説明

保持具及びポットグリッパー

【課題】育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、離型剤の影響を受けることがない保持具を提供する。
【解決手段】支持連結筒1Aの外周の先端側に設置された剛性のある筒体1Bと、この筒体1Bの外周に設置された弾性を有する筒状の弾性体2と、この弾性体2の外周に部分的に突出して設けられた複数の剛性のある突出部3とを備え、複数の突出部3の突出面3cが保持すべき育苗ポットの内壁面に均等に同時接触するように配置され、この突出面3cに、接触した育苗ポットの内壁面を部分的に外側へ凹ませるスパイク4を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに用いる、個々の育苗ポットを保持する保持具、この保持具を縦横に配列して備えたポットグリッパー、更に、このポットグリッパーを備えた、簡易ポットグリッパー装置及び自動ポットグリッパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパーは、例えば、縦4列、横6列に配列された合計24個の育苗ポットの移し替えを一度にでき、一個一個移し替えるのに比べれば、格段にその移し替えを迅速に行うことができる。
【0003】
図8は、このような本発明の背景技術であるポットグリッパーの一例を示す外観斜視図である。このポットグリッパーは、特許文献1に記載されたものを本出願人が更に改良した実施形態を示すものである。
【0004】
このポットグリッパー60(特許文献1では、「園芸用ポット移し替え装置」と称されている。)は、育苗ポットの内壁面に入り込んで保持する複数の保持具45と、配列状態の保持具45を上方から支持する保持枠46と、この保持枠46を上下移動操作するための左右一対の保持ハンドル47とを備えている。
【0005】
ポットグリッパー60は、加えて、各保持具45毎に設けられ、保持具45の中心を貫通し、保持具45に対して相対的に上下移動して、保持具45で保持された育苗ポットを離脱させる押し出し部材48と、この配列状態の押し出し部材48を保持枠46より上方で支持する支持枠49と、この支持枠49を把持するための左右一対の把持ハンドル50とを備えている。
【0006】
保持枠46の保持ハンドル47の縦軸は支持枠49を貫通して、その上方に伸び出した状態で、水平部分で連結されている。保持ハンドル47の縦軸部分の外側には、保持枠46と支持枠49とを離間させるように付勢するスプリング51が嵌め入れられ、図示の保持具45と押し出し部材48の上下近接状態を保持している。
【0007】
保持具45は、帯状のバネ鋼板を「く」字状に屈曲させた4本の保持片41を、その突側が外側となって四角枠状を形成するように下端部分を底板42に固定し、上端部分を非固定とし、前記各保持片41の弾性付勢力により育苗ポットの内壁面を保持するものである。
【0008】
この保持具45の底板42がパイプ状の連結筒45aにより保持枠46に固定支持されている。また、押し出し部材48は、前記連結筒45aの中空部分を貫通する連結棒48aにより支持枠49に固定支持されている。一対の把持ハンドル50はそれぞれの中央部分で把持連結軸52により連結されている。
【0009】
このような構成のポットグリッパー60によれば、この状態のグリッパー60の把持ハンドル50を両手で持ち、配列積層されている育苗ポットの収容部にそれぞれの保持具45が入るようにして自重程度に育苗ポットに押し付けた後、把持ハンドル50を持ち上げれば、最上層の各1個の育苗ポットが一度に24個保持され、持ち上げられる。
【0010】
その後、所定の移し替え場所にある育苗トレー等の上方に移動させて、把持ハンドル50に対して保持ハンドル47を近づけるように操作すれば、保持枠46と支持枠49とが近づき、結果として相対的に保持具45に対して押し出し部材48が突出して、各保持された育苗ポットを離脱させて育苗トレーのそれぞれの収容部に収容させることができ、育苗ポットの移し替え作業の大幅な労力軽減を図ることができる。
【0011】
また、このポットグリッパー60の保持具45は、保持片41の底板42側は固定されているが上端部分は固定されていないので、保持片41は、いわば底板42から張り出した片持ち梁状態となっており、この保持片41の突側が育苗ポットの内壁面に当接して、素材のバネ鋼板の適度な弾性力によって前記内壁面を適度に変形させながら接触することで、確実なポット保持力を確保している。
【0012】
しかしながら、このポットグリッパー60によれば、多数回繰り返して育苗ポットの移し替えを行う内に、育苗ポットの内壁面に塗布された離型剤(型離れを良くするもので、滑りを良くする働きがある。)が保持片41の表面に付着堆積し、確実な保持力をわずかに弱めることがあって、場合によっては、定期的な離型剤の拭き取りが必要となって、改良が求められていた。
【0013】
図9は、本発明の背景技術であるポットグリッパーの他例を示すもので、(a)はその側面図、(b)はその保持具の拡大平面図、(c)は(b)の側面図である。このポットグリッパー60は、特許文献2に記載されたものである。
【0014】
このポットグリッパー60は、図8のポットグリッパー60のそれぞれ保持具45、保持枠46、保持ハンドル47、押し出し部材48、支持枠49、把持ハンドル50及びスプリング51に対応する保持具65、保持枠66、保持ハンドル67、押し出し部材68、支持枠69、把持ハンドル70及びスプリング71を備えている。
【0015】
このポットグリッパー60においては、保持枠66が支持枠69より上にあり、保持具65と保持枠66とを連結する連結棒65aが支持枠69と保持枠66とを貫通して突出している。スプリング71は、この連結棒65aの上端と保持枠66との間に嵌め込まれ、両者間に付勢力を与えて、保持具65と押し出し部材68との図示の近接状態を保持している。
【0016】
このような構成で、このポットグリッパー60によれば、把持ハンドル70に保持ハンドル67を近づけるように操作すれば、相対的に保持具65に対して押し出し部材68が突出し、保持されていた育苗ポットを離脱させることができる。
【0017】
また、このポットグリッパー60においては、押し出し部材68を支持枠69に支持固定する連結軸68aが、保持具65の保持片61の間を通過する二本のものとなっている。
【0018】
加えて、このポットグリッパー60においては、図6(b)、(c)に示すように、保持具65がウレタン等の発泡性樹脂性の4つの保持片61を中心部分の支柱62に十字状に組み付けた構成で、保持片61の育苗ポットの内壁面に接触する面には、微細な凸凹が不規則に密集して形成された鑢状の表面をもつシート体63が貼着されている(特許文献2の段落[0064])。
【0019】
このような構成で、このポットグリッパー60によれば、「この鑢状に形成された面が育苗ポットの内面と接触することになり、鑢状に形成された面が滑り止めとなって、その接触部分が育苗ポットの内面にしっかりと引っ掛かり、・・・確実に育苗ポットを把持することができる。」と特許文献2に記載されている(段落[0065])。
【0020】
しかしながら、このような微細な凸凹が密集して形成された鑢状の表面では、育苗ポットの内面に塗布された離型剤が堆積すると目詰まりを生じ、把持効果を低減させるのではないか、と思われた。
【0021】
また、外端面にシート体63が貼着された保持片61は板状体であり、そのシート体63が育苗ポットの内壁面に接触した場合、シート体63が受ける圧力によって、保持片61が支柱62方向に不均一に弾性変形する場合があり得、その場合シート体63の鑢状の表面がポット内壁面に均等に接触せず、把持効果が発揮されないことがあるのでは、と思われた。
【特許文献1】特許第3387067号公報(図13、図14)
【特許文献2】特開2006−94765号公報(図1、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、上記問題を解決しようとするもので、育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、離型剤の影響を受けることがない保持具、この把持具を用いたポットグリッパー、簡易ポットグリッパー装置及び自動ポットグリッパー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
請求項1記載の保持具は、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに用いる、個々の育苗ポットを保持する保持具であって、
ポットグリッパーの保持枠に支持され、その中に前記保持枠に対して可動とされた支持枠に支持され、先端に押し出し部材が設置された連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒と、前記支持連結筒の外周の先端側に設置された剛性のある筒体と、この筒体の外周に設置された弾性を有する筒状の弾性体と、この弾性体の外周に部分的に突出して設けられた複数の剛性のある突出部とを備え、
前記複数の突出部の突出面が保持すべき育苗ポットの内壁面に均等に同時接触するように配置され、前記突出面に、接触した育苗ポットの内壁面を部分的に外側へ凹ませるスパイクを設けたことを特徴とする。
【0024】
請求項2記載の保持具は、請求項1に従属し、前記複数の突出部が4つであることを特徴とする。
【0025】
請求項3記載のポットグリッパーは、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、
個々の育苗ポットを保持する保持具が、請求項1または2に記載のものであって、
ポットグリッパーは、先端に押し出し部材が設置された連結棒を支持する支持枠と、前記支持枠に対して可動であり、前記連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒を支持する保持枠とを備えていることを特徴とする。
【0026】
請求項4記載の簡易ポットグリッパー装置は、請求項3記載のポットグリッパーと、
複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーを支持し上下左右に移動可能とするポットグリッパー補助機であって、前記ポットグリッパーの重量に見合う力で前記ポットグリッパーを上下移動可能に支持する上下可動支持手段と、前記上下可動支持手段で支持された状態のポットグリッパーを水平移動させ得る水平移動手段とを備えているポットグリッパー補助機と、を備えたことを特徴とする。
【0027】
請求項5記載の自動ポットグリッパー装置は、請求項3記載のポットグリッパー全体を昇降可能とする主上下移動手段と、保持枠に対して支持枠を移動させて、保持具の保持・保持解除をさせる補助上下移動手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1記載の保持具によれば、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに用いる、個々の育苗ポットを保持する保持具であって、
ポットグリッパーの保持枠に支持され、その中に前記保持枠に対して可動とされた支持枠に支持され、先端に押し出し部材が設置された連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒と、前記支持連結筒の外周の先端側に設置された剛性のある筒体と、この筒体の外周に設置された弾性を有する筒状の弾性体と、この弾性体の外周に部分的に突出して設けられた複数の剛性のある突出部とを備え、
前記複数の突出部の突出面が保持すべき育苗ポットの内壁面に均等に同時接触するように配置され、前記突出面に、接触した育苗ポットの内壁面を部分的に外側へ凹ませるスパイクを設けたので、筒状の弾性体により突出部の突出面が育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、突出面から部分的に突出したスパイクにより離型剤の影響を受けることがない、という効果を発揮することができる。
【0029】
請求項2記載の保持具によれば、請求項1の効果に加え、前記複数の突出部が4つであるので、角型の育苗ポットだけでなく、丸型の育苗ポットをも好適に保持することができる。
【0030】
請求項3記載のポットグリッパーによれば、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、個々の育苗ポットを保持する保持具が、請求項1または2に記載のものであって、ポットグリッパーは、先端に押し出し部材が設置された連結棒を支持する支持枠と、前記支持枠に対して可動であり、前記連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒を支持する保持枠とを備えているので、請求項1または2の効果に加え、配列積層されている育苗ポットの最上層の各1個の育苗ポットを一度に多数、手動により保持しその後に保持解除して移し替えることができ、この移し替え作業を格段に迅速に行うことができる。
【0031】
請求項4記載の簡易ポットグリッパー装置によれば、請求項3記載のポットグリッパーと、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーを支持し上下左右に移動可能とするポットグリッパー補助機であって、前記ポットグリッパーの重量に見合う力で前記ポットグリッパーを上下移動可能に支持する上下可動支持手段と、前記上下可動支持手段で支持された状態のポットグリッパーを水平移動させ得る水平移動手段とを備えているポットグリッパー補助機と、を備えたので、請求項3の効果に加え、ポットグリッパーの重量の影響を回避して、多数配列状態の育苗ポットの移し替えを安価で簡易な構成で達成することができる。
【0032】
請求項5記載の自動ポットグリッパー装置によれば、請求項3記載のポットグリッパー全体を昇降可能とする主上下移動手段と、保持枠に対して支持枠を移動させて、保持具の保持・保持解除をさせる補助上下移動手段とを備えたので、請求項3の効果に加え、多数配列され積層された育苗ポットの保持と、全体の昇降、保持解除による育苗トレーへの入れ込みを自動化でき、大幅な省力化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【実施形態1】
【0034】
図1は、本発明の保持具の一例を示すもので、(a)は、その正面図、(b)は、その上面図、(c)は、その縦断面図、(d)は、突出部の要部拡大断面図、(e)は、突出部のスパイク設置部分拡大断面図である。
【0035】
この保持具5は、複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに用いる、個々の育苗ポットを保持する保持具であって、支持連結筒1Aと、筒体1Bと、弾性体2と、突出部3と、スパイク4とを備えている。
【0036】
支持連結筒1Aは、ポットグリッパーの保持枠に支持され、その中に前記保持枠に対して可動とされた支持枠に支持され、先端に押し出し部材8が設置された連結棒8aをスライド可能に収容するものである。ポットグリッパー、保持枠、支持枠については、図3を用いて後述する。
【0037】
支持連結筒1Aの素材としては、アルミニウム管が、軽量性、加工性の点から好適であるが、これに限定されず、同様の素性を有するものであればよい。
【0038】
筒体1Bは、支持連結筒1Aの外周の先端側に設置され、剛性を有するものである。筒体1Bは、この例では、堅い厚紙を素材とし、底付きの円筒部1aと、この円筒部1aの開口側を閉止するフタ部1bとを備えている。
【0039】
円筒部1aの底部分と、フタ部1bとには、支持連結筒1Aを隙間無く貫通させる孔が設けられている。支持連結筒1Aの両端外周には雄ねじが形成され、その一方端は円筒部1aの底部分を貫通してわずかに下方に突出し、この底部分を挟むように薄型のナット1cがダブルナット状態でこの雄ねじにネジ締付され、支持連結筒1Aへの円筒部1aの同軸芯固定がなされている。
【0040】
円筒部1aの開口側は、フタ部1bが、圧入あるいは接着等の適切な固定手段で嵌め込まれ、支持連結筒1Aへの筒体1Bの全体としての同軸芯固定が達成されている。
【0041】
筒体1Bの素材としては、上記の例に加え、軽量で成形性の良いものが好適であり、例えば、硬質合成樹脂であってもよい。
【0042】
弾性体2は、筒体1Bの外周に設置された弾性を有する筒状のものである。弾性体2の下方側は、円錐台形状となり、その表面が傾斜面2aを形成している。
【0043】
弾性体2の素材としては、この例では、発泡合成樹脂を用いているが、これに限定されず、弾性を有し、成形性を優れた素材で、その弾性を長期に渡って維持するもの、つまり、弾性の経年変化の少ないもの、多数繰り返し変形しても弾性を維持するものが好適であり、例えば、上記に加え、発泡合成ゴムであってもよい。
【0044】
突出部3は、弾性体2の外周に部分的に突出して設けられた複数の剛性のあるものである。この例では、突出部3は、木材を素材とし、弾性体2の外周に接着等の固着手段で固定される基部3aと、この基部3aに対して、木ネジ3fで着脱可能に固定される外突部3bとを備えている。
【0045】
外突部3bの外側が、育苗ポットの内壁面に接触する突出面3cとなっている。また、突出部3bの基部3a側は、スパイク4として用いられる複数の木ネジを外突部3bの内側から外側へとネジ挿入する空間を確保するための作業空間確保凹所3eが設けられている。
【0046】
一体化された突出部3の下方側は、弾性体2の下方の傾斜面2aに連続した同一の傾斜面を形成するガイド傾斜面3dとされている。
【0047】
突出部3の素材としては、成形性がよく、弾性体2に比べ、変形のしにくい剛性のあるもので、軽量の素材が好適であり、上記の木材以外に、軽金属や、硬質合成樹脂とすることができる。
【0048】
上記のような基本構成において、この保持具5は、複数の突出部3の突出面3cが保持すべき育苗ポットの内壁面に均等に同時接触するように配置され、この突出面3cに、接触した育苗ポットの内面を部分的に外側へ凹ませるスパイク4を設けたことを特徴とする。
【0049】
具体的には、突出部3は、弾性体2の外周を4等分するように4箇所設けられ、その突出面3cは、保持具5の中心、つまり、支持連結筒1Aの軸中心から、径方向に同じ距離となるように配置されている。
【0050】
スパイク4は、外突部3bの作業空間確保凹所3eにネジ挿入された横二列、縦三列の6つの金属性の木ネジの先端部分が、突出面3cから適度に突出したものとして構成されている。
【0051】
このような構成の保持具5の使用方法、作用効果を以下に説明する。
【0052】
図2は、図1の保持具の使用方法を示すもので、(a)は、保持具を保持すべき育苗ポットの真上に位置させた状態を示す斜視図、(b)は、(a)の状態から保持具を育苗ポットにある程度入れ込んだ状態を示す斜視図、(c)は、(b)の状態から保持具を更に入れ込み、保持状態が達成された状態を示す斜視図、(d)は(c)の状態を真上から見た上面図、(e)は図1の保持具で保持可能な他の育苗ポットを示す斜視図である。
【0053】
これより、既に説明した部分と同じ部分については同じ符号を付して重複説明を省略する。なお、本来、保持具5は、押し出し部材8及び連結棒8aとセットで用いられるものであるが、ここでは、保持具5の保持機能についての説明を目的とするので、保持解除に用いる押し出し部材8及び連結棒8aは省略している。
【0054】
まず、図2(a)に示すように、保持具5の中心と、保持すべき角型の育苗ポットPQとの中心が一致するように保持具5を位置させ、かつ、4つの突出部3が育苗ポットPQの4つの角部に対応した位置となるようにする。
【0055】
この状態で、保持具5を真下に下降させると、各突出部3が育苗ポットPQの各角部に入りこんで、図2(b)の状態となる。この際、各突出部3のガイド傾斜面3dが、保持具5と育苗ポットPQとの間の軸心ずれ、各突出部3と角部との方向のずれをガイドして両者の接触、位置合わせを達成し、保持具5の育苗ポット5への好適な入り込みを可能としている。
【0056】
この際、各突出部3の突出面3cが育苗ポットPQの各角部の内壁面に均等に接触し、この突出面3cに設けられたスパイク4が、接触した育苗ポットPQの内壁面を部分的に外側へ凹ませて、外側から見ると一時的に小隆起Pqが形成されているのが解る。
【0057】
更に、保持具5を降下させて、保持具5による育苗ポットPQの保持状態が達成されたのが、図2(c)に示す状態である。この状態では、6つのスパイク4に対応して小隆起Pqが6つ形成されているのが解る。
【0058】
また、この際、図2(d)から解るように、各突出部3が育苗ポットPQの各角部に拘束されて、弾性体2の外周を弾性変形させて弾性体2の中心方向に所定量陥没している。このため、各突出面3cが適度な押圧力で各角部の内壁面に接触し、かつ、各スパイク4によって、接触した各内壁面が部分的に変形されて、育苗ポットPQが確実に保持される。
【0059】
また、各スパイク4の突出量が試行錯誤により適度な値とされ、その弾性力による押圧力も適度なものであるので、育苗ポットPQの壁面が傷つけられたり、破損したりすることはない。スパイク4の先端は、鋭角で刃先が形成されたようなものではない。
【0060】
また、各スパイク4は、突出面3cから、部分的に突出しているだけなので、育苗ポットPQの内壁面に塗布された離型剤が堆積することもない。
【0061】
更に、この例では、弾性体2は、円筒状であって、突出部3が育苗ポットPQから受ける力を広く受けるものであるので、弾性体2の弾性変形が常に均一に生じ、つまり、突出部3の弾性体2への陥没が保持具5の中心方向へ均一に生じ、これにより、突出面3cが育苗ポットPQの内壁面に均一に接触し、上記部分的な凹み(小隆起)Pqも均一に生じるのである。
【0062】
したがって、この点でも、本発明の保持具5は、育苗ポットを確実に保持することができる。
【0063】
つまり、本発明の保持具5によれば、育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、離型剤の影響を受けることがない、という効果を発揮することができる。この効果は、本出願人による繰り返し耐久試験でも実証されているものである。
【0064】
図2(e)は、図1の保持具5で、図2(a)に示す角型の育苗ポットPQと同様に、保持可能な丸型の育苗ポットPRを示す図である。本発明の保持具5によれば、丸型の育苗ポットPRであっても、角型の育苗ポットPQと同じサイズ(開口面積がほぼ同じ)であれば、同様に確実に保持することができる。
【0065】
これは、この丸型の育苗ポットPRであっても、保持した際の上面図が、図2(d)と同様となる点でも容易に理解できることである。
【0066】
加えて、保持具5の弾性体2と、突出部3とには、下方側に連続した傾斜面2a、ガイド傾斜面3dが形成されているので、これによっても、この保持具は、丸型の育苗ポットPRの円形開口にも対応可能である。
【0067】
傾斜面2a、3dは、この円形開口を、四角開口へと円滑に変形させながら、突出面3cへとガイドし、突出面3cをポット内壁面に均等に接触させることができる。
【0068】
また、この際、多少の突出体3の出入りの差は、弾性体2の中心方向への弾性変形の量によって吸収される。
【0069】
また、このような効果は、この保持具5の突出部3が円周を等分する4箇所に設けられていることによってももたらされている。つまり、これらの4つの突出部3を備えることで、この保持具5は、四角の角型の育苗ポットPQだけでなく、丸型の育苗ポットPRも好適に保持することができる。
【0070】
なお、一般に市場に流通する育苗ポットは、四角型か、丸型なので、この4箇所の突出部3を備えた保持具5により、ほとんどすべての育苗ポットに対応することができる、ということができる。
【0071】
また、この例のように、スパイク4を横2列縦3列というように配置してあると、育苗ポット開口端に補強リブとしてリング状の小さな突条が上下に複数設けられている場合には、このスパイク4の先端がこの突条に引っ掛かって、育苗ポットを保持する効果が高まるものと思われる。このような効果は、鑢状の表面では達成し得ないものである。
【0072】
上述の保持具5の機能、作用効果に鑑みれば、本発明の保持具の各部の要件は以下のものであることが理解される。
【0073】
1.後述するように、一般に育苗ポットは、縦横に4列*6列で合計24個が配列されて取り扱われるものなので、この保持具5も24個配列してポットグリッパーとされるので、保持具5自体も軽量のものが望まれ、その観点から、各構成部品の素材が決定される。
【0074】
2.筒体と弾性体とは、弾性体に必要な弾性変形の量、弾性係数、繰り返しの弾性変形の数(耐久性)を考慮して、適宜、その相対的な大きさが決められるものであり、図示されたものは、これまでの試行錯誤により、好適なものとして、現状、決められているものであり、この例示のものに限定されるものではない。
【0075】
3.筒体と弾性体との形状は、ここでは、製造の容易さ、突出部を均一に弾性変形により陥没させる目的を考慮して円筒状としているが、この均一変形の条件を満たす限り、円形には限定されない。例えば、合成樹脂等で成形する場合には、形状の自由度は高くなり、弾性体を8角形形状として、一辺おきに突出部を設けるようにしてもよい。
【0076】
4.突出部は、ここでは、4箇所の場合を例示したが、例えば、丸型の育苗ポットについては3箇所や、5箇所でもよい。要するに、育苗ポットの開口側内壁面に均等に接触するようなものであればよい。
【実施形態2】
【0077】
図3は、図1の保持具を縦横に配列して備えた、本発明のポットグリッパーを示す外観斜視図である。
【0078】
このポットグリッパー15は、複数の育苗ポットPを縦横に配列した状態で手動により、保持し又は保持解除可能なポットグリッパー15であって、その基本的な構成は、後述するように図8に示した背景技術であるポットグリッパー60と同様であり、保持具5が図1、2で説明したものである点を特徴とする。
【0079】
ポットグリッパー15の基本的構成は、保持具5の上記の特徴以外は、図8のポットグリッパー60と共通し、同グリッパー60の保持枠46、保持ハンドル47、押し出し部材48、支持枠49、把持ハンドル50及びスプリング51に相当する保持枠6、保持ハンドル7、押し出し部材8、支持枠9、把持ハンドル10及びスプリング11を備えている。
【0080】
また、ポットグリッパー15は、同グリッパー60の連結棒48a及び把持連結軸52に相当する連結棒8a及び把持連結軸12を備えている。なお、このポットグリッパー15では、同グリッパー60の一部として把握されていた連結筒45aは、保持具5の一部である支持連結筒1Aとして把握されている。
【0081】
このような構成で、このポットグリッパー15は、図8のポットグリッパー60と同様に、配列積層されている育苗ポットの最上層の各1個の育苗ポットを一度に24個、手動により、保持し、その後に保持解除して移し替えることができ、この移し替え作業を格段に迅速に行うことができるものである。
【0082】
その際、上述の保持具5の効果を、ポットグリッパー15として発揮することができる。つまり、このポットグリッパー15によれば、育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、離型剤の影響を受けることがないという保持具5の効果を、ポットグリッパーとして発揮することができる。
【0083】
また、このポットグリッパー15は、備えられている保持具5が上述したように筒状の弾性体2と、傾斜面3dを備えた突出部3とを構成要素としているため、傾き対応性、位置対応性が良いので、手動で使う場合に、多少の傾きや位置不一致があっても、そのずれをしっかりと吸収して、縦横に配列された育苗ポットを24個一度に確実に保持することができる。
【実施形態3】
【0084】
図4は、図3のポットグリッパーと、ポットグリッパー補助機とを組み合わせた簡易ポットグリッパー装置を示す外観斜視図である。
【0085】
この簡易ポットグリッパー装置30は、図3で説明した、複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパー15と、このポットグリッパー15を支持し上下左右に移動可能とするポットグリッパー補助機25とを備えたものである。
【0086】
この装置30においては、ポットグリッパー補助機10が、ポットグリッパー15の重量に見合う力でポットグリッパー15を上下移動可能に支持する上下可動支持手段21と、上下可動支持手段21で支持された状態のポットグリッパー15を水平移動させ得る水平移動手段22とを備えていることを特徴とする。
【0087】
この簡易ポットグリッパー装置30では、ポットグリッパー補助機25が、上下可動支持手段21として、ゼンマイ式バネを内蔵した巻き取り式バランサー21を用いていることを特徴とする。
【0088】
この巻き取り式バランサー21は、巻き取り支持する対象の重量に対応して巻き取り支持力を調整することができるものである。また、その支持力をほぼ維持しながら、そのバランサー21から伸び出している先端部分(ワイヤー)を出し入れ(この場合は昇降)させることができるものである。
【0089】
従って、このバランサー21の支持力を、その先端部分に吊り下げられたポットグリッパー15の重量に見合うものとしておけば、作業者はほとんどポットグリッパー15の重量の負荷を受けることなく、作業をすることができる。
【0090】
また、この簡易ポットグリッパー装置30では、ポットグリッパー補助機25が、水平移動手段22として首振り移動手段22を用いている点を特徴とする。
【0091】
この首振り移動手段22は、ベース板22dに立設された固定支柱22aに対して、同心状態で回転可能に連結された回動支柱22bと、この回動支柱22bの上端から水平前方向に伸び出した水平アーム部22cとを備えている。
【0092】
この水平アーム部22cの先端に、巻き取り式バランサー21を介してポットグリッパー15が吊り下げられている。
【0093】
従って、このポットグリッパー補助機25(簡易ポットグリッパー装置30)によれば、上記の巻き取り式バランサー21の効果に加え、ポットグリッパー15を回動支柱22bを中心として、水平アーム部22cの長さを半径とする円周軌道上で水平移動することができる。
【0094】
この際、この円周軌道上で、多少、作業者の水平方向の力を与えることで、ポットグリッパー15を直線状の左右、前後方向に移動させることができる。つまり、所定範囲で多数配列状態の育苗ポットの直線状の移し替えもすることができる。
【0095】
この所定範囲は、水平アーム部22cの長さ、巻き取り式バランサー21の伸びだし長さ等を調整して、作業に必要なものとすることができる。
【0096】
また、上述の上下可動支持手段1としての巻き取り式バランサー21、水平移動手段22としての首振り移動手段22はいずれも駆動手段のない、簡単な構成のもので、安価簡易に製造することができる。
【0097】
つまり、この本発明のポットグリッパー補助機25(簡易ポットグリッパー装置30)によれば、ポットグリッパー15の重量の影響を回避して、多数配列状態の育苗ポットの移し替えを安価で簡易な構成で達成することができる。
【0098】
加えて、このグリッパー装置30は、上述の保持具5を備えたポットグリッパー15の効果を、簡易ポットグリッパー装置30としても発揮することができる。
【0099】
図5(a)は、図4のものを移動式とした簡易ポットグリッパー装置を示す正面図、(b)、(c)は、(a)の首振り基部分の使用態様を示す詳細断面図である。
【0100】
この簡易ポットグリッパー装置30Aは、図4の簡易ポットグリッパー装置30に比べ、ポットグリッパー補助機25Aにおいて、首振り移動手段22Aが、より細い外径の固定支柱22eと、回転支柱22fと、水平アーム部22kとで構成され、首振り固定機能を備えている点と、首振り移動手段22Aが移動・固定可能な作業台24に設置されている点が異なっている。
【0101】
作業台24は、その下方に移動用のフリーキャスター24aと、固定用の伸縮可能な固定脚部24bとを備えている。図5(a)に示す状態では、固定脚部24bが伸び状態で、フリーキャスター24aのコロ部分は接地していないが、固定脚部24bを短くすれば、フリーキャスター24aのコロ部分が接地して、移動可能となる。
【0102】
首振り移動手段22Aの固定支柱22eは、複数のリブで補強されたベース板22mにより作業台24の最奥側(図面に垂直な再後方側)に固定されている。
【0103】
水平アーム部22kの先端には、カバー23で見えないが、図4のものと同じ巻き取り式バランサー21が取りつけられている。カバー23には、内部の巻き取り式バランサー21の支持力調整等のための開閉可能な蓋23aが設けられている。
【0104】
このようなカバー23を設けると、製品としての外観を統一感のあるものとすることができ、また、不用意に巻き取り式バランサー21の巻き取り口に作業者の指先などが入り込んで巻き込まれるといったことをより良く防ぐことができる。
【0105】
首振り固定機能は、図5(b)、(c)に示すように、固定支柱22eと回転支柱22fとの内周に渡って隙間なく貫通し、固定支柱22e側に固定された連結パイプ22gと、この連結パイプ22gの回転支柱22fとの重複側に貫通して水平方向に設けられた方向決め孔22hと、この方向決め孔22hに貫通して挿入される方向決めピン22iと、この方向決めピン22iを固定支柱22eに吊り下げる鎖(他のひも状のもので代用可能)22jとで達成される。
【0106】
首振りが必要な際には、図5(b)に示すように、方向決めピン22iを方向決め孔22hに挿入しない状態としておくと、連結パイプ22gを中心として、回転支柱22fを自由に回転させることができる。
【0107】
なお、実際には、方向決めピン22iは、不使用時には、固定支柱22eに鎖22jによって吊り下げられた状態となっていて、邪魔になるものではないが、ここでは、次の挿入時の説明のために図のような状態で示している。
【0108】
首振りをさせたくない時には、図5(b)の状態から図5(c)の状態へと方向決めピン22iを方向決め孔22hに貫通挿入すると、連結パイプ22g、つまり、固定支柱22eに対して回転支柱22fを回転しないように一定方向に固定することができる。
【0109】
この固定方向は、方向決め孔22hを設ける方向と個数によって適宜設定することができるが、通常は、図5(a)に示すように、作業台24(図示していないが、この図の左右方向の長さが、図を貫通する前後方向の長さより長い長方形状である。)の左右方向と、前記前後方向との二通りの選択が可能なように設定するのが良い。
【0110】
なお、作業台24(つまり、簡易ポットグリッパー装置30A全体)の移動時には、この図5(a)に示す方向としておくと、主にこの左右方向で移動させるとすると、吊り下げられたポットグリッパー15が移動方向に揺動しても、作業台24の長手方向となるので、作業台24が揺動の影響により強く対抗することができ、フラフラすることなく移動させることができる。
【0111】
また、本装置30Aを使用しない際もこの状態としておくと、省スペースとなる。一方、使用時には、ポットグリッパー15が前方に来るようにすると(固定支柱22eは作業台の最奥側に設置されている。)、作業台24上での作業性が良い。
【0112】
このような構成の簡易ポットグリッパー装置30A(ポットグリッパー補助機25A)によれば、図4の装置30の作用効果に加え、作業台24での作業性、移動・固定の利便性、上記首振り固定機能の利便性を得ることができる。
【実施形態4】
【0113】
図6は、本発明のポットグリッパーを備えた自動ポットグリッパー装置の一例を示すもので、(a)は、その側面図、(b)は、その要部拡大斜視図である。
【0114】
この自動ポットグリッパー装置40は、図1のポットグリッパー15から保持ハンドル7と把持ハンドル10とを除去したポットグリッパー15Aを備え、そのポットグリッパー15A全体の昇降と、保持枠6に対する支持枠9の昇降(近接離間)を自動化したものである。
【0115】
ポットグリッパー15Aの保持枠6は、枠体39の昇降可能な上下昇降枠39a上に載せられて固定され、支持枠9には、補助上下移動手段(例えば、空気圧シリンダ)37が備えられて、この支持枠9が保持枠6に対して、手動の時と同様に近接離間移動(昇降)可能となっている。
【0116】
上下昇降枠39aは、主上下移動手段(例えば、空気圧シリンダ)36によって、枠体39に対して昇降可能となっている。また、枠体39には不図示のトレー出し入れ手段が設けられている。
【0117】
枠体39には、また、配列積層された育苗ポットP(育苗トレーに収容されている。)を載せるポット台39bが設けられている。このポット台39bには、ここに載せるべき配列積層された育苗ポットPQ(PR)の位置決めをする位置決めガイド39cが設けられている。
【0118】
このような構成で、この自動ポットグリッパー装置40は、ポットグリッパー15Aを下降させて、各保持具5を配列積層された育苗ポットPQ(PR)の各収容部分に入れ込み、最上層の各1個の育苗ポットを一度に24個保持した後、ポットグリッパー15Aを上昇させる。
【0119】
次に、装置40は、トレー出し入れ手段で、保持した状態の各育苗ポットPQ(PR)の真下となる位置に育苗トレーを位置させ、ポットグリッパー15Aを下降させて、適当な位置で、支持枠9を保持枠6に近接させて、各保持された育苗ポットPを各保持具5から離脱させて育苗トレーに自動的(機械的に)移し替えることができる。
【0120】
ここで、この自動ポットグリッパー装置40は、育苗トレーに収容され、配列積層された育苗ポットPを簡易に外部からポット台39bへ滑り込ませることを可能とするシューター38を備えていることを特徴とする。
【0121】
このシューター38は、ポット台39bの位置決めガイド39cで決められた位置に向けて傾斜するように設置されたシューター板38aと、このシューター板38a上に設けられ、配列積層された育苗ポットPの滑り方向に対する左右位置をガイドする左右ガイド38bとを備えている。
【0122】
このような構成のシューター38によれば、シューター38の上に、左右ガイド38bの間に入るように、育苗トレーに収容され配列積層された育苗ポットPQ(PR)を載せるだけで、あるいは、載せた後に軽く押すだけで、配列積層された育苗ポットPQ(PR)をポット台39bの位置決めガイド39c内に容易に滑り込ませ、位置させることができる。
【0123】
このシューター38は、トレー出し入れ手段の邪魔にならないようにすれば、枠体39の前後左右のどの位置に設けてもよいものである。
【0124】
この自動ポットグリッパー装置40は、上述したような自動装置としての効果に加え、本発明の保持具5を備えたポットグリッパー15Aを備えているので、保持具15、ポットグリッパー15Aの効果をも装置40として発揮することができる。
【実施形態5】
【0125】
図7は、本発明の保持具の他例を示すもので、(a)は、その正面図、(b)は、その上面図、(c)は、その要部断面図、(d)は、(c)の拡大前面図、(e)は、更に他例の保持具の要部断面図、(f)は、(e)の拡大前面図である。
【0126】
図7(a)〜(d)に示された保持具5Aは、図1に示された保持具5に比べ、突出部3Aが、硬質合成樹脂を素材として成形された一体形(図1の突出部3の様に、基部3aと外突部3bとに分離可能ではないことをいう)である点と、スパイク4Aがこの突出部3Aの突出面側からネジ挿入可能で、その出し入れ程度もこの突出面側から可能となっている点が異なっている。
【0127】
一体物の突出部3Aは、一体成形された突出本体3gと、この外側表面である突出面3hとを備えている。突出本体3gの外形形状は、図1の突出部3と同じである。
【0128】
突出面3hには、図1の突出部3と同様の位置に雌ねじ用下孔4cが設けられ、この雌ねじ用下孔4cに、止めネジの後端側に、六角部4aと、更に後端側に円錐形状の突部4bとが設けられたスパイク4Aがネジ挿入される。
【0129】
スパイク4Aの六角部4aの外径は、そのネジ部分の外径より小さい。この六角部4aに6角穴レンチを嵌めて、突出面3h側から、スパイク4Aの出し入れを調節し、突部4bが突出面3hから突出する突出量を調節することができる。
【0130】
この際、突出部3Aの素材が硬質合成樹脂なので、適度な弾性を有し、特に雌ねじを形成しなくとも、雌ねじ用下孔4cだけでスパイク4Aをネジ挿入可能であり、また、出し入れ調整した状態で、特に、緩み止め手段を設けることなく、調節した状態を保持することができるので、利便性が高い。
【0131】
図7(e)、(f)に示された保持具5Bは、図7(a)〜(d)に示された保持具5Aに比べ、そのスパイク4Bとしての止めネジの後端側に、六角穴4dが設けられ、更に後端側に4つの突部4eが、この六角穴4dを取り囲むように設けられている点が異なっている。
【0132】
このスパイク4Bによれば、六角穴4dに六角レンチを入れて、雌ねじ用下孔4cへのスパイク4Bの出し入れ、つまり、突部4eの突出面3hからの突出量を調整することができる。
【0133】
また、このスパイク4Bによれば、一つのスパイクで4つの突部4eがあるので、例えば、ネジ径を大きくして、突部4e間の間隔を大きくすることができる場合には、スパイク4Bを突出面3hに対して上下に2か所設けるだけで、合計8か所の突部4eとすることができ、6つのスパイクを設けるのと同様の保持効果を得ることができる可能性がある。
【0134】
上記のような構成の保持具5A、5Bによれば、図1の保持具5と同様の効果に加え、スパイク4A、4Bの出し入れの調整、突出面3hからの突出量の調整を、突出面3h側からできるという効果を発揮することができる。
【0135】
なお、本発明の保持具、この把持具を用いたポットグリッパー、簡易ポットグリッパー装置及び自動ポットグリッパー装置は、上記の実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲、実施形態の範囲で、種々の変形例、組み合わせが可能である。
【0136】
また、ポットグリッパーとは、縦横に配列された育苗ポットを手動あるいは半手動(半自動)で一時的にその配列状態のままで保持し、または、保持解除することができる装置を意味するもので、いわゆるポット移し替え装置や、ポット詰替装置等と称されるものを含むものである。
【0137】
また、例えば、スパイクは、複数の突部を有する場合には、一箇所だけか、二箇所以上設けるようにしてもよく、突部が一つだけのスパイクを一箇所だけか、二箇所以上設けるようにしてもよい。
【0138】
また、ここでは、ポットグリッパーは、育苗ポットが縦横に24個配列されたものに対応するものを例示したが、縦横の配列数は、4列*6列に限定されるものではない。
【0139】
なお、保持具の一部として支持連結筒を含むものとしてもよく、保持具の一部としては、支持連結筒を含まないものとしてもよい。つまり、筒体から外側の部分を修理交換部品としてもよく、支持連結筒を含むものを修理交換部品としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の保持具、この把持具を用いたポットグリッパー、簡易ポットグリッパー装置及び自動ポットグリッパー装置は、育苗ポットの保持の際、育苗ポットの内壁面に接触しても不均一な弾性変形をすることがなく、かつ、離型剤の影響を受けることがないことが要請される産業分野に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】本発明の保持具の一例を示すもので、(a)は、その正面図、(b)は、その上面図、(c)は、その縦断面図、(d)は、突出部の要部拡大断面図、(e)は、突出部のスパイク設置部分拡大断面図
【図2】図1の保持具の使用方法を示すもので、(a)は、保持具を保持すべき育苗ポットの真上に位置させた状態を示す斜視図、(b)は、(a)の状態から保持具を育苗ポットにある程度入れ込んだ状態を示す斜視図、(c)は、(b)の状態から保持具を更に入れ込み、保持状態が達成された状態を示す斜視図、(d)は(c)の状態を真上から見た上面図、(e)は図1の保持具で保持可能な他の育苗ポットを示す斜視図
【図3】図1の保持具を縦横に配列して備えた、本発明のポットグリッパーを示す外観斜視図
【図4】図3のポットグリッパーと、ポットグリッパー補助機とを組み合わせた簡易ポットグリッパー装置を示す外観斜視図
【図5】(a)は、図4のものを移動式とした簡易ポットグリッパー装置を示す正面図、(b)、(c)は、(a)の首振り基部分の使用態様を示す詳細断面図
【図6】本発明のポットグリッパーを備えた自動ポットグリッパー装置の一例を示すもので、(a)は、その側面図、(b)は、その要部拡大斜視図
【図7】本発明の保持具の他例を示すもので、(a)は、その正面図、(b)は、その上面図、(c)は、その要部断面図、(d)は、(c)の拡大前面図、(e)は、更に他例の保持具の要部断面図、(f)は、(e)の拡大前面図
【図8】本発明の背景技術であるポットグリッパーの一例を示す外観斜視図
【図9】本発明の背景技術であるポットグリッパーの他例を示すもので、(a)はその側面図、(b)はその保持具の拡大平面図、(c)は(b)の側面図
【符号の説明】
【0142】
1A 支持連結筒
1B 筒体
2 弾性体
3、3A 突出部
3c、3h 突出面
4〜4B スパイク
5〜5B 保持具
6 保持枠
8 押し出し部材
8a 連結棒
9 支持枠
15、15A ポットグリッパー
21 上下可動支持手段
22 水平移動手段
25 ポットグリッパー補助機
30 簡易ポットグリッパー装置
36 主上下移動手段
37 補助上下移動手段
40 自動ポットグリッパー装置
PQ 育苗ポット(角型)
PR 育苗ポット(丸型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーに用いる、個々の育苗ポットを保持する保持具であって、
ポットグリッパーの保持枠に支持され、その中に前記保持枠に対して可動とされた支持枠に支持され、先端に押し出し部材が設置された連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒と、
前記支持連結筒の外周の先端側に設置された剛性のある筒体と、この筒体の外周に設置された弾性を有する筒状の弾性体と、この弾性体の外周に部分的に突出して設けられた複数の剛性のある突出部とを備え、
前記複数の突出部の突出面が保持すべき育苗ポットの内壁面に均等に同時接触するように配置され、前記突出面に、接触した育苗ポットの内壁面を部分的に外側へ凹ませるスパイクを設けたことを特徴とする保持具。
【請求項2】
前記複数の突出部が、4つであることを特徴とする請求項1記載の保持具。
【請求項3】
複数の育苗ポットを、縦横に配列した状態で、手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーであって、
個々の育苗ポットを保持する保持具が、請求項1または2に記載のものであって、
ポットグリッパーは、先端に押し出し部材が設置された連結棒を支持する支持枠と、前記支持枠に対して可動であり、前記連結棒をスライド可能に収容する支持連結筒を支持する保持枠とを備えていることを特徴とするポットグリッパー
【請求項4】
請求項3記載のポットグリッパーと、
複数の育苗ポットを縦横に配列した状態で手動により保持し又は保持解除可能なポットグリッパーを支持し上下左右に移動可能とするポットグリッパー補助機であって、前記ポットグリッパーの重量に見合う力で前記ポットグリッパーを上下移動可能に支持する上下可動支持手段と、前記上下可動支持手段で支持された状態のポットグリッパーを水平移動させ得る水平移動手段とを備えているポットグリッパー補助機と、
を備えたことを特徴とする簡易ポットグリッパー装置。
【請求項5】
請求項3記載のポットグリッパー全体を昇降可能とする主上下移動手段と、保持枠に対して支持枠を移動させて、保持具の保持・保持解除をさせる補助上下移動手段とを備えたことを特徴とする自動ポットグリッパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−22203(P2010−22203A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183326(P2008−183326)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(593049914)株式会社東海化成 (20)
【Fターム(参考)】