説明

便座装置及びトイレ装置

【課題】便座に着座した状態のままで臀部を楽に清拭できる、もしくは臀部を衛生的に清拭できる便座装置を提供する。
【解決手段】便器の上部に設けられる便座と、前記便座を移動させる駆動手段と、を備え、前記便座は、後方部から側方部に掛かる少なくともいずれかの位置において切り欠き部を有し、前記駆動手段は、前記便座を昇降移動させることを特徴とする便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置及びトイレ装置に関し、具体的には便座に着座した状態のままで臀部を清拭できる便座装置及びこれを備えたトイレ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座に着座して用便を済ませた後、臀部を清拭するときには、使用者は臀部を上げて中腰体勢をとったり、便座の座面に対して略平行方向に臀部を移動させる必要がある。しかし、車いすを使用している体の不自由な障害者や足腰の弱った高齢者などにとって、臀部を上げて中腰体勢をとったり、便座の座面に対して略平行方向に臀部を移動させる動作は容易ではない。
【0003】
これに対して、使用者が便座に着座した状態のままで臀部を清拭できる便座装置がある(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載された便座装置は、便座に着座する使用者の尾てい骨が当たる後端部に凹部を有する便座を備えている。さらに、便座は、前端部に貫通凹部を有している。
【0004】
しかし、便器の大きさによっては、便座の後端部に設けられた凹部の下方部に便器の縁があるおそれがあるため、手を挿入しづらいおそれがある。一方、便座の前端部に設けられた貫通凹部から手を挿入して清拭を行う場合には、陰部を汚すおそれがある。すなわち、使用者の前方から清拭動作を行うため、衛生的ではないという問題がある。
【0005】
また、便座を前方にスライドさせることによって、使用者が便座に着座した状態のままで臀部を清拭できる便座装置がある(例えば、特許文献2)。しかし、便座を前方にスライドさせたとしても、特許文献1と同様に、便器の大きさによっては、清拭する手の挿入空間を十分に確保できないおそれがある。清拭する手を挿入しづらく、手を汚すおそれがあるため、衛生的ではないという問題がある。
【特許文献1】特開2001−299643号公報
【特許文献2】特開2006−271934号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、便座に着座した状態のままで臀部を楽に清拭できる、もしくは臀部を衛生的に清拭できる便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、便器の上部に設けられる便座と、前記便座を移動させる駆動手段と、を備え、前記便座は、後方部から側方部に掛かる少なくともいずれかの位置において切り欠き部を有し、前記駆動手段は、前記便座を昇降移動させることを特徴とする便座装置が提供される。
【0008】
また、本発明の他の一態様によれば、前記便器と、前記便器に付設された上記の便座装置と、を備えたことを特徴とするトイレ装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、便座に着座した状態のままで臀部を楽に清拭できる、もしくは臀部を衛生的に清拭できる便座装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便座装置が設置されたトイレ室を例示する模式図である。
図1に表したトイレ室は、便座装置10と、便器100と、ロータンク104と、を備えている。便座装置10は、便座12と、ベース部14と、駆動手段16(図6および7参照)と、を有している。但し、図1〜5および図8〜14に表した便座装置においては説明の便器上、駆動手段16を省略している。ベース部14は便器100の上部に設置されており、便座12はベース部14の上部に設置されている。便座12は、後に詳述するように、後方部に切り欠き部12aを有している。
【0011】
ロータンク104は、壁面202に近接して設けられている。但し、図1に表したトイレ室においては、洗浄機構がいわゆる「ロータンク式」の大便器を例示しているが、この洗浄機構はロータンクを用いない、いわゆる「水道直圧式」であってもよい。その場合には、便座装置10および便器100が、壁面202に近接して設けられる。
【0012】
また、便座12に座った使用者の「おしり」などに向けて水を噴射し、「おしり」の洗浄を可能とした温水洗浄便座装置102(臀部洗浄装置)が、便座12またはベース部14に付設されていてもよい。便座12は、後に詳述するように、ベース部14および便器100に対して移動することができるが、便座12の移動時に温水洗浄便座装置102が誤作動を起こすと、使用者の服に水がかかるなどするため、好ましくない。そこで、このように温水洗浄便座装置102がベース部14に付設されている場合には、温水洗浄便座装置102と便座12とが分離されるため、着座センサが人体の非着座状態を検知することになり、温水洗浄便座装置102の誤作動防止を期待することができる。なお、温水洗浄便座装置102は、便器100の後端部に付設されていてもよい。
【0013】
壁面200には、手すり300が設置されていてもよい。但し、手すり300は、壁面200に対向する図示しない壁面に設置されていてもよいし、便座装置10の前方にある図示しない壁面に設置されていてもよい。壁面200には、さらにペーパーホルダ310が設置され、そのペーパーホルダ310にトイレットペーパー312が設置されていてもよい。
【0014】
車いすを使用している体の不自由な障害者などは、便座12から車いすに移乗するとき、または車いすから便座12に移乗するとき、例えば手すり300などを利用する。一方、足腰の弱った高齢者なども同様に、便座12から起立するとき、または便座12に着座するとき、例えば手すり300などを利用する。
【0015】
図2は、本発明の第1の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
また、図3は、本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
また、図4は、本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。
なお、図2〜4に表した便座装置は、便座12が清拭位置にある状態を表している。
【0016】
ベース部14は、図示しない固定手段によって便器100に固定されている。図示しない固定手段は、いわゆる「ボルト」などと呼ばれるものであってもよい。そのため、ベース部14は、便器100に対して移動することはできない。便座12は、便座12の開口部12cの左端部と右端部との略中心部、且つ後方部において、前後方向に沿って切り欠き部12aを有している。
【0017】
本実施形態にかかる便座装置10の便座12は、後に詳述する駆動手段16によって、昇降することができる。さらに、便座12の前方よりも後方が高い状態、すなわち前傾状態となるように、傾動400(以下、「前方傾動」という。)の動作を行うことができる。このとき、図3および4に表した状態のように、便座12を上方から眺めたとき、切り欠き部12aと、ベース部14と、は重複していない。すなわち、便座12を上方から眺めたとき、切り欠き部12aは、ベース部14の開口部14cに包含されている。一方、前方傾動ではなく、用便位置にある便座の状態、すなわち略水平状態を保ちつつ上昇することもできる。このようにすれば、便座12と、便器100およびベース部14と、の間に空間が生ずる。
【0018】
これに対して、便座が用便位置(最下降位置)にあるときには、図1に表した状態のように、切り欠き部12aの下方部には、ベース部14がある。すなわち、便座12を上方から眺めたとき、切り欠き部12aと、ベース部14と、は重複している。この状態においては、使用者および介護者が切り欠き部12aから手を挿入して清拭動作を行うことは、容易ではない。これは、切り欠き部12aの下方にベース部14があるためである。
【0019】
図5は、本実施形態にかかる便座装置が設置されたトイレ室を右側方から眺めた模式側面図である。
図5に表した便座装置は、便座12が清拭位置にある状態を表している。便座12は、前述したように、前方傾動400を行うことができるため、便座12の後方部は、ベース部14および便器100に対して上方に上昇している。そのため、便座12および切り欠き部12aと、ベース部14およびロータンク104と、の間には、空間106が生ずる。
【0020】
便座12の前方傾動400によって空間106が生じ、さらに便座12を上方から眺めたときに、切り欠き部12aと、ベース部14と、は重複しなくなるため、使用者40および介護者は、使用者40が便座12に着座した状態のままで、切り欠き部12aから手や携帯用洗浄器を挿入しやすくなり、楽に清拭動作を行うことができる。また、切り欠き部12aの下方に、ベース部14および便器100が存在しないため、手が汚れることは少なく、衛生的に清拭動作を行うことができる。
【0021】
また、便座12が前方傾動400を行うと、使用者40は便座12の動作に伴って前傾姿勢となる。このとき、使用者40の後方部と、ロータンク104の前方面と、の間において、空間108が生ずる。したがって、例えば、介護者が使用者40の背後から介護を行う必要がある場合には、使用者40とロータンク104との間の空間108に介護者が入り込むことで、介護を楽に行うことができる。
【0022】
これに対して、便座12が前方傾動400の動作を行わない場合には、使用者40とロータンク104との間の空間108は非常に狭く、使用者40の背後から介護を行うことは容易ではない。また、洗浄機構が、いわゆる「水道直圧式」の場合には、便座装置10および便器100が壁面202に近接するため、使用者の背後から介護を行うことは、より容易ではなくなる。
【0023】
さらに、使用者40自身が清拭動作を行う場合、および介護者が清拭動作を行う場合、切り欠き部12aから手を挿入することによって、使用者40の臀部を楽に清拭できるため、使用者40の身体機能が低下しても本実施形態の便座装置10を使用し続けることができる。また、使用者40は便座12の動作に伴って前傾姿勢となるため、便座12から車いすへの移乗動作または起立動作、および便座12への移乗動作を楽に行うことができる。
【0024】
図6は、便座の駆動手段を例示する模式図である。
また、図7は、便座の駆動手段を上方から眺めた模式上面図である。
なお、図6は、便座12が清拭位置にある状態を表しており、図7は、便座12が用便位置にある状態を表している。
【0025】
駆動手段16は、便座12の左右側方および後方に設けられた支持枠504と、便座12を移動させるための伸縮駆動体505と、を備えている。支持枠504は、便座12を昇降可能に支持する左右一対の不等辺四節リンク503を有している。また、支持枠504は、左右一対の側枠部510と、側枠部510の上方部を連結する連結部512と、をさらに有する。側枠部510は、高さ調整自在の脚部511を介して床面204の上に固定または載置される水平側枠510aと、水平側枠510aの後方に連設される垂直側枠510bと、伸縮駆動体505を取り付けるための取付支持部516と、を有する。
【0026】
不等辺四節リンク503は、上部リンク513と、下部リンク514と、を有する。上部リンク513は、後端部において、軸531を介して回動自在に垂直側枠510bに軸支されており、前端部において、軸533を介して回動自在に前部リンク515に軸支されている。また、上部リンク513と同様にして、下部リンク514は、後端部において、軸532を介して回動自在に垂直側枠510bに軸支されており、前端部において、軸534を介して回動自在に前部リンク515に軸支されている。また、前部リンク515は、軸535を介して回動自在に便座12の左右側方に軸支されている。
【0027】
図6に表した駆動手段16のように、駆動手段16を側方から眺めた場合において、軸531と、軸532と、軸533と、軸534と、の軸中心から形成される四角形の形状は、平行四辺形以外の形状(例えば、台形など)となる。また、軸531に沿って連結補強材506が設けられており、連結補強材506は、左右の不等辺四節リンク503の動作を同期(同調)させる機能を有している。
【0028】
伸縮駆動体505は、ロッド部505aと、本体部505bと、を有し、ロッド部505aは、例えば、スクリューシャフトや流体圧などによって、本体部505bに対して伸縮自在となっている。伸縮駆動体505は、支持枠504の一方の不等辺四節リンク503の側外方に設けられている。ロッド部505aの一端は、軸523を介して回動自在に、便座12が有する取付部522に軸支されている。また、本体部505bは、一端に長孔付き取付部509を有し、長孔付き取付部509の長孔509aと、側枠部510の取付支持部516に設けられた突起部516aと、はスライド自在に嵌合されている。
【0029】
伸縮駆動体505は、図示しない操作スイッチによって、伸縮自在となるように制御される。伸縮駆動体505は、伸長することによって便座12を清拭位置まで移動させることができ、萎縮することによって便座12を用便位置まで移動させることができる。なお、伸縮駆動体505に図示しないリミットスイッチを設けて、伸長状態および萎縮状態において自動的に伸縮駆動体505の動作を停止させてもよい。このようにすれば、使用時の安全性がより高くなる。
【0030】
また、本体部505bの後端部と、側枠部510と、を連結するように弾性体540が設けられている。弾性体540は、伸縮駆動体505の伸縮向きとは反対向きに伸縮駆動体505を付勢している。したがって、例えば、便座12とベース部14との間に、使用者の手などが挟まった場合には、弾性体540の付勢力に勝って、伸縮駆動体505が伸縮向きに逃げることができる。これにより、使用時の安全性がより高くなる。
【0031】
以上説明したように、本実施形態によれば、便座12の前方傾動400によって空間106が生じ、さらに便座12を上方から眺めたとき、切り欠き部12aと、ベース部14と、は重複しなくなるため、使用者40および介護者は、使用者40が便座12に着座した状態のままで、切り欠き部12aから手や携帯用洗浄器を挿入しやすくなり、楽に清拭動作を行うことができる。また、切り欠き部12aの下方に、ベース部14および便器100が存在しないため、手が汚れることは少なく、衛生的に清拭動作を行うことができる。
【0032】
また、便座12が前方傾動400を行うことによって、使用者40の後方部と、ロータンク104の前方面と、の間において、空間108が生ずるため、介護者が使用者40の背後から介護を行う必要がある場合には、使用者40とロータンク104との間の空間108に介護者が入り込むことで、介護を楽に行うことができる。さらに、使用者および介護者は、楽に清拭動作を行うことができるため、使用者40の身体機能が低下しても本実施形態の便座装置10を使用し続けることができる。また、使用者40は便座12の動作に伴って前傾姿勢となるため、便座12から車いすへの移乗動作または起立動作、および便座12への移乗動作を楽に行うことができる。
【0033】
図8は、本発明の第2の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
また、図9は、本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
また、図10は、本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。 なお、図8〜10に表した便座装置は、便座12が清拭位置にある状態を表している。
【0034】
本実施形態にかかる便座装置10の便座12は、便座12の開口部12cの左端部と右端部との略中心部より右側方寄り、且つ後方部において、前後方向および左右方向に沿って切り欠き部12aを有している。この切り欠き部12aは、便座12の開口部12cの左端部と右端部との略中心部より左側方寄り、且つ後方部に設けられていてもよい。すなわち、便座12の後方部、且つ開口部12cの左端部と右端部との略中心部から偏心した位置に設けられている。なお、ベース部14の構造については、図2〜4に表したベース部14と同様であるため、その説明は省略する。
【0035】
本実施形態にかかる便座装置10は、図2〜4を参照しつつ説明した実施形態にかかる便座装置10と同様に、駆動手段16によって昇降移動および前方傾動400を行うことができる。便座12が清拭位置にあるときは、図9に表した状態のように、便座12の右斜め後方部において、空間110が生ずる。使用者および介護者は、この空間110から手を挿入することで楽に清拭動作を行うことができる。また、右斜め後方から手を挿入することができるため、右利きの介護者は、便器100の右側方に立つことで、より楽に清拭動作を行うことができる。また、使用者自身が清拭動作を行う場合にも、左利きの使用者は、右斜め後方に設けられた切り欠き部12aから手を挿入することによって、より楽に清拭動作を行うことができる。
【0036】
なお、切り欠き部12aが、便座12の開口部12cの左端部と右端部との略中心部より左側方寄り、且つ後方部に設けられている場合には、左利きの介護者は、便器100の左側方に立つことで、より楽に清拭動作を行うことができる。また、使用者自身が清拭動作を行う場合にも、右利きの使用者は、左斜め後方に設けられた切り欠き部12aから手を挿入することによって、より楽に清拭動作を行うことができる。
【0037】
さらに、図10に表したように、便座12が前方傾動400を行うことによって、便座12とベース部14との間に空間106が生ずる。したがって、切り欠き部12aの下方に、ベース部14および便器100が存在しないため、手が汚れることは少なく、衛生的に清拭動作を行うことができる。なお、その他の効果についても、図2〜7を参照しつつ説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0038】
図11は、本発明の第3の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
また、図12は、本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
また、図13は、本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。 なお、図11〜13に表した便座装置は、便座12が清拭位置にある状態を表している。
【0039】
本実施形態にかかる便座装置10の便座12は、便座12の右側方部において、左右方向に沿って切り欠き部12aを有している。この切り欠き部12aは、便座12の左側方部において、左右方向に沿って切り欠き部12aを有していてもよい。なお、ベース部14の構造については、図2〜4に表したベース部14と同様であるため、その説明は省略する。
【0040】
本実施形態にかかる便座装置10は、図2〜4を参照しつつ説明した実施形態にかかる便座装置10と同様に、駆動手段16によって昇降移動および前方傾動400を行うことができる。また、切り欠き部12aが便座12の右側方部に設けられているため、便器100の右側方に立っている介護者とっては、切り欠き部12aを略正面に眺めることができる。したがって、右利きの介護者はトイレ室の後方の奥に入らずに、便器100の右側方に立つことで、より楽に清拭動作を行うことができる。また、使用者自身が清拭動作を行う場合にも、左利きの使用者は、右側方部に設けられた切り欠き部12aから手を挿入することによって、より楽に清拭動作を行うことができる。
【0041】
なお、切り欠き部12aが、便座12の左側方部に設けられている場合には、便器100の左側方に立っている介護者とっては、切り欠き部12aを略正面に眺めることができる。したがって、左利きの介護者はトイレ室の後方の奥に入らずに、便器100の左側方に立つことで、より楽に清拭動作を行うことができる。また、使用者自身が清拭動作を行う場合にも、右利きの使用者は、左側方部に設けられた切り欠き部12aから手を挿入することによって、より楽に清拭動作を行うことができる。
【0042】
さらに、図13に表したように、便座12が前方傾動400を行うことによって、便座12とベース部14との間に空間106が生ずる。したがって、切り欠き部12aから手を挿入する際に、手がベース部14および便器100に触れることは少なく、衛生的に清拭動作を行うことができる。なお、その他の効果についても、図2〜7を参照しつつ説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0043】
以下、本実施形態の変形例について図面を参照しつつ説明する。
図14は、本実施形態の変形例にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。 ベース部14は、切り欠き部12aと略同じ形状の突起部14aを上部に有している。突起部14aは、便座12が用便位置(最下降位置)にあるときに切り欠き部12aを充填するように切り欠き部12aの位置に設けられている。その他の構造は図2〜4に表したベース部14と同様である。また、便座12の構造および動作については、図11〜13に表した便座12と同様であるため、その説明は省略する。
【0044】
図11〜13に表した便座装置10においては、切り欠き部12aが便座12の右側方部に設けられているため、使用者が便座12に着座しているときには、使用者の臀部もしくは太股の一部が、切り欠き部12aから下方に下がるおそれがある。使用者の臀部もしくは太股の一部が切り欠き部12aから下方に下がると、使用者は不快感を感じるだけではなく、使用者の着座状態が不安定になるおそれがある。
【0045】
これに対して、本変形例にかかる便座装置10においては、切り欠き部12aと突起部14aとが、略同じ形状をなして突起部14aが切り欠き部12aを充填するため、便座12が用便位置にあるときには、便座12の上面(座面)と、突起部14aの上面(座面)と、が略同一面となる。これによって、使用者が便座12に着座しているときに、使用者の臀部もしくは太股の一部が、切り欠き部12aから下方に下がることはない。したがって、使用者は不快感を感じることは少なく、さらに使用者の着座状態はより安定する。また、突起部14aによって切り欠き部12aの空間が塞がれるため、排泄時の汚水や汚物の跳ね返りなどを防止することもできる。
【0046】
なお、図14に表したような突起部14aは、図2および8に表した便座装置10において、便座12が用便位置にあるときの切り欠き部12aの略位置に設けられていてもよい。このようにすれば、図14に表した便座装置10と同様に、使用者の臀部が切り欠き部12aに掛かる場合であっても、臀部の一部が下方に下がることはない。
【0047】
また、便座12が清拭位置にあるときには、切り欠き部12aと突起部14aとの間に空間が生じ、さらに便座12とベース部14との間に空間106(図13参照)が生ずるため、介護者および使用者は、楽に清拭動作を行うことができる。なお、その他の効果についても、図2〜7を参照しつつ説明した実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、便座12およびベース部14などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや便座装置10および駆動手段16の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便座装置が設置されたトイレ室を例示する模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
【図3】本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
【図4】本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。
【図5】本実施形態にかかる便座装置が設置されたトイレ室を右側方から眺めた模式側面図である。
【図6】便座の駆動手段を例示する模式図である。
【図7】便座の駆動手段を上方から眺めた模式上面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
【図9】本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
【図10】本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。
【図11】本発明の第3の実施の形態にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
【図12】本実施形態にかかる便座装置を上方から眺めた模式上面図である。
【図13】本実施形態にかかる便座装置を右側方から眺めた模式側面図である。
【図14】本実施形態の変形例にかかる便座装置を斜めから眺めた模式斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
10 便座装置、 12 便座、 12a 切り欠き部、 12c 開口部、 14 ベース部、 14a 突起部、 14c 開口部、 16 駆動手段、 40 使用者、 100 便器、 102 温水洗浄便座装置(臀部洗浄装置)、 104 ロータンク、 106 空間、 108、110 空間、 200、202 壁面、 204 床面、 300 手すり、 310 ペーパーホルダ、 312 トイレットペーパー、 400 前方傾動、 503 不等辺四節リンク、 504 支持枠、 505 伸縮駆動体、 505a ロッド部、 505b 本体部、 506 連結補強材、 509 取付部、 509a 長孔、 510 側枠部、 510a 水平側枠、 510b 垂直側枠、 511 脚部、 512 連結部、 513 上部リンク、 514 下部リンク、 515 前部リンク、 516 取付支持部、 516a 突起部、 522 取付部、 523、531、532、533 、534、535 軸、 540 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の上部に設けられる便座と、
前記便座を移動させる駆動手段と、
を備え、
前記便座は、後方部から側方部に掛かる少なくともいずれかの位置において切り欠き部を有し、
前記駆動手段は、前記便座を昇降移動させることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記切り欠き部は、前記便座の開口部の左端部と右端部との略中心部であって、且つ後方部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記便座の開口部の左端部と右端部との略中心部から偏心した位置であって、且つ後方部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項4】
前記切り欠き部は、前記便座の側方部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項5】
前記便器と、前記便座と、の間にベース部をさらに備え、
前記ベース部は、前記便座が最下降位置にあるときに前記切り欠き部を充填する突起部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項6】
前記便器と、
前記便器に付設された請求項1〜5のいずれか1つに記載の便座装置と、
を備えたことを特徴とするトイレ装置。
【請求項7】
前記便器の上部に付設された臀部洗浄装置をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載のトイレ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−297446(P2009−297446A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158370(P2008−158370)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発介護動作支援ロボット及び実用化技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【出願人】(000200367)川田工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】