説明

保護プレート

【課題】 荷台の耐久性の向上を図ることができ、荷台全体の重量の増加を抑制することができ、床板に取り付ける作業が容易な運送車両用木製荷台の保護プレートを提供する。
【解決手段】
保護プレート14は、床板の表面に固定されるプレート本体15と、プレート本体15にプレート本体15の前面に分散させて複数形成されプレート本体15の表面に加わる荷物荷重による表面に沿う方向の変形を吸収する貫通孔16と、プレート本体15の背面にその背面から突出して複数分散して設けられ木製床板に食い込んで床板にプレート本体15を固定する食い込み歯17とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物荷重から運送車両の木製の床板を保護する運送車両用木製荷台の保護プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
トラックなどの運送車両の荷台は、金属製型材により形成され縦根太材や横根太材と称される骨材を井げた状に組み合わせたベースに対して、熱帯林の主要樹木であるアピトンなどの木材を主原料として形成される複数枚の床板をネジなどで取り付けることにより形成される。床板同士は床板の側面に形成される凹形端面と凸形端面とを相互に嵌め込むなどして連結される。
【0003】
床板が木製である運送車両にあっては、荷物の運送時の振動や荷物の積込み積降し作業などにより床板が損耗するおそれがある。そこで、荷台の大きさに合わせて複数枚の縞板を溶接して一枚の保護プレートを形成し、接着剤を用いて床板に貼り付け、荷台の耐久性の向上を図ることがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
運送車両の荷台には、複数の小型の荷物を一度に運搬することのできるカゴ台車を搬入させることがあるが、カゴ台車は、その大きさにより運送車両の荷台に搬入できる台数が制限されることから、それぞれのカゴ台車は所定の搬入搬出経路に沿って所定の位置に順次搬入されることになる。したがって、保護プレートが貼り付けられた床板であっても、長期間にわたってカゴ台車による運送作業を行っていると、荷物荷重が集中するカゴ台車の車輪の跡がカゴ台車の搬入搬出経路に沿ってわだちとなり、そのわだちの両側に対応する部分が山となって大きく隆起することがあった。これは、保護プレートのわだちの部分が薄くなるように塑性変形するとともに、わだちの両側に変位して床板から剥離し山形にたわんで隆起部分が形成されるからと考えられる。荷物が積込まれる保護プレートに隆起部が形成されると、荷物の搬入搬出作業の妨げとなるとともに荷物を安定して積込むことができず、保護プレートの隆起部分を中心として保護プレートの損耗が進行し易くなる。
【0005】
その他、従来のように床板全面に鉄板製の保護プレートを貼り付けて木製の床板を保護するのでは、荷台全体の重量が大きくなってしまう。
【0006】
本発明の目的は、荷台の耐久性の向上を図ることができ、荷台全体の重量の増加を抑制することができ、床板に取り付ける作業が容易な運送車両用木製荷台の保護プレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の保護プレートは、運送車両の木製の床板を保護する運送車両用木製荷台の保護プレートであって、前記床板の表面に固定されるプレート本体と、前記プレート本体に当該プレート本体の全面に分散させて複数形成される貫通孔と、前記プレート本体の背面に当該背面から突出して複数分散して設けられ、前記床板に食い込んで前記床板に前記プレート本体を固定する食い込み歯とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の保護プレートは、それぞれの前記貫通孔は長孔であり、当該長孔を形成する際に当該長孔に対応する部分により前記貫通孔の端部を起点とする前記食い込み歯を形成することを特徴とする。
【0009】
本発明の保護プレートは、前記食い込み歯の前記起点から先端部に向けて前記食い込み歯をひねることにより、前記食い込み歯を前記床板に食い込ませることで塑性変形した前記床板の一部を捕捉するひねり部を前記食い込み歯に形成することを特徴とする。
【0010】
本発明の保護プレートは、荷物を運搬するとともに前記運送車両の前後方向に移動して前記荷台に搬入され前記荷台から搬出されるカゴ台車の搬入搬出経路に沿って複数の前記プレート本体を前記床板に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プレート本体の全面に形成される複数の貫通孔はプレート本体の表面に加わる荷物荷重による表面に沿う方向つまり面方向のプレート本体の変形を吸収する性質があり、プレート本体の背面に形成される複数の食い込み歯は床板に食い込んでプレート本体を床板に対して複数箇所で固定することができる。これにより、荷物荷重がプレート本体に加わり保護プレートの一部が塑性変形して面方向に変位することがあっても、その変位部分が山形に隆起してしまうことがなく床板との間で隙間が形成されにくいことから、長期間にわたって保護プレートを平坦な状態で使用することができる。保護プレートの損耗を進行させる隆起部分が形成されないので、荷台の耐久性が向上する。
【0012】
本発明によれば、貫通孔を形成する際にその貫通孔に対応する部分により貫通孔の端部を起点とする食い込み歯を形成することができるので、加工効率が良く材料に無駄が無い。プレス機を用いて保護プレートの表面全体を押圧し、食い込み歯のそれぞれを床板に食い込ませることにより保護プレートを床板に固定することができ、従来技術のように接着剤を塗布する手間がなく、取り付け作業が容易である。
【0013】
本発明によれば、食い込み歯の起点から先端部に向けて食い込み歯をひねることにより形成されるひねり部が、食い込み歯を床板に食い込ませたときに塑性変形した床板の一部を捕捉するので、保護プレートを強固に固定することができる。
【0014】
本発明によれば、荷物荷重が集中する部分にのみ保護プレートを取り付けることができ、例えば、荷物を運搬するとともに運送車両の前後方向に移動して荷台に搬入搬出されるカゴ台車の搬入搬出経路に沿って複数の保護プレートを床板に固定することができ、これにより必要な耐久性を確保しつつ荷台全体の重量の増加を抑制することができる。従来のように床板全面に保護プレートを取り付ける場合においても、耐久性を向上させた分だけ保護プレートの厚みを減らすことで軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は運送車両の一例としてのバンボディ車を示す斜視図であり、図2は図1のA−A線に沿う方向の縦断面図である。このバンボディ車にはコンテナ1が搭載されており、コンテナ1は荷物が積込まれる荷台2と、荷台2の前端に配置される前壁3と、荷台2の後端に配置されヒンジを中心に観音開き式に開閉可能な一対のドア4を備えた後壁5と、左右の側壁6,7と、これらの壁3,5〜7と一体となった天井壁8とを備え、その内部は貨物室9となっている。この貨物室9には積荷が直に積込まれるだけでなく、複数の荷物をまとめて運搬したり保管することができるカゴ台車を搬入することができる。
【0016】
荷台2は、車両の前後方向に伸びる複数本の縦根太材10と縦根太材10の上に組み付けられ車幅方向に伸びる複数本の横根太材11とを井げた状に組み合わせたベース12に対して、木製板材からなる床板13を皿タッピングネジを用いて取り付けることにより形成される。縦根太材10及び横根太材11は断面コ字状の鉄製のチャンネル材により形成されており、床板13は熱帯林の主要樹木であるアピトンにより形成されており、床板13同士は床板の側面に形成される凹形端面13aと凸形端面13bとを相互に嵌め込むなどして連結される(後述する図5参照)。なお、床板13は、アピトンに限らず、木材であれば他の樹木を用いて形成しても良く合板を使用しても良い。
【0017】
床板13の表面には、本発明の一実施の形態である運送車両用荷台の保護プレート14が取り付けられている。一方、床板13の背面には、アルミニウムなどの金属製シートやFRPなどの樹脂製シートからなるアンダーパン(図示省略)が貼り付けられており、このアンダーパンにより床板13の耐水性が確保されている。
【0018】
図3は本発明の一実施の形態である運送車両用荷台の保護プレートを表面側から示す拡大斜視図であり、図4は図3に示す保護プレートを背面側から示す拡大斜視図である。保護プレート14は例えば厚さが1mm程度の鋼板製の薄板であり、床板13の表面に固定されるプレート本体15を有しており、このプレート本体15にはプレート本体15の全面に分散させて複数の貫通孔16が形成されており、貫通孔16のそれぞれにはプレート本体15の表面に加わる荷物荷重による表面に沿う方向つまり面方向のプレート本体15の変形を吸収する性質がある。プレート本体15の全面に分散させて複数の貫通孔16を形成することで、荷物荷重がプレート本体15に加わって保護プレート14の一部が面方向に変位しても近傍にある貫通孔16でその変形を吸収することができる。
【0019】
これらの貫通孔16はプレス機械に装着された所定の加工工具をプレート本体15の表面にプレスすることにより形成される。なお、図示する場合には貫通孔16は8行32列の貫通孔16が千鳥足状に配列されているが、貫通孔16の数及びその配置は任意に設定することができ、貫通孔16自体の形状及び大きさも任意に設定することができ互いに異ならせることも可能である。
【0020】
プレート本体15の背面には背面から突出する複数の食い込み歯17が分散して設けられている。図示する食い込み歯17のそれぞれは貫通孔16の端部を起点とするものであり、プレス加工で貫通孔16が形成される際に、加工工具により打ち出される部分つまり貫通孔16に対応する部分をプレート本体15の背面側に突き出させることにより形成することができ、加工効率が良く材料に無駄が無い。それぞれの食い込み歯17の先端面は鋭利な切り込み面となっており、食い込み歯17の基端部は貫通孔16の端部と一体となっており、床板13を構成する木製床材に食い込み歯17を打ち込むことにより食い込み歯17の切り込み面側から床板13に食い込んで、保護プレート14が床板13に固定されるようになっている。
【0021】
本実施の形態においては、それぞれの貫通孔16はそれぞれの長径方向が同一の方向を向くように形成された長孔であり、貫通孔16の長径方向の端部のそれぞれには食い込み歯17の基端部がプレート本体15に一体として設けられており、1つの貫通孔16に対して2つの食い込み歯17が形成されている。貫通孔16を長孔とすると、その長孔の短径方向に生じた保護プレート14の変形が吸収され易くなる性質がある。加えて、本実施の形態においては、それぞれの食い込み歯17には、食い込み歯17の起点つまり基端部から先端部に向けてひねられることにより、食い込み歯17を床板13に食い込ませることで塑性変形した木材繊維の一部を捕捉するひねり部17aが形成されており、食い込み歯17が床板13から抜けにくく保護プレート14を床板13に強固に固定できる構造となっている。なお、1つの貫通孔16に1つ又は3つ以上の食い込み歯を設けるようにしても良く、貫通孔16の縁部に沿って貫通孔16を取り囲むように筒状の食い込み歯を設けるようにしても良い。
【0022】
図5は図3及び図4に示す保護プレートを床板に取り付けた状態の一例を示す拡大斜視図である。床板13同士は床板13の側面に形成される凹形端面13aと凸形端面13bとを相互に嵌め込むなどして連結され、貨物室9の底面を形成している。
【0023】
床板13に保護プレート14を取り付ける際には、食い込み歯17が形成された背面が床板13に対向するように保護プレート14を床板13上に配置し、次いで、プレス機を用いて保護プレート14の表面全体を押圧し、食い込み歯17のそれぞれを床板13に打ち込む。このとき、それぞれの食い込み歯17に形成されたひねり部17aが床板13の木材繊維の一部を捕捉するので、容易に取り外すことが出来ない、つまり強固に固定することができる。従来技術のように接着剤を用いる必要がないので取り付け作業が容易であり、床板13に保護プレート14を取り付けることにより、荷台2の耐久性を向上させることができる。なお、床板13に保護プレート14を取り付けてからベース12に対して床板13を取り付けるようにしても良く、ベース12に床板13を取り付けてから床板13に対して保護プレート14を取り付けるようにしても良い。
【0024】
プレート本体15は複数の食い込み歯17により複数箇所で床板13に対して強固に固定されておりプレート本体15が全体として変形しにくく、更にプレート本体15に形成される複数の貫通孔16はプレート本体15の表面に沿う方向つまり面方向の変形を吸収する性質があることから、保護プレート14や床板13が表面に沿う方向に変形しても、保護プレート14の一部が山形に隆起してしまうことがなく、保護プレート14と床板13との間に隙間が生じにくいことから、長期間にわたって保護プレート14を平坦な状態で使用することができる。保護プレート14の損耗を進行させる隆起部分が形成されないので荷台2の耐久性が向上し、また、隆起部分によって荷物の搬入搬出作業が妨げられることなく荷物を安定して積込むことができる。
【0025】
運送車両の荷台2には、複数の小型の荷物をまとめて運搬したり保管することができるカゴ台車18を搬入することができる。図5に示す場合には、カゴ台車18は、車輪19が取り付けられる四角形状の底板20と、その底板20に対して直角に取り付けられ荷物の収容室21を区画形成する背面側の格子枠22及び側面側の格子枠23a,23bとを有しており、格子枠22の反対側は開口しており荷物の収容口となっている。
【0026】
カゴ台車18は、その大きさにより運送車両の荷台2に搬入できる台数が制限されることから、それぞれのカゴ台車18は所定の搬入経路に沿って所定の搬入位置に順次搬入されることになる。この場合、保護プレートを荷物荷重が加わる部分、即ちカゴ台車18の搬入搬出経路及び運送時の設置位置にのみ取り付けるようにしても良く、図5に示す場合には、カゴ台車18の搬入搬入経路に対応させて保護プレート14とこれよりも幅寸法の小さな保護プレート14aとが取り付けられており、荷台全体に保護プレート14を取り付ける場合に比して荷台全体の重量の増加が抑制されている。
【0027】
また、カゴ台車18が移動することにより生じる車輪のわだちの跡が所定の搬入搬出経路に沿って保護プレート14,14aに形成されたとしても、プレート本体15は複数の食い込み歯17により複数箇所で床板13に対して強固に固定されておりプレート本体15が全体として変形しにくく、更に貫通孔16には面方向の変形を吸収する性質があることから、わだちの両側が山形に隆起することがなく、プレート本体15全体の変形が抑制されている。特に、図5に示すように、貫通孔16の長径方向と所定の搬入搬出経路に沿って移動されるカゴ台車18の移動方向とを一致させるように保護プレート14,14aを取り付けることにより、保護プレート14,14aのわだちの部分が薄くなるように塑性変形してわだちの両側に変位が発生することがあっても、その変位を効果的に吸収することができる。
【0028】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。たとえば、本発明は幌車やウイング車やトレーラなど他の運送車両にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】運送車両の一例としてのバンボディ車を示す斜視図である。
【図2】図1のA−A線に沿う方向の縦断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態である運送車両用荷台の保護プレートを表面側から示す拡大斜視図である。
【図4】図3に示す保護プレートを背面側から示す拡大斜視図である。
【図5】保護プレートを床板に取り付けた状態の一例を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
1 コンテナ
2 荷台
3 前壁
4 ドア
5 後壁
6,7 側壁
8 天井壁
9 貨物室
10 縦根太材
11 横根太材
12 ベース
13 床板
13a 凹形端面
13b 凸形端面
14 保護プレート
14a 保護プレート
15 プレート本体
16 貫通孔
17 食い込み歯
17a ひねり部
18 カゴ台車
19 車輪
20 底板
21 収容室
22 格子枠
23a,23b 格子枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運送車両の木製の床板を保護する運送車両用木製荷台の保護プレートであって、
前記床板の表面に固定されるプレート本体と、
前記プレート本体に当該プレート本体の全面に分散させて複数形成される貫通孔と、
前記プレート本体の背面に当該背面から突出して複数分散して設けられ、前記床板に食い込んで前記床板に前記プレート本体を固定する食い込み歯とを有することを特徴とする保護プレート。
【請求項2】
請求項1記載の保護プレートにおいて、それぞれの前記貫通孔は長孔であり、当該長孔を形成する際に当該長孔に対応する部分により前記貫通孔の端部を起点とする前記食い込み歯を形成することを特徴とする保護プレート。
【請求項3】
請求項1又は2記載の保護プレートにおいて、前記食い込み歯の前記起点から先端部に向けて前記食い込み歯をひねることにより、前記食い込み歯を前記床板に食い込ませることで塑性変形した前記床板の一部を捕捉するひねり部を前記食い込み歯に形成することを特徴とする保護プレート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護プレートにおいて、荷物を運搬するとともに前記運送車両の前後方向に移動して前記荷台に搬入され前記荷台から搬出されるカゴ台車の搬入搬出経路に沿って複数の前記プレート本体を前記床板に固定することを特徴とする保護プレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−232233(P2006−232233A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−53849(P2005−53849)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000229357)日本トレクス株式会社 (27)
【出願人】(502176959)イハラ株式会社 (1)