説明

保清装置

【課題】使用者をベットの上から移送させることなく簡単に保清が行える保清装置を提供する。
【解決手段】横臥状態の使用者Kの首から下の肢体部を包囲する防水性温浴袋体2を備え、微細なミストを加熱状態で温浴袋体2に充満させる加熱ミスト供給手段8を具備する。温浴袋体の内に充満したミストによって使用者の肢体部に付いた汚れを落として清潔に保つことができる。また、少量の水にて使用者の体を暖めることができ、入浴した時と同様に使用者の血液の循環が良くなり新陳代謝を促進させ、身体機能の活性化を図れると共に湯上がりの爽快感を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保清装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、身体が不自由な人をベットから浴槽に移して、皮膚の垢をお湯で洗い流して保清する入浴装置が使用されていた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−265574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の入浴装置では、寝たきりの老人や介護が必要な人等をベットから浴槽に移送するのに通常2人以上の介護者が必要となり、多くの労力を必要としていた。また、浴槽にお湯を張るには大量の温水が必要となると共に水しぶきが周囲に飛散するという問題があった。しかも、浴槽内のお湯の温度を保持するのが難しく、在宅での訪問介護や訪問診療、病院の病室での保清入浴が制限されていた。
【0005】
そこで、本発明は、使用者をベットの上から移送させることなく簡単に保清が行える保清装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る保清装置は、横臥状態の使用者の首から下の肢体部を包囲する防水性温浴袋体を備え、微細なミストを加熱状態で上記温浴袋体に充満させる加熱ミスト供給手段を具備するものである。
【0007】
また、横臥状態の使用者の首から下の肢体部を包囲する防水性温浴袋体を備え、微細なミストを生成するミスト発生器と、上記ミストを加熱しつつ上記温浴袋体内に送り込む加熱送風機と、該加熱送風機と上記温浴袋体とを連通連結する可撓性ホースと、を有するものである。
また、上記温浴袋体は、長手方向略全長にわたって開閉自在のファスナー部を有するものである。
【0008】
また、上記ミスト発生器と上記加熱送風機は、一般家庭用電源を動力源として使用可能とすると共に、携帯用ケーシングの内部に収納した持ち運びユニットとして構成したものである。
また、上記温浴袋体は、上記可撓性ホースに交換自在に取付けられ、同一の使用者のみに使用して使い捨てる衛生用品としたものである。
【0009】
また、上記温浴袋体は、使用者が普段使用しているベットの上で用いられるものである。
また、ベット上の使用者が介護者によって左向き又は右向きに横臥している状態に於て、上記温浴袋体が、その内面と使用者との間にミスト流入空間を形成するような大きさに設定されているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の保清装置によれば、温浴袋体の内に充満したミストによって使用者の肢体部に付いた汚れを落として清潔に保つことができる。また、少量の水にて使用者の体を暖めることができ、入浴した時と同様に使用者の血液の循環が良くなり新陳代謝を促進させ、身体機能の活性化を図れると共に湯上がりの爽快感を得ることができる。また、温浴袋体は、外部にミストを飛散させないように使用者の肢体部を包囲するため、ベット上で使用しても周囲を濡らすことはなく、従来2人以上の介護者で行っていた移送作業が必要なくなり、1人の介護者で在宅での訪問介護を行なうことができる。これにより介護事業所の労力を大幅に軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る保清装置の実施の一形態を示した斜視図である。
【図2】保清装置の一例を示した要部断面平面図である。
【図3】保清装置の使用状態を示した要部断面図である。
【図4】保清装置の使用状態を示した要部断面図である。
【図5】保清装置の他の実施形態を示した斜視図である。
【図6】保清装置の他の例を示した要部断面図である。
【図7】保清装置の他の例を示した要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
図1は、本発明の保清装置の実施の一形態を示したものであり、横臥状態の使用者Kの首から下の肢体部Tを包囲する防水性温浴袋体2を備え、微細なミストMを加熱状態で温浴袋体2に充満させる加熱ミスト供給手段8を具備している。加熱ミスト供給手段8は、微細なミストMを生成するミスト発生器3と、ミストMを加熱しつつ温浴袋体2内に送り込む加熱送風機4と、加熱送風機4と温浴袋体2とを連通連結する可撓性ホース13と、を有している。
【0013】
温浴袋体2は、使用者Kの頭部Hを外部に露出させた状態で肢体部Tを被覆する寝袋状に形成されており、長手方向の略全長にわたって開閉自在のファスナー部7を有し、使用者KがベットBの上で横臥したまま装着させられるように構成されている。温浴袋体2は、防水性の合成樹脂、ゴム等の材料から成り、使用者Kの姿勢に合わせて変形自在である。また、温浴袋体2は、内部のミストMを外部に漏出しないように構成され、使用者Kが普段使用しているベットBを濡らすことなく使用できるものである。ファスナー部7は、ウェットスーツ等に使用されるものと同等の耐水性を有するものが望ましい。なお、温浴袋体2には、排水孔5が設けられており、ミストMの水が滞留しないように、外部の排水受け17に排出するように構成している。
温浴袋体2は、可撓性ホース13に交換自在として取付けられ、一人の使用者Kが使用した後、同一の使用者Kのみに使用して使い捨てる衛生用品とするのが望ましい。なお、温浴袋体2は、同一の使用者Kへの使用であれば、1回のみの使用で使い捨てられるものに限定されず、使用後に洗浄して複数回にわたって使用するもよい。
【0014】
加熱ミスト供給手段8に於て、ミスト発生器3と加熱送風機4は、一般家庭用電源を動力源として使用可能であり、かつ、携帯用ケーシング12の内部に収納され、持ち運びユニット10として構成されている。言い換えると、持ち運びユニット10は、携帯用ケーシング12内に、タンクに貯えた水から微細なミストMを生成するミスト発生器3と、電熱器とファンを有する加熱送風機4と、熱交換器6と、を内蔵し、温浴袋体2に送り込むミストMの質量と温浴袋体2内の温度を適宜調整するための操作部18と、操作部18の操作によりミスト発生器3と加熱送風機4の出力調整を行なう制御部を備えている。携帯用ケーシング12は、温浴袋体2を取外した可撓性ホース13を収納可能であり、持ち手11を把持して一人で簡単に携帯して持ち運べるように構成されている。
加熱ミスト供給手段8は、操作部18により温浴袋体2内を38℃〜42℃に加熱(保温)できるものが好ましい。また、加熱ミスト供給手段8は、タイマーにより作動時間を設定することを可能とし、10分〜20分間連続してミストMを吐出した後、自動的に停止するように構成されている。
【0015】
図2〜図4に示すように、温浴袋体2は、輪郭を形成する外皮部20と、外皮部20の内面側に流路23を区画形成する内皮部21と、を有する2層構造としている。内皮部21は、複数の開口部21a…を有するメッシュ状乃至パンチング状に形成されている。温浴袋体2は、ベットB上に使用者Kが上向きに横臥している状態に於て、その内面2aと使用者Kとの間にミスト流入空間9を形成している。ミスト流入空間9は、横断面三日月形状の流路23にU字状に取り囲まれている。ミスト流入空間9と流路23は、内皮部21の開口部21a…を介して連通している。
加熱ミスト供給手段8は、温浴袋体2内の空気を換気しつつ熱循環して温度を保持している。加熱ミスト供給手段8は、微細なミストMを温風に乗せて温浴袋体2に流し込む給気機能と、温浴袋体2内の空気を還流する排気機能を有している。可撓性ホース13は、加熱送風機4の温風によって押し流されてきたミストMを温浴袋体2内に吐出する吹出口13Aと、温浴袋体2内の雰囲気を吸い込む吸込口13Bとを有している。吹出口13Aは、温浴袋体2の流路23に連通連結し、かつ、吸込口13Bは、温浴袋体2のミスト流入空間9に連通連結している。
【0016】
図3に於て、温浴袋体2は、加熱ミスト供給手段8から送り込まれる温風の空気圧で横断面略楕円形の風船状に膨らんでいる。温浴袋体2は、吹出口13Aに連通する流路23の空気圧が、吸込口13Bに連通するミスト流入空間9の空気圧よりも僅かに高圧となっている。従って、流路23内からミスト流入空間9に空気が噴き出すと共に、ミストMがミスト流入空間9の使用者Kに向けて噴射するように構成されている。また、ミスト流入空間9を取り囲む流路23が空気圧にて膨らむことで、温浴袋体2は安定して形状を保持している。
図4に示すように、ベットB上の使用者Kが介護者Cによって左向き又は右向きに横臥している状態に於て、温浴袋体2が、その内面2aと使用者Kとの間にミスト流入空間9を形成するような大きさに設定されている。
【0017】
上述した本発明の保清装置の使用方法(作用)について説明する。
図1に示すように、温浴袋体2を、使用者Kの肢体部Tに装着し、可撓性ホース13を連結する。使用者Kが、身体の不自由な者、例えば、寝たきりの老人や介護が必要な要介護者である場合には、使用者の家族、介護者、看護師、医師等が、ベットB上に横臥した使用者Kに温浴袋体2を装着させる。持ち運びユニット10から引き出されたコードを一般家庭用電源のコンセントに接続し、加熱ミスト供給手段8を作動させ、温浴袋体2を膨らませる。
【0018】
図2に示すように、加熱ミスト供給手段8は、微細なミストMを加熱状態で温浴袋体2に充満させ、使用者Kの肢体部TをミストMで包囲して皮膚に付いた垢や汚れを落とすと共に、全身を温めて血行を良くし、発汗作用を促して新陳代謝を促進させる。温浴袋体2は、ミスト流入空間9をU字状に取り囲む流路23から開口部21a…を通してミストMを噴き出すことによって、使用者Kの肢体部Tの周囲の温度を一定に調整し、全身をムラなく温める。温浴袋体2に包囲された使用者Kには、水圧がかからないため、心肺や肌への負担が少ない。また、従来のシャワー等に比べて水しぶき等の発生の虞れがなく、浴槽にお湯を張るための大量の温水も必要としない。
【0019】
図3に於て、使用者Kが温浴袋体2に包囲されて上向きに横臥している状態を示している。温浴袋体2は、使用者Kが肢体部Tの背面を除いた部位にミストMを浴びられるように、ミスト流入空間9を被覆状に形成する。
また、図4に於て、使用者Kが温浴袋体2に包囲され、介護者Cの介助を受けて左向き(又は右向き)に横臥している状態を示している。温浴袋体2は、使用者Kの肢体部Tの一側面を除いた部位をミスト流入空間9にて被覆してミストMを浴びせる。この際、温浴袋体2の流路23は、遮断されることなく流通し、ミスト流入空間9全体にもれなくミストMを噴出する。
このように、ミストMによる温浴を10分〜20分連続して行なう間に、使用者Kの姿勢を変位することで、ミストMが当たらない部位を無くし、肢体部T全体を清潔にすると共にムラなく温める。
【0020】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。
図5〜図7に示すように、他の実施形態の保清装置は、可撓性ホース13が、複数の吹出口13A…と複数の吸込口13B…を有している。加熱ミスト供給手段8は、温浴袋体2の上下左右の各部位に連通連結している。加熱ミスト供給手段8は、複数の吹出口13A…からミスト流入空間9に加熱したミストMを吐出し、複数の吸込口13B…からミスト流入空間9内の空気を可撓性ホース13に還流している。吹出口13A…が、温浴袋体2の上下左右の各部位に分配されているため、ミスト流入空間9にもれなくミストMを噴き出して、温浴袋体2内の温度を一定に調整し、使用者Kの肢体部Tの全体を温める。また、図7に示すように、使用者Kが介護者Cの介助を受けて左向き(又は右向き)に横臥している状態に於ても、吸込口13B(吹出口13A)が遮断されることなく、空気及びミストMの流通を妨げないように構成されている。その他の構成は、上述の実施の形態と同様であるため説明を省略する。
【0021】
以上のように、本発明は、横臥状態の使用者Kの首から下の肢体部Tを包囲する防水性温浴袋体2を備え、微細なミストMを加熱状態で温浴袋体2に充満させる加熱ミスト供給手段8を具備するので、温浴袋体2の内に充満したミストMによって使用者Kの肢体部Tに付いた汚れを落として清潔に保つことができる。また、少量の水にて使用者Kの体を暖めることができ、入浴した時と同様に使用者Kの血液の循環が良くなり新陳代謝を促進させ、身体機能の活性化を図れると共に湯上がりの爽快感を得ることができる。また、温浴袋体2は、外部にミストMを飛散させないように使用者Kの肢体部Tを包囲するため、ベットB上で使用しても周囲を濡らすことはなく、従来2人以上の介護者で行っていた移送作業が必要なくなり、1人の介護者Cで在宅での訪問介護を行なうことができる。これにより介護事業所の労力を大幅に軽減することができる。
【0022】
また、横臥状態の使用者Kの首から下の肢体部Tを包囲する防水性温浴袋体2を備え、微細なミストMを生成するミスト発生器3と、ミストMを加熱しつつ温浴袋体2内に送り込む加熱送風機4と、加熱送風機4と温浴袋体2とを連通連結する可撓性ホース13と、を有するので、温浴袋体2の内に充満したミストMによって使用者Kの肢体部Tに付いた汚れを落として清潔に保つことができる。また、少量の水にて使用者Kの体を暖めることができ、入浴した時と同様に使用者Kの血液の循環が良くなり新陳代謝を促進させ、身体機能の活性化を図れると共に湯上がりの爽快感を得ることができる。また、温浴袋体2は、外部にミストMを飛散させないように使用者Kの肢体部Tを包囲するため、ベットB上で使用しても周囲を濡らすことはなく、従来2人以上の介護者で行っていた移送作業が必要なくなり、1人の介護者Cで在宅での訪問介護を行なうことができる。これにより介護事業所の労力を大幅に軽減することができる。
【0023】
また、温浴袋体2は、長手方向略全長にわたって開閉自在のファスナー部7を有するので、ベットBの上に横臥したままの使用者Kに温浴袋体2を容易に装着できる。
【0024】
また、ミスト発生器3と加熱送風機4は、一般家庭用電源を動力源として使用可能とすると共に、携帯用ケーシング12の内部に収納した持ち運びユニット10として構成したので、一人で簡単に携帯して持ち運ぶことが可能であり、在宅での訪問介護や病院の個室等に持ち込んで使用できる。
【0025】
また、温浴袋体2は、可撓性ホース13に交換自在に取付けられ、同一の使用者Kのみに使用して使い捨てる衛生用品としたので、温浴袋体2を常時清潔に保持できる。
【0026】
また、温浴袋体2は、使用者Kが普段使用しているベットBの上で用いられるので、ベットから使用者Kを移送させることなく1人の介護者Cで介助できる。
【0027】
また、ベットB上の使用者Kが介護者Cによって左向き又は右向きに横臥している状態に於て、温浴袋体2が、その内面2aと使用者Kとの間にミスト流入空間9を形成するような大きさに設定されているので、使用者Kの姿勢を変位することで、ミストMが当たらない部位を無くし、使用者Kの肢体部T全体を清潔に保つことができると共に、ムラなく温めることができる。
【符号の説明】
【0028】
2 温浴袋体
2a 内面
3 ミスト発生器
4 加熱送風機
7 ファスナー部
8 加熱ミスト供給手段
9 ミスト流入空間
10 持ち運びユニット
12 携帯用ケーシング
13 可撓性ホース
K 使用者
T 肢体部
M ミスト
B ベット
C 介護者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横臥状態の使用者(K)の首から下の肢体部(T)を包囲する防水性温浴袋体(2)を備え、微細なミスト(M)を加熱状態で上記温浴袋体(2)に充満させる加熱ミスト供給手段(8)を具備することを特徴とする保清装置。
【請求項2】
横臥状態の使用者(K)の首から下の肢体部(T)を包囲する防水性温浴袋体(2)を備え、微細なミスト(M)を生成するミスト発生器(3)と、上記ミスト(M)を加熱しつつ上記温浴袋体(2)内に送り込む加熱送風機(4)と、該加熱送風機(4)と上記温浴袋体(2)とを連通連結する可撓性ホース(13)と、を有することを特徴とする保清装置。
【請求項3】
上記温浴袋体(2)は、長手方向略全長にわたって開閉自在のファスナー部(7)を有する請求項1又は2記載の保清装置。
【請求項4】
上記ミスト発生器(3)と上記加熱送風機(4)は、一般家庭用電源を動力源として使用可能とすると共に、携帯用ケーシング(12)の内部に収納した持ち運びユニット(10)として構成した請求項2又は3記載の保清装置。
【請求項5】
上記温浴袋体(2)は、上記可撓性ホース(13)に交換自在に取付けられ、同一の使用者(K)のみに使用して使い捨てる衛生用品とした請求項1,2,3又は4記載の保清装置。
【請求項6】
上記温浴袋体(2)は、使用者(K)が普段使用しているベット(B)の上で用いられる請求項1,2,3,4又は5記載の保清装置。
【請求項7】
ベット(B)上の使用者(K)が介護者(C)によって左向き又は右向きに横臥している状態に於て、上記温浴袋体(2)が、その内面(2a)と使用者(K)との間にミスト流入空間(9)を形成するような大きさに設定されている請求項1,2,3,4,5又は6記載の保清装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−224231(P2011−224231A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98501(P2010−98501)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(510113494)株式会社ライム (1)
【Fターム(参考)】