説明

保水性の屋上床構造

【課題】屋上緑化と同様に、ヒートアイランド現象の緩和に寄与でき、しかも、全ての建物で採用することが可能な、簡便な手段で、高い保水性が確保され、建物内を断熱でき、冷暖房にかかる費用をも低減できる屋上床構造の提供。
【解決手段】屋上を構成する防水性層の上に配置されて、屋上の保水性を維持する保水性の床構造であって、防水性層の上に、空気層と、基板層と、保水材層とが、この順で積層されてなり、かつ、保水材層が、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分とし、該2成分の比率が、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが18〜70質量部である多数の空隙を有してなる保水性パネルである保水性の屋上床構造。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋上を構成する防水性層の上に配置されて、屋上の保水性を維持することができる保水性の屋上床構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工が集中した都市に特有の問題が顕在化され、社会問題となってきている。その一つに、人口が集中している都市部の気温が、その周辺の非都市部に比べて異常な高温を示すヒートアイランドと呼ばれる現象があり、これによって引き起こされると考えられる地球の温暖化など様々な問題が指摘されている。例えば、都市型集中豪雨もその一つであり、急速に進んでいるヒートアイランド現象が一因していると考えられている。ところで、都市の地面は、その大部分が、水を吸収することができないアスファルトやコンクリートで舗装されており、雨水を下水管や雨水管で流すことを基本としていることから、都市型水害の発生が問題になっている。特に、先述した都市型集中豪雨が起こった場合には、下水管や雨水管では雨水を処理しきれず、近年の都市型水害が頻発する原因となることも少なくない。これらの課題は、特に、人口が密集している大都市において顕著である。
【0003】
ヒートアイランド現象の原因として、開発によって生じた緑地や水辺、裸地などの減少や、舗装によって生じた、降雨の地面への浸透量減少、土中の保水力低下、ひいては蒸発・蒸散量の減少が挙げられている。また、ヒートアイランドが進めば進むほど、冷房需要が増加し、それが排熱の増加を招いて、ヒートアイランドをさらに促進させるという悪循環も指摘されている。
【0004】
上記した課題を解決する手段の一つとして、透水性および保水性を有する舗装材料や、高反射率の材料が多数開発されており(特許文献1、特許文献2等参照)、これらの材料を用いた、透水性舗装・保水性舗装・遮熱性舗装が広く採用されるようになってきている(特許文献3等参照)。例えば、特許文献1では、ガラス屑などの廃材を利用したリサイクル骨材に、セメントなどの硬化材とを用いた透保率制御材料を提案しており、廃材の例示の一つとして、軽量気泡コンクリート(以下、ALCとも略)が挙げられている。また、特許文献2では、セメントと、骨材と、気泡コンクリート等の保水材とを含む保水性ブロックが提案されており、保水材の平均粒径をコントロールすることで、簡便に保水性ブロックに連通孔を設けることが可能になることが記載されている。特許文献3には、表層に舗装用ブロックを有し、該表層の下方にクッション層を有する保水性舗装構造が記載されており、気泡コンクリートの粒体を保水材とすることが提案されている。
【0005】
一方、前記したヒートアイランド現象を緩和する施策として、都市の緑化が進められており、ビル等の屋上の緑化や壁面の緑化(緑のカーテン)も多く採用されている。これまでに、屋上緑化を施した建物では、緑化による熱的な効果により、反射熱の減少や夏季の冷房の削減が可能になることが確認されており、ヒートアイランド現象の緩和につながる方策として期待されている。このため、地方自治体の中では、条例で一定の条件下で屋上緑化を義務付けている場合もある。その他、近年、散水や打水の効果が見直され、地域住民が一斉に打水をする、といった方法や、路面電車の軌道敷に芝生を敷き詰めるといった様々な方策が試みられている。これらの中で屋上緑化は、上記したようにヒートアイランド現象の緩和に関する効果が期待され、また、地域住民に一斉行動を強いる散水や打水のような煩雑さはなく、街全体が自然回帰し、街の美化にも寄与できる有効な方策であるとして期待されている。屋上の構造を、浮床方式として外断熱に優れるものにすることについての提案もある(特許文献4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−59756号公報
【特許文献2】特開2003−252673号公報
【特許文献3】特許第3754693号公報
【特許文献4】特開昭57−197348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、屋上緑化は、植物を植える際に、種々のコストがかかることに加えて、緑化状態を快適に維持するためには、その後の管理が不可欠であり、永続的に、多大な努力を個々に強いるという問題がある。また、相当量の土壌を必要とし、これを屋上に配置することは建物への負担が大きく、その手間やコストもさることながら、建物の構造自体をその重量に耐え得る頑強なものにする必要がある。このため、屋上緑化は、全ての建物で採用できる簡便な方策とは言えず、ヒートアイランド現象の緩和に資する、より簡便な方策の開発が待たれている。
【0008】
従って、本発明の目的は、屋上緑化と同様に、ヒートアイランド現象の緩和に寄与でき、しかも、全ての建物で採用することが可能な、簡便な手段で、高い保水性が確保され、建物内を断熱でき、冷暖房にかかる費用をも低減できる屋上床構造を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、屋上を構成する防水性層の上に配置されて、屋上の保水性を維持する保水性の床構造であって、防水性層の上に、空気層と、基板層と、保水材層とが、この順で積層されてなり、かつ、保水材層が、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分とし、該2成分の比率が、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが18〜70質量部である多数の空隙を有してなる保水性パネルであることを特徴とする保水性の屋上床構造である。
【0010】
上記本発明の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
(1)さらに、上記基板層と、上記保水材層との間に、3〜5mmの空間層が設けられている上記の保水性の屋上床構造。
(2)上記基板層の表面に複数の細かい凹凸を形成して、前記保水材層との間に、断続的な空間層が設けられている上記いずれかの保水性の屋上床構造。
(3)上記保水性パネルの保水量が、0.35g/cm3以上である上記いずれかの保水性の屋上床構造。
(4)前記保水性パネルにおける単位面積当たりの絶乾質量が、25kg/m2以下である上記いずれかの保水性の屋上床構造。
【発明の効果】
【0011】
このように、本発明によれば、屋上緑化と同様に、ヒートアイランド現象の緩和に寄与でき、しかも、全ての建物で採用することが可能な、簡便な手段で、高い保水性が確保され、建物内を断熱でき、冷暖房にかかる費用をも低減できる屋上床構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の屋上床構造の好ましい一例を示す断面図である。
【図2】本発明の屋上床構造の好ましい一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の保水性の屋上床構造の好ましい形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、先に述べた従来技術の課題を解決すべく鋭意検討の結果、下記のようにして本発明に至った。大都市に集中しているビル群の屋上は、大気中に露出した状態の防水層を有しており、屋上緑化が施されていない場合は特に、屋上に降って屋上に溜まった大量の雨水は、雨樋などを介して、下水管や雨水管へと流れ込む。このため、先述した都市型集中豪雨などが起こった場合は、屋上からの雨水が、下水管や雨水管から溢れ出て大量に流れ出し、都市型水害が発生する一因となっている。このことに鑑み、本発明者らは、屋上の構造を、屋上に溜まった雨水を可能な限り多く保水し、維持できる形態にできれば、屋上から、下水管や雨水管に一気に流れ込む雨水の量を低減でき、都市型水害の発生を有効に防止できると考えた。また、屋上に保水層を形成できれば、水が蒸散する際に必要となる気化熱によって建物内外の温度変動を抑制でき、さらに、建物の断熱性をより高める構造にできれば、室内の温度調整に必要となっている冷暖房費用をより低減できると考えた。
【0014】
本発明者らは、上記の知見に鑑み、さらなる検討を重ねた結果、従来の透水性及び保水性を有する材料は、主に舗装道路に適用することを目的としたものであるため、材料自体に十分な強度が要求されるのと同時に、舗装道路の下部には、透水性及び保水性に優れる土壌が存在しており、その基本構成が異なるので、これらの点を考慮して最適な屋上構造を開発するべきであると結論した。先ず、建物の屋上構造は、道路と異なり、歩くことを前提としたものではない。このことから、屋上構造により好適な材料は、保水性を第一とし、ある程度の強度を満足でき、また、より軽量であることが望まれると考え、保水性材料等について検討を行った。その結果、保水性パネルとしては、曲げ強度として0.3MPa程度の強度があれば十分であり、そのためには、従来の舗装道路用材料のように骨材を含有することなく、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分として構成することができることを見出した。さらに、かかる保水性パネルを用い、屋上の床面を構成している防水性層との関係が特定の関係になるように配置すれば、屋上の保水性のみならず、建物に対する高い断熱効果が得られることを見出して、本発明に至った。以下、先ず、本発明で使用する保水性パネルについて説明する。
【0015】
<保水材層を構成する保水性パネル>
本発明に用いる保水性パネルは、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分として構成され、該2成分の比率は、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが18〜70質量部であって、多数の空隙を有してなるものである。より具体的には、その曲げ強度が0.3MPa程度のものでよい。本発明に用いる保水性パネルは、通常コンクリートに使用する密度2.5g/cm3程度の一般的な骨材は用いておらず、吸水率の高いALC破砕品を用いているため、より保水性に優れ、より軽量化された優れたものとなる。その空隙率は20%以上とすることが好ましく、より好ましくは、その空隙率が30%以上となるように、上記の通り2成分の組成比率を調整することで、高い保水性と、軽量化を実現した保水性パネルにできる。また、その保水量が0.35g/cm3以上で、吸い上げ高さが40%以上となるように調整するとよい。さらに、絶乾密度が1g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3以下となるようにするとよい。さらに単位面積当たりの絶乾質量が、25kg/m2以下であることが、屋上への重量負担を少なくするため好ましい。
【0016】
本発明において、保水性パネル(保水性ブロック)の、保水量、吸い上げ高さ、絶乾密度、曲げ強度及び凍結融解は、それぞれ下記の方法によって測定した値である。これらの値は、それぞれ下記のような意味をもっている。
(1)保水量
インターロッキングブロックの保水性試験方法(JIPEA−TM−7(社)インターロッキングブロック舗装技術協会)、試験体サイズ:227mm×112mm×厚さ60mm。ブロック製品特性の保水量に関連する特性で、0.35g/cm3以上であることが好ましい。
(2)吸い上げ高さ
インターロッキングブロックの吸水性試験方法(JIPEA−TM−8(社)インターロッキングブロック舗装技術協会)、試験体サイズ:227mm×112mm×厚さ60mm。ブロック製品特性の蒸発性能に関連する特性で、40%以上であることが好ましい。
(3)絶乾密度
インターロッキングブロックの保水性試験方法(JIPEA−TM−7(社)インターロッキングブロック舗装技術協会)において絶乾質量を供試体の体積で割った値、試験体サイズ:227mm×112mm×厚さ60mm。ブロック製品特性の絶乾密度に関連する特性で、1g/cm3以下、より好ましくは0.8g/cm3以下となるようにするとよい。
(4)曲げ強度(耐久性の指標)
インターロッキングブロックの曲げ強度試験方法(JIS A−5371プレキャスト無筋コンクリート製品 付属書2(規定)舗装・境界ブロック類推奨仕様2−3インターロッキングブロック)、試験体サイズ:227mm×112mm×厚さ60mm。0.30Mpa以上であれば軽歩行に耐える。
(5)凍結融解
サイクル条件:−8℃気中7時間→+20℃気中15時間→+20℃水中2時間、試験体サイズ:200mm×200mm×厚さ60mm。そして、100サイクル繰り返すことで異常ないか否かを目視で確認した。
【0017】
上記の特性を満たす保水性パネルを得るためには、大きさが、3〜10mmの軽量気泡コンクリートの粒状物を用いることが好ましい。そして、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分の組成比率を、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが18〜70質量部とする。より好ましくは、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが25〜35質量部となるようにするとよい。セメントが18質量部未満であると、曲げ強度が0.3MPaにならない場合があるばかりか搬送や施工の際割れが生じ好ましくない。一方、70質量部を超えると、保水性パネルの重量が増すばかりでなく、十分な空隙率が得られずその結果として保水性に劣るものになる。
なお、表乾状態とは、骨材の内部の間隙は水で満たされているが、表面に水が付着していない状態をいう。
本発明で使用するセメントは、普通ポルトランドセメントなどの、通常の水硬性セメントを用いればよい。そして、例えば、上記のような配合比率で、軽量気泡コンクリートの粒状物と、セメントとを混合し、500mm角の、厚みが30〜50mm程度のブロック状に形成し、これを保水性パネルとして使用する。上記に挙げたサイズは、あくまでも一例であって、製造上、搬送上、或いは施工上の理由で適宜に決定すればよい。
【0018】
保水性パネルの形成に用いる軽量気泡コンクリート(ALC)の粒状物としては、水硬性の原料に、水、気泡剤、及び、必要に応じて配合される他の原料を加えて多孔質化したものを、オートクレーブ養生によって硬化させ、その後に破砕してなる粒状物などを使用できる。ALCの具体例としては、例えば、JIS A 5416(オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート製品)に規定されているコンクリートが挙げられる。該コンクリートは、石灰質原料及び珪酸質原料を粉末状態として混合したものに、適量の水及び気泡剤ならびに混和材料を加えて多孔質化したものを、オートクレーブ養生[通常ゲージ圧約10kgf/cm2(温度約180℃)における飽和蒸気養生]によって硬化させて製造されるものである。その大きさは、3〜10mm程度の破砕品を使用する。
【0019】
<基板層>
本発明の屋上の床構造を構成する基板層について説明する。本発明では、屋上の保水性を維持する防水性層の上に、空気層を介して基板層を設け、さらに、その上に、上記で説明した保水性パネルを積層する、いわゆる浮き床構造とすることで、本発明の初期の目的を達成する。特に、本発明では、浮き床構造中の空気層の上に基板層を設けるが、基板層は機械的強度に優れるため、浮き床構造であっても荷重が加わることによる破損は小さく、しかも薄くても必要な強度を十分に得ることができる。この結果、軽量性にも優れ、しかも、軽歩行に耐えられる必要な強度を確保した床構造とすることができる。すなわち、前述したように、保水材層を構成する保水パネルは、骨材を使用しないことで、より高い保水性を実現可能にしているが、その一方で、軽量で、その強度は最低限に留めたものになる。そこで、本発明では、この保水材層の下側に積層させた基板層によって床の面強度を保つことを可能とし、これによって、高い保水性を示し、かつ、軽歩行に耐えられる屋上床構造の達成を可能としている。
【0020】
本発明の屋上の床構造を構成する基板層としては、具体的には、補強モルタル板、プレキャストコンクリート板、GRC(ガラス繊維補強セメント)、無機系複合建材、及び押出成型板等が挙げられ、無機系で軽量かつ高強度を有し、高耐水、腐食、磨耗、薬品、凍害にも強い性能を有するものが好ましく採用される。中でも強度と軽量性の点から、GRCまたは補強モルタル板を用いることがより好ましく、経済性、生産性の観点から補強モルタル板を用いることが最も好ましい。
上記補強モルタル板は、メッシュ筋にモルタルを含浸させたもので、モルタルは、セメント、砂を含み、好ましくは細かなクラックに対応するために1質量%以下のガラス繊維を含有させ、加圧プレス法にて成形したものである。
【0021】
<床構造>
本発明は、屋上の保水性を維持する保水性の床構造に関し、従来の建物の屋上床構造においても設けられている屋上の保水性を維持する防水性層の上に、空気層と、基板層と、保水材層とが、この順で積層されてなるが、この点について図を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1及び図2に好ましい一例を示したが、防水性層の上に空気層を形成する方法としては、例えば、図1及び図2に示したような構造の支柱を有する取付金具を用いることで容易に形成することができる。すなわち、図1及び図2に示したような構造の取付金具を用いることで、前記したような基板層と、保水材層(保水性パネル)とを積層した状態で一体化し、このようなものを複数格子状に配置させることで、基板層と保水性パネルとからなる積層体を広い面積にわたって配置させて、屋上の床構造を形成することができる。なお、上記した取付金具については、例えば、屋上外断熱構造に関する特開昭57−197348号公報を参照することで容易に得ることができる。
【0023】
この際、基板層と保水材層(保水性パネル)とは、互いに密着した状態で積層させてもよいが、本発明者らの検討によれば、図1のように両者の間に実質的に3〜5mm程度の空間層(隙間)を設けた状態で積層することが、より好ましい。このようにすれば、水の表面張力によって基板層と保水性パネルとの間に水が保持できるという効果を有する。ここで、「実質的に空間層(隙間)を設ける」とは、例えば、下記のような形態とすることを意図している。基板層の表面を複数の細かい凹凸加工にして、保水材層と当接したときに、部分的に3〜5mm程度の空間層を設けることや、基板層と保水材層との間に、ゴムや接着剤を部分的に配置し、上下面に隙間を設けて空間層を設ける形態を含む。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
(実施例1)
表1−1に示した配合で、保水性パネル1〜6を作製した。具体的には、普通ポルトランドセメントをバインダーとして用い、粒度が3〜10mmのALC破砕品と、水とを混合し、混合物を型に入れて脱型し、セメントの水和反応によって固化させることで形成した。水の配合量は、セメントの水和反応及び即時脱型成型に必要な水量とした。上記のようにして作製した保水性パネル1〜6についての空隙率、保水量、吸い上げ高さ、絶乾密度、曲げ強度、及び凍結融解を測定し、表1−2に示した。なお、空隙量は、ALC破砕品の単位量を604kg/m3とし、設計した空隙量の値である。
【0025】

【0026】

【0027】
上記のような配合比率からなる保水性パネル(保水性ブロック)の厚みの違いによる単位面積あたりの保水量、ブロック絶乾質量等について試験し、結果を表1−3に示した。ブロックの大きさは500mm角とし、厚みが、それぞれ30mm、35mm及び40mmである3種類のブロックを作製した。
【0028】
保水性パネル(保水性ブロック)を基板層と積層し、図1及び図2のように施工して屋上に配置した場合の、屋内の温度低減性能及び蒸発性能についての試験を行った。さらに、曲げ強度、及び設定した厚さに応じた単位面積あたりのブロック絶乾質量(kg/m2)と単位面積あたりのブロック保水量(L/m2)の選定条件適合により総合評価をし、その結果を表1−3に示した。その結果、本発明で規定する配合比率を満足する保水性パネル3〜6では、いずれも良好な結果を得たが、配合比率が外れる保水性パネル1、2では、保水量が十分と言えず、屋内外の温度低減性能に劣ることがわかった。
【0029】
上記において使用した基板層は、補強のための山の高さが6mmの波型に加工した鉄線を27mmの方眼に組んだメッシュ筋を用い、これにセメント、砂、およびガラス繊維を0.4%混入したモルタルとを組合せ、加圧プレス法にて縦横500mm、厚さ21mmのサイズに成形したものを用いた。
【0030】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上を構成する防水性層の上に配置されて、屋上の保水性を維持する保水性の床構造であって、防水性層の上に、空気層と、基板層と、保水材層とが、この順で積層されてなり、かつ、保水材層が、軽量気泡コンクリートの粒状物とセメントの2成分を主成分とし、該2成分の比率が、軽量気泡コンクリートの粒状物(表乾状態)100質量部に対して、セメントが18〜70質量部である多数の空隙を有してなる保水性パネルであることを特徴とする保水性の屋上床構造。
【請求項2】
さらに、前記基板層と、前記保水材層との間に、3〜5mmの空間層が設けられている請求項1に記載の保水性の屋上床構造。
【請求項3】
前記基板層の表面に複数の細かい凹凸を形成して、前記保水材層との間に、断続的な空間層が設けられている請求項1又は2に記載の保水性の屋上床構造。
【請求項4】
前記保水性パネルの保水量が、0.35g/cm3以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の保水性の屋上床構造。
【請求項5】
前記保水性パネルにおける単位面積当たりの絶乾質量が、25kg/m2以下である請求項1〜4のいずれか1項に記載の保水性の屋上床構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−163092(P2011−163092A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30433(P2010−30433)
【出願日】平成22年2月15日(2010.2.15)
【出願人】(599093524)旭ビルウォール株式会社 (19)
【出願人】(000230836)日本興業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】