説明

便座装置

【課題】本体部に設けられた開口において高い通風性を確保しつつ水の侵入を抑制した便座装置を提供する。
【解決手段】便座の上に設けられ、その側面または背面の少なくともいずれかに開口が設けられた本体部と、前記本体部に対して回動可能に軸支された便座と、を備え、前記本体部は、前記開口の少なくとも一部を覆うように設けられた水の侵入を妨げる第1部材と、前記第1部材の内側に設けられ、前記第1部材を通過した水を捕獲する第2部材と、を有することを特徴とする便座装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関し、より具体的には、便座を軸支する本体部に開口を有する便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便座と、これを回動自在に軸支する本体部と、を有する便座装置において、本体部の中に機能部を収容し、同時に本体部に開口を設けることがある。例えば、室内暖房や脱臭などの機能部を本体部に設け、これらの機能に必要とされる排気口や吸気口などの開口を本体部の側面や背面などに設けることがある。室内暖房の場合には、ヒータやファンを内蔵したダクトが本体部に設けた排出口に導かれ、この排出口から温風が吹き出す。脱臭の場合には、ファンや脱臭用の触媒などを内蔵したダクトが本体部に設けた排気口に導かれ、この排気口から脱臭された空気が排出される。
【0003】
このように便座装置の本体部に開口を設けると、水の侵入が懸念される。例えば、室内暖房の排出口や脱臭の排気口から水が侵入すると、ヒータや触媒、ファンなどの機能を低下させたり、故障の原因となるおそれがある。また、本体部の中に水が侵入すると、内蔵された電子部品や機械部品などの動作を阻害したり電気的なショートや故障の原因となる場合もあり得る。
なお、特許文献1には、本体部に通気口を設け、この通気口に水を通さず空気、蒸気を通すフィルタ機能を有する多孔質部材をもうけた温水洗浄便座が開示されている。このような多孔質部材を設ければ、通気口を介した通気性を維持しつつ本体内部への水の侵入を防止できる。
【特許文献1】特開2003−96877号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、室内暖房の排出口や脱臭の排気口の場合、あるいは本体部の内部の換気性を十分に高く維持するために設ける開口などの場合には、通風に対して高いコンダクタンスが必要とされ、多孔質部材でこのような高いコンダクタンスを得ることは困難である。
【0005】
本発明は、本体部に設けられた開口において高い通風性を確保しつつ水の侵入を抑制した便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、便座の上に設けられ、その側面または背面の少なくともいずれかに開口が設けられた本体部と、前記本体部に対して回動可能に軸支された便座と、を備え、前記本体部は、前記開口の少なくとも一部を覆うように設けられた水の侵入を妨げる第1部材と、前記第1部材の内側に設けられ、前記第1部材を通過した水を捕獲する第2部材と、を有することを特徴とする便座装置が提供される。
【0007】
また、本発明の他の一態様によれば、便座の上に設けられ、その側面または背面の少なくともいずれかに開口が設けられた本体部と、前記本体部に対して回動可能に軸支された便座と、を備え、前記本体部は、前記開口の少なくとも一部を覆うように設けられた水の侵入を妨げるハニカム構造体を有することを特徴とする便座装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、本体部に設けられた開口において高い通風性を確保しつつ水の侵入を抑制した便座装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる便座装置の外観を表す模式斜視図である。
また、図2は、この便座装置の内部構造を表す斜視透視図である。
本実施形態の便座装置100は、洋式腰掛便器の上部に設けられる本体部400と、この本体部に対して開閉自在にそれぞれ軸支された便座200と便蓋300と、を備える。なお、便蓋300は、必ずしも設けなくてもよい。
【0010】
本具体例の本体部400には、衛生洗浄機能を実現するための機構が内蔵されている。すなわち、着座センサ420により使用者が便座200に座ったことを検知し、使用者のスイッチ操作などに応じて本体部400から吐水ノズル612を便器のボウル内に進出させ、その先端付近に設けられた吐水口614から水を噴射して、便座に座った使用者の「おしり」などを洗浄可能とされている。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
また、本体部400には、脱臭ユニット630が設けられ、本体部400の側面には、これら脱臭ユニット630の排気口440が設けられている。
【0011】
図3は、脱臭ユニットの斜視図である。
本具体例の脱臭ユニット630は、吸気側から順に、フィルタ631、吸気ダクトケース632、633、ファンケース634、排気ダクトケース636が設けられている。ファンケース634の中には、吸気ファン635が内蔵されている。また、排気ダクトケース636の中には、触媒ユニット637が内蔵されている。吸気ファン635が動作すると、フィルタ631を介して便器のボウル内の空気を吸引し、排気ダクトケース636に内蔵された触媒ユニット637を介して外部に排気する。触媒ユニット637は、吸気ファン635により吸引された空気に含まれる臭気成分を吸着することにより脱臭する役割を有する。このようにして脱臭された空気は、排気ダクトケース636の排気口440から外部に排出される。
【0012】
この排気口440は、脱臭ユニット630から排出される排気の風量を確保するとともに、外部からの水の侵入を抑制する必要がある。水が侵入して、例えば触媒ユニット637に水が付着すると、触媒の脱臭性能が低下することもあり得る。また、水がさらに内部に侵入し、ファン635に至ったときには、その動作に支障を与えることもあり得る。
【0013】
これに対して、本実施形態においては、排気口440に、外部からの水の侵入を妨げる第1部材と、第1部材を通過した水を捕獲(トラップ)する第2部材と、を有する通風防水構造500が設けられている。
【0014】
図4〜図6は、排気口440に設けられた通風防水構造を例示する模式図である。
すなわち、図4は、排気口440に取り付けられる通風防水構造を外側から眺めた模式図である。
また、図5は、通風防水構造を本体部400の内側から眺めた模式図である。
また、図6は、通風防水構造を側方から眺めた模式図である。
本具体例の通風防水構造500は、本体部400からみて外側に設けられた第1部材510と、その内側に設けられた第2部材520と、を有する。本具体例の第1部材510は、主面500P(または、通風防水構造500の取付面)に対して非垂直な複数の羽512を有する排気ルーバーの形態を有する。一方、第2部材520は、樹脂製のメッシュの形態を有する。また、第2部材520の周囲には、パッキン530が設けられている。
【0015】
第2部材520とパッキン530は、第1部材510に対して固定され、これらの要素からなる通風防水構造500は、本体部400に対して着脱自在とされている。
【0016】
図7は、本具体例の通風防水構造の模式断面図である。
第1部材510は、互いに離間し、略平行に配置された複数の羽512を有する。これら羽512は、主面500P(または、通風防水構造500の取付面)に対して非垂直な方向に傾斜している。主面500Pに対する傾斜角度を小さくするほど、水の侵入をより確実に防止することができる。また、それぞれの羽512のサイズを大きくし、隣接する羽512が重なり合うようにすると、水の侵入をより確実に抑制できる。
【0017】
一方、第2部材520は、メッシュの形態を有し、メッシュを構成する線状体522の間隔は、第1部材510における羽512の間隔よりも狭いものとされている。ただし、第2部材520の形態はメッシュには限定されず、例えば、膜状体あるいは板状体に多数の孔を開口したものであってもよい。
【0018】
このような通風防水構造500に対して外部から水W1が矢印Aの方向に飛来すると、まず第1部材510の羽512Aに衝突し、その勢いが制動される。そして、水W1の一部は、例えば羽512Aの外側の斜面に沿って矢印Bの方向に水滴W2として流れ落ち、本体部400の外部に排出される。一方、羽512Aに衝突し、矢印Cの方向に飛散する水滴W3も存在することがある。この水滴W3は、羽512Aに対向する羽512Bの裏面に再び衝突してその勢いがさらに制動され、羽512Bの裏面に付着し、その裏面側を流れ落ちて本体部400の外部に排出されることもある。また、羽512Bの裏面に衝突し、第2部材520の方向に飛散する水滴W4の存在も考えられる。一方、羽512Aに衝突して矢印Cに方向に飛散し、そのまま第2部材520に到達する水滴W4の存在も考えられる。
【0019】
このようにして第1部材510により勢いが制動され、第2部材520に到達した水滴W4は、メッシュ状の第2部材520によって捕獲され、本体部400の中への侵入が阻止される。第2部材520に捕獲された水滴W4は、そのまま蒸発したり、また、第2部材520の表面を矢印Eで表したように鉛直下方に流れる水滴W5となる。このように、外部から飛来する水の勢いを第1部材510によって制動し、さらに内部に向かって飛散した水を第2部材520により捕獲することによって、本体部400の中への水の侵入を防止できる。
【0020】
便座装置100が、浴槽と一体型のユニットバスに設置された場合など、便座装置100に隣接して設けられた浴槽においてシャワーが使用される際に、便座装置100に向けて水が飛散することがある。
また、例えば、このように浴槽と一体型のユニットバスが設置された住居やホテルなどにおいて、便座装置100や便器またはその周囲などを清掃するために、シャワーによって水がかけられることもあり得る。
【0021】
本実施形態によれば、これらの場合でも、本体部400の中への水の侵入を防止できる。その結果として、本体部400に設けられた各種の機能部の動作の不良や故障などを確実に防止できる。
【0022】
そして、本実施形態においては、このように水の侵入を阻止しつつ、通風のコンダクタンスも確保できる。すなわち、第2部材520は、外側から飛散してきた水滴W4を捕獲しつつ、矢印Fで表したように、通風を確保することもできる。その結果として、例えば脱臭ユニットの動作に必要とされる排気量を維持しつつ、外部からの水の侵入を確実に防止することができる。
【0023】
図8は、通風防水構造のもうひとつの具体例を表す模式断面図である。
本具体例においても、第1部材510は、互いに離間し、略平行に配置された複数の羽512を有する。一方、第2部材520は、いわゆるハニカム状の形態を有する。
図9は、第2部材520の正面図(図8の矢印Aの方向から眺めた図)である。
第2部材520は、複数の通風孔526が仕切り524により区画されたハニカム状の形態を有する。ただし、通風孔526の平面形状は、図9(a)に表したような6角形状には限定されず、図9(b)に表したような三角形状、図9(c)に表したような円形状または楕円形状、図9(d)に表したような正方形状または長方形状など、各種の形状とすることができる。
このようなハニカム状の第2部材は、図8(a)に表したように厚みを薄く形成してもよく、また、図8(b)に表したように厚く形成してもよい。
【0024】
図10は、本具体例の通風防水構造500の模式断面図である。
図7に関して前述したものと同様に、外部から水W1が矢印Aの方向に飛来すると、まず第1部材510の羽512Aに衝突し、その勢いが制動される。そして、水W1の一部は、例えば羽512Aの外側の斜面に沿って矢印Bの方向に水滴W2として流れ落ち、本体部400の外部に排出される。一方、羽512Aに衝突し、矢印Cの方向に飛散する水滴W3も存在することがある。この水滴W3は、羽512Aに対向する羽512Bの裏面に再び衝突してその勢いがさらに制動され、羽512Bの裏面に付着し、その裏面側を流れ落ちて本体部400の外部に排出されることもある。また、羽512Bの裏面に衝突し、第2部材520の方向に飛散する水滴W4の存在も考えられる。一方、羽512Aに衝突して矢印Cに方向に飛散し、そのまま第2部材520に到達する水滴W4の存在も考えられる。
【0025】
このようにして第1部材510により勢いが制動され、第2部材520に到達した水滴W4は、ハニカム状の第2部材520によって捕獲され、本体部400の中への侵入が阻止される。第2部材520に捕獲された水滴W5は、そのまま蒸発したり、また、第2部材520の表面を伝わって矢印Eで表したように鉛直下方に流れる。このように、外部から飛来する水の勢いを第1部材510によって制動し、さらに内部に向かって飛散した水をハニカム状の第2部材520により捕獲することによって、本体部400の中への水の侵入を防止できる。
図8〜図10に表した通風防水構造500においても、外部からの水の侵入を阻止しつつ、通風のコンダクタンスも確保できる。すなわち、第2部材520は、外側から飛散してきた水滴W4を捕獲しつつ、矢印Fで表したように、通風を確保することもできる。その結果として、例えば脱臭ユニットの動作に必要とされる排気量を維持しつつ、外部からの水の侵入を確実に防止することができる。
【0026】
また、本具体例においては、第2部材520の通風孔526の形状やサイズが一定である場合、図8(a)に表したように第2部材520の厚みを薄く形成すると、第1部材510を通過して飛来してきた水滴の捕獲能力はやや低下するが、通風のコンダクタンスは高くすることができる。一方、図8(b)に表したように第2部材520の厚みを厚く形成すると、通風のコンダクタンスはやや低下するが、第1部材510を通過して飛来してきた水滴の捕獲能力は高くすることができる。
従って、必要とされる通風量や水滴捕獲能力に応じて、第2部材520の厚みを適宜決定すればよい。
【0027】
一方、図11に表したように、第2部材520の仕切り524が、外側(第1部材510に近い側)に向けて鉛直下方に傾斜するように設けると、第2部材520に捕獲された水を外側に向けて排出させやすくなる。
【0028】
以下、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態についてさらに詳細に説明する。
図12は、便座装置のもうひとつの具体例を表す斜視透視図である。
また、図13は、本具体例の便座装置の排気口440の部分を拡大した模式図である。
【0029】
本具体例においては、本体部400の背面側に脱臭ユニットの630の排気口440が設けられている。そして、この排気口440に通風防水構造500が取り付けられている。通風防水構造500を取り付けた状態において、本体部400と通風防水構造500の主面500Pとは略同一の面を形成する。
【0030】
本具体例においても、脱臭ユニット630の排気口440に図4〜図11に関して前述したいずれかの通風防水構造500を設けることにより、脱臭ユニット630に必要とされる風量を確保しつつ、外部からの水の侵入を効果的に阻止できる。その結果として、脱臭機能の低下や内蔵機器の故障などを招くことなく、便座装置を各種の環境下に設置して安定的に使用することができる。
【0031】
図14は、本実施形態の便座装置のもうひとつの具体例を表す模式図である。すなわち、図14(a)は便座装置100を便器800の上に設置した状態の側面図であり、図14(b)はこの便座装置の本体部400の斜視透視図であり、図14(c)は本体部400の内部を後方から眺めた斜視図である。
【0032】
本具体例においては、便座装置100の本体部400の正面からみて右側の側面に脱臭用排気口440と、室内暖房用の排出口450と、が隣接して設けられている。脱臭用の排気口440は、図1〜図3に関して前述したものと類似した構成を有した脱臭用ユニット630の排気ダクト636に連通し、便器800のボウル内の空気を吸引して脱臭した空気が排気される。一方、本具体例においては、図14(c)に表したように、本体部400に室内暖房用ユニット640が内蔵されている。室内暖房用ユニット640は、本体部400の中の空気をファンにより吸引し、ヒータで加熱して排出口450から温風を排出させる。この温風により、便座装置100が設置されたトイレ室を暖房することができる。 そして、本具体例においても、これら排気口440と排出口450に図4〜図11に関して前述した通風防水構造500が設けられている。
【0033】
図15は、排気口440における通風防水構造を例示する模式断面図である。
排気口440の外端には、第1部材510が設けられている。そして、その内側には、第2部材520が設けられている。第2部材520は、図4〜図7に関して前述したようなメッシュ状のものでもよく、また図8〜図11に関して前述したようなハニカム状のものでもよい。
【0034】
図15(a)は、第2部材520を第1部材510から離間させた場合を例示する。この場合、矢印Aで表したように外部から飛来した水は、第1部材510により制動され、その一部は、矢印Bで表したように第2部材520に向かって飛散する。この時、第1部材510を通過した水は、勢いが抑えられているので、鉛直下方に落下する速度成分が大きくなる。従って、図15(a)に表したように第2部材520の鉛直下方を削除しても、この削除部分を通過した水は、触媒ユニット637に達する前に排気ダクト636の底面に落下し、触媒ユニット637に達することはない。つまり、第2部材520の一部を削除して通風コンダクタンスを上げることが可能となる。
【0035】
図15(b)は、第2部材520を第1部材510に接近させた場合を表す。
また、図15(c)は、第2部材520を第1部材510にほぼ隣接して設けた場合を表す。
第2部材520を第1部材510に近づけた場合には、第1部材510を通過した水を確実に捕獲できるように第2部材520の大きさを適宜設定すればよい。
【0036】
図16は、温風の排出口450における通風防水構造を例示する模式断面図である。
本具体例においては、室内暖房用のヒータ642が内蔵されている。そしてこの場合にも、ヒータ642の被水を防止するために、第1部材510と第2部材520との配置関係やサイズについては、図15(a)〜(c)に関して前述したものと同様の設計をすることができる。
【0037】
図17は、通風防水構造500の変型例を表す模式断面図である。
本変型例においては、第1部材510の鉛直方向の下部に排水孔514が設けられている。図7及び図10に関して前述したように、矢印Aの方向から飛来した水は、第1部材510によりその勢いが制動され、第2部材520により捕獲される。これら第1部材510、第2部材520に付着した水は鉛直下方に流れ落ちる。排水孔514を設けることにより、このように流れ落ちた水を外部に排出させることができる。また、これら第1部材510から第2部材520に至る部分の下方のダクト底面540に、排水孔514に向けて下がるように勾配を設けると、排水孔514からの排水を促進できる。なお、浴室の床面を迅速に乾燥させるための床面の表面構造と同様に、ダクト底面540に水の表面張力の作用を抑制するための溝を設け、排水を促進させるようにしてもよい。
【0038】
また、脱臭用の排気口440や室内暖房の温風の排出口450などの場合には、これら機能を動作させることにより空気が排出されるので、この風圧により水を排水孔514から押し出す効果も得られる。
【0039】
図18は、通風防水構造500の他の変型例を表す模式断面図である。
本変型例においては、第1部材510から第2部材520に至る部分の下方に傾斜部材542が設けられている。傾斜部材542の上面544は、外側(第1部材510の側)に向けて鉛直下方に下がるような傾斜面とされている。このような傾斜部材542を設けることにより、外側に向けて排水を促進させることができる。その結果として、例えば図18(b)に矢印Bで表したように、第2部材520を通過した水滴W6なども外側に排出させることができる。従って、例えば第2部材520のメッシュの開口率を大きくして通風のコンダクタンスを大きくしつつ、傾斜部材542により排水も促進させることができる。また、本変型例においても、浴室の床面を迅速に乾燥させるための床面の表面構造と同様に、上面544に水の表面張力の作用を抑制するための溝を設け、排水を促進させるようにしてもよい。
【0040】
また、本変型例においては、傾斜部材542が通風のコンダクタンスを低下させないように、風路への突出量を抑制したり、または傾斜部材542の風路の上流側の端部の形状を滑らかな形状として通風抵抗を低減させるとよい。
【0041】
図19は、通風防水構造500のさらに他の変型例を表す模式断面図である。
図19(a)に表した変型例の場合、第2部材520は、上部よりも下部が第1部材510に近づくように傾斜して設けられている。このように第2部材520を傾斜させると、第2部材520を流れ落ちる水を第1部材510の近くに落下させることができる。従って、第1部材510の下部に排水孔514を設けた場合など、この排水孔514からの排水を促進させることができる。
【0042】
図19(b)に表した変型例の場合には、第2部材520は、下部よりも上部が第1部材510に近づくように傾斜して設けられている。このように第2部材520を傾斜させると、第1部材510を通過した水を捕獲しやすくなる。つまり、矢印Cで表したように、第1部材510から放物線状に飛来する水滴に対して第2部材520の主面520Pを傾斜させることにより、水滴が第2部材520を通過しにくくなり、水滴を第2部材520によってより確実に捕獲することができる。
【0043】
また、この変型例においても、第2部材520は、第1部材510を通過した水が飛来する範囲に設ければよく、必ずしも風路の前面を塞ぐように設ける必要はない。従って、例えば、第2部材520の上方に隙間528を設けて通風のコンダクタンスを上げることも可能となる。
【0044】
図20は、通風防水構造のもうひとつの具体例を表す模式断面図である。
本具体例の通風防水構造500は、ハニカム構造体550からなる。すなわち、排気ダクト636の開口には、図8〜図11に関して前述した第2部材520と同様の構造を有するハニカム構造体550が設けられている。ハニカム構造体550は、メッシュとは異なり、厚みがある。従って、ハニカム構造体550の通気方向と略平行にシャワーなどで散水された場合でも、外部から飛来した水は、ハニカム構造体の通風孔526(図9参照)の内壁に水滴として付着し捕獲される。このため、ハニカム構造体550のみによっても、矢印Aで表したように外部から飛来する水の勢いを制動し捕獲することが可能となる。
【0045】
図20(a)に表したように、ハニカム構造体550の厚みを薄く形成すると、外部から飛来してきた水滴の捕獲能力はやや低下するが、通風のコンダクタンスは高くすることができる。一方、 図20(b)に表したようにハニカム構造体550の厚みを厚く形成すると、通風のコンダクタンスはやや低下するが、外部から飛来してきた水滴の捕獲能力は高くすることができる。
従って、必要とされる通風量や水滴捕獲能力に応じて、ハニカム構造体550の厚みや、通風穴526(図9参照)の形状及び大きさを適宜決定すればよい。本具体例によれば、第1部材510と第2部材520とを組み合わせる必要がなく、ハニカム構造体550のみを設ければよいので、製造上やその後のメンテナンスなどに際して手間を減らすことができる点でも有利となる。なお、本具体例も、脱臭ユニットだけではなく、室内暖房用ユニットや、その他、通風を確保しつつ水の侵入を防止する必要がある開口部に設けて同様の効果が得られる。
【0046】
次に、本発明者が実施した実施例について説明する。
本発明者は、図1〜図6に関して前述した脱臭ユニット630の排気口440について、本実施形態の通風防水構造500を設けた場合と、設けない場合と、について防水性能を比較した。
【0047】
図21は、この実験の結果を表す写真である。
図21(a)は本実施形態の通風防水構造50を表す。この通風防水構造500は、図4〜図6に関して前述したものと同様であり、ルーバー状の第1部材510と、メッシュ状の第2部材520と、を有する。ここで、第2部材520としては、50メッシュの樹脂製の網状体を用いた。
図21(b)は、比較例を表し、ここではルーバー状の第1部材510のみを設け、第2部材520は設けなかった。
【0048】
これら本実施形態及び比較例の部材を設けた本体部400の排気口440に対して、シャワーヘッドにより水をかけて防水性能を比較した。シャワーヘッドによる放水の方向は、排気口440に対して垂直な方向から鉛直上方に30度ほど傾斜させた方向とした。また、シャワーヘッドと本体部400との距離は、400ミリメータとし、シャワーヘッドからの散水量は、毎分10リッターとして、30秒間散水した。
【0049】
図21(c)は、散水実験後の本実施形態の通風防水構造500を設けた場合の触媒ユニット637を表し、図21(d)は、散水実験後の比較例の触媒ユニット637を表す。なおここでは、被水した部分の判別を容易にするために、水に着色して実験を実施した。
【0050】
第2部材520を設けない比較例の場合、図21(d)に表したように、触媒ユニット637のほぼ前面が被水し、排気ダクト636の下面には、水が溜まっていた。
【0051】
これに対して、本実施形態の通風防水構造500を設けた場合には、図21(c)に表したように触媒ユニット637に水の付着は見られず、水の侵入が阻止されていることが分かる。このように、本実施形態によれば、シャワーにより散水したような場合でも、水の侵入を防ぐことができる。
【0052】
また、通風量についてみると、ルーバー状の第1部材510のみを設けた比較例における風量を100とした場合に、本実施形態の通風防水構造500を設けた場合の通風量は97であり、通風のコンダクタンスも殆ど低下させることはなかった。
【0053】
以上説明したように、本実施形態によれば、通風のコンダクタンスを確保しつつ、水の侵入を効果的に阻止できる通風防水構造500を実現できる。その結果として、便座装置に水がかかるような環境においても、水の侵入を防止し、動作の不良や故障などを防いで安定的に動作させることができる。
【0054】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、図1乃至図21に関して前述した各具体例は、技術的に可能な範囲において適宜組み合わせることができ、これらも本発明の範囲に包含される。
また、便座装置の構造や動作の内容についても、図1乃至図21に関して前述したものには限定されず、当業者が適宜設計変更することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができるものも本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便座装置の外観を表す模式斜視図である。
【図2】便座装置の内部構造を表す斜視透視図である。
【図3】脱臭ユニットの斜視図である。
【図4】排気口440に取り付けられる通風防水構造を外側から眺めた模式図である。
【図5】通風防水構造を本体部400の内側から眺めた模式図である。
【図6】通風防水構造を側方から眺めた模式図である。
【図7】本具体例の通風防水構造の模式断面図である。
【図8】通風防水構造のもうひとつの具体例を表す模式断面図である。
【図9】第2部材520の正面図(図8の矢印Aの方向から眺めた図)である。
【図10】本具体例の通風防水構造500の模式断面図である。
【図11】第2部材520の仕切り524を傾斜させた具体例を表す模式断面図である。
【図12】便座装置のもうひとつの具体例を表す斜視透視図である。
【図13】本具体例の便座装置の排気口440の部分を拡大した模式図である。
【図14】本実施形態の便座装置のもうひとつの具体例を表す模式図である。
【図15】排気口440における通風防水構造を例示する模式断面図である。
【図16】温風の排出口450における通風防水構造を例示する模式断面図である。
【図17】通風防水構造500の変型例を表す模式断面図である。
【図18】通風防水構造500の他の変型例を表す模式断面図である。
【図19】通風防水構造500のさらに他の変型例を表す模式断面図である。
【図20】通風防水構造のもうひとつの具体例を表す模式断面図である。
【図21】本発明者の実験の結果を表す写真である。
【符号の説明】
【0056】
100 便座装置、200 便座、300 便蓋、400 本体部、420 着座センサ、440 排気口、450 排出口、500 通風防水構造、500P 主面、510 第1部材、512、512A、512B 羽、514 排水孔、520 第2部材、520P 主面、522 線状体、524 仕切り、526 通風孔、528 隙間、530 パッキン、540 ダクト底面、542 傾斜部材、544 上面、550 ハニカム構造体、612 吐水ノズル、614 吐水口、630 脱臭ユニット、631 フィルタ、632 吸気ダクトケース、634 ファンケース、635 ファン、636 排気ダクト、637 触媒ユニット、640 室内暖房用ユニット、642 ヒータ、800 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座の上に設けられ、その側面または背面の少なくともいずれかに開口が設けられた本体部と、
前記本体部に対して回動可能に軸支された便座と、
を備え、
前記本体部は、
前記開口の少なくとも一部を覆うように設けられた水の侵入を妨げる第1部材と、
前記第1部材の内側に設けられ、前記第1部材を通過した水を捕獲する第2部材と、
を有することを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記第1部材は、前記開口に対して非垂直な複数の羽を有することを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記第2部材は、メッシュ状であることを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項4】
前記第2部材は、ハニカム状であることを特徴とする請求項1または2に記載の便座装置。
【請求項5】
前記第2部材は、前記第1部材に固定されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項6】
前記第1部材は、前記水を排水する排水孔を有することを特徴とする請求項1〜5の いずれか1つに記載の便座装置。
【請求項7】
前記第1部材から前記第2部材に至る部分の下方に、前記第2部材から前記第1部材に向けて鉛直下方に傾斜する傾斜面が設けられたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の便座装置。
【請求項8】
便座の上に設けられ、その側面または背面の少なくともいずれかに開口が設けられた本体部と、
前記本体部に対して回動可能に軸支された便座と、
を備え、
前記本体部は、
前記開口の少なくとも一部を覆うように設けられた水の侵入を妨げるハニカム構造体を有することを特徴とする便座装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図2】
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【図21】
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