内であるときは、オフディレイ時間が変更されない。基準割合が所定の幅を有する場合、基準割合は、例えば85〜95%に設定される。
【0097】
このように自動洗浄回数割合の比較対象である基準割合が所定の幅を有する場合について、図8に示すフロー図を用いて説明する。なお、以下の説明では、所定の幅を有する基準割合の下限値を値Aとし、上限値を値Bとする。つまり、基準割合が値A〜値Bの数値範囲として設定される場合について説明する。また、上述したオフディレイ時間変更ルーチンと重複する部分については適宜説明を省略する。
【0098】
図8に示すように、前回のオフディレイ時間の変更処理時から所定の更新時間が経過したか否かの判断(S210)において、所定の更新時間が経過していた場合(S210、Yes)、まず、自動洗浄回数割合が基準割合の下限値である値A以下であるか否かが判断される(S220)。ステップS220において、自動洗浄回数割合が値A以下であると判断された場合(S220、Yes)、オフディレイ時間が一定時間短縮される(S230)。
【0099】
ステップS220において、自動洗浄回数割合が値A以下でないと判断された場合(S220、No)、次に、自動洗浄回数割合が基準割合の上限値である値B以下であるか否かが判断される(S240)。ステップS240において、自動洗浄回数割合が値B以下であると判断された場合(S240、Yes)、オフディレイ時間は変更されない(S250)。つまり、この場合は、自動洗浄回数割合が基準割合である値A〜値Bの数値範囲内(値Aを上回り、値B以下)の値ということであり、オフディレイ時間の短縮や延長は行われず、オフディレイ時間が維持される。
【0100】
一方、ステップS240において、自動洗浄回数割合が値B以下でないと判断された場合(S240、No)、オフディレイ時間が一定時間延長される(S260)。
【0101】
このように、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて用いられる基準割合に所定の幅を持たせることにより、基準割合の設定によって、自動洗浄回数割合が特に大きく変動しない場合等、オフディレイ時間について最適な値の状態を維持させることができる。
【0102】
また、上述したようなオフディレイ時間変更ルーチンにおいては、変更されるオフディレイ時間について、上限値と下限値とを設けてもよい。つまり、オフディレイ時間変更ルーチンにより変更されるオフディレイ時間を、その上限値と下限値との間の範囲内で変更させてもよい。
【0103】
この場合、コントローラ13において、オフディレイ時間を短縮する際の下限値と、オフディレイ時間を延長する際の上限値とが設定される。これらのオフディレイ時間についての上限値および下限値は、コントローラ13において記憶部13a等にあらかじめ設定され記憶される。そして、コントローラ13により、上限値と下限値との間で、オフディレイ時間が制御される。
【0104】
具体的には、図9に示すように、オフディレイ時間について、所定の時間(直線O1参照)を基準として、下限値(直線Ox参照)と、上限値(直線Oy参照)とを設定する。図9に示す例では、Δt=1秒であり、基準のオフディレイ時間(直線O1参照)が20秒であることから、オフディレイ時間の下限値(直線Ox参照)は、15秒であり、上限値(直線Oy参照)は25秒である。
【0105】
このような場合において、例えば、オフディレイ時間が20秒の状態(直線O1参照)から、履歴回数における自動洗浄回数割合が基準割合以下である場合、つまりオフディレイ時間が短縮される場合が比較的多く、オフディレイ時間が下限値の15秒(直線Ox参照)に達したとする。そして、オフディレイ時間が15秒の状態(直線Ox参照)から、さらにオフディレイ時間変更ルーチンにおいてオフディレイ時間を一定時間短縮する場合(例えば、図7のS120、Yesの場合)になったとき、オフディレイ時間は短縮されずに15秒を維持する。つまり、オフディレイ時間は15秒を下限値とし、その下限値よりも短縮されない。
【0106】
オフディレイ時間が上限値に達した場合も同様である。すなわち、例えば、オフディレイ時間が20秒の状態(直線O1参照)から、履歴回数における自動洗浄回数割合が基準割合以下でない場合、つまりオフディレイ時間が延長される場合が比較的多く、オフディレイ時間が上限値の25秒(直線Oy参照)に達したとする。そして、オフディレイ時間が25秒の状態(直線Oy参照)から、さらにオフディレイ時間変更ルーチンにおいてオフディレイ時間を一定時間延長する場合(例えば、図7のS120、Noの場合)になったとき、オフディレイ時間は延長されずに25秒を維持する。つまり、オフディレイ時間は25秒を上限値とし、その上限値よりも延長されない。
【0107】
このように、オフディレイ時間変更ルーチンにおいて、オフディレイ時間に上限値と下限値とを設定することで、例えばある期間で自動洗浄回数割合が急激に増減した場合等であっても、オフディレイ時間が過剰に長くなったり短くなったりすることがないので、オフディレイ時間を適正な範囲に維持することが可能となる。
【0108】
なお、オフディレイ時間の上限値および下限値については、上限値または下限値のいずれかが設定されて用いられてもよい。つまり、オフディレイ時間は、好ましくは、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する。
【0109】
以上説明したオフディレイ時間変更ルーチンでは、自動洗浄回数割合の算出に用いられる履歴回数は、データ保持期間という一定の期間における洗浄回数であるが、履歴として保持する洗浄回数は、期間ではなく合計の洗浄回数が一定となる洗浄回数であってもよい。つまり、自動洗浄回数割合の算出に用いる洗浄回数の合計を所定の回数として、その所定の回数分だけ直近のデータを保持するようにしてもよい。
【0110】
この場合、例えば所定の回数が100回であるとすると、直近の100回の洗浄の種類が記憶保持され、その100回についての自動洗浄と意思洗浄との回数から、自動洗浄回数割合が算出される。つまり、この場合、履歴として記憶される洗浄回数の合計は所定の回数で一定であり、その合計の回数の自動洗浄と意思洗浄との割合が変化することで、自動洗浄回数の割合が変化し、オフディレイ時間が調整される。
【符号の説明】
【0111】
1 便器洗浄装置
2 便器
11 電磁弁(洗浄弁)
12 人体検知センサ(人体検知部)
13 コントローラ(制御部)
14 リモコン装置(操作部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の使用者を検知する人体検知部と、前記便器に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁と、前記人体検知部からの検知信号を受け、前記洗浄弁の開閉動作を制御する制御部と、該制御部に前記洗浄弁の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部と、を備えた便器洗浄装置であって、
前記制御部は、
人体検知部により前記使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、
前記操作部の前記便器の洗浄のための操作が行われた場合、前記自動洗浄による前記洗浄弁の動作に優先して、前記洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、
あらかじめ設定された所定の期間の間、前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数を記憶し、記憶した前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数に基づき、前記所定時間を変更する
ことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、
記憶した前記自動洗浄の回数と前記意思洗浄の回数との合計に対する前記自動洗浄の回数の割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、前記所定時間を短縮し、前記自動洗浄の回数の割合が、前記基準割合以下でない場合は、前記所定時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う
ことを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記所定時間は、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の便器洗浄装置。
【請求項1】
便器の使用者を検知する人体検知部と、前記便器に吐水される洗浄水の供給通路を開閉する洗浄弁と、前記人体検知部からの検知信号を受け、前記洗浄弁の開閉動作を制御する制御部と、該制御部に前記洗浄弁の開閉動作を制御するための操作信号を供給する操作部と、を備えた便器洗浄装置であって、
前記制御部は、
人体検知部により前記使用者が検知されなくなった時から所定時間が経過した時に、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる自動洗浄と、
前記操作部の前記便器の洗浄のための操作が行われた場合、前記自動洗浄による前記洗浄弁の動作に優先して、前記洗浄のための操作によって供給された操作信号に基づき、前記洗浄弁を動作させ、前記便器に洗浄水を吐水させる意思洗浄と、を行うものであり、
あらかじめ設定された所定の期間の間、前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数を記憶し、記憶した前記自動洗浄の回数および前記意思洗浄の回数に基づき、前記所定時間を変更する
ことを特徴とする便器洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、
記憶した前記自動洗浄の回数と前記意思洗浄の回数との合計に対する前記自動洗浄の回数の割合が、あらかじめ設定された基準割合以下の場合は、前記所定時間を短縮し、前記自動洗浄の回数の割合が、前記基準割合以下でない場合は、前記所定時間を延長する制御を、あらかじめ設定された所定の更新時間ごとに行う
ことを特徴とする請求項1に記載の便器洗浄装置。
【請求項3】
前記所定時間は、短縮される際の下限値および延長される際の上限値の少なくともいずれかを有する
ことを特徴とする請求項2に記載の便器洗浄装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−72261(P2013−72261A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213779(P2011−213779)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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