説明

保存安定性を有する高温エアレーション乳製品

【課題】約10%から約66%の乳成分、約20から約30%の脂肪成分、および約0.5から約2.5%の安定剤系を含む、保存安定で高含水率の、高温エアレーション乳製品が開示される。
【解決手段】安定剤系は、一方のガムがゼラチンである少なくとも2種ガム系、またはガムの1種がゼラチンまたはカラギーナンであり、残りのガムが異なる少なくとも3種ガム系を含む。混合物は、混合物が高温なままである間に、約2%から約20%のオーバーランまでエアレーションされ、引き続き、高温、すなわち、約140°F(60℃)から約180°F(82℃)で包装へ充填される。生成した乳製品は、無菌加工または無菌包装の技法を必要とせずに、周囲温度で保存されたときに少なくとも12カ月、または冷蔵温度で保存されたときに少なくとも18カ月の保存寿命を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、保存安定性を有する高温エアレーション乳製品に関する。
【背景技術】
【0002】
乳製品に望ましいふわふわした軽いテクスチャーおよび外観、ならびに塗布可能またはディップ可能なテクスチャーを与えるために、包装の前に乳製品をエアレーションすることは、一般的である。しかし、エアレーション後、そのような乳製品は、容易に保存安定にすることはできない。高温、すなわち、乳製品を使用可能にし、それが保存安定であることを可能にする温度の下で乳製品をエアレーションするか、またはエアレーション後引き続き高温処理すると、エアレーション乳製品は、一般に、気泡構造を維持できない。したがって、乳製品のエアレーションは、一般に、より低い温度、すなわち、乳製品を無菌処理せず、したがって、該製品の妥当な保存安定性を維持するために、より費用のかかる無菌包装をその後に必要とすることになる温度で実施される。これらの場合、乳製品を、より低い温度でエアレーションする前に、最初に高温で処理し、包装するまで絶対滅菌条件下で維持しない限り、乳製品は、保存安定であると見なすことができない。
【0003】
したがって、乳製品が低い水分活性(すなわち、硬くて噛み応えのある、望ましくないテクスチャーをしばしば生み出す、0.85未満のAw)を有する場合、または乳製品を最初の加熱加工および中温(例えば、<100°F(38℃))への冷却後にエアレーションし、次いで気密封止包装に無菌充填する場合(通常、非常に高価なプロセスおよび包装の組合せ)にのみ、許容可能な気泡含有テクスチャーを有する保存安定な乳製品の製造は一般に可能である。これらの機能パラメーターおよび/またはプロセスパラメーターなしでは、エアレーション乳製品は、しばしば、冷蔵保存を必要とし、その場合にも、保存寿命が比較的短いことが多い。
【0004】
市販のホイップクリームチーズおよび/または気泡含有クリームチーズは、通常、保存安定ではない。高温で充填および包装しようとする試みは、しばしば所望の気泡構造に著しいダメージをもたらす。したがって、市販のホイップクリームチーズ製品および/または気泡含有クリームチーズ製品は、より低い温度でエアレーションし、包装の前に冷却する。
【0005】
特許文献1は、最初に低温(すなわち、約4℃)である間にエアレーションし、次いで、高温(48℃(118°F)を超える)のゼラチン水溶液と混合する、加工乳製品を開示している。該乳製品、すなわち、クリーム状のベース成分は、混合時、ゼラチンなどの他の食品成分の添加の前またはその間に、実質的にデエアレーションされる。加工乳製品のこのデエアレーション形態のみが、長期保存用に冷凍することができる安定な製品を提供する。生成した加工乳製品は、冷蔵件下または冷凍条件下での保存を必要とし、さらに、デエアレーションされている。
【0006】
乳系製品の中には、様々な添加剤および安定剤を用いて製造することができるものもある。特許文献2は、耐ヒートショック性を付与し、良好な味覚およびテクスチャーを維持するために、デンプン加水分解物を添加した冷菓組成物について開示している。いくつかの配合は、耐ヒートショック性を補助するための安定化ガムを含んでもよく、そのような安定化ガム(最大で約0.2%)は、許容できないガム様の口当たりをもたらす恐れがあり、また、最終組成物を所望されているより硬くする傾向がある。エアレーションは、低温殺菌、均質化、および約4℃への冷却後にのみ行なわれる。これらは、保存安定ではなく、気泡構造を任意の相当の時間維持するために、冷凍保存を必要とする。
【0007】
一般に、乳製品に安定剤を使用するとき、生成する製品に添加する量は、注意深く調整しなければならず、さもなければ、最終的なテクスチャーおよび稠度が、所望の最終製品とは類似していない。例えば、添加する安定化剤が多すぎると、噛み応えがある、および/またはゴム状のテクスチャーが得られる。十分な安定剤が使用されないと、テクスチャーは、エアレーションを十分に保持できない。さらに、エアレーション製品が室温で軟らかすぎると、水または他の液体が乳製品から浸出し、離液が発生する恐れがある。
【0008】
機械的手段による泡立てに好適な、カプチーノなどの乳製品が、特許文献3で開示されている。生成したカプチーノ飲料は、その上面に泡または泡沫を有する。カプチーノ飲料は、通例のミルク成分(すなわち、脱脂乳、半脱脂乳、全脂肪乳)に加えて0.3〜2%の加水分解乳タンパク質を含有する。該乳製品は、水を用いて再構成する、乾燥または濃縮された乳製品を使用して調製することができ、再構成製品は、機械的手段(すなわち、剪断力または噴射ガスの適用による)による泡立てに好適である。形成された泡は、該製品の性質上、該飲料が消費されるのに十分長く持続すればよい。さらに、該乳製品は、イヌリンまたはカラギーナンなどの、1%未満の特定のガムおよび2%未満のオリゴ糖類または多糖類を、脂肪代替物として含有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6503553号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/016094号パンフレット
【特許文献3】欧州特許出願第1329162号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、保存安定性および安定な気泡構造を有する、高温処理されたエアレーション乳製品に対する要求が依然としてある。本発明は、そのような製品を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
高含水率乳製品および高含水率乳製品の製造方法を開示する。高含水率乳製品は、高温(すなわち、約140°F(60℃)を超える)でエアレーションでき、および気泡構造をまだ維持している間に包装することができる。高含水率乳製品は、乳食品ベース、脂肪、および親水コロイド安定化系を含む。より具体的には、高温で高含水率乳製品の気泡構造を維持することができる、その一方がゼラチンである少なくとも2種のガム、またはそのうちの1種がゼラチンまたはカラギーナンである少なくとも3種のガムを含有する、親水コロイドの特有のブレンドを使用することができる。このブレンドが、高価な無菌充填および無菌包装を必要とせずに、非常に長い冷蔵保存寿命を有する、1種または複数の保存安定な製品の製造を可能にする。
【0012】
例えば、高含水率の保存安定乳製品は、約10から約66%の乳食品ベース、約20から約30%の脂肪、および約0.5から約2.5%の親水コロイド安定化系を含むことができる。乳食品は、約140°F(60℃)以上、好ましくは150°F(66℃)以上の温度で、約2%から約20%のオーバーランまでエアレーションすることができる。エアレーションされた乳混合物または乳製品は、気泡構造に悪影響を及ぼすことなく、高温で処理することができる。脂肪は、総脂肪含量の約4.25%から約20%の高融点脂肪をさらに含む。親水コロイド安定剤系は、一方がゼラチンである少なくとも2種のガム、または1種がゼラチンまたはカラギーナンである3種以上のガムのブレンドを含むことができる。
【0013】
親水コロイド系の安定化成分のブレンドを使用した本発明の高含水率乳製品は、高温で高含水率乳製品の気泡構造を維持するのに十分な粘度を有する。親水コロイド安定化系は、低いpH条件(すなわち、約3.7から約4.6)で安定であり、高温でエアレーションでき、気泡構造は、高温で、次いで、冷却時および保存の間、維持される。高含水率乳製品は、冷却時に、過度に粘性を帯びることなくまたはガム様にならない。これらの乳食品は、高温でエアレーションし、次いで、加工および包装することができ、結果として低価格で保存安定性をもたらし、さらに、冷却時に好ましい食感品質をもたらす。さらに、高温エアレーションおよび高温充填された乳製品は、包装前に中温または低温でエアレーションされた保存安定な製品が必要とするような、高価な無菌加工および無菌包装を必要としない。高温エアレーション乳製品は、周囲温度で保存安定であり、冷蔵を必要としない。これらの乳製品は、テイクアウトスナックとしての使用に理想的に適している。さらに、これらの乳製品は、冷蔵が利用可能ではない、および/または信頼できない領域での使用に理想的に適している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアレーションされた保存安定なクリームチーズ製品の一般的な製造方法の概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
保存安定なエアレーション乳製品および製造方法を提供する。該乳製品は、乳食品ベース、脂肪、および親水コロイド安定化系を含み、高温(すなわち、約140°F(60℃)を超える)でまとめてエアレーションされ、それぞれの包装へ高温充填することができる。本発明の一般的方法を、図1に例示する。特に、親水コロイド安定剤系は、少なくとも2種のガムのブレンドを含むことができる。2種ガムブレンドに関して、一方はゼラチンである。3種以上のガムのブレンドでは、1種のガムがゼラチンまたはカラギーナンである。安定剤は、エアレーション乳製品への安定性の付与を促進し、したがって、高温でもその気泡構造の維持を促進する。エアレーションのレベルは、約2%から約20%のオーバーランと測定することができる。さらに、脂肪は、気泡構造の安定性を促進するために、高融点脂肪(約100°F(38℃)から約110°F(43℃)の融点を有する)を含み、結果として保存安定性をもたらす。さらに、最終製品は、例えば、スプーンまたはクラッカーを使用して、包装から容易に取り出す、またはすくい出すことができるように、容易に「すくい出し可能(scoopable)」である。生成する乳製品は、保存安定であり、すなわち、高温でのエアレーション後に、冷蔵または冷凍を必要とせず、包装の高温充填時にいかなるタイプの無菌包装技法も必要としない。
【0016】
「オーバーラン」は、エアレーション製品の体積の増加を指し、泡立ち能力とも呼ばれる。オーバーランは、以下の式:(エアレーション後の食品体積−エアレーション前の食品体積)/(エアレーション前の食品体積)に従って測定される。オーバーランは、パーセント値で報告される。「エアレーションされた」とは、食材へのガスの取込みを指す。本明細書での目的のために、ガスは特に限定せず、空気、窒素、二酸化炭素、亜酸化窒素、ガスの組合せなどでもよい。
【0017】
乳成分は、クリームチーズなどの乳系食品成分を包含することができる。一態様では、まだエアレーションされていないクリームチーズを使用することができ、約10から約66重量%の間の量で供給することができる。別の態様では、まだエアレーションされていないがガムまたは他の安定剤を含んでいてもよいクリームチーズを使用することができるが、一般に、そのようなガムは、約1%未満の量である。さらに別の態様では、乳成分からの分離後、しかし任意の安定剤の添加前に、非安定化(unstabilized)クリームチーズを乳製品ベース成分として使用することができるように、クリームチーズカードを使用することができる。クリームチーズが乳成分として使用される場合、約30〜35%を混合物へ添加することが好ましいが、約66%まで添加することができる。クリームチーズ成分は、全脂肪チーズまたはライトクリームチーズを含むことができる。乳成分の量は、該製品の最終的に滑らかでふわふわしたテクスチャーを付与することができる、良好なレベルのタンパク質および脂肪を最終製品中に維持するのに重要である。しかし、乳成分が多すぎる(すなわち、>66%)と、特に乳脂肪が主に低融点脂肪を含む場合、乳脂肪レベルが高くなりすぎ、その結果、冷却時にマトリックス中で空気セルを十分に保持できなくなる。さらに、乳成分が多すぎると、非常に高い乳糖レベルをもたらすことになり、乳糖結晶を生成し、最終製品にざらざらしたテクスチャーをもたらす。
【0018】
脂肪源は、総量の約20重量%から約30重量%の間で供給することができる。脂肪源は、クリームチーズ(すなわち、全脂肪クリームチーズまたは低脂肪クリームチーズ)、ココナッツ油、パーム油、水添大豆油、水添パーム核油、またはそれらの任意の組合せを含む群から選択することができる。脂肪源は、総脂肪含量全体に寄与するであろう約100°F(38℃)から約110°F(43℃)の間の融点を有する高融点脂肪を、約4.25重量%から約20重量%の間の量でさらに含むことができる。一態様では、高融点脂肪は、動物性または植物性の脂肪、あるいはそれらの組合せを包含することができる。高融点脂肪のいくつかの例としては、パーム油、パーム核油、ココナッツ油、および水添大豆油が挙げられる。パーム核油を使用することが好ましい。高融点脂肪は、脂肪源全体の必要な成分である。
【0019】
理論によって縛られることを望むわけではないが、そのような高融点脂肪が、冷却時にマトリックス中のガスセルの維持を助けると考えられている。該製品は、約150°F(68℃)から約180°F(82℃)の間の温度で包装され、該製品が冷却されるにつれて、空気が、空気セルマトリックスから脱出しようとする。高融点脂肪は、冷却の間にその空気セルを捕捉し、そのエアレーションを維持すると考えられている。
【0020】
安定剤系は、約0.5重量%から約2.5重量%の間の量で供給される親水コロイド系安定剤系を包含することができる。親水コロイド系安定剤系は、少なくとも2種のガムのブレンドを含むことができ、3種以上のガムのブレンドを含んでもよい。乳製品で使用することができる追加の安定剤は、イナゴマメガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、メトセル(methocel)などを包含することができる。2種のガムの安定剤系が使用される場合、第1のガムはゼラチンであり、第2のガムは、イナゴマメガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、メトセルなどからなる群から選択されるガムであり、第2のガムは、カラギーナンであることはできない。3種のガムの安定剤系が使用される場合、第1のガムは、ゼラチンまたはカラギーナンであり、残りのガムは、イナゴマメガム、カルボキシメチルセルロース(CMC)、キサンタンガム、メトセルなどからなる群から選択され、ゼラチンとカラギーナンは、同時に使用することができない。各ガムは、一般に、高温で該製品にとろみをもたらし、気泡構造の維持を促進するために、空気またはガスを保持することができるネットワークまたは構造を提供することができる。ガムまたは安定剤の総量は、約2.5%を上回るべきではなく、そのレベルが高すぎると、該製品粘度が硬くなりすぎる(粘度が高く、硬くなりすぎる)(すなわち、3000Pa以上)。同様に、ゼラチンとカラギーナンが同時に使用されると、該製品粘度が硬くなりすぎる(粘度が高く、硬くなりすぎる)。
【0021】
一態様では、2種ガム系を安定剤として使用することができる。安定剤として可能な2種ガム系は、そのガムの一方がゼラチンである限り、上述した群の任意の2種のガムを含むことができる。したがって、イナゴマメガムとゼラチン、またはCMCとゼラチンなどのブレンドを使用することができる。ゼラチンは、2種ガム系でエアレーションを維持するために必要なネットワークの提供を促進する。別の態様では、安定剤として3種以上のガムを含有する系も使用することができる。ガムのうちの1種は、ゼラチンまたはカラギーナンでなければならない。例えば、CMC、イナゴマメガムおよびゼラチンを組み合わせることができ、または、CMC、イナゴマメガム、およびカラギーナンを組み合わせることなどができる。したがって、ゼラチンは、3種以上のガム系では、必ずしも必要ではなく、その場合、ゼラチン様の構造を有するカラギーナンを使用しなければならない。しかし、3種ガム系は、ゼラチンとカラギーナンの両方を含有すべきではない。ゼラチン(またはゼラチン様カラギーナン)は、冷却時に空気セル構造を維持すること、ならびに、該製品に望ましい融解特性をもたらすことができる。カラギーナンを使用するとき、カラギーナンのカッパ種、すなわち、K−カラギーナンを利用することが好ましい。3タイプのカラギーナン、カッパ、イオタ、およびラムダがある。K−カラギーナンは、ゼラチン代替物として使用することができるように、ゼラチンに類似した硬いゲルを形成することができる。したがって、本出願でカラギーナンについて言及する場合はいつでも、K−カラギーナンを意味していることを理解されたい。
【0022】
理論によって縛られることを望むわけではないが、該製品が冷却するにつれてマトリックス内に捕捉される空気セルを分離するために、特に3種ガム系で、ゼラチン、およびカラギーナンなどのゼラチン様の物質が必要とされると考えられている。一般に、ゼラチンは、約100°F(38℃)で融解するが、その温度未満では、乳製品に硬い構造をもたらし、エアレーション後に空気セルを分離したままにする。ゼラチンまたはカラギーナンの総量が、特定の量未満(すなわち、ゼラチンに関しては約0.4%未満、またはカラギーナンに関しては約0.1%未満)に低下すると、該構造が、自己崩壊(collapse upon itself)し、高密度でエアレーションされていない構造を形成する恐れがある。3種ガム系がゼラチンを含まない場合、上述したように、カラギーナンを含むべきである。さらに、ゼラチンは、該食品のゲル化特性を弱いゲルから硬いゲルへ増大させること、乳化剤および泡沫安定性(すなわち、該製品の表面張力を低下させて空気の取込みを可能にし、表面活性特性が、空気セルの均一な分散を可能にする)をもたらすこと、保存の間の水分離を予防するための水結合剤として作用すること、ならびにテクスチャービルダーとして作用すること(すなわち、滑らかでクリーム状のテクスチャーに寄与すること)などの、多数の他の有益な特性を該乳製品にもたらす。
【0023】
一般に、すべてのタイプのゼラチンが、該安定剤系におけるガムの1種として作用すると見込まれる。例えば、それらがゼラチンの大部分を構成する場合、牛肉ベースおよび豚肉ベースのゼラチンの両方が作用すると見込まれる。ゼラチンは、一般に、その原料、製造方法、純度などに応じて異なる。任意のタイプのゼラチン即ち任意の硬度のものを使用することができるが、200ブルーム強さまたは240ブルーム強さのものを使用することが好ましい。任意の他の安定剤なしでゼラチンまたはカラギーナンを使用すると、硬すぎるテクスチャーを有する乳製品をもたらす。クリーミーさ、テクスチャーの提供を促進するため、およびゼラチンまたはカラギーナンが寄与する硬化特性のバランスを取るために、他の安定剤(すなわち、少なくとも1種の追加のガムなど)が必要とされる。同様に、ゼラチンおよびカラギーナンのみを含有する2種ガム系が製造されると、それも硬すぎる。
【0024】
2種ガム系を使用するとき、乳製品全体に基づいて約0.4%から約1%のゼラチンが配合物中で使用され、第2のガムが、ほぼ同じまたはそれ以下の量で構成することが好ましい。第2のガムがゼラチンのレベルを超えて構成すると、一般に、噛み応えがあって水分が多すぎる、望ましくない製品がもたらされる恐れがある。同様に、3種ガム系が使用されるとき、乳製品全体に基づいて約0.4%から約1%のゼラチン、または乳製品全体に基づいて約0.1%から約0.4%のカラギーナンが使用され、最大約2.5%の総ガム含量で残部が少なくとも2種の他のガムを含むことが好ましい。一般に、安定剤系のブレンド中で使用されるガムのタイプ、ならびに使用されるガムの比は、乳製品の最終テクスチャーの特性に影響を及ぼす。
【0025】
乳成分混合物への添加の前に、安定剤系を予めブレンドすることが好ましい。安定剤系は、追加の成分(すなわち、塩またはソルビン酸)なしでガムのみから製造することができるが、予めブレンドされた安定剤系は、該配合物中で使用することができる他の乾燥添加剤(すなわち、塩またはソルビン酸)も含有することができ、それを含有することが好ましい。均質な安定剤系の形成を促進するため、および安定剤系をより完全に分散させるために、これらの追加の成分を安定剤系へ添加することが好ましい。追加の成分を用いる場合、あらかじめブレンドする代わりに、追加の成分を最初に安定剤系混合物ではなく乳混合物へ直接添加することができるが、結果として、安定剤系は、完全に分散することはできない。安定剤系は、予めブレンドされることなく(すなわち、ガムが別々に添加される)、乳混合物へ直接添加することもできる。しかし、個別に、または予めブレンドされた形態で、他の追加の添加剤なしで安定剤系成分を添加すると、凝集が生じる恐れがあり、それにより、所望の均質な混合物を得るために、後からさらに混合すること、および/または高剪断混合することが必要となる。したがって、最初に安定剤系と様々な追加の成分(すなわち、塩およびソルビン酸)を別に混合し、次いで、これを乳成分混合物へ添加することが好ましい。
【0026】
安定剤系は、安定剤系なしの低温エアレーションクリームチーズ製品と比較して類似のテクスチャーを有する高温エアレーション乳製品を生じることができる。安定剤系に関しては、それは、一態様において、安定剤系中のみにおけるガムの総量が、約55%から約100%を構成することができるように、少なくとも2種のガムおよび任意の追加の添加剤を含むことができ、この割合はクリームチーズ製品全体の約0.5%から約2.5%と等しい。例えば、安定剤系は、少なくとも2種のガムの他に、塩およびソルビン酸、および/または他の添加剤も含むことができる。一態様では、いずれもクリームチーズ製品全体の配合に基づいて、約0.3%から約0.6%の塩、および最大で約0.1%のソルビン酸を添加することができる。
【0027】
生成した混合物を、該混合物のエアレーションの前またはエアレーションと同時に、高温、すなわち、約140°F(60℃)を超える温度まで加熱する。最低でも、温度は、少なくとも微生物生育を回避するのに十分高くなければならない。一般に、エアレーション時の温度は、約150°F(66℃)より高く、最高温度は約180°F(82℃)である。エアレーションの量またはオーバーランパーセントは、約2から約20%のオーバーラン、または具体的には、約2から約16%のオーバーランであることができる。一般に、約2%未満のオーバーランは、望ましい体積増加およびテクスチャー変化をもたらすのに低すぎる。一般に、乳製品に軽くてふわふわしたテクスチャーをもたらすために、十分な空気またはガスが供給されなければならない。乳製品をエアレーションするために使用されるガスは、窒素または空気などの、当技術分野で知られている任意のものであることができる。該配合におけるクリームチーズのパーセントは、最終製品におけるオーバーランの量に影響を及ぼすことができる。例えば、約66%を超えるクリームチーズが使用されると、オーバーランは低すぎる。したがって、約66%未満および約10%を超える量のクリームチーズが好ましい。
【0028】
エアレーションステップ後、生成した高温乳製品は、その高温で包装することができる。エアレーション乳製品の温度は、冷却する必要はなく、したがって、所望の包装に高温充填される。したがって、乳製品の包装時の温度も、約140°F(60℃)を超え、一般に約150°F(66℃)を超える。一般に、包装は、約150°F(66℃)を超えるが約180°F(82℃)未満である温度で、高温充填および高温包装される。包装を高温充填したら、気密封止し、冷却させる。一般に、周囲温度で包装された高温乳製品は、約24時間以内におおよそ室温まで冷却する。所望であれば、当然のことながら、該製品は、従来の技法を使用してより早く冷却することができる。包装された乳製品は、無菌加工または無菌包装の技法を必要とせずに、周囲温度で保存されたときは少なくとも約3カ月、好ましくは少なくとも約12カ月、および冷蔵温度で保存されたときは少なくとも約18カ月の保存寿命を有することができる。
【0029】
添加することができる他の任意選択の成分は、タンパク質、塩、酸または塩基、香料、香辛料、甘味料、着色料などを包含することができる。一般に、pHは、任意の一般の食品用酸味料(例えば、クエン酸、乳酸、酢酸、または塩酸)を使用して、約3.7から約4.6pHの間に調整する。ソルビン酸または安息香酸またはそれらの塩などの保存剤は、このpH範囲で添加することができる。
【0030】
様々なタンパク質源も、該配合物へ添加することができ、このタンパク質源はクリームチーズ、乳清タンパク質濃縮物、脱脂粉乳、乳タンパク質濃縮物などを包含することができる。使用される乳清タンパク質濃縮物(WPC)は、WPC34、WPC53、およびWPC80などの多くの種類を包含することができる。タンパク質源は、約3から約10重量%の間の量で存在することができる。さらに、多糖成分(例えば、イヌリン)を、タンパク質源の代わりに、またはタンパク質に加えて含むことができる。
【0031】
最終エアレーション乳製品の高温粘度は、一般に、約180°F(82℃)で、約4から約60パスカルの間である。最終乳製品の低温粘度は、一般に、室温で、約200から約1300パスカルの間である。さらに、最終製品の水分活性は、約1.0であることができ、約50から約75%、好ましくは約50から約60%の水分含量を有することができる。該製品は、高含水率乳製品であると考えられている。
【0032】
エアレーション乳製品組成物の製造方法は、混合物を形成するために、約10から約66%の乳食品ベース、約20から約30%の脂肪、および約0.5から約2.5%の親水コロイド系安定剤系を共に混合することを含むことができる。次いで、その混合物は、約140°F(60℃)以上の温度で、約2%から約20%のオーバーランまでエアレーションすることができる。次いで、エアレーション乳食品は、約150°F(66℃)と約180°F(82℃)の間の温度で、包装へ高温充填し、その包装は、気密封止される。無菌包装技法は必要とされない。包装されたエアレーション乳食品は、官能的に好ましい、高含水率で保存安定なエアレーション乳食品を提供するために、冷却される。
【0033】
図1を参照すると、全体的に本発明の方法を例示するフローチャートが示されている。最初に、タンパク質源などの任意選択の成分を、水と合わせ、混合して、溶液を形成する。次いで、その溶液を、クリームチーズと合わせ、混合して、クリームチーズ混合物を形成する。次いで、クリームチーズ混合物のpHを、約3.7から約4.6へ調整する。次いで、その混合物を、約140°F(60℃)から約180°F(82℃)の間の温度に加熱する。次いで、高融点脂肪を含む脂肪源が該混合物へ添加され、その混合物を均質化する。次いで、安定剤系成分を予めブレンドし、均質化後の混合物へ添加する。次いで、その混合物を、150°F(66℃)を超える温度まで加熱し、しばらく保持する。加熱後、その高温混合物を、該混合物をエアレーションするために泡立てる。次いで、高温エアレーションクリームチーズ製品を、包装へ高温充填し、封止する。次いで、該クリームチーズは、その封止包装の中で冷却される。
【0034】
以下の実施例は、本発明の、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品を調製するための特定のプロセスを記載および例示する。これらの実施例は、単に例示的なものであり、その範囲または趣旨を限定するものではない。当業者は、これらの実施例で記載した材料、条件、およびプロセスの変法を使用することができることを容易に理解しよう。別段の定めのない限り、すべてのパーセントおよび比は、重量換算である。
【0035】
[実施例1]
この実施例は、約54%の水分、約25%の脂肪、および約5%のタンパク質を含有する、ゼラチンを用いた3種ガム安定剤系を使用した、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の製造のために使用するサンプル配合物の調製を示す。約135グラムのイヌリン、約104グラムの乳性タンパク質濃縮物34(WPC−34)および約10.95グラムのリン酸三カルシウム(TCP)を約502.5グラムの水に添加し、約5分ゆっくり混合した。次いで、その水溶液(752.5g、60%)を全脂肪クリームチーズ(504g、40%)に添加し、これにより、安定剤系の添加後の最終製品中のクリームチーズ全体が約34%になる。次いで、クリームチーズを融解するために、生成した混合物を約100°F(38℃)まで加熱した。pHを約4.1に調整するために、5N HCl(約1%)を使用した。次いで、pH調製混合物を約140°F(60℃)まで加熱した。融解した水添パーム油(約13.2%)を該混合物へ添加し、十分に混合し、次いで、生成した混合物を、第1段階で3000psi、第2段階で500psiで均質化した(すなわち、3000psi/500psi)。該混合物を均質化した後、約1472グラムを秤量し、第2のサーモミックスへ添加した。均質化混合物は、約9.18%のイヌリン、約7.1%のWPC−34、約0.74%のTCP、約34.19%の水、約34.29%のクリームチーズ、約1.02%のHCl、および約13.47%のパーム油を含有していた。
【0036】
3種ガム安定剤系を調製した。3種ガム安定剤系は、CMC、イナゴマメガム、ゼラチン、ソルビン酸、および塩を含有していた。乾燥成分を予めブレンドした(表1−2参照)。上述の均質化混合物(約97.99%)へ、予めブレンドした安定剤系(約2.06%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を約180°F(82℃)まで加熱し、約5分その温度で保持した。次いで、この高温クリームチーズスラリーをホバートジャケット付きミキサー(モデル番号N−50)へ注入し、約150°F(66℃)で、高速(すなわち、速度設定3)ホイップにより、約3分エアレーションした。オーバーランは約12.5%であった。そのサンプルを約150°F(66℃)の間に8オンスの管へ高温充填して封止し、各サンプルを、管内で冷却させた。
【0037】
下記の表1−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、約170°F(77℃)から約180°F(82℃)の温度で約4.38Paの高温粘度、およびおおよそ室温で約1219Paの低温粘度を有していた。生成した製品は、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0038】
【表1】

【0039】
[実施例2]
高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の製造のために、実施例1と同様であるが、3種ガム安定剤系を含んでおり、実施例1より多い量(約47%)のクリームチーズを含有する、別のサンプル配合物を使用した。ゼラチンの代わりに使用したカラギーナンを含めた各成分およびそれらの量を表2−1に示す。実施例1で用いたと同じ製造方法を使用した。均質化混合物は、約9.13%のイヌリン、約4.39%のWPC−34、約0.72%のTCP、約28.13%の水、約47.68%のクリームチーズ、約1.12%のHCl、および約8.84%のパーム油を含有していた。
【0040】
3種ガム安定剤系を調製した。この実施例の安定剤系は、CMC、イナゴマメガム、カラギーナンガム(例えば、カッパカラギーナン)、ソルビン酸、および塩を含有していた。表2−2に示すように、乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.58%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.42%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約2.70%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例1と同様に高温充填した。
【0041】
下記の表2−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約4.38Paの高温粘度および約377Paの低温粘度を有していた。生成した製品は、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0042】
【表2】

【0043】
[実施例3]
より高レベルのクリームチーズ(約60%)およびより高レベルの3種ガム安定剤を用いることを除いては実施例2と同様である、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の製造のために、類似のサンプル配合物を使用した。各成分および量を表3−1に示す。実施例1および2と同じ方法を使用した。均質化混合物は、約9.12%のイヌリン、約1.73%のWPC−34、約0.70%のTCP、約22.20%の水、約60.81%のクリームチーズ、約1.11%のHCl、および約4.33%のパーム油を含有していた。
【0044】
3種ガム安定剤系を調製した。この実施例の安定剤系は、CMC、イナゴマメガム、カラギーナンガム(例えば、K−カラギーナン)、ソルビン酸、および塩を含有していた。表3−2に示すように、乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.67%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.33%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約3.00%のオーバーランを得た。そのサンプルを、実施例1と同様に高温充填した。
【0045】
下記の表3−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約13Paの高温粘度および約465Paの低温粘度を有していた。生成した製品は、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0046】
【表3】

【0047】
[実施例4]
比較サンプル製品は、約54%の水分、約25%の脂肪、および約5%のタンパク質を含有し、ゼラチンもカラギーナンも含有しない3種ガム安定剤系を含む。その配合を表4−1に示し、その安定剤配合を表4−2に示す。実施例1と同じ方法を使用した。均質化混合物は、約9.12%のイヌリン、約6.0%のWPC−34、約0.69%のTCP、約26.62%の水、約47.65%のクリームチーズ、約1.12%のHCl、および約8.80%のパーム油を含有していた。
【0048】
3種ガム安定剤系を調製した。この比較実施例の安定剤系は、CMC、イナゴマメガム、キサンタンガム、ソルビン酸、および塩を含有していた。乾燥成分を予めブレンドした(表4−2参照)。上述の均質化混合物(約98.64%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.36%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約3.46%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例1と同様に高温充填した。
【0049】
下記の表4−1に、高含水率のクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約21.9Paの高温粘度および約1812Paの低温粘度を有していた。
【0050】
ゼラチンもカラギーナンもなしに調製したこのサンプルは、先の実施例のエアレーションクリームチーズ製品とは著しく異なるテクスチャーおよび稠度を有していた。そのテクスチャーは、噛み応えがあってゴム様であり、レザー様(leather−like)の稠度であった。理論によって縛られることを望むわけではないが、許容不能なテクスチャーは、所望の気泡構造を持続させるための適切な支持構造の欠如が原因であった。このことは、安定剤系におけるゼラチンまたはカラギーナンの欠如が原因であった可能性がある。
【0051】
【表4】

【0052】
[実施例5]
実施例1のようであるが2種ガム安定剤系を含んでおり、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の製造のために、別のサンプル配合物を使用した。ゼラチンを含めた各成分およびそれらの量を表5−1に示す。実施例1で用いたと同じ製造方法を使用した。均質化混合物は、約9.17%のイヌリン、約7.09%のWPC−34、約0.74%のTCP、約34.13%の水、約34.44%のクリームチーズ、約1.02%のHCl、および約13.40%のパーム油を含有していた。
【0053】
2種ガム安定剤系を調製した。この実施例の安定剤系は、イナゴマメガム、ゼラチン、ソルビン酸、および塩を含有していた。表5−2に示す量を使用して、乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.14%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.86%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約9.8%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例1と同様に高温充填した。
【0054】
下記の表5−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約13.16Paの高温粘度および約1189Paの低温粘度を有していた。生成した製品は、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0055】
【表5】

【0056】
[実施例6]
より高レベルのクリームチーズ(約60%)を有することを除いては実施例5と類似の、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品のサンプル配合物を製造した。各成分および量を表6−1に示す。実施例1で用いたと同じ製造方法を使用した。均質化混合物は、約9.15%のイヌリン、約1.74%のWPC−34、約0.70%のTCP、約21.92%の水、約61.03%のクリームチーズ、約1.12%のHCl、および約4.34%のパーム油を含有していた。
【0057】
実施例5と同じ成分を安定剤系として使用した。表6−2に示すように、安定剤系の乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.32%)へ、予めブレンドした系(約1.68%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約5.8%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例5と同様に高温充填した。下記の表6−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例5とほぼ同じ温度で測定した、約26.32Paの高温粘度および約1254Paの低温粘度を有していた。生成したサンプルは、実施例5の結果と類似のテクスチャーおよび稠度を有しており、その結果、サンプル製品は、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0058】
【表6】

【0059】
[実施例7]
ゼラチンを用いた2種ガム安定剤系を含んでおり、約54%の水分、約25%の脂肪、および約5%のタンパク質を含有する比較サンプル製品を製造した。その配合を表7−1に示し、安定剤配合を表7−2に示す。実施例1で用いたと同じ製造方法を使用した。均質化混合物は、約9.17%のイヌリン、約7.09%のWPC−34、約0.74%のTCP、約34.13%の水、約34.44%のクリームチーズ、約1.02%のHCl、および約13.40%のパーム油を含有していた。
【0060】
2種ガム安定剤系を調製した。この比較実施例の安定剤系は、イナゴマメガム、ゼラチン、ソルビン酸、および塩のみを含有していた。表7−2に示す量を使用して、乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.14%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.86%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約4.7%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例1と同様に高温充填した。
【0061】
下記の表7−1に、高含水率のクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約50.46Paの高温粘度および約1233Paの低温粘度を有していた。
【0062】
ゼラチンのレベルより高レベルの第2のガムを用いて調製したこのサンプルは、実施例5および6のエアレーションチーズ製品とは著しく異なるテクスチャーおよび稠度を有していた。そのテクスチャーは、噛み応えがあってゴム様であった。得られたテクスチャーは、供給したゼラチンのレベル(すなわち、クリームチーズ製品全体の約0.4%)より高い(すなわち、クリームチーズ製品全体の約0.8%)第2のガム(イナゴマメ)のレベルが原因で、望ましい特性を示さなかった。
【0063】
【表7】

【0064】
[実施例8]
高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の製造のために、実施例1のようであるがイヌリンを有さない3種ガム安定剤系を含む、サンプル配合物を使用した。イヌリンを含めない各成分およびその量を表8−1に示す。実施例1と同じ方法を使用した。均質化混合物は、0%のイヌリン、約16.32%のWPC−34、約0.56%のTCP、約33.48%の水、約35.67%のクリームチーズ、約1.12%のHCl、および約12.85%のパーム油を含有していた。
【0065】
3種ガム安定剤系を調製した。この実施例の安定剤系は、CMC、イナゴマメガム、ゼラチン、ソルビン酸、および塩を含有していた。表8−2に示す量を使用して、乾燥成分を予めブレンドした。上述の均質化混合物(約98.12%)へ、予めブレンドした安定剤系(約1.88%)を添加した。約5分の混合後、その混合物を実施例1と同様に加熱した。約12.8%のオーバーランを得た。そのサンプルを実施例1と同様に高温充填した。
【0066】
下記の表8−1に、高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品の配合を示す。生成したクリームチーズ製品は、実施例1とほぼ同じ温度で測定した、約21.93Paの高温粘度および約776Paの低温粘度を有していた。生成したサンプルは、実施例1などのようにイヌリンを用いて製造した高含水率で保存安定なエアレーションクリームチーズ製品に匹敵するテクスチャーおよび稠度を有し、良好なテクスチャーを有し、軽くてふわふわしており、室温で保存したとき、少なくとも約3カ月間、そのオーバーランおよび空気セル構造を保持した。
【0067】
【表8】

【0068】
[実施例9]
実施例1〜8の結果の総括表を下記の表9に示す。その安定剤系にゼラチンもカラギーナンも含有していなかったことが原因で、実施例4が望ましくない結果を有していたと考えられている。さらに、より少ない量のゼラチン(すなわち、製品全体の約0.4%)と比較して、安定剤系中に多量の第2のガム(すなわち、約0.8%のイナゴマメ)が存在していたために、実施例7が望ましくない結果を有していたと考えられている。望ましい2種ガム系では、例えば、第1のガムは、約0.4%から約1%の間の範囲のゼラチンであることが好ましく、第2のガムは、ゼラチンの量とおおよそ等しいかそれ以下のレベルであることが好ましい。例えば、実施例7では、第2のガムのレベルがゼラチンのレベルを上回っていたとき、最終製品は、所望のように軽くて乾燥してふわふわしているよりむしろ、噛み応えがあって水分が多くなった。実施例5および6のように、第2のガムがゼラチンのレベル以下のままであったとき、試験した保存期間の間、該製品全体に所望のテクスチャーが維持された。さらに、第2または第3のガムとして使用したガムのタイプも、最終的なテクスチャーに影響を及ぼすことができる。
【0069】
3種ガム系では、安定剤系が、その空気セルマトリックスを維持するガムを含有していなかったことが原因で、ゼラチンもカラギーナンも含有していない結果が、不合格な結果を示した。さらに、3種ガム安定剤系では、カラギーナンまたはゼラチンを用いて合格な結果を得たが、ゼラチンが、3種ガム系の好ましい第1のガムである。
【0070】
【表9】

【0071】
【表10】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳食品ベース、少なくとも部分的に高融点脂肪を含む脂肪源、および親水コロイド系安定剤系を、官能的に好ましい、高含水率で保存安定な高温エアレーション乳食品を提供するのに効果的な量で含むエアレーション食品組成物であって、
乳食品が、対微生物安定性に関して十分な温度でエアレーションされ、引き続き、その気泡構造を維持しながら包装へ高温充填され、
親水コロイド系安定剤系が、ガムのうちの1種がゼラチンである少なくとも2種のガム、またはガムのうちの1種がゼラチンまたはカラギーナンである少なくとも3種のガムを含み、
乳食品が、周囲温度で少なくとも3カ月の保存寿命を有する
ことを特徴とするエアレーション食品組成物。
【請求項2】
親水コロイド系安定剤系が、2種のガムを含み、一方のガムがゼラチンであり、第2のガムが、カルボキシルメチルセルロース、イナゴマメガム、キサンタンガム、およびメトセルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項3】
ゼラチンが、最終乳食品の約0.4%から約1%を構成することを特徴とする請求項2に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項4】
カラギーナンが、最終乳食品の約0.1%から約0.4%を構成することを特徴とする請求項2に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項5】
親水コロイド系安定剤系が、少なくとも3種のガムを含み、1種のガムがゼラチンまたはカラギーナンであり、他のガムが、カルボキシルメチルセルロース、イナゴマメガム、キサンタンガム、およびメトセルからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項6】
約10%から約66%の乳食品ベース、約20から約30%の脂肪源、および約0.5から約2.5%の親水コロイド系安定剤系をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項7】
脂肪源が、総脂肪の約4.25%から約20%の高融点脂肪を含み、パーム油、ココナッツ油、水添大豆油、パーム核油、および低脂肪クリームチーズからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項8】
前記食品組成物のエアレーションが、約2%から約20%の間のエアレーションであり、約150°F(66℃)を超える温度にあることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項9】
エアレーションが、約2%から約16%の間のオーバーランであることを特徴とする請求項8に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項10】
エアレーション食品組成物が、約150°F(66℃)を超えるが約180°F(82℃)未満である最終温度で充填および包装されることを特徴とする請求項1に記載のエアレーション食品組成物。
【請求項11】
混合物を形成するために、約10%から約66%の乳食品ベース、脂肪全体の約4.25%から約20%の間が高融点脂肪を含む約20から約30%の脂肪、および少なくとも2種のガムを含む約0.5から約2.5%の安定剤系を混合することと、
少なくとも約150°F(66℃)の温度で、約2%から約20%のオーバーランのエアレーションレベルまで混合物をエアレーションすることと、
約150°F(66℃)から約180°F(82℃)の間の温度で、包装をエアレーション乳食品で高温充填することと、
充填後に包装を気密封止で封止することと、
周囲温度で少なくとも3カ月の保存安定性を有する、官能的に好ましい、高含水率のエアレーション乳食品を提供するために、包装の中でエアレーション乳食品を冷却することと
を含むことを特徴とするエアレーション乳食品組成物の製造方法。
【請求項12】
安定剤系が2種のガムを含み、第1のガムがゼラチンであり、第2のガムが、カルボキシルメチルセルロース、イナゴマメガム、キサンタンガム、およびメトセルからなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ゼラチンが、最終乳食品の約0.4%から約1%を構成することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
カラギーナンが、最終乳食品の約0.1%から約0.4%を構成することを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
安定剤系が、少なくとも3種のガムを含み、第1のガムが、ゼラチンまたはカラギーナンであり、第2および第3のガムが、カルボキシルメチルセルロース、イナゴマメガム、キサンタンガム、およびメトセルからなる群から選択されることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
空気または窒素を用いて混合物をエアレーションすることをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
エアレーション乳食品が、室温で約200から約1300パスカルの低温粘度を有し、最終温度で約4から約60パスカルの高温粘度を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項18】
乳食品ベースがクリームチーズであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項19】
エアレーション混合物が、約3.7から約4.6のpHを有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項20】
約10から約66%のクリームチーズ、約4.25から約20%の高融点脂肪を含む約20から約30%の脂肪、および少なくとも2種のガムを含む約0.5から約2.5%の親水コロイド系安定剤系の混合物を含む、保存安定で高含水率のエアレーション乳製品であって、
混合物が、約3.7から約4.6のpHを有し、
高融点脂肪が、約100°F(38℃)から約110°F(43℃)の間の融点を有し、動物性または植物性の脂肪であり、
親水コロイド系安定剤系が、一方のガムがゼラチンであり、他方のガムが、カルボキシルメチルセルロース、イナゴマメガム、キサンタンガム、およびメトセルからなる群から選択される少なくとも2種のガム、またはガムのうちの1種がゼラチンまたはカラギーナンであり、他のガムが上述の群から選択される少なくとも3種のガムを含み、
混合物が、乳製品を製造するために、約150°F(66℃)を超える温度でエアレーションおよび高温充填され、
乳製品が、約50から約75%の含水率を有し、
乳製品が、約2から約20%のオーバーランを有し、
乳製品が、無菌加工または無菌包装の技法を必要とせずに、周囲温度で保存されたときに少なくとも12カ月、または冷蔵温度で保存されたときに少なくとも18カ月の保存寿命を有する
ことを特徴とするエアレーション乳製品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−104366(P2010−104366A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−247682(P2009−247682)
【出願日】平成21年10月28日(2009.10.28)
【出願人】(508247877)クラフト・フーヅ・グローバル・ブランヅ リミテッド ライアビリティ カンパニー (53)
【Fターム(参考)】