説明

便試料中のヘモグロビンおよびM2−PKを測定することによる結腸直腸癌の評価方法

本発明は、結腸直腸癌の評価を補助する方法に関する。該方法は特に、インビトロにおける結腸直腸癌の有無の評価に使用される。該方法は、例えば、便試料においてヘモグロビンおよびM2-PKの濃度を測定すること、ならびに測定した濃度を結腸直腸癌の有無と相関することを含む、生化学マーカーを解析することにより実施される。本発明の方法における結腸直腸癌の評価をさらに向上させるために、1つ以上の更なるマーカーのレベルを、便試料中でヘモグロビンおよびM2-PKと共に測定し得、結腸直腸癌の有無と相関し得る。本発明はまた、結腸直腸癌の初期診断における、ヘモグロビンおよびM2-PKを含むマーカーパネルの使用に関し、本発明の方法を実行するためのキットを教示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結腸直腸癌の評価の補助方法に関する。該方法は、特にインビトロでの結腸直腸癌の有無の評価に使用される。該方法は、例えば、生化学的マーカーを分析することにより実施され、便試料中のヘモグロビンおよびM2-PKの濃度を測定する工程、ならびに測定された濃度を結腸直腸癌の有無と相関させる工程を含む。本発明の方法において結腸直腸癌の評価をさらに改善するため、1つ以上のさらなるマーカーのレベルが便試料中のヘモグロビンおよびM2-PKと一緒に測定され得、結腸直腸癌の有無と相関され得る。本発明はまた、結腸直腸癌の早期診断におけるヘモグロビンおよびM2-PKを含むマーカーパネルの使用に関し、本発明の方法を行なうためのキットを教示する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
便または糞便の試料は、種々の疾患についての診断において、寄生虫、脂肪、潜血、ウイルス、細菌および他の生物ならびに化学物質の存在について日常的に試験される。
【0003】
癌は、検出および治療の進歩にもかかわらず、なお主要な公衆衛生の課題である。種々の型の癌のうち、結腸直腸癌(=CRC)は、西洋諸国で最も頻繁な癌の1つである。
【0004】
癌の病期分類は、程度、進行および重症度に関する疾患の分類である。それにより、癌患者は、予後および治療の選択に関する一般化がなされ得るように群分けされる。
【0005】
今日、TNMシステムは、癌の解剖学的程度の最も広く使用される分類である。これは、国際的に認められた一定の病期分類システムを表す。3つの基本的な変数: T(原発腫瘍の程度)、N(局所リンパ節の状態)およびM(遠隔転移の有無)がある。TNM基準は、UICC (International Union Against Cancer)、Sobin、L.H., Wittekind、Ch. (編)、TNM Classification of Malignant Tumours、第5版、1997によって公表されている。
【0006】
特に重要なことは、CRCの早期診断が非常に良好な予後と解釈されることである。結腸直腸の悪性腫瘍は、良性腫瘍、すなわち腺腫から生じる。したがって、最良の予後は、腺腫段階で診断された患者を有する。Tis、N0、M0またはT1-3;N0;M0という早い段階に診断された患者は、適正に処置された場合、遠隔転移が既に存在すると診断された患者ではわずか10%の5年生存率に比べ、診断後5年生存の90%より高い見込みを有する。
【0007】
本発明の意味において、CRCの有無の評価方法は、悪性状態前(腺腫)または転移が全くない(近位にも遠位にも)、すなわちUICCクラスI、IIもしくはIIIの腫瘍段階のCRCの感度のよい検出に特に適切である。
【0008】
本発明による診断方法は、個体に由来する便試料に基づく。便試料は抽出され、この処理された便試料からヘモグロビンおよびM2-PKがそれぞれ、特異的結合剤の使用によって特異的に測定される。
【0009】
より早期に癌が検出/診断され得ると、全体の生存率は良好になる。これは、CRCについて特にそうである。進行段階の腫瘍の予後は不良である。患者の3分の1より多くが進行疾患で診断の5年以内に死亡し、5年で約40%の生存率に相当する。現在の処置は、一部の患者を治癒するだけであり、疾患の初期段階に診断された患者に対して明白に最良の効果を有する。
【0010】
公衆衛生問題としてのCRCに関して、結腸直腸癌のより有効なスクリーニングおよび予防的措置が開発されることは必須である。
【0011】
結腸直腸癌について、現在利用可能な最も早期検出の手順は、糞便血液試験または内視鏡手順の使用を伴う。しかしながら、糞便血液が検出される前に、典型的に有意な腫瘍サイズが存在しなければならない。便試料からのCRCの検出に関して、当該技術水準は、かなり長い間、グアヤク系糞便の潜血試験である。
【0012】
グアヤク試験は、現在、便からのCRCのスクリーニングアッセイとして最も広く使用されている。グアヤク試験は、しかしながら、感度が不良であるとともに、特異性も不良である。グアヤク系糞便潜血試験の感度は約26%であり、これは、悪性病変を有する患者の74%が未検出となることを意味する(Ahlquist、D. A., Gastroenterol. Clin. North Am. 26 (1997)41-55) 。前癌性および癌性病変の可視化は、早期検出のための最良のアプローチを表すが、結腸内視術は侵襲性であり、相当なコスト、リスクおよび合併症を伴う(Silvis、S. E., et al., JAMA 235 (1976)928-930;Geenen、J. E., et al., Am. J. Dig. Dis. 20 (1975)231-235;Anderson、W. F., et al., J. Natl. Cancer Institute 94 (2002)1126-1133)。
【0013】
便採取は非侵襲性であり、したがって、理論的には、小児または老人患者での試験、臨床現場から離れた試験、頻繁に繰返す試験、および消化管にみられやすい検体の存在の測定に理想的である。
【0014】
しかしながら、糞便の試料の分析へのイムノアッセイ技術の適用は、いくつかの理由で困難であることが示されている。
【0015】
検体は、便検体全体に分布しているのではなく、先に腸の細胞または癌性の細胞とすら接触していた便検体の外側表面により集中している傾向にある。これは、EP 0 817 968がさらなる分析のために断面便試料の使用を提案している理由である。EP 0 817 968の重点は、便検体中に含まれるDNAの診断にある。
【0016】
便の取扱いは、不愉快であり、生物災害性である。便処理のための手順は厄介であり、しばしば複雑で、いくつかの取扱い工程、例えば、濾過または遠心分離を必要とすることが示されている。試料の計量、抽出、遠心分離および保管は、適当な装置および熟練技術者を備えた臨床研究室を除き、困難である。
【0017】
便試料中の検体は、しばしば不安定である。これは、ポリペプチドまたはタンパク質の場合、特にそうであると考えられる。便の成分は、固相イムノアッセイを妨げることが知られている。固相上に固定された免疫反応体は、便構成成分によって脱着され得る。非特異的反応が起こり得る。
【0018】
便試料中のタンパク質性検体を測定するためのイムノアッセイ技術の商業的使用を増大させるためには、多数の問題が解決されなければならない。例えば、検体は、できるだけ効率的に可溶化されなければならず、便中の検体の不安定性は対処されなければならず、便構成成分による干渉はできるだけ低減されるべきであり、便の広範な取扱いの必要性、装置の汚染および機器の必要性は最小限でなければならない。イムノアッセイ試験手順、または少なくともかかるイムノアッセイのサンプリング手順の使用を病院および臨床研究環境外の場所に拡張するためには、高価な装置および機器の使用を回避する試料調製工程が必要とされる。ヘモグロビンおよびM2-PKなどのタンパク質の検出に有利な便試料希釈剤の例を以下にさらに示す。
【0019】
WO 02/18931は、診断アッセイのために便検体を調製するための方法を開示する。本質的に緩衝物質、洗剤、好ましくは双性イオン洗剤およびブロッキング剤を含む抽出バッファーに基づく改善された抽出手順が記載される。
【0020】
便検体の取扱いは、最近開発されたサンプリングデバイスの使用によって容易にされる。適切な便サンプリングデバイスは、例えば、EP 1 366 715およびEP 1 214 447に記載される。
【0021】
1990年代初期から、便検体に含まれるタンパク質のための免疫学的アッセイが記載されているという事実にもかかわらず、かかるアッセイは、まだ臨床の通常業務に広く使用されていない。例えば、US 5,198,365は、ヘモグロビンの特異的免疫学的測定によって便試料中の血液の存在を検出することが可能であることを記載する。
【0022】
グアヤク試験の診断代替法の感度および特異性は、Sieg、A., et al., Int. J. Colorectal Dis. 14 (1999)267-271によって最近調査された。特に、便検体からのヘモグロビンおよびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体の測定が比較された。ヘモグロビンアッセイは、結腸直腸の新生物の検出について満足でない感度を有することが注目された。進行癌腫段階癌は、約87%の感度で検出されるが、より早期の腫瘍段階は充分な感度で検出されない。ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体アッセイは、早期段階のCRCの検出において、より感度がよかった。このより感度のよい検出は、特異性の不良を伴った。しかしながら、特異性の不良は、結腸内視術などの多数の不必要な二次調査に移行されるため、精度不良のアッセイもまた、一般に認められたスクリーニングアッセイの要件を満たさない。
【0023】
最近、ピルビン酸キナーゼM2アイソエンザイム(M2-PK)の検出のためのアッセイが市場に導入された(Schebo Biotech、Giessen、Germany)。ヘモグロビンおよびM2-PKのイムノアッセイとのグアヤクアッセイの比較は、例えば、Vogel、T. et. al., Dtsch. Med. Wochenschr. 130 (2005)872-877によって行なわれた。彼らは、免疫学的アッセイがグアヤク試験よりも卓越していること、および同等な特異性で、M2-PK アッセイはヘモグロビンアッセイと比べてCRCの検出において感度が低いことを示す。著者らは、これらの両方の便系アッセイの有用性は、まだ疑わしいと結論づける。
【0024】
便中のCRCの検出のためのグアヤク試験のさらなる代替法は、最近公表され、便中に放出されるコロニー性細胞における免疫組織化学による結腸直腸癌特異的抗原「ミニ染色体維持タンパク質2」(MCM2)の検出にある。小さな研究サイズのため、結腸直腸癌の検出の診断値に対する結論は予備的である。しかしながら、試験は、右側の結腸癌を検出するためには、制限された感度しか有さないようである(Davies、R. J., et al., Lancet 359 (2002)1917-1919)。
【0025】
結腸直腸癌の評価を改善するための必要性が明白に存在する。
【0026】
本発明の課題は、例えば便検体中の検体の検出のための免疫学的方法の使用によるCRCの評価が改善され得るかどうかを見出すことであった。
【0027】
便試料中の少なくともヘモグロビンおよびピルビン酸キナーゼアイソフォームM2(M2-PK)の濃度を測定することを含む、生化学的マーカーによってインビトロで結腸直腸癌の有無を評価するための方法は、上記の不都合点の少なくともいくつかを克服することを補助し得ることが見出され、確立された。
【0028】
発明の概要
本発明は、便試料中の少なくともヘモグロビンおよびピルビン酸キナーゼアイソフォームM2(M2-PK)の濃度を測定する工程、ならびにヘモグロビンおよびM2-PKについて測定された濃度を結腸直腸癌の有無と相関させる工程を含む、生化学的マーカーによってインビトロで結腸直腸癌の有無を評価するための方法に関する。
【0029】
さらに、結腸直腸癌の診断における、少なくともマーカーヘモグロビンおよびM2-PKを含むマーカーパネルの使用が開示される。
【0030】
また、それぞれヘモグロビンおよびM2-PKを特異的に測定するために必要とされる試薬、ならびに任意に、それぞれの測定を行なうための補助試薬を含む、本発明による方法を行なうためのキットが開示される。
【0031】
発明の詳細な説明
第1の態様において、本発明は、便試料中の少なくとも(a)ヘモグロビンおよび(b)ピルビン酸キナーゼアイソフォームM2(M2-PK)の濃度を測定する工程、ならびに(c)工程(a)および(b)で測定された濃度を結腸直腸癌の有無と相関させる工程を含む、生化学的マーカーによってインビトロで結腸直腸癌の有無を評価するための方法に関する。
【0032】
用語「結腸直腸癌を評価すること」は、本発明による方法が(他の変数、例えば、結腸内視術による確認とともに)医師が結腸直腸癌(CRC)の診断を確立することを補助することを示すために使用される。好ましい態様において、この評価はCRCの有無に関連する。当業者には認識されるように、単一の生化学的マーカーおよびマーカー組合せでは、所定の疾患に対して100%特異性と同時に100%感度で診断されず、むしろ、特定の見込みまたは予測値を伴って疾患の有無を評価するためには、複数の生化学的マーカーが使用される。好ましくは、本発明による方法はCRCの有無の評価を補助する。
【0033】
当業者には認識されるように、マーカーレベルをCRCの有無と相関させる工程は、種々の様式で行なわれ、達成され得る。一般に、参照集団が選択され、正常範囲が確立される。適切な参照集団を用いることにより、便試料中のヘモグロビンおよびM2-PKの両方のレベルについて正常範囲を確立することは、単なる常套的な実験手法である。ある程度だが限定された程度までの正常範囲が、確立された参照集団に依存することは一般に認められている。理想的で好ましい参照集団は、数が大きい、例えば、数百から数千の年齢、性別および任意に他の目的の変数が適合したものである。示される濃度などの絶対値に関する正常範囲もまた、使用されるアッセイおよびアッセイを作製するのに使用される標準化に依存する。
【0034】
実施例のセクションでヘモグロビンおよびM2-PKについて示されるレベルは、同じ便試料に由来する等分量(aliquot)から測定し、示されたアッセイ手順により確立した。
【0035】
本発明による方法において、便試料中に存在する少なくともバイオマーカーヘモグロビンおよびM2-PKの濃度がそれぞれ測定され、マーカー組合せがCRCの有無と相関される。
【0036】
当業者には認識されるように、調査中の診断的疑問を改善するために、二つ以上のマーカーの測定値を使用する多くの方法がある。全く単純に、しかしながら、しばしば効果的なアプローチにおいて、調査された少なくとも一つのマーカーについて試料が陽性である場合、陽性の結果が仮定される。このことは、例えばエイズのような感染性の疾患の診断の場合であり得る。しかし、頻繁にマーカーの組み合わせは検証される。好ましくは、マーカーパネルのマーカー、例えばヘモグロビンおよびM2-PKについての測定値は、数学的に組み合わされ、組み合わされた値は根本的な診断的疑問に相関される。
【0037】
マーカー値は、本技術分野の数学的方法の任意の適切な状態により組み合わされ得る。マーカーの組み合わせと疾患を相関する周知の数学的方法には、判別分析(DA)(即ち、一次、二次、標準化DA)、カーネル法(即ちSVM)、ノンパラメトリック法(即ちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS(Partial Least Squares)、樹形法(Tree-Based Methods)(即ち論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング/バギング(Boosting/Bagging)法)、汎用直線モデル(即ちロジスティック回帰)、主成分ベース法(即ちSIMCA)、汎用付加モデル、ファジー理論ベース法、ニューラルネットワークおよび遺伝的アルゴリズムベース法などの方法を用いる。当業者は、本発明のマーカーの組み合わせを評価するための適切な方法の選択において何の問題も持たない。好ましくは、本発明のマーカーの組み合わせを、例えばCRCの有無と相関することに用いられる方法は、DA(即ち一次、二次、標準化判別分析)、カーネル法(即ちSVM)、ノンパラメトリック法(即ちk-Nearest-Neighbor Classifiers)、PLS(Partial Least Squares)、樹形法(即ち論理回帰、CART、ランダムフォレスト法、ブースティング法)、または汎用直線モデル(即ちロジスティック回帰)から選ばれる。これらの統計的方法に関する詳細は、以下の参考文献、Ruczinski, I., et al., J. of Computational and Graphical Statistics 12 (2003) 475-511; Friedman, J. H., J. of the American Statistical Association 84 (1989) 165-175; Hastie, T., et al., The Elements of Statistical Learning, Springer Verlag (2001); Breiman, L., et al., Classification and regression trees, California, Wadsworth (1984); Breiman, L., Machine Learning 45 (2001) 5-32; Pepe, M. S., The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction, Oxford Statistical Science Series, 28 (2003); ならびにDuda, R. O., et al., Pattern Classification, Wiley Interscience, 第2版 (2001)に見られる。
【0038】
生物学的マーカーの潜在的な(underlying)組合せに対して最適な多変量カットオフ(cut-off)を使用し、状態Aを状態Bと、例えば、CRCの存在をCRCの非存在と区別することは、本発明の好ましい態様である。この型の解析では、マーカーは、もはや独立的ではなくマーカーパネルを形成する。ヘモグロビンおよびM2-PKの測定を組み合わせることで、健常対照と比べた場合、CRCの診断の精度を有意に改善することが確立され得る。これは、初期段階のCRC(UICC段階I〜III)を有する患者から得られた試料を分析に含めさえすれば、特に明白になる。特に、後者の所見は、早期CRCを有する患者が、悪性の正確な早期検出の恩恵を最も受けやすいため、非常に重要である。
【0039】
診断方法の精度は、その受信者動作特性(ROC)によって最もよく示される(特にZweig, M. H.およびCampbell, G., Clin. Chem. 39 (1993) 561-577参照のこと)。ROCグラフは、観察されたデータの全範囲にわたって判定閾値を連続的に変えることにより得られる全ての感度/特異性の組のプロットである。
【0040】
実験室試験の臨床成績は、その診断の精度または被験体を臨床的に関連する亜群へと正確に分類する能力に依存している。診断の精度は、検査を受けた被験体の2つの異なる状態を正確に区別する試験の能力を評価するものである。かかる状態は、例えば健常と疾患または良性疾患対悪性疾患である。
【0041】
各場合において、ROCプロットは、判定閾値の全範囲で1−特異性に対して感度をプロットすることにより2つの分布間の重複を示す。Y軸上は感度、または真陽性の割合[(真陽性試験結果の数)/(真陽性の数+偽陰性試験結果の数)として定義される]である。これはまた、疾患または症状の存在下において陽性度と称されている。それは罹患した亜群単独から算出される。X軸上は偽陽性の割合、すなわち1−特異性[(偽陽性結果の数)/(真陰性の数+偽陽性結果の数)として定義される]である。これは特異性の指標であり、罹患していない亜群全体から算出される。真陽性および偽陽性の割合は、2つの異なる亜群由来の試験結果を用いて全く別々に算出されるため、ROCプロットは試料中の疾患の罹患率から独立している。ROCプロット上の各点は、特定の判定閾値に対応する感度/1−特異性の組を表している。完全な区別を伴う試験は(結果の2つの分布に重複がない)、左上の角を通るROCプロットを有し、この場合、真陽性の割合は1.0または100%(完全な感度)であり、偽陽性の割合は0(完全な特異性)である。区別を伴わない試験の理論的プロット(2つの群の結果の分布が同一)は、左下の角から右上の角に向かって45度の斜め線となる。ほとんどのプロットはこれらの両極間に含まれる。(ROCプロットが45度の斜め線の下方に完全に含まれる場合、これは「陽性度(positivity)」についての基準を「より大きい」から「より少ない」に入れ換えることにより容易に修正される。逆も同じ)。定性的には、プロットが左上の角に近づくにしたがって、試験の全体的な精度は高くなる。
【0042】
実験室試験の診断の精度を定量化するためのある都合のよい最終目標は、単独の数によりその成績を表すことである。最も一般的な世界的尺度はROCプロットの下の面積(area under the curve=AUC)である。慣例により、この面積は常に≧0.5である(もしそうでなければ、そうなるように決定基準を入れ換え得る)。数値は1.0(2群の試験値の完全な分離)と0.5(2群間の試験値に明らかな分布の差が無い)の間の範囲である。該面積は、該斜め線に最も近い点または90%特異性における感度などのプロットの特定の部分だけでなく、全プロットに依存する。これは、ROCプロットが完全なもの(面積=1.0)にどれだけ近いかということの定量的で説明的な表現である。
【0043】
好ましい態様において、本発明は、試料中において少なくともヘモグロビンおよびM2-PKの濃度を測定し、測定された濃度をCRCの有無と相関させることにより、対照に対する結腸直腸癌の診断精度を改善するための方法であって、該改善により、いずれかのマーカー単独に基づく分類と比較すると、健常対照に対してより多くの患者がCRCを患うと正確に分類される方法に関する。ヘモグロビンおよびM2-PKを含むCRCマーカーパネルもまた、もちろん、CRCを患う患者の疾患の重症度の評価に使用され得る。
【0044】
当業者には認識されるように、CRCの評価をさらに改善するため、1つ以上のさらなるバイオマーカーが使用され得る。CRCの評価のためのマーカーのパネルの重要なマーカーとしてのヘモグロビンおよびM2-PKの使用のこの更なる可能性を示すため、添付の特許請求の範囲において用語「少なくとも」を使用した。換言すると、1つ以上のさらなるマーカーについて測定されたレベルが、CRCの評価においてヘモグロビンおよびM2-PKの測定値と組み合わされ得る。
【0045】
ヘモグロビンおよびM2-PKと一緒に使用される1つ以上のさらなるマーカーは、CRCマーカーパネル、すなわちCRCの評価をさらに精密にするのに適切な一連のマーカーの一部とみなされ得る。CRCマーカーパネルにおけるマーカーの総数は、好ましくは20未満のマーカー、より好ましくは15未満のマーカーであり、また、10未満のマーカーが好ましく、8以下のマーカーがさらにより好ましい。全部で3、4、5または6つのマーカーを含むCRCマーカーパネルが好ましい。
【0046】
したがって、好ましい態様において、本発明は、試料において、ヘモグロビンおよびM2-PKの濃度、およびさらに1つ以上の他のマーカーの濃度を測定すること、ならびにヘモグロビン、M2-PKの濃度および1つ以上のさらなるマーカーの濃度を結腸直腸癌の有無と相関させることを含む、生化学的マーカーによって結腸直腸癌の有無をインビトロで評価するための方法に関する。
【0047】
ヘモグロビンは、任意の豊富な血清タンパク質などと同様、癌性病変によって引き起こされた出血の程度を示すとみなされ得る。したがって、別の非常に豊富な血清タンパク質、すなわち、1mg/ml以上の濃度で存在する血清タンパク質(例えば、血清アルブミン)が、ヘモグロビンの代用マーカーとして使用されることが構想され、好ましい。
【0048】
好ましくは、該1つ以上の他のマーカーは、CEA、CYFRA 21-1、CA19-9、CA72-4、NNMT、PROCおよびSAHHからなる群より選択される。
【0049】
好ましい態様において、本発明の結腸直腸癌の有無の評価方法は、少なくともヘモグロビン、M2-PKおよびSAHHの測定に基づく。
【0050】
「CYFRA 21-1」のアッセイでは、循環系内に存在するサイトケラチン19の可溶性断片が特異的に測定される。CYFRA 21-1の測定は、典型的には2つのモノクローナル抗体に基づく(Bodenmueller, H.ら, Int. J. Biol. Markers 9 (1994) 75-81)。Roche Diagnostics, GermanyのCYFRA 21-1アッセイでは、2つの特異的モノクローナル抗体(KS 19.1およびBM 19.21)が使用され、およそ30,000ダルトンの分子量を有するサイトケラチン19の可溶性断片が測定される。
【0051】
測定された糖質抗原19-9(CA 19-9)値は、モノクローナル抗体1116-NS-19-9の使用によって規定(define)される。およそ10,000ダルトンの分子量を有する糖脂質上の1116-NS-19-9-反応性決定基が測定される。このムチンはルイス血液型a決定基のハプテンに相当し、いくつかの粘膜細胞の成分である。(Koprowski、H., et al., Somatic Cell Genet 5 (1979)957-972)。CA 19-9は、例えば、Elecsys(登録商標)解析装置において、Roche製品番号11776193を用い、製造業者の使用説明書に従って測定され得る。
【0052】
癌胎児抗原(CEA)は、およそ45〜60%の変動的糖質成分を有する単量体糖蛋白(分子量およそ180.000ダルトン)である(Gold, P.およびFreedman S. O., J. Exp. Med. 121 (1965)439-462)。高いCEA濃度は、しばしば、結腸直腸の腺癌腫の場合に見られる(Fateh-Moghadam, A.およびStieber, P., Sensible use of tumor makers、Boehringer Mannheim、カタログ番号1536869(英語)、1320947 (独語)、ISBN 3-926725-07-9独語/英語、Juergen Hartmann Verlag GmbH、Marloffstein-Rathsberg (1993)。微量から中程度のCEA上昇(稀に>10ng/mL)が、腸、膵臓、肝臓および肺の良性疾患(例えば、肝硬変、慢性肝炎、膵炎、潰瘍性大腸炎、クローン病、気腫)の20〜50%に起こる(Fateh-Moghadam、A., and Stieber、P., 上記)。喫煙者も上昇したCEA値を有する。CEA測定の主な表示は、結腸直腸癌の追跡調査および治療マネージメントである。
【0053】
タンパク質ニコチンアミドN-メチルトランスフェラーゼ(NNMT; Swiss-PROT: P40261)は、29.6 kDaの見かけ分子量および5.56の等電点を有する。最近 (WO 2004/057336)、NMMTが、CRCの評価において重要であろうことがわかった。WO 2004/057336に記載されたイムノアッセイは、本研究の試料(CRC、健常対照および非悪性結腸疾患)を測定するために使用されている。
【0054】
タンパク質ピロリン-5-カルボン酸還元酵素(PROC;Swiss-PROT: P32322)は、文献においてPYCR1としても公知である。PROCは、プロリンへのピロリン-5-カルボン酸のNAD(P)H依存性変換を触媒する。Merrill、M. J., et al., J. Biol. Chem. 264 (1989)9352-9358では、ヒト赤血球ピロリン-5-カルボン酸還元酵素の特性が研究された。彼らは、ピロリン生合成における必須で最終の一方向工程を触媒する従来の役割に加え、該酵素は、ヒト赤血球を含むいくつかの細胞型におけるNADP(+)の生成に生理学的役割を果たし得ると結論付けた。PROCは、最近、CRCのマーカーとして同定された(WO 2005/095978)。
【0055】
すべての腫瘍のほとんどは、ピルビン酸キナーゼ解糖酵素アイソフォーム(M2-PK)を発現する。M2-ピルビン酸キナーゼは、基質ホスホエノールピルビン酸塩(PEP)に対して高い親和性を示す四量体形態、およびPEPに対して低い親和性を有する二量体形態の両方に生じる。二量体形態は、腫瘍において優位を占め、したがって、Eigenbrodt、E., et al., Crit. Rev. Oncog. 3 (1992)91-115により腫瘍M2-PKと命名された。Giessen University HospitalでHardt、P.D., et al., Br. J. Cancer 91 (2004)980-984) によって行なわれた大きな臨床試験では、腫瘍M2-PK便試験の有用性が評価された。彼らは、腫瘍M2-PK便試験について、78%の特異性とともに73%の感度を報告した。
【0056】
タンパク質SAHH(S-アデノシルホモシステインヒドロラーゼ;SWISS-PROT: P23526)は、最近、結腸直腸癌のマーカーとして同定された(WO2005/015221)。対応するクローン化ヒトcDNAは、48-kDaタンパク質をコードする。SAHHは、以下の可逆的反応: S-アデノシル-L-ホモシステイン + H2O⇔アデノシン + L-ホモシステインを触媒する(Cantoni、G. L., Annu. Rev. Biochem. 44 (1975)435- 451)。HershfieldおよびFrancke (Hershfield、M. S.およびFrancke、U., Science 216 (1982)739-742)は、対応する遺伝子を第20染色体に位置づけ、後に、Coulter-KarisおよびHershfield (Coulter-Karis、D. E.およびHershfield、M. S., Ann. Hum. Genet. 53 (1989)169-175)が、完全長cDNAを配列決定した。最近、SAHHの構造が解明された(Turner、M. A., et al., Cell. Biochem. Biophys. 33 (2000)101-125)。
【0057】
当業者には認識されるように、診断精度をさらに改善するため、または特異性を犠牲にして診断感度の増大が必要とされる場合(その逆も同様)、1種類以上のさらなるマーカーを使用し得る。一部の診断領域において、例えば、HIV感染の検出では、感度が最高に重要である。必要とされる高感度は、特異性を犠牲にして達成され得るが、偽陽性症例の増加を導く。他の場合において、例えば、単純な例として、血液型抗原を評価する場合、特異性が最高に重要である。
【0058】
本発明による方法は、無症候性の個体をCRCの有無についてスクリーニングするのに適するようである。そうすることにおいて、特異性および感度の両方が非常に重要である。CRCなどの有病率の低い疾患のスクリーニングに使用される方法は、特異性が少なくとも90%、好ましくは95%でさえなければならないことは一般に認められている。換言すると、後者の場合は、偽陽性の割合が5%以下となり得る。これは、かかる特異性レベルにおいて、高価な追跡検査が、不注意にあまり多く引き起こされないことを意味する。好ましくは、生化学的マーカーによってインビトロで結腸直腸癌の有無を評価するための本発明による方法は、少なくとも90%、さらにより好ましくは95%の特異性を有する。
【0059】
95%の固定された特異性レベルで本発明による少なくとも便試料中のヘモグロビンおよびM2-PK測定することにより該結腸直腸癌の有無をインビトロで評価するための方法は、CRCの検出の改善された感度を有する。
【0060】
さらに好ましい態様は、CRCの診断における、ヘモグロビンおよびM2-PKを含むマーカーパネルの使用に関する。ヘモグロビン、M2-PK、およびCEA、CYFRA 21-1、CA 19-9、CA72-4、NNMT、PROCおよびSAHHからなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーを含むマーカーパネルの使用がさらに好ましい。
【0061】
本発明による好ましいマーカーパネルは、マーカーヘモグロビン、M2-PKおよびSAHHを含む。
【0062】
好ましい態様において、便試料中の少なくともヘモグロビンおよびピルビン酸キナーゼアイソフォームM2(M2-PK)の濃度を測定することを含む、生化学的マーカーによって結腸直腸癌の有無をインビトロで評価するための本発明による方法は、以下に一部詳細に記載する便試料用の特別な新規の希釈剤を利用する。
【0063】
好ましい便試料希釈剤は、少なくともバッファー、プロテアーゼインヒビターおよび非イオン洗剤を含む。特定の好ましい態様におけるバッファーは、ブロッキング剤および/または保存剤をさらに含む。
【0064】
当業者は、適切なバッファー系に精通している。好ましくは、バッファーまたはバッファー系は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Tris-ヒドロキシメチルアミノエタン(Tris)緩衝生理食塩水(TBS)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N'-2-エタンスルホン酸(HEPES)、および3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)
からなる群より選択される。好ましくは、バッファーは20〜200mMの容量モル濃度を有する。
【0065】
便試料希釈剤のpHは、好ましくはpH 6.5〜pH 8.5のpH値、より好ましくはpH 7.0〜pH 8.0のpH値、およびさらに好ましくはpH 7.2〜pH 7.7のpH値に調整される。当業者は、便検体を便試料希釈剤と混合の後、所望のpHを達成することを確実にするために、バッファー構成成分の濃度の選択に困難を要しない。
【0066】
便試料希釈剤はプロテアーゼインヒビターを含む。非常に多量のプロテアーゼが存在しており、対応するプロテアーゼインヒビターも存在している。
【0067】
プロテアーゼのある重要なクラスは、活性部位にアミノ酸セリンを有する、いわゆるセリンプロテアーゼである。セリンプロテアーゼの周知の例は、トリプシン、キモトリプシン、カリクレインおよびウロキナーゼである。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがセリンプロテアーゼに対して活性であるという事実に精通している。かかるプロテアーゼおよびそれらの活性スペクトルの阻害潜在力は、例えばServa, Heidelberg、またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimなどの市販の供給業者のデータシートに記載される。好ましくは、セリンプロテアーゼインヒビターは、AEBSF-HCl(例えば、Servaカタログ番号12745)、APMSF-HCl(例えば、Servaカタログ番号12320)、アプロチニン(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号10 981 532 001)、キモスタチン(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号11 004 638 001)、Pefabloc(登録商標)SC(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号11 585 916 001)およびPMSF(例えばRoche Diagnosticsカタログ番号10 837 091 001)からなる群より選択される。
【0068】
プロテアーゼのさらなる重要なクラスは、活性部位にアミノ酸システインを有する、いわゆるシステインプロテアーゼである。システインプロテアーゼの周知の例はパパインおよびカルパインである。当業者は、特定のインヒビターがシステインプロテアーゼに対して活性であるということに精通している。これらのインヒビターのいくつかはまた、セリンプロテアーゼに対しても活性であり、例えば、PMSFはシステインプロテアーゼのインヒビターおよびセリンプロテアーゼのインヒビターとして使用され得る。かかるプロテアーゼおよび活性スペクトルの阻害潜在力は、例えばServa, Heidelberg、またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimなどの市販品の業者のデータシートに記載される。好ましくは、システインプロテアーゼインヒビターは、ロイペプチン(例えばRoche Diagnosticsカタログ番号11 034 626 001)、PMSF(上述参照)およびE-64(例えばRoche Diagnosticsカタログ番号10 874 523 001)からなる群より選択される。
【0069】
プロテアーゼのさらなる重要なクラスは、いわゆるメタロプロテアーゼである。メタロプロテアーゼは、活性中心に金属イオン、例えばZn2+、Ca2+またはMn2+ を含むことを特徴とする。メタロプロテアーゼの周知の例は、カルボキシペプチダーゼAおよびBならびにサーモリシンなどの消化酵素である。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがメタロプロテアーゼに対して活性であるということに精通している。メタロプロテアーゼは、金属イオンに結合し、金属キレート錯体を形成する物質により最も簡単に不活性化される。好ましくは、エチレンジアミノ(diamino)四酢酸(EDTA)、エチレングリコールビス(アミノエチルエーテル)四酢酸(EGTA)、および/または1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N',N'-四酢酸(CDTA)がメタロプロテアーゼの不活性化に使用される。メタロプロテアーゼの他の適切なインヒビターは、ホスホルアミドン(=N-(α-ラムノピラノシルオキシヒドロキシホスフィニル)-L-ロイシル-Lトリプトファン、二ナトリウム塩;例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号10 874 531 001)およびベスタチン(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号10 874 515 001)である。これらのプロテアーゼインヒビターおよびその活性スペクトルは、例えばServa, Heidelberg、またはRoche Diagnostics GmbH, Mannheimなどの市販品業者のデータシートに記載される。好ましくはメタロプロテアーゼのインヒビターはEDTA、EGTAおよび/またはベスタチンである。
【0070】
プロテアーゼのさらに重要なクラスはアスパラギン(酸)プロテアーゼとして公知である。アスパラギンプロテアーゼは、活性中心にアスパラギン酸残基を有することを特徴とする。アスパラギンプロテアーゼの周知の例は、ペプシン、カテプシンD、キモシンおよびレニンである。当業者は、特定のプロテアーゼインヒビターがアスパラギンプロテアーゼに対して活性であることに精通している。アスパラギン酸プロテアーゼの好ましいインヒビターは、α2-マクログロブリン(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号10 602 442 001)およびペプスタチン(例えば、Roche Diagnosticsカタログ番号11 359 053 001)である。
【0071】
特定の適用のために、例えば特定のクラスのプロテアーゼをブロッキングすることにより目的のポリペプチドを保護する単一のプロテアーゼインヒビターのみを含む便試料希釈剤を用いて、本発明の方法を適用することが可能である。
【0072】
好ましくは、便試料希釈剤は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼおよびアスパラギンプロテアーゼからなる群より選択される2種類のプロテアーゼに対して活性を有する少なくとも2種類の異なるプロテアーゼインヒビターを含む。また、これらの酵素の少なくとも3種類の好適なクラスが適切なインヒビターカクテルにより阻害される。好ましくは、便試料希釈剤は、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、メタロプロテアーゼおよびアスパラギンプロテアーゼのそれぞれに対して活性なプロテアーゼインヒビターからなるプロテアーゼインヒビターカクテルを含む。
【0073】
好ましくは、最大で20種類の異なるプロテアーゼインヒビターを使用して、便試料希釈剤用のプロテアーゼインヒビターカクテルが設計される。また、15種類以下の異なるプロテアーゼインヒビターを使用することも好ましい。好ましくは、便試料中のタンパク質性検体を安定化するためには、10種類以下の異なるプロテアーゼインヒビターが、便希釈剤に含まれるとプロテアーゼ阻害を達成するのに十分である。
【0074】
好ましくは、プロテアーゼインヒビターは、アプロチニン、キモスタチン、ロイペプチン、EDTA、EGTA、CDTA、ペプスタチンA、フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)およびPefabloc(登録商標)SCからなる群より選択される。好ましくは、プロテアーゼインヒビターカクテルは、キモスタチン、ロイペプチン、CDTA、ペプスタチンA、PMSFおよびPefabloc(登録商標)SCを含み、またアプロチニン、ロイペプチン、EDTAおよびPefabloc(登録商標)SCを含む好ましいプロテアーゼインヒビターカクテルが使用される。
【0075】
また、好ましい便試料希釈剤は、非イオン性洗剤を含む。通常、洗剤は陰イオン性洗剤、陽イオン性洗剤、両親媒性洗剤および非イオン性洗剤に分類される。本発明の便試料希釈剤の使用に適切な洗剤は、試料から目的の検体を放出させることができなければならず、同時に検体の安定化を可能にすべきである。この微妙さは、驚くべきことに、非イオン性洗剤の使用により達成され得る。好ましくは、本発明の便試料希釈剤に使用される非イオン性洗剤は、Brij 35(登録商標)、Tween 20(登録商標)、Thesit(登録商標)、Triton X100(登録商標)およびNonidet P40からなる群より選択される。試験された非イオン性洗剤の中で、Nonidet P40を含有する便試料希釈剤は、十分満足のいく結果を生じる傾向を有した。従って、適切な便試料希釈剤は、好ましくは非イオン性洗剤としてNonidet P40を含む。
【0076】
当業者は、非イオン性洗剤の適切な濃度の選択において困難を要さない。当業者は、便試料と混合後、臨界ミセル濃度(CMC)であるかそれを超える濃度を選択する。好ましくは、便試料希釈剤中の非イオン性洗剤の濃度は、0.01〜1重量%、および好ましくは0.02〜0.5重量%の範囲である。
【0077】
好ましくは、便試料希釈剤はブロッキング剤も含む。動物性タンパク質または酵素的に生成されたそのペプチドフラグメントなど、多くのブロッキング剤が関連技術分野に公知である。好ましくは、本発明によるブロッキング剤は、血清アルブミン、カゼイン、粉末スキムミルク、または動物性タンパク質の消化物、例えばペプトンである。好ましくは、ブロッキング剤は、ウシ血清アルブミン(BSA)、粉末スキムミルク、およびニワトリアルブミンからなる群より選択される。ブロッキング剤の濃度は、0.1〜10重量%であり、好ましくは1〜5重量%である。
【0078】
好ましい便試料希釈剤は、バッファー、プロテアーゼインヒビター、ブロッキング剤および非イオン性洗剤を含む。さらに、便試料希釈剤は保存料を含み得る。かかる保存料は、好ましくはアジ化ナトリウム、オキシピリオンおよびN-メチルイソチアゾロンからなる群より(form)選択される。
【0079】
試料として便検体を使用するほとんどの実験手段は、便検体からの試験系、例えばグアヤク試験の試験領域への直接の移行を必要とする。例えば、試料から試験系へのヘモグロビンの移行は部分的に過ぎない。便構成成分により生じる望ましくない反応は、それらの試料中の均一な分布のために試薬を用いて制御することが困難である。ほとんどの実験手段には十分に整った設備および訓練された技術者が必要である。
【0080】
取り扱いの工程が少なくサンプリングがしっかりしているほど便試料の抽出はよりうまくいく。
【0081】
いくつかの最近の開発は、便試料のサンプリングおよび取り扱いを容易にするデバイスに焦点が当てられる。EP 1 366 715は、便試料の回収のための特別な回収チューブを開示する。この抽出チューブは、(a)内部が空洞で、上部が開いており、バッファー液を受け取ることができる容器本体、(b)便試料を回収するためのねじ山のついた小さな棒が通された上部の蓋、ここで上部の蓋を容器本体の上端に取り付けると、ねじ山のついた小さな棒が容器の内部の軸方向に突出する、および(c)容器本体内の上部チャンバと底部チャンバを分離するように容器内の中間部に設けられた仕切り、前記仕切りは前記上部チャンバ中の余分な便を残し小さな棒の通された部分が前記底部チャンバ内に通過し得るように前記ねじ山のついた小さな棒の通過を可能にするのに適した軸方向の穴を有する。この抽出チューブはさらに、底部が開かれ、容器本体の底に取り外し可能に取り付けられ得る底部の蓋が備え付けられるので、前記抽出チューブは主要なサンプリングチューブとして直接的に使用されて自動解析機の試料ホルダープレート内に挿入され、その後前記の底部の蓋が外され前記容器はひっくり返される。より簡潔にいえば、EP 1 366 715に開示されるチューブは、便試料の明確な定量の都合のよい取り扱いを可能にし、適切な抽出後、チューブが自動解析機の試料ホルダー内部に直接設置され得るという利点を有する。読者は上述の特許において、この便サンプリングチューブの詳細な開示を見出し得、その完全な開示は本明細書において参照により援用される。
【0082】
WO 03/068398において、精巧化された便サンプリングデバイスは、便試料の便利なサンプリングおよび取り扱いについても適切であることが記載される。このWO出願に開示されるデバイスの特徴は、明確に言及され、その全体において本明細書で参照により援用される。WO 03/069343において、便検体を抽出すること、例えば、両性イオン性洗剤である10mM CHAPS(=3-[(3-クロルアミドプロピル)-ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホネート)を含む抽出バッファーの使用により、WO 03/068398に従ったデバイスで回収することが推奨される。
【0083】
イムノアッセイ試験のための便試料の調製のために、便試料希釈剤中に、最高で10重量%、好ましくは0.1重量%〜10重量%、より好ましくは0.5〜5重量%の便試料の分散液が作製される。好ましくは、便試料と希釈剤の混合は、上述のように便試料希釈剤が予め満たされた適切なサンプリングチューブ内で直接作製される。
【0084】
好ましくは、便試料は回収されたばかりのものであり、便試料希釈剤中に直接提供される。中間保管、輸送および/または取り扱いは必要ない。
【0085】
ヘモグロビンおよびM2-PKそれぞれのレベルは、任意の適切なアッセイ法により検出される。臨床的常套手段において、ほとんどの場合のかかる方法に、標的抗原に対する抗体、いわゆるイムノアッセイを使用する。かかる便試料が例えば上述のように調製される場合、ラテックス凝集、競合およびサンドイッチイムノアッセイを含む種々のイムノアッセイ手法は、便試料中のタンパク質性検体を検出するために使用され得る。
【0086】
好適に使用されるイムノアッセイは不均一なイムノアッセイである。また、タンパク質性検体の検出が競合的イムノアッセイの補助またはいわゆるサンドイッチイムノアッセイの補助によりなされることも好ましい。
【0087】
便試料抽出物中に存在する場合に標的抗原または標的検体を検出し得るイムノアッセイの設定において、当業者は何ら問題を有さない。
【0088】
一例として、サンドイッチ型イムノアッセイにおいてかかる検出が実施され得る。典型的に、まず、抗検体抗体を直接または間接的に固相に結合させる。言い換えると、まず、標的抗原に結合する抗体を捕捉抗体として使用する。例えばヒト便試料の抽出物中の標的検体を決定するために、抽出物を適切な条件下で、捕捉抗体が検体に結合するのに充分な時間インキュベートする。標的抗原の検出のために、捕捉抗体に認識されるものとは異なるエピトープに結合する標的抗原に対する第二または検出抗体を使用する。この第2の抗体とのインキュベーションは、第1の抗体とのインキュベーション前、後または最中に実施され得る。
【0089】
好ましくは、検出抗体は直接または間接的な検出を容易にするような様式で標識される。
【0090】
直接的な検出のために、標識基は染料、化学発光基などの発光標識基、例えばアクリジニウムエステルもしくはジオキセタン、または蛍光染料、例えばフルオレセイン、クマリン、ローダミン、オキサジン、レソルフィン(resorufin)、シアニンおよびそれらの誘導体等の任意で公知のマーカー基から選択され得る。標識基の他の例は、ルテニウムもしくはユーロピウム錯体などの発光金属錯体、例えばELISAもしくはCEDIA(Cloned Enzyme Donor Immuno assay例えば、EP 0 061 888)に使用されるような酵素ならびに放射性同位体である。
【0091】
間接的な検出系は、例えば検出試薬、例えば検出抗体をバイオアフィン(bioaffine)結合ペアの第1のパートナーで標識することを含む。適切な結合ペアの例は、ハプテンまたは抗原/抗体、ビオチンもしくはアミノビオチン、イミノビオチンもしくはデスチオビオチン/アビジンもしくはストレプトアビジン等のビオチンアナログ、糖/レクチン、核酸もしくは核酸アナログ/相補的核酸、ならびにレセプター/リガンド、例えばステロイドホルモンレセプター/ステロイドホルモンである。好ましい第1の結合ペアのメンバーはハプテン、抗原およびホルモンを含む。ジゴキシンおよびビオチンならびにそれらのアナログは特に好ましい。かかる結合ペアの第2のパートナー、例えば抗体、ストレプトアビジン等は、直接検出、例えば上述の標識によって直接検出が可能となるように、通常標識される。
【0092】
イムノアッセイは当業者に周知である。かかるアッセイならびに実施応用および手法を実行するための方法は、関連の教科書に要約される。関連の教科書の例はTijssen, P., Preparation of enzyme-antibody or other enzyme-macromolecule conjugates, In: Practice and theory of enzyme immunoassays, Burdon, R.H. およびv. Knippenberg, P.H.編, Elsevier, Amsterdam (1990), pp. 221-278)、ならびに免疫学的検出法を扱ったMethods in Enzymologyの種々の巻, Colowick, S.P.およびCaplan, N.O.編, Academic Press)、特に70、73、74、84、92および121巻である。
【0093】
上述の便試料希釈剤に基づいて、非常に便利な様式で便試料を取り扱うことが可能である。好ましくは、マーカーヘモグロビンまたはM2-PKの少なくとも1つが、上述のような便試料希釈剤中に回収された便試料から検出される。好ましくは、上述の便試料希釈剤中に回収された便試料から、両方の検体が検出される。M2-PKもしくはヘモグロビンいずれかの検出において、またはこれら両方の検体の検出において、便試料希釈剤の好ましい組成を使用することが好ましい。
【0094】
本発明はまた、ヘモグロビンおよびM2-PKそれぞれの特異的な測定に必要な試薬を含む本発明を実施するためのキットに関する。
【0095】
なおもさらに好ましい態様において、該キットはヘモグロビンおよびM2-PK両方の測定を実施するための試薬、また、予め適切な便試料希釈剤を充填された便サンプリングデバイスを含む。
【0096】
以下の実施例および図面は、本発明の理解を補助するために提供され、その真の範囲は付随の特許請求の範囲に記載される。本発明の精神を逸脱することなく、記載される手順において変更がなされ得ることが理解されよう。
【実施例】
【0097】
実施例1
試験集団
表1に与えられたUICC分類によりCRC患者であることが良く特徴付けられた94人由来の便試料を使用した。
【0098】

【0099】
表1のCRC試料を、結腸鏡検査を受けたことがあり腺腫、ポリープまたは直腸癌を有さない個体から得られた対照試料と比較して評価した。表2は、使用した対照の概観を与える:
【0100】

【0101】
実施例2
ヘモグロビンおよびM2-PKの測定のための便試料の抽出
調査されたそれぞれの患者について、結腸鏡検査または外科的手術を行なう前に、2つの便アリコートを単一の便の異なる部位で回収した。Sarstedt(Id. no. 80.623.022)の特異的な回収デバイスを使用して、便試料全体中およそ1gを回収した。かかる回収された便標本をできるだけ早く回収して、抽出まで-70℃で保存した。
【0102】
ヘモグロビン測定のために、抽出実験当り100mgの便検体を2ml Eppendorfカップに入れた。この100mgの便試料を1mlの新しい抽出バッファーで抽出した。
【0103】
以下の抽出バッファーを使用した:
9.49g Na2HPO4x 2H2O
1.84g KH2PO4
1g NaN3
0.4g Na2EDTA x 2H2O
10ml ニワトリアルブミン
50ml Nonidet P40 10%w/v
1錠 Complete mini(Roche Diagnostics, Id. No. 1836145)
1lまで添加(ad 1l) 再蒸留水
【0104】
便検体を含むチューブおよび抽出バッファーをおよそ15分間混和して便試料を抽出し、時々激しくボルテックスにかけた。その後試料を遠心分離(13.000 rpmで5分)した。遠心分離したものの上清を便試料のHb抽出物、または単にHb抽出物と呼ぶ。
【0105】
M2-PK測定のための抽出物を、製造業者の添付文書に従って、特異的なサンプルデバイス(Tumor M2-PK Quick-PrepTM, Schebo BioTech AG, Giessen)を使用して、ヘモグロビンの測定に使用したものと同じ解凍便検体で調製した。この特異的抽出物について、必要な便試料を回収するために便に挿入した投薬チップ(dosing tip)を用いて便試料の重量測定を行った。充填された投薬チップをすぐに、抽出バッファーを含む回収チューブに移した。抽出時間10分および粒子静置の後、「M2-PK抽出物」と呼ぶ上清抽出物の測定の準備をした。
【0106】
実施例3
便試料の抽出物からのヘモグロビンおよびM2-PKの測定のためのイムノアッセイ
3.1 ヘモグロビン
製造業者の指示書に従って「HaemImmun」アッセイ(Labor Limbach, Heidelberg)によりヘモグロビン測定を実施した。10μLのHb抽出物をイムノアッセイの試料として使用した。
【0107】
3.2 M2-PK
製造業者の指示書に従って、「Schebo(登録商標)Tumor M2-PK」アッセイ(Schebo Biotech AG, Giessen)によりM2-PKの測定を実施した。50μLのM2-PK抽出物をイムノアッセイの試料として使用した。
【0108】
実施例4
結果
4.1 キットのカットオフを用いた感度および特異性
それぞれの患者から、1つの便の異なる部位から回収した2つの便試料を測定した。2つの便試料のうちの1つが陽性の結果であることが明らかである場合(測定された濃度がカットオフ値よりも高いことが分かった場合)、患者試料を陽性と見なした。
【0109】

【0110】
4.2 両マーカーそれぞれについて95%の特異性での感度
対照集団におけるM2-PKアッセイが非特異的過ぎるために、両方のカットオフが、臨床的に関連のある特異性であると見なされる95%の特異性となるように調整した。結果を表4に示す。
【0111】

【0112】
両アッセイについてのカットオフを約95%の特異性に調整することにより、Hbの感度は58.5%から72.3に増加し、M2-PKアッセイについては73.4%から63.8%に減少した。
【0113】
4.3 95%の特異性カットオフでの各々の陽性値を用いた感度および特異性
両アッセイの結果を組み合わせることでさらなる診断情報を得ることができる(表5および6参照)。
【0114】

【0115】
表5の結果より、68の試料がHbについて陽性であるが、さらに11の試料がHb陰性でM2-PKについて陽性であると示される。単純に、HbまたはM2-PKのいずれかについてシングルポジティブの結果をCRC存在と等価であると見なす場合、陽性試料の全体数は79となり、84%の感度と言い換え得る。これは、例えばHb単独と比較した場合、有意に高い感度である。しかし、偽陽性の数も増加するために、特異性はわずか91.3%に減少する。
【0116】
4.4 RDAを使用した多変数解析後の感度および特異性
両アッセイの最適な組合せを調べるために、出願人は規則化された判別解析を使用した。この実施例において、出願人は特異性レベルを95%に固定した。
【0117】

【0118】
表6から分かるように、RDA最適化カットオフ値を用いてHbおよびM2-PKのそれぞれについての両測定を組み合わせることで、総特異性が約95%で一定に維持され、同時に診断感度が約72%から約75%に増加し得る。
【0119】
調査された試験集団において、マーカーの組合せHbおよびM2-PKはわずか0.10のエラー総数(total error)を有する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】図1は、Hb、M2-PKおよび両方の組合せアッセイのROC解析を示す。Hb(連続線)もしくはM2-PK(短い点線)単独または組合せ(長い点線)を用いた、CRCであると診断された患者(段階I〜III、UICC)対対照(GI-健常体、痔、他の腸疾患)および憩室症である患者のROC解析。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便試料において少なくとも
a) ヘモグロビン、および
b) ピルビン酸キナーゼアイソフォームM2(M2-PK)
の濃度を測定する工程、ならびに
c) 工程a)およびb)において測定された濃度を、結腸直腸癌の有無と相関する工程
を含む、生化学マーカーによりインビトロにおいて結腸直腸癌の有無を評価する方法。
【請求項2】
CEA、CYFRA21-1、CA19-9、CA72-4、NNMT、PROCおよびSAHHからなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーの測定をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記さらなるマーカーがマーカーSAHHである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
結腸直腸癌の診断における、少なくともヘモグロビンおよびM2-PKを含む、マーカーパネルの使用。
【請求項5】
ヘモグロビン、M2-PK、ならびにCEA、CYFRA21-1、CA19-9、CA72-4、NNMT、PROCおよびSAHHからなる群より選択される少なくとも1つのさらなるマーカーを含む、請求項4記載の使用。
【請求項6】
結腸直腸癌の診断における、少なくともヘモグロビン、M2-PKおよびマーカーSAHHを含むマーカーパネルの使用。
【請求項7】
ヘモグロビンおよびM2-PKそれぞれを特異的に測定するために必要な試薬、ならびに該測定を実行するための任意の補助試薬を含む、請求項1記載の方法を実行するためのキット。

【図1】
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【公表番号】特表2009−520957(P2009−520957A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−546221(P2008−546221)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2006/012217
【国際公開番号】WO2007/071366
【国際公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】