便潜血検知方法及び装置
【課題】 便又は便溶液に装置が直接接触することなしに便潜血を検出できる、乾式の便潜血検知方法及び装置を提供する。
【解決手段】 排便時に人体から排出される排便ガスを、便潜血検知装置200内のガス吸入装置210が吸入し、ガス吸入装置210内のアミンガスセンサ220が、排便ガスに含まれるアミンガスを検出する。制御装置232が、アミンガスセンサ220の出力信号を受けて便潜血の有無を判断する。ガス吸入装置210内には、吸入されたアミンガスを吸い取ってしまう水分を除去する水分除去装置と、吸入されたアミンガスを濃縮してアミンガスセンサ220に供給するガス濃縮装置が設けられる。
【解決手段】 排便時に人体から排出される排便ガスを、便潜血検知装置200内のガス吸入装置210が吸入し、ガス吸入装置210内のアミンガスセンサ220が、排便ガスに含まれるアミンガスを検出する。制御装置232が、アミンガスセンサ220の出力信号を受けて便潜血の有無を判断する。ガス吸入装置210内には、吸入されたアミンガスを吸い取ってしまう水分を除去する水分除去装置と、吸入されたアミンガスを濃縮してアミンガスセンサ220に供給するガス濃縮装置が設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便に混じる潜血を自動的に検知する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便中潜血の検出は、大腸癌などの大腸疾患の発見に有効である。これを家庭で簡単に行うための装置又は道具として、特許文献1及び非特許文献1などに開示のものが知られている。特許文献1に記載の検査装置は、生体から排泄された便を自動的に採取し、これを液体で希釈し、その希釈液を反応容器に入れて潜血を検出する。非特許文献1に記載の製品は、潜血と化学反応する薬剤を含んだ紙シート様のもので、排便された便槽内のトラップ水面にそれを浮かべることで使用される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−260182号公報
【非特許文献1】http://poesie.hp.infoseek.co.jp/EZDetect.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の便潜血検査用の装置又は道具は、いずれも、便又は便溶液に直接接触して便潜血を検出するという湿式のものである。そのため、特許文献1に記載の装置では、便や便溶液に直接接触する部品の洗浄などのメンテナンスが、検査を行う都度に必要である。また、非特許文献1に記載の道具は使い捨てである。
【0005】
本発明の目的は、便又は便溶液に装置が直接接触することなしに便潜血を検出できる、乾式の便潜血検知方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、便潜血が観察される場合には、排便と共にアミンガスが肛門から排出されるという新規な知見に基づいている。
【0007】
本発明の一つの観点に従う便潜血検知方法は、排便ガスからアミンガスを検出するステップと、アミンガスの検出結果に応じて便潜血の有無を判断するステップとを備える。
【0008】
本発明の別の観点に従う便潜血検知装置は、排便ガス中のアミンガスを検出するガスセンサと、前記ガスセンサを制御し、前記ガスセンサの出力信号を受けて便潜血の有無を判断する制御装置とを備える。
【0009】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、ガス吸入口と、前記ガス吸入口に結合されたダクトとを有し、排便ガスを前記ガス吸入口から前記ダクト内へ吸入するガス吸入装置を更に備え、前記ガスセンサが前記ダクト内に配置される。
この実施形態にかかる便潜血検知装置は、便器に取り付けられ、前記ガス吸入装置の前記ガス吸入口が、前記便器の便槽内に配置される。前記ガス吸入口は例えば前記便槽内の後部に配置される。また、前記ガス吸入口は、前記便槽内の便座近傍の高さに配置されるか、または、便槽内のトラップ水面近傍の高さに配置される。いすれの配置においても、ガス吸入口がユーザの肛門又は排泄された便の近くに位置することになるので、便槽内の排便ガスを効果的に吸入できる。
【0010】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記便槽内の空気を前記吸入口へ導くような誘導風を前記便槽内に発生させる誘導風装置を更に備える。これにより、排便ガスの吸入性能は一層良くなる。
【0011】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間から水分を除去するための水分除去装置を更に備える。これにより、水溶性の高いアミンガスがガスセンサに到達する前にダクト内の水分に吸収されてしまう問題を抑制できる。
【0012】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に存在する水分を検知する水分検知装置を更に備え、前記水分除去装置が、前記水分検知装置に応答して動作するようになっている。
【0013】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に配置され、そこを通る排便ガスからアミンガスを捕集して蓄積し、そして、蓄積されたアミンガスを放出するガス濃縮装置を更に備える。これにより、アミンガスの検出性能が向上する。
【0014】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ガス吸入口により吸入された排便ガス中のアミンガスを含む臭気成分を、外気に戻さないために分解又は除去する脱臭装置を更に備える。
【0015】
便器が腰掛式便器の場合、便槽と便座との間の隙間を塞ぐ便座シールが更に備えられてもよい。これにより、排便ガスの吸入性能は一層良くなる。
【0016】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ガスセンサによる検出が行われた後に、前記便槽に洗浄水を流す又は前記便器に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる便器洗浄装置を更に備える。これにより、排便ガスの吸入が終了する前に便器洗浄が行われることが防止されるので、検知に必要な量の排便ガスを吸入することが容易になる。
【0017】
本発明に従う便潜血検知装置は様々な形態、例えば、人の局部を洗浄するための衛生洗浄装置を組み込んだ便座装置形の形態や、便器の一部として便器に一体的に組み込まれた形態や、携帯可能な小型装置の形態や、便槽に引っ掛けて使用される便器付属装置的な形態などで、実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、便又は便溶液に装置が直接接触することなしに乾式の方法で便潜血を検出できる。従来の湿式の装置又は道具に比べると、部品の洗浄などのメンテナンスの必要性は大幅に低下し、使い捨ての部品が無いから長期間継続して使え、また、便に触れる部品も無いから衛生的でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
便潜血の主原因は腸内出血である。図1は、腸内出血が発生した場合に大腸内で生じると推測される現象を示す。
【0020】
図1(A)に示すように、腸管からの出血で大腸100内に血液(=蛋白質(NHCHRnCOOH))102が出たとする。血液102は消化物と共に大腸100内を下流に運ばれていく。まず、図1(B)に示すように、蛋白質分解菌(例えば、プロテウス、クレブシーラ、バクテロイデス、クロストリディウム等)104が増殖し、血液102を盛んに分解し始める。それにより、図1(C)に示すように、血液102の少なくとも一部はアミノ酸(R-CHNH2-COOH)106に分解され、さらに分解が進むことで、図1(D)に示すように、アミノ酸106からアミン(R-CH2NH2)108へと分解される。結果的に、図1(E)に示すように、大腸100の終端部のS字結腸や直腸に到達する頃には、健常時よりも大量のアミン108が生成される。排便時には、便と一緒にアミンガスが排出される。因みに、口から摂取された食物の蛋白質は、小腸において十分に分解、吸収されるため、大腸内でのアミン発生の原因にはならない。健常時には、便と共に排出されるガス(この明細書では排便ガスという)には、窒素、二酸化炭素、水素、メタン、アンモニアなどが含まれるが、アミンガスは実質的に含まれない。排便ガスにある程度の量のアミンガスが含まれていた場合、これは便潜血が検出されたことと実質的に同等の意味をもつ。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態にかかる便潜血検知装置の構成を示す。
【0022】
図2に示すように、便潜血検知装置200は、腰掛式の便器300の便槽302の後端部上に固定された本体202と、この本体202に蝶番を介して開閉自在に取り付けられて便槽302の上縁部全体上に載るようになった便座204と、これらとは離れた場所に配置されるリモートコントローラ206とを備える。便潜血検知装置200には、便潜血を検知するための各種装置の他に、洗浄ノズル208から温水を噴出してユーザの局部を洗浄するための局部洗浄装置(その詳細は図示省略)も組み込まれている。さらに、便潜血検知装置200には、便槽302を洗浄するために便槽302内に水を流す(又は、便器300に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる)便器洗浄装置209も組み込まれている。局部洗浄装置それ自体の構成及び便器洗浄起動装置それ自体の構成には、それぞれ公知の構成が採用可能である。
【0023】
便潜血検知装置200の本体202には、排便時に便槽内空間304の空気を吸入することで排便ガスを吸入するガス吸入装置210が組み込まれている。ガス吸入装置210は、ガス吸入口212と、ガス吸入口212に繋がったダクト214と、ダクト214に結合されたファン216と、ファン216の排気口に接続された脱臭装置218とを有する。ガス吸入口212は、便槽内空間304内の所定位置、例えば便槽内空間304の後部の便座204近傍の高さの位置(この位置は、ユーザの肛門に近いので排便ガスを吸入し易い)に配置される。排便時にファン216が正回転すると、便槽内空間304の排便ガスがガス吸入口212からダクト214内に吸入され、ダクト214を通り、脱臭装置218を通って外気へ排出される。ダクト214内には、排便ガスに含まれるアミンガスを検出するためのアミンガスセンサ220が取り付けられている。アミンガスセンサ220は、そこを通る空気に含まれるアミンガスに応答して、そのアミンガスの濃度に応じた電気信号を出力する。ダクト214内のガス吸入口212からアミンガスセンサ220までの区間には、図2には示されていない水分検知装置、水分除去装置及びガス濃縮装置なども配置されているが、これらについては後に説明する。脱臭装置218は、排便ガスに含まれるアミンガスやその他の臭気成分を分解又は除去して、出来るだけ臭気成分が外気に出ないようにする。
【0024】
便潜血検知装置200には、また、便槽内空間304中の空気を上述したガス吸入装置210のガス吸入口212の方へ導くために誘導風を便槽内空間304中に発生させるための誘導風装置224が組み込まれている。誘導風装置224は、本体202の外壁に設けられた外気吸入口226と、本体202内に配置され外気吸入口226から外気を吸入するファン228と、便座204内に設けられ便座204が使用位置にある時にファン228の排気口に繋がるダクト230とを有する。ダクト230は、便座204内をその後端部から前端部まで、便槽302の上縁部に沿って伸びている。ダクト230は、便座204の後端部に位置する部分にて、ファン228の排気口に接続するようになっている。便座204の少なくとも前端部の底面には、その内部のダクト230から便槽内空間304へ通じる1又は複数の図示しない排気口が開けられている。ファン228が回転すると、外気が外気吸入口226から吸入され、ダクト230を通り、上述した便座204の底面の排気口から、上記誘導風として下方且つ後方へ向かって便槽内空間304へ噴出する。なお、上記排気口は、便座の前端部だけでなく、左右の両側部にも設けられてよい。
【0025】
便潜血検知装置200の本体202には、さらに、トイレ室内に入ってきたユーザを検知するための人体検知センサ222や、ユーザの便座204への着座を検知する着座センサ(図示せず)や、便潜血検知装置200内の上述し各部と接続されてそれらを制御するための制御装置232が組み込まれている。制御装置232は、便潜血検知装置200の各部を制御する機能だけでなく、アミンガスセンサ220からの電気信号を受けて、その電気信号を処理して、便潜血の有無、すなわち、排便ガス中に所定程度以上の量又は濃度のアミンガスが含まれていたか否か、を判断する機能も有する。この判断のための処理方法としては、例えば、アミンガスセンサ220からの電気信号(例えば電圧信号)のレベル(例えば、排便直後を含む所定時間区間におけるピークレベル、平均レベル或いはレベルの時間積分値など)を所定の閾値と比較し、その結果、上記レベルが上記閾値以上であれば便潜血有り、上記閾値未満であれば便潜血無しと判定するというような方法が採用できる。
【0026】
制御装置232は、また、リモートコントローラ206と、赤外線や電波などを用いた無線通信により相互通信可能である。リモートコントローラ206は、複数の操作ボタン234と表示スクリーン236とを、その前面パネル上に有する。複数の操作ボタン234は、便潜血検知装置200がもつ上述した便潜血検知機能、局部洗浄機能及び便器洗浄機能を操作するために用いられる。例えば、或る操作ボタン234は、便潜血の検知動作を開始するための開始ボタンとして用いられる。表示スクリーン236は、上述した便潜血検知機能、局部洗浄機能及び便器洗浄機能に関わる各種の情報を表示するために用いられる。例えば、便潜血の検知動作が完了すると、制御装置232からリモートコントローラ206に便潜血の検知結果が送信され、その検知結果が表示スクリーン236に表示される。
【0027】
便座204の下面には、便座204の下面と便槽302の上縁面との間の隙間をほぼ完全に塞ぐための弾力性のあるシール体238が取り付けられている。このシール体238は、上述したガス吸入装置210が便槽内空間304内の排便ガスを吸引するときに、外気が上記隙間から便槽内空間304に入ったり、排便ガスが上記隙間から外へ逃げたりすることを防ぎ、それにより、排便ガスのできるだけ大部分がガス吸入装置210に吸入されるようにする役割をもつ。
【0028】
図3は、上述したガス吸入装置210の構成をより詳細に示す。
【0029】
図3に示すように、ガス吸入装置210のダクト214内の、ガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の区間には、水分検知・除去装置240とガス濃縮装置242が設けられる。水分検知・除去装置240は、ガス濃縮装置242よりも、ガス吸入口212に近い位置(上流側)に配置される。水分検知・除去装置240は、水分を検知する水分検知装置と、水分を除去する水分除去装置とを有する。ガス濃縮装置242は、そこを通る空気からアミンガスを捕集して蓄積し、そして、所望の時点で蓄積されたアミンガスを離脱させて放出するものである。ダクト214の内側面は、少なくともガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の区間においては、ガス吸着性の少ない材料(例えば、テフロン(登録商標)、フッ素樹脂、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)製である。アミンガスは水に溶解し易い。水分検知・除去装置240は、ダクト214内のガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の水分を検知し除去することで、アミンガスがダクト220内の水分に吸収されてアミンガスセンサ220に届かないという問題を防止する。ガス濃縮装置242は、排便ガスに含まれるアミンガスを収集して蓄積した上でこれを一気に高濃度で放出してアミンガスセンサ220に供給することで、アミンガスの検知性能を向上させる。
【0030】
図4は、水分検知・除去装置240及びガス濃縮装置242の構成例を概略的に示している。
【0031】
図4に示された構成例では、水分検知・除去装置240の水分検知装置244と水分除去装置246はいずれも、ダクト214の内側面に沿ってコイル状に巻かれてガス吸入口212からガス濃縮装置242の近くまで伸びているコイルバネ形の電線から構成される。水分検知装置244は、図4では1本の電線がコイルバネ形に巻かれたもののように示されているが、そうではなく、微小な間隔を開けて平行配置された2本の裸電線がコイルバネ形に巻かれたものである。水分検知装置244は、この2本の裸電線間に水滴が付くと電流が流れるという原理で、水分を検知するようになっている。水分除去装置246は、電熱線がコイルバネ形に巻かれたものであり、水分検知装置244のコイルバネの隙間に配置されている。水分除去装置240は、その電熱線の発熱で水分を蒸発させるようになっている。変形例として、水分除去装置246に代えて又はこれと併用して、ガス吸入装置210のファン216を逆回転させてファン216からの風をダクト214内面に吹き付けることで水分除去を行うようにしてもよい(つまり、ファン216が水分除去装置として働く)。水分検知装置244も水分除去装置246も、制御装置232により駆動され制御される。
【0032】
ガス濃縮装置242は、図4に示すように、ダクト214の断面領域全域にわたって配置された空気通過性をもつフィルタ板様のものであり、その空気が通過する領域の全域に、特定条件下ではアミンガスを吸着するとともに別の特定条件下では吸着したガスを離脱させることができるガス吸着材料、例えば活性炭素を担持している。ガス濃縮装置242は、これに担持された活性炭素を加熱するためのヒータを有している。ガス濃縮装置242では、ヒータがオフのときには、活性炭素がアミンガスを吸着して蓄積し、一方、ヒータがオンのときには、活性炭素が所定温度以上の高温状態となり、蓄積したアミンガスを一気に離脱させて外へ放出する。放出されたアミンガスは、ダクト214を流れる風よりアミンガスセンサ220の方へ運ばれることになる。
【0033】
アミンガスセンサ220は、例えば200℃から400℃程度の高温状態のときにアミンガスに対する感度がもっと良い。アミンガスセンサ220は、これを上記最適温度にするためのヒータ(図示省略)を有しており、このヒータは制御装置220により駆動され制御される。
【0034】
上述したガス吸入装置210のガス吸入口212には、便槽302の洗浄やユーザ身体の洗浄などで飛散する水滴がダクト214内に進入しないようにするための水進入阻止板が取り付けられる。図5は水進入阻止板248の構造例を示す。図5(A)又は(B)に示す例では、水進入阻止板248はルーバのようなものであるが、これ以外の構成、例えば網板などであってもよい。
【0035】
図6は、誘導風装置224の作用を示している。
【0036】
図6に示すように、誘導風装置224は便座204の前方部分の底面から便槽内空間304へ下方且つ後方へ誘導風254を噴出する。便槽内空間304の空気は、誘導風254に押されて、矢印256に示すように空間304の後部に配置されたガス吸入口212の方へ導かれる。これにより、排便時に人体から便槽内空間304へ排出される排便ガス、及び、排泄された便252それ自体から蒸発する排便ガスを、ガス吸入装置210に集めることができる。
【0037】
図7は、上述した便潜血検知装置200の制御装置232が行う制御動作の一例を示す。
【0038】
図7に示すように、人体検知センサ222によりユーザのトイレ室へ入室が検知されると、アミンセンサ220のヒータがターンオンされてアミンセンサ220が最適温度になるよう加熱される。同時に、ガス吸入装置210のファン216が正回転を開始して、便槽内の空気の吸い込みを開始する。その後、着座センサによりユーザの便座204への着座が検知されると、誘導風装置224が起動して、誘導風を便槽内へ送風を開始する。その後、排便が行われる。排便ガスは誘導風によりガス吸入口212へ導かれガス吸入装置210に吸入されてガス濃縮装置242に捕集される。
【0039】
排便が終了すると、ユーザはリモートコンロトーラ206を操作して検査開始を指示する。すると、誘導風装置224が停止し、ガス濃縮装置242のヒータがターンオンされる。これにより、ガス濃縮装置242からダクト214内に濃縮されたアミンガスが放出され、アミンガスセンサ220に供給される。アミンガスセンサ220はアミンガス濃度に応じたレベルの電気信号を出力し、制御装置232はその電気信号のレベルから便潜血の有無を判断する。制御装置232の判断結果は、リモートコントローラ206に送られて表示スクリーン236に表示される。
【0040】
その後、ガス吸入装置210のファン216が停止し、水分検知装置244が起動する。便器洗浄やユーザ局部の洗浄などが行われている間、水分検知装置244が動作している。起動水分検知装置244により水分が検知されると、水分除去装置246が起動して水分を除去する(ガス吸入用のファン216を水分除去装置として用いる場合には、それを逆回転させる)。その後、ユーザの離座が着座センサにより検知され、続いてユーザのトイレ室からの退出が人体検知センサ222により検知される。すると、水分検知装置244と水分除去装置246が停止される(或いは、ユーザの離座又は退出後、水分除去に要するある程度の時間が経過してから停止するようにしてもよい)。
【0041】
図8は、制御装置232が行う制御動作の変形例を示す。
【0042】
図8に示された制御動作において、図示されていない人体検知センサ222、誘導風装置224及びガス濃縮装置242の動作は、図7に示した制御動作と同じである。また、アミンセンサ220の動作も同じである。図7に示した制御動作と異なる点は、水分検知装置244、水分除去装置246及び便器洗浄装置209の動作である。すなわち、アミンガスの検知が終了しそしてユーザの離座が検出されると、便器洗浄装置209が起動されて便槽内を洗浄する。この便器洗浄が行われた直後に、水分検知装置244が起動し、それにより水分が検知されると、水分除去装置246が動作して、水分検知装置244による水分が検出されなくなるまで水分を除去する。
【0043】
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる便潜血検知装置400を示す斜視図である。図10は、この便潜血検知装置400の内部構成を示す断面図である。図11は、この便潜血検知装置400の平面図である。
【0044】
図9,10に示すように、便潜血検知装置400は、便器の便槽302の上縁部の後部の適当箇所(つまり、ユーザの肛門の位置と前後方向において対応する箇所)に、便槽302の上縁部を跨ぐようにして取り付けられる。図10に良く示されるように、便潜血検知装置400は、便槽302の外側に配置される本体402と、本体402に接続されて便槽302の上縁部に跨るフック部404とを有する。フック部404は、それと本体402との間に便槽302の上縁部を挟むことで、便潜血検知装置400を便槽302に対して固定する。フック部404は、便槽302内で下方にたれ下がり、その前端部は便槽302内のトラップ水250の水面近傍の低い高さに位置する。フック部404の前端部には、ガス吸入口420が開いており、そこには、既に説明したような水浸入阻止板422が取り付けられている。フック部404内部には、ガス吸入口420に繋がるダクト406が形成されており、このダクト406はフック部404内を通り、本体402内のダクト407に連通する。ダクト406内の水分が進入する可能性のあるガス吸入口420に近い箇所には、既に説明したような水分検知装置と水分除去装置を備えた水分検知・除去装置423が設けられている。
【0045】
本体402内のダクト407内には、アミンガスセンサ408が取り付けられている。このダクト407の下流側末端には、検知実行時に便槽302内の排便ガスをガス吸入口422から吸入するためのガス吸入ファン410と、検知終了後にダクト407内の残存アミンガスや水分を除去するためのクリーニングファン414とが結合されている。なお、クリーニングファン414は無くても良く、ガス吸入ファン410をクリーニングファンとしても利用するようにしても良い。さらに、本体402内には、上述した各部と電気的に接続され、それらを制御したり、また、アミンガスセンサ408から電気信号を処理して便潜血の有無を判断したりする制御装置416が設けられている。
【0046】
また、本体402の上面には、制御装置416に電気的に接続されたコントロールパネル418が設けられている。図11に良く示されているように、コントロールパネル418には、複数の操作ボタン424と、表示スクリーン426とが設けられている。操作ボタン424には、便潜血検知装置400に検知開始を指示するための開始ボタンや、検査終了を指示するための終了ボタンなどが含まれる。表示スクリーン426は、便潜血検知結果の表示に用いられる。
【0047】
図10に矢印で示されているように、ガス吸入ファン410が正回転すると、便槽302内の空気がガス吸入口420から吸入され、ダクト406、407を順に通り、脱臭装置412を通って外気へ排出される。空気がダクト407内を通るとき、それに含まれるアミンガスがアミンガスセンサ408により検出される。ガス吸入口420がトラップ水250の水面近傍に位置するので、人体から排出された排便ガス及び便槽302内に落ちた便自体から蒸発する排便ガスを吸入し易い。また、アミンは分子量が大きく空気より比重が大きいため、排便直後に便槽302の底部つまりトラップ水250の水面付近に溜まり易く、よって、トラップ水250の水面近傍に位置するガス吸入口420から吸入され易い。
【0048】
図12は、この便潜血検知装置400において制御装置416が行う制御動作の一例を示す。
【0049】
図12に示すように、ユーザが排便開始前に開始ボタンを押すと、アミンガスセンサ408のヒータがターンオンしてアミンガスセンサ408を最適温度にする。同時に、ガス吸入ファン410が正回転を開始して、便槽302内の空気の吸入を開始する。続いて排便が行われると、排便ガスが便潜血検知装置400内に吸入され、それに含まれるアミンガスの濃度に応じたレベルの電気信号がアミンガスセンサ408から出力され、制御装置416がその信号のレベルから便潜血の有無を判断し、その判断結果を表示スクリーン426に表示する。
【0050】
排便が終了してユーザが終了ボタンを押すと、アミンガスセンサ408とガス吸入ファン410はターンオフし、続いて、水分検知・除去装置423の水分検知装置が動作を開始する。水分検知・除去装置423の動作の継続時間は、少なくとも、局部洗浄や便器洗浄が行われる通常の時間長程度はある。水分検知装置により水分が検出されると、水分除去装置が起動して水分を除去する。また、水分検知・除去装置423の動作後又はこれと並行して、クリーニングファン414が動作して、ダクト406,407内から残存ガスを排除して清浄な空気と入れ替える。
【0051】
図13(A)、(B)、(C)は、それぞれ、本発明の第3の実施形態にかかる便潜血検知装置500の外観を示す正面図、側面図及び背面図である。図14は、便潜血検知装置500の内部構成を示す斜視図である。図15は、便潜血検知装置500の使用方法の一例を示す。
【0052】
図13に示された便潜血検知装置500は、ユーザが携帯できる小型のものであり、本体502と、本体502から伸び出た細長チューブ状のダクト504を有する。本体502の前面には、開始ボタン508、終了ボタン510及び表示スクリーン512などが設けられている。本体502の背面には、この便潜血検知装置500を便器上の便座装置に固定するための固定補助板506が取り付けられている。この便潜血検知装置500を使用するときには、例えば図15に示すように、便潜血検知装置500はユーザ604の腰の背後に置かれ、ダクト504がユーザの臀部と便座602との間の隙間を通って便槽内空間304に突き出て、ダクト504の先端(図14に示すガス吸入口514)がちょうとユーザの肛門の直ぐ後ろに位置するようになる。その際、図13に示した固定補助板506の先端が、例えば便座装置の本体600と便座602との間の細い隙間に差し込まれることにより、便潜血検知装置500がガタつかないように安定して固定される。
【0053】
図14に示すように、便潜血検知装置500のダクト504の先端部はガス吸入口514であり、このダクト504は本体502内のダクト518に連通する。ダクト504内には、前述したような構造の水分検知装置516が組み込まれている。本体502内のダクト518内にはアミンガスセンサ520が取り付けられている。ダクト518には、ガス吸入ファン522が結合されており、ガス吸入ファン522の排気口には脱臭装置524が接続されている。さらに、本体502内には、上述した各部を制御し、且つ、アミンガスセンサ520からの信号を処理して便潜血の有無を判断する制御装置526や、これらに電力を供給する電池528なども組み込まれている。
【0054】
図16は、制御装置526が行う制御動作の一例を示す。
【0055】
図16に示すように、ユーザが排便開始前に開始ボタン508を押すと、アミンガスセンサ520のヒータがターンオンしてアミンガスセンサ520を最適温度にする。同時に、ガス吸入ファン522が正回転を開始して、便槽302内の空気の吸入を開始する。続いて排便が行われると、排便ガスが便潜血検知装置500内に吸入され、それに含まれるアミンガスの濃度に応じたレベルの電気信号がアミンガスセンサ520から出力され、制御装置526がその信号のレベルから便潜血の有無を判断し、その判断結果を表示スクリーン512に表示する。
【0056】
排便が終了してユーザが終了ボタンを押すと、アミンガスセンサ520とガス吸入ファン522はターンオフし、続いて、水分検知装置516が動作を開始する。水分検知装置516によりダクト504内の水分が検出されると、ガス吸入ファン522が逆回転を開始して風をダクト504に送り、ダクト504内の水分を除去する。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】腸壁から出血があった場合に大腸内で生じると推測される現象を示す説明図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる便潜血検知装置200の構成を示す斜視図。
【図3】ガス吸入装置210の構成を示す斜視図。
【図4】水分検知装置と水分除去装置とガス濃縮装置の概略構成と配置を示す説明図。
【図5】ガス吸入口202に設けられる水進入阻止板248の構成例を示す断面図。
【図6】誘導風装置224の作用を説明する断面図。
【図7】制御装置232が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【図8】制御装置232が行う制御動作の変形例を示すタイミングチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる便潜血検知装置400の外観を示す斜視図。
【図10】便潜血検知装置400の内部構成を示す断面図。
【図11】便潜血検知装置400の平面図。
【図12】制御装置416が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる便潜血検知装置500の外観を示す正面図、側面図及び背面図。
【図14】便潜血検知装置500の内部構成を示す斜視図。
【図15】便潜血検知装置500の使用方法の例を示す説明図。
【図16】制御装置526が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0059】
200,400,500:便潜血検知装置、209:便器洗浄装置、212,420:ガス吸入口、214,406,407,504,518:ダクト、210:ガス吸入装置、216,410,522:ガス吸入ファン、218,412,524:脱臭装置、220,408,520:アミンガスセンサ、224:誘導風装置、238:シール体、240,423:水分検知・除去装置、242:ガス濃縮装置、244,516:水分検知装置、246:水分除去装置、248,422:水進入阻止板
【技術分野】
【0001】
本発明は、便に混じる潜血を自動的に検知する方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便中潜血の検出は、大腸癌などの大腸疾患の発見に有効である。これを家庭で簡単に行うための装置又は道具として、特許文献1及び非特許文献1などに開示のものが知られている。特許文献1に記載の検査装置は、生体から排泄された便を自動的に採取し、これを液体で希釈し、その希釈液を反応容器に入れて潜血を検出する。非特許文献1に記載の製品は、潜血と化学反応する薬剤を含んだ紙シート様のもので、排便された便槽内のトラップ水面にそれを浮かべることで使用される。
【0003】
【特許文献1】特開平10−260182号公報
【非特許文献1】http://poesie.hp.infoseek.co.jp/EZDetect.htm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の便潜血検査用の装置又は道具は、いずれも、便又は便溶液に直接接触して便潜血を検出するという湿式のものである。そのため、特許文献1に記載の装置では、便や便溶液に直接接触する部品の洗浄などのメンテナンスが、検査を行う都度に必要である。また、非特許文献1に記載の道具は使い捨てである。
【0005】
本発明の目的は、便又は便溶液に装置が直接接触することなしに便潜血を検出できる、乾式の便潜血検知方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、便潜血が観察される場合には、排便と共にアミンガスが肛門から排出されるという新規な知見に基づいている。
【0007】
本発明の一つの観点に従う便潜血検知方法は、排便ガスからアミンガスを検出するステップと、アミンガスの検出結果に応じて便潜血の有無を判断するステップとを備える。
【0008】
本発明の別の観点に従う便潜血検知装置は、排便ガス中のアミンガスを検出するガスセンサと、前記ガスセンサを制御し、前記ガスセンサの出力信号を受けて便潜血の有無を判断する制御装置とを備える。
【0009】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、ガス吸入口と、前記ガス吸入口に結合されたダクトとを有し、排便ガスを前記ガス吸入口から前記ダクト内へ吸入するガス吸入装置を更に備え、前記ガスセンサが前記ダクト内に配置される。
この実施形態にかかる便潜血検知装置は、便器に取り付けられ、前記ガス吸入装置の前記ガス吸入口が、前記便器の便槽内に配置される。前記ガス吸入口は例えば前記便槽内の後部に配置される。また、前記ガス吸入口は、前記便槽内の便座近傍の高さに配置されるか、または、便槽内のトラップ水面近傍の高さに配置される。いすれの配置においても、ガス吸入口がユーザの肛門又は排泄された便の近くに位置することになるので、便槽内の排便ガスを効果的に吸入できる。
【0010】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記便槽内の空気を前記吸入口へ導くような誘導風を前記便槽内に発生させる誘導風装置を更に備える。これにより、排便ガスの吸入性能は一層良くなる。
【0011】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間から水分を除去するための水分除去装置を更に備える。これにより、水溶性の高いアミンガスがガスセンサに到達する前にダクト内の水分に吸収されてしまう問題を抑制できる。
【0012】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に存在する水分を検知する水分検知装置を更に備え、前記水分除去装置が、前記水分検知装置に応答して動作するようになっている。
【0013】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に配置され、そこを通る排便ガスからアミンガスを捕集して蓄積し、そして、蓄積されたアミンガスを放出するガス濃縮装置を更に備える。これにより、アミンガスの検出性能が向上する。
【0014】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ガス吸入口により吸入された排便ガス中のアミンガスを含む臭気成分を、外気に戻さないために分解又は除去する脱臭装置を更に備える。
【0015】
便器が腰掛式便器の場合、便槽と便座との間の隙間を塞ぐ便座シールが更に備えられてもよい。これにより、排便ガスの吸入性能は一層良くなる。
【0016】
好適な一実施形態にかかる便潜血検知装置は、前記ガスセンサによる検出が行われた後に、前記便槽に洗浄水を流す又は前記便器に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる便器洗浄装置を更に備える。これにより、排便ガスの吸入が終了する前に便器洗浄が行われることが防止されるので、検知に必要な量の排便ガスを吸入することが容易になる。
【0017】
本発明に従う便潜血検知装置は様々な形態、例えば、人の局部を洗浄するための衛生洗浄装置を組み込んだ便座装置形の形態や、便器の一部として便器に一体的に組み込まれた形態や、携帯可能な小型装置の形態や、便槽に引っ掛けて使用される便器付属装置的な形態などで、実施することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、便又は便溶液に装置が直接接触することなしに乾式の方法で便潜血を検出できる。従来の湿式の装置又は道具に比べると、部品の洗浄などのメンテナンスの必要性は大幅に低下し、使い捨ての部品が無いから長期間継続して使え、また、便に触れる部品も無いから衛生的でもある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
便潜血の主原因は腸内出血である。図1は、腸内出血が発生した場合に大腸内で生じると推測される現象を示す。
【0020】
図1(A)に示すように、腸管からの出血で大腸100内に血液(=蛋白質(NHCHRnCOOH))102が出たとする。血液102は消化物と共に大腸100内を下流に運ばれていく。まず、図1(B)に示すように、蛋白質分解菌(例えば、プロテウス、クレブシーラ、バクテロイデス、クロストリディウム等)104が増殖し、血液102を盛んに分解し始める。それにより、図1(C)に示すように、血液102の少なくとも一部はアミノ酸(R-CHNH2-COOH)106に分解され、さらに分解が進むことで、図1(D)に示すように、アミノ酸106からアミン(R-CH2NH2)108へと分解される。結果的に、図1(E)に示すように、大腸100の終端部のS字結腸や直腸に到達する頃には、健常時よりも大量のアミン108が生成される。排便時には、便と一緒にアミンガスが排出される。因みに、口から摂取された食物の蛋白質は、小腸において十分に分解、吸収されるため、大腸内でのアミン発生の原因にはならない。健常時には、便と共に排出されるガス(この明細書では排便ガスという)には、窒素、二酸化炭素、水素、メタン、アンモニアなどが含まれるが、アミンガスは実質的に含まれない。排便ガスにある程度の量のアミンガスが含まれていた場合、これは便潜血が検出されたことと実質的に同等の意味をもつ。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態にかかる便潜血検知装置の構成を示す。
【0022】
図2に示すように、便潜血検知装置200は、腰掛式の便器300の便槽302の後端部上に固定された本体202と、この本体202に蝶番を介して開閉自在に取り付けられて便槽302の上縁部全体上に載るようになった便座204と、これらとは離れた場所に配置されるリモートコントローラ206とを備える。便潜血検知装置200には、便潜血を検知するための各種装置の他に、洗浄ノズル208から温水を噴出してユーザの局部を洗浄するための局部洗浄装置(その詳細は図示省略)も組み込まれている。さらに、便潜血検知装置200には、便槽302を洗浄するために便槽302内に水を流す(又は、便器300に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる)便器洗浄装置209も組み込まれている。局部洗浄装置それ自体の構成及び便器洗浄起動装置それ自体の構成には、それぞれ公知の構成が採用可能である。
【0023】
便潜血検知装置200の本体202には、排便時に便槽内空間304の空気を吸入することで排便ガスを吸入するガス吸入装置210が組み込まれている。ガス吸入装置210は、ガス吸入口212と、ガス吸入口212に繋がったダクト214と、ダクト214に結合されたファン216と、ファン216の排気口に接続された脱臭装置218とを有する。ガス吸入口212は、便槽内空間304内の所定位置、例えば便槽内空間304の後部の便座204近傍の高さの位置(この位置は、ユーザの肛門に近いので排便ガスを吸入し易い)に配置される。排便時にファン216が正回転すると、便槽内空間304の排便ガスがガス吸入口212からダクト214内に吸入され、ダクト214を通り、脱臭装置218を通って外気へ排出される。ダクト214内には、排便ガスに含まれるアミンガスを検出するためのアミンガスセンサ220が取り付けられている。アミンガスセンサ220は、そこを通る空気に含まれるアミンガスに応答して、そのアミンガスの濃度に応じた電気信号を出力する。ダクト214内のガス吸入口212からアミンガスセンサ220までの区間には、図2には示されていない水分検知装置、水分除去装置及びガス濃縮装置なども配置されているが、これらについては後に説明する。脱臭装置218は、排便ガスに含まれるアミンガスやその他の臭気成分を分解又は除去して、出来るだけ臭気成分が外気に出ないようにする。
【0024】
便潜血検知装置200には、また、便槽内空間304中の空気を上述したガス吸入装置210のガス吸入口212の方へ導くために誘導風を便槽内空間304中に発生させるための誘導風装置224が組み込まれている。誘導風装置224は、本体202の外壁に設けられた外気吸入口226と、本体202内に配置され外気吸入口226から外気を吸入するファン228と、便座204内に設けられ便座204が使用位置にある時にファン228の排気口に繋がるダクト230とを有する。ダクト230は、便座204内をその後端部から前端部まで、便槽302の上縁部に沿って伸びている。ダクト230は、便座204の後端部に位置する部分にて、ファン228の排気口に接続するようになっている。便座204の少なくとも前端部の底面には、その内部のダクト230から便槽内空間304へ通じる1又は複数の図示しない排気口が開けられている。ファン228が回転すると、外気が外気吸入口226から吸入され、ダクト230を通り、上述した便座204の底面の排気口から、上記誘導風として下方且つ後方へ向かって便槽内空間304へ噴出する。なお、上記排気口は、便座の前端部だけでなく、左右の両側部にも設けられてよい。
【0025】
便潜血検知装置200の本体202には、さらに、トイレ室内に入ってきたユーザを検知するための人体検知センサ222や、ユーザの便座204への着座を検知する着座センサ(図示せず)や、便潜血検知装置200内の上述し各部と接続されてそれらを制御するための制御装置232が組み込まれている。制御装置232は、便潜血検知装置200の各部を制御する機能だけでなく、アミンガスセンサ220からの電気信号を受けて、その電気信号を処理して、便潜血の有無、すなわち、排便ガス中に所定程度以上の量又は濃度のアミンガスが含まれていたか否か、を判断する機能も有する。この判断のための処理方法としては、例えば、アミンガスセンサ220からの電気信号(例えば電圧信号)のレベル(例えば、排便直後を含む所定時間区間におけるピークレベル、平均レベル或いはレベルの時間積分値など)を所定の閾値と比較し、その結果、上記レベルが上記閾値以上であれば便潜血有り、上記閾値未満であれば便潜血無しと判定するというような方法が採用できる。
【0026】
制御装置232は、また、リモートコントローラ206と、赤外線や電波などを用いた無線通信により相互通信可能である。リモートコントローラ206は、複数の操作ボタン234と表示スクリーン236とを、その前面パネル上に有する。複数の操作ボタン234は、便潜血検知装置200がもつ上述した便潜血検知機能、局部洗浄機能及び便器洗浄機能を操作するために用いられる。例えば、或る操作ボタン234は、便潜血の検知動作を開始するための開始ボタンとして用いられる。表示スクリーン236は、上述した便潜血検知機能、局部洗浄機能及び便器洗浄機能に関わる各種の情報を表示するために用いられる。例えば、便潜血の検知動作が完了すると、制御装置232からリモートコントローラ206に便潜血の検知結果が送信され、その検知結果が表示スクリーン236に表示される。
【0027】
便座204の下面には、便座204の下面と便槽302の上縁面との間の隙間をほぼ完全に塞ぐための弾力性のあるシール体238が取り付けられている。このシール体238は、上述したガス吸入装置210が便槽内空間304内の排便ガスを吸引するときに、外気が上記隙間から便槽内空間304に入ったり、排便ガスが上記隙間から外へ逃げたりすることを防ぎ、それにより、排便ガスのできるだけ大部分がガス吸入装置210に吸入されるようにする役割をもつ。
【0028】
図3は、上述したガス吸入装置210の構成をより詳細に示す。
【0029】
図3に示すように、ガス吸入装置210のダクト214内の、ガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の区間には、水分検知・除去装置240とガス濃縮装置242が設けられる。水分検知・除去装置240は、ガス濃縮装置242よりも、ガス吸入口212に近い位置(上流側)に配置される。水分検知・除去装置240は、水分を検知する水分検知装置と、水分を除去する水分除去装置とを有する。ガス濃縮装置242は、そこを通る空気からアミンガスを捕集して蓄積し、そして、所望の時点で蓄積されたアミンガスを離脱させて放出するものである。ダクト214の内側面は、少なくともガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の区間においては、ガス吸着性の少ない材料(例えば、テフロン(登録商標)、フッ素樹脂、ステンレス鋼、ポリプロピレン、ポリエチレンなど)製である。アミンガスは水に溶解し易い。水分検知・除去装置240は、ダクト214内のガス吸入口212とアミンガスセンサ220との間の水分を検知し除去することで、アミンガスがダクト220内の水分に吸収されてアミンガスセンサ220に届かないという問題を防止する。ガス濃縮装置242は、排便ガスに含まれるアミンガスを収集して蓄積した上でこれを一気に高濃度で放出してアミンガスセンサ220に供給することで、アミンガスの検知性能を向上させる。
【0030】
図4は、水分検知・除去装置240及びガス濃縮装置242の構成例を概略的に示している。
【0031】
図4に示された構成例では、水分検知・除去装置240の水分検知装置244と水分除去装置246はいずれも、ダクト214の内側面に沿ってコイル状に巻かれてガス吸入口212からガス濃縮装置242の近くまで伸びているコイルバネ形の電線から構成される。水分検知装置244は、図4では1本の電線がコイルバネ形に巻かれたもののように示されているが、そうではなく、微小な間隔を開けて平行配置された2本の裸電線がコイルバネ形に巻かれたものである。水分検知装置244は、この2本の裸電線間に水滴が付くと電流が流れるという原理で、水分を検知するようになっている。水分除去装置246は、電熱線がコイルバネ形に巻かれたものであり、水分検知装置244のコイルバネの隙間に配置されている。水分除去装置240は、その電熱線の発熱で水分を蒸発させるようになっている。変形例として、水分除去装置246に代えて又はこれと併用して、ガス吸入装置210のファン216を逆回転させてファン216からの風をダクト214内面に吹き付けることで水分除去を行うようにしてもよい(つまり、ファン216が水分除去装置として働く)。水分検知装置244も水分除去装置246も、制御装置232により駆動され制御される。
【0032】
ガス濃縮装置242は、図4に示すように、ダクト214の断面領域全域にわたって配置された空気通過性をもつフィルタ板様のものであり、その空気が通過する領域の全域に、特定条件下ではアミンガスを吸着するとともに別の特定条件下では吸着したガスを離脱させることができるガス吸着材料、例えば活性炭素を担持している。ガス濃縮装置242は、これに担持された活性炭素を加熱するためのヒータを有している。ガス濃縮装置242では、ヒータがオフのときには、活性炭素がアミンガスを吸着して蓄積し、一方、ヒータがオンのときには、活性炭素が所定温度以上の高温状態となり、蓄積したアミンガスを一気に離脱させて外へ放出する。放出されたアミンガスは、ダクト214を流れる風よりアミンガスセンサ220の方へ運ばれることになる。
【0033】
アミンガスセンサ220は、例えば200℃から400℃程度の高温状態のときにアミンガスに対する感度がもっと良い。アミンガスセンサ220は、これを上記最適温度にするためのヒータ(図示省略)を有しており、このヒータは制御装置220により駆動され制御される。
【0034】
上述したガス吸入装置210のガス吸入口212には、便槽302の洗浄やユーザ身体の洗浄などで飛散する水滴がダクト214内に進入しないようにするための水進入阻止板が取り付けられる。図5は水進入阻止板248の構造例を示す。図5(A)又は(B)に示す例では、水進入阻止板248はルーバのようなものであるが、これ以外の構成、例えば網板などであってもよい。
【0035】
図6は、誘導風装置224の作用を示している。
【0036】
図6に示すように、誘導風装置224は便座204の前方部分の底面から便槽内空間304へ下方且つ後方へ誘導風254を噴出する。便槽内空間304の空気は、誘導風254に押されて、矢印256に示すように空間304の後部に配置されたガス吸入口212の方へ導かれる。これにより、排便時に人体から便槽内空間304へ排出される排便ガス、及び、排泄された便252それ自体から蒸発する排便ガスを、ガス吸入装置210に集めることができる。
【0037】
図7は、上述した便潜血検知装置200の制御装置232が行う制御動作の一例を示す。
【0038】
図7に示すように、人体検知センサ222によりユーザのトイレ室へ入室が検知されると、アミンセンサ220のヒータがターンオンされてアミンセンサ220が最適温度になるよう加熱される。同時に、ガス吸入装置210のファン216が正回転を開始して、便槽内の空気の吸い込みを開始する。その後、着座センサによりユーザの便座204への着座が検知されると、誘導風装置224が起動して、誘導風を便槽内へ送風を開始する。その後、排便が行われる。排便ガスは誘導風によりガス吸入口212へ導かれガス吸入装置210に吸入されてガス濃縮装置242に捕集される。
【0039】
排便が終了すると、ユーザはリモートコンロトーラ206を操作して検査開始を指示する。すると、誘導風装置224が停止し、ガス濃縮装置242のヒータがターンオンされる。これにより、ガス濃縮装置242からダクト214内に濃縮されたアミンガスが放出され、アミンガスセンサ220に供給される。アミンガスセンサ220はアミンガス濃度に応じたレベルの電気信号を出力し、制御装置232はその電気信号のレベルから便潜血の有無を判断する。制御装置232の判断結果は、リモートコントローラ206に送られて表示スクリーン236に表示される。
【0040】
その後、ガス吸入装置210のファン216が停止し、水分検知装置244が起動する。便器洗浄やユーザ局部の洗浄などが行われている間、水分検知装置244が動作している。起動水分検知装置244により水分が検知されると、水分除去装置246が起動して水分を除去する(ガス吸入用のファン216を水分除去装置として用いる場合には、それを逆回転させる)。その後、ユーザの離座が着座センサにより検知され、続いてユーザのトイレ室からの退出が人体検知センサ222により検知される。すると、水分検知装置244と水分除去装置246が停止される(或いは、ユーザの離座又は退出後、水分除去に要するある程度の時間が経過してから停止するようにしてもよい)。
【0041】
図8は、制御装置232が行う制御動作の変形例を示す。
【0042】
図8に示された制御動作において、図示されていない人体検知センサ222、誘導風装置224及びガス濃縮装置242の動作は、図7に示した制御動作と同じである。また、アミンセンサ220の動作も同じである。図7に示した制御動作と異なる点は、水分検知装置244、水分除去装置246及び便器洗浄装置209の動作である。すなわち、アミンガスの検知が終了しそしてユーザの離座が検出されると、便器洗浄装置209が起動されて便槽内を洗浄する。この便器洗浄が行われた直後に、水分検知装置244が起動し、それにより水分が検知されると、水分除去装置246が動作して、水分検知装置244による水分が検出されなくなるまで水分を除去する。
【0043】
図9は、本発明の第2の実施形態にかかる便潜血検知装置400を示す斜視図である。図10は、この便潜血検知装置400の内部構成を示す断面図である。図11は、この便潜血検知装置400の平面図である。
【0044】
図9,10に示すように、便潜血検知装置400は、便器の便槽302の上縁部の後部の適当箇所(つまり、ユーザの肛門の位置と前後方向において対応する箇所)に、便槽302の上縁部を跨ぐようにして取り付けられる。図10に良く示されるように、便潜血検知装置400は、便槽302の外側に配置される本体402と、本体402に接続されて便槽302の上縁部に跨るフック部404とを有する。フック部404は、それと本体402との間に便槽302の上縁部を挟むことで、便潜血検知装置400を便槽302に対して固定する。フック部404は、便槽302内で下方にたれ下がり、その前端部は便槽302内のトラップ水250の水面近傍の低い高さに位置する。フック部404の前端部には、ガス吸入口420が開いており、そこには、既に説明したような水浸入阻止板422が取り付けられている。フック部404内部には、ガス吸入口420に繋がるダクト406が形成されており、このダクト406はフック部404内を通り、本体402内のダクト407に連通する。ダクト406内の水分が進入する可能性のあるガス吸入口420に近い箇所には、既に説明したような水分検知装置と水分除去装置を備えた水分検知・除去装置423が設けられている。
【0045】
本体402内のダクト407内には、アミンガスセンサ408が取り付けられている。このダクト407の下流側末端には、検知実行時に便槽302内の排便ガスをガス吸入口422から吸入するためのガス吸入ファン410と、検知終了後にダクト407内の残存アミンガスや水分を除去するためのクリーニングファン414とが結合されている。なお、クリーニングファン414は無くても良く、ガス吸入ファン410をクリーニングファンとしても利用するようにしても良い。さらに、本体402内には、上述した各部と電気的に接続され、それらを制御したり、また、アミンガスセンサ408から電気信号を処理して便潜血の有無を判断したりする制御装置416が設けられている。
【0046】
また、本体402の上面には、制御装置416に電気的に接続されたコントロールパネル418が設けられている。図11に良く示されているように、コントロールパネル418には、複数の操作ボタン424と、表示スクリーン426とが設けられている。操作ボタン424には、便潜血検知装置400に検知開始を指示するための開始ボタンや、検査終了を指示するための終了ボタンなどが含まれる。表示スクリーン426は、便潜血検知結果の表示に用いられる。
【0047】
図10に矢印で示されているように、ガス吸入ファン410が正回転すると、便槽302内の空気がガス吸入口420から吸入され、ダクト406、407を順に通り、脱臭装置412を通って外気へ排出される。空気がダクト407内を通るとき、それに含まれるアミンガスがアミンガスセンサ408により検出される。ガス吸入口420がトラップ水250の水面近傍に位置するので、人体から排出された排便ガス及び便槽302内に落ちた便自体から蒸発する排便ガスを吸入し易い。また、アミンは分子量が大きく空気より比重が大きいため、排便直後に便槽302の底部つまりトラップ水250の水面付近に溜まり易く、よって、トラップ水250の水面近傍に位置するガス吸入口420から吸入され易い。
【0048】
図12は、この便潜血検知装置400において制御装置416が行う制御動作の一例を示す。
【0049】
図12に示すように、ユーザが排便開始前に開始ボタンを押すと、アミンガスセンサ408のヒータがターンオンしてアミンガスセンサ408を最適温度にする。同時に、ガス吸入ファン410が正回転を開始して、便槽302内の空気の吸入を開始する。続いて排便が行われると、排便ガスが便潜血検知装置400内に吸入され、それに含まれるアミンガスの濃度に応じたレベルの電気信号がアミンガスセンサ408から出力され、制御装置416がその信号のレベルから便潜血の有無を判断し、その判断結果を表示スクリーン426に表示する。
【0050】
排便が終了してユーザが終了ボタンを押すと、アミンガスセンサ408とガス吸入ファン410はターンオフし、続いて、水分検知・除去装置423の水分検知装置が動作を開始する。水分検知・除去装置423の動作の継続時間は、少なくとも、局部洗浄や便器洗浄が行われる通常の時間長程度はある。水分検知装置により水分が検出されると、水分除去装置が起動して水分を除去する。また、水分検知・除去装置423の動作後又はこれと並行して、クリーニングファン414が動作して、ダクト406,407内から残存ガスを排除して清浄な空気と入れ替える。
【0051】
図13(A)、(B)、(C)は、それぞれ、本発明の第3の実施形態にかかる便潜血検知装置500の外観を示す正面図、側面図及び背面図である。図14は、便潜血検知装置500の内部構成を示す斜視図である。図15は、便潜血検知装置500の使用方法の一例を示す。
【0052】
図13に示された便潜血検知装置500は、ユーザが携帯できる小型のものであり、本体502と、本体502から伸び出た細長チューブ状のダクト504を有する。本体502の前面には、開始ボタン508、終了ボタン510及び表示スクリーン512などが設けられている。本体502の背面には、この便潜血検知装置500を便器上の便座装置に固定するための固定補助板506が取り付けられている。この便潜血検知装置500を使用するときには、例えば図15に示すように、便潜血検知装置500はユーザ604の腰の背後に置かれ、ダクト504がユーザの臀部と便座602との間の隙間を通って便槽内空間304に突き出て、ダクト504の先端(図14に示すガス吸入口514)がちょうとユーザの肛門の直ぐ後ろに位置するようになる。その際、図13に示した固定補助板506の先端が、例えば便座装置の本体600と便座602との間の細い隙間に差し込まれることにより、便潜血検知装置500がガタつかないように安定して固定される。
【0053】
図14に示すように、便潜血検知装置500のダクト504の先端部はガス吸入口514であり、このダクト504は本体502内のダクト518に連通する。ダクト504内には、前述したような構造の水分検知装置516が組み込まれている。本体502内のダクト518内にはアミンガスセンサ520が取り付けられている。ダクト518には、ガス吸入ファン522が結合されており、ガス吸入ファン522の排気口には脱臭装置524が接続されている。さらに、本体502内には、上述した各部を制御し、且つ、アミンガスセンサ520からの信号を処理して便潜血の有無を判断する制御装置526や、これらに電力を供給する電池528なども組み込まれている。
【0054】
図16は、制御装置526が行う制御動作の一例を示す。
【0055】
図16に示すように、ユーザが排便開始前に開始ボタン508を押すと、アミンガスセンサ520のヒータがターンオンしてアミンガスセンサ520を最適温度にする。同時に、ガス吸入ファン522が正回転を開始して、便槽302内の空気の吸入を開始する。続いて排便が行われると、排便ガスが便潜血検知装置500内に吸入され、それに含まれるアミンガスの濃度に応じたレベルの電気信号がアミンガスセンサ520から出力され、制御装置526がその信号のレベルから便潜血の有無を判断し、その判断結果を表示スクリーン512に表示する。
【0056】
排便が終了してユーザが終了ボタンを押すと、アミンガスセンサ520とガス吸入ファン522はターンオフし、続いて、水分検知装置516が動作を開始する。水分検知装置516によりダクト504内の水分が検出されると、ガス吸入ファン522が逆回転を開始して風をダクト504に送り、ダクト504内の水分を除去する。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は本発明の説明のための例示にすぎず、本発明の範囲をこの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱することなく、その他の様々な態様でも実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】腸壁から出血があった場合に大腸内で生じると推測される現象を示す説明図。
【図2】本発明の一実施形態にかかる便潜血検知装置200の構成を示す斜視図。
【図3】ガス吸入装置210の構成を示す斜視図。
【図4】水分検知装置と水分除去装置とガス濃縮装置の概略構成と配置を示す説明図。
【図5】ガス吸入口202に設けられる水進入阻止板248の構成例を示す断面図。
【図6】誘導風装置224の作用を説明する断面図。
【図7】制御装置232が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【図8】制御装置232が行う制御動作の変形例を示すタイミングチャート。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかる便潜血検知装置400の外観を示す斜視図。
【図10】便潜血検知装置400の内部構成を示す断面図。
【図11】便潜血検知装置400の平面図。
【図12】制御装置416が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【図13】本発明の第3の実施形態にかかる便潜血検知装置500の外観を示す正面図、側面図及び背面図。
【図14】便潜血検知装置500の内部構成を示す斜視図。
【図15】便潜血検知装置500の使用方法の例を示す説明図。
【図16】制御装置526が行う制御動作の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0059】
200,400,500:便潜血検知装置、209:便器洗浄装置、212,420:ガス吸入口、214,406,407,504,518:ダクト、210:ガス吸入装置、216,410,522:ガス吸入ファン、218,412,524:脱臭装置、220,408,520:アミンガスセンサ、224:誘導風装置、238:シール体、240,423:水分検知・除去装置、242:ガス濃縮装置、244,516:水分検知装置、246:水分除去装置、248,422:水進入阻止板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排便ガスからアミンガスを検出するステップと、
アミンガスの検出結果に応じて便潜血の有無を判断するステップと
を備えた便潜血検知方法。
【請求項2】
排便ガス中のアミンガスを検出するガスセンサと、
前記ガスセンサを制御し、前記ガスセンサの出力信号を受けて便潜血の有無を判断する制御装置と
を備えた便潜血検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の便潜血検知装置において、
ガス吸入口と、前記ガス吸入口に結合されたダクトとを有し、排便ガスを前記ガス吸入口から前記ダクト内へ吸入するガス吸入装置を更に備え、
前記ガスセンサが前記ダクト内に配置される便潜血検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
便器に取り付けられ、
前記ガス吸入装置の前記ガス吸入口が、前記便器の便槽内に配置される便潜血検知装置。
【請求項5】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記便槽内の後部に配置される便潜血検知装置。
【請求項6】
請求項5記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記便槽内の便座近傍の高さに配置される便潜血検知装置。
【請求項7】
請求項5記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記腰掛式便器の便槽内のトラップ水面近傍の高さに配置される便潜血検知装置。
【請求項8】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記便槽内の空気を前記吸入口へ導くような誘導風を前記便槽内に発生させる誘導風装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項9】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間から水分を除去するための水分除去装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項10】
請求項9記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に存在する水分を検知する水分検知装置を更に備え、
前記水分除去装置が、前記水分検知装置に応答して動作するようになった便潜血検知装置。
【請求項11】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に配置され、そこを通る排便ガスからアミンガスを捕集して蓄積し、そして、蓄積されたアミンガスを放出するガス濃縮装置を更に備える便潜血検知装置。
【請求項12】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口により吸入された排便ガス中のアミンガスを含む臭気成分を、外気に戻さないために分解又は除去する脱臭装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項13】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記便器は、便槽上に便座を備えた腰掛式便器であり、
前記便槽と前記便座との間の隙間を塞ぐ便座シールを更に備えた便潜血検知装置。
【請求項14】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記ガスセンサによる検出が行われた後に、前記便槽に洗浄水を流す又は前記便器に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる便器洗浄装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項15】
請求項2記載の便潜血検知装置において、
人の局部を洗浄するための衛生洗浄装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項1】
排便ガスからアミンガスを検出するステップと、
アミンガスの検出結果に応じて便潜血の有無を判断するステップと
を備えた便潜血検知方法。
【請求項2】
排便ガス中のアミンガスを検出するガスセンサと、
前記ガスセンサを制御し、前記ガスセンサの出力信号を受けて便潜血の有無を判断する制御装置と
を備えた便潜血検知装置。
【請求項3】
請求項2記載の便潜血検知装置において、
ガス吸入口と、前記ガス吸入口に結合されたダクトとを有し、排便ガスを前記ガス吸入口から前記ダクト内へ吸入するガス吸入装置を更に備え、
前記ガスセンサが前記ダクト内に配置される便潜血検知装置。
【請求項4】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
便器に取り付けられ、
前記ガス吸入装置の前記ガス吸入口が、前記便器の便槽内に配置される便潜血検知装置。
【請求項5】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記便槽内の後部に配置される便潜血検知装置。
【請求項6】
請求項5記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記便槽内の便座近傍の高さに配置される便潜血検知装置。
【請求項7】
請求項5記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口が、前記腰掛式便器の便槽内のトラップ水面近傍の高さに配置される便潜血検知装置。
【請求項8】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記便槽内の空気を前記吸入口へ導くような誘導風を前記便槽内に発生させる誘導風装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項9】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間から水分を除去するための水分除去装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項10】
請求項9記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に存在する水分を検知する水分検知装置を更に備え、
前記水分除去装置が、前記水分検知装置に応答して動作するようになった便潜血検知装置。
【請求項11】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ダクト内の前記ガス吸入口から前記ガスセンサまでの区間に配置され、そこを通る排便ガスからアミンガスを捕集して蓄積し、そして、蓄積されたアミンガスを放出するガス濃縮装置を更に備える便潜血検知装置。
【請求項12】
請求項3記載の便潜血検知装置において、
前記ガス吸入口により吸入された排便ガス中のアミンガスを含む臭気成分を、外気に戻さないために分解又は除去する脱臭装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項13】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記便器は、便槽上に便座を備えた腰掛式便器であり、
前記便槽と前記便座との間の隙間を塞ぐ便座シールを更に備えた便潜血検知装置。
【請求項14】
請求項4記載の便潜血検知装置において、
前記ガスセンサによる検出が行われた後に、前記便槽に洗浄水を流す又は前記便器に予め設けられている便器洗浄機能を起動させる便器洗浄装置を更に備えた便潜血検知装置。
【請求項15】
請求項2記載の便潜血検知装置において、
人の局部を洗浄するための衛生洗浄装置を更に備えた便潜血検知装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−132948(P2006−132948A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318798(P2004−318798)
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月2日(2004.11.2)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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