説明

係止用金具

【課題】取付対象物に定着させた後は、簡単には取り外す事ができないようにする。
【解決手段】フック又は紐状体を係止自在な係止用リング部2と、その係止用リング部2を取付対象物1に支持させるロッド状埋設取付部3とが備えられている係止用金具において、ロッド状埋設取付部3に、ロッド径方向外方に突出したアンカー部4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所謂『アイボルト』や『アイナット』と呼ばれる係止用金具をその一例として挙げることができ、フック又は紐状体を係止自在な係止用リング部と、その係止用リング部を取付対象物に支持させるロッド状埋設取付部とが備えられている係止用金具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の係止用金具としては、上述のように、アイボルトやアイナットのような係止用金具があった。
このような係止用金具の本来の用途は、重量設備(一例としては、屋外に設置される機械装置や制御盤)等の吊上げ対象物に螺着しておき、その吊上げ対象物の設置時にクレーンのフックやワイヤーを係止させて吊上げできるようにするものであった。
しかしながら、最近では、吊り上げる用途の他に、例えば、ゲートの両側の支柱や壁等に当該係止用金具を夫々埋め込んでおき、通行止めのチェーンを係止するような用途としても使用されるようになってきている。
従来のこの種の係止用金具20の構造は、図5に示すように、フックを係止自在な係止用リング部2と、その係止用リング部2を前記吊上げ対象物(取付対象物1に相当)に支持させるネジ部30(ロッド状埋設取付部に相当)が設けられていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−99123号公報(図1〜2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の係止用金具によれば、取付対象物への取り付けは、ネジ部が螺着するように締め込む操作によって実施されるわけであるが、取り付けられた状態では、緩める方向に回転操作することによって誰でもが容易に取り外す事ができる。
そして、取り外されるのみならず、持ち去られるといったことも発生しており、容易に外せないようにするために、予め、取付対象物に大きめの穴を形成しておき、その穴にネジ部を位置させると共に、ネジ部との間の空間にモルタル等の充填材を充填して固着することも実施された。
しかし、それでも、前記係止用リング部に、棒を差し込んで、無理やり螺子軸芯周りに回すと、ネジ部周りの充填材が破断して、やはり簡単に取り外されてしまう問題点があった。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、取付対象物に定着させた後は、簡単には取り外す事ができない係止用金具を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、フック又は紐状体を係止自在な係止用リング部と、その係止用リング部を取付対象物に支持させるロッド状埋設取付部とが備えられている係止用金具において、前記ロッド状埋設取付部に、ロッド径方向外方に突出したアンカー部が設けられているところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記ロッド状埋設取付部に、ロッド径方向外方に突出したアンカー部が設けられているから、前記アンカー部がその周りの充填材と強く結合し、従来のように簡単に充填材が破断することを未然に防止できるようになる。
従って、取付対象物に一度定着させた後は、簡単には取り外す事ができなくなり、取付対象物が壊されたり、係止用金具が盗難に遭うのを未然に防ぐことが可能となる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記係止用リング部は、前記埋設取付部に対して、ロッド軸芯周りに相対空回転自在に取り付けられているところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、本発明の第1の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、仮に、係止用リング部に長尺の棒を挿入して、埋設取付部毎回転させようとしても、前記係止用リング部は、前記埋設取付部に対して、ロッド軸芯周りに相対空回転自在に取り付けられているから、係止用リング部のみが空回転するだけで、取付対象物に対する埋設取付部の取付状態は、安定した状態のまま維持され易い。
従って、よりいっそう取り外し難くなる。
また、係止用リング部に作用する回転力は、故意に取り外すために第三者が加えた力に限らず、例えば、フックやチェーンに、風や、不可抗力の外力が作用して加わることもあるが、そんな場合にも、当該係止用金具が取付対象物から外れるのを防止できる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記アンカー部は、ロッド軸芯方向視で多角形形状の鍔部で構成してあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、本発明の第1又は2の特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、前記アンカー部は、ロッド軸芯方向視で多角形形状の鍔部で構成してあるから、単に埋設取付部の引抜抵抗を鍔部で確保する事の他に、埋設取付部へのロッド軸芯周りの回転力が作用する場合に、前記多角形の角や、外周平面が周りの固定材と強く接当する事によって大きな抵抗力を生み出すことができ、より外れ難く安定した取付状態を維持することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の特徴構成は、前記係止用リング部に、素材の凹凸によって表示されている意匠部が設けられているところにある。
【0013】
本発明の第4の特徴構成によれば、本発明の第1〜3の何れかの特徴構成による上述の作用効果を叶えることができるのに加えて、外観上の付加価値が、前記意匠部によって向上する。また、意匠部への表示内容としては、例えば、設置施設の名称であったり、マーク等が挙げられる。そして、仮に、当該係止用金具が盗難にあっても、意匠部の表示によって盗難品である事を特定し易くなる。
そして、意匠部そのものは、素材の凹凸によって表示されているから、ペイントによって表示されものに比べて消え難く、いつまでも意匠部の表示を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。尚、図面において従来例と同一の符号で表示した部分は、同一又は相当の部分を示している。
【0015】
〔第1実施形態〕
図1、図2は、本発明の係止用金具Tの一実施形態であるアイボルトT1を示すもので、当該アイボルトT1は、例えば、コンクリート製の支柱等の取付対象物1に、基端部を埋設することで先端側を表面から露出する状態に設置し、露出した部分に、ロープやチェーン等の紐状体や、その先端に取り付けたフック等を係止し、通行止め等の誘導として使用するといった使い方が一例として挙げられる。
【0016】
前記アイボルトT1は、前記フック又は紐状体等を係止自在な係止用リング部2と、その係止用リング部2を取付対象物1に支持させるロッド状埋設取付部3とを一体に備えて構成されている。
素材は、例えば、ステンレス鋼等の金属で構成することができ、その場合は、風雨に曝されても腐蝕し難く、耐久性の向上を図ることができる。
【0017】
前記係止用リング部2における前記埋設取付部3との境目部分は、前記埋設取付部3より大径の円柱状に形成してあり、その円柱状部2Aの外周面、及び、前記係止用リング部2の環状部2Bの外周面には、例えば、キャラクター画像や、固有名詞等の文字等を、素材の凹凸によって表示された意匠部2aが設けられている。
【0018】
前記埋設取付部3は、円柱ロッド状に形成してあり、その外周面には、径方向の外方に突出した棒状部4A(アンカー部4の一例)が一体に形成してある。前記棒状部4Aは、埋設取付部3の長手方向の中央部より先端側に配置されている。
そして、当該埋設取付部3は、前述の通り、前記取付対象物1に形成された取付穴内に配置されてモルタル等の充填材Gで一体に埋設される。
従って、アイボルトT1に外力が作用した場合、埋設取付部3の外周面と前記充填材Gとの付着力、及び、棒状部4Aによるアンカー力が発揮され、抜け難い設置状態を維持することが可能となる。
特に、棒状部4Aを、埋設取付部3の先端側に設けてあることで、取付対象部1の取付穴内の深い部分に棒状部4Aを位置させることができ、前記充填材Gのより広い範囲へのアンカー反力の確保が可能となる。
【0019】
当該実施形態のアイボルトT1によれば、外観上の付加価値が、前記意匠部2aによって向上すると共に、その意匠部2aの表示は、素材の凹凸によって表示されているから、ペイントによって表示されものに比べて消え難く、いつまでも意匠部2aの表示を維持することが可能となる。
そして、前記埋設取付部3に、ロッド径方向外方に突出した棒状部4Aが設けられているから、前記棒状部4Aがその周りの充填材Gと強く結合し、従来のように簡単に充填材Gが破断することを未然に防止でき、取付対象物1に一度定着させた後は、簡単には取り外す事ができなくなり、アイボルトT1が盗難に遭うのを未然に防ぐことが可能となる。
【0020】
〔第2実施形態〕
図3、図4は、本発明の係止用金具Tの二番目の実施形態であるアイナットT2を示すものである。
尚、第1実施形態で説明したアイボルトT1と共通する構成の説明は割愛し、異なる部位を主として説明する。
【0021】
前記アイナットT2は、前記フック又は紐状体等を係止自在な係止用リング部2と、その係止用リング部2を取付対象物1に支持させるロッド状埋設取付部3とが別体に形成してあると共に、それらは、嵌合によってロッド軸芯周りに相対空回転自在な状態に取り付け一体化が図られている。
【0022】
詳細には、係止用リング部2の円柱状部2Aには、埋設取付部3側に円形に開口した嵌合穴2bが形成してあり、この嵌合穴2bは、奥広がり形状に形成してあり、内嵌させた埋設取付部3が穴口縁部に引っ掛かることで外れ出ないように構成されている。
【0023】
一方、埋設取付部3の基端部(係止用リング部側の部分)には、前記嵌合穴2bに内嵌する円形断面の突起部3aが形成されている。この突起部3aは、先細り形状の進入先部5と、それに隣接した縮径部6とが設けられており、前記嵌合穴2bに内嵌した状態で、進入先部5と縮径部6との境目の段部5aが穴口縁部の裏に引っ掛かるように形成されている。従って、両者は、嵌合したままの状態でロッド軸芯周りに相対回転できるように連結されている。
そして、係止用リング部2と埋設取付部3との嵌合は、当該実施形態の場合は、無理嵌めによって行っており、そうすることで、螺子嵌合等では外れる危険性があるのに対して、嵌合状態を長期に亘って持続する事ができ、不用意に脱落したり、取り去られるのを未然に防止する事が可能となる。
【0024】
また、埋設取付部3の先端部は、多角形形状の鍔状部4B(アンカー部4の一例)が形成してある。当該実施形態においては、6角形の例を挙げて説明する。
前記鍔状部4Bは、取付対象物1に埋設された状態では、全周にわたった引抜抵抗となるから、アイナットT2のより強固な固定が可能となる。
更には、外周面に、六つの頂点と、それら頂点間の平面とを有しており、仮に、何らかの原因で埋設取付部3にロッド軸芯周りの回転外力が作用した場合に、前記頂点や平面が回転に対する抵抗力を発揮でき、アイナットT2の固定が、より強固なものとなる。
【0025】
当該実施形態のアイナットT2によれば、仮に、係止用リング部2に長尺の棒を挿入して、故意に埋設取付部毎回転させようとしたり、アイナットT2に取り付けたフックやチェーン等に、風や、不可抗力の外力が作用しても、前記係止用リング部2は、前記埋設取付部3に対して、ロッド軸芯周りに相対空回転自在に取り付けられているから、係止用リング部2のみが空回転するだけで、取付対象物1に回転力がそのまま伝わって充填材が破断するような事態は防止し易くなる。
そして、前記アンカー部は、ロッド軸芯方向視で多角形形状の鍔状部4Bで構成してあるから、単に埋設取付部1の引抜抵抗を鍔状部4Bで確保する事の他に、鍔状部4Bの前記多角形の角や、外周平面が周りの充填材Gと強く接当する事によって大きな抵抗力を生み出すことができ、より外れ難く安定した取付状態を維持することが可能となる。
【0026】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0027】
〈1〉 当該係止用金具Tを取り付ける取付対象物1は、先の実施形態で説明した支柱に限るものではなく、他の一例としては、壁や、建物躯体等も挙げられ、要するに、当該係止用金具金具Tを取り付ける取付穴を備えたものであればよく、それらを総称して取付対象物1という。
〈2〉 前記係止用金具Tは、第1実施形態で説明したように、係止用リング部2とロッド状埋設取付部3とが一体に成形されたもの限るものではなく、第2実施形態のように、それぞれ別体に形成してあるものであってもよい。また、別体に形成した場合でも、必ずしも、第2実施形態で説明したように、係止用リング部2とロッド状埋設取付部3とがロッド軸芯周りに相対空回転自在に取り付けられているものに限らない。
〈3〉 前記アンカー部4は、第1実施形態で説明した棒状部4Aに限るものではなく、第2実施形態で説明した鍔状部4Bであってもよく、更には、それらの組み合わせであったり、複数箇所に設けるものであってもよい。また、形状的には、それぞれ変更が可能で、要するに、前記ロッド状埋設取付部3に、ロッド径方向外方に突出してアンカー効果を期待できるものであればよく、それらを含めてアンカー部4と総称する。
【0028】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】第1実施形態の係止用金具の設置状況を示す側面図
【図2】第1実施形態の係止用金具の埋設取付部を示す断面図
【図3】第2実施形態の係止用金具の設置状況を示す一部切欠き側面図
【図4】第2実施形態の係止用金具の埋設取付部を示す断面図
【図5】従来例の係止用金具の設置状況を示す側面図
【符号の説明】
【0030】
1 取付対象物
2 係止用リング部
2a 意匠部
3 ロッド状埋設取付部
4 アンカー部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フック又は紐状体を係止自在な係止用リング部と、その係止用リング部を取付対象物に支持させるロッド状埋設取付部とが備えられている係止用金具であって、
前記ロッド状埋設取付部に、ロッド径方向外方に突出したアンカー部が設けられている係止用金具。
【請求項2】
前記係止用リング部は、前記埋設取付部に対して、ロッド軸芯周りに相対空回転自在に取り付けられている請求項1に記載の係止用金具。
【請求項3】
前記アンカー部は、ロッド軸芯方向視で多角形形状の鍔部で構成してある請求項1又は2に記載の係止用金具。
【請求項4】
前記係止用リング部に、素材の凹凸によって表示されている意匠部が設けられている請求項1〜3の何れか一項に記載の係止用金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−223943(P2008−223943A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−65372(P2007−65372)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(500536526)浪速鉄工株式会社 (5)