説明

保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法

【課題】 排ガス浄化装置に使用する際に電極部材及び/又はセンサーを配置しやすい保持シール材、上記保持シール材を用いた排ガス浄化装置、及び、上記排ガス浄化装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 無機繊維からなるマット状の保持シール材であって、上記保持シール材は、保持シール材の幅方向に平行な第1の端面及び第2の端面を有し、かつ、保持シール材の長さ方向において、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が最長である当接部と、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とを有し、上記保持シール材を丸めて、上記当接部における上記第1の端面と上記第2の端面とを当接させた際、上記空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面近傍には、空隙部が形成されることを特徴とする保持シール材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン等の内燃機関から排出された排ガス中に含まれる有害ガス等の有害物質を浄化するため、内燃機関の排気通路(排ガスが流通する排気管等)には、排ガス浄化装置が設けられている。
排ガス浄化装置は、内燃機関の排気通路にケーシングを設け、ケーシングの中に排ガス処理体を配置した構造となっている。排ガス処理体の一例としては、触媒担体又はディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)が挙げられる。
排ガス処理体に触媒が担持された排ガス浄化装置による有害物質の浄化効率を高めるためには、内燃機関の排気通路及び排ガスの温度を触媒活性化に適した温度(以下、触媒活性化温度ともいう)に維持する必要がある。
【0003】
上述した通り、排ガス処理体に触媒が担持された排ガス浄化装置は、所定の触媒活性化温度に達するまで昇温した状態でないと、充分な触媒作用を奏することができない。従って、エンジン始動直後の排ガス浄化装置では、排ガス浄化性能が充分なレベルに達するまでにある程度の時間がかかるという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、エンジン始動直後に排出される有害物質を低減させることを目的として、触媒を急速に加熱する電気加熱触媒コンバータ(EHC;Electrically Heated Catalyst)が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、金属製排ガス処理体を金属製シェル(ケーシング)内に備え、金属製触媒担体(排ガス処理体)に接続した正負の電極部材を金属製シェル壁を絶縁状態に貫通して突出させた構造を有する触媒コンバータ(排ガス浄化装置)が開示されている。
図27(a)は、特許文献1に記載の従来の排ガス浄化装置を模式的に示す断面図である。図27(b)は、図27(a)に示す従来の排ガス浄化装置のC−C線断面図である。
図27(a)及び図27(b)に示す従来の触媒コンバータ(排ガス浄化装置)500には、金属製シェル(ケーシング)520内に金属製触媒担体(排ガス処理体)530a、530b及び530cが配置されている。そして、金属製触媒担体530a、530b及び530cの外表面には、他端部が金属製シェル520を貫通している+側電極部材550a、550b及び550c、並びに、−側電極部材550d、550e及び550fがそれぞれ接続されている。
また、図27(a)及び図27(b)に示す従来の触媒コンバータ500においては、金属製触媒担体530a、530b及び530cの外周面と金属製シェル520の内周面との間に、環状のマット部材(保持シール材)510a、510b及び510cがそれぞれ配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−269387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排ガス浄化装置の一種である電気加熱触媒コンバータでは、電極部材が、ケーシングを貫通し、保持シール材を通過して排ガス処理体と接続されており、また、排ガス処理体の温度を測定するためのセンサーが、ケーシングを貫通し、保持シール材を通過して排ガス処理体と接続されることもある。
【0008】
特許文献1には、金属製触媒担体に接続した正負の電極部材を金属製シェル壁を絶縁状態に貫通して突出させた構造を有する触媒コンバータが開示されているものの、上記構造を有する排ガス浄化装置をどのように製造するかについては何ら開示されていない。そのため、このような構造を有する排ガス浄化装置を製造する際に、電極部材及び/又はセンサー(以下、電極部材及び/又はセンサーを電極部材等とも記載する)を排ガス浄化装置にどのように配置すればよいかについては知られていない。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、排ガス浄化装置に使用する際に電極部材及び/又はセンサーを配置しやすい保持シール材、上記保持シール材を用いた排ガス浄化装置、及び、上記排ガス浄化装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、保持シール材の形状を、保持シール材を排ガス処理体の周囲に巻き付けた際に、保持シール材の端面に空隙部が形成されるような形状とすることにより、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置することができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、請求項1に記載の保持シール材は、
無機繊維からなるマット状の保持シール材であって、
上記保持シール材は、保持シール材の幅方向に平行な第1の端面及び第2の端面を有し、かつ、
保持シール材の長さ方向において、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が最長である当接部と、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とを有し、
上記保持シール材を丸めて、上記当接部における上記第1の端面と上記第2の端面とを当接させた際、上記空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面近傍には、空隙部が形成されることを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の保持シール材は、保持シール材の幅方向に平行な第1の端面及び第2の端面を有している。そして、請求項1に記載の保持シール材には、保持シール材の長さ方向において、第1の端面と第2の端面との距離が最長である当接部と、第1の端面と第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とが形成されている。
そのため、請求項1に記載の保持シール材を丸めて、第1の端面及び第2の端面を当接させようとしても、保持シール材の空隙形成部では、第1の端面及び第2の端面を当接させることができない。その結果、上記空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部が形成される。
従って、請求項1に記載の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。
【0013】
請求項1に記載の保持シール材を用いることにより、保持シール材に貫通孔が形成されていなくても電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。従って、保持シール材を製造する際に、貫通孔を形成するための打ち抜き工程等を行う必要がないため、保持シール材の製造工程が煩雑になるという問題が生じにくくなる。
【0014】
保持シール材に貫通孔を形成すると、貫通孔の面積分だけ保持シール材の面積が減少するため、保持シール材の保持力が低下する。
これに対して、保持シール材に空隙部を形成する場合、貫通孔を形成する場合に比べて小さい面積の空隙部を形成したとしても、形成された空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。従って、保持シール材の面積が減少することに起因して保持シール材の保持力が低下する問題を抑えることができる。
【0015】
また、保持シール材に貫通孔を形成すると、保持シール材の幅方向に占める面積が減少するため、保持シール材の引っ張り強度が低下する。
これに対して、保持シール材に空隙部を形成する場合、保持シール材の幅方向に占める面積が減少することを防止することができるため、保持シール材の引っ張り強度が低下することを防止することができる。その結果、保持シール材を排ガス処理体に組み付けるために保持シール材を引っ張った際に、保持シール材の破損やオーバーラップ等の組み付け不良といった問題が発生することを防止することができる。なお、オーバーラップとは、貫通孔が形成された保持シール材を排ガス処理体に組み付ける場合、保持シール材を引っ張った際に保持シール材がのびてしまうために、保持シール材を巻き過ぎてしまうことをいう。
【0016】
請求項2に記載の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面の少なくとも1つには、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部が形成されている。
保持シール材が上記のような形状の端面を有していると、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0017】
請求項3に記載の保持シール材では、上記第1の端面及び上記第2の端面の少なくとも一方の端面には、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている。
保持シール材の第1の端面及び第2の端面に段差が設けられていると、保持シール材の突出部によって保持シール材が嵌合されやすくなるため、保持シール材の嵌合部から排ガスが漏れにくくなり、排ガスのシール性を保つことができる。また、保持シール材の第1の端面及び第2の端面に段差が設けられていると、保持シール材の突出部によって保持シール材が嵌合されやすくなるため、保持シール材の幅方向に排ガス浄化装置に力が加えられたとしても、排ガス処理体から保持シール材がずれにくくなる。
【0018】
請求項4に記載の保持シール材では、保持シール材の長さ方向において、上記保持シール材の空隙形成部における上記突出部の長さが、上記保持シール材の当接部における上記突出部の長さよりも短い。
また、請求項5に記載の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における上記突出部には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部が形成されている。
さらに、請求項6に記載の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における上記突出部に対向する端面には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部が形成されている。
請求項4〜請求項6に記載の保持シール材は、上記のような形状の空隙形成部を有しているため、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0019】
請求項7に記載の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向に保持シール材を貫通する貫通部が形成されている。
このように、請求項7に記載の保持シール材には、貫通部が形成されている。請求項7に記載の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、少なくとも1つの嵌合部に形成される空隙部に加えて、上記保持シール材の貫通部にも電極部材等を配置することができる。
【0020】
請求項8に記載の排ガス浄化装置は、
ケーシングと、
上記ケーシングに収容された排ガス処理体と、
上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
上記保持シール材は、請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材であり、
上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部が形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の排ガス浄化装置では、排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に空隙部が形成されている。そのため、ケーシングを貫通して排ガス処理体と接続させる部材を上記空隙部に配置することができる。
【0022】
請求項9に記載の排ガス浄化装置は、上記排ガス処理体と接続し、上記保持シール材を通過し、かつ、上記ケーシングを貫通する電極部材及び/又はセンサーをさらに備え、上記電極部材及び/又はセンサーは、上記保持シール材の上記空隙部に配置されている。
このように、請求項9に記載の排ガス浄化装置には、保持シール材に形成された空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。特に、上記空隙部に電極部材を配置した排ガス浄化装置は、電気加熱触媒コンバータとして使用することができる。
【0023】
請求項10に記載の排ガス浄化装置は、上記排ガス処理体と接続し、上記保持シール材を通過し、かつ、上記ケーシングを貫通する別の電極部材及び/又はセンサーをさらに備え、上記保持シール材は、請求項7に記載の保持シール材であり、上記別の電極部材及び/又はセンサーは、上記保持シール材の上記貫通部に配置されている。
この場合、保持シール材の少なくとも1つの嵌合部に形成された空隙部に加えて、上記貫通部にも電極部材等を配置することができる。
【0024】
請求項11に記載の排ガス浄化装置の製造方法は、
ケーシングと、
上記ケーシングに収容された排ガス処理体と、
上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、上記排ガス処理体及び上記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置の製造方法であって、
上記保持シール材として請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材を用いて、
上記排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に、空隙部を形成することを特徴とする。
【0025】
請求項12に記載の排ガス浄化装置の製造方法は、上記排ガス処理体に接続し、上記保持シール材を通過し、かつ、上記ケーシングを貫通するように電極部材及び/又はセンサーを配置する工程を含み、上記電極部材及び/又はセンサーを、上記保持シール材の上記空隙部に配置する。
【0026】
請求項13に記載の排ガス浄化装置の製造方法は、上記排ガス処理体に接続し、上記保持シール材を通過し、かつ、上記ケーシングを貫通するように別の電極部材及び/又はセンサーを配置する工程をさらに含み、上記保持シール材として請求項7に記載の保持シール材を用いて、上記別の電極部材及び/又はセンサーを、上記保持シール材の上記貫通部に配置する。
【0027】
請求項11〜請求項13に記載の排ガス浄化装置の製造方法では、それぞれ、請求項8〜請求項10に記載の排ガス浄化装置を好適に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2(a)及び図2(b)は、図1に示す保持シール材の平面図である。
【図3】図3は、図1に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
【図5】図5(a)は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図5(b)は、図5(a)に示す排ガス浄化装置のA−A線断面図である。
【図6】図6は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
【図7】図7は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成するケーシングの一例を模式的に示す斜視図である。
【図8】図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【図9】図9は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
【図11】図11(a)及び図11(b)は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
【図12】図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)、図12(f)、図12(g)及び図12(h)は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材に形成される突出部切欠部の断面形状の一例を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
【図14】図14は、図13に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
【図15】図15(a)及び図15(b)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
【図16】図16(a)、図16(b)、図16(c)、図16(d)、図16(e)、図16(f)、図16(g)及び図16(h)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材に形成される対向部切欠部の断面形状の一例を模式的に示す平面図である。
【図17】図17(a)、図17(b)及び図17(c)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材のさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
【図18】図18(a)、図18(b)及び図18(c)は、本発明の第四実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す平面図である。
【図19】図19(a)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図19(b)は、図19(a)に示す排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
【図20】図20は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置を構成するケーシングの一例を模式的に示す斜視図である。
【図21】図21(a)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の別の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図21(b)は、図21(a)に示す排ガス浄化装置を構成する保持シール材を模式的に示す平面図である。
【図22】図22(a)、図22(b)、図22(c)及び図22(d)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。
【図23】図23(a)、図23(b)及び図23(c)は、本発明の第五実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す平面図である。
【図24】図24(a)、図24(b)及び図24(c)は、本発明の第五実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
【図25】図25は、本発明の保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
【図26】図26(a)、図26(b)及び図26(c)は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法における収容工程の別の一例を模式的に示す斜視図である。
【図27】図27(a)は、従来の排ガス浄化装置の一例を模式的に示す断面図である。図27(b)は、図27(a)に示す従来の排ガス浄化装置のC−C線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。しかしながら、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0030】
(第一実施形態)
以下、本発明の保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法の一実施形態である第一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
まず、本発明の第一実施形態に係る保持シール材について説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図1に示す保持シール材10Aは、アルミナ−シリカ繊維等の無機繊維からなり、マット状である。より詳細には、保持シール材10Aは、所定の長さ(図1中、矢印Lで示す)、幅(図1中、矢印Wで示す)、及び、厚さ(図1中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板状の形状を有している。また、保持シール材10Aは、保持シール材10Aの幅W方向に平行な第1の端面11(11a、11b及び11c)、並びに、第2の端面12(12a、12b及び12c)を有している。
本明細書において、「保持シール材の長さ方向の長さ」とは、保持シール材の長さ方向における、第1の端面と第2の端面との距離をいうこととする。また、「保持シール材の長さ方向の長さ」を、単に「保持シール材の長さ」とも記載する。
【0032】
本実施形態の保持シール材では、上記第1の端面及び上記第2の端面には、それぞれ、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている。
図1に示す保持シール材10Aでは、第1の端面11に2つの突出部13a及び13cが形成されており、第2の端面12に1つの突出部13bが形成されている。
このように、図1に示す保持シール材10Aには、第1の端面11及び第2の端面12にそれぞれ3段の段差が設けられている。
図2(a)及び図2(b)は、図1に示す保持シール材の平面図である。
図2(a)には、保持シール材10Aに形成されている突出部13a、13b及び13cの具体的な位置を示している。
【0033】
本明細書において、「突出部」とは、以下の領域を指すこととする。
保持シール材の端面(第1の端面又は第2の端面)において、各段差の始点が属する端面と該段差の終点が属する端面との間の領域に存在する保持シール材の部分を「突出部」ということとする。従って、保持シール材の突出部は、保持シール材の第1の端面側及び第2の端面側にそれぞれ存在する。
【0034】
本実施形態の保持シール材は、保持シール材の長さ方向において、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が最長である当接部と、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とを有している。
【0035】
本明細書において、「当接部」及び「空隙形成部」は以下の領域を指すこととする。
まず、保持シール材の各突出部について、対向する端面まで保持シール材の長さ方向に拡大した領域を考える。これらの領域のうち、保持シール材の長さ方向において、第1の端面と第2の端面との距離が最長である部分を含む領域を「当接部」といい、第1の端面と第2の端面との距離が当接部よりも短い部分を含む領域を「空隙形成部」ということとする。
【0036】
本実施形態の保持シール材では、保持シール材の長さ方向において、上記空隙形成部における突出部の長さが、上記当接部における突出部の長さよりも短い。
以下、保持シール材の長さ方向における突出部の長さを、単に「突出部の長さ」とも記載する。
図1に示す保持シール材10Aでは、保持シール材10Aの長さL方向における突出部13bの長さ(図1中、矢印Xで示す)が、保持シール材10Aの長さL方向における突出部13aの長さ(図1中、矢印Xで示す)及び突出部13cの長さ(図1中、矢印Xで示す)よりも短くなっている。
図1に示す保持シール材10Aにおいて、突出部13a及び突出部13cの長さが同じであるとすると、突出部13a及び突出部13cを含む領域が当接部であり、突出部13bを含む領域が空隙形成部である。図2(b)には、保持シール材10Aに形成されている当接部14a及び14c、並びに、空隙形成部14bの具体的な位置を示している。
【0037】
なお、本発明の第一実施形態に係る保持シール材では、図1に示すように、保持シール材の第1の端面及び第2の端面が、保持シール材の長さ方向に対して略垂直になっている場合を考える。そして、保持シール材の第1の端面及び第2の端面が、保持シール材の長さ方向に対して略垂直になっていない場合には、保持シール材の第1の端面又は第2の端面に切欠部が形成されているものとして、後述する本発明の第二実施形態又は第三実施形態に分類することとする。
【0038】
本実施形態の保持シール材では、上記保持シール材を丸めて、上記当接部における上記第1の端面と上記第2の端面とを当接させた際、上記空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面近傍には、空隙部が形成される。
図3は、図1に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
図1に示す保持シール材10Aを丸めると、当接部においては、第1の端面11aと第2の端面12a、第1の端面11cと第2の端面12cとをそれぞれ当接させることができる。一方、空隙形成部においては、第1の端面11bと第2の端面12bとが当接しない。そのため、第1の端面11b及び第2の端面12b近傍には、空隙部15aが形成される。
このように、図1に示す保持シール材10Aを丸めると、突出部13bが形成する凸部と、突出部13a及び13cが形成する凹部とは、完全に嵌合されずに、空隙部15aが形成される。
【0039】
本明細書において、「保持シール材を丸める」とは、排ガス処理体等の被巻付体の周囲に保持シール材を巻き付けることをいう。
【0040】
図4(a)及び図4(b)は、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材では、図4(a)に示す保持シール材10Bのように、突出部13dの長さX及び突出部13fの長さXが、突出部13eの長さXよりも短くなっていてもよい。保持シール材10Bを丸めた際、空隙部15b及び15cが形成される。
また、本実施形態の保持シール材では、図4(b)に示す保持シール材10Cのように、突出部13gの長さXが、突出部13hの長さX及び突出部13iの長さXよりも短くなっていてもよい。保持シール材10Cを丸めた際、空隙部15dが形成される。
本実施形態の保持シール材では、すべての突出部の長さが異なっていてもよい。
【0041】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さは、保持シール材の当接部における突出部の長さの1〜90%であることが好ましく、35〜75%であることがより好ましい。
保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、保持シール材の当接部における突出部の長さの1%未満であると、保持シール材の面積が小さくなるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。一方、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、当接部における突出部の長さの90%を超えると、保持シール材を丸めた際に、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に充分な面積を有する空隙部を形成することができない。そのため、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。
具体的には、本実施形態の保持シール材において、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さは、保持シール材の当接部における突出部の長さよりも1〜100mm短いことが好ましく、20〜40mm短いことがより好ましい。
保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、保持シール材の当接部における突出部の長さよりも1mm未満短いと、保持シール材を丸めた際に、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に充分な面積を有する空隙部を形成することができない。そのため、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。一方、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、保持シール材の当接部における突出部の長さよりも100mm超えて短いと、保持シール材の面積が小さくなるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0042】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面とを当接させた際に形成される空隙部の断面積(保持シール材の主面に平行な方向の断面積)は、1〜10000mmであることが好ましく、400〜1600mmであることがより好ましい。
上記空隙部の断面積が、1mm未満であると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いる際に、空隙部に電極部材等を配置することが困難である。一方、上記空隙部の断面積が、10000mmを超えると、保持シール材の面積が小さくなりすぎるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0043】
本実施形態の保持シール材には、有機バインダ等のバインダが付与されていてもよい。保持シール材に付与されたバインダによって、保持シール材を構成する無機繊維同士を互いに固着することができる。従って、保持シール材をケーシングに圧入する際の保持シール材の嵩を低減させたり、無機繊維の飛散を防止したりすることができる。
【0044】
本実施形態の保持シール材は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであってもよい。
ニードリング処理とは、ニードル等の繊維交絡手段を素地マットに対して抜き差しする処理のことをいう。ニードリング処理が施された保持シール材では、比較的繊維長の長い無機繊維が3次元的に交絡する。そのため、ニードルマットの強度が向上することとなる。
【0045】
本実施形態の保持シール材は、例えば、紡糸法により、無機繊維を絡み合わせて作製した素地マットを所望の形状に打ち抜く方法等により製造することができる。
【0046】
次に、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
図5(a)は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図5(b)は、図5(a)に示す排ガス浄化装置のA−A線断面図である。
図5(a)及び図5(b)に示す排ガス浄化装置100は、ケーシング120と、ケーシング120内に収容された排ガス処理体130と、排ガス処理体130及びケーシング120の間に配設された保持シール材110とを備えている。
排ガス浄化装置100は、排ガス処理体130と接続し、保持シール材110を通過し、かつ、ケーシング120を貫通するセンサー140aをさらに備えている。
保持シール材110は、排ガス処理体130の周囲に巻き付けられており、保持シール材110によって排ガス処理体130が保持されている。
ケーシング120の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス処理体を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続される。
【0047】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材について説明する。
本実施形態の排ガス浄化装置では、本実施形態の保持シール材が用いられている。
図5(a)及び図5(b)に示す排ガス浄化装置100では、保持シール材110として、図1に示した保持シール材10Aが用いられている例を示している。
図5(a)及び図5(b)に示すように、排ガス処理体130の周囲に巻き付けられた保持シール材110の空隙形成部における第1の端面111b及び第2の端面112b近傍には、空隙部115aが形成される。そして、この空隙部115aにセンサー140aが配置されている。
【0048】
本実施形態の排ガス浄化装置において、保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面は、隙間なく当接していてもよいし、所定の隙間が形成されていてもよい。
保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面の間に隙間が形成されていると、上記隙間に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面の間に隙間が形成されている場合、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離は、80mm以下であることが好ましく、5〜80mmであることがより好ましく、5〜20mmであることがさらに好ましい。保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離が、80mmを超えると、排ガス処理体に接触する保持シール材の面積が少なくなるため、保持シール材が排ガス処理体を保持しにくくなる。保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離が、5mm未満であると、隙間の大きさが小さすぎるため、上記隙間に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。
【0049】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体について説明する。
図6は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体の一例を模式的に示す斜視図である。
図6には、排ガス処理体の一例として、触媒担体の例を示している。
【0050】
図6に示すように、排ガス処理体130は、主に多孔質セラミックからなり、その形状は略円柱状である。また、排ガス処理体130の外周には、排ガス処理体130の外周部を補強したり、形状を整えたり、排ガス処理体130の断熱性を向上させたりする目的で、コート層133が設けられている。なお、コート層は、必要に応じて設けられていればよい。
【0051】
図6に示す排ガス処理体130は、隔壁132を隔てて長手方向(図6中、両矢印aで示した方向)に多数の貫通孔131が並設されたハニカム構造体となっている。
排ガス処理体130では、ハニカム構造体の隔壁132に、排ガス中に含まれるCO、HC、NOx等の有害なガス成分を浄化するための触媒が担持されている。上記触媒としては、例えば、白金等が挙げられる。
【0052】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成するケーシングについて説明する。
図7は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置を構成するケーシングの一例を模式的に示す斜視図である。
図7に示すケーシング120は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。ケーシング120には、センサーを貫通させるための孔121aが設けられている。
ケーシング120の内径は、図6に示す排ガス処理体130の端面の直径と、排ガス処理体130に巻き付けられた状態の保持シール材の厚さとを合わせた長さより若干短くなっている。
なお、ケーシングの長さは、排ガス処理体の長手方向における長さより若干長くなっていてもよいし、排ガス処理体の長手方向における長さと略同一であってもよい。
【0053】
図5(a)及び図5(b)に示した排ガス浄化装置100において、保持シール材110の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部115aの位置は、ケーシング120の孔121aの位置と一致している。そして、センサー140aは、保持シール材110の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部115a及びケーシング120の孔121aに配置されている。
【0054】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成するセンサーについて説明する。
本実施形態の排ガス浄化装置において、センサーの種類は特に限定されないが、例えば、排ガス浄化装置又は雰囲気の温度を測定するための温度センサー、酸素センサー等が挙げられる。
これらのセンサーは、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部に配置される限り、単独で用いられてもよいし、複数のセンサーを組み合わせて用いられてもよい。また、保持シール材の当接部に隙間が形成されている場合には、少なくとも1つのセンサーが、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部に配置され、残りのセンサーが、保持シール材の当接部に形成された隙間に配置されていてもよい。
【0055】
以下、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図8(a)、図8(b)、図8(c)及び図8(d)では、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例として、図5(a)及び図5(b)に示した排ガス浄化装置100の製造方法について説明する。
【0056】
まず、図8(a)に示すように、保持シール材110を排ガス処理体130の周囲に巻き付けることにより、巻付体(保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体)160を作製する巻き付け工程を行う。
保持シール材110として、図1に示した保持シール材10Aを用いる。この場合、保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部115aが形成される。
なお、保持シール材の長さと排ガス処理体の周囲長との関係によって、保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面が当接していてもよいし、当接せずに隙間が設けられていてもよい。
【0057】
次に、図8(b)に示すように、作製した巻付体160を、略円筒状のケーシング120に収容する収容工程を行う。
巻付体をケーシングに収容する方法としては、圧入方式(スタッフィング方式)、サイジング方式(スウェージング方式)、及び、クラムシェル方式等が挙げられる。
圧入方式(スタッフィング方式)では、圧入治具等を用いて、ケーシングの内部の所定の位置まで巻付体を圧入する。サイジング方式(スウェージング方式)では、巻付体をケーシングの内部に挿入した後、ケーシングの内径を縮めるように外周側から圧縮する。クラムシェル方式では、ケーシングを、第1のケーシング及び第2のケーシングの2つの部品に分離可能な形状としておき、巻付体を第1のケーシング上に載置した後に第2のケーシングを被せて密封する。
巻付体をケーシングに収容する方法の中では、圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)が好ましい。圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)では、ケーシングとして2つの部品を用いる必要がないため、製造工程の数を少なくすることができるからである。
【0058】
図8(b)では、圧入治具170を用いて、巻付体160をケーシング120に圧入する方法を示している。
圧入治具170は、全体として略円筒状であり、その内部が一端から他端に向かってテーパー状に広がっている。
圧入治具170の一端は、ケーシング120の内径よりわずかに小さな径に相当する内径を有する短径側端部171となっている。また、圧入治具170の他端は、少なくとも巻付体160の外径に相当する内径を有する長径側端部172となっている。
圧入治具170を用いることにより、巻付体160をケーシング120に容易に圧入することができる。
なお、巻付体をケーシングに圧入する方法としては特に限定されず、例えば、手で巻付体を押すことにより巻付体をケーシングに圧入する方法等であってもよい。
【0059】
続いて、図8(c)に示すように、保持シール材110の空隙形成部における第1の端面と第2の端面近傍に形成された空隙部115aの位置を、ケーシング120の孔121aの位置に合わせる位置調整工程を行う。
空隙部の位置をケーシングの孔の位置に合わせる方法としては、例えば、ケーシングに収容された巻付体を回転する方法等が挙げられる。
なお、上記収容工程において、空隙部の位置とケーシングの孔の位置とが一致するように巻付体をケーシングに収容する場合には、収容工程及び位置調整工程を同時に行うことができる。
【0060】
その後、排ガス処理体に接続し、保持シール材を通過し、かつ、ケーシングを貫通するようにセンサーを配置する配置工程(第1の配置工程)を行う。
図8(d)に示すように、配置工程(第1の配置工程)では、温度センサー等のセンサー140aを、保持シール材110の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部115a及びケーシング120の孔121aに通し、上記センサー140aを排ガス処理体130に接続させる。
以上の工程を経ることにより、図5(a)及び図5(b)に示した排ガス浄化装置100を製造することができる。
【0061】
上記の本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法では、巻付体をケーシングに収容した後に、センサーを空隙部及びケーシングの孔に配置している。
しかしながら、本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法において、クラムシェル方式を採用する場合、第1のケーシング上に巻付体を載置し、センサーを空隙部に配置した後、第2のケーシングに設けられた孔をセンサーが通るように第2のケーシングを被せることにより、巻付体をケーシングに収容してもよい。
また、本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法において、クラムシェル方式を採用する場合、排ガス処理体の所定の位置にセンサーを固定したものを準備しておき、センサーを外すように保持シール材を巻き付けることにより、センサー付き巻付体を作製してもよい。この場合、第1のケーシング上にセンサー付き巻付体を載置した後、第2のケーシングに設けられた孔をセンサーが通るように第2のケーシングを被せることにより、巻付体をケーシングに収容する。
【0062】
以下に、本実施形態の保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法の作用効果について列挙する。
(1)本実施形態の保持シール材は、保持シール材の幅方向に平行な第1の端面及び第2の端面を有している。そして、本実施形態の保持シール材には、保持シール材の長さ方向において、第1の端面と第2の端面との距離が最長である当接部と、第1の端面と第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とが形成されている。
そのため、本実施形態の保持シール材を丸めて、第1の端面及び第2の端面を当接させようとしても、保持シール材の空隙形成部では、第1の端面及び第2の端面が当接しない。その結果、上記空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部が形成される。
従って、本実施形態の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。
【0063】
(2)本実施形態の保持シール材を用いることにより、保持シール材に貫通孔が形成されていなくてもセンサーを配置することができる。従って、保持シール材を製造する際に、貫通孔を形成するための打ち抜き工程等を行う必要がないため、保持シール材の製造工程が煩雑になるという問題が生じにくくなる。
【0064】
(3)保持シール材に貫通孔を形成すると、貫通孔の面積分だけ保持シール材の面積が減少するため、保持シール材の保持力が低下する。
これに対して、保持シール材に空隙部を形成する場合、貫通孔を形成する場合に比べて小さい面積の空隙部を形成したとしても、形成された空隙部に電極部材等を配置することができる。従って、保持シール材の面積が減少することに起因して保持シール材の保持力が低下する問題を抑えることができる。
【0065】
(4)また、保持シール材に貫通孔を形成すると、保持シール材の幅方向に占める面積が減少するため、保持シール材の引っ張り強度が低下する。
これに対して、保持シール材に空隙部を形成する場合、保持シール材の幅方向に占める面積が減少することを防止することができるため、保持シール材の引っ張り強度が低下することを防止することができる。その結果、保持シール材を排ガス処理体に組み付けるために保持シール材を引っ張った際に、保持シール材の破損やオーバーラップ等の組み付け不良といった問題が発生することを防止することができる。
【0066】
(5)本実施形態の保持シール材では、上記第1の端面及び上記第2の端面には、それぞれ、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている。
保持シール材の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ段差が設けられていると、保持シール材の突出部によって保持シール材が嵌合されやすくなるため、保持シール材の嵌合部から排ガスが漏れにくくなり、排ガスのシール性を保つことができる。また、保持シール材の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ段差が設けられていると、保持シール材の突出部によって保持シール材が嵌合されやすくなるため、保持シール材の幅方向に排ガス浄化装置に力が加えられたとしても、排ガス処理体から保持シール材がずれにくくなる。
【0067】
(6)本実施形態の保持シール材では、保持シール材の長さ方向において、上記空隙形成部における上記突出部の長さが、上記当接部における上記突出部の長さよりも短い。
本実施形態の保持シール材は、上記のような形状の空隙形成部を有しているため、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0068】
(7)本実施形態の排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に空隙部が形成されている。そのため、ケーシングを貫通して排ガス処理体と接続させるセンサーを上記空隙部に配置することができる。
【0069】
(第二実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第二実施形態について説明する。
本発明の第一実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、保持シール材の当接部における突出部の長さよりも短い。これに対して、本発明の第二実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、保持シール材の空隙形成部における突出部に、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部が形成されている。
【0070】
本発明の第二実施形態に係る保持シール材について説明する。
図9は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図9に示す保持シール材20Aは、アルミナ−シリカ繊維等の無機繊維からなり、マット状である。より詳細には、保持シール材20Aは、所定の長さ(図9中、矢印Lで示す)、幅(図9中、矢印Wで示す)、及び、厚さ(図9中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板状の形状を有している。また、保持シール材20Aは、保持シール材20Aの幅W方向に平行な第1の端面21(21a、21b及び21c)、並びに、第2の端面22(22a、22b及び22c)を有している。
【0071】
本発明の第一実施形態と同様、本実施形態の保持シール材では、上記第1の端面及び上記第2の端面には、それぞれ、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている。
図9に示す保持シール材20Aでは、第1の端面21に2つの突出部23a及び23cが形成されており、第2の端面22に1つの突出部23bが形成されている。このように、図9に示す保持シール材20Aには、第1の端面21及び第2の端面22にそれぞれ3段の段差が設けられている。
【0072】
本実施形態の保持シール材は、本発明の第一実施形態と同様、保持シール材の長さ方向において、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が最長である当接部と、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とを有している。
【0073】
本実施形態の保持シール材では、上記空隙形成部における第1の端面及び第2の端面の少なくとも1つには、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部が形成されている。
具体的には、上記保持シール材の空隙形成部における突出部には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部(第1の切欠部)が形成されている。
図9に示す保持シール材20Aでは、突出部23aに、保持シール材20Aの長さL方向に切り欠けられた突出部切欠部26aが形成されている。
図9に示す保持シール材20Aにおいて、突出部23b及び突出部23cの長さが同じであるとすると、突出部23b及び突出部23cを含む領域が当接部であり、突出部23aを含む領域が空隙形成部である。
【0074】
本実施形態の保持シール材では、本発明の第一実施形態と同様、上記保持シール材を丸めて、上記当接部における上記第1の端面と上記第2の端面とを当接させた際、上記空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面近傍には、空隙部が形成される。
図10は、図9に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
図9に示す保持シール材20Aを丸めると、当接部においては、第1の端面21bと第2の端面22b、第1の端面21cと第2の端面22cとをそれぞれ当接させることができる。一方、空隙形成部においては、第1の端面21aと第2の端面22aとが当接せず、第1の端面21a及び第2の端面22a近傍には、空隙部25aが形成される。
このように、図9に示す保持シール材20Aを丸めると、突出部23bが形成する凸部と、突出部23a及び23cが形成する凹部とは、嵌合されずに、空隙部25aが形成される。
【0075】
図11(a)及び図11(b)は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材では、図11(a)に示す保持シール材20Bのように、突出部23d及び23fに、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部26b及び26cがそれぞれ形成されていてもよい。保持シール材20Bを丸めた際、空隙部25b及び25cが形成される。
また、本実施形態の保持シール材では、図11(b)に示す保持シール材20Cのように、突出部23hに、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部26dが形成されていてもよい。保持シール材20Cを丸めた際、空隙部25dが形成される。
本実施形態の保持シール材では、どの突出部に突出部切欠部が形成されていてもよく、保持シール材の突出部切欠部の位置及び数は特に限定されない。例えば、保持シール材のすべての突出部に突出部切欠部が形成されていてもよい。
【0076】
図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)、図12(f)、図12(g)及び図12(h)は、本発明の第二実施形態に係る保持シール材に形成される突出部切欠部の断面形状の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材において、各突出部に形成されている突出部切欠部の断面形状は特に限定されず、図12(a)、図12(b)、図12(c)、図12(d)、図12(e)、図12(f)、図12(g)及び図12(h)に示すような任意の形状を採用することができる。
また、本実施形態の保持シール材において、複数の突出部切欠部が形成されている場合、保持シール材の突出部切欠部の形状は、全て同じ形状でもよいし、異なる形状の組み合わせでもよい。
なお、保持シール材の突出部切欠部の断面形状とは、保持シール材の主面に平行な方向の断面形状をいう。
【0077】
本実施形態の保持シール材において、各突出部に形成されている突出部切欠部の断面積(保持シール材の主面に平行な方向の断面積)は、その突出部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の1〜90%であることが好ましく、35〜75%であることがより好ましい。
保持シール材の各突出部に形成されている突出部切欠部の断面積が、その突出部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の1%未満であると、保持シール材を丸めた際に、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に充分な面積を有する空隙部を形成することができない。そのため、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。一方、保持シール材の各突出部に形成されている突出部切欠部の断面積が、その突出部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の90%を超えると、保持シール材の面積が小さくなるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0078】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面とを当接させた際に形成される空隙部の断面積(保持シール材の主面に平行な方向の断面積)は、1〜10000mmであることが好ましく、400〜1600mmであることがより好ましい。
上記空隙部の断面積が、1mm未満であると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いる際に、上記空隙部に電極部材等を配置することが困難である。一方、上記空隙部の断面積が、10000mmを超えると、保持シール材の面積が小さくなりすぎるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0079】
本実施形態の保持シール材においては、保持シール材の突出部に突出部切欠部(第1の切欠部)が形成されているとともに、突出部切欠部が形成されていない突出部の長さが他の突出部の長さよりも短くなっていてもよい。
【0080】
本実施形態の保持シール材には、有機バインダ等のバインダが付与されていてもよい。
また、本実施形態の保持シール材は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであってもよい。
【0081】
本実施形態の保持シール材は、例えば、紡糸法により、無機繊維を絡み合わせて作製した素地マットを所望の形状に打ち抜く方法等により製造することができる。
【0082】
次に、本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置は、保持シール材の構成を除いて、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置と同様の構成を有している。
本実施形態の排ガス浄化装置では、本実施形態の保持シール材が用いられている。
【0083】
本発明の第二実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法と同様である。
【0084】
本実施形態では、本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(5)及び(7)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(8)本実施形態の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面の少なくとも1つには、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部が形成されている。
保持シール材が上記のような形状の端面を有していると、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0085】
(9)本実施形態の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における突出部には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部が形成されている。
本実施形態の保持シール材は、上記のような形状の空隙形成部を有しているため、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0086】
(第三実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第三実施形態について説明する。
本発明の第一実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、保持シール材の空隙形成部における突出部の長さが、保持シール材の当接部における突出部の長さよりも短い。これに対して、本発明の第三実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、保持シール材の空隙形成部における突出部に対向する端面に、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部が形成されている。
【0087】
本発明の第三実施形態に係る保持シール材について説明する。
図13は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す斜視図である。
図13に示す保持シール材30Aは、アルミナ−シリカ繊維等の無機繊維からなり、マット状である。より詳細には、保持シール材30Aは、所定の長さ(図13中、矢印Lで示す)、幅(図13中、矢印Wで示す)、及び、厚さ(図13中、矢印Tで示す)を有する平面視略矩形の平板状の形状を有している。また、保持シール材30Aは、保持シール材30Aの幅W方向に平行な第1の端面31(31a、31b及び31c)、並びに、第2の端面32(32a、32b及び32c)を有している。
【0088】
本発明の第一実施形態と同様、本実施形態の保持シール材では、上記第1の端面及び上記第2の端面には、それぞれ、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている。
図13に示す保持シール材30Aでは、第1の端面31に2つの突出部33a及び33cが形成されており、第2の端面32に1つの突出部33bが形成されている。このように、図13に示す保持シール材30Aには、第1の端面31及び第2の端面32にそれぞれ3段の段差が設けられている。
【0089】
本実施形態の保持シール材は、本発明の第一実施形態と同様、保持シール材の長さ方向において、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が最長である当接部と、上記第1の端面と上記第2の端面との距離が上記当接部よりも短い空隙形成部とを有している。
【0090】
本実施形態の保持シール材では、上記空隙形成部における第1の端面及び第2の端面の少なくとも1つには、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部が形成されている。
具体的には、上記保持シール材の空隙形成部における突出部に対向する端面には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部(第2の切欠部)が形成されている。
図13に示す保持シール材30Aでは、突出部33bに対向する端面31bに、保持シール材30Aの長さL方向に切り欠けられた対向部切欠部37aが形成されている。
図13に示す保持シール材30Aにおいて、対向部切欠部37aが形成されていない場合の突出部33a及び突出部33cの長さが同じであるとすると、突出部33a及び33cを含む領域が当接部であり、突出部33bを含む領域が空隙形成部である。
なお、図13に示す保持シール材30Aでは、対向部切欠部37aの一部が当接部に含まれている。このように、本明細書においては、対向部切欠部の一部が含まれる場合であっても、保持シール材の第1の端面と第2の端面との距離が最長である部分を含む領域を当接部ということとする。
【0091】
本実施形態の保持シール材では、本発明の第一実施形態と同様、上記保持シール材を丸めて、上記当接部における上記第1の端面と上記第2の端面とを当接させた際、上記保持シール材の空隙形成部における上記第1の端面及び上記第2の端面近傍には、空隙部が形成される。
図14は、図13に示す保持シール材を丸めた場合を模式的に示す斜視図である。
図13に示す保持シール材30Aを丸めると、当接部においては、第1の端面31aと第2の端面32a、第1の端面31cと第2の端面32cとをそれぞれ当接させることができる。一方、空隙形成部においては、第1の端面31bと第2の端面32bとを当接させることができず、第1の端面31b及び第2の端面32b近傍には、空隙部35aが形成される。
このように、図13に示す保持シール材30Aを丸めると、突出部33bが形成する凸部と、突出部33a及び33cが形成する凹部とは、完全に嵌合されずに、空隙部35aが形成される。
【0092】
図15(a)及び図15(b)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材では、図15(a)に示す保持シール材30Bのように、突出部33dに対向する端面に、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部37bが形成されていてもよい。保持シール材30Bを丸めた際、空隙部35bが形成される。
また、本実施形態の保持シール材では、図15(b)に示す保持シール材30Cのように、突出部33gに対向する端面及び突出部33iに対向する端面に、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部37c及び37dがそれぞれ形成されていてもよい。保持シール材30Cを丸めた際、空隙部35c及び35dが形成される。
本実施形態の保持シール材では、突出部に対向する端面であれば、どの端面に対向部切欠部が形成されていてもよく、対向部切欠部の位置及び数は特に限定されない。例えば、保持シール材のすべての突出部に対向する端面に対向部切欠部が形成されていてもよい。
【0093】
図16(a)、図16(b)、図16(c)、図16(d)、図16(e)、図16(f)、図16(g)及び図16(h)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材に形成される対向部切欠部の断面形状の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材において、各突出部に対向する端面に形成されている対向部切欠部の断面形状は特に限定されず、図16(a)、図16(b)、図16(c)、図16(d)、図16(e)、図16(f)、図16(g)及び図16(h)に示すような任意の形状を採用することができる。
また、本実施形態の保持シール材において、複数の対向部切欠部が形成されている場合、保持シール材の対向部切欠部の形状は、全て同じ形状でもよいし、異なる形状の組み合わせでもよい。
なお、対向部切欠部の断面形状とは、保持シール材の主面に平行な方向の断面形状をいう。
【0094】
本実施形態の保持シール材において、各突出部に対向する端面に形成されている対向部切欠部の断面積(保持シール材の主面に平行な方向の断面積)は、その対向部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の1〜90%であることが好ましく、35〜75%であることがより好ましい。
保持シール材の各突出部に対向する端面に形成されている対向部切欠部の断面積が、その対向部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の1%未満であると、保持シール材を丸めた際に、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に充分な面積を有する空隙部を形成することができない。そのため、上記空隙部に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。一方、保持シール材の各突出部に対向する端面に形成されている対向部切欠部の断面積が、その対向部切欠部がない場合の空隙形成部の断面積の90%を超えると、保持シール材の面積が小さくなるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0095】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面とを当接させた際に形成される空隙部の断面積(保持シール材の主面に平行な方向の断面積)は、1〜10000mmであることが好ましく、400〜1600mmであることがより好ましい。
上記空隙部の断面積が、1mm未満であると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いる際に、空隙部に電極部材等を配置することが困難である。一方、上記空隙部の断面積が、10000mmを超えると、保持シール材の面積が小さくなりすぎるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
【0096】
図17(a)、図17(b)及び図17(c)は、本発明の第三実施形態に係る保持シール材のさらに別の一例を模式的に示す平面図である。
本実施形態の保持シール材においては、図17(a)に示す保持シール材30Dのように、突出部に対向する端面に対向部切欠部(第2の切欠部)37eが形成されているとともに、突出部に突出部切欠部(第1の切欠部)36aが形成されていてもよい。
また、本実施形態の保持シール材においては、図17(b)に示す保持シール材30Eのように、対向部切欠部37f及び37gが形成されているとともに、突出部切欠部36b及び36c形成されていてもよいし、図17(c)に示す保持シール材30Fのように、対向部切欠部37hが形成されているとともに、突出部切欠部36dが形成されていてもよい。
【0097】
また、本実施形態の保持シール材においては、突出部に対向する端面に対向部切欠部(第2の切欠部)が形成されているとともに、突出部切欠部が形成されていない突出部の長さが他の突出部の長さよりも短くなっていてもよい。
さらに、本実施形態の保持シール材においては、対向部切欠部及び突出部切欠部が形成されているとともに、対向部切欠部及び突出部切欠部が形成されていない突出部の長さが他の突出部の長さよりも短くなっていてもよい。
【0098】
本実施形態の保持シール材には、有機バインダ等のバインダが付与されていてもよい。
また、本実施形態の保持シール材は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであってもよい。
【0099】
本実施形態の保持シール材は、例えば、紡糸法により、無機繊維を絡み合わせて作製した素地マットを所望の形状に打ち抜く方法等により製造することができる。
【0100】
次に、本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化装置は、保持シール材の構成を除いて、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置と同様の構成を有している。
本実施形態の排ガス浄化装置では、本実施形態の保持シール材が用いられている。
【0101】
本発明の第三実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法と同様である。
【0102】
本実施形態では、本発明の第一実施形態において説明した効果(1)〜(5)、(7)、及び、本発明の第二実施形態において説明した効果(8)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(10)本実施形態の保持シール材では、上記保持シール材の空隙形成部における突出部に対向する端面には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部が形成されている。
本実施形態の保持シール材は、上記のような形状の空隙形成部を有しているため、保持シール材を丸めた際に空隙部が形成されやすくなる。
【0103】
(第四実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第四実施形態について説明する。
本発明の第四実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法では、保持シール材の厚さ方向に保持シール材を貫通する貫通部が形成されている点が、本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る保持シール材、排ガス浄化装置、及び、排ガス浄化装置の製造方法と異なる。
【0104】
本発明の第四実施形態に係る保持シール材について説明する。
本発明の第四実施形態に係る保持シール材は、貫通部が形成されていることを除いて、本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る保持シール材と同様の構成を有している。
【0105】
図18(a)、図18(b)及び図18(c)は、本発明の第四実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す平面図である。
図18(a)に示す保持シール材40Aは、貫通部48aが形成されている点を除いて、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例である図1に示した保持シール材10Aと同様の構成を有している。保持シール材40Aを丸めた際、空隙部45aが形成される。
図18(b)に示す保持シール材40Bは、貫通部48bが形成されている点を除いて、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例である図9に示した保持シール材20Aと同様の構成を有している。保持シール材40Bを丸めた際、空隙部45bが形成される。
図18(c)に示す保持シール材40Cは、貫通部48cが形成されている点を除いて、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の一例である図13に示した保持シール材30Aと同様の構成を有している。保持シール材40Cを丸めた際、空隙部45cが形成される。
【0106】
本実施形態の保持シール材において、貫通部は、保持シール材の厚さ方向に保持シール材を貫通するように形成されている。
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の貫通部の数は特に限定されないが、貫通部の数が多くなると保持シール材の保持力が低下するため、貫通部の数はできるだけ少ない方が好ましく、1つであることがより好ましい。
【0107】
本実施形態の保持シール材において、貫通部が形成されている位置は特に限定されないが、本実施形態の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造した場合に、排ガス処理体を介して、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部と、保持シール材の貫通部とが対向する位置になるように形成されていることが好ましい。
【0108】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の貫通部の形状としては、例えば、略円柱状、略角柱状、略楕円柱状、略円錐台状、略直線と略円弧で囲まれた底面を有する柱状等が挙げられ、貫通部の断面の形状としては、例えば、略円形状、略四角形状等の略多角形状、略楕円形状、略長円形状(略レーストラック形状)等が挙げられる。
本実施形態の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、貫通部の断面の形状を電極部材等の断面形状に合わせることができる。
また、保持シール材に複数の貫通部が形成される場合、貫通部の形状は、それぞれ略同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお、貫通部の断面とは、保持シール材の主面に平行な方向の断面をいう。
また、本明細書において、「略円柱状」、「略円形状」、「略垂直」、「略平行」等の語は、数学的に厳密な形状でないことを許容するものであり、「円柱状」、「円形状」、「垂直」、「平行」等の形状と実質的に同視し得る形状を含む。
【0109】
本実施形態の保持シール材において、保持シール材の貫通部の断面の径は、1〜100mmであることが好ましく、20〜40mmであることがより好ましい。
保持シール材の貫通部の断面の径が、1mm未満であると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いる際に、貫通部に電極部材等を配置することが困難である。一方、保持シール材の貫通部の断面の径が、100mmを超えると、保持シール材の面積が小さくなりすぎるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。また、保持シール材の貫通部の断面の径が、100mmを超えると、保持シール材の幅方向に占める保持シール材の面積が減少するために、保持シール材の引っ張り強度が低下してしまう。
また、本実施形態の保持シール材において、保持シール材の貫通部の断面の面積は、1〜10000mmであることが好ましく、400〜1600mmであることがより好ましい。
保持シール材の貫通部の断面の面積が、1mm未満であると、保持シール材を排ガス浄化装置に用いる際に、電極部材等を配置するために充分な面積を確保することができない。一方、保持シール材の貫通部の断面の面積が、10000mmを超えると、保持シール材の面積が小さくなりすぎるため、保持シール材の保持力が低下してしまう。
なお、貫通部の断面の径とは、保持シール材の厚み方向に垂直な部分における径のことであり、貫通部の断面形状が円形状以外の場合には、断面の中心を通る最大長さのことをいう。貫通部の断面の径とは、例えば、貫通部が略円柱状である場合にはその断面の直径、略楕円柱状である場合にはその断面の長径、略四角柱状や略多角柱状である場合にはその断面の最も長い部分の長さをいう。貫通部が略円錐台状である場合には、大きい方の円の直径をいう。
【0110】
本実施形態の保持シール材には、有機バインダ等のバインダが付与されていてもよい。
また、本実施形態の保持シール材は、無機繊維から構成された素地マットに対してニードリング処理を施して得られるニードルマットであってもよい。
【0111】
本実施形態の保持シール材の製造方法の一例について説明する。
例えば、本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る保持シール材を製造し、製造した保持シール材を打ち抜き刃を用いて所定の形状に打ち抜くことにより貫通部を形成する方法、及び、素地マットを打ち抜く際に、貫通部も合わせて打ち抜く方法等が考えられる。
以上のような方法により、本実施形態の保持シール材を製造することができる。
【0112】
次に、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
図19(a)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図19(b)は、図19(a)に示す排ガス浄化装置のB−B線断面図である。
図19(a)及び図19(b)に示す排ガス浄化装置200は、ケーシング220と、ケーシング220内に収容された排ガス処理体230と、排ガス処理体230及びケーシング220の間に配設された保持シール材210とを備えている。
排ガス浄化装置200は、排ガス処理体230と接続し、保持シール材210を通過し、かつ、ケーシング220を貫通する電極部材250a及び250bをさらに備えている。なお、電極部材250aは+側の電極部材であり、電極部材250bは−側の電極部材である。
保持シール材210は、排ガス処理体230の周囲に巻き付けられており、保持シール材210によって排ガス処理体230が保持されている。
ケーシング220の端部には、必要に応じて、内燃機関から排出された排ガスを導入する導入管と排ガス処理体を通過した排ガスが外部に排出される排出管とが接続される。
【0113】
本実施形態の排ガス浄化装置は、電気加熱触媒コンバータとして使用することができる。
図19(a)及び図19(b)に示す排ガス浄化装置200において、+側の電極部材250aと−側の電極部材250bとの間に所定の電圧を印加すると、+側の電極部材250aと−側の電極部材250bとの間に介在する排ガス処理体230が通電されて発熱する。
これにより、排ガス処理体230に担持されている触媒が加熱されて活性化される。その結果、排ガス中に含まれるCO、HC、NOx等の有害なガス成分が、酸化、還元反応が促進されることにより有害なガス成分が浄化される。
【0114】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成する保持シール材について説明する。
本実施形態の排ガス浄化装置では、本実施形態の保持シール材が用いられている。
図19(a)及び図19(b)に示す排ガス浄化装置200では、保持シール材210として、図18(a)に示した保持シール材40Aが用いられている例を示している。
図19(a)及び図19(b)に示すように、排ガス処理体230の周囲に巻き付けられた保持シール材210の空隙形成部における第1の端面211b及び第2の端面212b近傍には、空隙部215aが形成される。そして、この空隙部215aに+側の電極部材250aが配置されている。
さらに、保持シール材210には貫通部218aが形成されており、保持シール材の貫通部218aには、−側の電極部材250bが配置されている。
なお、本実施形態の排ガス浄化装置では、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部に−側の電極部材が配置されており、貫通部に+側の電極部材が配置されていてもよい。
【0115】
本実施形態の排ガス浄化装置において、保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面は、隙間なく当接していてもよいし、所定の隙間が形成されていてもよい。
保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面の間に隙間が形成されていると、上記隙間に電極部材及び/又はセンサーを配置することができる。保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面の間に隙間が形成されている場合、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離は、80mm以下であることが好ましく、5〜80mmであることがより好ましく、5〜20mmであることがさらに好ましい。保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離が、80mmを超えると、排ガス処理体に接触する保持シール材の面積が少なくなるため、保持シール材が排ガス処理体を保持しにくくなる。保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との間の距離が、5mm未満であると、隙間の大きさが小さすぎるため、上記隙間に電極部材及び/又はセンサーを配置しにくくなる。
【0116】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、本発明の第一実施形態で説明した排ガス処理体を使用することができる。
【0117】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成するケーシングについて説明する。
図20は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置を構成するケーシングの一例を模式的に示す斜視図である。
図20に示すケーシング220は、主にステンレス等の金属からなり、その形状は、略円筒状である。ケーシング220には、電極部材を貫通させるための孔221a及び221bが設けられている。
ケーシング220の内径は、排ガス処理体の端面の直径と、排ガス処理体に巻き付けられた状態の保持シール材の厚さとを合わせた長さより若干短くなっている。
また、ケーシングの長さは、排ガス処理体の長手方向における長さより若干長くなっていてもよいし、排ガス処理体の長手方向における長さと略同一であってもよい。
【0118】
図19(a)及び図19(b)に示した排ガス浄化装置200において、保持シール材210の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部215aの位置は、ケーシング220の孔221aの位置と一致しており、保持シール材210の貫通部218aの位置は、ケーシング220の孔221bの位置と一致している。そして、+側の電極部材250aは、保持シール材210の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部215a及びケーシング220の孔221aに配置されており、−側の電極部材250bは、保持シール材210の貫通部218a及びケーシング220の孔221bに配置されている。
【0119】
本実施形態の排ガス浄化装置を構成する電極部材について説明する。
電極部材には、バッテリー電源が接続されており、バッテリー電源から直接電圧が印加される。これにより、電極部材と接続する排ガス処理体に電流を流すことができる。
電極部材を配置する位置は特に限定されないが、排ガス処理体を効率良く加熱することを考慮すると、+側の電極部材と−側の電極部材とが対向する位置に配置することが好ましい。
【0120】
本実施形態の排ガス浄化装置は、本発明の第一実施形態に係る排ガス浄化装置と同様、温度センサー、酸素センサー等のセンサーをさらに備えていてもよい。
図21(a)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の別の一例を模式的に示す一部切り欠き斜視断面図である。図21(b)は、図21(a)に示す排ガス浄化装置を構成する保持シール材を模式的に示す平面図である。
図21(a)に示す排ガス浄化装置300では、保持シール材310として、図21(b)に示す保持シール材40Dが用いられている。この場合、例えば、保持シール材310の空隙部315aにセンサー340a、空隙部315bに+側の電極部材350a、貫通部318aに−側の電極部材350bをそれぞれ配置することができる。
なお、図21(a)には示されていないが、排ガス浄化装置300を構成するケーシング320には、センサー及び電極部材を貫通させるための孔が3つ設けられている。
【0121】
以下、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図22(a)、図22(b)、図22(c)及び図22(d)は、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例を模式的に示す斜視図である。
図22(a)、図22(b)、図22(c)及び図22(d)では、本発明の第四実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法の一例として、図19(a)及び図19(b)に示した排ガス浄化装置200の製造方法について説明する。
【0122】
まず、図22(a)に示すように、保持シール材210を排ガス処理体230の周囲に巻き付けることにより、巻付体(保持シール材が巻き付けられた排ガス処理体)260を作製する巻き付け工程を行う。
保持シール材210として、図18(a)に示した保持シール材40Aを用いる。この場合、保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部215aが形成される。また、保持シール材210には、貫通部218aが形成されている。
なお、保持シール材の長さと排ガス処理体の周囲長との関係によって、保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面が当接していてもよいし、当接せずに隙間が設けられていてもよい。
【0123】
次に、図22(b)に示すように、作製した巻付体260を、略円筒状のケーシング220に収容する収容工程を行う。
巻付体をケーシングに収容する方法としては、本発明の第一実施形態で説明した圧入方式(スタッフィング方式)、サイジング方式(スウェージング方式)、及び、クラムシェル方式等が挙げられる。
巻付体をケーシングに収容する方法の中では、圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)が好ましい。圧入方式(スタッフィング方式)又はサイジング方式(スウェージング方式)では、ケーシングとして2つの部品を用いる必要がないため、製造工程の数を少なくすることができるからである。
【0124】
図22(b)では、圧入治具270を用いて、巻付体260をケーシング220に圧入する方法を示している。
圧入治具270は、本発明の第一実施形態で説明した圧入治具170と同様の構成を有している。
なお、巻付体をケーシングに圧入する方法としては特に限定されず、例えば、手で巻付体を押すことにより巻付体をケーシングに圧入する方法等であってもよい。
【0125】
続いて、図22(c)に示すように、保持シール材210の空隙形成部における第1の端面と第2の端面近傍に形成された空隙部215a、及び、貫通部218aの位置を、それぞれ、ケーシング220の孔221a及び221bの位置に合わせる位置調整工程を行う。
空隙部の位置及び貫通部の位置をケーシングの孔の位置に合わせる方法としては、例えば、ケーシングに収容された巻付体を回転する方法等が挙げられる。
なお、上記収容工程において、空隙部及び貫通部の位置とケーシングの孔の位置とが一致するように巻付体をケーシングに収容する場合には、収容工程及び位置調整工程を同時に行うことができる。
【0126】
その後、排ガス処理体に接続し、保持シール材を通過し、かつ、ケーシングを貫通するように電極部材を配置する第1の配置工程、及び、排ガス処理体に接続し、保持シール材を通過し、かつ、ケーシングを貫通するように別の電極部材を配置する第2の配置工程を行う。
図22(d)に示すように、第1の配置工程では、ケーシング220に設けられた一方の孔221a、及び、保持シール材210の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部215aに、+側の電極部材250aを通し、上記+側の電極部材250aを排ガス処理体230に接続させる。また、第2の配置工程では、ケーシング220に設けられた他方の孔221b、及び、保持シール材210に形成された貫通部218aに、−側の電極部材250bを通し、上記−側の電極部材250bを排ガス処理体230に接続させる。
なお、第1の配置工程及び第2の配置工程は、位置調整工程の後(収容工程及び位置調整工程を同時に行う場合には、収容工程の後)であれば、どちらを先に行ってもよい。
以上の工程を経ることにより、図19(a)及び図19(b)に示した排ガス浄化装置200を製造することができる。
【0127】
上記の本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法では、巻付体をケーシングに収容した後に、+側の電極部材を空隙部及びケーシングの孔に配置し、−側の電極部材を貫通部及びケーシングの孔に配置している。
しかしながら、本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法において、クラムシェル方式を採用する場合、孔が設けられた第1のケーシング上に、保持シール材の貫通部と第1のケーシングの孔の位置が合うように巻付体を載置し、+側の電極部材を空隙部に配置し、−側の電極部材を貫通部及び第1のケーシングの孔に配置した後、第2のケーシングに設けられた孔を+側の電極部材が通るように第2のケーシングを被せることにより、巻付体をケーシングに収容してもよい。
また、本実施形態の排ガス浄化装置の製造方法において、クラムシェル方式を採用する場合、排ガス処理体の所定の位置に+側の電極部材及び−側の電極部材を固定したものを準備しておき、−側の電極部材を保持シール材の貫通部に通し、+側の電極部材を外すように保持シール材を巻き付けることにより、電極部材付き巻付体を作製してもよい。この場合、孔が設けられた第1のケーシング上に、−側の電極部材が上記孔を通るように電極部材付き巻付体を載置した後、第2のケーシングに設けられた孔を+側の電極部材が通るように第2のケーシングを被せることにより、巻付体をケーシングに収容する。
【0128】
本実施形態では、本発明の第一実施形態〜第三実施形態において説明した効果(1)〜(10)を発揮することができるとともに、以下の効果を発揮することができる。
(11)本実施形態の保持シール材では、保持シール材の厚さ方向に保持シール材を貫通する貫通部が形成されている。
本実施形態の保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成された空隙部に電極部材を配置することができるとともに、上記保持シール材の貫通部にも電極部材を配置することができる。
【0129】
(12)本実施形態の排ガス浄化装置では、電極部材を配置することができるため、本実施形態の排ガス浄化装置を電気加熱触媒コンバータとして使用することができる。
【0130】
(第五実施形態)
以下、本発明の一実施形態である第五実施形態について説明する。
本発明の第一実施形態〜第四実施形態では、保持シール材の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ3段の段差が設けられている。これに対して、本発明の第五実施形態では、保持シール材の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ2段の段差が設けられている。
【0131】
まず、本発明の第五実施形態に係る保持シール材について説明する。
本発明の第五実施形態に係る保持シール材は、2段の段差が設けられていることを除いて、本発明の第一実施形態〜第四実施形態に係る保持シール材と同様の構成を有している。
【0132】
本実施形態の保持シール材では、第1の端面に1つの突出部が形成されており、第2の端面に1つの突出部が形成されている。言い換えると、本実施形態の保持シール材には、2段の段差が設けられている。
【0133】
図23(a)、図23(b)及び図23(c)は、本発明の第五実施形態に係る保持シール材の一例を模式的に示す平面図である。
図23(a)に示す保持シール材50Aは、2段の段差が設けられていることを除いて、本発明の第一実施形態に係る保持シール材の一例である図1に示した保持シール材10Aと同様の構成を有している。保持シール材50Aを丸めた際、空隙部55aが形成される。
図23(b)に示す保持シール材50Bは、2段の段差が設けられていることを除いて、本発明の第二実施形態に係る保持シール材の一例である図9に示した保持シール材20Aと同様の構成を有している。保持シール材50Bを丸めた際、空隙部55bが形成される。
図23(c)に示す保持シール材50Cは、2段の段差が設けられていることを除いて、本発明の第三実施形態に係る保持シール材の一例である図13に示した保持シール材30Aと同様の構成を有している。保持シール材50Cを丸めた際、空隙部55cが形成される。
このように、図23(a)に示す保持シール材50A、図23(b)に示す保持シール材50B、及び、図23(c)に示す保持シール材50Cにおいては、保持シール材を丸めると、各突出部と、当該突出部と対向する部分とは、嵌合されずに、空隙部が形成される。
【0134】
本実施形態の保持シール材には、本発明の第四実施形態で説明した貫通部が形成されていてもよい。
図24(a)、図24(b)及び図24(c)は、本発明の第五実施形態に係る保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
図24(a)に示す保持シール材50Dでは、図23(a)に示す保持シール材50Aに、本発明の第四実施形態で説明した貫通部58aが形成されている。保持シール材50Dを丸めた際、空隙部55dが形成される。
図24(b)に示す保持シール材50Eでは、図23(b)に示す保持シール材50Bに、本発明の第四実施形態で説明した貫通部58bが形成されている。保持シール材50Eを丸めた際、空隙部55eが形成される。
図24(c)に示す保持シール材50Fでは、図23(c)に示す保持シール材50Cに、本発明の第四実施形態で説明した貫通部58cが形成されている。保持シール材50Fを丸めた際、空隙部55fが形成される。
【0135】
次に、本発明の第五実施形態に係る排ガス浄化装置について説明する。
本発明の第五実施形態に係る排ガス浄化装置は、保持シール材の構成を除いて、本発明の第一実施形態〜第四実施形態に係る排ガス浄化装置と同様の構成を有している。
本実施形態の排ガス浄化装置では、本実施形態の保持シール材が用いられている。
【0136】
本発明の第五実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法は、本発明の第一実施形態〜第四実施形態に係る排ガス浄化装置の製造方法と同様である。
【0137】
本実施形態では、本発明の第一実施形態〜第四実施形態において説明した効果(1)〜(12)を発揮することができる。
【0138】
(その他の実施形態)
本発明の第一実施形態〜第四実施形態に係る保持シール材では、第1の端面及び第2の端面にそれぞれ3段の段差が設けられている。そして、本発明の第五実施形態に係る保持シール材では、第1の端面及び第2の端面にそれぞれ2段の段差が設けられている。
しかしながら、本発明の保持シール材において、保持シール材の突出部からなる段差の数は特に限定されない。従って、保持シール材の第1の端面及び第2の端面にそれぞれ4段以上の段差が設けられていてもよい。
【0139】
本発明の保持シール材においては、保持シール材の第1の端面に設けられている段差の数と、保持シール材の第2の端面に設けられている段差の数が異なっていてもよい。
また、本発明の保持シール材においては、保持シール材の第1の端面及び第2の端面の一方には段差が設けられており、他方には段差が設けられていなくてもよい。
【0140】
本発明の保持シール材においては、第1の端面及び第2の端面に段差が設けられていなくてもよい。
図25は、本発明の保持シール材の別の一例を模式的に示す平面図である。
図25に示す保持シール材60Aには、第1の端面61及び第2の端面62に段差が設けられていない。一方、保持シール材60Aでは、第1の端面61に、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部69aが形成されており、第2の端面62に、端面切欠部69bが形成されている。
従って、図25に示す保持シール材60Aを丸めると、端面切欠部69a及び69bが形成されていない部分においては、第1の端面61と第2の端面62とを当接させることができる。一方、端面切欠部69a及び69bが形成されている部分においては、第1の端面61と第2の端面62とを当接させることができず、端面切欠部69a及び69b近傍には、空隙部65aが形成される。
【0141】
本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る排ガス浄化装置では、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として、本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る保持シール材がそれぞれ用いられており、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成されている空隙部に、温度センサー、酸素センサー等のセンサーが配置されている。
しかしながら、本発明の排ガス浄化装置において、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として、本発明の第一実施形態〜第三実施形態に係る保持シール材を用いた場合、保持シール材の第1の端面及び第2の端面近傍に形成されている空隙部に配置されるものは、センサーに限定されず、電極部材であってもよい。
例えば、排ガス浄化装置を構成する保持シール材として、図4(a)に示した保持シール材10Bを用いた場合、空隙部15b及び15cにそれぞれ電極部材を配置することができる。
【0142】
本発明の排ガス浄化装置においては、保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に形成される空隙部に配置される限り、電極部材及び/又はセンサーが配置されていてもよい。また、1つの空隙部に複数の電極部材及び/又はセンサーが配置されていてもよい。
さらに、本発明の排ガス浄化装置において、保持シール材の当接部における第1の端面及び第2の端面の間に隙間が形成されている場合、上記隙間に電極部材及び/又はセンサーが配置されていてもよい。
【0143】
本発明の第一実施形態〜第五実施形態では、圧入方式(スタッフィング方式)による排ガス浄化装置の製造方法を主に説明してきた。
本発明の実施形態に係る排ガス浄化装置は、サイジング方式(スウェージング方式)によっても製造することができる。サイジング方式による排ガス浄化装置の製造方法の一例について、以下、図面を参照しながら説明する。なお、巻き付け工程、位置調整工程及び配置工程(第1の配置工程)については、本発明の第一実施形態と同様であるため、ここでは収容工程のみを説明する。
【0144】
図26(a)、図26(b)及び図26(c)は、本発明の排ガス浄化装置の製造方法における収容工程の別の一例を模式的に示す斜視図である。
収容工程では、まず、図26(a)に示すように、巻付体460(保持シール材410が巻き付けられた排ガス処理体430)を、ケーシング420内に緩やかに挿入する。
本明細書において、「緩やかに」とは、「非圧入」を意味する。具体的には、保持シール材410とケーシング420の内壁が接触しない状態、あるいは、接触しても保持シール材410を損なわない程度の軽微な圧縮状態で挿入することを意味する。中でも、後述する図26(b)に示すシャフト471及び472を用いて巻付体460を保持していないとケーシング420から離脱する状態で挿入することが好ましい。
次に、図26(b)に示すように、シャフト471及び472によって排ガス処理体430を挟持した状態で、排ガス処理体430をケーシング420内で移動させ、所定の位置で保持する。
続いて、図26(c)に示すように、ケーシング420を縮径する、すなわち、ケーシング420の内径を縮めるように外周側から圧縮する。具体的には、コレット473によって、ケーシング420の周囲から求心方向にケーシング420の胴部を押圧し、当該部分及びこれに内在する保持シール材410を圧縮することにより、ケーシング420内に保持シール材410及び排ガス処理体430を保持する。保持シール材410が圧縮されることによる反発力で面圧が発生し、排ガス処理体430が、ケーシング420内の所定の位置で保持される。
以上の工程を経ることにより、巻付体をケーシングに収容することができる。
【0145】
本発明の保持シール材において、第1の端面及び第2の端面に突出部が設けられている場合、当接部となる突出部の大きさは、幅10mm×長さ10mm〜幅200mm×長さ200mmであることが好ましく、幅20mm×長さ20mm〜幅100mm×長さ100mmであることがより好ましい。
このような突出部の形状を有する保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合には、保持シール材の突出部によって保持シール材が嵌合されやすくなるため、保持シール材で排ガス処理体を確実に保持することができる。
当接部となる突出部の大きさが、幅10mm×長さ10mmよりも小さい場合、及び、幅200mm×長さ200mmよりも大きい場合には、保持シール材を丸めた際に、保持シール材の当接部における第1の端面と第2の端面との接触面積が少ないため、保持シール材の第1の端面と第2の端面とが当接されにくくなる。その結果、保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造した際に、保持シール材が排ガス処理体を保持しにくくなる。
【0146】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維としては、上述したアルミナとシリカとを含む無機繊維に限られず、その他の無機化合物を含む無機繊維であってもよい。
また、アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維であってもよいし、シリカのみを含む無機繊維であってもよい。
アルミナとシリカとを含む無機繊維の組成比としては、重量比で、Al:SiO=60:40〜80:20であることが好ましく、Al:SiO=70:30〜74:26であることがより好ましい。
上記組成比において、アルミナ組成比の好ましい上限値(Al:SiO=80:20)よりも多くアルミナが含まれていると、アルミナ−シリカの結晶化が進みやすく無機繊維の柔軟性が失われやすい。また、上記組成比において、シリカ組成比の好ましい下限値(Al:SiO=80:20)よりもシリカが少ないと、無機繊維の剛性が不足し、充分なせん断強度が得られにくい。その結果、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
アルミナ及びシリカのうち、アルミナのみを含む無機繊維には、アルミナ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
アルミナ及びシリカのうち、シリカのみを含む無機繊維には、シリカ以外に、例えば、CaO、MgO、ZrO等の添加剤が含まれていてもよい。
【0147】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維長は、5〜150mmであることが好ましく、10〜80mmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維長が5mm未満であると、無機繊維の繊維長が短すぎるため、無機繊維同士の交絡が不充分となり、保持シール材のせん断強度が低くなる。また、無機繊維の平均繊維長が150mmを超えると、無機繊維の繊維長が長すぎるため、保持シール材の製造時における無機繊維の取り扱い性が低下する。その結果、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0148】
本発明の保持シール材を構成する無機繊維の平均繊維径は、1〜20μmであることが好ましく、3〜10μmであることがより好ましい。
無機繊維の平均繊維径が1〜20μmであると、無機繊維の強度及び柔軟性が充分に高くなり、保持シール材のせん断強度を向上させることができる。
無機繊維の平均繊維径が1μm未満であると、無機繊維が細く切れやすいので、無機繊維の引っ張り強度が不充分となる。一方、無機繊維の平均繊維径が20μmを超えると、無機繊維が曲がりにくいため、柔軟性が不充分となる。
【0149】
本発明の保持シール材の目付量(単位面積あたりの重量)は、特に限定されないが、500〜7000g/mであることが好ましく、1000〜4000g/mであることがより好ましい。保持シール材の目付量が500g/m未満であると、保持シール材の保持力が充分ではなく、保持シール材の目付量が7000g/mを超えると、保持シール材の嵩が低くなりにくい。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体がケーシングから脱落しやすくなる。
また、本発明の保持シール材の嵩密度(巻付体をケーシングに圧入する前の保持シール材の嵩密度)についても、特に限定されないが、0.05〜0.30g/cmであることが好ましい。保持シール材の嵩密度が0.05g/cm未満であると、無機繊維の絡み合いが弱く、無機繊維が剥離しやすいため、保持シール材の形状を所定の形状に保ちにくくなる。また、保持シール材の嵩密度が0.30g/cmを超えると、保持シール材が硬くなり、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0150】
本発明の保持シール材の厚さは、特に限定されないが、3〜50mmであることが好ましく、6〜20mmであることがより好ましい。保持シール材の厚さが3mm未満であると、保持シール材の保持力が充分ではない。そのため、このような保持シール材を用いて排ガス浄化装置を製造する場合、排ガス処理体がケーシングから脱落しやすくなる。また、保持シール材の厚さが50mmを超えると、保持シール材が厚すぎるため、排ガス処理体への巻き付け性が低下し、保持シール材が割れやすくなる。
【0151】
本発明の保持シール材にバインダが付与されている場合、保持シール材にバインダを付与する方法としては、例えば、有機バインダ等を含むバインダ溶液をスプレー等を用いて保持シール材全体に均一に吹きかける方法等が挙げられる。
バインダ溶液に含まれる有機バインダとしては、例えば、アクリル系樹脂、アクリルゴム等のゴム、カルボキシメチルセルロース又はポリビニルアルコール等の水溶性有機重合体、スチレン樹脂等の熱可塑性樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
これらの中では、アクリルゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエンゴムが特に好ましい。
また、有機バインダの配合量は、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して0.5〜15重量%であることが好ましい。
有機バインダの配合量が、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して0.5重量%未満であると、有機バインダの量が少なすぎて、無機繊維が飛散しやすくなるため、保持シール材の強度が低下しやすくなる。一方、有機バインダの配合量が、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して15重量%を超えると、保持シール材を電気加熱式排ガス浄化装置に用いた場合に、排出される排ガス中の、有機バインダに由来して排出される有機成分の量が増加することになるので、環境に負荷がかかりやすくなる。
【0152】
上記バインダ溶液には、上述した有機バインダが複数種類含まれていてもよい。
また、上記バインダ溶液としては、上述した有機バインダを水に分散させたラテックスの他に、上述した有機バインダを水又は有機溶媒に溶解させた溶液等であってもよい。
【0153】
上記バインダ溶液に無機バインダが含まれる場合、無機バインダとしては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル等が挙げられる。
また、無機バインダの配合量は、無機繊維同士を結合することができるのであれば、特に限定されないが、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して0.5〜15重量%であることが好ましい。
無機バインダの配合量が、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して0.5重量%未満であると、無機バインダの量が少なすぎて、無機繊維が飛散しやすくなるため、保持シール材の強度が低下しやすくなる。一方、無機バインダの配合量が、無機繊維と有機バインダと無機バインダとの合計に対して15重量%を超えると、保持シール材が固くなりすぎるため、保持シール材が割れやすくなる。
【0154】
本発明の保持シール材にニードリング処理が施されている場合、ニードリング処理は、素地マット全体に対して施されていてもよいし、素地マットの一部に施されていてもよい。
ニードリング処理は、保持シール材にバインダを付与する前に行ってもよいし、保持シール材にバインダを付与した後に行ってもよい。
【0155】
ニードリング処理は、例えば、ニードリング装置を用いて行うことができる。ニードリング装置は、素地マットを支持する支持板と、この支持板の上方に設けられ、突き刺し方向(素地マットの厚さ方向)に往復移動可能なニードルボードとで構成されている。ニードルボードには、多数のニードルが取り付けられている。このニードルボードを支持板に載せた素地マットに対して移動させ、多数のニードルを素地マットに対して抜き差しすることで、素地マットを構成する無機繊維を複雑に交絡させることができる。
ニードリング処理の回数やニードル数は、目的とする嵩密度や目付量等に応じて変更すればよい。
【0156】
本発明の排ガス浄化装置を構成する保持シール材としては、本発明の保持シール材が用いられている限り、保持シール材の枚数は特に限定されず、1枚の保持シール材であってもよいし、互いに結合された複数枚の保持シール材であってもよい。
複数枚の保持シール材を結合する方法としては、特に限定されず、例えば、ミシン縫いで保持シール材同士を縫合したり、粘着テープや、接着材等で保持シール材同士を接着する方法等が挙げられる。
【0157】
本発明の排ガス浄化装置を構成するケーシングの材質は、耐熱性を有する金属であれば特に限定されず、具体的には、ステンレス、アルミニウム、鉄等の金属類が挙げられる。
【0158】
本発明の排ガス浄化装置において、ケーシングの形状は、略円筒型形状の他、クラムシェル型形状、ダウンサイジング型形状等を好適に用いることができる。
【0159】
本発明の排ガス浄化装置において、排ガス処理体の形状は、柱状であれば特に限定されず、略円柱状の他に、例えば、略楕円柱状や略角柱状等任意の形状、大きさのものであってもよい。
【0160】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、コージェライト等からなり、図6に示したように一体的に形成されたハニカム構造体であってもよく、あるいは、炭化ケイ素等からなり、多数の貫通孔が隔壁を隔てて長手方向に並設された柱状のハニカム焼成体を主にセラミックを含む接着材層を介して複数個結束してなるハニカム構造体であってもよい。また、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体としては、金属製の排ガス処理体であってもよい。
本発明の排ガス浄化装置を電気加熱触媒コンバータとして使用する場合、排ガス処理体の構成材料は、電気伝導度に優れるため、リンをドープした炭化ケイ素等の導電性セラミックであることが好ましい。
【0161】
本発明の排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体は、触媒担体に限定されず、例えば、セル壁を隔てて長手方向に多数のセルが並設されており、各々のセルにおけるいずれか一方の端部が封止材によって封止されたハニカム構造体等であってもよい。この場合、排ガス処理体は、排ガスに含まれるPMを除去するフィルタ(DPF)として機能する。
【0162】
本発明の排ガス浄化装置において、排ガス浄化装置を構成する排ガス処理体に触媒が担持されている場合、排ガス処理体に担持されている触媒としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム等の貴金属等が挙げられる。これらの触媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、触媒としては、カリウム、ナトリウム等のアルカリ金属、バリウム等のアルカリ土類金属、又は、酸化セリウム等の金属酸化物等であってもよい。
【0163】
上記排ガス処理体に触媒を担持させる方法としては、例えば、触媒が含まれた溶液を排ガス処理体に含浸させた後に加熱する方法、又は、排ガス処理体の表面にアルミナ膜からなる触媒担持層を形成し、このアルミナ膜に触媒を担持させる方法等が挙げられる。
アルミナ膜を形成する方法としては、例えば、Al(NO等のアルミニウムを含有する金属化合物溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法、アルミナ粉末を含有する溶液を排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
また、アルミナ膜に触媒を担持させる方法としては、例えば、貴金属を含む溶液等をアルミナ膜が形成された排ガス処理体に含浸させて加熱する方法等が挙げられる。
【0164】
本発明の保持シール材及び排ガス浄化装置においては、保持シール材を丸めて、当接部における第1の端面と第2の端面とを当接させた際、空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に空隙部が形成されることが必須の構成要素であり、係る必須の構成要素に、本発明の第一実施形態〜第五実施形態、及び、その他の実施形態で詳述した種々の構成(例えば、突出部の大きさ、無機繊維の組成、センサーの種類等)を適宜組み合わせることにより所望の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0165】
10A、10B、10C、20A、20B、20C、30A、30B、30C、30D、30E、30F、40A、40B、40C、40D、50A、50B、50C、50D、50E、50F、60A、110、210、310、410、510a、510b、510c 保持シール材
11、11a、11b、11c、21、21a、21b、21c、31、31a、31b、31c、61、111a、111b、111c、211a、211b、211c 保持シール材の第1の端面
12、12a、12b、12c、22、22a、22b、22c、32、32a、32b、32c、62、112a、112b、112c、212a、212b、212c 保持シール材の第2の端面
13a、13b、13c、13d、13e、13f、13g、13h、13i、23a、23b、23c、23d、23e、23f、23g、23h、23i、33a、33b、33c、33d、33e、33f、33g、33h、33i 突出部
14a、14c 当接部
14b 空隙形成部
15a、15b、15c、15d、25a、25b、25c、25d、35a、35b、35c、35d、45a、45b、45c、55a、55b、55c、55d、55e、55f、65a、115a、215a、315a、415a 空隙部
26a、26b、26c、26d、36a、36b、36c、36d 突出部切欠部
37a、37b、37c、37d、37e、37f、37g、37h 対向部切欠部
48a、48b、48c、58a、58b、58c、218a、318a 貫通部
69a、69b 端面切欠部
100、200、300、400、500 排ガス浄化装置
120、220、320、420、520 ケーシング
130、230、330、530a、530b、530c 排ガス処理体
140a、340a センサー
250a、250b、350a、350b、550a、550b、550c、550d、550e、550f 電極部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維からなるマット状の保持シール材であって、
前記保持シール材は、保持シール材の幅方向に平行な第1の端面及び第2の端面を有し、かつ、
保持シール材の長さ方向において、前記第1の端面と前記第2の端面との距離が最長である当接部と、前記第1の端面と前記第2の端面との距離が前記当接部よりも短い空隙形成部とを有し、
前記保持シール材を丸めて、前記当接部における前記第1の端面と前記第2の端面とを当接させた際、前記空隙形成部における前記第1の端面及び前記第2の端面近傍には、空隙部が形成されることを特徴とする保持シール材。
【請求項2】
前記保持シール材の空隙形成部における前記第1の端面及び前記第2の端面の少なくとも1つには、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた端面切欠部が形成されている請求項1に記載の保持シール材。
【請求項3】
前記第1の端面及び前記第2の端面の少なくとも一方の端面には、少なくとも1つの突出部からなる段差が設けられている請求項1又は2に記載の保持シール材。
【請求項4】
保持シール材の長さ方向において、前記保持シール材の空隙形成部における前記突出部の長さが、前記保持シール材の当接部における前記突出部の長さよりも短い請求項3に記載の保持シール材。
【請求項5】
前記保持シール材の空隙形成部における前記突出部には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた突出部切欠部が形成されている請求項3又は4に記載の保持シール材。
【請求項6】
前記保持シール材の空隙形成部における前記突出部に対向する端面には、保持シール材の長さ方向に切り欠けられた対向部切欠部が形成されている請求項3〜5のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項7】
保持シール材の厚さ方向に保持シール材を貫通する貫通部が形成されている請求項1〜6のいずれかに記載の保持シール材。
【請求項8】
ケーシングと、
前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、
前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置であって、
前記保持シール材は、請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材であり、
前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍には、空隙部が形成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項9】
前記排ガス浄化装置は、前記排ガス処理体と接続し、前記保持シール材を通過し、かつ、前記ケーシングを貫通する電極部材及び/又はセンサーをさらに備え、
前記電極部材及び/又はセンサーは、前記保持シール材の前記空隙部に配置されている請求項8に記載の排ガス浄化装置。
【請求項10】
前記排ガス浄化装置は、前記排ガス処理体と接続し、前記保持シール材を通過し、かつ、前記ケーシングを貫通する別の電極部材及び/又はセンサーをさらに備え、
前記保持シール材は、請求項7に記載の保持シール材であり、
前記別の電極部材及び/又はセンサーは、前記保持シール材の前記貫通部に配置されている請求項9に記載の排ガス浄化装置。
【請求項11】
ケーシングと、
前記ケーシングに収容された排ガス処理体と、
前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられ、前記排ガス処理体及び前記ケーシングの間に配設された保持シール材とを備える排ガス浄化装置の製造方法であって、
前記保持シール材として請求項1〜7のいずれかに記載の保持シール材を用いて、
前記排ガス処理体の周囲に巻き付けられた保持シール材の空隙形成部における第1の端面及び第2の端面近傍に、空隙部を形成することを特徴とする排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項12】
前記排ガス処理体に接続し、前記保持シール材を通過し、かつ、前記ケーシングを貫通するように電極部材及び/又はセンサーを配置する工程を含み、
前記電極部材及び/又はセンサーを、前記保持シール材の前記空隙部に配置する請求項11に記載の排ガス浄化装置の製造方法。
【請求項13】
前記排ガス処理体に接続し、前記保持シール材を通過し、かつ、前記ケーシングを貫通するように別の電極部材及び/又はセンサーを配置する工程をさらに含み、
前記保持シール材として請求項7に記載の保持シール材を用いて、
前記別の電極部材及び/又はセンサーを、前記保持シール材の前記貫通部に配置する請求項12に記載の排ガス浄化装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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