説明

便器

【課題】化粧板を取り付ける際の作業性を改善する。
【解決手段】便器は、機能部を収容可能なケーシング20と、このケーシング20に取り付けられる化粧板60とを備える。ケーシング20には、上側受け部32と下側受け部37とが形成され、化粧板60には、上側装着部62と下側装着部63とが形成されている。化粧板60は、ケーシング20への組み付けに際し、上側装着部62と上側受け部32とが互いに係止されてケーシング20に対しその上端部が位置決めされる位置決め位置と、その位置決め状態を保ちつつ位置決め位置からの回動によって下側装着部63と下側受け部37とが互いに係止される正規装着位置とに変位可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器に関する。
【背景技術】
【0002】
便器の後部側面に化粧板を取り付け、便器の後部を覆い隠すようにする技術が知られている。例えば、特許文献1に記載のものでは、便器本体の後部側面に形成された凹部に化粧板が嵌め付けられている。
【0003】
凹部の底面には、貫通孔を有する角U字形の上側受け部と、幅方向に延びて表側に開放される断面C字形の下側受け部とが形成され、化粧板の内面には、貫通孔に上方から差し込まれる鉤状の上側装着部と、下側受け部に嵌合される棒状の下側装着部とが形成されている。
【0004】
化粧板の便器本体への取り付けにあたり、上側装着部が上側受け部の貫通孔に引掛け状態で差し込まれ、次いで下側装着部が下側受け部に表側から押し込まれて嵌合されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−328725号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の便器では、下側装着部と下側受け部とが正規嵌合されるまでの間、上側装着部が上側受け部から上方に抜け出る可能性があった。また、上側装着部は、貫通孔内に遊挿されており、幅方向への遊動が許容されていた。このように上側受け部に対する上側装着部の位置が定まらないと、下側装着部が下側受け部との係止可能な位置に至らないことがあり、化粧板の取り付け作業に支障をきたすおそれがあった。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、化粧板を取り付ける際の作業性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便器本体と、この便器本体の後部に取り付けられ、機能部を収容可能なケーシングと、このケーシングに取り付けられ、後部側面を覆うように配される化粧板とを備え、
前記ケーシングには、上側受け部と下側受け部とが形成され、
前記化粧板には、前記上側受け部に対応して配される上側装着部と、前記下側受け部に対応して配される下側装着部とが形成されている便器であって、
前記化粧板は、前記ケーシングへの組み付けに際し、前記上側装着部と前記上側受け部とが互いに係止されて前記ケーシングに対しその上端部が位置決めされる位置決め位置と、その位置決め状態を保ちつつ前記位置決め位置からの回動によって前記下側装着部と前記下側受け部とが互いに係止される正規装着位置とに変位可能とされているところに特徴を有する。
【0009】
このような構成である本発明の便器では、上側装着部と上側受け部とが互いに係止されることで、化粧板の上端部が位置決め状態を保ちつつ正規装着位置に至るため、下側装着部と下側受け部との係止位置がずれるのが防止され、化粧板の取り付け作業を円滑かつ容易に行える。また、ケーシングに取り付けられた化粧板の遊動を抑えることができる。
【0010】
この場合に、便器が化粧板の回動によって上側装着部と上側受け部とに発生し得る応力を緩和する手段を有する構成であれば、上側装着部と上側受け部のいずれかが過大な応力を受けて破損されるのを未然に回避できる。
【0011】
本発明の便器において、上側装着部は、化粧板の上方に突出する突片部とされ、上側受け部は、ケーシングの縁部に開口する受け孔とされ、位置決め位置では、突片部が受け孔内に下方から差し込まれて当て止めされることが好ましい。
【0012】
こうして当て止めされることで、化粧板のそれ以上上方への変位が規制され、化粧板の上端位置が確定される。同時に、突片部の差し込み深さも確定される。また、化粧板の押し上げ操作と回動操作によってケーシングに化粧板を装着できるため、ケーシングに対して化粧板を幅方向にスライドして装着する場合と違って、便器を挟んだ幅方向の領域に空きスペースを確保する必要がなく、スペース効率が良好となる。
【0013】
この場合に、化粧板の上端部とケーシングの縁部との間が全長に亘ってほぼ隙間なく詰められている構成であれば、便器内にゴミ等の異物が進入するのを防止できる。
【0014】
また、突片部には係止爪が形成され、受け孔の両側内面には係止爪に弾性的に係止される係止受け部が形成されており、係止爪と係止受け部との係止状態及び前記当て止め状態が保たれることで、化粧板の上下方向への遊動が規制されることが好ましい。
【0015】
これによれば、突片部を受け孔内に下方から差し込むだけで、化粧板の上下方向の位置決めを容易に行える。また、受け孔内に係止爪が隠れる構成であれば、係止爪が外力を受けて折損等されるのを回避できる。
【0016】
また、突片部の両側縁が受け孔の両側内面に当接することで、化粧板の幅方向への遊動が規制されることが好ましい。これによれば、突片部を受け孔内に下方から差し込むだけで、化粧板の幅方向の位置決めを容易に行える。
【0017】
また、突片部の表側面が受け孔の裏側内面に当接するとともに、化粧板の上端部の裏側面がケーシングの表側面に当接することで、化粧板の表裏方向への遊動が規制されることが好ましい。
【0018】
これによれば、突片部を受け孔内に下方から差し込むだけで、化粧板の表裏方向の位置決めを容易に行える。この場合に、突片部と受け孔の内面との当接位置が化粧板の上端部とケーシングとの当接位置よりも上方に位置し、突片部の裏側に受け孔内の空きスペースが確保される構成であれば、化粧板の回動過程で突片部が空きスペース内に傾倒するのが許容される。
【0019】
本発明の便器装置において、突片部は、その長さ方向途中に屈曲部を有し、かつこの屈曲部を挟んで上側部分に化粧板の上端部に対する起立角度が大きい第1片部を有しているとともに、屈曲部を挟んで下側部分に化粧板の上端部に対する起立角度が小さい第2片部を有していることが好ましい。
【0020】
これによれば、化粧板の取り付けに際し、化粧板の下端部をケーシングから引き離しても、ケーシングに対する化粧板の開き角度と第1片部の起立角度との間の角度差が第2片部によって補整されるから、第1片部が受け孔内に無理なく挿入される状態が保たれる。したがって、突片部に過大な応力が生じることがなく、突片部が折損・破損されるのを回避できる。
【0021】
本発明の便器装置において、下側装着部と下側受け部の少なくともいずれか一方は、相手側から取り外し可能な別体の部材とされ、相手側への取り付け状態において上下方向及び幅方向への遊動が許容されることが好ましい。
【0022】
化粧板の回動によって下側装着部と下側受け部との係止状態を実現するにあたり、下側受け部に対する下側装着部の係止方向を化粧板の回動軌跡である円弧に合わせるのは難しく、下側装着部と下側受け部との係止位置がずれやすいという事情がある。その点、本発明によれば、別体の部材(下側装着部・下側受け部)が相手側(化粧板・ケーシング)に対して上下方向及び幅方向への遊動を許容された状態で取り付けられるから、下側装着部と下側受け部との間の取り付け誤差が吸収され、下側装着部と下側受け部との良好な係止状態が確実に実現される。
【0023】
また、別体の部材は、相手側よりも軟質の材料で構成されていることが好ましい。これによれば、別体の部材が相手側への取り付け時に弾性的に変形し得るから、取り付け性に優れる。この場合に、別体の部材がナイロン樹脂で構成され、相手側がABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂)やPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)で構成されるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例に係る便器の斜視図である。
【図2】化粧板が装着される前の便器の側面図である。
【図3】化粧板の外側から見た側面図である。
【図4】化粧板の一部破断正面図である。
【図5】化粧板の内側から見た側面図である。
【図6】上側受け部に係止される前の上側装着部の側面図である。
【図7】上側受け部に係止された上側装着部の側面図である。
【図8】先端側が受け孔内に挿入された突片部の断面図である。
【図9】位置決め位置において全体が受け孔内に挿入された突片部の断面図である。
【図10】正規装着位置において受け孔の内面に当接された突片部の断面図である。
【図11】位置決め位置において下側受け部に係止される前の下側装着部の正面図である。
【図12】下側受け部に当接した下側装着部の正面図である。
【図13】正規装着位置において下側受け部に係止された下側装着部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【実施例】
【0026】
実施例の便器は、水洗式便器である便器本体10と、便器本体10の後部に取り付け固定され、機能部を収容するケーシング20と、ケーシング20に取り付け固定され、便器本体10の後部両側面を覆うように配される化粧板60とを備えている。便器本体10は便鉢11を有している。なお、以下の説明において、前後方向は幅方向と同義であり、内面は裏面と、外面は表面と、それぞれ同義である。
【0027】
機能部は、図示はしないが、局部洗浄装置、温風乾燥装置、脱臭装置、便器洗浄装置、便座・便蓋開閉装置、人体検知装置及びこれらを制御する制御装置等によって構成されている。
【0028】
ケーシング20は合成樹脂製であって、図1及び図2に示すように、カバー本体21、ベースプレート22及び下カバー23によって構成され、さらに、ケーシング20には側方から化粧板60が被せ付けられる。
【0029】
ベースプレート22は、便器本体10の後部上面にボルト締め等して固定されている。そして、ベースプレート22には、上記各種装置からなる機能部が装着され、機能部を覆うように上方からカバー本体21が被せ付けられている。カバー本体21には、便座15及び便蓋16が開閉可能に取り付けられている。
【0030】
また、べースプレート22の後部には、ファンモータ等の収容空間を画成する立板部24が形成されている。立板部24は、左右の側板25、背板26及び前板27によって構成され、上下方向に開放された形状とされている。側板25の内面には、図6に示すように、互いに一定間隔をあけて上下方向に延びる前後の第1リブ28と、両第1リブ28間のほぼ中央に位置して両第1リブ28とほぼ平行に配される第2リブ29とが形成され、さらに側板25の内部には、図8に示すように、第1、第2リブ28、29の内端同士を連ねて側板25の内面とほぼ平行に配される架橋板30が形成されている。
【0031】
第1、第2リブ28、29、架橋板30及び側板25によって取り囲まれる内側空間部は、後述する突片部64が挿入される受け孔31とされている。受け孔31は、本発明の上側受け部32を構成するものであって、ベースプレート22の下端側の縁部に開口する形状とされている。受け孔31の下端部には、下方へ行くにしたがって次第に拡開する拡開部33が形成され、この拡開部33によって突片部64の受け孔31内への誘い込みがなされる。拡開部33の一部は架橋板30で構成され、図8に示すように、架橋板30はその上端から下端にかけて側板25から離れるようにやや傾倒して配されている。
【0032】
側板25の下端部には、図1に示すように、受け孔31と対応する部位に凹部34が切り欠き形成されている。凹部34は、前後の第1リブ28間に配され、その上端内面の中央部には第2リブ29の下端が位置している。そして、第1リブ28には、受け孔31内に挿入された突片部64を係止可能な係止受け部35が形成されている。図6に示すように、前側の係止受け部35は、前側の第1リブ28の後端縁を段付き状に切り欠いて構成され、後側の係止受け部35は、後側の第1リブ28の上端面によって構成されている。
【0033】
そして、ベースプレート22の下端部には、受け孔31を挟んだ前後両側に、一対の規制突部36が下方に突出して形成されている。両規制突部36には、化粧板60の上端部が外側から当接可能とされている。また、ベースプレート22の下方には洗浄水の水圧を増すための図示しないブースターが設置され、下カバー23はこのブースターの周りを取り囲みつつベースプレート22の後部に垂下して取り付けられている。
【0034】
下カバー23の左右の側外面には、図2に示すように、下側受け部37が形成されている。下側受け部37は、図11に示すように、下カバー23の側外面の下端部から外側に突出する板状の延出部38と、延出部38の突端に沿って前後方向に延びる断面環状の受け本体部39とからなる。受け本体部39の外周面のうち、裏側の半円部分は、断面真円弧状の円弧面部42とされ、表側の半円部分は、その中央がやや先方へ突き出て角部が弧状をなす略山型の断面形状をもった凸曲面部43とされている。
【0035】
下側受け部37の上方及び両側方は庇部40によって覆われ、延出部38及び受け本体部39の前後両端は庇部40に一体に連結されている。また、図2に示すように、下側受け部37の前後方向略中央部には空間部41が保有され、空間部41を挟んだ前後両側に、延出部38及び受け本体部39が分断して配されている。
【0036】
続いて化粧板60について説明すると、化粧板60は、下カバー23を外側から覆うようにしてケーシング20に取り付けられ、正規に取り付けられた状態では、その前端縁が便器本体10の後端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するとともに、その上端縁がベースプレート22の下端縁に全長に亘ってほぼ隙間なく接するようになっている。これにより、化粧板60は便器本体10の外面と対応して湾曲状に反った形状をなし、化粧板60の前端縁は上端へ行くにしたがって次第に前方へ突き出るようなオーバーハング状をなし、化粧板60の上端縁はベースプレート22の下端縁に沿ってほぼ水平に延びる形状をなしている。化粧板60の上端後部には、図2に示すように、ケーシング20に設置されたスピーカー90と対応する位置に、多数の横長スリット孔61が上下方向及び前後方向に整列して形成されている。
【0037】
化粧板60には、図3に示すように、上側受け部32と係止可能な上側装着部62と、それよりも下方に位置して下側受け部37と係止可能な下側装着部63とが形成されている。上側装着部62は、化粧板60の後部上端から上方へ突出する突片部64とされ、下側装着部63は、化粧板60の内面における上下方向略中央部でかつ後端寄りの位置に配されている。化粧板60の上端縁には、図4にも示すように、ケーシング20への取り付け時にベースプレート22の下端縁に当接されるステージ部65が内側に突出して形成されている。突片部64は、ステージ部65の上面から突成されている。
【0038】
下側装着部63は、化粧板60から取り外し可能であって化粧板60とは別体の部材とされ、化粧板60がPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)で構成されているのに対し、下側装着部63はPP樹脂よりも軟質のナイロン樹脂で構成されている。詳しくは下側装着部63は、図5に示すように、化粧板60の内面と対向して配される支持板66と、支持板66の内面の前後方向略中央部に突成されるガイド突部67と、ガイド突部67を挟んだ両側にあって支持板66の内面の前後方向両端部に突成された左右一対のクリップ部68とからなる。
【0039】
ガイド突部67は、その突端が閉止端とされる四角筒状をなし、ケーシング20への取り付け時に、下側受け部37の空間部41内に嵌合される。ガイド突部67の突端はクリップ部68の突端よりも先方に突き出た位置にあり、ガイド突部67がクリップ部68に先立って下側受け部37と係合することにより、下側装着部63の下側受け部37への装着動作が案内されるようになっている。ガイド突部67の上壁には図示しないスリットが開口して形成されている。
【0040】
クリップ部68は、図11に示すように、支持板66の内面から突出する上下一対の係止片69を有し、両係止片69の先端間が開放された略C字形の断面形状を有している。図13に示すように、化粧板60の取り付け時に、両係止片69が受け本体部39を弾性的に抱持することにより、下側装着部63が下側受け部37に係止されるようになっている。両係止片69の先端部には、受け本体部39との当接によって両係止片69の拡開動作を誘導する誘い込み部70が外側に拡開して形成されている。
【0041】
また、化粧板60の内面には、図5に示すように、下側装着部63を受ける受け部71が一体に突出して形成されている。受け部71は、支持板66の両側縁部を嵌合可能であって支持板66の上方への抜けを規制する左右一対のレール部72と、両レール部72間の両側に位置して支持板66の下方への抜けを規制する左右一対の下側抜け規制部73と、両レール部72間のほぼ中央に位置する突状部74とによって構成されている。下側装着部63は、受け部71に下方からスライドして取り付けられ、その取り付け過程では支持板66の中央部が下側抜け規制部73に弾性的に乗り上げられつつ支持板66の両側縁部がレール部72内を摺動する一方、正規に取り付けられるに伴い支持板66が下側抜け規制部73を乗り越えて受け部71内にスナップ嵌合されるようになっている。この取り付け状態では、受け部71内における下側装着部63の上下方向及び幅方向の遊動が許容されており、下側装着部63と下側受け部37との間の取り付け誤差を吸収可能としてある。また、この取り付け状態では、ガイド突部67のスリット内に突状部74が嵌合するようになっている。
【0042】
ところで、クリップ部68は受け本体部39と正対するべくその開口方向に若干の勾配がつけられており、したがって、下側装着部63には上下方向の構造識別性を有することが求められる。その点、上記の構成によれば、スリット内に突状部74が嵌れば、下側装着部63が装着され、スリット内に突状部74が嵌らなければ、下側装着部63が装着されないため、下側装着部63が上下反転して誤組み付けされることはない。
【0043】
さて、突片部64は、全体として板状をなし、図8に示すように、根元側に位置してステージ部65から立ち上がる第2片部75と、先端側に位置して第2片部75とは異なる起立角度で立ち上がる第1片部76と、第1、第2片部75、76間に位置して両者を連結する屈曲部77とによって構成されている。突片部64の幅方向略中央には、図6に示すように、第1片部76の略全長に亘って延びて上端に開口する受け溝78が形成されている。ケーシング20への取り付け時には、受け溝78内に第2リブ29が嵌合するようになっている。
【0044】
また、突片部64の幅方向両端部には、第1片部76の略全長に亘って延びて上端に開口する左右一対のスリット溝79が形成され、両スリット溝79の外側に、左右一対の弾性片80が画成されている。弾性片80の先端部には、係止爪81が外側に突出して形成されている。突片部64の受け孔31への挿入過程では、係止爪81が第1リブ28に摺接して弾性片80がスリット溝79内に撓み変形され、突片部64が正規挿入されるに伴い、弾性片80が弾性復帰して係止爪81が係止受け部35に引掛け状態で係止され、もって突片部64の受け孔31からの抜け止めがなされるようになっている。
【0045】
また、第2片部75は、化粧板60の上端縁に対して90度以下の所定の起立角度で内側へ傾斜して配され、第1片部76は、化粧板60の上端縁に対して90度以下ではあるが第2片部75よりも大きい起立角度で内側へ傾斜して配されている。したがって、ケーシング20への取り付けに際し、下カバー23に対する化粧板60の開度を第1、第2片部75、76の各起立角度に合うように順次小さくすることにより、受け孔31内に突片部64を円滑に差し込むことが可能となっている。なお、第2片部75の外側面には、上下方向に延びる左右一対の補強リブ83が形成されている。
【0046】
次に、化粧板60のケーシング20への取り付け方法について説明する。まず、化粧板60の下端側が下カバー23から離れるように化粧板60を浮かせた状態として、受け孔31の下方に突片部64の先端側を臨ませる。次いで、図8に示すように、化粧板60を押し上げ、第1片部76を凹部34から受け孔31内に進入させる。このとき、第1片部76の先端が架橋板30を摺動することにより、第1片部76の受け孔31内への挿入案内がなされ、かつ、化粧板60の下端部が下カバー23に近づくように化粧板60の姿勢が徐々に立て直されて行く。
【0047】
さらに、化粧板60を押し上げると、図7及び図9に示すように、第1片部76が受け孔31内に深く入り込み、突片部64の受け溝78の奥端に第2リブ29の下端が当接して、化粧板60の押し上げ動作が阻止される。また、この状態では、突片部64の係止爪81が係止受け部35を弾性的に係止して化粧板60の下方への抜けが規制され、さらに、両弾性片80の側縁が第1リブ28の両側縁に当接することで化粧板60の幅方向への遊動が規制される。こうして、化粧板60は、その上端部が上下方向及び幅方向に位置決めされる位置決め位置に保たれる。かかる位置決め位置では、第1片部76の全体が受け孔31内に挿入され、屈曲部77が凹部34の内側角部の近くに配され、第2片部75の全体が凹部34側に配されるようになっている。
【0048】
続いて、位置決め位置における化粧板60を、上側装着部62と上側受け部32との係止位置を略支点として、下カバー23側に向けて回動させる。こうして化粧板60が正規装着位置に至ると、下側装着部63が下側受け部37に弾性的に係止される。正規装着位置へ至る過程では、図12に示すように、クリップ部68の係止片69が受け本体部39の外周面を摺動して拡開されるが、このとき、係止片69の開き角度は凸曲面部43の突出形状に起因して急激に大きくなることはなく、クリップ部68に過大な応力が発生するのを回避できる。一方、正規装着位置では、図13に示すように、係止片69の先端部が受け本体部39の円弧面部42に係止されることで高い係止力を得ることができる。また、正規装着位置では、図10に示すように、第1片部76がほぼ垂直に起立して、第1片部76の表側面と側板25の内面である受け孔31の裏側内面とが面接触状態で当接されるとともに、ステージ部65の先端が規制突部36に当接されることにより、化粧板60の表裏方向への遊動が規制される。このように、化粧板60は、位置決め位置から正規装着位置にかけてその位置決め状態が保たれ、また正規装着位置ではケーシング20に確実に固定されることとなる。
【0049】
上記の場合に、化粧板60の回動過程では、突片部64は受け孔31内における架橋板30と側板25との間の空きスペース内に傾倒して配される。また、第2片部75から第1片部76にかけて突片部64の起立角度が段階的に大きくなるから、化粧板60の下端部が下カバー23から引き離され、化粧板60が傾倒したときに、第1片部76が受け孔31の内面に当接して過大な応力を受けるのを回避できる。
【0050】
以上説明したように、本実施例によれば、化粧板60のケーシング20への取り付け時に、上側装着部62と上側受け部32とが互いに係止され、化粧板60の上端部がケーシング20に位置決めされた状態で回動されて、化粧板60が正規装着位置に至るようになっているから、正規装着位置において下側装着部63と下側受け部37との係止位置がずれるのが防止される。したがって、化粧板60をケーシング20に取り付ける際の作業性が改善される。
【0051】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例とは逆に、上側受け部がケーシングの縁部から下方に突出する突片部とされ、上側装着部が化粧板の上端部に開口する受け孔とされる構成であってもよい。
(2)上記実施例とは逆に、下側受け部がクリップ部を有し、下側装着部が係止受け部を有する構成であってもよい。
(3)上側装着部は、化粧板を幅方向にスライドさせて上側受け部に係止されるものであってもよい。
(4)下側装着部が化粧板に一体に形成され、下側受け部がケーシングから取り外し可能な別体の部材であってもよい。あるいは、下側装着部と下側受け部のいずれもが相手側(化粧板・ケーシング)から取り外し可能であってもよい。
(5)屈曲部は湾曲状に形成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…便器本体
20…ケーシング
31…受け孔
32…上側受け部
35…係止受け部
37…下側受け部
60…化粧板
62…上側装着部
63…下側装着部
64…突片部
75…第2片部
76…第1片部
77…屈曲部
81…係止爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体と、この便器本体の後部に取り付けられ、機能部を収容可能なケーシングと、このケーシングに取り付けられ、後部側面を覆うように配される化粧板とを備え、
前記ケーシングには、上側受け部と下側受け部とが形成され、
前記化粧板には、前記上側受け部に対応して配される上側装着部と、前記下側受け部に対応して配される下側装着部とが形成されている便器であって、
前記化粧板は、前記ケーシングへの組み付けに際し、前記上側装着部と前記上側受け部とが互いに係止されて前記ケーシングに対しその上端部が位置決めされる位置決め位置と、その位置決め状態を保ちつつ前記位置決め位置からの回動によって前記下側装着部と前記下側受け部とが互いに係止される正規装着位置とに変位可能とされていることを特徴とする便器。
【請求項2】
前記上側装着部は、前記化粧板の上方に突出する突片部とされ、前記上側受け部は、前記ケーシングの縁部に開口する受け孔とされ、
前記位置決め位置では、前記突片部が前記受け孔内に下方から差し込まれて当て止めされることを特徴とする請求項1記載の便器。
【請求項3】
前記突片部には係止爪が形成され、前記受け孔の両側内面には前記係止爪に弾性的に係止される係止受け部が形成されており、前記係止爪と前記係止受け部との係止状態及び前記当て止め状態が保たれることで、前記化粧板の上下方向への遊動が規制されることを特徴とする請求項2記載の便器。
【請求項4】
前記突片部の両側縁が前記受け孔の両側内面に当接することで、前記化粧板の幅方向への遊動が規制されることを特徴とする請求項2又は3記載の便器。
【請求項5】
前記突片部の表側面が前記受け孔の裏側内面に当接するとともに、前記化粧板の上端部の裏側面が前記ケーシングの表側面に当接することで、前記化粧板の表裏方向への遊動が規制されることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1項記載の便器。
【請求項6】
前記突片部は、その長さ方向途中に屈曲部を有し、かつこの屈曲部を挟んで上側部分に前記化粧板の上端部に対する起立角度が大きい第1片部を有しているとともに、前記屈曲部を挟んで下側部分に前記化粧板の上端部に対する起立角度が小さい第2片部を有していることを特徴とする請求項2ないし5のいずれか1項記載の便器。
【請求項7】
前記下側装着部と前記下側受け部の少なくともいずれか一方は、相手側から取り外し可能な別体の部材とされ、前記相手側への取り付け状態において上下方向及び幅方向への遊動が許容されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の便器。
【請求項8】
前記別体の部材は、前記相手側よりも軟質の材料で構成されていることを特徴とする請求項7記載の便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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