説明

保温材及びその蓄熱方法

【課題】マイクロ波で容易に蓄熱可能、例えば電子レンジで蓄熱させることが可能であり、再利用可能な保温材を提供する。
【解決手段】有機潜熱蓄熱材を、マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤で固定化したものであり、有機潜熱蓄熱材が、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上の有機潜熱蓄熱材であり、マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤が、ポリエーテルポリオールと、イソシアネート基を有する化合物とを反応させることにより得られるものであり、有機潜熱蓄熱材、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、ポリエーテルポリオール、イソシアネート基を有する化合物を混合し、成分と成分を反応させて得られることを特徴とするマイクロ波で蓄熱可能な保温材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目的とする温度を長時間保持できる保温材およびその蓄熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昔から、冬の暖房用具としてカイロや湯たんぽが広く用いられており、保温材として定着している。
カイロは、鉄粉の酸化反応による発熱を利用したもので、携帯用の保温材として広く用いられている。
また、湯たんぽは、水の顕熱を利用したもので、再利用可能な保温材として、古くから用いられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、カイロは、温度制御が困難であり、再利用できないという問題点もある。また、湯たんぽは、再利用可能であるが、再利用のためにはお湯を沸かす手間などがかかり、さらに手間がかかるわりには、十分な保温性が得られないなどの問題があった。
【0004】
このような問題に対して、蓄熱材を含有する保温材が検討されている。このような保温材は、蓄熱材の種類により、温度制御が可能であり、かつ、再利用可能なものとして期待されている。
【0005】
蓄熱材を含有する保温材として例えば、蓄熱材として結晶水を含む無機水和物を用い、該無機水和物をゲル状にし、容器またはフィルムに注入した保温材が挙げられる。
このような保温材は、電子レンジのマイクロ波を照射することにより、蓄熱材中の水和物、つまり、水分子が振動、発熱し、該蓄熱材が熱を蓄えることにより、十分な保温効果を得るものである。したがって、電子レンジ等を用いて、所望の温度に簡便に蓄熱することができる。
しかしながら、このような保温材は、蓄熱材中に水和物(水)が含まれるため、電子レンジのマイクロ波を照射すると、場合によっては、水が揮発し、容器またはフィルムが破裂する危険性が高い。また、水の揮発等が起こると蓄熱材自体の物性が変化し、長期的に再利用することは困難であった。
【0006】
このような問題に対し、水和物(水)を含有しない、熱的・化学的に安定な有機系潜熱蓄熱材を容器に注入した保温材も提案されている。
このような有機系潜熱蓄熱材としては、パラフィンやオレフィンなどが多く用られているが、これらは、電子レンジのマイクロ波で発熱しないため、お湯に浸したり、別の熱源を利用する必要があり、蓄熱させるためにかなりのエネルギー・時間を要するといった問題があった。
【0007】
このような問題に対し、特許文献1では、エチレン−オレフィン共重合体と結晶性有機化合物(パラフィン)の溶融混合物中に結晶水を含む水和物を含ませた、高周波加熱可能な蓄熱体が開示されている。
しかし、この蓄熱体を高周波により蓄熱させるためには、多量の結晶水を含む水和物を必要とする。多量の結晶水を含む水和物を多くすると、結晶性有機化合物(パラフィン)の含有量が相対的に減少し、保温性・蓄熱性に劣るものとなる。また、水の揮発等が起こりやすくなり、蓄熱体が破裂したり、蓄熱材自体の物性が変化し、長期的に再利用することは困難な場合がある。
【0008】
【特許文献1】特許第2548850号
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記課題を解決するために、鋭意検討をした結果、有機潜熱蓄熱材(a)を、マイクロ波により振動、加熱するセグメントを含有する結合剤で固定化した保温材が、マイクロ波で容易に蓄熱可能、例えば一般家庭にある電子レンジで蓄熱させることが可能であり、マイクロ波の照射で長時間保温性を確保することができ、さらには、マイクロ波の照射に伴う保温材自体の体積膨張による亀裂や劣化が抑制できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下の特徴を有するものである。
1.有機潜熱蓄熱材(a)を、マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤(b)で固定化したものであり、
有機潜熱蓄熱材(a)が、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上の有機潜熱蓄熱材であり、
マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤(b)が、ポリエーテルポリオール(b−1)と、イソシアネート基を有する化合物(b−2)とを反応させることにより得られるものであり、
有機潜熱蓄熱材(a)、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、ポリエーテルポリオール(b−1)、イソシアネート基を有する化合物(b−2)を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて得られることを特徴とするマイクロ波で蓄熱可能な保温材。
2.有機潜熱蓄熱材(a)、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、ポリエーテルポリオール(b−1)、イソシアネート基を有する化合物(b−2)を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分中に(a)成分をコロイド状に分散させ、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて得られることを特徴とする1.に記載のマイクロ波で蓄熱可能な保温材。
3.有機潜熱蓄熱材(a)の含有量が40重量%以上であることを特徴とする1.また2.に記載の保温材。
4.1.から3.のいずれかに記載の保温材に、マイクロ波を照射することを特徴とする保温材の蓄熱方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の保温材は、マイクロ波で容易に蓄熱可能であり、例えば一般家庭にある電子レンジで容易に蓄熱させることが可能である。また、マイクロ波の照射で、長時間保温性を確保することができ、かつ、マイクロ波の照射に伴う保温材自体の体積膨張による亀裂や劣化が抑制できるため、耐久性に優れており、また、長期に亘り再利用することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を、その実施するための最良の形態とともに詳細に説明する。
【0013】
本発明の保温材は、有機潜熱蓄熱材(以下、「(a)成分」ともいう。)を、マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合材(以下、「(b)成分」ともいう。)で固定化したものである。
本発明の保温材は、水または水を含む化合物(水和物)を含有しないため、マイクロ波により、保温材が破裂する危険性もなく、また、保温材として、長期にわたって再利用することが可能である。さらに、マイクロ波を過度に照射したとしても、保温材の破裂等を抑えることができる。
また、本発明の保温材は、保温材を形成する結合材自体が、マイクロ波により振動・発熱するものであるため、保温材中に(a)成分を多く含有することが可能である。よって、蓄熱性・保温性に優れており、長時間保温機能を持続させることもできる。
【0014】
本発明で用いる(a)成分としては、例えば、脂肪族炭化水素、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、長鎖脂肪酸エステル、脂肪酸トリグリセリド等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0015】
このような(a)成分は、沸点が高く揮発し難く、保温材形成時における体積変化(肉痩せ)がほとんど無く、また長期に亘り蓄熱性能が持続するため、好ましい。さらに、有機潜熱蓄熱材は、用途に応じた相変化温度の設定が容易であり、例えば相変化温度の異なる2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合することで、容易に相変化温度の設定が可能となる。
【0016】
脂肪族炭化水素としては、例えば、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素を用いることができ、具体的には、ペンタデカン(融点6℃)、n−テトラデカン(融点8℃)、n−ヘキサデカン(融点17℃)、n−ヘプタデカン(融点22℃)、n−オクタデカン(融点28℃)、n−ノナデカン(融点32℃)、イコサン(融点36℃)、ドコサン(融点44℃)、およびこれらの混合物で構成されるn−パラフィンやパラフィンワックス等が挙げられる。
【0017】
長鎖アルコールとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖アルコールを用いることができ、具体的には、カプリルアルコール(融点7℃)、ラウリルアルコール(融点24℃)、ミリスチルアルコール(融点38℃)、ステアリルアルコール(融点58℃)等が挙げられる。
【0018】
長鎖脂肪酸としては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸を用いることができ、具体的には、オクタン酸(融点17℃)、デカン酸(融点32℃)、ドデカン酸(融点44℃)、テトラデカン酸(融点50℃)、ヘキサデカン酸(融点63℃)、オクタデカン酸(融点70℃)等の脂肪酸等が挙げられる。
【0019】
長鎖脂肪酸エステルとしては、例えば、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いることができ、具体的には、ラウリン酸メチル(融点5℃)、ミリスチン酸メチル(融点19℃)、パルミチン酸メチル(融点30℃)、ステアリン酸メチル(融点38℃)、ステアリン酸ブチル(融点25℃)、アラキジン酸メチル(融点45℃)等が挙げられる。
【0020】
脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品である中鎖脂肪酸トリグリセリド、長鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0021】
本発明では蓄熱材として、特に、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、さらには、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましい。中でも、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステル、好ましくは、炭素数15〜22の長鎖脂肪酸エステルを使用することが好ましく、このような長鎖脂肪酸エステルは、潜熱量が高く、実用温度領域に相変化温度(融点)を有するため、様々な用途に使用しやすい。
【0022】
また、2種以上の有機潜熱蓄熱材を混合して使用する場合は、相溶化剤(以下、「(c)成分」ともいう。)を用いることが好ましい。(c)成分を用いることにより、有機潜熱蓄熱材同士の相溶性を向上させることができる。
(c)成分としては、例えば、脂肪酸トリグリセリド、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種または2種以上を混合し用いることができる。
【0023】
脂肪酸トリグリセリドは、上述したように、有機潜熱蓄熱材としても用いられる物質である。このような脂肪酸トリグリセリドは、特に有機潜熱蓄熱材同士の相溶性を、より向上させることができるとともに、優れた蓄熱性を有するため好ましい。脂肪酸トリグリセリドとしては、例えば、ヤシ油、パーム核油等の植物油や、その精製加工品であるカプリル酸トリグリセリド、パルミチン酸トリグリセリド、ステアリン酸トリグリセリド等の脂肪酸トリグリセリドが挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0024】
親水親油バランス(HLB)が1以上10未満(好ましくは1以上5以下)の非イオン性界面活性剤としては、例えば、
ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリステアレート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンセスキオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0025】
(c)成分と(a)成分の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、相溶化剤0.1重量部から20重量部(好ましくは0.1重量部から10重量部)程度とすればよい。
【0026】
さらに本発明では、(a)成分と、有機処理された層状の粘土鉱物(以下、「(d)成分」ともいう。)を混合することもできる。(d)成分と(a)成分を混合することにより、(d)成分の層間に、(a)成分が入り込む。(d)成分は、有機処理されたものであるため、(a)成分が(d)成分の層間に入り込みやすく、また(a)成分が(d)成分の層間に保持されやすい構造となっている。
このような(d)成分と(a)成分を混合することにより、結果として、(a)成分の粘度を上昇させ、保温材内に(a)成分を担持し、より保持し続けることができる。そのため、(a)成分が保温材外部へ漏れ出すのを防ぎ、蓄熱性に優れ、加工性、施工性に優れた保温材を得ることができる。
さらに(d)成分は、有機潜熱蓄熱材とほとんど反応することがなく、有機潜熱蓄熱材の融点やその他の各種物性に影響を与えないため、蓄熱材としての性能を効率よく発揮することができ、相変化温度(融点)の設定が容易であるため、好ましい。
【0027】
(d)成分の底面間隔は、13.0〜30.0Å(好ましくは15.0〜26.0Å)程度であることが好ましい。このような範囲であることにより、(a)成分が、(d)成分の層間により入り込みやい。なお、底面間隔はX線回折パターンにおける(001)反射から算出される値である。
【0028】
(a)成分と(d)成分混合時の粘度は、0.5〜20.0Pa・s程度とすればよい。なお、粘度は、B型回転粘度計を用い、温度23℃、相対湿度50%RHで測定した値である。
また、(a)成分と(d)成分混合時のTI値は、4.0〜9.0程度とすればよい。なお、TI値は、B型回転粘度計を用い、下記式1により求められる値である。
TI値=η1/η2 (式1)
(但し、η1:2rpmにおける粘度(Pa・s:2回転目の指針値)、η2:20rpmにおける粘度(Pa・s:4回転目の指針値))
【0029】
このような粘度、TI値とすることによって、保温材の製造時においては保温材内に(a)成分が安定して担持されやすく、かつ、保温材の製造後においては保温材内に(a)成分が長期に亘って保持されやすい。そのため、(a)成分が保温材外部へ漏れ出すのを防ぎ、より蓄熱性に優れ、より加工性、施工性に優れた保温材を得ることができる。
【0030】
(d)成分としては、有機処理された層状粘土鉱物であれば特に限定されない。
層状粘土鉱物としては、例えば、スメクタイト、バーミキュライト、カオリナイト、アロフェン、雲母、タルク、ハロイサイト、セピオライト等が挙げられる。また、膨潤性フッ素雲母、膨潤性合成マイカ等も利用できる。
有機処理としては、例えば、層状粘土鉱物の層間に存在する陽イオンを長鎖アルキルアンモニウムイオン等でイオン交換(インターカレート)すること等が挙げられる。
本発明では、特に、スメクタイト、バーミキュライトが有機処理されやすい点から、好適に用いられる。さらに、スメクタイトの中でも、特に、モンモリロナイトが好適に用いられ、本発明では、特に、有機処理されたモンモリロナイトを好適に用いることができる。
【0031】
具体的に、有機処理されたモンモリロナイトとしては、
ホージュン社製のエスベン、エスベン C、エスベン E、エスベン W、エスベン P、エスベン WX、エスベン NX、エスベン NZ、エスベン N-400、オルガナイト、オルガナイトーD、オルガナイトーT(商品名)
ズードケミー触媒社製のTIXOGEL MP、TIXOGEL VP、TIXOGEL VP、TIXOGEL MP、TIXOGEL EZ 100、MP 100、TIXOGEL UN、TIXOGEL DS、TIXOGEL VP−A、TIXOGEL VZ、TIXOGEL PE、TIXOGEL MP 250、TIXOGEL MPZ(商品名)
エレメンティスジャパン社製のBENTONE 34、38、52、500、1000、128、27、SD−1、SD−3(商品名)
等が挙げられる。
【0032】
(a)成分と(d)成分の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、(d)成分を0.5重量部から50重量部(好ましくは1重量部から30重量部、より好ましくは3重量部から20重量部)程度とすればよい。0.5重量部より少ない場合は、(a)成分が保温材内から漏れやすくなる可能性がある。50重量部より多い場合は、(a)成分の粘度が高くなり過ぎ、保温材への担持・保持工程が困難となる場合がある。
【0033】
さらに、本発明では、(a)成分には、熱伝導性物質以下、「(e)成分」ともいう。)を混合することもできる。(e)成分を混合することにより、熱の移動をスムーズにし、保温材の熱効率性を向上させ、より優れた蓄熱性能を得ることができる。
【0034】
(e)成分としては、例えば、銅、鉄、亜鉛、ベリリウム、マグネシウム、コバルト、ニッケル、チタン、ジルコニウム、モブリデン、タングステン、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ等の金属およびそれらの合金、あるいはこれらの金属を含む金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属リン化物等の金属化合物、また、鱗状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛、繊維状黒鉛等の黒鉛等が挙げられ、これらを1種または2種以上を混合して用いることができる。但し、(e)成分として、上記物質の水和物は使用を抑えることが好ましい。
【0035】
(e)成分の熱伝導率としては、1W/(m・K)以上、さらには3W/(m・K)以上、さらには5W/(m・K)以上であることが好ましい。このような熱伝導率を有する(e)成分を混合することにより、より効率よく蓄熱材の熱効率性を向上させることができる。
また、(e)成分は、微粒子として用いることが好ましく、平均粒子径は、1〜100μm、さらには5〜50μmであることが好ましい。
【0036】
(e)成分と(a)成分の混合比は、通常(a)成分100重量部に対し、(e)成分が5重量部から200重量部(好ましくは10重量部から80重量部、より好ましくは20重量部から60重量部)程度とすればよい。
【0037】
本発明で用いる(b)成分は、マイクロ波を吸収し加熱するセグメントを含有することを特徴とするものである。
本発明では、マイクロ波を吸収し加熱するセグメントを含有する結合剤を用いることにより、例えば、電子レンジ等のマイクロ波で簡便に加熱蓄熱させることができる。マイクロ波としては、例えば電子レンジのマイクロ波(2450MHz)等があげられ、通常300MHz〜300GHzの範囲であればよい。
【0038】
マイクロ波を吸収し加熱するセグメントとしては、末端に存在するカルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボニル基等、骨格中に存在するエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等が挙げられる。
特に、本発明では、骨格中にエーテル結合等が存在するものが好ましい。
【0039】
本発明では、このようなマイクロ波を吸収し加熱するセグメントが含まれている結合剤であれば特に限定されず、用いることができる。
【0040】
例えば、ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコン樹脂、アクリルシリコン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、アクリル・酢酸ビニル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、アクリル・シリコン樹脂、シリコン変性アクリル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂等、あるいはこれらを複合したもの等が挙げられ、これらの溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、水可溶型樹脂、無溶剤型樹脂等が挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
【0041】
また、本発明では、結合剤のうち、1液タイプ、2液タイプのいずれも使用することができるが、2液タイプがより好ましい。2液タイプを使用することにより、速やかに反応が進行し、高強度の保温材が形成され、かつ、(a)成分が均一に分散した保温材が得られやすいため好ましい。
例えば、反応性官能基を含有する化合物(以下、「(b−1)成分」という。)と該反応性官能基と反応可能な反応性官能基を含有する化合物(以下、「(b−2)成分」という。)からなる2液タイプが好適に用いられる。
【0042】
このような、反応性官能基の組み合わせとしては、ヒドロキシル基とイソシアネート基、ヒドロキシル基とカルボキシル基、ヒドロキシル基とイミド基、ヒドロキシル基とアルデヒド基、エポキシ基とアミノ基、エポキシ基とカルボキシル基、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とオキサゾリン基、カルボニル基とヒドラジド基、カルボキシル基とアジリジン基等が挙げられる。
【0043】
ヒドロキシル基を含有する化合物としては、例えば、
ヒドロキシル基含有単量体;
多価アルコール;
ポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリテトラメチレングリコールポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンエチレンポリオール、エポキシポリオール、アルキドポリオール、フッ素含有ポリオール、ケイ素含有系ポリオール等のポリオール;
セルロース及び/またはその誘導体、アミロース等の多糖類;
等が挙げられる。
【0044】
本発明では、特に、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、セルロース及びその誘導体から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、このようなヒドロキシル基を含有する化合物を用いることにより、緻密な架橋構造を形成するとともに、蓄熱材との相溶性が良好で、保温材からの蓄熱材の漏れを抑制しやすい点で、好適に使用することができる。
【0045】
具体的に、ヒドロキシル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、1,4−テトラメチレンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,3−テトラメチレンジオール、2−メチル−1,3−トリメチレンジオール、1,5−ペンタメチレンジオール、トリメチルペンタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、メタキシレングリコール、パラキシレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン、ビスヒドロキシエチルテレフタレート、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、シクロヘキサンジオール類(1,4−シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、糖アルコール類(キシリトールやソルビトールなど)、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、2−メチロールプロパンジオール、エトキシ化トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0047】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物;環状エステル(ラクトン)の開環重合物;多価アルコール、多価カルボン酸及び環状エステルの3種類の成分による反応物等が挙げられる。
【0048】
多価カルボン酸としては、例えば、マロン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸等の脂肪族ジカルボン酸;
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸;
テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、無水フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸等の芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0049】
環状エステルの開環重合物において、環状エステルとしては、例えば、プロピオラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン等が挙げられる。
3種類の成分による反応物において、多価アルコール、多価カルボン酸、環状エステルとしては、前記例示のものなどを用いることができる。
【0050】
本発明では、ポリエステルポリオールとして、特に、多価アルコールと多価カルボン酸との縮合重合物が好ましく、例えば、多価アルコールとして、2,4−ジエチル−1,5−ペンタメチレンジオール、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等、多価カルボン酸として、アジピン酸等を用いることが好ましい。
ポリエステルポリオールの製造方法は、常法により行うことができ、必要に応じ、公知の硬化剤、硬化触媒等を用いてもよい。
【0051】
アクリルポリオールとしては、例えば、一分子中に1個以上のヒドロキシル基を有するアクリル単量体を単独重合または共重合させる、または共重合可能な他の単量体を共重合させることによって得ることができる。
【0052】
一分子中に1個以上のヒドロキシル基を有するアクリル単量体としては、例えば、
(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル類
グリセリンやトリメチロールプロパン等のトリオールの(メタ)アクリル酸モノエステル類;
上記(メタ)アクリル酸エステル類とポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等のポリエーテルポリオール類とのモノエーテル類;
(メタ)アクリル酸グリシジルと酢酸、プロピオン酸、p−tert−ブチル安息香酸等の一塩基酸との付加物;
上記(メタ)アクリル酸エステル類と、ε−カプロラクタム、γ−バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られる付加物;
等が挙げられ、これらを単独重合または共重合することにより得ることができる。
【0053】
また、共重合可能な他の単量体としては、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有単量体;
【0054】
(メタ)アクリル酸アミノメチル、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸アミノプロピル、(メタ)アクリル酸アミノブチル、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、(メタ)アクリル酸−N−メチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N−t−ブチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジメチルアミノプロピル、(メタ)アクリル酸−N,N−ジエチルアミノプロピル、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピペリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕ピロリジン、N−〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕モルホリン、4−〔N,N−ジメチルアミノ〕スチレン、4−〔N,N−ジエチルアミノ〕スチレン、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等のアミノ基含有単量体;
【0055】
(メタ)アクリル酸グリシジル、ジグリシジルフマレート、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のエポキシ基含有単量体;
【0056】
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N−イソブトキシメチルアクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等のアミド基含有単量体;
【0057】
(メタ)アクリル酸トリメトキシシリルプロピル、(メタ)アクリル酸トリエトキシシリルプロピル等のアルコキシシリル基含有単量体;
ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロプロピルトリメトキシシラン等の加水分解性シリル基含有単量体;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル基含有単量体;
N−メチロ−ル(メタ)アクリルアミド等のメチロール基含有単量体;
ビニルオキサゾリン、2−プロペニル2−オキサゾリン等のオキサゾリン基含有単量体;
【0058】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−t−ブチル、(メタ)アクリル酸−sec−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸n一アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸オキチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ドデセニル、(メタ)アクリル酸オタタデシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−4−tert−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−フェニルエチル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−4−メトキシブチル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;
【0059】
フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;
スチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル系単量体;
エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、酢酸ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー等のその他の単量体;
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0060】
重合方法としては、特に限定されず、公知の塊状重合、懸濁重合、溶液重合、分散重合、乳化重合、酸化還元重合等を用いればよく、必要に応じ、開始剤、連鎖移動剤等またはその他の添加剤等を加えてもよい。例えば、上記のモノマー成分を、公知の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の存在下で溶液重合することによって得ることができる。
【0061】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、多価アルコールとホスゲンとの反応物;環状炭酸エステル(アルキレンカーボネート等)の開環重合物等が挙げられる。
【0062】
環状炭酸エステルの開環重合物において、アルキレンカーボネートとしては、例えば、エチレンカーボネート、トリメチレンカーボネート、テトラメチレンカーボネート、ヘキサメチレンカーボネート等が挙げられる。
【0063】
なお、ポリカーボネートポリオールは、分子内にカーボネート結合を有し、末端がヒドロキシル基である化合物であればよく、カーボネート結合とともにエステル結合を有していてもよい。
【0064】
ポリオレフィンポリオールとしては、オレフィンを重合体又は共重合体の骨格(又は主鎖)の成分とし且つ分子内に(特に末端に)ヒドロキシル基を少なくとも2つ有するポリオールであって、数平均分子量が500以上のものを用いることができる。前記オレフィンとしては、末端に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、エチレン、プロピレン等のα−オレフィンなど)であってもよく、また末端以外の部位に炭素−炭素二重結合を有するオレフィン(例えば、イソブテンなど)であってもよく、さらにはジエン(例えば、ブタジエン、イソプレンなど)であってもよい
【0065】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のポリアルキレングリコールの他、エチレンオキシド−プロピレンオキシド共重合体などの単量体成分として複数のアルキレンオキシドを含む(アルキレンオキサイド−他のアルキレンオキサイド)共重合体等が挙げられる。
【0066】
このようなポリオールの水酸基価は、特に限定されないが、20〜150KOHmg/g(好ましくは25〜120KOHmg/g、さらに好ましくは30〜80KOHmg/g)程度とすればよい。
【0067】
また、ポリオールの分子量は、特に限定されないが、500〜10000であることが望ましく、さらには1000〜4000であることが望ましい。このような分子量であれば、イソシアネート基を含有する化合物やカルボキシル基を含有する化合物等との組み合わせにより、蓄熱材の漏れを抑制できる架橋構造を得ることができる。分子量が小さすぎる場合は、蓄熱材が漏れ易くなる恐れがある。分子量が大きすぎる場合は、蓄熱材を十分に保持できなくなる恐れがある。
【0068】
セルロース及び/またはその誘導体としては、セルロース、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース等のセルロースアセテート、メチルセルロース、エチルセルロース、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、硝酸セルロース等のセルロースエステル類、エチルセルロース、ベンジルセルロース、シアノエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロースエーテル類等が挙げられる。
【0069】
セルロース及び/またはその誘導体は、ヒドロキシル基を有するものであるが、ヒドロキシル基の一部をアルコキシル基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等)等により、置換されたものが好ましい。
具体的には、置換度が、1.8〜2.8、さらには2.2〜2.6であることが好ましい。なお、置換度とは、セルロースを構成するグリコースユニット中に存在する3つのヒドロキシル基が、アルコキシル基等で置換された割合を意味し、100%置換された場合で置換度は3となる。
置換度をこのような範囲で制御することにより、蓄熱材との相互作用を向上させることができ、保温材内に、蓄熱材を長期に亘り保持することができる。
置換度が、1.8より小さい場合は、蓄熱材との相互作用が低下する場合があり、蓄熱材を保温材内に、十分保持できない場合がある。また、2.8より大きい場合は、セルロース中のヒドロキシル基が減少し、十分な強度を有する3次元架橋構造が得られない場合がある。
【0070】
セルロース及び/またはその誘導体の分子量は、特に限定されないが、1000〜30000であることが望ましく、さらには5000〜20000であることが望ましい。このような分子量であれば、蓄熱材の漏れを最も抑制できる架橋構造を得ることができる。分子量が小さすぎる場合は、蓄熱材が漏れ易くなる恐れがある。分子量が大きすぎる場合は、蓄熱材を十分に保持できなくなる恐れがある。
【0071】
イソシアネート基を含有する化合物としては、例えば、1,3−トリメチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,3−ペンタメチレンジイソシアネート、1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート、リジンジイソシアネ−ト、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;
【0072】
1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;
【0073】
m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(TDI)、ナフチレン−1,4−ジイソシアネート、ナフチレン−1,5−ジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエ−テルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、2,2´−ジフェニルプロパン−4,4´−ジイソシアネート、3,3´−ジメチルジフェニルメタン−4,4´−ジイソシネート、4,4´−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3´−ジメトキシジフェニル−4,4´−ジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;
【0074】
1,3−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネ−ト(XDI)、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3−ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼン等の芳香脂肪族ジイソシアネート;
等、及びこれらのイソシアネート基含有化合物をアロハネート化、ビウレット化、2量化(ウレチジオン)、3量化(イソシアヌレート)、アダクト化、カルボジイミド反応等によって誘導体化したもの、及びそれらの混合物、及びこれらのイソシアネート基を含有する化合物と上述した共重合可能な単量体との共重合体等が挙げられる。
【0075】
本発明では、特に、脂肪族ジイソシアネートを用いることが好ましく、特にHMDI及びその誘導体化したもの等が好ましい。
【0076】
カルボキシル基を含有する化合物としては、例えば、上述した多価カルボン酸やカルボキシル基含有単量体等、またはカルボキシル基含有単量体を単独重合または共重合させた重合体、あるいは共重合可能な他の単量体を共重合させた共重合体等が挙げられる。
共重合可能な他の単量体としては、上述したヒドロキシル基含有単量体、アミノ基含有単量体、エポキシ基含有単量体、アミド基含有単量体、アルコキシシリル基含有単量体、加水分解性シリル基含有単量体、ニトリル基含有単量体、メチロール基含有単量体、オキサゾリン基含有単量体、アクリル酸エステル系単量体、ハロゲン化ビニリデン系単量体、芳香族ビニル系単量体、その他の単量体等が挙げられる。
【0077】
エポキシ基を含有する化合物としては、例えば、ビスフェノールAとエピクロルヒドリン等の縮合反応により得られるエピ−ビス型のビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールAD型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物が一般的に用いられ、また、これらを水添したエポキシ化合物、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘキセンモノエポキサイド脂環式エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビスフェノールAノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、ジアミノジフェニルメタン型エポキシ化合物、β−メチルエピクロ型エポキシ化合物、n−ブチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル型エポキシ化合物、ジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル型エポキシ化合物、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−ε−カプロラクトン変性グリシジル、(メタ)アクリル酸−β−メチルグリシジル等のグリシジルエステル型エポキシ化合物、ポリグリコールエーテル型エポキシ化合物、グリコールエーテル型エポキシ化合物、ウレタン結合を有するウレタン変性エポキシ化合物、アミン変性エポキシ化合物、フッ素化エポキシ化合物、ポリブタジエンあるいはアクリロニトリル−ブタジエン共重合体ゴムを含有するゴム変性エポキシ化合物、テトラブロモビスフェノールAのグリシジルエーテル等の難燃型エポキシ化合物、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン等のエポキシ基含有シリコン化合物等が挙げられる。
【0078】
エポキシ基を含有する化合物のエポキシ当量は、特に限定されないが、100g/eq以上400g/eq以下(好ましくは150g/eq以上350g/eq以下)のものが好ましく、これらのうち1種または2種以上用いることができる。
本発明では特に、100g/eq以上250g/eq未満(好ましくは120g/eq以上230g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上200g/eq以下)のエポキシ基を含有する化合物と、エポキシ当量が250g/eq以上400g/eq以下(好ましくは280g/eq以上350g/eq以下)のエポキシ基を含有する化合物を併用することが好ましい。このような2種以上のエポキシ基を含有する化合物を含有することにより、優れた硬化性と可撓性の両立が可能となる。また蓄熱材との相溶性を調整することができる。
さらに、本発明エポキシ樹脂は、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有することが好ましい。2つ以上有することにより、硬化性と反応速度を向上させることができ、また、架橋密度を高くすることができ、得られる保温材の強度を高めることができる。
【0079】
アミノ基を含有する化合物としては、
エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン、メチルペンタメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、グアニジン、オレイルアミン等の脂肪族アミノ基含有化合物;
メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジアミン、ピペリジン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−アミノエチルピペラジン、1,2−ジアミノシクロヘキサン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ポリシクロヘキシルポリアミン、DBU等の脂環族アミノ基含有化合物;
メタフェニレンジアミン、4、4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族アミノ基含有化合物;
m−キシリレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の脂肪芳香族アミノ基含有化合物;
【0080】
3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(ATU)、モルホリン、N−メチルモルホリン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシプロピレントリアミン、ポリオキシエチレンジアミン等のエーテル結合を有するアミノ基含有化合物;
ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の水酸基及びアミノ基含有化合物;
テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸等の酸無水物類;
ダイマー酸にジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミン等のポリアミンを反応させて得られるポリアミド、ダイマー酸以外のポリカルボン酸を使ったポリアミド等のポリアミドアミン類;
2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール類;
ポリオキシプロピレン系ジアミン、ポリオキシプロピレン系トリアミン等のポリオキシプロピレン系アミン類;
上記アミン類にエポキシ化合物を反応させて得られるエポキシ変性アミン、上記アミン類にホルマリン、フェノール類を反応させて得られるマンニッヒ変性アミン、マイケル付加変性アミン、ケチミン、アルジミンといった変性アミン類;2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールの2−エチルヘキサン酸塩等のアミン塩等が挙げられる。
【0081】
(b−1)成分と(b−2)成分の組み合わせとして、本発明では、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物、エポキシ基を含有する化合物とアミノ基を含有する化合物等の組み合わせが好ましく、特にヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の組み合わせが好ましい。このような、組み合わせでは、温和な条件下で架橋反応が進行しやすく、また、架橋密度等の調節も容易であるため好ましい。
【0082】
また、(b−1)成分と(b−2)成分の混合比率は、特に限定されず、用途に合わせて適宜設定すればよい。
例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を用いる場合は、NCO/OH比率で通常0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.5、さらに好ましくは0.3〜1.3となる範囲内で設定すればよい。
このようなNCO/OH比率の範囲内であることにより、保温材の強度を強靭なものとすることができ、蓄熱材の漏れのない均一な緻密な架橋構造を得ることができる。
【0083】
また、(b−1)成分と(b−2)成分の反応では、反応促進剤を用いて硬化反応を迅速に進めることもできる。
例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の反応では、反応促進剤として、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン、テトラメチルブタンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ダイマージアミン、ダイマー酸ポリアミドアミン等のアミン類;
ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、錫オクテート等の錫カルボン酸塩類;
ナフテン酸鉄、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸マンガン、ナフテン酸亜鉛、オクチル酸鉄、オクチル酸コバルト、オクチル酸マンガン、オクチル酸亜鉛等の金属カルボン酸塩類;
ジブチルチンチオカルボキシレート、ジオクチルチンチオカルボキシレート、トリブチルメチルアンモニウムアセテート、トリオクチルメチルアンモニウムアセテート等のカルボキシレート類;
アルミニウムトリスアセチルアセテート等のアルミニウム化合物;
等が挙げられ、1種または2種以上を用いることができる。
【0084】
反応促進剤は、ヒドロキシル基を含有する化合物の固形分100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の比率で混合する。反応促進剤が0.01重量部より少ない場合は、保温材の硬化性や強度が不十分となり、膨れが発生しやすくなる傾向がある。10重量部より多い場合は、耐候性、耐変色性等が低下する傾向となる。
【0085】
本発明の保温材の製造は、上記成分を用いて、公知の方法で製造すればよい。
【0086】
例えば、本発明では、
(i)(a)成分(必要に応じ、(c)成分、(d)成分、(e)成分等)、(b−1)成分、(b−2)成分を均一に混合し、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて、蓄熱材を固定化する方法、
(ii)(a)成分(必要に応じ、(c)成分、(d)成分、(e)成分等)と、親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤、(b−1)成分と(b−2)成分を混合し、(a)成分をコロイド状に分散させ、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて、蓄熱材を固定化方法、等が挙げられる。
【0087】
(i)の方法では、(a)成分、(b−1)成分、(b−2)成分を均一に混合し、相溶状態にする。次いで、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させることにより、(a)成分が固定化された保温材を得るものである。
この過程では、相溶状態から非相溶状態の変化に伴うミクロ相分離が起こり、(b−1)成分と(b−2)成分からなる緻密に入り組んだ3次元架橋構造が形成されるものと思われる。この3次元架橋構造に(a)成分が固定化された状態となり、(a)成分が固定化された保温材が形成される。
【0088】
特に、(a)成分に加えて(d)成分が混合されている場合は、(a)成分が粘度調整され、保温材に固定化された(a)成分が外部へ漏れ出すことを防ぐことができる。そのため、高い蓄熱材含有率を達成することができるため好ましい。
さらに保温材の形成成分を適宜設定することにより、保温材形成成分との相互作用が働き、(a)成分が外部へ漏れ出すのをより防ぐことができる。
また、保温材として3次元架橋構造であれば、その緻密な構造の故、(a)成分が外部へ漏れ出すのをより防ぐことができる。
【0089】
このような3次元架橋構造を有する保温材の製造では、さらに、上述した(c)成分を混合し製造することが好ましい。(c)成分は、(a)成分同士の相溶性のみならず、(a)成分と樹脂成分((b−1)成分、(b−2)成分等)との相溶性も向上させることができるため、より緻密な3次元架橋構造を有する保温材が形成され、保温材から(a)成分が漏れることを、よりいっそう防ぐことができる。
(c)成分としては、上述した脂肪酸トリグリセリドや、親水親油バランス(HLB)が1以上10未満の非イオン性界面活性剤等が挙げられるが、(a)成分と樹脂成分との相溶性には、特に親水親油バランス(HLB)が1以上10未満の非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0090】
(i)の方法において、反応温度は、(a)成分の融点以上であることが好ましい。具体的な反応温度は(a)成分の種類によって異なるが、通常20℃〜100℃程度である。(a)成分の融点以上で反応させることにより、各成分が相溶状態になりやすい。また、反応時間は通常0.2〜10時間程度とすればよい。
【0091】
また、(i)の方法において、例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を使用する場合、ヒドロキシル基を含有する化合物の分子量は、特に限定されないが、500〜10000であることが望ましく、さらには1000〜3000であることが望ましい。このような分子量であれば、(a)成分と容易に溶融混合することができ、容易に相溶状態をつくり出すことができる。よって、より優れた3次元架橋構造を得ることができる。
さらに、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の混合比率は、特に限定されず、適宜設定すればよいが、NCO/OH比率が、0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.7、さらに好ましくは0.3〜1.6、より好ましくは0.5〜1.5であることによって、より優れた3次元架橋構造を得ることができる。
【0092】
また、(ii)の方法では、(a)成分と、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、(b−1)成分と(b−2)成分を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分中に(a)成分をコロイド状に分散させる。次いで、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させることにより、(a)成分が固定化された保温材を得ることができる。
【0093】
このような方法では、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤により、(b−1)成分及び/または(b−2)成分に(a)成分が、微細なコロイド状に分散した状態をつくりだすことができる。このような状態で(b−1)成分と(b−2)成分を反応させることにより、(a)成分が固定化された保温材を得ることができる。
【0094】
本発明製造方法の具体的な方法としては、例えば(a)成分、親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤、(b−1)成分及び(b−2)成分を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させる方法、または、(a)成分、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、(b−1)成分(または(b−2)成分)を混合し、(b−2)成分(または(b−1)成分)を添加することにより反応させる方法等が挙げられる。
【0095】
このような製造方法では、(a)成分の含有率を大きくすることができ、かつ、高い(a)成分含有率を有しているにもかかわらず経時的に(a)成分が漏れることがない。さらに(a)成分が固定化された保温材を切断したとしても、切断面から(a)成分が漏れ出すこともなく加工性に優れ、また、釘打ち等による(a)成分の漏れないため、取り付け施工性に優れている。
さらに、(a)成分が、微細に均一に分散した状態であるため、(a)成分の固液変化に伴う体積変化による保温材自体の形状変化を軽減することもできる。
【0096】
親水親油バランス(HLB値)が10以上の非イオン性界面活性剤としては、(a)成分、(b−1)成分、(b−2)成分により、適宜選定すればよい。また、親水親油バランス(HLB値)が、12以上(好ましくは12以上18以下、より好ましくは13以上17以下)であることにより、特に(a)成分を、コロイド状に分散し易いため好ましい。
【0097】
親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、
テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット等のポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、
ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエート等のポリオキシエチレン脂肪酸エステル、
ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンヤシ油脂肪酸ソルビタン等が挙げられる。
【0098】
特に(a)成分として、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルを用いた場合、該界面活性剤の構造中に、炭素数8〜36の長鎖アルキル基を有することが好ましい。とりわけ、(b−1)成分と該界面活性剤の長鎖アルキル基の炭素数が近似するもの、あるいは同様のものを選定することにより、本発明の効果をよりいっそう高めることができる。
【0099】
親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤と(a)成分の混合比は、(a)成分、(b−1)成分、(b−2)成分により適宜設定すればよいが、通常(a)成分100重量部に対し、該界面活性剤0.01重量部から30重量部(好ましくは0.1重量部から20重量部)程度とすればよい。
該界面活性剤が0.01重量部より少ない場合は、(a)成分と(b−1)成分及び/または(b−2)成分が分離してしまうかまたはクリーミング現象を起こしやすく、効率よくコロイド分散せず、本発明の効果が得られない場合がある。30重量部より多い場合は、得られる保温材の耐水性等の物性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0100】
上記製造方法では、反応前の状態において、(a)成分が、粒子径10μm〜1000μm(好ましくは50μm〜900μm、さらに好ましくは100μm〜800μm、より好ましくは200μm〜700μm)程度の大きさのコロイド状に分散した状態であることを特徴とするものである。このような状態から(b−1)成分と(b−2)成分を反応させることにより、保温材中に(a)成分を微細に分散(固定化)させることができる。
【0101】
なお、反応前の状態においては、系内の温度が(a)成分の融点以上であることが好ましい。具体的には、通常20℃〜80℃程度であり、このような温度では、(a)成分がコロイド状に分散しやすいため好ましい。
なお、粒子径は、光学顕微鏡(BHT−364M、オリンパス光学工業株式会社製)を用いて測定した値である。
【0102】
このような製造方法において、具体的な反応温度は(a)成分の種類によって異なるが、通常20℃〜80℃程度である。(a)成分の融点以上では、(a)成分がコロイド状態になりやすいため、好ましい。また、反応時間は通常0.2〜5時間程度とすればよい。
【0103】
また、このような製造において、例えば、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物を使用する場合、ヒドロキシル基を含有する化合物の分子量は、特に限定されず、幅広い範囲で選択することが可能であるが、通常、500〜10000であることが望ましく、さらには1000〜3000であることが望ましい。このような分子量であれば、(a)成分を、より微細なコロイド状に分散させることができるともに、より(a)成分含有率を高めることができる。よって、蓄熱性に優れ、(a)成分の固液変化に伴う体積変化による保温材自体の形状変化をより軽減することが可能である。
さらに、ヒドロキシル基を含有する化合物とイソシアネート基を含有する化合物の混合比率は、特に限定されず、適宜設定すればよいが、NCO/OH比率が、0.1〜1.8、好ましくは0.2〜1.7、さらに好ましくは0.3〜1.6、より好ましくは0.5〜1.5であることによって、上記効果をよりいっそう高めることができる。
【0104】
なお、(i)、(ii)の方法では、反応性官能基として、イソシアネート基、カルボキシル基、イミド基、アルデヒド基を用いる場合は、蓄熱材として長鎖アルコールの使用は除くものとする。また反応性官能基として、ヒドロキシル基、エポキシ基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、アジリジン基を用いる場合は、蓄熱材として長鎖脂肪酸の使用は除くものとする。
【0105】
本発明における保温材の製造では、上記成分の他に、顔料、骨材、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、発泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、滑剤、脱水剤、艶消し剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含有することもできる。
【0106】
本発明における保温材の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記成分を用いて、押出し成形、型枠成形等の公知の方法で製造することができる。また、保温材を、不織布、織布、紙、合成紙、プラスチックフィルム(PETフィルム等)等でラミネートすることもできる。
【0107】
本発明の製造方法により得られる保温材は、シート状、棒状、針状、球状、角状、粉末状等、その形状は特に限定されないが、携帯用など使用用途に合わせて使用しやすい点から、シート状のものが好ましい。
また、シート状の保温材の厚さは、特に限定されないが、通常1〜30mm(好ましくは、2〜20mm)程度とすればよい。
【0108】
本発明保温材の蓄熱材含有率は、好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、より好ましくは60重量%以上、最も好ましくは65重量%以上である。
【0109】
保温材は、一般家庭にある電子レンジ等を用いて、簡便に発熱させ、蓄熱・保温することができる。
例えば、一般家庭にある電子レンジを用いる場合、約1〜5分、好ましくは2〜4分程度、マイクロ波(周波数:2450MHz)を照射することで、簡便に目的とする温度に、蓄熱することが可能である。
本発明の保温材は、このような電子レンジを用いて簡便に蓄熱・保温させることができるため、冬の暖房用保温材等に適用することができ、さらに、宅配ピザ用、弁当用の容器等の食材保温用途に用いられる保温材、健康用具に用いられる保温材等にも使用することができる。また、断熱材等と組み合わせることによって、保温効果を高めることもできる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより明確にするが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0111】
(実験例1)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、蓄熱材、界面活性剤、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度50℃で混合し、蓄熱材をコロイド状(平均粒子径20μm)に分散させ、反応促進剤を加え、十分攪拌し、蓄熱スラリーを得た。得られた蓄熱スラリーを、型枠(100mm×100mm×5mm)中に流し込み、80℃で30分硬化させ、型枠から脱型し、厚みが5mmの保温材を得た。この保温材を2枚作製した。
【0112】
得られた保温材を用い、次の試験を行った。
【0113】
(保温性試験)
得られた保温材(2枚)を電子レンジで2分間、マイクロ波(2450MHz)を照射し、電子レンジから取り出し、2枚の保温材を熱電対を挟むように積層し、試験体を得た。この試験体を、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、静置し、経時での温度変化を測定した。保温性試験では、マイクロ波照射直後(0時間後)、2時間後、4時間後の温度により評価した。
さらに、この操作を1サイクルとして合計100サイクル操作を行い、1回目、50回目、100回目の温度を評価し、再利用性についても評価した。
結果は、表3に示す。
【0114】
(実験例2)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、蓄熱材、有機処理された層状粘土鉱物、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度50℃で均一に混合し、反応促進剤を加え、十分攪拌し、蓄熱スラリーを得た以外は、実施例1と同様の方法で保温材を得た。得られた保温材について、実施例1と同様の試験を行った。結果は表3に示す。
【0115】
(実験例3)
表1に示す原料を用い、表2に示す配合量にて、蓄熱材、界面活性剤、有機処理された層状粘土鉱物、ヒドロキシル基含有化合物、イソシアネート基含有化合物を温度50℃で混合し、蓄熱材をコロイド状(平均粒子径42μm)に分散させ、反応促進剤を加え、十分攪拌し、蓄熱スラリーを得た以外は、実施例1と同様の方法で保温材を得た。得られた保温材について、実施例1と同様の試験を行った。結果は表3に示す。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機潜熱蓄熱材(a)を、マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤(b)で固定化したものであり、
有機潜熱蓄熱材(a)が、炭素数8〜36の脂肪族炭化水素、炭素数8〜36の長鎖アルコール、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸、炭素数8〜36の長鎖脂肪酸エステルから選ばれる1種または2種以上の有機潜熱蓄熱材であり、
マイクロ波により振動・発熱するセグメントを含有する結合剤(b)が、ポリエーテルポリオール(b−1)と、イソシアネート基を有する化合物(b−2)とを反応させることにより得られるものであり、
有機潜熱蓄熱材(a)、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、ポリエーテルポリオール(b−1)、イソシアネート基を有する化合物(b−2)を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて得られることを特徴とするマイクロ波で蓄熱可能な保温材。
【請求項2】
有機潜熱蓄熱材(a)、親水親油バランス(HLB値)が12以上の非イオン性界面活性剤、ポリエーテルポリオール(b−1)、イソシアネート基を有する化合物(b−2)を混合し、(b−1)成分と(b−2)成分中に(a)成分をコロイド状に分散させ、(b−1)成分と(b−2)成分を反応させて得られることを特徴とする請求項1に記載のマイクロ波で蓄熱可能な保温材。
【請求項3】
有機潜熱蓄熱材(a)の含有量が40重量%以上であることを特徴とする請求項1また請求項2に記載の保温材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の保温材に、マイクロ波を照射することを特徴とする保温材の蓄熱方法。


【公開番号】特開2012−184437(P2012−184437A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−121451(P2012−121451)
【出願日】平成24年5月29日(2012.5.29)
【分割の表示】特願2005−104592(P2005−104592)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)