保育器
【課題】保育器内の新生児に光線治療や光線治療以外の処置を施す際に処置者の作業が少なくてよく医療施設の建設コストも高くならない保育器を提供する。
【解決手段】新生児収容室の天井26の外表面に光線治療用光源46が固定されている。このため、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源46を毎回位置決めする必要等がない。また、光線治療用光源46のうちで新生児収容室の天井26の外表面との対向部以外の領域が遮光されている。このため、光線治療を施す処置者や別の保育器内の新生児にまで光線治療用光源46からの光線が新生児収容室の天井26の外表面での反射後に到達せず、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【解決手段】新生児収容室の天井26の外表面に光線治療用光源46が固定されている。このため、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源46を毎回位置決めする必要等がない。また、光線治療用光源46のうちで新生児収容室の天井26の外表面との対向部以外の領域が遮光されている。このため、光線治療を施す処置者や別の保育器内の新生児にまで光線治療用光源46からの光線が新生児収容室の天井26の外表面での反射後に到達せず、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らの力では体温調節等をできない新生児に適切な生理的環境を提供してこの新生児を保護育成するための保育器に関する。
【背景技術】
【0002】
保育器には、新生児に適切な生理的環境を提供する新生児収容室が設けられている。閉鎖型保育器では、側壁及び天井で囲まれている新生児収容室内において温度のみならず湿度や酸素濃度等も制御される。開放型保育器でも、新生児収容室内の新生児の転落防止や保温等のために新生児収容室に側壁が備えられており、新生児収容室の上方に配置されている熱線放射源によって新生児収容室内の臥床台の温度や新生児自身の体温が制御される。更に、新生児収容室の天井が側壁から分離されており、天井を上昇及び下降させることによって閉鎖型保育器と開放型保育器とに随時に切り換えることのできる、切換型保育器もある。
【0003】
一方、高ビリルビン血症の新生児に対しては光線治療器による光線治療が施されており、保育器の新生児収容室内に収容されている新生児は収容状態のままで光線治療を施される。この様な収容状態の新生児に対して光線治療を施すために、従来は、スタンドを用いて光線治療器を新生児収容室の直上に位置させたり(例えば特許文献1)、吸盤を介して光線治療器を新生児収容室の天井上に載置したり(例えば特許文献2)していた。つまり、従来は、保育器に光線治療器が内蔵されておらず、保育器と光線治療器とが互いに別体であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−206390号公報
【特許文献2】特開平11−76434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1、2の様に保育器と光線治療器とが互いに別体であると、新生児収容室内の新生児に光線が適切に照射される様に、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療器を毎回位置決めする必要があるので、医師や看護師等である処置者の作業が煩雑である。また、光線治療以外の処置に光線治療器が支障にならない様に、この処置に先立って、光線治療器を移動させる必要がある。また、保育器のための電源の他に光線治療器のための電源も必要であるので、医療施設の建設コストが高くなる。
【0006】
更に、新生児収容室の天井は全体的に曲面であるので、保育器とは別体の光線治療器を新生児収容室の天井上に載置しても、光線治療器の全体を新生児収容室の天井の外表面に密接させることはできない。この結果、光線治療の対象である新生児が収容されている保育器内のみならず、光線治療を施す処置者やこの保育器の近傍の保育器内の新生児にまで、光線治療器からの光線が新生児収容室の天井の外表面での反射後に到達し易い。このため、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための十分な作業が必要である。従って、本発明は、保育器内の新生児に光線治療や光線治療以外の処置を施す際に処置者の作業が少なくてよく医療施設の建設コストも高くならない保育器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る保育器では、新生児収容室の天井の外表面に光線治療用光源が固定されている。このため、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源を毎回位置決めする必要がない。また、光線治療以外の処置に光線治療用光源が支障にならない様に、この処置に先立って、光線治療用光源を移動させる必要もない。また、保育器に供給される電力を光線治療用光源にも供給することができるので、光線治療用光源のためのみの電源が不要である。
【0008】
更に、光線治療用光源のうちで新生児収容室の天井の外表面との対向部以外の領域が遮光されている。このため、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が新生児収容室の天井の外表面での反射後に到達せず、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【0009】
請求項2、4、5に係る保育器では、光線治療用光源による所望の分光放射照度を照度設定調節部で設定することができるので、新生児の症状に応じた分光放射照度の光線を新生児に照射することができる。また、直近に設定された所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節するので、光線治療用光源の使用に際して処置者が所望の分光放射照度を照度設定調節部で毎回設定する必要がない。
【0010】
請求項3、4、5に係る保育器では、光線治療用光源による所望の分光放射照度が照度設定調節部で設定されていなければ、照度設定調節部が既定の分光放射照度を所望の分光放射照度にする。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照度設定調節部で分光放射照度を必ずしも設定する必要がない。
【0011】
請求項6に係る保育器では、照度計が新生児収容室内に配置されると共に照度設定調節部に接続されており、所望の分光放射照度に照度計の出力が等しくなる様に、光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節する。このため、光線治療用光源による新生児収容室内の実際の分光放射照度が所望の分光放射照度から何らかの理由で変動しても、所望の分光放射照度による光線治療が自動的に施される。
【0012】
請求項7に係る保育器では、切換型保育器において新生児収容室の天井が上昇または下降をされると、これら夫々の状態における所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ、光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節する。このため、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照度設定調節部で光線治療用光源による所望の分光放射照度を毎回設定する必要がない。
【0013】
請求項8〜10に係る保育器では、光線治療用光源による照射範囲を調節する照射範囲調節部が具備されているので、光線治療の必要な範囲のみを光線治療用光源で照射することができる。このため、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が到達しにくく、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【0014】
請求項11に係る保育器では、照射範囲設定部で、光線治療用光源による所望の照射範囲を設定することができ、しかも、直近に設定された所望の照射範囲に基づいて照射範囲調節部を作動させる。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲を毎回調節する必要がない。
【0015】
請求項12に係る保育器では、照射範囲設定部で所望の照射範囲が設定されていなければ、照射範囲設定部が既定の照射範囲を所望の照射範囲にする。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲設定部で照射範囲を必ずしも設定する必要がない。
【0016】
請求項13に係る保育器では、切換型保育器において新生児収容室の天井が上昇または下降をされると、これら夫々の状態における所望の照射範囲へ、光線治療用光源による照射範囲を照射範囲調節部が調節する。このため、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照射範囲設定部で光線治療用光源による照射範囲を毎回設定する必要がない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る保育器では、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源を毎回位置決めする必要がなく、光線治療以外の処置に先立って、光線治療用光源を移動させる必要もなく、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよいので、保育器内の新生児に光線治療や光線治療以外の処置を施す際に処置者の作業が少なくてよい。また、光線治療用光源のためのみの電源が不要であるので、医療施設の建設コストも高くならない。
【0018】
請求項2、4、5に係る保育器では、新生児の症状に応じた分光放射照度の光線を新生児に照射することができるので、最適な光線治療を新生児に施すことができる。また、光線治療用光源の使用に際して処置者が所望の分光放射照度を照度設定調節部で毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0019】
請求項3、4、5に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照度設定調節部で分光放射照度を必ずしも設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0020】
請求項6に係る保育器では、光線治療用光源による新生児収容室内の実際の分光放射照度が所望の分光放射照度から何らかの理由で変動しても、所望の分光放射照度による光線治療が自動的に施されるので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0021】
請求項7に係る保育器では、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照度設定調節部で光線治療用光源による所望の分光放射照度を毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0022】
請求項8〜10に係る保育器では、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が到達しにくく、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよいので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0023】
請求項11に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲を毎回調節する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0024】
請求項12に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲設定部で照射範囲を必ずしも設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0025】
請求項13に係る保育器では、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照射範囲設定部で光線治療用光源による照射範囲を毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の保育器における天井及びその近傍部の正面断面図である。
【図2】閉鎖型保育器の状態にある本発明の各実施例に共通の保育器の正面図である。
【図3】開放型保育器の状態にある本発明の各実施例に共通の保育器の正面図である。
【図4】閉鎖型保育器の状態で光線治療中または照明中である本発明の実施例1の保育器を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】開放型保育器の状態で光線治療中または照明中である本発明の実施例1の保育器を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分側面断面図である。
【図7】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分平面図である。
【図8】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分正面断面図である。
【図9】本発明の実施例1の保育器における絞り機構の平面図である。
【図10】本発明の実施例1の保育器における絞り機構の動作を示す平面図であり、(a)は開口が大きい状態、(b)は開口が小さい状態である。
【図11】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源または照明用光源の部分側断面図である。
【図12】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分側面断面図である。
【図13】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分平面図である。
【図14】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分正面断面図である。
【図15】本発明の実施例3の保育器における光線治療用光源の底面図である。
【図16】本発明の実施例4の保育器における光線治療用光源の部分拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜16を参照しながら、切換型保育器に適用した本発明の実施例を説明する。図2、3が、夫々閉鎖型保育器及び開放型保育器の状態にある各実施例に共通の保育器を示している。この保育器11では、架台12に車輪13と支柱14とが取り付けられており、この支柱14に基部15が支持されている。基部15内には温度や湿度等の制御機構(図示せず)が設けられており、基部15上に新生児収容室16が設けられており、基部15下に収納用の引き出し17が取り付けられている。架台12には支柱14に沿って基部15等の高さを調節するためのペダル18も設けられている。新生児収容室16内には臥床台21(図4、5)が配置されている。
【0028】
臥床台21上の新生児22(図4、5)の左側及び右側に位置する一対の左右側処置扉23と、足側に位置する足側処置扉24と、頭側に位置する頭側処置壁25とが、新生児収容室16の側壁として設けられている。新生児収容室16の透明な天井26はこれらの側壁から分離されている。左右側処置扉23には透明な壁面27が備えられており、左右一対の手入窓(図示せず)とこれらの手入窓を開放及び閉鎖する左右一対の手入扉28とが壁面27に備えられている。架台12には左右一対の支柱31も取り付けられている。左右一対の支柱31内には別の左右一対の支柱32(図3)が入れ子状に配置されており、夫々の支柱32が夫々の支柱31内を摺動することができる。
【0029】
新生児収容室16の天井26と赤外線加熱器33とが左右一対の支柱32の一方及び他方に夫々支持されており、支柱32が支柱31内を摺動することによって天井26と赤外線加熱器33とは互いに独立に昇降することができる。この昇降は、医師や看護師等が電動機(図示せず)等の駆動機構に作動指示を与えることによって行われる。左右一対の支柱31のうちの一方の支柱31に操作・表示パネル34が取り付けられており、この操作・表示パネル34に光線治療器オン/オフスイッチ35、照明灯オン/オフスイッチ36、照度設定スイッチ37及び照射範囲設定スイッチ38が設けられている。支柱31には、赤外線加熱器33が部屋の壁面(図示せず)に衝突することを防止する保護具41も取り付けられている。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施例1の保育器11における天井26及びその近傍部を示している。左右一対の支柱32の一方に支持アーム42が取り付けられており、支持アーム42の支持軸43に天井26が懸吊されている。支持アーム42には一対の弾性支持体44、45が取り付けられており、弾性支持体44、45が天井26を押圧することによって支持軸43の周りにおける天井26の回動を所定の角度範囲内に制限している。弾性支持体44、45の構造としては、例えば、圧縮コイルばねの先端部にゴム製の半球状押圧部が取り付けられている構造が考えられる。弾性支持体44の近傍では光線治療用光源46及び照明用光源47(図6、7)が天井26の外表面に固定されており、支持アーム42や光線治療用光源46や照明用光源47等が不透明なカバー48に覆われている。
【0031】
図6〜8は、光線治療用光源46及び照明用光源47とそれらの近傍部とを示している。光線治療用光源46及び照明用光源47は、臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられており、共に一つずつの光源ユニット51を有している。光線治療用光源46及び照明用光源47は共に絞り機構52を介して天井26の外表面に固定されている。光線治療用光源46及び照明用光源47は新生児収容室16内の臥床台21の中央部から変位しており、臥床台21の中央部を中心にして光線治療用光源46及び照明用光源47による照射を行うために、光線治療用光源46及び照明用光源47の夫々の光源ユニット51は天井26の外表面に対して傾斜している。
【0032】
図9に示されている様に、絞り機構52には歯車53、ラック54及びアクチュエータ55が備えられている。アクチュエータ55が作動すると、ラック54が直線駆動され、この直線駆動によって歯車53が回動され、この回動によって、図10(a)(b)に示されている様に絞り機構52における開口56の大きさが調節される。ラック54の代わりにウォームが用いられてもよく、この場合はウォームの回転駆動によって歯車53が回動される。また、アクチュエータ55の代わりにステッピングモータが用いられてもよい。絞り機構52における開口56の大きさは、リニアポテンショメータ(図示せず)またはエンコーダ(図示せず)による位置検出によって制御される。
【0033】
光源ユニット51の遮光ガイドカバー57が絞り機構52上に固定されており、図11に示されている様に基板58に固定され且つ拡散レンズ61に覆われているLED62が遮光ガイドカバー57内に配置されている。遮光ガイドカバー57内には拡散レンズ61とは別の拡散レンズ63も配置されている。光線治療用光源46及び照明用光源47では、天井26の外表面との対向部以外の領域つまり絞り機構52の開口56以外の領域が遮光されている。図4、5に示されている様に、臥床台21の上面のうちで新生児22の近傍部に照度計64が配置されている。照度計64は、放射量としての分光放射照度と測光量としての照度との両方を計測し、これらの計測値を操作・表示パネル34に出力する。
【0034】
以上の様な実施例1の保育器11において、新生児収容室16内に収容されている新生児22が高ビリルビン血症であってこの新生児22に対して光線治療を施す場合は、操作・表示パネル34の光線治療器オン/オフスイッチ35をオンにし、更に照度設定スイッチ37を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照度設定画面(図示せず)が表示されるので、この照度設定画面で光線治療用光源46の照度設定を選択し、表示された光線治療用光源46の照度設定画面で、光線治療用光源46から所定の距離(例えば30cm)における所望の分光放射照度(単位:μW/cm2/nm)を設定する。この直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。
【0035】
なお、所望の分光放射照度は、数値で直接に設定される代わりに、例えば高低や高中低等の段階で設定されてもよい。また、光線治療器オン/オフスイッチ35と照度設定スイッチ37と操作・表示パネル34に表示される照度設定画面との代わりに、光線治療器のオン/オフと分光放射照度とを順次に設定するダイアルが用いられてもよい。
【0036】
上述の設定によって、操作・表示パネル34が、光線治療用光源46の光源ユニット51のLED62に供給する電力、具体的には電圧や電流やパルスのデューティ率等を調節して、記憶されている所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度が得られる様に光線治療用光源46を調節する。光線治療用光源46による所望の分光放射照度の設定自体が未だされていなくて、光線治療用光源46による所望の分光放射照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、既定の分光放射照度を所望の分光放射照度にして光線治療用光源46の分光放射輝度を調節する。
【0037】
光線治療に必要な分光放射照度は35μW/cm2/nm以上であるが、光線治療用光源46から放射される光線には紫外線成分が多く含まれており、新生児22の眼に障害を発生させる可能性がある。このため、光線治療に際して新生児22にアイマスクを装着させるが、装着の失念を考慮して、上述の既定の分光放射照度は10μW/cm2/nm以下にされている。また、記憶されている設定値が10μW/cm2/nm以上である場合にも10μW/cm2/nm以下の分光放射照度に対応する分光放射輝度から光線治療用光源46の分光放射輝度を徐々に高めていく。
【0038】
操作・表示パネル34は、所望の分光放射照度に、照度計64から出力される分光放射照度が等しくなる様に、光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に調節する。従って、図2、4に示されている閉鎖型保育器の状態から図3、5に示されている開放型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、照度計64から出力される分光放射照度が低下するので、その場合は、所望の分光放射照度に、照度計64から出力される分光放射照度が等しくなるまで、操作・表示パネル34が光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に高める。逆に、開放型保育器の状態から閉鎖型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、操作・表示パネル34が光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に低める。
【0039】
光線治療用光源46から放射される光線の所望の照射範囲を設定するためには、操作・表示パネル34の照射範囲設定スイッチ38を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照射範囲設定画面(図示せず)が表示されるので、この照射範囲設定画面で光線治療用光源46の照射範囲設定を選択し、表示された光線治療用光源46の照射範囲設定画面で所望の照射範囲を設定する。光線治療用光源46による所望の照射範囲が変更されると、操作・表示パネル34が絞り機構52を作動させる。
【0040】
光線治療用光源46による照射範囲については、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。このため、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、光線治療用光源46による照射範囲も自動的に変更される。光線治療用光源46による所望の照射範囲の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における既定の照射範囲を所望の照射範囲にして光線治療用光源46の照射範囲を調節する。
【0041】
一方、臥床台21上の新生児22に対して光線治療やその他の処置を施すために照明が必要な場合は、操作・表示パネル34の照明灯オン/オフスイッチ36をオンにし、更に照度設定スイッチ37を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照度設定画面(図示せず)が表示されるので、この照度設定画面で照明用光源47の照度設定を選択し、表示された照明用光源47の照度設定画面で、照明用光源47から所定の距離(例えば30cm)における所望の照度(単位:lx)を設定する。この直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。
【0042】
なお、所望の照度は、数値で直接に設定される代わりに、例えば高低や高中低等の段階で設定されてもよい。また、照明灯オン/オフスイッチ36と照度設定スイッチ37と操作・表示パネル34に表示される照度設定画面との代わりに、照明灯のオン/オフと照度とを順次に設定するダイアルが用いられてもよい。
【0043】
上述の設定によって、操作・表示パネル34が、照明用光源47の光源ユニット51のLED62に供給する電力、具体的には電圧や電流やパルスのデューティ率等を調節して、記憶されている所望の照度に対応する輝度が得られる様に照明用光源47を調節する。照明用光源47による所望の照度の設定自体が未だされていなくて、照明用光源47による所望の照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、既定の照度(600lx程度)を所望の照度にして照明用光源47の輝度を調節する。
【0044】
操作・表示パネル34は、所望の照度に、照度計64から出力される照度が等しくなる様に、照明用光源47の輝度を自動的に調節する。従って、図2、4に示されている閉鎖型保育器の状態から図3、5に示されている開放型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、照度計64から出力される照度が低下するので、その場合は、所望の照度に、照度計64から出力される照度が等しくなるまで、操作・表示パネル34が照明用光源47の輝度を自動的に高める。逆に、開放型保育器の状態から閉鎖型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、操作・表示パネル34が照明用光源47の輝度を自動的に低める。
【0045】
照明用光源47から放射される光線の所望の照射範囲を設定するためには、操作・表示パネル34の照射範囲設定スイッチ38を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照射範囲設定画面(図示せず)が表示されるので、この照射範囲設定画面で照明用光源47の照射範囲設定を選択し、表示された照明用光源47の照射範囲設定画面で所望の照射範囲を設定する。照明用光源47による所望の照射範囲が変更されると、操作・表示パネル34が絞り機構52を作動させる。
【0046】
照明用光源47による照射範囲については、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。このため、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、照明用光源47による照射範囲も自動的に変更される。照明用光源47による所望の照射範囲の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における既定の照射範囲を所望の照射範囲にして照明用光源47の照射範囲を調節する。
【0047】
なお、以上の実施例1の保育器11では、図6、7に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられているが、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の身長方向に並べられていてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例2】
【0048】
図12〜14は、本発明の実施例2の保育器11における光線治療用光源46及び照明用光源47とそれらの近傍部とを示している。この実施例2では、光線治療用光源46及び照明用光源47の照度調節及び照射範囲調節が自動ではなく手動で行われる。従って、臥床台21の上面に照度計64が配置されておらず、光線治療用光源46のための絞り機構52及び照明用光源47のための絞り機構52には歯車53、ラック54及びアクチュエータ55が備えられておらず、操作・表示パネル34にも照射範囲設定スイッチ38が備えられていない。その代わりに、絞り機構52には調節レバー65が備えられており、カバー48内から臥床台21上の新生児22の足側へ調節レバー65を突出させるための開口66がカバー48に設けられている。
【0049】
この様な実施例2の保育器11でも、光線治療用光源46による所望の分光放射照度と照明用光源47による所望の照度とは操作・表示パネル34で設定し、これらの直近の設定値とそれらの設定を行った時の保育器11の状態つまり閉鎖型保育器の状態であるかまたは開放型保育器の状態であるかとが操作・表示パネル34に記憶される。上述の設定によって、操作・表示パネル34が、光線治療用光源46の分光放射輝度や照明用光源47の輝度を調節する。光線治療用光源46による所望の分光放射照度や照明用光源47による所望の照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、保育器11の状態に対応する既定の分光放射照度や照度が所望の分光放射照度や照度にされる。
【0050】
従って、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、光線治療用光源46の分光放射輝度や照明用光源47の輝度が操作・表示パネル34によって自動的に調節される。しかし、それ以外の何らかの理由で新生児収容室16内の実際の分光放射照度または照度が変動した場合に所望の分光放射照度または照度に調節するためには、光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を操作・表示パネル34で設定し直す必要がある。
【0051】
光線治療用光源46や照明用光源47から放射される光線の照射範囲を調節するためには、図13中に実線と一点鎖線とで示されている様に、カバー48の開口66から突出している調節レバー65を手動で回動させることによって、図10(a)(b)に示されている様に絞り機構52における開口56の大きさを調節する。従って、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態を変更させた場合は、光線治療用光源46及び照明用光源47による照射範囲も変動するので、一般には、調節レバー65を手動で回動させて光線治療用光源46及び照明用光源47による照射範囲を調節する必要がある。
【0052】
なお、以上の実施例2の保育器11では、図12、13に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられているが、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の身長方向に並べられていてもよい。この場合、臥床台21上の新生児22の頭側に位置する光線治療用光源46のための調節レバー65または照明用光源47のための調節レバー65は、カバー48の形状を図1〜3の形状とは変更してカバー48から新生児22の頭側へ突出させてもよく、新生児22の左右側へ突出させてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0053】
また、上述の実施例1の保育器11では光線治療用光源46及び照明用光源47における照度調節及び照射範囲調節の何れもが自動で行われ、実施例2の保育器11では光線治療用光源46及び照明用光源47における照度調節及び照射範囲調節の何れもが手動で行われているが、光線治療用光源46または照明用光源47における照度調節または照射範囲調節の何れかが自動で行われてその他が手動で行われてもよい。
【実施例3】
【0054】
図15は、本発明の実施例3の保育器11における光線治療用光源46を示している。照明用光源47は、実施例1の図6〜8に示されている構造及び機能か、実施例2の図12〜14に示されている構造及び機能を有していてよい。この実施例3では、光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、光源ユニット67a〜67fは光線治療用の周波数の光線を放射し、光源ユニット67gは光源ユニット67a〜67fから放射される光線に対して補色関係の周波数の光線を放射する。従って、光線治療時に新生児22が白色光線で照射されて、処置者が新生児22を観察し易い。
【0055】
光源ユニット67gが光源ユニット67a〜67fと同じ範囲を照射する様に、光源ユニット67gの拡散レンズ63による拡散角度が、光源ユニット67a〜67fの拡散レンズ63による拡散角度よりも大きい。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62に供給される電力が一様に調節されるのではなく、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、例えば光源ユニット67a、67c、67e、67gのみが点灯されて光源ユニット67b、67d、67fが消灯される。
【0056】
複数の光源ユニット67a〜67gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。光線治療用光源46と照明用光源47とが並べられる方向は、臥床台21上の新生児22の左右方向でも身長方向でもよい。
【0057】
複数の光源ユニット67a〜67gのうちの光源ユニット67gが照明用光源47になっていてもよい。この場合には、照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としての光源ユニット67gに供給される電力が調節される。この実施例3とは逆に、照明用光源47が複数の光源ユニット67a〜67gまたは67a〜67fを有していて、光線治療用光源46が単一の光源ユニット51または67gしか有していなくてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0058】
なお、この実施例3では、上述の様に絞り機構52によって光線治療用光源46の照射範囲を調節することができないので、光線治療用光源46のための絞り機構52が設けられていない。しかし、天井26の外表面からの高さを光線治療用光源46と照明用光源47とで揃えるために、照明用光源47の単一の光源ユニット51のための絞り機構52と同じ高さで且つ天井26の外表面との対向部以外の領域が遮光されている台座(図示せず)が、光源ユニット67a〜67gの各々と天井26の外表面との間に設けられている。
【実施例4】
【0059】
図16は、本発明の実施例4の保育器11における光線治療用光源46の単一の光源ユニット51のLED62を示している。照明用光源47は、実施例1の図6〜8に示されている構造及び機能か、実施例2の図12〜14に示されている構造及び機能を有していてよい。この実施例4では、光線治療用光源46の単一の光源ユニット51のLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有しており、LEDチップ68a〜68fは光線治療用の周波数の光線を放射し、LEDチップ68gはLEDチップ68a〜68fから放射される光線に対して補色関係の周波数の光線を放射する。従って、光線治療時に新生児22が白色光線で照射されて、処置者が新生児22を観察し易い。
【0060】
光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46の複数のLEDチップ68a〜68gの各々に供給される電力が一様に調節されるのではなく、複数のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、例えばLEDチップ68a、68c、68e、68gのみが点灯されてLEDチップ68b、68d、68fが消灯される。
【0061】
複数のLEDチップ68a〜68gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップ68a〜68gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。光線治療用光源46と照明用光源47とが並べられる方向は、臥床台21上の新生児22の左右方向でも身長方向でもよい。
【0062】
複数のLEDチップ67a〜67gのうちのLEDチップ67gが照明用光源47になっていてもよい。この場合には、照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としてのLEDチップ67gに供給される電力が調節される。この実施例4とは逆に、照明用光源47が複数のLEDチップ68a〜68gまたは68a〜68fを有していて、光線治療用光源46が単一のLED62またはLEDチップ68gしか有していなくてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例5】
【0063】
本発明の実施例5の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、図16に示されている様に各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に複数のLEDチップ68a〜68gを有している。照明用光源47は、光線治療用光源46と光源ユニット67a〜67gを共用しており、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける何れか一つのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける複数のLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々何れか一つずつのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々複数ずつのLEDチップかである。
【0064】
光線治療器オン/オフスイッチ35がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gを含む総ての光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。複数の光源ユニット67a〜67gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。
【0065】
照明灯オン/オフスイッチ36がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gが照明用光源47になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、単一のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていればそのLEDチップ68a〜68gに供給される電力が調節される。
【0066】
照明用光源47による照射範囲を調節するためには、複数の光源ユニット67a〜67gが照明用光源47になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節されるが、単一のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば照射範囲を調節することができない。なお、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例6】
【0067】
本発明の実施例6の保育器11では、図6〜8か図12〜14に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが共に一つずつの光源ユニット51しか有していないが、図16に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47との各々の光源ユニット51の各々のLED62が共に複数ずつのLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46と照明用光源47との各々のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップの数が調節される。光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲は、絞り機構52によって自動または手動で調節される。
【実施例7】
【0068】
本発明の実施例7の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が一つずつのLEDチップを有している。照明用光源47は単一の光源ユニット51を有しており、図16に示されている様にそのLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。
【0069】
照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節される。光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲も、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数または点灯させるLEDチップ68a〜68gの数を調節することによって行われる。この実施例7とは逆に、光線治療用光源46では単一の光源ユニット51のLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有していて、照明用光源47では複数の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が一つずつのLEDチップを有していてもよい。
【実施例8】
【0070】
本発明の実施例8の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46と照明用光源47とが共に複数ずつの光源ユニット67a〜67gを有しており、各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に一つずつのLEDチップを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲も、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって行われる。
【実施例9】
【0071】
本発明の実施例9の保育器11では、図15に示されている様に照明用光源47は複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、図16に示されている様に各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に複数のLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46が、照明用光源47と光源ユニット67a〜67gを共用しており、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける何れか一つのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける複数のLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々何れか一つずつのLEDチップかである。
【0072】
光線治療器オン/オフスイッチ35がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gが光線治療用光源46になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、単一のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていればそのLEDチップ68a〜68gに供給される電力が調節される。
【0073】
光線治療用光源46による照射範囲を調節するためには、複数の光源ユニット67a〜67gが光線治療用光源46になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節されるが、単一のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば照射範囲を調節することができない。
【0074】
照明灯オン/オフスイッチ36がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gを含む総ての光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。複数の光源ユニット67a〜67gを有する照明用光源47では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。
【0075】
なお、以上の実施例では本発明が切換型保育器に適用されているが、本発明は閉鎖型保育器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、自らの力では体温調節等をできない新生児に適切な生理的環境を提供してこの新生児を保護育成するための、保育器の製造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
11 保育器
16 新生児収容室
23 左右側処置扉(側壁)
24 足側処置扉(側壁)
25 頭側処置壁(側壁)
26 天井
34 操作・表示パネル(照度設定調節部、照射範囲設定部)
46 光線治療用光源
52 絞り機構(照射範囲調節部)
64 照度計
67a〜67g 光源ユニット(光源要素)
68a〜68g LEDチップ(光源要素)
【技術分野】
【0001】
本発明は、自らの力では体温調節等をできない新生児に適切な生理的環境を提供してこの新生児を保護育成するための保育器に関する。
【背景技術】
【0002】
保育器には、新生児に適切な生理的環境を提供する新生児収容室が設けられている。閉鎖型保育器では、側壁及び天井で囲まれている新生児収容室内において温度のみならず湿度や酸素濃度等も制御される。開放型保育器でも、新生児収容室内の新生児の転落防止や保温等のために新生児収容室に側壁が備えられており、新生児収容室の上方に配置されている熱線放射源によって新生児収容室内の臥床台の温度や新生児自身の体温が制御される。更に、新生児収容室の天井が側壁から分離されており、天井を上昇及び下降させることによって閉鎖型保育器と開放型保育器とに随時に切り換えることのできる、切換型保育器もある。
【0003】
一方、高ビリルビン血症の新生児に対しては光線治療器による光線治療が施されており、保育器の新生児収容室内に収容されている新生児は収容状態のままで光線治療を施される。この様な収容状態の新生児に対して光線治療を施すために、従来は、スタンドを用いて光線治療器を新生児収容室の直上に位置させたり(例えば特許文献1)、吸盤を介して光線治療器を新生児収容室の天井上に載置したり(例えば特許文献2)していた。つまり、従来は、保育器に光線治療器が内蔵されておらず、保育器と光線治療器とが互いに別体であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−206390号公報
【特許文献2】特開平11−76434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1、2の様に保育器と光線治療器とが互いに別体であると、新生児収容室内の新生児に光線が適切に照射される様に、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療器を毎回位置決めする必要があるので、医師や看護師等である処置者の作業が煩雑である。また、光線治療以外の処置に光線治療器が支障にならない様に、この処置に先立って、光線治療器を移動させる必要がある。また、保育器のための電源の他に光線治療器のための電源も必要であるので、医療施設の建設コストが高くなる。
【0006】
更に、新生児収容室の天井は全体的に曲面であるので、保育器とは別体の光線治療器を新生児収容室の天井上に載置しても、光線治療器の全体を新生児収容室の天井の外表面に密接させることはできない。この結果、光線治療の対象である新生児が収容されている保育器内のみならず、光線治療を施す処置者やこの保育器の近傍の保育器内の新生児にまで、光線治療器からの光線が新生児収容室の天井の外表面での反射後に到達し易い。このため、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための十分な作業が必要である。従って、本発明は、保育器内の新生児に光線治療や光線治療以外の処置を施す際に処置者の作業が少なくてよく医療施設の建設コストも高くならない保育器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る保育器では、新生児収容室の天井の外表面に光線治療用光源が固定されている。このため、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源を毎回位置決めする必要がない。また、光線治療以外の処置に光線治療用光源が支障にならない様に、この処置に先立って、光線治療用光源を移動させる必要もない。また、保育器に供給される電力を光線治療用光源にも供給することができるので、光線治療用光源のためのみの電源が不要である。
【0008】
更に、光線治療用光源のうちで新生児収容室の天井の外表面との対向部以外の領域が遮光されている。このため、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が新生児収容室の天井の外表面での反射後に到達せず、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【0009】
請求項2、4、5に係る保育器では、光線治療用光源による所望の分光放射照度を照度設定調節部で設定することができるので、新生児の症状に応じた分光放射照度の光線を新生児に照射することができる。また、直近に設定された所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節するので、光線治療用光源の使用に際して処置者が所望の分光放射照度を照度設定調節部で毎回設定する必要がない。
【0010】
請求項3、4、5に係る保育器では、光線治療用光源による所望の分光放射照度が照度設定調節部で設定されていなければ、照度設定調節部が既定の分光放射照度を所望の分光放射照度にする。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照度設定調節部で分光放射照度を必ずしも設定する必要がない。
【0011】
請求項6に係る保育器では、照度計が新生児収容室内に配置されると共に照度設定調節部に接続されており、所望の分光放射照度に照度計の出力が等しくなる様に、光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節する。このため、光線治療用光源による新生児収容室内の実際の分光放射照度が所望の分光放射照度から何らかの理由で変動しても、所望の分光放射照度による光線治療が自動的に施される。
【0012】
請求項7に係る保育器では、切換型保育器において新生児収容室の天井が上昇または下降をされると、これら夫々の状態における所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ、光線治療用光源の分光放射輝度を照度設定調節部が調節する。このため、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照度設定調節部で光線治療用光源による所望の分光放射照度を毎回設定する必要がない。
【0013】
請求項8〜10に係る保育器では、光線治療用光源による照射範囲を調節する照射範囲調節部が具備されているので、光線治療の必要な範囲のみを光線治療用光源で照射することができる。このため、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が到達しにくく、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよい。
【0014】
請求項11に係る保育器では、照射範囲設定部で、光線治療用光源による所望の照射範囲を設定することができ、しかも、直近に設定された所望の照射範囲に基づいて照射範囲調節部を作動させる。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲を毎回調節する必要がない。
【0015】
請求項12に係る保育器では、照射範囲設定部で所望の照射範囲が設定されていなければ、照射範囲設定部が既定の照射範囲を所望の照射範囲にする。このため、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲設定部で照射範囲を必ずしも設定する必要がない。
【0016】
請求項13に係る保育器では、切換型保育器において新生児収容室の天井が上昇または下降をされると、これら夫々の状態における所望の照射範囲へ、光線治療用光源による照射範囲を照射範囲調節部が調節する。このため、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照射範囲設定部で光線治療用光源による照射範囲を毎回設定する必要がない。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る保育器では、光線治療に先立って、新生児収容室に対する適切な位置に光線治療用光源を毎回位置決めする必要がなく、光線治療以外の処置に先立って、光線治療用光源を移動させる必要もなく、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよいので、保育器内の新生児に光線治療や光線治療以外の処置を施す際に処置者の作業が少なくてよい。また、光線治療用光源のためのみの電源が不要であるので、医療施設の建設コストも高くならない。
【0018】
請求項2、4、5に係る保育器では、新生児の症状に応じた分光放射照度の光線を新生児に照射することができるので、最適な光線治療を新生児に施すことができる。また、光線治療用光源の使用に際して処置者が所望の分光放射照度を照度設定調節部で毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0019】
請求項3、4、5に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照度設定調節部で分光放射照度を必ずしも設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0020】
請求項6に係る保育器では、光線治療用光源による新生児収容室内の実際の分光放射照度が所望の分光放射照度から何らかの理由で変動しても、所望の分光放射照度による光線治療が自動的に施されるので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0021】
請求項7に係る保育器では、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照度設定調節部で光線治療用光源による所望の分光放射照度を毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0022】
請求項8〜10に係る保育器では、光線治療を施す処置者や光線治療の対象である新生児が収容されている保育器の近傍の保育器内の新生児にまで光線治療用光源からの光線が到達しにくく、これらの処置者や新生児の目等に光線が及ぼす悪影響を防止するための作業が少なくてよいので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0023】
請求項11に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲を毎回調節する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0024】
請求項12に係る保育器では、光線治療用光源の使用に際して処置者が照射範囲設定部で照射範囲を必ずしも設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【0025】
請求項13に係る保育器では、切換型保育器を閉鎖型保育器と開放型保育器との間で切り換えても処置者が照射範囲設定部で光線治療用光源による照射範囲を毎回設定する必要がないので、保育器内の新生児に光線治療を施す際に処置者の作業が更に少なくてよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施例1の保育器における天井及びその近傍部の正面断面図である。
【図2】閉鎖型保育器の状態にある本発明の各実施例に共通の保育器の正面図である。
【図3】開放型保育器の状態にある本発明の各実施例に共通の保育器の正面図である。
【図4】閉鎖型保育器の状態で光線治療中または照明中である本発明の実施例1の保育器を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図5】開放型保育器の状態で光線治療中または照明中である本発明の実施例1の保育器を示しており、(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図6】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分側面断面図である。
【図7】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分平面図である。
【図8】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分正面断面図である。
【図9】本発明の実施例1の保育器における絞り機構の平面図である。
【図10】本発明の実施例1の保育器における絞り機構の動作を示す平面図であり、(a)は開口が大きい状態、(b)は開口が小さい状態である。
【図11】本発明の実施例1の保育器における光線治療用光源または照明用光源の部分側断面図である。
【図12】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分側面断面図である。
【図13】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分平面図である。
【図14】本発明の実施例2の保育器における光線治療用光源及び照明用光源とそれらの近傍部との部分正面断面図である。
【図15】本発明の実施例3の保育器における光線治療用光源の底面図である。
【図16】本発明の実施例4の保育器における光線治療用光源の部分拡大底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図1〜16を参照しながら、切換型保育器に適用した本発明の実施例を説明する。図2、3が、夫々閉鎖型保育器及び開放型保育器の状態にある各実施例に共通の保育器を示している。この保育器11では、架台12に車輪13と支柱14とが取り付けられており、この支柱14に基部15が支持されている。基部15内には温度や湿度等の制御機構(図示せず)が設けられており、基部15上に新生児収容室16が設けられており、基部15下に収納用の引き出し17が取り付けられている。架台12には支柱14に沿って基部15等の高さを調節するためのペダル18も設けられている。新生児収容室16内には臥床台21(図4、5)が配置されている。
【0028】
臥床台21上の新生児22(図4、5)の左側及び右側に位置する一対の左右側処置扉23と、足側に位置する足側処置扉24と、頭側に位置する頭側処置壁25とが、新生児収容室16の側壁として設けられている。新生児収容室16の透明な天井26はこれらの側壁から分離されている。左右側処置扉23には透明な壁面27が備えられており、左右一対の手入窓(図示せず)とこれらの手入窓を開放及び閉鎖する左右一対の手入扉28とが壁面27に備えられている。架台12には左右一対の支柱31も取り付けられている。左右一対の支柱31内には別の左右一対の支柱32(図3)が入れ子状に配置されており、夫々の支柱32が夫々の支柱31内を摺動することができる。
【0029】
新生児収容室16の天井26と赤外線加熱器33とが左右一対の支柱32の一方及び他方に夫々支持されており、支柱32が支柱31内を摺動することによって天井26と赤外線加熱器33とは互いに独立に昇降することができる。この昇降は、医師や看護師等が電動機(図示せず)等の駆動機構に作動指示を与えることによって行われる。左右一対の支柱31のうちの一方の支柱31に操作・表示パネル34が取り付けられており、この操作・表示パネル34に光線治療器オン/オフスイッチ35、照明灯オン/オフスイッチ36、照度設定スイッチ37及び照射範囲設定スイッチ38が設けられている。支柱31には、赤外線加熱器33が部屋の壁面(図示せず)に衝突することを防止する保護具41も取り付けられている。
【実施例1】
【0030】
図1は、本発明の実施例1の保育器11における天井26及びその近傍部を示している。左右一対の支柱32の一方に支持アーム42が取り付けられており、支持アーム42の支持軸43に天井26が懸吊されている。支持アーム42には一対の弾性支持体44、45が取り付けられており、弾性支持体44、45が天井26を押圧することによって支持軸43の周りにおける天井26の回動を所定の角度範囲内に制限している。弾性支持体44、45の構造としては、例えば、圧縮コイルばねの先端部にゴム製の半球状押圧部が取り付けられている構造が考えられる。弾性支持体44の近傍では光線治療用光源46及び照明用光源47(図6、7)が天井26の外表面に固定されており、支持アーム42や光線治療用光源46や照明用光源47等が不透明なカバー48に覆われている。
【0031】
図6〜8は、光線治療用光源46及び照明用光源47とそれらの近傍部とを示している。光線治療用光源46及び照明用光源47は、臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられており、共に一つずつの光源ユニット51を有している。光線治療用光源46及び照明用光源47は共に絞り機構52を介して天井26の外表面に固定されている。光線治療用光源46及び照明用光源47は新生児収容室16内の臥床台21の中央部から変位しており、臥床台21の中央部を中心にして光線治療用光源46及び照明用光源47による照射を行うために、光線治療用光源46及び照明用光源47の夫々の光源ユニット51は天井26の外表面に対して傾斜している。
【0032】
図9に示されている様に、絞り機構52には歯車53、ラック54及びアクチュエータ55が備えられている。アクチュエータ55が作動すると、ラック54が直線駆動され、この直線駆動によって歯車53が回動され、この回動によって、図10(a)(b)に示されている様に絞り機構52における開口56の大きさが調節される。ラック54の代わりにウォームが用いられてもよく、この場合はウォームの回転駆動によって歯車53が回動される。また、アクチュエータ55の代わりにステッピングモータが用いられてもよい。絞り機構52における開口56の大きさは、リニアポテンショメータ(図示せず)またはエンコーダ(図示せず)による位置検出によって制御される。
【0033】
光源ユニット51の遮光ガイドカバー57が絞り機構52上に固定されており、図11に示されている様に基板58に固定され且つ拡散レンズ61に覆われているLED62が遮光ガイドカバー57内に配置されている。遮光ガイドカバー57内には拡散レンズ61とは別の拡散レンズ63も配置されている。光線治療用光源46及び照明用光源47では、天井26の外表面との対向部以外の領域つまり絞り機構52の開口56以外の領域が遮光されている。図4、5に示されている様に、臥床台21の上面のうちで新生児22の近傍部に照度計64が配置されている。照度計64は、放射量としての分光放射照度と測光量としての照度との両方を計測し、これらの計測値を操作・表示パネル34に出力する。
【0034】
以上の様な実施例1の保育器11において、新生児収容室16内に収容されている新生児22が高ビリルビン血症であってこの新生児22に対して光線治療を施す場合は、操作・表示パネル34の光線治療器オン/オフスイッチ35をオンにし、更に照度設定スイッチ37を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照度設定画面(図示せず)が表示されるので、この照度設定画面で光線治療用光源46の照度設定を選択し、表示された光線治療用光源46の照度設定画面で、光線治療用光源46から所定の距離(例えば30cm)における所望の分光放射照度(単位:μW/cm2/nm)を設定する。この直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。
【0035】
なお、所望の分光放射照度は、数値で直接に設定される代わりに、例えば高低や高中低等の段階で設定されてもよい。また、光線治療器オン/オフスイッチ35と照度設定スイッチ37と操作・表示パネル34に表示される照度設定画面との代わりに、光線治療器のオン/オフと分光放射照度とを順次に設定するダイアルが用いられてもよい。
【0036】
上述の設定によって、操作・表示パネル34が、光線治療用光源46の光源ユニット51のLED62に供給する電力、具体的には電圧や電流やパルスのデューティ率等を調節して、記憶されている所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度が得られる様に光線治療用光源46を調節する。光線治療用光源46による所望の分光放射照度の設定自体が未だされていなくて、光線治療用光源46による所望の分光放射照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、既定の分光放射照度を所望の分光放射照度にして光線治療用光源46の分光放射輝度を調節する。
【0037】
光線治療に必要な分光放射照度は35μW/cm2/nm以上であるが、光線治療用光源46から放射される光線には紫外線成分が多く含まれており、新生児22の眼に障害を発生させる可能性がある。このため、光線治療に際して新生児22にアイマスクを装着させるが、装着の失念を考慮して、上述の既定の分光放射照度は10μW/cm2/nm以下にされている。また、記憶されている設定値が10μW/cm2/nm以上である場合にも10μW/cm2/nm以下の分光放射照度に対応する分光放射輝度から光線治療用光源46の分光放射輝度を徐々に高めていく。
【0038】
操作・表示パネル34は、所望の分光放射照度に、照度計64から出力される分光放射照度が等しくなる様に、光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に調節する。従って、図2、4に示されている閉鎖型保育器の状態から図3、5に示されている開放型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、照度計64から出力される分光放射照度が低下するので、その場合は、所望の分光放射照度に、照度計64から出力される分光放射照度が等しくなるまで、操作・表示パネル34が光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に高める。逆に、開放型保育器の状態から閉鎖型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、操作・表示パネル34が光線治療用光源46の分光放射輝度を自動的に低める。
【0039】
光線治療用光源46から放射される光線の所望の照射範囲を設定するためには、操作・表示パネル34の照射範囲設定スイッチ38を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照射範囲設定画面(図示せず)が表示されるので、この照射範囲設定画面で光線治療用光源46の照射範囲設定を選択し、表示された光線治療用光源46の照射範囲設定画面で所望の照射範囲を設定する。光線治療用光源46による所望の照射範囲が変更されると、操作・表示パネル34が絞り機構52を作動させる。
【0040】
光線治療用光源46による照射範囲については、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。このため、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、光線治療用光源46による照射範囲も自動的に変更される。光線治療用光源46による所望の照射範囲の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における既定の照射範囲を所望の照射範囲にして光線治療用光源46の照射範囲を調節する。
【0041】
一方、臥床台21上の新生児22に対して光線治療やその他の処置を施すために照明が必要な場合は、操作・表示パネル34の照明灯オン/オフスイッチ36をオンにし、更に照度設定スイッチ37を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照度設定画面(図示せず)が表示されるので、この照度設定画面で照明用光源47の照度設定を選択し、表示された照明用光源47の照度設定画面で、照明用光源47から所定の距離(例えば30cm)における所望の照度(単位:lx)を設定する。この直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。
【0042】
なお、所望の照度は、数値で直接に設定される代わりに、例えば高低や高中低等の段階で設定されてもよい。また、照明灯オン/オフスイッチ36と照度設定スイッチ37と操作・表示パネル34に表示される照度設定画面との代わりに、照明灯のオン/オフと照度とを順次に設定するダイアルが用いられてもよい。
【0043】
上述の設定によって、操作・表示パネル34が、照明用光源47の光源ユニット51のLED62に供給する電力、具体的には電圧や電流やパルスのデューティ率等を調節して、記憶されている所望の照度に対応する輝度が得られる様に照明用光源47を調節する。照明用光源47による所望の照度の設定自体が未だされていなくて、照明用光源47による所望の照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、既定の照度(600lx程度)を所望の照度にして照明用光源47の輝度を調節する。
【0044】
操作・表示パネル34は、所望の照度に、照度計64から出力される照度が等しくなる様に、照明用光源47の輝度を自動的に調節する。従って、図2、4に示されている閉鎖型保育器の状態から図3、5に示されている開放型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、照度計64から出力される照度が低下するので、その場合は、所望の照度に、照度計64から出力される照度が等しくなるまで、操作・表示パネル34が照明用光源47の輝度を自動的に高める。逆に、開放型保育器の状態から閉鎖型保育器の状態へ保育器11の状態が変更されると、操作・表示パネル34が照明用光源47の輝度を自動的に低める。
【0045】
照明用光源47から放射される光線の所望の照射範囲を設定するためには、操作・表示パネル34の照射範囲設定スイッチ38を押圧する。この押圧によって操作・表示パネル34に照射範囲設定画面(図示せず)が表示されるので、この照射範囲設定画面で照明用光源47の照射範囲設定を選択し、表示された照明用光源47の照射範囲設定画面で所望の照射範囲を設定する。照明用光源47による所望の照射範囲が変更されると、操作・表示パネル34が絞り機構52を作動させる。
【0046】
照明用光源47による照射範囲については、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における直近の設定値が操作・表示パネル34に記憶される。このため、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、照明用光源47による照射範囲も自動的に変更される。照明用光源47による所望の照射範囲の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、操作・表示パネル34は、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との夫々における既定の照射範囲を所望の照射範囲にして照明用光源47の照射範囲を調節する。
【0047】
なお、以上の実施例1の保育器11では、図6、7に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられているが、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の身長方向に並べられていてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例2】
【0048】
図12〜14は、本発明の実施例2の保育器11における光線治療用光源46及び照明用光源47とそれらの近傍部とを示している。この実施例2では、光線治療用光源46及び照明用光源47の照度調節及び照射範囲調節が自動ではなく手動で行われる。従って、臥床台21の上面に照度計64が配置されておらず、光線治療用光源46のための絞り機構52及び照明用光源47のための絞り機構52には歯車53、ラック54及びアクチュエータ55が備えられておらず、操作・表示パネル34にも照射範囲設定スイッチ38が備えられていない。その代わりに、絞り機構52には調節レバー65が備えられており、カバー48内から臥床台21上の新生児22の足側へ調節レバー65を突出させるための開口66がカバー48に設けられている。
【0049】
この様な実施例2の保育器11でも、光線治療用光源46による所望の分光放射照度と照明用光源47による所望の照度とは操作・表示パネル34で設定し、これらの直近の設定値とそれらの設定を行った時の保育器11の状態つまり閉鎖型保育器の状態であるかまたは開放型保育器の状態であるかとが操作・表示パネル34に記憶される。上述の設定によって、操作・表示パネル34が、光線治療用光源46の分光放射輝度や照明用光源47の輝度を調節する。光線治療用光源46による所望の分光放射照度や照明用光源47による所望の照度の設定値が操作・表示パネル34に記憶されていなければ、保育器11の状態に対応する既定の分光放射照度や照度が所望の分光放射照度や照度にされる。
【0050】
従って、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態が変更されると、光線治療用光源46の分光放射輝度や照明用光源47の輝度が操作・表示パネル34によって自動的に調節される。しかし、それ以外の何らかの理由で新生児収容室16内の実際の分光放射照度または照度が変動した場合に所望の分光放射照度または照度に調節するためには、光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を操作・表示パネル34で設定し直す必要がある。
【0051】
光線治療用光源46や照明用光源47から放射される光線の照射範囲を調節するためには、図13中に実線と一点鎖線とで示されている様に、カバー48の開口66から突出している調節レバー65を手動で回動させることによって、図10(a)(b)に示されている様に絞り機構52における開口56の大きさを調節する。従って、閉鎖型保育器の状態と開放型保育器の状態との間で保育器11の状態を変更させた場合は、光線治療用光源46及び照明用光源47による照射範囲も変動するので、一般には、調節レバー65を手動で回動させて光線治療用光源46及び照明用光源47による照射範囲を調節する必要がある。
【0052】
なお、以上の実施例2の保育器11では、図12、13に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の左右方向に並べられているが、光線治療用光源46と照明用光源47とが臥床台21上の新生児22の身長方向に並べられていてもよい。この場合、臥床台21上の新生児22の頭側に位置する光線治療用光源46のための調節レバー65または照明用光源47のための調節レバー65は、カバー48の形状を図1〜3の形状とは変更してカバー48から新生児22の頭側へ突出させてもよく、新生児22の左右側へ突出させてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0053】
また、上述の実施例1の保育器11では光線治療用光源46及び照明用光源47における照度調節及び照射範囲調節の何れもが自動で行われ、実施例2の保育器11では光線治療用光源46及び照明用光源47における照度調節及び照射範囲調節の何れもが手動で行われているが、光線治療用光源46または照明用光源47における照度調節または照射範囲調節の何れかが自動で行われてその他が手動で行われてもよい。
【実施例3】
【0054】
図15は、本発明の実施例3の保育器11における光線治療用光源46を示している。照明用光源47は、実施例1の図6〜8に示されている構造及び機能か、実施例2の図12〜14に示されている構造及び機能を有していてよい。この実施例3では、光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、光源ユニット67a〜67fは光線治療用の周波数の光線を放射し、光源ユニット67gは光源ユニット67a〜67fから放射される光線に対して補色関係の周波数の光線を放射する。従って、光線治療時に新生児22が白色光線で照射されて、処置者が新生児22を観察し易い。
【0055】
光源ユニット67gが光源ユニット67a〜67fと同じ範囲を照射する様に、光源ユニット67gの拡散レンズ63による拡散角度が、光源ユニット67a〜67fの拡散レンズ63による拡散角度よりも大きい。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62に供給される電力が一様に調節されるのではなく、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、例えば光源ユニット67a、67c、67e、67gのみが点灯されて光源ユニット67b、67d、67fが消灯される。
【0056】
複数の光源ユニット67a〜67gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。光線治療用光源46と照明用光源47とが並べられる方向は、臥床台21上の新生児22の左右方向でも身長方向でもよい。
【0057】
複数の光源ユニット67a〜67gのうちの光源ユニット67gが照明用光源47になっていてもよい。この場合には、照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としての光源ユニット67gに供給される電力が調節される。この実施例3とは逆に、照明用光源47が複数の光源ユニット67a〜67gまたは67a〜67fを有していて、光線治療用光源46が単一の光源ユニット51または67gしか有していなくてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【0058】
なお、この実施例3では、上述の様に絞り機構52によって光線治療用光源46の照射範囲を調節することができないので、光線治療用光源46のための絞り機構52が設けられていない。しかし、天井26の外表面からの高さを光線治療用光源46と照明用光源47とで揃えるために、照明用光源47の単一の光源ユニット51のための絞り機構52と同じ高さで且つ天井26の外表面との対向部以外の領域が遮光されている台座(図示せず)が、光源ユニット67a〜67gの各々と天井26の外表面との間に設けられている。
【実施例4】
【0059】
図16は、本発明の実施例4の保育器11における光線治療用光源46の単一の光源ユニット51のLED62を示している。照明用光源47は、実施例1の図6〜8に示されている構造及び機能か、実施例2の図12〜14に示されている構造及び機能を有していてよい。この実施例4では、光線治療用光源46の単一の光源ユニット51のLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有しており、LEDチップ68a〜68fは光線治療用の周波数の光線を放射し、LEDチップ68gはLEDチップ68a〜68fから放射される光線に対して補色関係の周波数の光線を放射する。従って、光線治療時に新生児22が白色光線で照射されて、処置者が新生児22を観察し易い。
【0060】
光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46の複数のLEDチップ68a〜68gの各々に供給される電力が一様に調節されるのではなく、複数のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、例えばLEDチップ68a、68c、68e、68gのみが点灯されてLEDチップ68b、68d、68fが消灯される。
【0061】
複数のLEDチップ68a〜68gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップ68a〜68gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。光線治療用光源46と照明用光源47とが並べられる方向は、臥床台21上の新生児22の左右方向でも身長方向でもよい。
【0062】
複数のLEDチップ67a〜67gのうちのLEDチップ67gが照明用光源47になっていてもよい。この場合には、照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としてのLEDチップ67gに供給される電力が調節される。この実施例4とは逆に、照明用光源47が複数のLEDチップ68a〜68gまたは68a〜68fを有していて、光線治療用光源46が単一のLED62またはLEDチップ68gしか有していなくてもよい。また、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例5】
【0063】
本発明の実施例5の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、図16に示されている様に各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に複数のLEDチップ68a〜68gを有している。照明用光源47は、光線治療用光源46と光源ユニット67a〜67gを共用しており、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける何れか一つのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける複数のLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々何れか一つずつのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々複数ずつのLEDチップかである。
【0064】
光線治療器オン/オフスイッチ35がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gを含む総ての光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。複数の光源ユニット67a〜67gを有する光線治療用光源46では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。
【0065】
照明灯オン/オフスイッチ36がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gが照明用光源47になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、単一のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていればそのLEDチップ68a〜68gに供給される電力が調節される。
【0066】
照明用光源47による照射範囲を調節するためには、複数の光源ユニット67a〜67gが照明用光源47になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節されるが、単一のLEDチップ68a〜68gが照明用光源47になっていれば照射範囲を調節することができない。なお、照明用光源47は必ずしも設けられていなくてもよい。
【実施例6】
【0067】
本発明の実施例6の保育器11では、図6〜8か図12〜14に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47とが共に一つずつの光源ユニット51しか有していないが、図16に示されている様に、光線治療用光源46と照明用光源47との各々の光源ユニット51の各々のLED62が共に複数ずつのLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、光線治療用光源46と照明用光源47との各々のLEDチップ68a〜68gのうちで点灯させるLEDチップの数が調節される。光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲は、絞り機構52によって自動または手動で調節される。
【実施例7】
【0068】
本発明の実施例7の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46が複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が一つずつのLEDチップを有している。照明用光源47は単一の光源ユニット51を有しており、図16に示されている様にそのLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。
【0069】
照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節される。光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲も、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数または点灯させるLEDチップ68a〜68gの数を調節することによって行われる。この実施例7とは逆に、光線治療用光源46では単一の光源ユニット51のLED62が複数のLEDチップ68a〜68gを有していて、照明用光源47では複数の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が一つずつのLEDチップを有していてもよい。
【実施例8】
【0070】
本発明の実施例8の保育器11では、図15に示されている様に光線治療用光源46と照明用光源47とが共に複数ずつの光源ユニット67a〜67gを有しており、各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に一つずつのLEDチップを有している。光線治療用光源46による所望の分光放射照度または照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、光線治療用光源46または照明用光源47による照射範囲も、点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって行われる。
【実施例9】
【0071】
本発明の実施例9の保育器11では、図15に示されている様に照明用光源47は複数の光源ユニット67a〜67gを有しており、図16に示されている様に各々の光源ユニット67a〜67gの各々のLED62が共に複数のLEDチップ68a〜68gを有している。光線治療用光源46が、照明用光源47と光源ユニット67a〜67gを共用しており、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける何れか一つのLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの何れか一つの光源ユニットにおける複数のLEDチップか、複数の光源ユニット67a〜67gのうちの複数の光源ユニットにおける各々何れか一つずつのLEDチップかである。
【0072】
光線治療器オン/オフスイッチ35がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで光線治療用光源46としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。光線治療用光源46による所望の分光放射照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、複数の光源ユニット67a〜67gが光線治療用光源46になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節され、単一のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていればそのLEDチップ68a〜68gに供給される電力が調節される。
【0073】
光線治療用光源46による照射範囲を調節するためには、複数の光源ユニット67a〜67gが光線治療用光源46になっていれば点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節され、単一の光源ユニット67a〜67gの複数のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば点灯させるLEDチップ68a〜68gの数が調節されるが、単一のLEDチップ68a〜68gが光線治療用光源46になっていれば照射範囲を調節することができない。
【0074】
照明灯オン/オフスイッチ36がオンにされると、総ての光源ユニット67a〜67gの総てのLEDチップ68a〜68gのうちで照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gが点灯される。照明用光源47による所望の照度を調節するために照度設定スイッチ37等が操作されると、照明用光源47としてのLEDチップ68a〜68gを含む総ての光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数が調節される。複数の光源ユニット67a〜67gを有する照明用光源47では、絞り機構52によって照射範囲を調節することはできないが、複数の光源ユニット67a〜67gのうちで点灯させる光源ユニット67a〜67gの数を調節することによって照射範囲を調節することができる。
【0075】
なお、以上の実施例では本発明が切換型保育器に適用されているが、本発明は閉鎖型保育器にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、自らの力では体温調節等をできない新生児に適切な生理的環境を提供してこの新生児を保護育成するための、保育器の製造等に利用することができる。
【符号の説明】
【0077】
11 保育器
16 新生児収容室
23 左右側処置扉(側壁)
24 足側処置扉(側壁)
25 頭側処置壁(側壁)
26 天井
34 操作・表示パネル(照度設定調節部、照射範囲設定部)
46 光線治療用光源
52 絞り機構(照射範囲調節部)
64 照度計
67a〜67g 光源ユニット(光源要素)
68a〜68g LEDチップ(光源要素)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生児収容室の天井の外表面に固定されており前記外表面との対向部以外の領域が遮光されている光線治療用光源を具備することを特徴とする保育器。
【請求項2】
前記光線治療用光源による所望の分光放射照度を設定することができ直近に設定された前記所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節する照度設定調節部を具備することを特徴とする請求項1に記載の保育器。
【請求項3】
前記設定がなされていなければ、前記照度設定調節部が既定の分光放射照度を前記所望の分光放射照度にすること、を特徴とする請求項2に記載の保育器。
【請求項4】
前記照度設定調節部が、前記光線治療用光源に供給する電力を調節することによって前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節すること、を特徴とする請求項2または3に記載の保育器。
【請求項5】
前記光線治療用光源が複数の光源要素を有しており、
前記照度設定調節部が、前記複数の光源要素のうちで点灯させる前記光源要素の数を調節することによって前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節すること、を特徴とする請求項2または3に記載の保育器。
【請求項6】
前記新生児収容室内に配置されると共に前記照度設定調節部に接続されている照度計が備えられており、
前記所望の分光放射照度に前記照度計の出力が等しくなる様に、前記光線治療用光源の分光放射輝度を前記照度設定調節部が調節すること、を特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の保育器。
【請求項7】
前記天井が前記新生児収容室の側壁から分離されており、
前記天井が上昇及び下降可能であり、
前記天井が前記上昇または前記下降をされると、これら夫々の状態における前記所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ、前記光線治療用光源の分光放射輝度を前記照度設定調節部が調節すること、を特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の保育器。
【請求項8】
前記光線治療用光源による照射範囲を調節する照射範囲調節部を具備することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の保育器。
【請求項9】
前記光線治療用光源の光路中に設けられている絞り機構を前記照射範囲調節部が有しており、
前記絞り機構の開口の大きさが調節されることによって前記照射範囲が調節されること、を特徴とする請求項8に記載の保育器。
【請求項10】
前記光線治療用光源が複数の光源要素を有しており、
前記照射範囲調節部が、前記複数の光源要素のうちで点灯させる前記光源要素の数を調節することによって前記照射範囲を調節すること、を特徴とする請求項8に記載の保育器。
【請求項11】
所望の前記照射範囲を設定することができ直近に設定された前記所望の照射範囲に基づいて前記照射範囲調節部を作動させる照射範囲設定部を具備することを特徴とする請求項請求項8〜10の何れか一項に記載の保育器。
【請求項12】
前記設定がなされていなければ、前記照射範囲設定部が既定の照射範囲を前記所望の照射範囲にすること、を特徴とする請求項11に記載の保育器。
【請求項13】
前記天井が前記新生児収容室の側壁から分離されており、
前記天井が上昇及び下降可能であり、
前記天井が前記上昇または前記下降をされると、これら夫々の状態における前記所望の照射範囲へ、前記光線治療用光源による照射範囲を前記照射範囲調節部が調節すること、を特徴とする請求項11または12に記載の保育器。
【請求項1】
新生児収容室の天井の外表面に固定されており前記外表面との対向部以外の領域が遮光されている光線治療用光源を具備することを特徴とする保育器。
【請求項2】
前記光線治療用光源による所望の分光放射照度を設定することができ直近に設定された前記所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節する照度設定調節部を具備することを特徴とする請求項1に記載の保育器。
【請求項3】
前記設定がなされていなければ、前記照度設定調節部が既定の分光放射照度を前記所望の分光放射照度にすること、を特徴とする請求項2に記載の保育器。
【請求項4】
前記照度設定調節部が、前記光線治療用光源に供給する電力を調節することによって前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節すること、を特徴とする請求項2または3に記載の保育器。
【請求項5】
前記光線治療用光源が複数の光源要素を有しており、
前記照度設定調節部が、前記複数の光源要素のうちで点灯させる前記光源要素の数を調節することによって前記光線治療用光源の分光放射輝度を調節すること、を特徴とする請求項2または3に記載の保育器。
【請求項6】
前記新生児収容室内に配置されると共に前記照度設定調節部に接続されている照度計が備えられており、
前記所望の分光放射照度に前記照度計の出力が等しくなる様に、前記光線治療用光源の分光放射輝度を前記照度設定調節部が調節すること、を特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の保育器。
【請求項7】
前記天井が前記新生児収容室の側壁から分離されており、
前記天井が上昇及び下降可能であり、
前記天井が前記上昇または前記下降をされると、これら夫々の状態における前記所望の分光放射照度に対応する分光放射輝度へ、前記光線治療用光源の分光放射輝度を前記照度設定調節部が調節すること、を特徴とする請求項2〜5の何れか一項に記載の保育器。
【請求項8】
前記光線治療用光源による照射範囲を調節する照射範囲調節部を具備することを特徴とする請求項1〜7の何れか一項に記載の保育器。
【請求項9】
前記光線治療用光源の光路中に設けられている絞り機構を前記照射範囲調節部が有しており、
前記絞り機構の開口の大きさが調節されることによって前記照射範囲が調節されること、を特徴とする請求項8に記載の保育器。
【請求項10】
前記光線治療用光源が複数の光源要素を有しており、
前記照射範囲調節部が、前記複数の光源要素のうちで点灯させる前記光源要素の数を調節することによって前記照射範囲を調節すること、を特徴とする請求項8に記載の保育器。
【請求項11】
所望の前記照射範囲を設定することができ直近に設定された前記所望の照射範囲に基づいて前記照射範囲調節部を作動させる照射範囲設定部を具備することを特徴とする請求項請求項8〜10の何れか一項に記載の保育器。
【請求項12】
前記設定がなされていなければ、前記照射範囲設定部が既定の照射範囲を前記所望の照射範囲にすること、を特徴とする請求項11に記載の保育器。
【請求項13】
前記天井が前記新生児収容室の側壁から分離されており、
前記天井が上昇及び下降可能であり、
前記天井が前記上昇または前記下降をされると、これら夫々の状態における前記所望の照射範囲へ、前記光線治療用光源による照射範囲を前記照射範囲調節部が調節すること、を特徴とする請求項11または12に記載の保育器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−207438(P2010−207438A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−57616(P2009−57616)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(390022541)アトムメディカル株式会社 (38)
【Fターム(参考)】
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