説明

便座装置

【課題】便蓋のしなりによる傾きを抑制し、美観を保持する便座装置を提供する。
【解決手段】便座及び便蓋の少なくともいずれかと、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの一端を軸支する第1の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第1の付勢手段と、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの他端を軸支する第2の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第2の付勢手段と、を備えたことを特徴とする便座装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便座装置に関し、特に便蓋や便座の自動開閉が可能な便座装置に関する。
【背景技術】
【0002】
腰掛け式の便器に付設され、便座や便蓋の自動開閉を可能とした便座装置がある。このような便座装置においては、便蓋を開閉させる駆動機構を補助するため、便蓋を開放方向へ付勢する付勢手段が設けられる。
このような付勢手段として、便蓋を開閉させる駆動機構を備えた自動開閉装置内に、便蓋を開放方向へ付勢するねじりばねのような付勢手段を設ける提案がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、便蓋を開放側へ付勢するねじりばねを設けたヒンジ装置を、自動開閉装置とは別体とし、自動開閉装置の出力軸とヒンジ装置の回転軸を締結する提案がある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−270831号公報
【特許文献2】特開2005−277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の自動開閉装置やヒンジ装置を備えた便座装置の場合、便蓋の左右に設けた一対の軸支部のうち、一方の軸支部にのみ付勢手段が設けられているため、便蓋は一方の軸支部からのみ開放方向へトルクを受けることになる。そうすると、便蓋のしなりにより便蓋の傾きが発生し、美観を損なうなどの問題があった。
【0006】
本発明は、便蓋のしなりによる傾きを抑制し、美観を保持する便座装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の発明は、便座及び便蓋の少なくともいずれかと、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの一端を軸支する第1の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第1の付勢手段と、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの他端を軸支する第2の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第2の付勢手段と、を備えたことを特徴とする便座装置を提供する。
【0008】
すなわち、付勢手段を駆動装置側の軸支部に設けるとともに、もう一方の軸支部側へも設けている。双方の付勢手段が発生する付勢トルク(付勢力)をほぼ均等とすることで、便蓋の両軸支部はほぼ均等にトルクを受けることになる。これにより便蓋のしなりがなくなり、傾きを抑制し、美観を保持することができる。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開閉させる駆動装置をさらに備えた特徴とする。
駆動装置を備えることにより、便座や便蓋の自動開閉が可能となり、左右に付勢手段を設けることで、円滑且つ迅速な自動開閉が実現される。
【0010】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記第1の付勢手段の付勢力は、前記第2の付勢手段の付勢力よりも小さいことを特徴とする。
駆動装置側の付勢手段の付勢力よりも、もう一方側の付勢手段の付勢力を小さくすることにより、駆動装置により印加されるトルクに起因する便蓋のしなりをなくし、傾きを抑制し、美観を保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、便蓋のしなりによる傾きを抑制し、美観を保持する便座装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態にかかる便座装置の外観を表す模式斜視図である。
【図2】図1に表した本体部の内部を前方から眺めた斜視図である。
【図3】図1に表した本体部の内部の要部を前方から眺めた斜視図である。
【図4】図3に表した電動開閉ユニットの要部の模式的断面図である。
【図5】図1に表したアシストユニットの内部構造の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係る便座装置の外観を例示する斜視図である。
図1に表した便座装置100は、洋式腰掛便器800の上に設けられ、本体部400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200は、便座軸支部201と202とにより、本体部400に対して開閉自在に軸支されている。また、便蓋300は、便蓋軸支部301(第1の軸支部)と302(第2の軸支部)とにより、本体部400に対して開閉自在に軸支されている。そして、本具体例においては、便蓋300は、軸支部301と軸支部302の両側において、開放方向に付勢されている。
【0015】
なお、本実施例においては、便蓋軸支部301(第1の軸支部)、302(第2の軸支部)は、本体部400の後方に設けられ、便蓋300を閉じたとき、便蓋300は、本体部400の上面の全面を覆うように構成している。このように、便蓋300を、本体部400の上面の全面を覆うように構成することにより、便蓋を閉じたときの、美観に優れた便座装置を提供することができる。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、例えば、便蓋軸支部301(第1の軸支部)、302(第2の軸支部)を便座軸支部201、202の近傍に設け、便蓋300の形状を小さくすることもできる。
【0016】
図2は、本体部400の内部を例示する前方から眺めた斜視図である。
本体部400は、筐体で覆われた外形を有する。筐体は、ケースカバー430とケースプレート770とを有する。ケースカバー430の上面には、人体検知センサ500や表示部670が適宜設けられている。表示部670は、例えば便座装置に対する電源の投入状態などを適宜表示する役割を有する。また、ケースカバー430の前上部には、便座200を自動開閉させるための電動開閉ユニット780が突出して設けられている。
【0017】
一方、ケースカバー430の内部をみると、例えば、その前方には、ノズルユニット610、温風乾燥ユニット620、脱臭ユニット630、が併設されている。ノズルユニット610は、進退自在の吐水ノズルを有し、便座200に座った使用者の「おしり」などに水を噴射して洗浄する役割を有する。温風乾燥ユニット620は、便座200に座った使用者の「おしり」などに温風をあてて乾燥させる役割を有する。脱臭ユニット630は、便器800のボウル(図示せず)内の空気を吸引し、脱臭して排気口440から排出する役割を有する。
すなわち、本具体例の便座装置は、「衛生洗浄機能」「温風乾燥機能」「脱臭機能」を有する。ただし、本発明はこれには限定されず、これらの機能を有しない便座装置も包含する。
【0018】
一方、ケースカバー430の内部には、その後部に電動開閉ユニット720(駆動装置)と、アシストユニット750(第2の付勢手段)と、便器洗浄バルブユニット730とが併設されている。本具体例においては、電動開閉ユニット720(駆動装置)は便蓋300に向かって左側で軸支し、便蓋300を開閉する役割を有する。一方、アシストユニット750(第2の付勢手段)は便蓋300に向かって右側で軸支し、便蓋300を開放方向へ付勢する役割を有する。
【0019】
なお、便器洗浄バルブユニット730は、便器800に流す洗浄水の供給を制御する役割を有する。すなわち、本具体例の便座装置は、いわゆる「水道直結給水式」の構造を有し、ロータンクなどを設けずに、水道から供給される水を便器洗浄バルブユニット730を介して便器800に供給して洗浄を実施する。ただし、本発明はこれには限定されず、ロータンク式のトイレに取付可能な便座装置も包含する。
【0020】
図3は、図1に表した本体内部の要部を前方から眺めた斜視図である。
図3に表したように、ケースプレート770の後方に、電動開閉ユニット720(駆動装置)とアシストユニット750(第2の付勢手段)が設けられている。そして、後述するように、電動開閉ユニット720(駆動装置)の内部に、ねじりコイルバネ(第1の付勢手段)が設けられている。
【0021】
図4は、図3に表した電動開閉ユニットの内部構造の模式的断面図である。
電動開閉ユニット720(駆動装置)は、ケース721で覆われた外形を有し、内部にモータ722と、出力軸723と、減速ギヤ機構724と、ねじりコイルばね725(第1の付勢手段)と、を有する。減速ギヤ機構部724(破線で囲んだ部分)は、モータ722の回転軸(図示せず)の回転を減速して出力軸723に伝える。出力軸723は、連結軸(図示せず)を介して、便蓋300の軸支部301(第1軸支部)と相対回転出来ないように固定されることで、モータ722の回転を便蓋300の軸支部301へ伝えている。
【0022】
このように、モータ722の回転により、軸支部301(第1の軸支部)が回転し、便蓋300が開放方向に回転する。
【0023】
ねじりコイルばね725の一端725Aは、ケース721のばね受け部721Aに嵌合している。また、ねじりコイルバネ725の他端725Bは、出力軸723のばね受け部723Aに嵌合している。これにより、便蓋300の開放方向へ回転量に比例したトルクを便蓋300の軸支部301(第1の軸支部)へ与える(第1の付勢手段)。
【0024】
図5は、図1に表したアシストユニットの内部構造の模式的断面図である。
アシストユニット750(第2の付勢手段)は、ケース751で覆われた外形を有し、内部に出力軸752と、ねじりコイルばね753と、を有する。
出力軸752は、連結軸(図示せず)を介して、便蓋軸支部302(第2の軸支部)と相対的に回転ができないように固定されている。
ねじりコイルばね753の一端753Aは、ケース751のばね受け部751Aに嵌合し、他端753Bは、出力軸752のばね受け部752Aに嵌合している。こうすることで、便蓋300の開放方向へ回転量に比例した付勢トルクを便蓋300の軸支部302へ与えている(第2の付勢手段)。
ここで、便蓋300の軸支部302(第2の軸支部)へ与える付勢トルク(付勢力)を、便蓋300の軸支部301に与える付勢トルク(付勢力)とほぼ均等となるように設定することが望ましい。
【0025】
ねじりコイルばね725を有する電動開閉ユニット720(駆動装置)と、ねじりコイルばね753を有するアシストユニット750(第2の付勢手段)により、便蓋300の左右の軸支部301(第1の軸支部)と302(第2の軸支部)との双方へほぼ均等に付勢トルク(付勢力)が与えられる。これにより、しなりによる便蓋300の傾きが抑制される。特に、閉じた状態での便蓋300の左右の傾斜がなくなり、便座装置100の美観を保つことが可能となる。また、左右いずれか一方の軸支部において付勢する場合と比較して、本実施形態によれば、左右の軸支部から付勢することにより、均等で強い付勢力を作用させることができる。その結果として、便蓋300の開閉動作を円滑且つ迅速に実行させることが可能となる。
なお、本具体例のように便座装置全体を覆うような、大きくてしなりやすい便蓋の場合には、特に顕著に本発明の効果を得ることができる。
【0026】
さらには、非常に大きな付勢トルク(付勢力)を必要とした場合、電動開閉ユニット720だけでそのトルクを与えようとしても、ねじりコイルばね725を大きくしなければならなくなり、限られたスペースでそれを収納させるのは困難である。これに対して、本実施形態によれば、空いたスペースに配置したアシストユニット750(第2の付勢手段)からも付勢トルク(付勢力)を発生させることで、より大きな付勢トルク(付勢力)を便蓋300に与えることが可能となる。
【0027】
また、便蓋300は電動開閉ユニット720(駆動装置)が駆動すると、その度に電動開閉ユニット720(駆動装置)側の軸支部301(第1の軸支部)が、アシストユニット750(第2の付勢手段)側の軸支部302(第2の軸支部)よりも大きなトルクを受けることになり、便蓋300のしなりが発生する。便座装置100が公共の場等に設置され頻繁に電動開閉ユニット720(駆動装置)を駆動されると、便蓋300がしなった状態で塑性変形を起こす。そうなると便蓋300の素材によっては便蓋300を閉じた状態で左右にアンバランスな傾斜が発生する。
【0028】
このような場合には、電動開閉ユニット720(駆動装置)側の便蓋300の軸支部301(第1の軸支部)に与える付勢トルク(付勢力)を、アシストユニット750(第2の付勢手段)側の便蓋300の軸支部302(第2の軸支部)へ与える付勢トルク(付勢力)よりも小さく設定することで、便蓋300が塑性変形を起こしても閉じた状態での左右のアンバランスな傾斜がなくなり、美観を保つことが可能となる。
【0029】
なお、本実施例においては、ねじりコイルバネにより付勢力を与える付勢手段を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、付勢手段として、板バネ等の形状が異なるバネ及びその他の弾性体などを用いることができる。
【0030】
また、これらの付勢手段は、便座装置の本体部400の側に設けてもよく、便蓋300(または便座200)の側に設けてもよい。あるいは、本体部400と便蓋300(または便座200)との間に設けてもよい。
【0031】
また、本具体例においては、便蓋300を電動開閉ユニット720により自動的に開閉可能としたが、本発明はこれには限定されない。すなわち、電動開閉ユニット720を用いることななく、便蓋300を手動により開閉する便座装置において、便座300の軸支部301、302のそれぞれにおいて開放方向に付勢する付勢手段を設けたものも、本発明の範囲に包含される。このような場合も、便蓋300の左右のアンバランスな傾斜がなくなり、美観を保つことができる。また、手動で便蓋300を開閉する際にも、左右から付勢力を作用させることで、円滑且つ迅速な開閉動作を実行することが可能となる。
【0032】
一方、本具体例においては、便蓋300が両側の軸支部301、302において付勢されるが、その代わりに、あるいはこれとともに、便座200が両側の軸支部201、202において開放方向に向けて付勢されるようにしてもよい。例えば、便蓋300が設けられず、便座200のみを設けた便座装置も本発明の範囲に包含される。便座200は、その内部に例えば暖房用のヒータなどを内蔵することも多く、重くなる場合がある。このような場合でも、両側の軸支部201、202においてそれぞれ開放方向に付勢することにより、均等で十分な付勢力を作用させることができる。その結果として、便座200が左右いずれかの方向に傾斜することが抑制され、また、便座200の開閉動作を円滑且つ迅速に行うことが可能となる。
【0033】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。例えば、便座装置を構成する各要素の具体的な構成に関しては、当業者が公知の範囲から適宜選択することにより本発明を同様に実施し、同様の効果を得ることができる限り、本発明の範囲に包含される。
また、各具体例のいずれか2つ以上の要素を技術的に可能な範囲で組み合わせたものも、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に含まれる。
【0034】
その他、本発明の実施の形態として上述した便座装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての便座装置も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の範囲に属する。
その他、本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変更例及び修正例に想到し得るものであり、それら変更例及び修正例についても本発明の範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0035】
100 便座装置、 200 便座、 201、202 軸支部、 300 便蓋、 301、302 軸支部、 400 本体部、 430 ケースカバー、 500 人体検知センサ、 610 ノズルユニット、 620 温風乾燥ユニット、 630 脱臭ユニット、 670 表示部、 720 電動開閉ユニット(駆動装置、第1の付勢手段)、 721 ケース、 722 モータ、 723 出力軸、 724 減速ギヤ機構部、 725 ねじりコイルばね、 730 便器洗浄バルブユニット、 750 アシストユニット(第2の付勢手段)、 751 ケース、 752 出力軸、 753 ねじりコイルばね、 770 ケースプレート、 780 電動開閉ユニット、 800 便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座及び便蓋の少なくともいずれかと、
前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの一端を軸支する第1の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第1の付勢手段と、
前記便座及び便蓋の少なくともいずれかの他端を軸支する第2の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開放方向へ付勢する第2の付勢手段と、
を備えたことを特徴とする便座装置。
【請求項2】
前記第1の軸支部において、前記便座及び便蓋の少なくともいずれかを開閉させる駆動装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の便座装置。
【請求項3】
前記第1の付勢手段の付勢力は、前記第2の付勢手段の付勢力よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の便座装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−201083(P2010−201083A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−52492(P2009−52492)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】