説明

保守ローラ及び清浄化機構を備える印刷ヘッド保守アセンブリ

【課題】優れた印刷ヘッド保守アセンブリを提供する。
【解決手段】印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための、印刷ヘッド保守アセンブリが提供される。保守アセンブリは、(a)印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触平面を有する保守ローラと、(b)接触表面が吐出面と封止係合させられる第1の位置と、接触表面が吐出面から離される第2の位置との間で、ローラを動かすための係合機構と、(c)接触表面を清浄化するための清浄化機構とを備える。清浄化機構は、保守ローラを回転させるためのモータと、保守ローラが回転させられるときに接触表面からインクを除去するための、インク除去システムとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタのための、印刷ヘッド保守ステーションに関する。これは主に、ページ幅インクジェット印刷ヘッドからのインクの除去を促進するために開発されてきたが、別のタイプの印刷ヘッドにおいて使用することもできる。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本発明に関する様々な方法、システム、及び装置が、本発明の出願人又は譲受人によって出願された以下の米国特許/米国特許出願において開示されている。
【表1】


【表2】


【表3】


出願は、その整理番号によって列挙されている。これは、出願番号が知られるときに置き換えられる。これらの出願及び特許の開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
従来、ほとんどの市販のインクジェットプリンタは、プリンタの全体構造及び設計の一部を形成する、印刷エンジンを有する。この点に関して、プリンタユニットの本体は通常、印刷ヘッド及び関連する媒体送達機構を受け入れるように構築され、これらのフィーチャは、プリンタユニットと一体である。
【0004】
これは特に、媒体がプリンタユニットを通って進められるとき、少ない反復回数で媒体上を前後に移動する印刷ヘッドを使用する、インクジェットプリンタの場合に当てはまる。そのような場合、往復運動印刷ヘッドは通常、媒体入力ローラと媒体出力ローラとの間でプリンタユニットの幅を横断することができるように、プリンタユニットの本体に取り付けられ、媒体入力及び出力ローラは、プリンタユニットの構造の一部を形成する。そのようなプリンタユニットでは、プリントヘッドを交換のために取外し可能とすることができるが、媒体移送ローラ、制御回路、及び保守ステーションなど印刷エンジンのその他の部分は、通常、プリンタユニット内に固定されており、これらの部分の交換は、プリンタユニット全体を交換しなければ不可能である。
【0005】
その設計構造内にしっかりと固定されていることに加えて、往復運動タイプの印刷ヘッドを使用するプリンタユニットは、特にフルカラー及び/又は写真品位の印刷ジョブを実行する場合に、比較的低速である。これは、媒体の表面上にインクを付着させるために、印刷ヘッドが静止媒体を連続的に横断しなければならず、また、画像のラインを付着するために、印刷ヘッドの多数のスワスが必要になることがあるということによる。
【0006】
最近、媒体が印刷ヘッドを通過して移送されるときに印刷ヘッドを静止したままとすることができるように、印刷媒体の幅全体に延びる印刷ヘッドを提供することが可能になってきた。そのようなシステムでは、印刷ヘッドは、画像のラインを付着させるために多数のスワスを実行する必要がなくなり、むしろ印刷ヘッドは、媒体が高速で通過するときその上にインクを付着させることができるので、印刷を行うことができる速度が大幅に上昇する。そのような印刷ヘッドでは、フルカラー1600dpiの印刷を、以前は従来のインクジェットプリンタを用いて達成不可能な速度であった、毎分60ページ近くの速度で行うことが可能になってきた。
【0007】
インクジェット印刷の極めて重要な態様は、印刷ヘッドを、その耐用期間全体にわたり動作可能な印刷状態に維持することである。インクジェット印刷ヘッドは、多くの要因により動作不可能となることがあり、いかなるインクジェットプリンタも、印刷ヘッドの故障を防止し、及び/又は、故障の場合に印刷ヘッドを動作可能な印刷状態に回復するための、戦略を備えることが重要である。印刷ヘッドの故障は、たとえば、印刷ヘッド面のインクが溢れること、乾燥したノズル(当業界でデキャップとして知られる現象である、ノズルからの水の蒸発による)、又はノズルを汚損する粒子などによって、生じることがある。
【0008】
本出願人らの以前の特許出願である特許文献1において、本出願人らは、印刷ヘッドの走査に使用される従来の保守ステーションのいくつかの欠点に対処する、ページ幅印刷ヘッドのための保守ステーションを記載した。記載された保守ステーションは、ノズルの障害物を除去し、印刷ヘッドのインク吐出面からインクを取り去る、変形可能なパッドの剥離動作に依拠する。本出願人らはまた、保守動作が実行された後にパッドを清浄化するための、いくつかの手段も記載した。たとえば、吸上要素を適当に配置すること、又はパッドを揺らしてスキージ又は発泡体クリーナと接触させることによって、パッドからインクを取り去ることができる。
【0009】
パッドによる清浄化作用と、印刷ヘッド保守動作が実行された後のパッドからのインクの有効な除去の、すべての利点を組み合わせる印刷ヘッド保守ステーションを提供することが望ましいであろう。各保守動作に伴い比較的大量のインクを扱うことができる、印刷ヘッド保守ステーションを提供することが、さらに望ましいであろう。A4サイズ、又はより幅広のページの幅をまたぐことができるページ幅印刷ヘッドに適した、印刷ヘッド保守ステーションを提供することが、さらに望ましいであろう。
【特許文献1】米国特許出願第11/246,676号(2005年10月11日出願:整理番号FND001US)
【発明の開示】
【0010】
第1の態様では、印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための印刷ヘッド保守アセンブリが提供され、この保守アセンブリは、印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラと、接触表面が吐出面と封止係合させられる第1の位置と、接触表面が吐出面から離される第2の位置との間で、ローラを動かすための係合機構と、接触表面を清浄化するための清浄化機構とを具備し、この清浄化機構は、保守ローラを回転させるためのモータを備える清浄化機構と、保守ローラが回転させられるときに接触表面からインクを除去するための、インク除去システムとを備える。
【0011】
第2の態様では、印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための印刷ヘッド保守ステーションが提供され、この保守ステーションは、印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラを具備し、このローラは、回転可能であり、接触表面が吐出面と封止係合させられる第1の位置と、接触表面が吐出面から離される第2の位置との間で動かすことができ、この保守ステーションはさらに、保守ローラが回転させられるときに接触表面からインクを除去するための、インク除去システムを具備する。
【0012】
第3の態様では、インクジェットプリンタのための印刷ヘッドカートリッジが提供され、このカートリッジは、プリンタ内で取外し可能に受容可能であり、印刷ヘッドと、印刷ヘッドにインクを供給するためのインク送達システムと、印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための保守ステーションとを具備し、この保守ステーションは、印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラを備え、このローラは、回転可能であり、接触表面が吐出面と封止係合させられる第1の位置と、接触表面が吐出面から離される第2の位置との間で動かすことができ、この保守ステーションはさらに、保守ローラが回転させられるときに接触表面からインクを除去するための、インク除去システムを備える。
【0013】
第4の態様では、印刷ヘッドを動作可能状態に維持し、及び/又は印刷ヘッドを動作可能状態に修復する方法が提供され、この方法は、(i)印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラを提供するステップと、(ii)接触表面の清浄な部分が吐出面と封止係合させられる第1の位置へと、ローラを移動させるステップであって、この移動が、係合中に接触表面が吐出面と連続的に接触するような移動であるステップと、(iii)接触表面が吐出面から離される第2の位置へと、ローラを移動させるステップであって、この移動が、非係合中に接触表面が吐出面から剥がれ、それによって接触表面のインクの付いた部分をもたらすような移動であるステップと、(iv)接触表面のインクの付いた部分が印刷ヘッドから取り去られ清浄化されるように、ローラを回転させるステップと、(v)ステップ(ii)から(iv)を任意で繰り返すステップとを含む。
【0014】
第5の態様では、印刷ヘッドを動作可能状態に維持し、及び/又は印刷ヘッドを動作可能状態に修復する方法が提供され、この方法は、(i)印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラと、保守ローラからインクを除去するためのインク除去システムとが取り付けられた、シャシを提供するステップと、(ii)接触表面が吐出面と封止係合させられるように、シャシを印刷ヘッドに向かって動かすステップと、(iii)接触表面が吐出面から離されるように、シャシを印刷ヘッドから離して動かすステップと、(iv)インク除去システムによって接触表面からインクが除去されるように、保守ローラを回転させるステップと、(v)ステップ(ii)から(iv)を任意で繰り返すステップとを含む。
【0015】
第6の態様では、印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための印刷ヘッド保守アセンブリが提供され、この保守アセンブリは、(a)インク吐出面を有する印刷ヘッドと、(b)吐出面からインクを受け取るための外面を有する第1のローラと、(c)第1のローラと係合させられる第2のローラであって、第1のローラからインクを受け取るように構成された第2のローラと、(d)第2のローラと接触する清浄化パッドと、(e)第1及び第2のローラを回転させるための機構とを備える。
【0016】
任意で、係合機構は、保守ローラを吐出面に対して実質的に垂直に動かす。この直線運動は、保守ローラの湾曲した接触表面と合わさって、所望の印刷ヘッド清浄化及び修復動作をもたらす。
【0017】
任意で、保守ローラは、印刷ヘッドと実質的に同じだけ延びる。これは、ページ幅印刷ヘッドとすることができる印刷ヘッドの全長が、使用のために維持されることを保証する。
【0018】
任意で、接触表面は、実質的に均一である。保守ローラによってもたらされる清浄化及び修復動作は、接触表面が、少量のインクをとどめることがあるいかなる微細な傷、くぼみ、又は凹部ももたないときに、最適となる。
【0019】
任意で、保守ローラは、弾性変形可能なシェルを有する剛性コアを備え、接触表面は、シェルの外面である。このタイプの構造は、保守ローラに、機械的な安定性をもたらし、湾曲を最低限に抑える。これは特に、ページ幅印刷ヘッドにとって重要である。
【0020】
任意で、シェルは、シリコン、ポリウレタン、ネオプレン(登録商標)、サントプレン(登録商標)、又はクラトン(登録商標)で構成される。ただし、弾性変形可能ないかなる材料を使用することもできる。
【0021】
任意で、保守ローラは、印刷ヘッドから偏位する。この構成によって、インクが、印刷ヘッドの中央ではなく、その縁部へと移動することが保証される。したがって、印刷ヘッドの縁部上に残っているいかなるインクも、たとえば吸上要素によって、容易に除去することができる。
【0022】
任意で、接触表面とインク吐出面との間の剥離区域は、係合中及び非係合中に、吐出面を横方向に横断して前進及び後退する。この構成は、印刷ヘッド面上のインクが、最短距離だけ動かされ、それによって清浄化の効能を最適化することを意味する。
【0023】
任意で、保守ローラは、第1の位置に向かって付勢される。これは、印刷ヘッドが使用されないときの、保守ローラのための休止位置である。付勢は、保守ローラを支持するシャシ上に作用するばねなど、いかなる適当な手段によって実現することもできる。
【0024】
任意で、剥離非係合により、印刷ヘッドから接触表面へとインクが引きつけられる。
【0025】
任意で、インク除去システムは、保守ローラと係合させられる移送ローラを備える。移送ローラは、保守ローラと直接接触する吸収体清浄化パッドを不必要にし、それによって、保守ローラ上のゴム表面と清浄化パッドとの間の潜在的な高摩擦係合を回避する。
【0026】
任意で、移送ローラは、接触表面からインクを受け取るための、湿潤性表面を有する。移送ローラ上の湿潤性表面(すなわち、<90°の接触角度)は、保守ローラから移送ローラへの良好なインクの移送を保証する。
【0027】
任意で、移送ローラは、ステンレス鋼ローラなど金属ローラである。金属は、その高度な湿潤性表面の特性(0°に近づく接触角度)、保守ローラのための支持をもたらす構造的な剛性、ならびに、保守ローラ及び/又は吸収体清浄化パッドとの低摩擦係合のため、有利である。
【0028】
任意で、移送ローラは、印刷ヘッドから遠位に位置決めされる。そのような構成は、インクが印刷ヘッドから除去されることを保証し、印刷ヘッドの再汚染の可能性を最低限に抑える。
【0029】
任意で、清浄化パッドは、移送ローラと接触する。吸収体清浄化パッド(たとえばスポンジ)は、移送ローラからインクを除去するための有効且つ単純な手段を提供する。
【0030】
任意で、移送ローラ及び清浄化パッドは、保守ローラ、及び任意で印刷ヘッドと、実質的に同じだけ延びる。
【0031】
任意で、保守ローラ、移送ローラ、及び清浄化パッドは、シャシ上に取り付けられ、シャシは、第1の位置と第2の位置との間で往復運動することができる。
【0032】
任意で、シャシは、ハウジング内に収容され、ハウジングに対して相対的に運動可能である。
【0033】
任意で、係合機構は、少なくとも1つの係合アームを備え、少なくとも1つのアームの第1の端部は、シャシの相補的な係合形成物と係合可能である。係合アームは、第1の位置と第2の位置との間で、シャシ、したがって保守ローラの直線運動を行う。
【0034】
任意で、シャシは、少なくとも1つの係合アームの第1の端部と相補的に係合するための、少なくとも1つのラグを備える。通常、係合アームは、シャシのラグ内へと引っかかり、したがって、印刷ヘッドカートリッジの部品を形成しない。
【0035】
任意で、印刷ヘッドは、ページ幅インクジェット印刷ヘッドである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に、本発明の好ましい実施形態を、添付の図面を参照しながら例としてのみ説明する。
【0037】
プリンタケーシング
図1は、本発明を実施するプリンタ2を示す。媒体供給トレイ3は、印刷エンジン(プリンタケーシング内に隠されている)によって印刷される媒体8を、支持及び供給する。媒体8の印刷されたシートは、収集のために、印刷エンジンから媒体出力トレイ4へと給送される。使用者インターフェース5は、LCDタッチスクリーンであり、プリンタ2の動作を使用者が制御することを可能にする。
【0038】
図2は、内部キャビティ6内に配置された印刷エンジン1を露出するように開いた、プリンタ2の蓋7を示す。ピッカー機構9は、入力トレイ3内の媒体(分かりやすくするために図示しない)に係合し、個々のシートを印刷エンジン1へと給送する。印刷エンジン1は、媒体移送手段を備え、媒体移送手段は、印刷及びそれに続く媒体出力トレイ4(収縮させて示す)への送達のために、個々のシートを取り出し、印刷ヘッド(以下で説明する)を通過してそれらを給送する。図示のプリンタ2は、卓上用プリンタに都合がよい、L字形の紙通路を有する。ただし、C通路又は直線状通路など様々な媒体給送路を有する多種多様なプリンタにおいて使用することができる、プリンタ受け台、印刷ヘッドカートリッジ、及びインクカートリッジアセンブリを、以下で説明する。
【0039】
印刷エンジンパイプライン
図3は、コンピュータシステム702など外部供給源から受け取ったドキュメントを、1枚の紙など印刷媒体上に印刷するために、プリンタ2をどのように構成することができるかを概略的に示す。この点に関して、プリンタ2は、前処理されたデータを受け取るために、コンピュータシステム702との電気接続を備える。図示の特定の状況で、外部コンピュータシステム702は、ドキュメントを受け取ること(ステップ703)、それをバッファリングすること(ステップ704)、それをラスタ化すること(ステップ706)、及び、次にそれをプリンタ2への送信用に圧縮すること(ステップ708)を含む、ドキュメントの印刷に伴う様々なステップを実行するようにプログラムされる。
【0040】
本発明の一実施形態によるプリンタ2は、ドキュメントを、外部コンピュータシステム702から、圧縮された多層ページ画像の形で受け取り、制御電子部品766が、画像をバッファリングし(ステップ710)、次いで画像をさらなる処理のために伸長する(ステップ712)。伸長された連続階調レイヤは、ディザリングされ(ステップ714)、次いで伸長ステップからのブラックレイヤが、ディザリングされた連続階調レイヤ上に合成される(ステップ716)。符号化されたデータはまた、(必要に応じて)人間の目には実質的に不可視である、赤外線インクを用いて印刷される追加のレイヤを形成するために、レンダリングすることができる(ステップ718)。ブラックレイヤ、ディザリングされた連続階調レイヤ、及び赤外線レイヤは、結合されて(ステップ720)、印刷のために印刷ヘッドへと供給されるページを形成する(ステップ722)。
【0041】
この特定の構成では、印刷されるドキュメントに関連するデータが、テキスト及び線画用の高解像度の2値(bi−level)マスクレイヤと、画像又は背景色用の中解像度の連続階調カラー画像とに分割される。任意で、画像又は均一な色からとった色データを用いてテキスト及び線画をテクスチャリングするための、中から高解像度の連続階調テクスチャレイヤを加えることによって、カラーテキストをサポートすることができる。印刷アーキテクチャは、これらの連続階調レイヤを、画像データ又は均一な色データを参照することができる抽象的な「画像」及び「テクスチャ」レイヤで表現することによって、一般化する。この、コンテンツに基づいてデータをレイヤへと分割することは、当業者には理解されるように、ベースモードのミクストラスタコンテント(MRC)モードに従っている。MRCベースモードと同様に、印刷アーキテクチャは、いくつかの例で、印刷されるデータがオーバーラップする場合に補正を行う。特に、一形態では、すべてのオーバーラップが、補正を明示的に実施するプロセス(衝突解決)において3層表現に軽減される。
【0042】
図4は、印刷エンジン制御装置766による印刷データ処理を示す。3つの別個のパイプラインが示され、したがって、それぞれが印刷エンジン制御装置(PEC)チップを有する。出願人のSoPEC(SOHO PEC)チップは、一般に、毎分30ページの印刷速度用に構成される。図4に示すようにこの3つを並列で使用することによって、毎分90ページを達成することができる。上述のように、データは、主にソフトウェアをベースとするコンピュータシステム702によって画像の前処理が実行された状態で、圧縮された多層ページ画像の形でプリンタ2へと送達される。次いで、印刷エンジン制御装置766が、主にハードウェアをベースとするシステムを用いてこのデータを処理する。
【0043】
データを受け取ると、ディストリビュータ730が、このデータをプロプラエタリな表現からハードウェア特有の表現へと変換し、これらの装置へのデータ送信の何らかの制限又は要求を監視しながら、データが正しいハードウェア装置に送られることを保証する。ディストリビュータ730は、変換されたデータを、複数のパイプライン732のうちの適当な1つへと分配する。パイプラインは、互いに同一であり、基本的に、1組の印刷可能なドット出力を作成するために、伸長機能、スケーリング機能、及びドット合成機能を提供する。
【0044】
各パイプライン732は、データを受け取るためのバッファ734を備える。連続階調伸長器736は、カラー連続階調平面を伸長し、マスク伸長器は、モノトーン(テキスト)レイヤを伸長する。連続階調スケーラ740及びマスクスケーラ742は、ページがその上に印刷される媒体のサイズを考慮して、伸長された連続階調平面及びマスク平面をそれぞれスケーリングする。
【0045】
スケーリングされた連続階調平面は、次いでディザリング装置744によってディザリングされる。一形態では、確率論的ドット分散ディザリングが使用される。ドット集中(又は増幅変調)ディザリングと異なり、ドット分散(又は周波数変調)ディザリングは、ドット解像度のほぼ限界までの高い空間周波数(すなわち画像詳細)を再現すると同時に、より低い空間周波数を、目によって空間的に統合されるときにそれらの最大限の色深度まで再現する。確率論的ディザリングマトリックスは、画像全体にわたりタイリングされるときに好ましくない低周波数パターンを比較的もたないように、慎重に設計される。したがって、そのサイズは通常、特定の数値の輝度レベルをサポートするために必要とされる最小サイズ(たとえば、輝度レベル255の場合の16×16×8ビット)を上回る。
【0046】
ディザリングされた平面は次いで、印刷に適したドットデータを提供するために、ドット合成器746においてドット単位で合成される。このデータは、データ分配及び駆動電子部品748へと送られ、この電子部品748は、データを正しいノズルアクチュエータ750へと分配し、アクチュエータ750は、インクを、正しいノズル752から正しい時間に、以下の説明でより詳細に記載するようなやり方で吐出させる。
【0047】
理解されるように、画像を印刷用に処理するために印刷エンジン制御装置766内で使用される構成要素は、データが表されるやり方に大幅に依存する。これに関して、印刷エンジン制御装置766は、追加のソフトウェア及び/又はハードウェア構成要素を用いて、プリンタ2内でより多くの処理を実行し、コンピュータシステム702への依存度を低減することが、可能になることがある。或いは、印刷エンジン制御装置766は、より少ないソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、より少ない処理を実行し、データをプリンタ2に送信する前に画像をより高度に処理するために、コンピュータシステム702に依拠することができる。
【0048】
図5は、上述のタスクを実行するために必要な構成要素を示すブロック図である。この構成において、ハードウェアパイプライン732は、SOHOプリンタエンジンチップ(SoPEC)766内で実施される。図示のように、SoPECデバイスは、3つの別々のサブシステム、すなわち、中央処理装置(CPU)サブシステム771、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)サブシステム772、及び印刷エンジンパイプライン(PEP)サブシステム773からなる。
【0049】
CPUサブシステム771は、その他のサブシステムのすべての態様を制御及び構成する、CPU 775を備える。これは、印刷エンジン1のすべての要素のインターフェースを取り同期させるための、全体的なサポートを提供する。これはまた、QAチップ(以下で説明する)への低速通信を制御する。CPUサブシステム771はまた、汎用入出力(GPIO、モータ制御を備える)、割込み制御ユニット(ICU)、LSSマスタ、及び汎用タイマなど、CPU 775を助けるための様々な周辺装置を備える。CPUサブシステム上のシリアル通信ブロック(SCB)は、ホストへのフルスピードUSB1.1インターフェース、ならびに別のSoPECデバイス(図示せず)へのSoPEC間インターフェース(ISI)を提供する。
【0050】
DRAMサブシステム772は、CPU、シリアル通信ブロック(SCB)、及びPEPサブシステム内のブロックからの、要求を受け入れる。DRAMサブシステム772、特にDRAMインターフェースユニット(DIU)は、様々な要求を調停し、どの要求がDRAMへのアクセスを獲得するべきかを決定する。DIUは、すべての要求者のためのDRAMへの十分なアクセスを可能にするために、構成されたパラメータに基づいて調停を行う。DIUはまた、ページサイズ、バンクの数、及び再生率など、DRAMの実装仕様を隠す。
【0051】
印刷エンジンパイプライン(PEP)サブシステム773は、圧縮されたページをDRAMから受け取り、それらを、印刷ヘッドと直接通信する印刷ヘッドインターフェース(PHI)行きの所与の印刷ラインのための2値ドットへと、レンダリングする。ページ伸長パイプラインの第1のステージは、連続階調デコーダユニット(CDU)、可逆2値デコーダ(LBD)、及び必要に応じて、タグエンコーダ(TE)を備える。CDUは、JPEG形式で圧縮された連続階調(通常CMYK)レイヤを伸長し、LBDは、圧縮された2値レイヤ(通常K)を伸長し、TEは、プリンタ2がNetpage能力を有する場合(Netpageシステムの詳細な説明については相互参照文書を参照)、何らかのNetpageタグを、後の(通常IR又はKインクでの)レンダリングのためにエンコードする。第1ステージからの出力は、1組のバッファ、すなわち、連続階調FIFOユニット(CFU)、スポットFIFOユニット(SFU)、及びタグFIFOユニット(TFU)である。CFU及びSFUバッファは、DRAM内で実装される。
【0052】
第2のステージは、ハーフトーン合成器ユニット(「HCU」)であり、HCUは、連続階調レイヤをディザリングし、位置タグと2値スポットレイヤとを、結果的に得られる2値のディザリングされたレイヤ上で合成する。
【0053】
SoPECデバイスとともに使用される印刷ヘッドに応じて、多数の合成オプションを実装することができる。2値データの最高6つのチャネルが、このステージから作り出されるが、印刷ヘッド上にすべてのチャネルが存在しなくてもよい。たとえば、印刷ヘッドを、CMYのみとし、KをCMYチャネルに押し込み、IRを無視することができる。或いは、IRインクが利用可能でない場合(又は試験目的で)、何らかのエンコードされたタグをKで印刷することができる。
【0054】
第3のステージにおいて、不作動ノズル補償器(DNC)が、色の冗長化、及び周囲のドット内への不作動ノズルのデータの誤差拡散によって、印刷ヘッド内の不作動ノズルを補償する。
【0055】
結果的に得られる2値の5チャンネルドットデータ(通常CMYK、赤外線)は、バッファリングされ、ドットラインライタユニット(DWU)によって、DRAM内に記憶される1組のラインバッファへと書き込まれる。
【0056】
最後に、ドットデータは、DRAMからロードし直され、ドットFIFOを通じて印刷ヘッドインターフェースへと渡される。ドットFIFOは、データをラインローダユニット(LLU)からシステムクロック速度(pclk)で受け取るが、印刷ヘッドインターフェース(PHI)は、FIFOからデータを取り出し、それをシステムクロック速度の3分の2の速度で印刷ヘッドへと送る。
【0057】
好ましい形態では、DRAMのサイズは、2.5Mバイトであり、そのうち約2Mバイトは、圧縮されたページ記憶データによって利用可能である。圧縮されたページは、メモリ内に記憶された多数のバンドを用いて、2つ以上のバンドで受け取られる。ページのバンドが、印刷のためにPEPサブシステム773によって消費されるとき、新しいバンドをダウンロードすることができる。新しいバンドは、現在のページ又は次のページ用とすることができる。
【0058】
バンディングを使用すると、圧縮されたページが完全にダウンロードされる前にページの印刷を開始することができるが、データが常に印刷用に常に利用可能であることが保証されるよう注意しなければならない。さもなければバッファアンダーランが生じることがある。
【0059】
内蔵USB1.1デバイスは、ホストPCからの圧縮されたページデータ及び制御コマンドを受け入れ、DRAM(又は、以下で説明するような多SoPECシステム内の別のSoPECデバイス)へのデータ転送を容易にする。
【0060】
多SoPECデバイスは、代替実施形態において使用することができ、特定の実装形態に応じて、様々な機能を実行することができる。たとえば、いくつかの例で、SoPECデバイスを、単にその搭載DRAMのために使用することができるが、別のSoPECデバイスは、上記で説明した様々な圧縮解除及びフォーマット機能を行う。これによって、ページのためのすべてのデータが受け取られる前にプリンタがそのページの印刷を開始し、残りのデータが時間内に受け取られない場合に起こりうる、バッファアンダーランの可能性を低減することができる。余分なSoPECデバイスを、そのメモリバッファリング能力のために追加することによって、追加のチップのその他の能力が使用されないとしても、バッファリングすることができるデータの量が2倍になる。
【0061】
各SoPECシステムは、いくつかの品質保証(QA)デバイスを有することができ、QAデバイスは、プリンタの機構の品質を保証し、印刷ヘッドのノズルが印刷時に損傷を受けないようにインク供給部の品質を保証し、印刷ヘッド及び機構が損傷を受けないことを保証するために、ソフトウェアの品質を保証するよう、互いに協働するように設計される。
【0062】
通常、各印刷SoPECは、最高印刷速度などプリンタユニットの属性に関する情報を記憶する、結合されたプリンタユニットQAを有する。カートリッジユニットもまた、QAチップを備えることができ、QAチップは、インクの残量などカートリッジ情報を記憶し、また、不作動ノズルのマッピング及び印刷ヘッドの特徴など印刷ヘッド特有の情報を記憶する、ROMとして(EEPROMとして有効に)作動するように構成することもできる。補充ユニットもまた、インクのタイプ/色及び補充のために存在するインクの量など、補充インク情報を記憶する、QAチップを備えることができる。SoPECデバイス内のCPUは、任意で、シリアルEEPROMとして有効に作動するQAチップからプログラムコードをロードし、それを実行することができる。最後に、SoPECデバイス内のCPUは、論理QAチップ(すなわちソフトウェアQAチップ)を実行する。
【0063】
一般に、システム内のすべてのQAチップは、物理的に同一であり、フラッシュメモリのコンテンツのみがそれらを互いに差別化する。
【0064】
各SoPECデバイスは、は、システム認証及びインク使用アカウンティングのためにQAデバイスと通信することができる、2つのLSSシステムバスを有する。1つのバスにつき、多数のQAデバイスを使用することができ、それらのシステム内での位置は、プリンタQAデバイス及びインクQAデバイスが別々のLSSバス上にあるべきであることを除き、制約されない。
【0065】
使用に際しては、論理QAは、インクの残量を決定するためにインクQAと通信する。インクQAからの応答は、プリンタQAを参照して認証される。プリンタQAデバイスからの検証はそれ自体、論理QAによって認証され、それにより、インクQAからの応答に、追加的な認証レベルが間接的に加えられる。
【0066】
QAチップ間で送られるデータは、デジタル署名によって認証される。好ましい実施形態では、HMAC−SHA1認証をデータ用に使用することができ、RSAをプログラムコード用に使用することができるが、別のスキームを代わりに使用することができる。
【0067】
理解されるように、SoPECデバイスはしたがって、印刷媒体の扱いを容易にするために、印刷エンジン1の動作全体を制御し、基本的なデータ処理タスク、ならびに印刷エンジン1の個々の構成要素の動作の同期化及び制御を実行する。
【0068】
印刷ヘッドカートリッジ及びプリンタ受け台アセンブリの概要
図6に示すように、印刷エンジン1は、印刷ヘッドカートリッジ100及びプリンタ受け台102の、アセンブリである。受け台及び印刷ヘッドカートリッジによって形成された別々のドッキング区画106内に設置される、5つのインクカートリッジ104のうちの1つも示される。インクカートリッジは、CMYK及び(不可視の符号化されたデータを印刷するための)IR、又はCMYKKを供給することができる。
【0069】
プリンタ受け台102は、たとえばL字形通路、C字形通路、直線状通路など、製品の応用例のための望ましい構成を有するプリンタケーシング内に、恒久的に設置される。印刷ヘッドカートリッジ100は、受け台102内に設置される。印刷ヘッド内のノズル(以下で説明する)が詰まり、又は別の原因で機能しないとき、印刷品質を維持するために、プリンタ全体を交換するのではなく、印刷ヘッドカートリッジ100を交換することができる。
【0070】
プリンタ受け台
図7Aから図7Dは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる2005年12月5日出願の、出願人の以前の米国特許出願第11/293,800号に記載される、受け台102の様々な斜視図を示す。この受け台は、本発明とともに使用することが必要とされる受け台と類似している。ただし、図8及び図9は、保守駆動アセンブリ126に関する詳細の修正を示す。
【0071】
受け台シャシ108は、媒体給送トレイから出力トレイへの媒体給送通路を完成するために、プリンタケーシング内のその他の構成要素を支持する、プレス加工された金属構成要素108である。未印刷媒体のシートが、案内成形物110によって、入力駆動ローラ124とばね付きローラ130との間のニップ内に案内される。ばね付きローラ130は、案内成形物110上に形成されたばね付きローラ取付け部138内で支持され、駆動ローラ124のゴム引きされた表面と係合するように付勢される。駆動ローラ124は、媒体給送用駆動アセンブリ112によって駆動される。
【0072】
媒体は、印刷ヘッド(図示せず)を通り、スパイクホイール132と出力駆動ローラ118との間のニップ内へと給送される。スパイクホイール132は、スパイクホイールベアリング成形物134内で支持され、出力駆動ローラ118もまた、媒体給送用駆動アセンブリ112によって駆動される。
【0073】
印刷ヘッド集積回路(以下で説明する)を操作するための制御電子部品が、プリント回路基板(PCB)114上に設けられる。PCB 114の外面は、SoPECデバイス(図示せず)を有し、内面は、外部供給源から電力及び印刷データを受け取りそれをSoPECへと分配するためのソケット140と、印刷データを以下でより詳細に議論される印刷ヘッドICへと送信するための、1列のばね付きPCB接点142とを有する。
【0074】
SoPECを覆い、プリンタ付近のいかなるEMIからも保護するために、熱シールド122が、PCB 114に取り付けられる。これはまた、SoPEC又はPCBの高温部品との、使用者の接触を防止する。
【0075】
キャッパ後退シャフト120が、保守駆動アセンブリ126と係合するように、外部駆動シャフト118の下方に回転可能に取り付けられる。保守駆動アセンブリ126は、媒体給送用駆動アセンブリ112の反対側で、受け台シャシ108の側部に取り付けられる。
【0076】
保守駆動アセンブリ
図10及び図11は、図8及び図9に示した保守駆動アセンブリ126を詳細に示す。保守駆動モータ144及び歯車機構150が、1対の側部成形物146及び148の間に取り付けられる。モータ144は、保守駆動アセンブリ126の前端から突出するフリッパ歯車ホイール151を制御する、歯車機構150を駆動する。フリッパ歯車ホイール151は、印刷ヘッドカートリッジ100が受け台102内に挿入されるとき、保守ステーション500の主駆動ホイールとかみ合う。フリッパ歯車ホイール151は、フリッパ歯車ホイールが上下に揺れることを可能にする、枢動フリッパ152上に取り付けられる。したがって、シャシ507上に取り付けられた保守ローラ501が印刷ヘッド600と係合し、また印刷ヘッド600から離れるとき(図24から図26参照)、フリッパ歯車ホイール151は、保守ステーション500の主駆動ホイール530とかみ合ったままとなる。
【0077】
印刷ヘッドカートリッジ
図17は、印刷ヘッドカートリッジ100の側断面図を示す。印刷カートリッジ100の様々な内部構成要素を、以下でより詳細に説明する。ただし最初に、プリンタ受け台102内への印刷ヘッドカートリッジ100の挿入を、図12、図13、及び図14を参照しながら説明する。
【0078】
図12は、カートリッジ100の挿入の第1段階を示す。使用者は、ケーシング184の頂部にある把持タブ200を把持し、カートリッジを、プリンタ受け台102内に設けられたキャビティ182内に差し込む。カートリッジ100は、丸まったリップ188がキャビティの側部上の相補的な形状の支点186上に係合するまで、キャビティ182内へと摺動する。この時点で、使用者は、カートリッジ100を支点186の周りで、反時計回りに回転させ始める。
【0079】
図13に示すように、キャビティ内でのカートリッジの反時計回りの回転は、列状のばね付き電力及びデータ接点142によって加えられる付勢力に逆らう。LCP成形物アセンブリ190は、湾曲した外面を有し、その周りに、印刷ヘッド600へとつながるフレキシブルPCB 192が巻き付けられている。アセンブリ190の湾曲した外面は、カートリッジ100がその動作位置へと完全に回転される前に、ばね付き接点142が、最大圧迫地点にくるように構成される。図13は、この最大圧迫地点にあるカートリッジを示す。
【0080】
図14は、この最大圧迫地点を超え、その動作位置へと回転されたカートリッジ100を示す。ばね付き接点142は、フレキシブルPCB 192上の接点パッド(図示せず)と接触するとき、わずかに圧迫緩和されている。このように、印刷ヘッドカートリッジとプリンタ受け台との間の相互作用は、基本的にオーバーセンタ機構の作用である。カートリッジ100は、図13に示す平衡点まで時計回りに付勢され、その後、カートリッジが、その動作位置へと反時計回りに付勢される。この付勢力は、媒体入力装置202が入力媒体給送ローラのニップ198の真正面にくるように、印刷ヘッドカートリッジ100を、動作位置内にしっかりと保持する。同様に、媒体送出装置204は、紙の通路を完成させるように、出口給送ローラ118及びスパイクホイール132に直面する。また、カートリッジケーシング184とドッキング区画成形物116は、正しく寸法決めされたインクカートリッジドッキング区画106をもたらすように、適正に組み合わされる。
【0081】
個々のばね付き接点142それぞれの剛性は、各接点がその対応するフレキシブルPCB 192のパッドを規定の接触圧力で押すようなものである。すべてのばね付き接点142を同時に圧迫するためには、かなりの力(最大100N)が必要であるが、ケーシング184及び支点186には、使用者にかなりの機械的な利益を与える第1種てこが作用する。図12〜図14から、支点186から把持タブ200までのてこの腕が、支点からLCPアセンブリ190の湾曲した外面までのてこの腕を、はるかに上回ることが分かる。
【0082】
印刷ヘッド保守ステーション
図15から図20は、印刷ヘッド600を動作可能な状態に維持するための、印刷ヘッド保守ステーション500を詳細に示す。図17から図20に示すように、印刷ヘッド保守ステーション500は、印刷ヘッドカートリッジ100の一体部品を形成しており、したがって、シート印刷の間でも、プリンタがアイドル状態であるときでも、常に保守動作に使用することができる。さらに保守ステーションは、印刷カートリッジが交換されるときに交換される。
【0083】
印刷ヘッド保守ステーション500は、印刷ヘッド600のインク吐出面601と封止係合するための弾性変形可能な接触表面502を有する、保守ローラ501を備える。保守ローラ501は、ローラのコア504を形成する剛性のステンレス鋼シャフトの周りに取り付けられた、弾性変形可能なシェル503を備える。通常、シェル503は、シリコーンゴムで構成されるが、シリコンの代わりに、ポリウレタン、ネオプレン(登録商標)、サントプレン(登録商標)、又はクラトン(登録商標)など別の弾性変形可能又は弾性材料を使用することもできることが、理解されるであろう。
【0084】
図15から図20を参照すると、保守ローラ501は、接触表面502の一部がインク吐出面601と封止係合される第1の位置(図15から図20に示す)と、接触表面がインク吐出面から離れる第2の位置(図16、図17、及び図19に示す)との間で、往復運動することができる。保守ローラ501は、ページ幅印刷ヘッド600の全長にわたるノズルが使用のために維持されるように、実質的にインク吐出面601と同じだけ延びる。
【0085】
接触表面502は、保守ローラ501の外面によって画成されるので、当然、インク吐出面601に対して湾曲する。2005年10月11日出願の、本出願人らの以前の米国特許出願第11/246,689号(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)において説明されるように、湾曲した接触表面502は、インク吐出面に対して垂直な保守ローラ501の単純な直線運動に伴う、連続的な、インク吐出面601との係合及びインク吐出面601からの剥離非係合をもたらす。インク吐出面601とのこのタイプの係合によって、保守ローラ501は、印刷ヘッド600から溢れたインクを清浄化し、印刷ヘッド内の塞がれたノズルを修復することが可能になる。さらに、アイドル期間中に、接触表面502は、インク吐出面601を封止し、粒子の進入を防止し、ノズル内のインクからの水分の蒸発(当業界で一般にデキャップとして知られる現象)を最小限に抑える。
【0086】
清浄化/保守作用の動作原理は、2005年10月11日出願の本出願人らの以前の米国特許出願第11/246,689号において、詳細に説明されている。ただし、分かりやすくするために、ここでも簡単な説明を行う。図21A及び図21Bは、コア504及びシェル503を備え、印刷ヘッド600のインク吐出面601との連続的に接触させられる接触表面502を有する、保守ローラ501を詳細に示す。図21Cは、接触表面502がインク吐出面601と部分的に接触するときの、図21Bにおける剥離区域604の拡大図を示す。図21Cは、表面502が印刷ヘッド上のノズル開口部603と接触させられるときの、インク602の挙動の詳細を示す。ノズル開口部603内のインク602は、接触表面502が印刷ヘッド600を横断して前進するとき、接触表面502と接触する。ただし、接触表面502上のインク602の前進接触角度θは、比較的非湿潤(約90°)であり、インクは、接触表面上をぬらす傾向をほとんど又はまったくもたない。したがって、図21Dに示すように、インク602は、インク吐出面601上又はノズル603内にとどまり、インク吐出面を横断して前進する剥離区域604は、比較的乾燥する。
【0087】
図22A及び図22Bに、保守ローラ501がインク吐出面601から剥がされるときの、逆のプロセスを示す。まず、図22Aに示すように、接触表面502が、インク吐出面601と封止係合される。図22Bでは、接触表面502が、インク吐出面601から剥がされ、剥離区域604が、面を横断して後退する。図22Cは、接触表面502が印刷ヘッド600上のノズル開口部603から剥がされるときの、剥離区域604の拡大図を示す。ノズル開口部603内のインク602は、インク吐出面601を横断して後退するとき、接触表面502と接触する。ただし、接触表面502上のインク602の後退接触角θは、比較的湿潤(約15°)であり、ここではノズル開口部603内のインクは、接触表面502上をぬらす傾向がある。したがって、図22D及び図22Eに示すように、インク吐出面601を横断して後退する剥離区域604はぬれ、ノズル開口部603又はインク吐出面601から引き出されたインク602のインク液滴を運ぶ。これは、印刷ヘッド600内の塞がれたノズルを清浄化し、インク吐出面601上の溢れたインクを清浄化する効果を有する。最適な清浄化性能は、接触表面502が実質的に均一であり、潜在的に少量のインクを含むおそれがある、いかなる微細な傷又はへこみももたない場合に実現される。
【0088】
図23は、接触表面502の最終部分が、インク吐出面601から剥がされた後の、保守ローラ501を示す。接触表面502は、印刷ヘッド600との最終接触点にて、その長さに沿ってインク602の粒を収集している。
【0089】
上記から、また図15から図20を再び参照すると、印刷ヘッド保守ステーション500において、保守ローラ501の接触表面502が、インク吐出面601から離れた後にインクを収集することが理解されるであろう。通常、このインクは、接触表面502に沿って延びる長手領域内に集められる。本出願人らの以前の出願である、すべて2005年10月11日出願の、米国特許出願第11/246,704号(整理番号FND013US)、米国特許出願第11/246,710号(整理番号FND014US)、米国特許出願第11/246,688号(整理番号FND015US)米国特許出願第11/246,716号(整理番号FND016US)、米国特許出願第11/246,715号(整理番号FND017US)において、本出願人らは、フレキシブルパッドの長手縁部からインクを除去するための様々な手段を記載した。本発明では、接触表面502は、接触表面がインク吐出面601から離れた後にインク除去システムによってそこからインクが除去されるように、保守ローラ501を回転させることによって清浄化される。図15から図20に示す実施形態では、インク除去システムは、保守ローラ501と係合させられたステンレス鋼の移送ローラ505と、移送ローラと接触する吸収体清浄化パッド506とを備える。
【0090】
当然、移送ローラ505をなくし、清浄化パッド506を保守ローラ501と直接接触させることが可能である。そのような構成は、明らかに本発明の範囲内で企図される。ただし、金属の移送ローラ505の使用は、いくつかの利点を有する。第1に、金属は、湿潤性の高い表面を有し、保守ローラ501上に付着したインクを移送ローラ505上に完全に移送することを保証する。第2に、金属の移送ローラ505は、直接接触させられる清浄化パッドと異なり、保守ローラのシリコーンゴム表面502上に大きな摩擦力を生じない。金属移送ローラ505は、清浄化パッド506を比較的容易に通過して滑動することができ、これにより、清浄化機構を駆動するモータ144のトルク要求が低減され、保守ローラ501上の軟質のシリコーンゴム503の耐用期間が長くなる。第3に、剛性の金属移送ローラ505は、保守ローラ501のための支持をもたらし、反りを最小限に抑える。これは、ページ幅印刷ヘッド、及びそれらの対応するページ幅維持ステーションにとって、特に重要である。
【0091】
図18から図20により明らかに示されるように、保守ローラ501、移送ローラ505、及び清浄化パッド506はすべて、可動式シャシ507上に取り付けられる。シャシ507は、上記で説明した剥離動作に伴い、接触表面502をインク吐出面に係合させ、またそこから離すことができるように、インク吐出面601に対して垂直に動かすことができる。係合時又は非係合時に、保守ローラ501は、シャシ507に対して静止する。ただし、インク吐出面601から離れた後に、保守ローラは、接触表面502のインクが付いた部分が移送ローラ505に接触するように回転させられる。したがって、保守ローラ上のインクは、移送ローラ505上に移送され、これは次いで、清浄化パッド506内に吸収される。
【0092】
通常、シャシ507は、第1の位置に向かって付勢され、接触表面502が、インク吐出面601と封止係合させられる。これは、印刷ヘッドが印刷に使用されていないとき(たとえば移送、保管、アイドル期間中、又はプリンタのスイッチがオフのときなど)の、保守ステーション500の正常な構成である。
【0093】
シャシ507は、そのすべての関連構成要素とともに、基部509及び側壁510を有する、ハウジング508内に収容される。シャシ507は、ハウジング508に対して擦動可能に動かすことができ、一般に、係合位置に向かって付勢される。
【0094】
シャシ507はさらに、シャシのそれぞれの端部に配置された、ラグ514及び515の形の係合形成物をさらに備える。これらのラグ514及び515は、図15及び図16に示す係合機構520によって、シャシ507を印刷ヘッド600に対して摺動可能に動かすように設けられる。
【0095】
係合機構520は、1対の係合アームを備える。図16に、その対応するラグ515(ラグは図16に示されない)と係合させられる位置にある、係合アーム521のうちの1つを示す。図12に示すように、係合アーム521の第1の端部は、ラグ515と当接するカム表面522を有する。係合アームの第2の端部は、キャッパ後退シャフト120上の枢動部523の周りに回転可能に取り付けられ、係合モータ(図示せず)によって回転させられる。したがって、係合アーム521が時計回りに回転させられるとき、ラグ515に対するカム表面522の当接によって、ラグ、したがってシャシ506が、下向きに、印刷ヘッド600から離れて動かされる。
【0096】
次に図24から図26を参照すると、移送ローラ505の一端部に動作可能に取り付けられた主駆動歯車530が、遊び歯車532及び533を介して、保守ローラ駆動歯車531とかみ合わされることが分かる。保守駆動アセンブリ126のフリッパ歯車ホイール151は、ハウジング508内のスロット534を通り、駆動歯車531とかみ合う。したがって、保守駆動モータ144は、シャシ507が後退させられ、保守ローラが印刷ヘッド600から離されるときに、移送ローラ505及び保守ローラ501を回転させるために使用することができる。
【0097】
典型的な保守動作を、次に図19及び図20を参照しながら説明する。印刷構成において、印刷ヘッド保守ステーション500は、図19に示すように、接触表面502が印刷ヘッド600から離され、印刷ヘッドを横方向に通過して紙(図示せず)を給送するための間隙を残して構成される。印刷が完了した後、又は、印刷ヘッドの保守が要求されるとき、係合アーム(たとえば521)は、反時計回りに回転させられ、それにより、シャシ507を印刷ヘッド600に向かって上向きに摺動させる。シャシ507のこの摺動運動は、図20に示すように、印刷ヘッド600と実質的に同じだけ延びる接触表面502の最上部を、インクヘッド600のインク吐出面601と封止係合させる。インク吐出面601に対して湾曲するという接触表面502の性質により、接触表面は、係合時にインク吐出面と連続的に接触する。
【0098】
所定の長さの時間の後に、係合アーム(たとえば521)は、時計回りに回転するように作動され、たとえばラグ515に対するカム表面522の当接によって、シャシ507を下向きに、印刷ヘッド600から離して摺動させる。シャシ507のこの摺動運動により、接触表面502が、インク吐出面601から離される。接触表面502の湾曲する性質により、接触表面は、非係合時にインク吐出面601から剥がされる。上記で説明したように、この剥離動作は、接触表面502の一領域に沿ってインクを付着させ、接触表面のインクの付いた部分を生み出す。
【0099】
非係合後に、駆動モータ144が作動され、駆動モータ144は、上記の歯車機構によって、移送ローラ505を時計回りに、保守ローラ501を反時計回りに回転させる。この回転は、移送ローラ505の湿潤性という性質と合わさって、接触表面502上のインクを移送ローラ上へと移送する。このインクは次いで、移送ローラ505が清浄化パッドを通過して回転するとき、清浄化パッド506によって吸収される。
【0100】
駆動モータ144は、接触表面502が清浄化され、次の保守サイクルの準備ができるまで駆動される。印刷ヘッド600の状態に応じて、印刷のために印刷ヘッドが十分に修復される前に、上記で説明したいくつかの保守サイクルが任意で要求されることがある。
【0101】
インクカートリッジ
図27は、インクカートリッジ104の断面斜視図を示す。5つのインクカートリッジはそれぞれ、気密外部ケーシング210、出口弁206、及び、もろい封止部214によって覆われた空気入口212を有する。空気封止部は、使用者が設置前に出口弁206をいじった場合に、インクが漏れるのを防止するのに役立つ。親指把持部218は、保管されたインクを指示するように着色される。IRインク用に、親指把持部に別のやり方で印を付けることができる。親指把持部は、内向きに撓むことができ、カートリッジをドッキング区画106内に保持するための、スナップ係止スプール220を有する。
【0102】
図15、図16、図17、及び図27は、インクカートリッジ104、ならびに、印刷ヘッドカートリッジ100及びプリンタ受け台102との、インクカートリッジ104の相互作用を示す。図15は、ドッキング区画106内にあるが印刷ヘッドカートリッジ100の入口弁194とまだ係合されていない、インクカートリッジを示す。分かりやすくするために、完全に膨張させられたエアバッグ208が示され、インクストレージの残余体積が、224によって示される。当然、エアバッグは実際は、設置前に完全に収縮させられ、取外し時に完全に膨張させられる。エアバッグをインクストレージ体積内で、収縮させるのではなく膨張させることによって、インクのより効率的な使用がもたらされる。収縮可能なインクバッグは、それらがあるレベル以下に排出された後に、さらなる収縮に対してある大きさの抵抗を有する。印刷ヘッドの吐出アクチュエータは、この抵抗に逆らって汲出しを行わなければならず、これは、印刷ヘッドの動作に影響を及ぼす可能性がある。これには、カートリッジが完全に収縮されるより前にカートリッジが空であるとみなすことによって、対処することができる。これにより、カートリッジが廃棄されるときに、かなりの量の残余インクがカートリッジ内に残される。これを回避するために、本発明のインクカートリッジは、インクが消費されるにつれてインク体積内へと膨張する、エアバッグを使用する。このエアバッグは、カートリッジが廃棄されるときにその中に残されるインクが大幅に少なくなるように、インクが空になった領域内へと、比較的容易に完全に膨張する。また、インクバッグを収縮させるのではなくエアバッグをインクストレージ体積内で膨張させることによって、カートリッジ出口におけるインクの静水圧を、一定に保つことができる。これは、印刷ヘッドの液滴吐出特性をより均一に保つのに役立つ。
【0103】
図16は、プリンタ受け台102及び印刷ヘッドカートリッジ100と完全に係合させられた、インクカートリッジ104を示す。ドッキング区画106の床内のスピゴット216は、もろい空気封止部214を破壊して、エアバッグ208を膨張させるために空気を入口212に通すことを可能にする。図16は、エアバッグ208の蛇腹式折畳み構造を示すために、部分的に膨張させられたエアバッグ208を示す。インクカートリッジ104内の出口弁206は、印刷ヘッドカートリッジ100内の入口弁194と係合する。インクカートリッジが、プリンタ受け台及び印刷ヘッドカートリッジの両方に係合するとき、印刷ヘッドカートリッジは、動作位置に係止される。
【0104】
相互に係合し作動し合う出口弁及び入口弁
図17は、弁の相互係合をより明解に示すために、インクカートリッジ104及び印刷ヘッドカートリッジ100を、分離図で示す。読者をさらに助けるために、図29は、係合前のインクカートリッジ出口弁206及び印刷ヘッドカートリッジ入口弁194のみを示す。インクカートリッジの出口弁は、フランジ付き端部232を備える中央ステム230を有する。弾性材料のスカート226が、環状封止部228を有し、環状封止部は、出口弁が正常に閉じられるように、フランジ付き端部232の上面に対して付勢される。
【0105】
印刷ヘッドカートリッジの入口弁は、径方向内向きに延びる弁座240を備える、円錐台形の入口開口部238を有する。押下可能な弁部材236が、印刷ヘッドの入口も正常に閉じられるように、付勢されて弁座240と封止係合させられる。
【0106】
図17に最もよく示されるように、入口弁と出口弁が相互係合させられるとき、円錐台形入口開口部238上のスカート係合部分234が、弾性スカート226の環状封止部228を封止する。スカート係合部分234と環状封止部228との間の封止が形成されるとすぐに、ステム230のフランジ付き端部232の下面が、押下可能な部材236の頂部に係合する。インクカートリッジが、押されてさらに係合させられるとき、弾性スカート226は、ステムのフランジ付き端部232の上面から封止されなくなり、出口弁を開く。同時に、ステム230は、押下可能な部材236を押下し、それを弁座240から退け、それによって入口弁を印刷ヘッドカートリッジ100へと開く。両方の弁の間に外部封止が形成された後に、それらを同時に開くことによって、印刷ヘッドノズルへのインク流中に、過度な空気が引き込まれる可能性が低減される。さらに、フランジ付き端部232の下面、押下可能な部材236の頂部、及びスカート係合部分は、弁の間の封止が形成される前にそれらの間から実質的にすべての空気が追放されるように、構成及び寸法決めされる。印刷ヘッド内のインクチャンバに到達する圧縮性気泡は、インク吐出アクチュエータからの圧力パルスを吸収することによって、ノズルがインクを吐出することを防止することができることを、一般的な当業者は理解するであろう。空気の引き込みを防止するために、ニードル弁が一般に使用されるが、ニードル弁は必然的に、ページ幅印刷ヘッドによって要求される高度なインク流量をもたない。本出願人の相互に作動し合う設計は、ニ―ドル弁の絞りによる流れの狭窄をもたない。
【0107】
インクフィルタ及び圧力調整器
図30a及び図30bに最もよく示されるように、印刷ヘッドカートリッジは、その入口弁194の下流に、圧力調整器196を有する。再び図17を簡潔に参照すると、インクカートリッジからのインクは、ステムのフランジ付き端部及び押下可能部材の周りを、インクフィルタ242へと滑らかに流れる。インクフィルタ242は、インク流がフィルタの比較的大きい面積と接触するように、押下可能部材236の径方向延長部を超えて延びる。これによりフィルタは、いかなる気泡を除去するにも十分小さいが、インク流量を過度に抑制しない孔径を有することが、可能になる。
【0108】
圧力調整器196は、ばね250によって付勢されて閉じられる中央入口開口部248を有する、ダイヤフラム246を有する。カートリッジ内のインクの静水圧は、ダイヤフラムの上方又は上流側に作用する。上記で議論したように、インクヘッドは、収縮可能なインクバッグではなく膨張可能なエアバッグを有するので、インクカートリッジの耐用期間中、一定のままとなる。
【0109】
調整器出口252及び調整器ばね250にて、下方又は下流面上にインクの静水圧が作用する。下流の圧力及びばねの付勢力が、上流の圧力を上回る限り、調整器入口248は、スペーサ244の中央ハブ256に対して、封止されたままとなる。
【0110】
動作中に、(以下で説明する)印刷ヘッドは、ポンプとして作用する。ノズルアレイを通してインクを押し進める吐出アクチュエータは、ダイヤフラム246の下流側のインクの静水圧を下げる。下流の圧力及びばねの付勢力が、上流の圧力よりも小さくなるとすぐに、入口248は、中央ハブ256から退き、インクが調整器出口252へと流れる。入口248を通って流入する流れが、ダイヤフラム246の両側の流体圧力を即座に均一化し始め、ばね250の力が再び、入口248を中央ハブ256に対して再封止するのに十分となる。印刷ヘッドが動作し続けるとき、ダイヤフラムを横断する圧力差が、ばね250の力の平衡をとるために必要とされる閾値圧力差の周りでごく微量に上下するので、圧力調整器の入口248は、連続的に開閉する。したがって、圧力調整器196は、インク内の比較的一定の負の静水圧を維持する。これは、各ノズルにて、インクメニスカスを、外側に膨出させるのではなく、内側に引き込んで保つために利用される。膨出するメニスカスは、表面張力を破壊しインクを印刷ヘッドから吸い出す、紙のほこり又は別の汚染物との接触に弱い。これは、漏れ、及び印刷物内のアーチファクトの可能性につながる。
【0111】
弾性コネクタ
圧力調整器196は、それぞれの弾性コネクタ254によって、印刷ヘッド600に流体連結される。図28は、インクカートリッジ104が5つのドッキング区画106のうちの1つに部分的に挿入された状態の、印刷ヘッドカートリッジ100を通る長手方向断面図を示す。入口弁194及び圧力調整器196はそれぞれ、LCP成形物アセンブリ190との封止された流体連通を確立する、弾性コネクタ245を有する。印刷ヘッド600(以下でより詳細に説明する)は、シリコンウェハ基板上に製作され、LCP成形物アセンブリ190に取り付けられる、MEMSデバイスである。LCP(液晶ポリマー)及びシリコンは、同様の熱膨張係数を有する(LCPの熱膨張係数(CTE)は、成形流れの方向で測定される)。ただし、印刷ヘッドカートリッジ100内の別の構成要素のCTEは、シリコン又はLCPのCTEと大幅に異なる。弾性コネクタ254が、様々な熱膨張を受け入れ、封止された流体流路を印刷ヘッド600に維持する一方、CTEの差による構造的応力及び撓みを避けるために、LCP成形物アセンブリ190を、縦方向にいくらかの遊びをもつように印刷ヘッドカートリッジ内に取り付けることができる。
【0112】
図30aに最もよく示されるように、弾性コネクタ254は、LCP成形物アセンブリ190の入口開口(図示せず)との締り嵌めを有する、外部コネクタカラー258を備える。同様に、内部コネクタカラー260は、圧力調整器196の出口252を受け、それと締り嵌めされる。斜めに延びるウェブ262が、内部及び外部コネクタカラーに連結されており、2つのカラーの間のある程度の相対運動を可能にする。
【0113】
LCP成形物アセンブリ及び印刷ヘッド
図31から図40は、LCP成形物アセンブリ190及び印刷ヘッド600を示す。まず図31aから図31eを参照すると、LCP成形物アセンブリ190の様々な立面図が示されている。アセンブリは、蓋成形物264及びチャネル成形物266を備える。これは、ねじ穴268及び270によって、印刷ヘッドカートリッジケーシング184に取り付けられる。蓋成形物はまた、側部取付け穴276を有する。上記で議論したように、ねじ穴270及び276は、CTE不整合によるいくらかの相対運動に耐えるために、アセンブリ190とカートリッジ100の残りの部分との間の、ある程度の大きさの長手方向の遊びを可能にする。圧力調整器からのインクは、弾性コネクタ254を通り、蓋入口272へと供給される。各蓋入口272の基部に、チャネル成形物266内のそれぞれのチャネル280(図32の断面図に最もよく示される)と流体連通する、チャネル入口274がある。
【0114】
各チャネル280は、5色(CMYK&IR)のインクのうちの1つを印刷ヘッド600に供給するために、チャネル成形物266のほぼ全長にわたって延びる。各チャネル280の底部に、外面に形成されたインク導管278へと、インクを供給する、一連のインク開口284がある。図33a及び図33bは、チャネル成形物の分離斜視図であり、図34及び図35は、各チャネル280の底部に沿った一連のインク開口284を示す部分拡大図を伴う、チャネル成形物の平面図である。図36及び図37に示すように、インク開口284は、インク導管278の外端部へと続く。インク導管278の内端部288は、印刷ヘッド600(図示せず)の位置に相当する、中央ストリップに沿っている。インク導管278は、接着性ポリマー封止膜(図示せず)を用いて封止され、接着性ポリマー封止膜はまた、MEMS印刷ヘッド600を、チャネル成形物266に取り付ける。導管278内のインクは、インク導管278の内端部288と位置合わせされる、封止膜内のレーザ穿孔された穴を通り、印刷ヘッド600へと流れる。この膜は、PET膜又はポリスルホン膜など、熱可塑性フィルムとすることができ、又は、AL technoligies社及びRogers Corporation社によって製造されるものなど、熱硬化性フィルムの形とすることもできる。簡潔にするために、封止膜に関するさらなる詳細については、2004年1月21日出願の同時係属の米国特許出願第10/760,254号(整理番号RRC001US)を参照されたい。
【0115】
蓋成形物264はまた、プリンタ受け台102内の支点186(再び図12を参照)に係合する、リム形成物188を有する。蓋成形物264の反対側には、支持面282があり、ここでばね付きPCB接点の列が、フレキシブルPCB(図示せず)上の接触パッドに対して押し付けられる。支持面282とリム形成物188との間に、蓋成形物264の主横方向区間286が延びる。リム188と支持面282との間に作用する圧縮力は、LCP形成物アセンブリ190、したがって印刷ヘッド600上の構造の撓みを最小限に抑えるように、主横方向区間286を直線的に通り抜ける。
【0116】
LCPの使用は、多くの利点をもたらす。LCPは、その熱膨張係数(CTE)がシリコンのCTEと同様になるように成形することができる。印刷ヘッド600(以下で議論される)と下にある成形物とのCTEの有意な差が、構造全体を湾曲させるおそれがあることが理解されるであろう。ただし、成形方向におけるLCPのCTEは、非成形方向のCTEよりも大幅に小さい(〜毎分20ページ/℃に比べて〜毎分5ページ/℃)ので、LCP成形物の成形方向が、印刷ヘッド600の長手延長部と同方向であることを保証するように注意しなければならない。LCPはまた、ポリカーボネート、スチレン、ナイロン、PET、及びポリプロピレンなど「普通のプラスチック」の通常5倍の係数を有する、比較的高い剛性を有する。
【0117】
印刷ヘッド600を、図37〜図40に示す。印刷ヘッドは、隣接するが別個である、一連の印刷ヘッドIC74であり、各印刷ヘッドICは、それ自体のシリコン基板上に製作されたMEMSデバイスである。図40は、印刷ヘッドIC74のうちの2つの間の接合部を示す、大幅に拡大された斜視図である。インク送達入口73は、印刷ヘッドIC74の「前」又は吐出面内に形成される。入口73は、入口上に配置されたそれぞれのノズル801(以下で図41から図54を参照しながら説明する)へと、インクを供給する。インクは、個々の入口73すべてにそれぞれインクが供給されるように、ICに送達されなければならない。したがって、個々の印刷ヘッドIC74内の入口73は、インク供給の複雑さ及び配線の複雑さを低減するために、物理的にグループ分けされる。それらはまた、電力消費を最小限に抑え、様々な印刷速度を可能にするために、論理的にグループ分けされる。
【0118】
各印刷ヘッドIC74は、5つの異なる色のインク(C、M、Y、K及びIR)を受け取り、印刷するように構成され、1色につき1280個のインク入口を備え、それらのノズルは、偶数及び奇数のノズル(各640個)に分割される。各色用の偶数個及び奇数個のノズルは、印刷ヘッドIC74上の別々の列の上に設けられ、真性の1600dpiの印刷を実行するために垂直に整列される。これはすなわち、ノズル801が、図39に明確に示されるように、10列に配列されることを意味する。単一の列上の2つの隣接するノズル801間の水平距離は、31.75μmであり、ノズル列間の垂直距離は、ノズルの発射オーダに基づくが、列は通常、紙が列の発射回数間に動く距離に対応して、ドットラインの数及びドットラインの分数分だけ離隔される。また、所与の色のための偶数列と奇数列の間隔は、以下で説明するように、それらがインクチャネルを共用することができるようなものとしなければならない。
【0119】
印刷ヘッドはページ幅印刷ヘッドであるので、個々の印刷ヘッドIC74は、LCPチャネル成形物266の場合、当接構成の中央ストリップ内で互いに連結される。印刷ヘッドIC74は、接着層の融点を超えてICを加熱し、それらを封止膜内へと押し付けることによって、又は、ICを膜内へと押し込む前に、レーザを用いて接着層をICの下で溶融させることによって、(上記で説明した)ポリマー封止膜に取り付けることができる。別の選択肢は、ICを膜に押し付ける前に、IC(接着剤の融点を超えない)及び接着層の両方を加熱することである。
【0120】
個々の印刷ヘッドIC74の長さは、およそ20〜22mmである。A4/米国手紙サイズのページを印刷するために、11〜12個の個々の印刷ヘッドIC74が、互いに隣接して連結される。個々の印刷ヘッドIC74の数は、別の幅のシートに対応するために変えることができる。
【0121】
印刷ヘッドIC74は、様々な方法で互いに連結させることができる。IC74を連結させる1つの具体的なやり方を、図40に示す。この構成では、IC74は、隣り合うIC間に垂直方向のずれを伴わずにICの水平ラインを形成するよう、その端部が互いに連結されるように形状付けされる。IC間に、約45°の角度を有する傾斜した接合部が設けられる。接合縁部は、直線状ではなく、位置決めを容易にするための鋸歯状プロファイルを有し、IC74は、接合縁部に対して垂直に測定して、約11μm離隔して配置されることが意図される。この構成では、各列上の最も左のインク送達ノズル73は、10行のピッチで下降し、三角形構成で配列される。この構成は、接合部にてノズルの一定の重なりをもたらし、インク液滴が印刷領域に沿って一貫して送達されることを保証するように、ノズルのピッチを維持する。この構成はまた、十分な連結を保証するために、IC74の縁部により多くのシリコンが提供されることを保証する。ノズル動作の制御は、SoPECデバイスによって実行されるが(以下の説明で議論する)、ノズルの補正は、ストレージ要求に応じて、印刷ヘッド内で実行することができ、又はSoPECデバイスによって実行することもできる。この点に関して、IC74の一端部に配置されるノズルの下降する三角形配列は、印刷ヘッド上の最小のストレージ要求をもたらすことが理解されるであろう。ただし、ストレージ要求があまり重要でない場合、三角形以外の形状を使用することができ、たとえば下降する列は、台形の形をとることができる。
【0122】
印刷ヘッドICの上面は、その縁部に沿って設けられた多数のボンドパッド75を有し、それらは、SoPECデバイスから、ノズル73の動作を制御するためのデータ及び/又は電力を受け取る手段をもたらす。IC74を接着層71の表面上に正しく位置決めし、接着層71内に形成された穴72とIC74が正しく整列するようにそれらを整列させることを助けるために、基準点76もまた、IC74の表面上に設けられる。基準点76は、隣のIC及び接着層71の表面に対する、IC74の正しい位置を指示するための、適当な位置決め機器によって容易に識別可能なマーカの形であり、IC74の縁部上に、接着層71の長さに沿って戦略的に位置決めされる。
【0123】
図38に示すように、印刷ヘッドIC74の下面のエッチングされたチャネル77は、インク導管278からインクを受け取り、それをインク入口73へと分配する。各チャネル77は、1つの特定の色又はタイプのインクを送達専用の、入口73の1対の列と連通する。チャネル77は、ポリマー封止膜内の穴72の幅と等しい幅約80μmであり、IC74の長さにわたり延びる。チャネル77は、シリコン壁部78によって区間に分割される。各区間には、入口73への流路を短縮し、各ノズル801へのインク欠乏の可能性を低減するために、インクが直接供給される。これに関して、各区間は、それらそれぞれの入口73を通じて、およそ128個のノズル801に供給する。
【0124】
封止膜内で必要とされる、レーザ穿孔された穴の密度を半減させるために、シリコン壁部78上に穴を配置することができる。このようにして、1つの穴が、チャネル77の2つの区間へとインクを供給する。
【0125】
チャネル成形物への各印刷ヘッドIC74の取付け及び位置合せ後に、ノズル801を制御する及び動作させるために制御信号及び電力をボンドパッド75へと供給することができるように、フレキシブルPCBが、IC74の縁部に沿って取り付けられる。フレキシブルPCB、及びそのボンドパッド75への取付けは、参照により本明細書に組み込まれる、上述の2004年1月21日出願の米国特許同時係属出願第10/760,254号(整理番号RRC001US)において詳細に説明される。フレキシブルPCBは、蓋成形物264の支持面282(図32参照)の周りに巻き付く。
【0126】
インク送達ノズル
ノズル及び対応するアクチュエータを備える、本発明に適したインク送達ノズル構成のタイプの一例を、次に図41から図50を参照しながら説明する。図50は、シリコン基板8015上に形成された、インク送達ノズル構成801のアレイを示す。各ノズル構成801は、同一であるが、ノズル構成801のグループは、異なる色のインク又は定着剤が供給されるように構成される。この点に関して、ノズル構成は、列として構成され、互いに対してずらして配置され、印刷時に、単一列のノズルで可能となるよりもより緊密な間隔でのインクドット配置を可能にする。そのような構成は、高密度のノズルの提供を可能にし、たとえば、5000個以上のノズルが、それぞれの列内のノズル間に約32μm、隣接する列間に約80μmの間隔を有する、複数の互い違いの列内に配列される。複数の列によってまた、冗長化(必要な場合)が可能になり、したがって、1つのノズルにつき所定の障害率が可能になる。
【0127】
各ノズル構成801は、集積回路加工技術の製品である。特に、ノズル構成801は、微小電気機械システム(MEMS)の特徴を有する。
【0128】
説明を分かりやすく容易にするために、単一のノズル構成801の構造及び動作を、図41から図50を参照しながら説明する。
【0129】
インクジェット印刷ヘッド集積回路74は、シリコンウェハ基板8015を備え、シリコンウェハ基板8015は、その上に位置決めされた、0.35μmの1P4M12ボルトのCMOSマイクロプロセッシング電子部品を有する。
【0130】
二酸化ケイ素(或いはガラス)層8017が、基板8015上に位置決めされる。二酸化ケイ素層8017は、CMOS誘電層を画成する。CMOS最上層金属は、二酸化ケイ素層8017上に位置決めされた、1対の位置合せされたアルミニウム電極接触層8030を画成する。シリコンウェハ基板8015及び二酸化ケイ素層8017はいずれも、一般に円形断面(平面図で)を有するインク入口チャネル8014を画成するように、エッチングされる。CMOS金属1、CMOS金属2/3、及びCMOS最上層金属の、アルミニウム拡散障壁8028が、インク入口チャネル8014の周りで二酸化ケイ素層8017内に配置される。拡散障壁8028は、駆動電子部品層8017のCMOS酸化物層を通じたヒドロキシルイオンの拡散を妨げる働きをする。
【0131】
窒化ケイ素の層8031の形の不活性化層が、アルミニウム接触層8030及び二酸化ケイ素層8017を覆って配置される。接触層8030上に配置された不活性下層8031の各部分は、接点8030へのアクセスを提供するために、その中に画成された開口8032を有する。
【0132】
ノズル構成801は、ノズルチャンバ8029を備え、ノズルチャンバ8029は、ノズル屋根8034内の上端部にて終端する環状ノズル壁8033と、平面図内で円形である径方向内部ノズルリム804とによって画成される。
【0133】
インク入口チャネル8014は、ノズルチャンバ8029と流体連通する。ノズル壁の下方端部に、運動封止リップ8040を備える、運動リム8010が配置される。包囲壁8038が、可動ノズルを取り囲み、静止封止リップ8039を備え、静止封止リップ8039は、図44に示すようにノズルが停止しているとき、運動リム8010に隣接する。静止封止リップ8039と運動封止リップ8040の間に捕らえられたインクの表面張力により、流体封止部8011が形成される。これは、チャンバからのインクの漏れを防止する一方、包囲壁8038とノズル壁8033の間の低抵抗結合をもたらす。
【0134】
図48に最もよく示されるように、複数の径方向に延びる凹部8035が、ノズルリム804の周りの屋根8034内に画成される。凹部8035は、インクがノズルリム804を通過して漏れる結果としての、径方向インク流を収容する働きをする。
【0135】
ノズル壁8033は、ほぼU字形プロファイルを有するキャリヤ8036に取り付けられたてこ構成の一部を形成し、基部8037が、窒化ケイ素の層8031に取り付けられる。
【0136】
てこ構成はまた、ノズル壁から延び横方向強化ビーム8022を組み込む、てこの腕8018を備える。てこの腕8018は、図44及び図49に最もよく示されるように、窒化チタン(TiN)から形成されノズル構成の両側に位置決めされた、一対の受動ビーム806に取り付けられる。受動ビーム806の他端部は、キャリヤ8036に取り付けられる。
【0137】
てこの腕8018はまた、TiNで形成されたアクチュエータビーム807にも取り付けられる。アクチュエータビームへのこの取付けは、小さいが決定的な距離だけ、受動ビーム806への取付け部よりも高い位置にて行われることに留意されたい。
【0138】
図41及び図47に最もよく示されるように、アクチュエータビーム807は、平面でほぼU字形であり、電極809と対向電極8041との間に電流路を画成する。それぞれの電極809及び8041は、接触層8030内のそれぞれの点に電気的に接続される。接点809を通じて電気的に結合されるとともに、アクチュエータビームはまた、アンカ808へと機械的に係留される。アンカ808は、ノズル構成が動作しているとき、図44から図46の左へのアクチュエータビーム807の運動を抑制するように構成される。
【0139】
アクチュエータビーム807内のTiNは、導電性であるが、電流が電極809と8041の間に通されるときの自己加熱に耐えるように、十分高い電気抵抗を有する。電流は、受動ビーム806を通って流れないので、受動ビーム806は膨張しない。
【0140】
使用時は、休止状態のデバイスが、表面張力の影響下でメニスカス803を画成する、インク8013で満たされる。インクは、メニスカスによってチャンバ8029内に保持され、一般に、その他の物理的な影響がなければ漏出しない。
【0141】
図42に示すように、ノズルからインクを発射させるために、電流がアクチュエータビーム807を通過して、接点809と8041の間に流される。ビーム807の抵抗によるその自己加熱は、ビームを膨張させる。アクチュエータビーム807の寸法及び設計は、膨張の大部分が、図41から図43に関して水平方向であることを意味する。膨張は、左側でアンカ808によって抑制されるので、てこの腕8018に隣接するアクチュエータビーム807の端部は、右へと押し進められる。
【0142】
受動ビーム806が相対的に水平方向に不撓性であることにより、それらがてこの腕8018の大幅な水平運動を可能にすることが防止される。ただし、てこの腕に対する、受動ビーム及びアクチュエータビームの取付け点のそれぞれの相対移動によって、ねじり運動が生じ、それにより、てこの腕8018が全体的に下向きに動かされる。その運動は、有効には、枢動又は蝶番運動である。ただし、真の枢動点がないことは、受動ビーム806の屈曲によって画成される枢動領域の周りで、回転が生じることを意味する。
【0143】
てこの腕8018の下降運動(及びわずかな回転)は、受動ビーム806からのノズル壁8033の距離によって増幅される。ノズル壁及び屋根の下降運動は、チャンバ8029内の圧力上昇を生じ、それにより、図42に示すようにメニスカスを膨出させる。インクの表面張力は、流体封止部8011がこの運動によって、インクを漏出させずに伸長されることを意味することに留意されたい。
【0144】
図43に示すように、適当な時間に駆動電流が停止され、アクチュエータビーム807が急速に冷却され収縮する。収縮によって、てこの腕が、その静止位置へと戻り始め、それによりチャンバ8029内の圧力低下が生じる。膨出するインクの運動量とその固有の表面張力の間の相互作用、及びノズルチャンバ8029の上昇運動によって生じる負圧によって、膨出するメニスカスが薄くなり、最終的にプツッと切れてインク液滴802が画成され、インク液滴は、通過する印刷媒体に接触するまで上昇し続ける。
【0145】
液滴802が離れた直後に、メニスカス803は、図43に示す凹形を形成する。インクが入口8014を通って上方向に吸引され、それによってノズル構成及びインクが図41に示す静止状態へと戻されるまで、チャンバ8029内の圧力は、表面張力により比較的低いままとなる。
【0146】
本発明に適当な別のタイプの印刷ヘッドノズル構成を、次に図51を参照しながら説明する。ここでも同様に、説明を分かりやすく容易にするために、単一のノズル構成1001の構造及び動作を説明する。
【0147】
ノズル構成1001は、泡形成ヒータ要素アクチュエータタイプのものであり、ノズル1003をその中に有するノズルプレート1002、ノズルリム1004を有するノズル、及びノズルプレートを通って延びる開口1005を備える。ノズルプレート1002は、続いてエッチングされる犠牲材料上に化学気相成長法(CVD)によって堆積された、窒化ケイ素構造からプラズマエッチングされる。
【0148】
ノズル構成は、各ノズル1003に対して、ノズルプレートがその上で支持される側壁1006、壁部及びノズルプレート1002によって画成されるチャンバ1007、多層基板1008、ならびに、多層基板を通って基板の裏側(図示せず)へと延びる入口通路1009を備える。環状の細長ヒータ要素1010は、チャンバ1007内に懸架され、そのため要素は、懸架されたビームの形となる。図示のようなノズル構成は、リソグラフィプロセスによって形成される、微小電気機械システム(MEMS)構造である。
【0149】
ノズル構成が使用されているとき、リザーバ(図示せず)からのインク1011は、チャンバが満たされるように、入口通路1009を通ってチャンバ1007内に入る。その後、ヒータ要素1010は、1マイクロ秒よりいくぶん短く加熱され、そのため加熱は、熱パルスの形となる。ヒータ要素1010は、チャンバ1007内でインク1011と熱接触し、そのため、要素が加熱されるとき、それによりインク内に蒸気泡が生じることが理解されるであろう。したがって、インク1011は、泡を形成する液体を構成する。
【0150】
泡1012が発生すると、チャンバ1007内の圧力上昇が生じ、それによって、ノズル1003を通るインク1011の液滴1016の吐出が生じる。リム1004は、液滴が誤って方向付けられる可能性を最低限に抑えるように、液滴1016が吐出されるときその方向付けを助ける。
【0151】
1つの入口通路1009につきノズル1003及びチャンバ1007が1つしか存在しない理由は、要素1010の加熱及び泡1012の形成時にチャンバ内で生み出される圧力波が、隣接チャンバ及びそれらの対応するノズルに影響を及ぼさないようにするためである。
【0152】
チャンバ1007内の圧力上昇は、ノズル1003を通してインク1011を押し出すだけでなく、入口通路1009を通してインクをいくらか押し戻す。ただし、入口通路1009は、長さが約200から300μmであり、直径がわずか約16μmである。したがって、かなりの粘性抵抗が存在する。結果的に、チャンバ1007内の圧力上昇の主な効果は、入口通路1009を通じてインクを押し戻すよりも、ノズル1003を通してインクを吐出する液滴1016として押し出すことである。
【0153】
図51に示すように、液滴が切り離される前のその「くびれ段階」時の、吐出されるインク液滴1016を示す。このステージで、泡1012は、既にその最大サイズに到達しており、次いで崩壊点1017に向かって崩壊を開始している。
【0154】
泡1012が崩壊点1017へと向かって崩壊することによって、一部のインク1011が、ノズル1003内でそこから(液滴の側部1018から)、また一部が入口通路1009から、崩壊点に向かって引き込まれる。このようにしてノズル1003から引き込まれるほとんどのインク1011は、液滴1016が切れて離れる前にその基部にて、環状ネック1019を形成する。
【0155】
液滴1016を切り離すために、表面張力に打ち勝つための一定量の運動量が必要となる。インク1011が泡1012の崩壊によってノズル1003から引き込まれるとき、ネック1019の直径が縮小され、それにより、液滴を保持している総表面張力の大きさが低減される。そのため、液滴がノズルから吐出されるときの液滴の運動量は、液滴の切り離しを可能にするのに十分となる。
【0156】
液滴1016が切り離されるときに、泡1012が崩壊点1017へと崩壊するとき、矢印1020で表されるようなキャビテーション力が生じる。キャビテーションがそこで作用を有する可能性がある崩壊点1017の付近には、固体表面が存在しないことに留意されたい。
【0157】
本発明に適したさらに別のタイプの印刷ヘッドノズル構成を、次に図52〜図54を参照しながら説明する。このタイプは通常、インクを収容するノズルチャンバと、チャンバ内に配置されたパドルに連結される熱屈曲アクチュエータとを有する、インク送達ノズル構成を提供する。熱アクチュエータ装置は、ノズルチャンバからインクを吐出するように作動される。好ましい実施形態は、伝導トレースの伝導加熱をもたらすための一連の先細部分を備える、特定の熱屈曲アクチュエータを備える。アクチュエータは、ノズルチャンバのスロット付き壁部を通して受けられるアームによって、パドルに連結される。アクチュエータアームは、ノズルチャンバ壁内のスロットの表面と実質的に対合するように、対合形状を有する。
【0158】
最初に図52a〜cを見ると、本実施形態のノズル構成の基本動作の概略図が提供される。インク入口チャネル503によってインク502が充填された、ノズルチャンバ501が設けられており、入口チャネル503は、ウェハ基板を貫通してエッチングすることができ、その上にノズルチャンバ501が載る。ノズルチャンバ501はさらに、インク吐出ポート504を備え、その周りにインクメニスカスが形成される。
【0159】
ノズルチャンバ501の内側に、パドルタイプ装置507があり、この装置は、ノズルチャンバ501の壁部内のスロットを通じてアクチュエータ508と相互連結される。アクチュエータ508は、ポスト510の端部に隣接して配置された、たとえば509などヒータ手段を備える。ポスト510が、基板に固定される。
【0160】
ノズルチャンバ501から液滴を吐出することが望ましいとき、図52bに示すように、ヒータ手段509が、熱膨張するように加熱される。好ましくは、ヒータ手段509自体又はアクチュエータ508の別の部分は、高い曲げ性能を有する材料から構築され、曲げ性能は、以下の式のように定義される。
曲げ性能=(ヤング率×熱膨張係数)/(密度×比熱容量)
ヒータ要素のための適当な材料は、ガラス材料を屈曲させるように形成することができる、銅ニッケル合金である。
【0161】
ヒータ手段509は、理想的には、ポスト510付近の小さい熱膨張によりパドル端部の大きな運動が生じるように、作動の効果がパドル端部507にて増大されるよう、ポスト510の端部に隣接して配置される。
【0162】
ヒータ手段509及び結果的なパドル運動によって、インクメニスカス505の周りで全体的な圧力上昇が生じ、メニスカス505は、図52bに示すように、急速に膨張する。ヒータの電流は、パルス化され、インクが、インクチャネル503からの流入に加えて、ポート504から吐出される。
【0163】
続いて、パドル507が非作動化され、再びその静止状態に戻る。非作動化によって、ノズルチャンバ内へのインクの全体的な逆流が生じる。ノズルリム外部のインクの前進運動量及び対応する逆流によって、液滴512の全体的なくびれ及び切り離しがもたされ、液滴512が印刷媒体へと前進する。崩壊したメニスカス505によって、インク流れチャネル503を通じたノズルチャンバ502内へのインクの全体的な吸込が生じる。同時に、ノズルチャンバ501は、図52a内の位置に再び到達し、ノズルチャンバが続いて別のインク液滴の吐出準備完了となるように、補充される。
【0164】
図53は、ノズル構成の側部斜視図を示す。図54は、図53のノズル構成のアレイを通る断面図を示す。これらの図では、以前に挿入された要素の番号がそのまま使用されている。
【0165】
まず、アクチュエータ508は、たとえば窒化チタン層517の頂部に形成された上部ガラス部分(非晶質二酸化ケイ素)516を含む、515など一連の先細アクチュエータユニットを備える。或いは、銅ニッケル合金層(以下白銅と呼ぶ)を使用することができ、これはより高い曲げ性能を有することになる。
【0166】
窒化チタン層517は、先細の形状であり、したがって、ポスト510の端部付近で、抵抗加熱が生じる。隣接する窒化チタン/ガラス部分515は、ブロック部分519にて相互連結され、それはまた、アクチュエータ508のための、機械的な構造支持を提供する。
【0167】
ヒータ手段509は、理想的には、加熱時にアクチュエータ508の軸に沿ってみられる曲げ力が最大にされるように、細長く間隔を置いて配置された、複数の先細アクチュエータユニット515を備える。隣接する先細ユニット515間にスロットが画成され、スロットは、隣接するアクチュエータ508に対してわずかに異なる、各アクチュエータ508の動作を可能にする。
【0168】
ブロック部分519は、アーム520によって相互連結される。次いでアーム520は、たとえばノズルチャンバ501の側部内に形成された522などスロットによって、ノズルチャンバ501内のパドル507に連結される。スロット522は、アーム520の周りでインクが流出する機会を最低限に抑えるように、一般にアーム520の表面と対合するように設計される。インクは一般に、スロット522の周りの表面張力効果によって、ノズルチャンバ501内で保持される。
【0169】
アーム520を作動させることが望ましい場合、ノズル構成のための必要電力及び制御回路を提供する下方CMOS層506に接続されたブロック部分519内で、窒化チタン層517を通して導電電流が流される。導電電流により、ポスト510に隣接する窒化物層517の加熱が生じ、それにより、アーム520の全体的に上向きの屈曲が生じ、その結果、ノズル504からのインクの吐出が生じる。吐出された液滴は、上記のように、インクジェットプリンタの通常のやり方でページ上に印刷される。
【0170】
ノズル構成のアレイは、単一の印刷ヘッドを作り出すように形成することができる。たとえば、図54に、印刷ヘッドアレイを形成するように、交互配置されたラインとして配置された多数のインク吐出ノズル構成を含む、部分的に断面図である様々なアレイの図を示す。当然、フルカラーアレイなどを含めて、様々なタイプのアレイを考案することができる。
【0171】
説明される印刷ヘッドシステムの構造は、相互参照によりその内容が完全に組み込まれる、1998年7月10日出願の「画像生成方法及び装置(Image Creation Method and Apparatus)(整理番号IJ41US)」という名称の、本出願人の米国特許第6,243,113号に記載されたようなステップを適当に修正することにより、標準的なMEMS技術を用いて作り出すことができる。
【0172】
集積回路74は、集積回路の長さ及び必要とされる所望の印刷特性に応じて、その表面に沿って配列される、5000個から100000個の上記インク送達ノズルを有するように、構成することができる。たとえば、幅が狭い媒体用には、所望の印刷結果を実現するために、わずか5000個のノズルを印刷ヘッドの表面に沿って配列することができるが、より幅が広い媒体用には、所望の印刷結果を実現するために、最小で10000個、20000個、又は50000個のノズルを、印刷ヘッドの長さに沿って提供することが必要な場合がある。A4又は米国レターサイズ媒体上の、1600dpi又は約1600dpiのフルカラー写真品位画像のために、集積回路74は、1色に付き13824個のノズルを有することができる。したがって、印刷ヘッド600が4色(C、M、Y、K)の印刷能力を有する場合、集積回路74は、その表面に沿って配置される約53396個のノズルを有することができる。さらに、印刷ヘッドが6種の印刷流体(C、M、Y、K、IR及び定着剤)の印刷能力を有する場合、集積回路74の表面上に、82944個のノズルが設けられることになることがある。そのような構成すべてにおいて、各ノズルをサポートする電子部品は同一である。
【0173】
次に、個々のインク送達ノズル構成を印刷ヘッドカートリッジ100内で制御することができるやり方を、図55〜図58を参照しながら説明する。
【0174】
図55は、集積回路74の概要、及び印刷エンジン1の制御電子部品内に設けられた(上記の)SoPECデバイスへのその接続を示す。上記で議論したように、集積回路74は、各ノズルを発射させるための反復ロジックを含むノズルコアアレイ901、及びノズルを発射させるためのタイミング信号を生成するためのノズル制御ロジック902を備える。ノズル制御ロジック902は、高速リンクを通じてSoPECデバイスからデータを受け取る。
【0175】
ノズル制御ロジック902は、印刷のためにシリアルデータをノズルコアアレイへと、電気コネクタの形とすることができるリンク907を通じて送るように構成される。ノズルコアアレイ901についての状態及びその他の動作情報は、同様に電気コネクタ上に設けることができる別のリンク908を通じて、ノズル制御ロジック902へと送り返される。
【0176】
ノズルコアアレイ901を、図56及び図57に示す。図56において、ノズルコアアレイ901が、ノズル列911のアレイを備えることが理解されるであろう。アレイは、発射/選択シフトレジスタ912、ならびに、それぞれ対応するドットシフトレジスタ913によって表される、最高6つの色チャネルを備える。
【0177】
図57に示すように、発射/選択シフトレジスタ912は、順方向経路発射シフトレジスタ930、逆方向経路発射シフトレジスタ931、及び選択シフトレジスタ932を備える。各ドットシフトレジスタ913は、奇数ドットシフトレジスタ933及び偶数ドットシフトレジスタ934を備える。奇数ドットシフトレジスタ933及び偶数ドットシフトレジスタ934は、データが奇数ドットシフトレジスタ933を通じて一方向でクロック制御され、次いで偶数ドットシフトレジスタ934を通じて逆方向でクロック制御されるように、一端部にて接続される。最終以外のすべての偶数ドットシフトレジスタ出力は、マルチプレクサ935の1つの入力へと供給される。マルチプレクサのこの入力は、製造後のテスト中に、信号(corescan)によって選択される。正常な動作では、corescan信号は、マルチプレクサ935のその他の入力に供給される、ドットデータ入力Dot[x]を選択する。これによって、各色のためのDot[x]が、それぞれのドットシフトレジスタ913へと供給される。
【0178】
次に、図57を参照しながら、単一の列Nを説明する。図示の実施形態では、列Nは、6つのドットシフトレジスタそれぞれのための奇数データ値936及び偶数データ値937を含む、12個のデータ値を備える。列Nはまた、順方向発射シフトレジスタ930からの奇数発射値938、及び逆方向発射シフトレジスタ931からの偶数発射値939を備え、それらはマルチプレクサ940への入力として供給される。マルチプレクサ940の出力は、選択シフトレジスタ932内の選択値941によって制御される。選択値が0である場合、奇数発射値が出力され、選択値が1である場合、偶数発射値が出力される。
【0179】
奇数データ値936及び偶数データ値937は、それぞれ奇数ドットラッチ942及び偶数ドットラッチ943に対応する入力として提供される。
【0180】
各ドットラッチ、及びその関連データ値は、ユニットセル944など、ユニットセルを形成する。ユニットセルを、図58により詳細に示す。ドットラッチ942は、データ値936の出力を受け取るDタイプフリップフロップであり、この出力は、奇数ドットシフトレジスタ933の要素を形成するDタイプフリップフロップ944によって保持される。フリップフロップ944へのデータ入力は、(考慮される要素が、この例ではその入力がDot[x]値となるシフトレジスタ内の第1の要素でなければ)奇数ドットシフトレジスタ内の以前の要素の出力から提供される。データは、LsyncL上に供給される負のパルスを受け取ると、フリップフロップ944の出力から、ラッチ942内へとクロック制御される。
【0181】
ラッチ942の出力は、3入力ANDゲート945の入力のうちの1つとして提供される。ANDゲート945への別の入力は、(マルチプレクサ940の出力からの)Fr信号、及びパルスプロファイル信号Prである。ノズルの発射時間は、パルスプロファイル信号Prによって制御され、たとえば、(取外し可能な電源実施形態において)低電力供給により生じる低電圧状態を考慮して延長することができる。これは、比較的一定の量のインクが、各ノズルが発射されるときそこから効率的に吐出されることを保証するためのものである。説明される実施形態では、プロファイル信号Prは、各ドットシフトレジスタで同一とすることができ、それによって、複雑性、コスト、及び性能間のバランスがもたらされる。ただし、別の実施形態では、Pr信号は、全体的に印加することができ(すなわちすべてのノズルに対して同一となる)、或いは、各ユニットセルまたさらには各ノズルに対して個別に調整することができる。
【0182】
データがラッチ942内にロードされると、発射イネーブルFr信号及びパルスプロファイルPr信号が、ANDゲート945に印加され、結合されて、ロジック1を含む各ラッチ942ごとにインクのドットを吐出するようノズルをトリガする。
【0183】
各ノズルチャネルのための信号を、以下の表において概説する。
【表4】


図58に示すように、発射信号Frは、現在の列内の1つの色、後続の列内の次の色などの発射をイネーブルするために、対角線上に送られる。これは、電流需要を、時間遅延させたやり方で6つのコラム上に分散させることによって平均化する。
【0184】
ドットラッチ及び様々なシフトレジスタを形成するラッチは、この実施形態では十分に静的であり、CMOSベースである。ラッチの設計及び構造は、集積回路工学及び設計の当業者によく知られているので、この文書では詳細に説明しない。
【0185】
ノズル速度は、毎分約60ページ、又はより高速でそれより多く印刷することができるプリンタ2で、20kHz程とすることができる。この範囲のノズル速度では、印刷ヘッド600全体から吐出することができるインクの量は、毎秒少なくとも約50000000滴である。ただし、より高速及びより高品質の印刷を提供するためにノズルの数が増加されるとき、少なくとも毎秒100000000滴、好ましくは少なくとも毎秒500000000滴、及びより好ましくは少なくとも毎秒1000000000滴を、送達することができる。そのような速度にて、インク液滴は、ノズルによって、1つの液滴につき約250ナノジュールの最大液滴吐出エネルギーを用いて吐出される。
【0186】
したがって、これらの速度での印刷に対応するために、制御電子部品は、ノズルが同等の速度でインク液滴を吐出するべきであるかどうかを決定することができなくてはならない。これに関して、いくつかの例では、制御電子部品は、ノズルが毎秒少なくとも50000000定量の速度でインクの液滴を吐出するかどうかを決定することができなければならない。これは、より高速且つより高品位の印刷用途のために、毎秒少なくとも100000000定量、又は少なくとも毎秒500000000定量、及び多くの場合に、少なくとも1000000000定量へと増大することがある。
【0187】
本発明のプリンタ2では、印刷ヘッド600上に設けられる上記範囲の数のノズルは、ノズル発射速度及び印刷速度と併せて、少なくとも毎秒50cm、また印刷速度に応じて少なくとも毎秒100cm、好ましくは少なくとも毎秒200cm、より好ましくはより高速で、少なくとも毎秒500cmの面積印刷速度をもたらす。そのような構成によって、以前に従来の印刷ユニットを用いて到達不可能であった速度にてある面積の媒体を印刷することができる、プリンタ2が提供される。
【0188】
本発明を、本明細書に例示としてのみ説明してきた。当業者は、本発明の広範な概念の精神及び範囲から逸脱しない多くの変形形態及び修正形態を、容易に理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0189】
【図1】紙が入力トレイ内にあり、収集トレイが拡張された状態の、プリンタを示す前方斜視図である。
【図2】内部が露出されるようにケーシングが開いた状態である、(紙が入力トレイ内に存在せず、収集トレイが収縮された状態の)図1の印刷ユニットを示す図である。
【図3】本発明の一実施形態による、印刷システムのドキュメントデータの流れを示す概略図である。
【図4】図3の印刷システム内で使用されるアーキテクチャを示す、より詳細な概略図である。
【図5】図3の印刷システム内で使用される制御電子部品の一実施形態を示すブロック図である。
【図6】1つのインクカートリッジが設置された状態の、プリンタ受け台内の印刷ヘッドカートリッジを示す前上方斜視図である。
【図7A】本出願人の2005年12月5日出願の米国特許出願第11/293,800号に記載されるプリンタ受け台を示す斜視図である。
【図7B】本出願人の2005年12月5日出願の米国特許出願第11/293,800号に記載されるプリンタ受け台を示す斜視図である。
【図7C】本出願人の2005年12月5日出願の米国特許出願第11/293,800号に記載されるプリンタ受け台を示す斜視図である。
【図7D】本出願人の2005年12月5日出願の米国特許出願第11/293,800号に記載されるプリンタ受け台を示す斜視図である。
【図8】本出願の印刷カートリッジを受け入れるための保守駆動アセンブリを有するプリンタ受け台を示す後方斜視図である。
【図9】保守駆動アセンブリ及び媒体給送駆動アセンブリが取り外された状態の、図8に示すプリンタ受け台の後方斜視図である。
【図10】保守駆動アセンブリを示す側面図である。
【図11】図10に示す保守駆動アセンブリの分解斜視図である。
【図12】プリンタ受け台内に挿入された印刷ヘッドカートリッジを示す側断面図である。
【図13】プリンタ受け台内へと挿入されるときオーバーセンタ機構の平衡点へと回転させられる、印刷ヘッドカートリッジを示す側断面図である。
【図14】プリンタ受け台内でその動作位置へと付勢された印刷ヘッドカートリッジを示す側断面図である。
【図15】インクカートリッジがその設置直前の状態である、印刷ヘッドカートリッジ及びプリンタ受け台を示す側断面図である。
【図16】インクカートリッジが設置された状態の、印刷ヘッドカートリッジ及びプリンタ受け台を示す側断面図である。
【図17】印刷ヘッドカートリッジと係合されたインクカートリッジを示す拡大側断面図である。
【図18】印刷ヘッド保守ステーションの内部構成要素が露出された、印刷ヘッドカートリッジを示す破断斜視図である。
【図19】印刷ヘッドから離れた第2の位置にある保守ローラを示す、印刷ヘッドカートリッジの長手方向断面図である。
【図20】印刷ヘッドと係合される第1の位置にある保守ローラを示す、印刷ヘッドカートリッジの長手方向断面図である。
【図21A】保守ローラの、印刷ヘッドとの係合のある段階を示す概略図である。
【図21B】保守ローラの、印刷ヘッドとの係合の別の段階を示す概略図である。
【図21C】保守ローラの、印刷ヘッドとの係合の別の段階を示す概略図である。
【図21D】保守ローラの、印刷ヘッドとの係合の別の段階を示す概略図である。
【図22A】保守ローラが印刷ヘッドから離れる、ある段階を示す概略図である。
【図22B】保守ローラが印刷ヘッドから離れる、別の段階を示す概略図である。
【図22C】保守ローラが印刷ヘッドから離れる、別の段階を示す概略図である。
【図22D】保守ローラが印刷ヘッドから離れる、別の段階を示す概略図である。
【図22E】保守ローラが印刷ヘッドから離れる、別の段階を示す概略図である。
【図23】印刷ヘッドから完全に離れた保守ローラを示す概略図である。
【図24】印刷ヘッド保守ステーションを示す分解斜視図である。
【図25】印刷ヘッド保守ステーションを示す前面図である。
【図26】図25の線A−Aを通る横断面図である。
【図27】インクカートリッジを示す破断斜視図である。
【図28】インクカートリッジと係合する直前の印刷ヘッドカートリッジを通る縦方向部分断面図である。
【図29】印刷ヘッドカートリッジの入口弁と係合する直前の、インクカートリッジの出口弁を示す断面図である。
【図30A】入口弁及び圧力調整器の分離拡大断面図である。
【図30B】入口弁及び圧力調整器の分離分解斜視図である。
【図31A】LCP成形物アセンブリを示す平面図である。
【図31B】LCP成形物アセンブリを示す前方立面図である。
【図31C】LCP成形物アセンブリを示す底面図である。
【図31D】LCP成形物アセンブリを示す背面図である。
【図31E】LCP成形物アセンブリを示す端面図である。
【図32】LCP成形物アセンブリのC−Cを通る断面図である。
【図33A】LCPチャネル成形物を示す頂部斜視図である。
【図33B】LCPチャネル成形物を示す底部斜視図である。
【図34】LCPチャネル成形物を示す平面図である。
【図35】図34に示すインセットDを示す拡大平面図である。
【図36】LCPチャネル成形物を示す底面図である。
【図37】LCPチャネル成形物を示す拡大底面図である。
【図38】印刷ヘッド集積回路モジュールの下降する三角形端部の、頂部を示す拡大部分斜視図である。
【図39】印刷ヘッド集積回路モジュールの下降する三角形端部の、底部を示す拡大部分斜視図である。
【図40】2つの印刷ヘッド集積回路モジュール間の接合部を示す拡大斜視図である。
【図41】本発明とともに使用するための、静止状態にあるインク吐出用の単一のノズルを示す垂直断面図である。
【図42】初期作動段階中の、図41のノズルを示す垂直断面図である。
【図43】後期作動段階中の、図42のノズルを示す垂直断面図である。
【図44】図36に示す作動状態にある、図41のノズルを示す部分垂直断面斜視図である。
【図45】インクを省略した、図41のノズルを示す垂直断面斜視図である。
【図46】図45のノズルを示す垂直断面図である。
【図47】図42に示す作動状態にある、図41のノズルを示す部分垂直断面斜視図である。
【図48】図41のノズルを示す平面図である。
【図49】分かりやすくするためにてこの腕及び可動ノズルを除去した、図41のノズルを示す平面図である。
【図50】図41に示すタイプの複数のノズル構成を組み込む印刷ヘッドチップの一部を示す、垂直断面斜視図である。
【図51】泡形成ヒータ要素アクチュエータタイプの、インク噴射用の単一のノズルのインクチャンバを通る概略断面図である。
【図52A】熱屈曲アクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図52B】熱屈曲アクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図52C】熱屈曲アクチュエータの基本的な動作原理を示す図である。
【図53】図52Aから図52Cに従って構築された、単一のインクジェットノズル構成を示す立体図である。
【図54】図53に示すノズル構成のアレイを示す図である。
【図55】本発明のプリンタと共に使用するための、CMOS駆動及び制御ブロックを示す概略図である。
【図56】図55のCMOSブロック内のノズル列とドットシフトレジスタの間の関係を示す概略図である。
【図57】ユニットセル、及びその図56のノズル列及びドットシフトレジスタとの関係をより詳細に示す概略図である。
【図58】本発明のプリンタ内の単一のプリンタノズルのためのロジックを示す回路図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷ヘッドを動作可能状態に維持するための印刷ヘッド保守アセンブリであって、
前記印刷ヘッドのインク吐出面と封止係合するための、弾性変形可能な接触表面を有する保守ローラと、
前記接触表面が前記インク吐出面と封止係合する第1の位置と、前記接触表面が前記インク吐出面から離れる第2の位置との間で、前記保守ローラを動かすための係合機構と、
前記接触表面を清浄化するための清浄化機構であって、前記保守ローラを回転させるためのモータと、前記保守ローラが回転したときに前記接触表面からインクを除去するためのインク除去システムと、を含んだ清浄化機構と、
を具備する印刷ヘッド保守アセンブリ。
【請求項2】
前記係合機構が、前記保守ローラを前記インク吐出面に対して実質的に垂直に動かす、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項3】
前記保守ローラが、前記印刷ヘッドと実質的に同じだけ延びる、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項4】
前記接触表面が、実質的に均一である、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項5】
前記保守ローラが、弾性変形可能なシェルを有する剛性コアを備え、
前記接触表面が、前記シェルの外面である、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項6】
前記シェルが、シリコン、ポリウレタン、ネオプレン(登録商標)、サントプレン(登録商標)、又はクラトン(登録商標)により構成される、請求項5に記載の保守アセンブリ。
【請求項7】
前記保守ローラが、前記印刷ヘッドから偏位する、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項8】
前記接触表面と前記インク吐出面の間の剥離区域が、係合時及び非係合時に前記インク吐出面を横方向に横断して前進及び後退する、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項9】
前記保守ローラが、前記第1の位置に向かって付勢される、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項10】
前記剥離非係合により、インクが前記印刷ヘッドから前記接触表面上へと引きつけられる、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項11】
前記インク除去システムが、前記保守ローラと係合した移送ローラを備える、請求項1に記載の保守アセンブリ。
【請求項12】
前記移送ローラが、前記接触表面からインクを受け取るための湿潤性表面を有する、請求項11に記載の保守アセンブリ。
【請求項13】
前記移送ローラが、金属ローラである、請求項12に記載の保守アセンブリ。
【請求項14】
前記移送ローラが、前記印刷ヘッドから遠位に位置決めされる、請求項11に記載の保守アセンブリ。
【請求項15】
清浄化パッドが、前記移送ローラと接触する、請求項11に記載の保守アセンブリ。
【請求項16】
前記移送ローラ及び前記清浄化パッドが、前記保守ローラと実質的に同じだけ延びる、請求項15に記載の保守アセンブリ。
【請求項17】
前記保守ローラ、前記移送ローラ、及び前記清浄化パッドが、シャシ上に取り付けられ、前記シャシが、前記第1の位置と前記第2の位置の間で往復運動可能である、請求項15に記載の保守アセンブリ。
【請求項18】
前記シャシが、ハウジング内に収容され、前記ハウジングに対し相対的に動くことが可能とされている、請求項17に記載の保守アセンブリ。
【請求項19】
前記係合機構が、少なくとも1つの係合アームを備え、
前記少なくとも1つの係合アームの第1の端部が、前記シャシの相補的な係合形成物と係合可能である、請求項18に記載の保守アセンブリ。
【請求項20】
前記シャシが、前記少なくとも1つの係合アームの前記第1の端部と相補的に係合するための、少なくとも1つのラグを備える、請求項19に記載の保守アセンブリ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【図21C】
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【図21D】
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【図22A】
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【図22B】
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【図22C】
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【図22D】
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【図22E】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30A】
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【図30B】
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【図31A】
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【図31B】
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【図31C】
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【図31D】
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【図31E】
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【図32】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52(A)】
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【図52(B)】
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【図52(C)】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【公表番号】特表2009−511296(P2009−511296A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534811(P2008−534811)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【国際出願番号】PCT/AU2006/000972
【国際公開番号】WO2007/041753
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】