説明

便座又は便蓋の電動開閉装置

【課題】 電動開閉装置の開端位置を正確に記憶して、全開位置まで開放させることができる便座・便蓋の電動開閉装置を得る。
【解決手段】 便蓋を電動で開いたとき(S10)に、ロータンクに当って停止した位置を停止位置として記憶する(S11)。そして、停止位置記憶動作の回数をカウントするチェックフラッグを「+1」する(S12)。そのときに、記憶した最新の停止位置と前回の電動開時に記憶した停止位置との比較を行い(S13)、停止位置が異なる場合にはチェックフラッグを「0」に設定して(S14)、電動開動作に戻る。比較(S13)の際、最新の停止位置が前回の停止位置を同じ場合には、チェックフラッグがN回に達しているかどうかを確認し(S15)、チェックフラッグがN回に達していれば、最新の停止位置を開端位置として制御手段の制御値を設定する(S16)。この行程をチェックフラッグがN回に達するまで繰り返し行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洋式便器における便座又は便蓋を電動開閉する電動開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の便座及び便蓋の電動開閉装置においては、便座及び便蓋が回転運動のない状態となったときに、駆動モータを停止するような制御を行っていた。しかし、このような電動開閉装置は、回転動が無くなるまで駆動モータに負荷がかかるので、便座及び便蓋が停止位置に達した際にロータンクと便蓋及び便座が衝突し大きな音が発生していた。また、その衝突の際、ロータンクに衝突した便蓋に傷が付いてしまうという問題もあった。
そこで、本出願人は、そのような問題点を解消するために、特許文献1の発明をなすに至った。特許文献1の発明は、便蓋及び便座を最初に電動で開いたときにロータンク等に衝突した位置(開き角度)を開端位置として記憶し、次回以降の電動開動作においては、その開端位置を電動開時の停止位置として駆動モータの動作を制御するものである。(図28参照)
【特許文献1】特開2004−180699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の発明では、電動開閉装置への電源投入後に、最初に便座及び便蓋を開いたときに停止した位置を開端位置として記憶するので、ロータンクと便蓋との間に手や工具などの異物が挟まったときには、便蓋が途中までしか開いていないのに、その位置を開端位置だと誤認したまま位置の記憶をするので、その後の便蓋が全開しないという問題があった。
そこで、本発明では、電動開閉装置の開端位置を正確に記憶して、全開位置まで開放させることができる便座・便蓋の電動開閉装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本出願の第一の発明は、モータと、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、前記モータの駆動力を前記回転軸に伝達する減速歯車列と、前記便座又は便蓋の位置検知手段と、前記便座又は便蓋が設定された開端位置に停止するよう前記モータの動作を制御してなる制御手段を備えた便座又は便蓋の電動開閉装置において、前記位置検知手段により検知した便座又は便蓋の停止位置を前記制御手段に記憶させ、前記制御手段に記憶された停止位置が複数回連続して同じ場合に、当該位置を前記開端位置として設定することを特徴とする。
【0005】
また、上記目的を達成するために、本出願の第二の発明は、モータと、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、前記モータの駆動力を前記回転軸に伝達する減速歯車列と、前記便座又は便蓋の位置検知手段と、前記便座又は便蓋が設定された開端位置に停止するよう前記モータの動作を制御してなる制御手段を備えた便座又は便蓋の電動開閉装置において、前記便座又は便蓋の停止位置を前記制御手段に記憶する電動開動作を複数回実行して、複数回の電動開動作ごとに記憶された停止位置から便座又は便蓋の電動開時の開端位置を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
電動開時に便蓋とロータンクの間に工具や人の手などの障害物があったり、あるいは電動開動作を途中で手で止めたりしても、そのときの停止位置を開端位置としてただちに設定ことがないので、電動開閉動作の停止位置を的確に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の最良の実施形態について説明する。
本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置は、図15のブロック図に示すように、モータ32と、便座又は便蓋と共に回転する回転軸40と、モータ32の駆動力を回転軸40に伝達する減速歯車列と、便座又は便蓋の位置検知手段(エリア検出回路71、回転検出回路70、磁石34c等)と、便座又は便蓋が設定された開端位置に停止するようモータ32の動作を制御してなる制御手段(メインCPU、ドライブ回路150)を備えている。
図1〜図3は、便蓋がロータンク等に衝突する直前となる位置で停止するようにモータの駆動を制御する電動開閉装置について、モータの駆動停止させる開端位置を定めるためのフローチャートである。(いうまでも無いが、便座の電動開閉装置についても、適用可能である。)
【0008】
まず、本発明の第一の実施の形態を、図1に基づいて説明する。
このフローは、便座装置の電源を投入したときに開始する。便蓋を電動で開いたとき(S10)に、便蓋が障害物に当って停止した位置を停止位置として記憶する(S11)。そして、停止位置記憶動作の回数をカウントするチェックフラッグを「+1」する(S12)。そのときに、記憶した最新の停止位置と前回の電動開時に記憶した停止位置との比較を行い(S13)、両停止位置が異なる場合にはチェックフラッグを「0」に設定して(S14)、電動開動作に戻る。停止位置の比較(S13)において、最新の停止位置が前回の停止位置を同じ場合には、チェックフラッグがN回(例えば、3回)に達しているかどうかを確認し(S15)、チェックフラッグがN回に達していれば、最新の停止位置を開端位置として制御手段の制御値を設定する(S16)。このS10〜S15の行程をチェックフラッグがN回に達するまで繰り返し行う。
【0009】
これらの停止位置の認識は、複数の方法が採用可能である。電動開閉装置の駆動源がステッピングモータのときには、ステッピングモータに印加したパルス数を停止位置データとみなすことができる。また、電動開閉装置の回転軸の回転角をポテンショメータで検出する場合には、ポテンショメータの電圧を角度に換算して停止位置データとみなすことができる。なお、電動開時に手で止めたために便蓋が80度以内の開き角度で停止したときには、その動作は電動開動作とみなさずに停止位置を記憶しないようにすればよい。
ここで、最新の停止位置と前回の停止位置の比較(S13)では、両停止位置がほぼ一致していればよいので、駆動モータがステッピングモータとした場合には、最新の停止位置が前回の停止位置±数パルス以内(好ましくは2パルス以内)かどうかを判断するようにするのが望ましい。
【0010】
このように、便蓋の電動開時の停止位置が複数回同じであったときに、その停止位置を電動開動作の開端位置として設定する。よって、便座装置の最初の電動開時に便蓋とロータンクの間に工具や人の手などの障害物があったり、あるいは電動開動作を途中で手で止めたりしても、そのときの停止位置を開端位置として記憶されることがなく、電動開閉動作の停止位置を的確に設定することができる。
【0011】
なお、開端位置を最新の停止位置に設定したが、前述したように停止位置は完全一致していなくてもいいので、N回の停止位置の最大値を開端位置としたり、N回の停止位置の平均値を開端位置にしてもよい。
【0012】
次に、本発明の第二の実施の形態を、図2に基づいて説明する。
このフローは、便座装置の電源を投入したときに開始する。便蓋を電動で開いたとき(S20)に、便蓋が障害物に当って停止した位置を停止位置として記憶する(S21)。そして、停止位置記憶動作の回数をカウントするチェックフラッグを「+1」し(S22)、チェックフラッグがN回に達しているかどうかを確認する(S23)。チェックフラッグがN回に達していれば、N回の停止位置の記憶値のうちの最大値(便蓋が最も開いた位置)を開端位置として設定する(S24)。このS20〜S24の行程をチェックフラッグがN回に達するまで繰り返し行う。
【0013】
これらの停止位置の認識は、前述した第一の実施の形態と同様に、複数の方法が採用可能である。
【0014】
このように、便蓋の電動開時の停止位置を複数記憶して、その中から最も便蓋が開いたときの停止位置を電動開動作の開端位置として設定する。よって、便座装置の最初の電動開時に便蓋とロータンクの間に工具や人の手などの障害物があったり、あるいは電動開動作を途中で手で止めたりしても、そのときの停止位置を開端位置として記憶されることがなく、電動開閉動作の停止位置を的確に設定することができる。
【0015】
さらに、本発明の第三の実施の形態を、図3に基づいて説明する。
このフローは、便座装置の電源を投入したときに開始する。便蓋を電動で開いたとき(S30)に、便蓋が障害物に当って停止した位置を停止位置として記憶する(S31)。そして、最新の停止位置を含めた停止位置の全記憶の中に一致する停止位置がN回分(例えば3回分)あるかどうかをチェックし(S32)、一致する停止位置がN回分あればその停止位置を開端位置として設定する(S33)。このS30〜S33の行程を、一致する停止位置がN回分揃うまで繰り返し行う。
【0016】
これらの停止位置の認識は、前述した第一の実施の形態と同様に、複数の方法が採用可能である。
また、ここで、停止位置のチェック(S32)では、停止位置がほぼ一致していれば同じ位置であると識別してよいので、駆動モータがステッピングモータである場合には、数パルス以内(好ましくは2パルス以内)かどうかで停止位置の一致を判断するようにするのが望ましい。
【0017】
このように、便蓋の電動開時の停止位置を複数記憶して、その中から最も便蓋が開いたときの停止位置を電動開動作の開端位置として設定する。よって、便座装置の最初の電動開時に便蓋とロータンクの間に工具や人の手などの障害物があったり、あるいは電動開動作を途中で手で止めたりしても、そのときの停止位置を開端位置として記憶されることがなく、電動開閉動作の停止位置を的確に設定することができる。
【実施例】
【0018】
以下図面を参照して本発明を適用した便座装置の実施例について説明する。
図4は本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置を内蔵した便座装置10の斜視図、図5は便座又は便蓋の電動開閉装置の取付け位置を説明する為の分解斜視図、図6は便座用電動開閉装置30を内蔵した便座装置10の断面図、図7は便蓋用電動開閉装置130を内蔵した便座装置10の断面図である。図において、便器本体1の背部側のリムの上面を利用して暖房便座装置10のケーシング11を固定し、このケーシング11前側中央に凸収納部11aを形成し、この収納部11aの側壁11bに便座用電動開閉ユニット30、便蓋用電動開閉ユニット130を取付け、電動開閉ユニット30、130に便座12及び便蓋13を夫々取付けている。
【0019】
便座12及び便蓋13には、夫々の基端部に連結部12a、13a及び回動部12b、13bを設けており、連結部12aは後述するアシストユニット80を介して便座用電動開閉ユニット30の出力軸である回転軸40に回動不能に連結され、連結部13aは、便蓋用電動開閉ユニット130の出力軸140に連結した回転軸50に対し夫々回動不能に連結される。また、回動部12b、13bは、便座12及び便蓋13を開閉可能に支持するための支持軸50a(回転軸50の中途部に形成)、81a(回転軸40に連結した連結軸81の先端部81a)に対し夫々回動可能に連結される。なお図中150は電動開閉ユニット30、130を駆動するための制御手段及びその回路を保護するためのポッティングケースである。
【0020】
図8に便座用電動開閉ユニット30の分解斜視図、図9に駆動モータ組品Aの分解斜視図、図10に遊星歯車組品Bの分解斜視図、図11に便座用電動開閉ユニットのケーシング31bを外した状態での平面図、図12にアシストユニット80の分解斜視図を示す。なお、図11の各歯車の歯数及び歯形状は実際のものとは異なる(例えば、小歯車32b、34bは実際には歯数7だが、図では歯数8として記載する)。
図示するように、電動開閉ユニット30は、外郭を形成するケーシング31(主ケース31a及び蓋ケース31bで構成)、駆動モータ組品A(図8に示すように駆動モータ組品Aは、DCブラシモータ等により構成される駆動モータ32、駆動モータ32の出力軸32aに圧入固定される小歯車32b、駆動モータ32にネジ等を用いて固定される第1歯車固定用スペーサ33、小歯車32bと噛み合う大歯車34a及び次段へ動力を伝達する為の小歯車34bを有する第1歯車34、第1歯車34の回動軸35、スペーサ33に固定される第1歯車34の軸受36から構成される。
【0021】
なお、大歯車34a表面(駆動モータ側)にはリング状磁石34cを接着或いはかしめ等で一体化する。)、小歯車34bと噛み合う大歯車37a及び次段へ動力を伝達する為の小歯車37bを有する第2歯車37、小歯車37bと噛み合う大歯車38a及び次段へ動力を伝達する為の太陽歯車38bを有する第3歯車38、遊星歯車組品B(図9に示すように遊星歯車組品Bは、回転軸40、回転軸40に固定され便座12の回転位置を検出するためのリング状磁石61、設定以上の荷重が回転軸40にかかった場合にキャリア63に荷重を伝達しないためにトルクリミッターとして機能するトレランスリング62、トレランスリング62を介して回転軸40に連結されるキャリア63、キャリア63に設けた遊星軸63aに回動自在に取付けられる遊星歯車64、遊星歯車64のスラスト方向の動きを規制する軸受65と、遊星歯車64と噛み合う内歯車66、ケーシング31aに遊星歯車機構を回動不能に固定する為の取付スペーサ67とで構成される。)とで構成される。
【0022】
なお、小歯車32b、小歯車34b、小歯車37bは金属製、大歯車34a、大歯車37aは樹脂製とし、小歯車32bと大歯車34a、小歯車34bと大歯車37aはすば歯車とする。また、第3歯車38の大歯車38aと太陽歯車38bとを金属にて一体成形し、小歯車37bと大歯車38aは平歯車とする。更に遊星歯車64は金属製とし、内歯車66は樹脂製とする。なお、金属歯車はプレス焼結や射出焼結等の金属焼結や、冷間鍛造等によって成形することができる。また樹脂歯車との一体成形としてはインサート成形等で成形することができる。このように平歯に比べ薄くても接触面積を確保できるはすば歯車を用いることで歯車自体を薄くしても歯車強度を確保することができ、減速歯車列をコンパクトすることができる。また接触面積の大きいはすば歯車を比較的高速回転となる第1、2列の減速歯車列に用いることでバックラッシュを小さくすることが可能となり伝達効率を上げることが出来る。また、はすば歯車部分の噛み合いを金属(小歯車)と樹脂(大歯車)にすることによって磨耗による熱の発生や騒音等を抑制することができる。また、比較的低速回転・高トルクとなる第3、4列の減速歯車を金属製とすることで歯車の破壊を抑制することができる。
【0023】
次に電動開閉ユニット30の組み立て手順について図を用いて説明する。
図9に示すように駆動モータ組品Aの組み立ては以下の手順で行われる。まずスペーサ33の軸受孔33aに軸35の一端を差込み、軸35に第1歯車34を挿入し、軸受36の軸孔36aに軸35の他端を、位置決め孔36bに位置決めボス33bを挿入し固定孔36c、36cにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入固定し、スペーサ33に設けた下孔33cにねじ込むことで、スペーサ33、第1歯車34、軸35及び軸受36を一体化し、更に駆動モータ32の出力軸32a及び小歯車32bをスペーサ33の貫挿孔33eから第1歯車34と小歯車32bとの噛み合いに注意しながら貫挿し、ネジ挿通孔36d(軸受36)、固定孔33d(スペーサ33)からネジを差込み、駆動モータ32に設けたネジ孔32cにネジ込むことで組み立て完了する。なおネジ挿通孔36dはネジ頭よりも大きな径とし、ネジ挿通孔36d側の固定孔33dは途中(他方の固定孔33dと同一の肉厚となる位置)まではネジ頭よりも大きな径とし、途中からネジ部分が貫通する程度の径とすることで、駆動モータ32への固定用ネジ2本を共通化することができる。
このように減速歯車列の第1段目を駆動モータ32に一体化することで軸ブレ等を抑制することができ伝達効率を上げることができる。
【0024】
図10に示すように遊星歯車組品Bの組み立ては以下の手順で行われる。
まずキャリア63に設けた遊星軸63aに遊星歯車64を装着し、内歯車66を遊星歯車64との嵌め合いに注意しながら装着する。次に軸受65に設けた軸受凹部65aに軸63aの終端部を装着し、遊星歯車64の動作領域を確保するためにキャリア63に設けた締結スペーサ63bの細径円筒部63cを軸受65に設けた貫通孔65bに挿通しカシメることでキャリア63、遊星歯車64、軸受65及び内歯車66を一体化する(以下この一体化したものを『遊星歯車機構』という)。この遊星歯車機構の出力軸63dの外周にトレランスリング62を嵌装し、内歯車66の外周に所定間隔をおいて形成した回動防止用の複数の凹溝66aと略同一形状の凸部67e(図11参照)を有するスペーサ67を内歯車66に外装し、スペーサ67の開孔67bから出力軸63dを突出させた状態で、回転軸40の後端に設けた連結孔40a内にトレランスリング62の外周を嵌着することで遊星歯車組品Bの組み立ては完了する。なお回転軸40のフランジ40bには予めリング状の磁石61(N−Sが2つ形成されているもの)を止め輪等を用いて一体化しておく。またスペーサ67の奥側には後述するエリア検出回路71を保護する保護ブロック67cを一体に設け、67cの表面には配線処理用リブ67dを設ける。
【0025】
次にユニットの組み立て手順を図8を用いて説明する。
磁石34cの磁力を検知するホールIC70aを搭載した回転検出回路70の取付孔70bにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31eにネジ固定することでケーシング31aと回転検出回路70を一体化する。次に、磁石61の磁力を検知するホールIC71a、71bを搭載したエリア検出回路71の取付孔71cにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31fにネジ固定することでケーシング31aとエリア検出回路71を一体化する。なおエリア検出回路71には駆動モータ32への通電用配線(図示無)を半田付けしており、その通電用配線の一つに直列に接続される正特性サーミスタ71dを更に半田付けしておく。この正特性サーミスタは駆動モータ32へ過電流が流れることを防止するために設けている。次に、ケーシング31aの下端部に設けたモータ収納部31cに駆動モータ組品Aを収納し、スペーサ33に形成した取付孔33fにセルフタッピングネジ(図示無)を挿入し、ケーシング31aに設けた取付ボスの下孔31dにネジ固定することでケーシング31aと駆動モータ組品Aを一体化する。
【0026】
次に、遊星歯車組品Bをケーシング31aの円筒部31gに設けた凸条31r(図11参照)とスペーサ67の外周に設けた凹溝67aとが一致するよう、またスペーサ67の保護ブロック67cの外形とケーシング31aの内壁とが当接するようにして円筒部31g内に挿入固定する。なお、円筒部31gの奥壁には貫通孔31iを設け、この貫通孔31iの周壁31jと回転軸40に設けたOリング溝40に収納されるOリング40cにより貫通孔31iからの水侵入を防止するよう構成している。ここでスペーサ67を用いてケーシング31aを取付けた理由は、遊星歯車機構自体はその機能上真円度が必要となり、これを直接ケーシング31aに取り付けるにはケーシング31aの円筒部31gにも真円度が必要となり寸法公差が厳しく歩留まりが悪くなる為、スペーサ67の凸部67e、ケーシング31aの凸条31rで略点接触として製造公差をスペーサ67の弾性変形で吸収できる構造としてケーシング31aの円筒部31gの製造を容易とするためである。
【0027】
次に遊星歯車64と太陽歯車38bとの噛み合いに注意しながら第3歯車38を遊星歯車機構内に挿入し、小歯車37bと大歯車38aの噛み合いと大歯車37aと小歯車34bとの噛み合いに注意しながら第2歯車を軸31kに挿入固定する。最後にケーシング31bに設けた軸31lを第3歯車38の軸孔38c内に挿入すると共に、軸31kの先端を軸受31m内に挿入し、ケーシング31aに設けた取付孔31nにセルフタッピングネジを挿入し、ケーシング31bに設けた取付ボスの下孔31pにねじ込むことで便座用電動開閉ユニット30は組み立て完了する。
図11に示すように、駆動モータ32の外形と遊星歯車機構の外形との投影面がなす2円(Ca,Cb)を隣接して配置し、更に、2円(Ca,Cb)及び2円の外接線(Lc,Ld)によって囲まれた投影面内に第1歯車34、第2歯車37の軸を配置することによって電動開閉ユニット30をコンパクトに設計することができる。更に本実施例では、2円(Ca,Cb)の中心を通る水平線(La,Lb)と外接線(Lc,Ld)に囲まれた投影面内に第1歯車34、第2歯車37の軸を配置しているので更にコンパクトに設計することが出来る。また水平線(La,Lb)に代えて、2円(Ca,Cb)の中心を結ぶ線に対し各円の中心を通る垂線を用いることでも良い。本実施例ではこの垂線も略水平となるため、然程大きな差異では無いが、減速歯車列を水平方向に配置する場合等はこのような設計とする方が望ましい。
【0028】
便蓋用電動開閉ユニット130も便座用電動開閉ユニット30と同様の部品構成、組み立て手順である為、相違点を除き説明は割愛する。以下に相違点を説明する。便座用電動開閉ユニット30と便蓋用電動開閉ユニット130とは左右対称の部品構成となる。図5、図7及び図11に示すように便蓋用電動開閉ユニット130の出力軸140には回転軸50が回動不能に挿入固定される略長方形状の連結孔141が設けられている。また便蓋用電動開閉ユニット130のケーシング131aにはケーシング11の側壁11bと所定間隔を保つ為のボス131b及びキャップ部材11dの受用突起131cが一体に設けられている。
【0029】
次にアシストユニット80について図6、図12を用いて説明する。
アシストユニット80は電動開閉ユニット30の回転軸40に回動不能に連結される連結軸81、便座12を開方向に付勢するために一端82aが連結軸81に固定されたアシストバネ82、アシストバネ82の他端82bが固定されると共にケーシング11に回動不能に連結される連結カバー83、連結カバー83と共にアシストバネ82を囲う蓋カバー84、便座12をケーシング11から着脱するための着脱レバー85、アシストユニット80を便座12に固定する為の固定部材86で構成される。
【0030】
連結軸81の先端部81a(便蓋13の支持軸)にはセレーションを形成し、略中央部分には連結軸81のスラスト方向の移動を規制するための大径部81bを形成する。また、蓋カバー84の内筒部84aとの間をシールする為のOリング溝81cを形成し、大径部81bとOリング溝81cとの間にアシストバネ82に一端を挿入するための挿入穴81dを形成する。また、カバー83の内筒部83aとの間をシールする為のOリング溝81eを形成し、末端部分には回転軸40の外形と略同一形状の溝81fを形成する。
【0031】
アシストバネ82の一端82aは中央に向けて折り曲げられ、挿入孔81dに挿入され、他端82bは中央に向けて折り曲げられ連結カバー83の内筒部83aの外周に形成した支持溝83bに固定される。なお支持溝83bの根元部分はやや底部83cの肉厚を増してアシストバネ82の他端82bの回動を防止する防止壁83dを形成する。また、連結カバー83の後端には便座用電動開閉ユニット30の外郭ケーシング31aに一体に形成した係合突起31qに嵌合して回動が規制される規制突起83eを形成し、規制突起の83eの周縁部分の一箇所に着脱レバーの回動を規制するストッパ83fを形成する。また、外筒部83gには若干径を細めた細径部83hを形成する。
連結カバー83の開口端には溶着用リブ83iを全周に形成し、蓋カバー84を超音波溶着等で一体化する。
【0032】
着脱レバー85は、上方が切り欠かれた支持円筒85aと下方が切り欠かれた着脱用円筒85bとで形成され、その間に内側及び外側に若干肉を増したリング状リブ85cを形成する。このリング状リブ85cの内径は細径部83hと略同一径で外筒部83gよりも小さい径としておく。また、着脱用円筒85bには把持用突起85dを形成する。
固定部材86には連結軸81の外形と略同一形状の連結用開口86a、便座12に回動不能に固定するために外周に沿って所定間隔毎に設けた突起86b、略L字形状の連結クランク86cを形成する。また、連結クランク86cには締結ネジ用の下孔86d、アシストユニット80(固定部材86を除く)のスラスト方向の移動を規制するストッパ86eを形成する。
【0033】
次にアシストユニット80の組み立て手順を説明する。連結軸81のOリング溝81c、81eにOリングを収要し、連結軸81の挿入孔81dにアシストバネ82の一端82aを挿入し、他端82bを連結カバー83の支持溝83bに係合させて連結軸81を連結カバー83の内筒部83a内に、内筒部83aの端部と連結軸81の大径部81bとが当接するまで挿入する。これによりアシストバネ82の他端82bは防止壁83d内に収容される。次に蓋カバー84の内筒部84a内に連結軸81の先端部81aを挿入し、蓋カバー84の裏側と連結カバー83の溶着用リブ83iとを当接させた状態で、蓋カバーを超音波振動させることで連結軸81、アシストバネ82、連結カバー83、蓋カバー84を一体化する。次に着脱レバー85を外筒部83gに挿入するが、外筒部83gはリング状リブ85cよりも若干大きな径としているので、リング状リブ85cが外筒部83gを乗り上げ細径部83hまで挿入されると連結カバー83と着脱レバー85とは一体化され、着脱レバー85は外筒部83gとリング状リブ85cとでスラスト方向の抜けは規制される。次に連結軸81を固定部材86の連結用開口86a内に挿入することでアシストユニット80は一体化される。
【0034】
このアシストユニット80の連結軸81を便座12の連結孔12d(図4参照)内に挿通し、アシストユニット80を便座12の連結部12a内に挿入した状態で、固定部材86の下孔86d及び便座12のネジ孔12c(図4参照)とをセルフタッピングネジで締結することで便座12とアシストユニット80は一体化される。なお、連結クランク86cは便座12に装着される前は外側に弾性変形可能であるため、アシストユニット80(固定部材86を除く)は固定部材86から着脱可能であるが、便座12に装着された後では便座12によって外側の変形は規制される為、ストッパ86eと連結カバー83のフランジ83jとによってアシストユニット80(固定部材86を除く)はスラスト方向の抜けが規制される。また、着脱レバー85も同様に連結クランク86cと外筒部83gとのクリアランスが小さく外筒部83gを乗り越える程外側に着脱レバー85が変形できないことでスラスト方向の抜けが防止される。
【0035】
次にトレランスリング62について図13の原理図を用いて説明する。トレランスリング62は図に示すように波形状をした部分をもつリングの形状をしており、各波はバネとして作用し、その作用力は波の変形量に比例する。組み立て時に必要な力をAF、半径方向力をRL(N)、摩擦係数をμ、波の数をn、波の変形量をc(mm)、バネ定数をK(N/mm)、伝達トルクをMt、軸直径をd(m)とすると、
RL=n・c・K
AF=RL・μ
Mt=AF・d/2
で算出することができる。
バネ定数は材料の厚さ、波のピッチ、幅、形状、高さを変更することで設定できるので、正常時に回転軸40,140に最大どの程度のトルクがかかるかを実験等で見極め、そのトルクに応じてトレランスリング62の形状を選択する。
この設定トルク以上のトルクが回転軸40に発生した場合には、トレランスリング62の波形状部62aが回転軸40、140の連結孔に食い込み固定されており、トレランスリングのリング状縁部62bがキャリア63の出力軸63dの外周を滑り、設定トルク以上の過重が電動開閉ユニット30、130内部にかかることがなく、歯車の破損等を防止することが出来る。
【0036】
駆動モータ32の断面図を図14に示す。図示のように駆動モータ32のシャフトはモータ内部を貫通しており、その径は内部では比較的太く、露出した部分は細径としている。この先端部32aを細径としたのは、小歯車32bの歯数をできるだけ少なくして減速比を大きくとりたいためである。なお、シャフト自体を細径とすることも考えられるが、シャフト長に対してシャフトが細いと駆動モータ32の軸ぶれが大きくなるためにシャフト自体を細径とはせず、小歯車32bが取付けれる部分のみを細径とするのである。
【0037】
次に上記構成による動作の説明を行う。
図15に本発明の便座装置の制御ブロック図、図16に駆動モータ32のドライバ回路図、図17にスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4への通電信号波形、図18にエリア検出回路71に設けたホールIC71a、71bの出力信号波形、図19に回転検出回路に設けたホールIC70aの出力信号波形、図20〜図27に動作フローを示す。
【0038】
図示するように駆動モータ32の制御はドライバ回路150で行われる。ドライバ回路150は回転方向及び回転量を制御するためにトランジスタ等で構成するスイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4と、過電流が駆動モータ32へ流れることを防止するための正特性サーミスタ71dと、電動開閉制御用CPU等へブレーキ制御時の逆起電力等が加わらないようにする為のダイオードd1、d2とで構成される。
駆動モータ32を正転する際はTr1とTr4とをオン状態、Tr2とTr3をオフ状態とし、反転の際はTr1とTr4とをオフ状態、Tr2とTr3をオン状態とし、ブレーキをかける際はTr3とTr4をオン状態、Tr1とTr2をオフ状態とする。ブレーキをかける際は座若しくは蓋の自重で駆動モータ32のシャフトが回転させられ駆動モータ32は発電機として作用するため前述のダイオードd1、d2で電動開閉制御用CPU等へ逆起電力が加わらないようにする。
また、夫々のオン時間を図17に示すような通電信号波形でDuty制御することで駆動モータ32の回転速度を制御する。なお、正転、逆転時はGを1ms(PWM駆動周波数1kHz)とし、ブレーキ時はGを8ms(PWM駆動周波数125Hz)とする。なお、ON−Duty H%とは1周期(Gms)中にオンする時間がH%であることを示しており、例えばG=1ms、H=30%であれば1周期中に0.3ms(1ms*30%)オンすることを意味する。なお、このHは回転検出回路70及びエリア検出回路71によって検知される便座若しくは便蓋の検知位置に応じた夫々の設定とする。(以下30%Duty等として記載する。)また、エリアはエリアA(閉端エリア)、エリアB(動作エリア),エリアC(開端エリア)、エリアD(異常エリア)からなる。
【0039】
図20には便蓋開要求が有った際のフローチャートを示す。例えば人体検知センサによる人体接近検知若しくはリモコン等に設けられる便蓋開スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋開要求がなされると便蓋の開端位置を設定しているかを確認し、開端位置の設定がなされていると、Tr1、Tr4を100%Duty(G=1ms)でオン状態とし、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がLowからHiへ切り替わる(80°検知)と、Tr1、Tr4を50%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−15°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−10°に相当するパルス数)に達するとTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)で0.1秒間オン状態とし、続いてTr3、Tr4を50%Duty(G=8ms)で0.4秒間間欠的にオン状態とし、その後再度Tr1、Tr4を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態として駆動モータ32を駆動し、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合にロータンク等の障害物によって便蓋13開動作が停止した(停止検知)と判断して駆動モータ32への通電を停止する。このように設定された開端位置に停止するように駆動モータ32の駆動制御を行っている。なお、停止検知が得られない場合にも8°相当のパルス数をホールIC70aから得ることができた時点で通電停止する。このようにして便蓋用電動開閉ユニット130内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸140を介して駆動モータ32の回転が回転軸50に伝達し、便蓋13を開放し、80°を超える開端付近では蓋の自重による逆起電力の発生を利用してブレーキをかけることでロータンク等の障害物との衝突音を小さくすることが出来る。
また最後に再度20%Dutyで便蓋を駆動するのは次の閉止動作の準備の為である。
【0040】
図21には便座開要求が有った際のフローチャートを示す。例えばリモコン等に設けられる便座開スイッチ(図示無し)が操作されて便座開要求がなされると座開端位置を記憶しているかを確認し、座開端の位置の記憶がなされていると、Tr1、Tr4を100%Duty(G=1ms)でオン状態とし、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がLowからHiへ切り替わる(80°検知)と、Tr1、Tr4を50%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−15°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、更にエリア検出回路71で80°を検知してからの回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(蓋開端位置に相当するパルス数−10°に相当するパルス数)に達するとTr1、Tr4を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態として駆動モータ32を駆動し、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合にロータンク等の障害物によって便座12開動作が停止した(停止検知)と判断して駆動モータ32への通電を停止する。このように設定された開端位置に停止するように駆動モータ32の駆動制御を行っている。なお、エリアDに移行した後35°駆動(回転検出回路70の35°に相当するパルス数をカウント)しても停止検知できない場合にはその時点で通電を停止する。この停止位置が140°以上である場合には異常とみて、後述する異常時制御フローへ移行する。このようにして便座用電動開閉ユニット30内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸40を介して駆動モータ32の回転が伝達し、便座12を開放する。なお、便蓋13の開放時にはブレーキ制御を行い緩やかな閉止動作を行うようにしたが便座12では行っていない。これは、便蓋13裏面にはクッション脚が設けられており、便座12を勢い良く開放しても、このクッション脚により衝突音はもともと抑制されるからである。
【0041】
例えばリモコン等に設けられる便蓋・便座同時開スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋及び便座開要求がなされると、図20及び図21に示したフローチャートの通りに便蓋用開閉ユニット130、便座用開閉ユニット30の夫々の駆動モータ32を同時に制御することで便座12及び便蓋13の開放動作が行われる。なお、後述するように便蓋13の閉止動作はブレーキで終わるようにし、便座12の閉止動作はモータ駆動で終わるようにしているので、便蓋13の減速歯車列のバックラッシは下側(閉側)にあり、便座12の減速歯車列のバックラッシは上側(開側)にあるために、同時に開放制御したとしてもバックラッシ分だけ便座12が遅れて開動作するため、便座12と便蓋13とが開放動作中にぶつかり、瞬間的に便座12の駆動モータ32側に過負荷が掛かるというような不具合は生じない。
【0042】
図22には便蓋閉要求が有った際のフローチャートを示す。例えば人体検知センサによる人体離隔検知若しくはリモコン等に設けられる便蓋閉スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋閉要求がなされると、便蓋13がエリアDにあればTr2、Tr3を60%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリアCにある場合若しくはエリアCに移行した時点でTr2、Tr3を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がHiからLowへ切り替わる(80°検知)と12msはTr2、Tr3を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態にし、続く10msはTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態にする。この12ms+10msの制御を繰り返し行う。この制御の間に後述する便蓋カバー有無判定フローを実施する。更にエリア検出回路71で80°を検知してから回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(30°に相当するパルス数)に達すると便蓋カバー無と判断した場合には、12ms+10msの制御をそのまま継続して行う。また便蓋カバー有と判断した場合には10msのブレーキ制御を30msに変更して、12ms+30msの制御を繰り返し行う。便蓋カバー有無に関わらずエリア検出回路71のホールIC71bの出力がHiからLowへ切り替わる(20°検知)とTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態とし、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合に便座12上面によって便蓋13閉動作が停止した(停止検知)と判断してブレーキ制御を停止する。なお、停止検知が得られない場合には所定時間(例えば5秒)経過した後にブレーキ制御を停止するが、この点については図22には記載していない。このようにして便蓋用電動開閉ユニット130内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸140を介して駆動モータ32の回転が回転軸50に伝達し、便蓋13を閉塞動作し、20°を以下の閉端付近では蓋の自重による逆起電力の発生を利用してブレーキをかけることで緩やかに便蓋を閉止することが出来る。また便蓋カバーがついている場合にはブレーキ時間を長くすることで便蓋13の自重によるブレーキ力を強めて、便蓋13がその自重で勢い良く落ちることを防止している。更に比較的短い時間間隔で閉駆動制御とブレーキ制御とを繰り返すことで駆動モータ32のコギングトルクのばらつきを吸収することができる。コギングトルクはモータ通電時には発生しないことを利用して、コギングトルクの影響が出始める前に通電を再開することでコギングトルクの悪影響(コギングトルクが強い場合には便蓋13が閉止動作の途中で止まってしまい、コギングトルクが弱い場合には便蓋13が勢い良く閉止してしまう等の不具合)を抑制することができるのである。
本実施例では便蓋カバーの有無で制御を変更したが、便蓋の大きさ(エロンゲートサイズ/レギュラーサイズ)によって制御を変更するようにしても良いし、またその組合せによって変更しても良い。
【0043】
図23には便座閉要求が有った際のフローチャートを示す。例えばリモコン等に設けられる便座閉スイッチ(図示無し)が操作されて便座閉要求がなされると、便座12がエリアDにあればTr2、Tr3を60%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリアCにある場合若しくはエリアCに移行した時点でTr2、Tr3を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がHiからLowへ切り替わる(80°検知)と12msはTr2、Tr3を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態にし、続く10msはTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態にする。この12ms+10msの制御を繰り返し行う。エリア検出回路71のホールIC71bの出力がHiからLowへ切り替わる(20°検知)とTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態とし、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合に便座12上面によって便蓋13閉動作が停止した(停止検知)と判断してブレーキ制御を停止し、続けてTr2、Tr3を5%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし0.1秒経過した時点で通電停止する。この5%Dutyでの駆動は次の座蓋同時開放動作に備える為である。このようにして便座用電動開閉ユニット30内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸40を介して駆動モータ32の回転が伝達し、便座12を閉塞動作し、20°を以下の閉端付近では座の自重による逆起電力の発生を利用してブレーキをかけることで緩やかに便座を閉止することが出来る。便蓋同様に駆動制御とブレーキ制御とを繰り返し行うことで駆動モータ32のコギングトルクのばらつきによる悪影響を除去している。なお便蓋の閉止動作では便蓋カバー有無により制御を変更したが、便座側では便座カバーの有無による制御を変更しないものとした。これは便座自体が元々重く、便座カバーの影響が少ないためである。しかし、便座の重量が軽く便座カバーの有無による影響が懸念される場合には便蓋側同様に便座カバーの有無により制御を変更するよう構成しても良い。
【0044】
図24、図25には便蓋・便座同時閉要求が有った際のフローチャートを示す。例えば男子小用利用後の人体検知センサによる人体離隔検知若しくはリモコン等に設けられる便蓋・便座閉スイッチ(図示無し)が操作されて便蓋・便座同時閉要求がなされると、便座12・便蓋13がエリアDにあれば便蓋駆動側のTr2、Tr3を70%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、便座駆動側のTr2、Tr3を40%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリアCにある場合若しくはエリアCに移行した時点で便蓋駆動側のTr2、Tr3を60%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、便座駆動側のTr2、Tr3を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態とし、エリア検出回路71のホールIC71aの出力がHiからLowへ切り替わる(80°検知)と便蓋側は12msは便蓋駆動用のTr2、Tr3を20%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態にし、続く10msはTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態にする。この12ms(駆動制御)+10ms(ブレーキ制御)の制御を繰り返し行う。この制御の間に後述する便蓋カバー有無判定フローを実施する。また便座側は便座駆動用のTr3、Tr4を70%Duty(G=8ms)で間欠的にオン状態としてブレーキ制御を行う。更にエリア検出回路71で80°を検知してから回転検出回路70のホールIC70aの出力パルスが所定数(30°に相当するパルス数)に達すると便蓋カバー無と判断した場合には、12ms+10msの制御をそのまま継続して行う。また便蓋カバー有と判断した場合には10msのブレーキ制御を30msに変更して、12ms+30msの制御を繰り返し行う。この間便座側は便蓋カバー有無に関わらず便座駆動用のTr3、Tr4を90%Duty(G=8ms)で間欠的にオン状態としてブレーキ制御を行う。便蓋カバー有無に関わらずエリア検出回路71のホールIC71bの出力がHiからLowへ切り替わる(20°検知)と便座側は便座駆動用のTr3、Tr4を100%Duty(G=8ms)でオン状態とし、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合に便器上面によって便座12閉動作が停止した(停止検知)と判断してブレーキ制御を停止し、続けて0.1秒間便座駆動用のTr2、Tr3を5%Duty(G=1ms)で間欠的にオン状態として制御を終了する。便蓋側は便蓋駆動用のTr3、Tr4を80%Duty(G=8ms)でオン状態とし、回転検出回路70のホールIC70aの出力パルス変化が0.5秒以上無い場合に便座12上面によって便蓋13閉動作が停止した(停止検知)と判断してブレーキ制御を停止する。なお、停止検知が得られない場合には所定時間(例えば5秒)経過した後に便座、便蓋共にブレーキ制御を停止するが、この点については図には記載していない。上述のように制御することで便座12及び便蓋13の自立位置(80°付近)を越えるまでは便蓋用電動開閉ユニット130側で便座及び便蓋13を駆動し、その後は便座12上に便蓋13を載置した状態で便座用電動開閉ユニット30側のブレーキ制御で緩やかに閉動作を行うことで、便座及び便蓋を密着させてスムーズに閉動作させることができる。なお、便座・便蓋同時閉の場合の便座閉止動作には駆動モータ32のコギングトルクの影響を除去するための駆動制御+ブレーキ制御の繰り返し制御を行っていないが、これは、便座12に便蓋13が重なった状態で便座12のブレーキ制御を行うので負荷が大きいためコギングトルクにより閉止動作が途中で止まるという心配が無い為である。
【0045】
便蓋(便座)開端位置を記憶するためのフローは、図1〜3に基づいて説明した前述の実施の形態のフローを運用する。
【0046】
便座用電動開閉ユニット30内の駆動モータ32へ通電がなされた際には、減速歯車列(小歯車32b、第1歯車34、第2歯車37、第3歯車38、遊星歯車機構)及びトレランスリング62、出力軸40を介して駆動モータ32の回転が伝達し、便座12を開放する。なお、便蓋13の開放時にはブレーキ制御を行い緩やかな閉止動作を行うようにしたが便座12では行っていない。これは、便蓋13裏面にはクッション脚が設けられており、便座12を勢い良く開放しても、このクッション脚により衝突音はもともと抑制されるからである。
【0047】
図26には便蓋カバー有無判断のフローチャートを示す。図示のように便蓋閉止動作中にエリア検出回路71のホールIC71aの出力がHiからLowへ切り替わった(80°検知)後の回転検出回路70のホールIC70aの1発目のパルス出力から4発目のパルス出力がなされるまでの時間tを記憶し(Ta)、次に25発目のパルス出力から28発目のパルス出力がなされるまでの時間tを記憶する(Tb)と共に4発目のパルス出力から28発目のパルス出力がなされるまでの時間tを記憶して、Ta,Tb、Tcから便蓋の角加速度Wを計算し、その角加速度Wが予め設定した角加速度wよりも大きいかをみて、W>wであれば便蓋カバー有と判断し、W>wでなければ、便蓋カバー無と判断して、図22若しくは図24、22に示したフローへ移行する。本実施例では角加速度で便蓋カバーの有無を自動的に判断するようにしたが、便蓋カバー有無スイッチ等をリモコン等に設けても良いし、便蓋の角速度を判断基準に用いても良い。
【0048】
図27には異常時制御フローを示す。通常時には便座12はケーシング11と当接するため110°以上回転することは無い。しかし、便座12及び便蓋13を取り外した状態で、便座開スイッチ若しくは便座・便蓋同時開スイッチが操作されるとケーシング11に当接することは無いので、制御上の限界角度140°まで回転してしまう(図21参照)。このような状態で便座12及び便蓋13を取付けようとしても電動開閉ユニットの回転軸40、50と便座・便蓋の基端部に設けた連結部12a、13a及び回動部12b、13bとが噛み合わないために取り付かない。このため、便座用電動開閉ユニット30の回転軸40の位置が140°以上を検知すると座蓋が外された状態での駆動であるとみなし、90°近辺まで出力軸を移動させて便座12の取付ができるようにする。便座側で140°以上を検知すると便蓋側電動開閉ユニット130も同様に90°近辺まで回転軸50を移動させて便蓋13の取付が出来るようにする。なお、便蓋13がどのエリアにあるかはその時々で異なるため、何れのエリアにあっても、一端エリアDへ移動させてそこから制御を行うことで確実に90°近辺へ便蓋用開閉ユニット130の回転軸50を移動することができる。
【0049】
ところで便座12は内部に暖房用のヒータが設けられており、比較的重いため、便蓋用電動開閉ユニット130と同一の構造の便座用電動開閉ユニット30だけでは便座12を持ち上げることができない。そのためにアシストユニット80が設けられる。このアシストユニット80は一端がケーシング11に一体化され、他端が便座12に一体化されるアシストバネ82を内蔵している。このアシストバネ82は便座12が略垂直状態で自然長とされており、便座12閉塞時には捩れた状態となっている。
従って、便座12閉塞時には開放側のトルクを発生することができ、これにより、便蓋用電動開閉ユニット130と略同一の構造でも便座12を持ち上げることが可能となっている。
【0050】
なお、アシストバネ82の一端82aは連結ケース83の規制突起83eとケーシング11に取付けられる便座用電動開閉ユニット30の係合突起31qとの係合によってケーシング11に一体化されており、アシストバネ82の他端82bは連結軸81、固定部材86を介して便座12に一体化されている。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】便座・便蓋の電動開閉装置の開端位置を設定する本発明の第一の実施形態にかかるフローチャート
【図2】便座・便蓋の電動開閉装置の開端位置を設定する本発明の第二の実施形態にかかるフローチャート
【図3】便座・便蓋の電動開閉装置の開端位置を設定する本発明の第三の実施形態にかかるフローチャート
【図4】本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置を内蔵した便座装置10の斜視図
【図5】本発明の便座又は便蓋の電動開閉装置の取付け位置を説明する為の分解斜視図
【図6】便座用電動開閉装置30を内蔵した便座装置10の断面図
【図7】便蓋用電動開閉装置130を内蔵した便座装置10の断面
【図8】便座用電動開閉ユニット30の分解斜視図
【図9】駆動モータ組品Aの分解斜視図
【図10】遊星歯車組品Bの分解斜視図
【図11】便座用電動開閉ユニットのケーシング31bを外した状態での平面図
【図12】アシストユニット80の分解斜視図
【図13】トレランスリング62の原理図
【図14】駆動モータ32の断面図
【図15】本発明の便座装置の制御ブロック図
【図16】駆動モータ32のドライバ回路図
【図17】スイッチング素子Tr1、Tr2、Tr3、Tr4への通電信号波形
【図18】エリア検出回路71に設けたホールIC71a、71bの出力信号波形
【図19】回転検出回路に設けたホールIC70aの出力信号波形
【図20】便蓋開要求が有った際のフローチャート
【図21】便座開要求が有った際のフローチャート
【図22】便蓋閉要求が有った際のフローチャート
【図23】便座閉要求が有った際のフローチャート
【図24】便蓋・便座同時閉要求が有った際のフローチャート(1)
【図25】便蓋・便座同時閉要求が有った際のフローチャート(2)
【図26】便蓋カバー有無判断のフローチャート
【図27】便座及び便蓋が取り外された状態で電動開閉ユニットの出力軸が開方向に移動した際の異常時制御フローチャート
【図28】従来の便蓋(便座)開端位置を記憶するためのフローチャート
【符号の説明】
【0052】
12…便座
13…便蓋
30…便座用電動開閉装置
32…モータ
40…便座用回転軸
50…便蓋用回転軸
130…便蓋用電動開閉装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、前記モータの駆動力を前記回転軸に伝達する減速歯車列と、前記便座又は便蓋の位置検知手段と、前記便座又は便蓋が設定された開端位置に停止するよう前記モータの動作を制御してなる制御手段を備えた便座又は便蓋の電動開閉装置において、
前記位置検知手段により検知した便座又は便蓋の停止位置を前記制御手段に記憶させ、前記制御手段に記憶された停止位置が複数回連続して同じ場合に、当該位置を前記開端位置として設定することを特徴とする便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項2】
モータと、便座又は便蓋と共に回転する回転軸と、前記モータの駆動力を前記回転軸に伝達する減速歯車列と、前記便座又は便蓋の位置検知手段と、前記便座又は便蓋が設定された開端位置に停止するよう前記モータの動作を制御してなる制御手段を備えた便座又は便蓋の電動開閉装置において、
前記便座又は便蓋の停止位置を前記制御手段に記憶する電動開動作を複数回実行して、複数回の電動開動作ごとに記憶された停止位置から便座又は便蓋の電動開時の開端位置を設定することを特徴とする便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項3】
前記複数回の電動開動作ごとに記憶された停止位置のうち、前記便座又は便蓋が最も開いた位置を前記開端位置として設定することを特徴とする請求項2記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項4】
前記複数回の電動開動作ごとに記憶された停止位置のうち、最も停止した回数が多い停止位置を前記開端位置として設定することを特徴とする請求項2記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。
【請求項5】
前記複数回の電動開動作ごとに記憶された停止位置が、所定の複数回数一致した場合に、当該停止位置を開端位置として設定することを特徴とする請求項2記載の便座又は便蓋の電動開閉装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−97680(P2007−97680A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288645(P2005−288645)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】