説明

保護制御装置および保護制御方法

【課題】本発明の目的は、高速サンプリングによってアナログフィルタ回路及びディジタルフィルタ回路を小型化すると共に、複数のアナログ入力に対してA/D変換のタイミングを揃えることで保護制御演算の位相誤差をなくすことである。
【解決手段】電力系統からアナログフィルタ11a〜11nを介して入力される複数のアナログ信号個別に、サンプリング周波数に従いディジタルデータに変換するA/D変換手段12a〜12nを複数備え、前記ディジタルデータに対しフィルタ演算を実行するディジタルフィルタ手段200と、前記ディジタルフィルタ手段の演算結果を基に保護制御演算を実行して前記電力系統に対する保護信号を生成する保護制御演算手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディジタル保護リレーに係り、特に、電力系統のアナログ信号をディジタルデータに変換し、このディジタルデータに対して、ディジタルフィルタ演算処理を行い、この処理結果を基に電力系統を保護するディジタル保護リレーに関する。
【背景技術】
【0002】
ディジタル保護リレーは、例えばアナログ入力部,ディジタル保護演算処理部,整定部,出力部を備えて構成されている。アナログ入力部には、折り返し誤差防止用のアナログフィルタ,サンプリングホールド回路,マルチプレクサ,A/D変換器,バッファを備えたディジタル信号処理装置が設けられている。
【0003】
ディジタル信号処理装置は、高速サンプリングデータを用いるディジタルフィルタ処理用の入力基板と、保護制御演算用の演算基板とに分かれて構成されている。入力基板は、例えば、系統からの信号を電気角3.75°でサンプリングしてディジタルフィルタ演算を実行し、この演算結果によるデータを電気角30°に1回ずつ保護演算部に渡すようになっている。保護演算基板は、入力基板からデータを取り込み、取り込んだデータと保護演算アルゴリズムに基づいて演算処理を実行するようになっている(非特許文献1参照)。
【0004】
上記のような従来のディジタル保護リレーにおいて、折り返し誤差防止用のアナログフィルタは、サンプリング周波数である4800Hz(電気角3.75°)近傍で60dB以上減衰させるために、3次のローパスフィルタで構成されていたため、アナログフィルタの小型化が困難になるといる課題があった。
【0005】
これに対して、折り返し誤差防止用のアナログフィルタを簡素化するために、サンプリング周波数のn倍の周波数でディジタルデータに対してフィルタ処理するディジタルフィルタ手段によってアナログ回路の回路素子を小型化する方式が考案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−248477号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「電気協同研究」第50巻第1号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1の(0010)では、マルチプレクサで複数のアナログ入力信号を時分割で切替えて多重化し、A/D変換器で多重化したアナログ入力信号をディジタル信号に変換する方式が紹介されている。しかしサンプリングを単純に高速化する場合、高速なマルチプレクサとA/D変換器が必要となるが、特にマルチプレクサでは、高速サンプリングに十分な切替え動作が達成できないという課題があった。
【0009】
また、マルチプレクサによって複数のアナログ入力に対して時分割で処理するため、A/D変換のタイミングがアナログ入力毎に異なり、保護制御演算に誤差が生じる課題があった。
【0010】
本発明の目的は、高速サンプリングによってアナログフィルタ回路及びディジタルフィルタ回路を小型化すると共に、複数のアナログ入力に対してA/D変換のタイミングを揃えることで保護制御演算の位相誤差をなくすことである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、電力系統の各相に設けられ、前記各相に流れる交流電流をアナログ交流電気量として取り込む入力変換器と、前記入力変換器によって取込まれたアナログ交流電気量をA/D変換するA/D変換手段と、前記A/D変換手段から出力される各相のディジタル電気量に対して前記A/D変換に伴う変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行い所定のサンプリング周波数で前記フィルタ演算処理結果をメモリへ書き込むディジタルフィルタ手段と、前記メモリから前記フィルタ演算処理結果を読出し前記電力系統の事故の有無を判断する保護リレー演算を行うリレー演算手段と、を有し、前記A/D変換手段は前記入力変換器ごとに設けられ、前記ディジタルフィルタ手段が前記メモリへ書き込むサンプリング周波数よりも高い周波数で前記A/D変換することを特徴とする保護制御装置によって解決される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アナログ回路を構成する回路素子の小型化と、複数のアナログ入力に対してサンプリングのタイミングを揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ディジタル保護リレーのブロック構成図。
【図2】アナログフィルタ
【図3】移動平均化のフィルタ
【図4】ディジタル保護リレーのタイムチャート
【図5】(a)フィルタの全体構成、(b)アナログとディジタルフィルタの周波数特性、(c)高調波除去用のディジタルフィルタの周波数特性
【図6】ディジタル保護リレーのタイムチャート
【図7】ディジタル保護リレーのタイムチャート
【図8】ディジタル保護リレーを単一のプリント基板に実装した場合のブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明に係るディジタル保護リレーの全体構成図である。ディジタル保護リレー装置は、複数の入力変換器10a〜10m,複数のアナログフィルタ11a〜11m,複数のA/D変換器12a〜12m,タイミング制御回路100,ディジタルフィルタ200,バッファメモリ300,オシレータ400,CPU600,システムバス500,メインメモリ700,入出力部800,通信部900によって構成される。
【0015】
複数の入力変換器10a〜10mは、電力系統の相ごとに、また電流の検出箇所ごとに設けられCT(変流器),変圧器(PT)などを備えて構成される。これら各入力変換器10a〜10mは、電力系統からアナログ信号として電流信号、電圧信号を取り込み、取り込んだ信号を全て電圧信号としてその振幅を±10V以下に変換して、次段のアナログフィルタ11a〜11mに出力する。

【0016】
各アナログフィルタ11a〜11mはサンプリング時の折り返し誤差を防止するために、高周波領域を低減させるローパスフィルタとして、例えば一次遅れ要素のローパスフィルタで構成されている。
【0017】
アナログフィルタ11a〜11mを1次遅れ要素のローパスフィルタで構成する場合、図2に示すように抵抗21と抵抗22とコンデンサ23とオペアンプ24から構成できる。ローパスフィルタの周波数特性は抵抗22とコンデンサ23の積分要素で決定される。アナログフィルタ11a〜11mを通過した信号は、AD変換器12a〜12mに入力される。
【0018】
各A/D変換器12a〜12mは、タイミング制御回路100からのA/D変換開始信号101aに従い、アナログフィルタ11a〜11mを通過した信号を同タイミングでディジタル化し、データをディジタルフィルタ200に出力する。各A/D変換器12a〜12mは、基板上に1箇所に集めてアナログフィルタ11a〜11mの近傍に並べて配置する。
【0019】
ディジタルフィルタ200は、n倍のオーバサンプリングでA/D変換器12a〜12mを動作させた場合、nサンプル移動平均化のディジタルフィルタとなり、タイミング制御回路100のディジタルフィルタ演算制御信号101bに従いディジタルフィルタ処理が実行される。移動平均化のフィルタは、図3に示すようにn次FIR(Finite Impulse Response)タイプで構成され、n−1個の遅延器(Z-1)201〜215と、n−1個の加算器216〜230と、1個の乗算器240により構成される。n−1個の遅延器(Z-1)201〜215は過去n−1サンプル分のデータを出力する。n−1個の加算器216〜230は、過去n−1サンプル分のデータと最新サンプルのデータを総和し、結果を乗算器240に出力する。乗算器240は、総和された結果をnで除算して出力することで、nサンプル分のデータが移動平均化される。ディジタルフィルタ200は、電力系統の信号に重畳する高調波信号を除去するものではなく、A/D変換によるサンプリング周波数の折り返しノイズを除去するものである。
【0020】
ディジタルフィルタ200の出力データは、順次バッファメモリ300に格納される。バッファメモリ300への書き込み動作は、タイミング制御回路100からの書き込み信号及び書き込みアドレス信号101cに従う。A/D変換器12a〜12mとディジタルフィルタ200の動作タイミングは、オシレータ400をクロック源として基本サンプリング周波数fsのそれぞれn倍で動作し、バッファメモリ300のデータ書き込みタイミングは基本サンプリング周波数fsで動作し、それぞれの動作が同期するようにタイミング制御回路100で制御する。バッファメモリ300にデータ書き込み後、タイミング制御回路100はCPU600に演算開始信号を示す割込信号101dを印加する。
【0021】
CPU600は、タイミング制御回路100から繰り返し出力される割込信号101dに応答し、システムバス500を経由してバッファメモリ300からデータを読み出して、電力系統の信号に重畳する高調波信号を除去用のディジタルフィルタ処理と保護演算・シーケンス処理を行い、処理結果から入出力制御を実行する。
【0022】
ディジタル保護リレーの作用を図4のタイムチャートに従って説明する。電力系統から電圧,電流を示すアナログ信号は、入力変換器10a〜10mに入力され、それぞれ電圧信号への変換後、低周波成分がアナログフィルタ11a〜11mを通過してA/D変換器12a〜12mに入力される。各A/D変換器12a〜12mに入力されたアナログ信号は、電気角3.75°の1/nの周期、言い換えてn倍のオーバサンプリング周波数のタイミングに従いディジタルデータに変換される。変換されたディジタルデータは、ディジタルフィルタ200に入力され、A/D変換器12a〜12mと同じ周期で移動平均化のフィルタ処理が行われる。フィルタ処理されたデータは、電気角3.75°,4800Hzのデータに間引かれ、バッファメモリ300に書き込まれる。CPU600は、タイミング制御回路100から電気角30°、600Hzで入力される割込信号101dにより、電気角3.75°のデータをバッファメモリ300から8個まとめて読出し、高調波除去のディジタルフィルタ、保護演算・シーケンス処理、常時監視を実行し、保護信号を生成する。保護信号は、入出力部800を介して電力系統の保護対象に出力される。また、CPU600の処理データはメインメモリ700に格納され、外部に対して通信は、通信部900で行われ、外部条件などの情報は入出力部を介してCPU600に取り込まれる。CPU600は、バッファメモリ300,メインメモリ700,入出力部800,通信部900の各デバイスに対し、システムバス500を介してデータ入出力する。
【0023】
図5(a)にフィルタ構成とサンプリング周波数を示す。この例では、アナログフィルタ11a〜11m,A/D変換器12a〜12m,ディジタルフィルタ200,デシメーション1,高調波除去用ディジタルフィルタ,デシメーション2がカスケードに接続されている。A/D変換器12a〜12mとディジタルフィルタ200はサンプリング周波数fs1(4800Hz×n)で動作し、デシメーション1により信号は1/nに間引かれ、高調波除去用ディジタルフィルタはサンプリング周波数fs2(4800Hz)で動作する。さらにデシメーション2により信号は1/8に間引かれ、CPU600による保護演算はサンプリング周波数fs3(600Hz)で動作する。
【0024】
図5(b)に、アナログフィルタ11a〜11mとディジタルフィルタ200の特性を示す。アナログフィルタ11a〜11mは、A/D変換のサンプリング周波数fs1の折り返しノイズ領域を除去するためfs1を基準に減衰させる特性となり、ディジタルフィルタは、次段のサンプリング周波数fs2の折り返しノイズ領域を除去するため、fs2を基準に減衰させる特性になっている。
【0025】
図5(c)に、高調波除去用ディジタルフィルタの特性を示す。高調波除去用フィルタは、高調波除去と次段サンプリング周波数fs3の折り返しノイズ領域を除去するためfs3を基準に減衰させる特性になっている。
【0026】
このように、デシメーションを複数設けて多段階なサンプリングレートになる構成において、次段のサンプリングによる折り返しノイズを除去するために、フィルタは次段のサンプリング周波数を基準に減衰させる特性としている。
【0027】
このように、A/D変換器12a〜12mとディジタルフィルタ200は、基準サンプリング周波数fs2(4800Hz)に対してn倍のオーバサンプリング周波数fs1で動作させ、ディジタルフィルタ200の特性は、次段の基準サンプリング周波数fs2を基準にして折り返しノイズを除去する特性にする。その結果、アナログフィルタ11a〜11mは、基準サンプリング周波数のn倍以上の周波数領域を減衰させればよいので穏やかな周波数特性にでき、部品バラツキや素子の劣化による特性変動は、基本波である50Hz,60Hzにおいてほとんど発生しない。またアナログフィルタ11a〜11mは、遮断周波数が高いことから小容量なコンデンサを使用できる為に小型化が可能で、小型化に伴う高密度実装が可能となる。
【0028】
図6にディジタルフィルタ200の別の構成を示す。図6に示すディジタルフィルタ200は、セレクタ210,220,230とアキュムレータ240と加算器250と乗算器260で構成される。
【0029】
セレクタ210は、複数のA/D変換器12a〜12mから入力されるデータを選択して加算器250に出力するものであり、セレクタ220は、複数のA/D変換器12a〜12mに対応するアキュムレータ240のデータを選択して加算器に出力する。セレクタ210と220のデータ選択信号は同一なものであり、タイミング制御回路100から送られる。アキュムレータ240は、複数のA/D変換器12a〜12m毎に個別に設けられており、累積加算による総和データが格納されるレジスタである。セレクタ230は、各アキュムレータ240a〜240mの総和データか初期値0を選択して加算器250に出力する。セレクタ230のデータ選択信号もタイミング制御回路100から送られる。加算器250は、A/D変換器12a〜12mから入力されるデータとアキュムレータ240a〜240mの総和データを加算するものである。乗算器260は、nサンプルのデータ平均化のために1/nを乗算するものである。
【0030】
ディジタルフィルタ200の動作について図7のタイムチャートに従って説明する。複数のA/D変換器12a〜12mは、タイミング制御回路100より同時に、変換開始信号101aが入力されると一斉にA/D変換中の状態となり、A/D変換が終了するとデータ出力状態になる。ディジタルフィルタ200は、A/D変換のデータ出力期間を利用し、複数のA/D変換12a〜12mからの入力データを時分割で処理する。時分割化はセレクタ210と220のデータ選択により実行される。基準サンプリング周期においてn回加算処理が実行され、初回だけ初期値0とA/D変換器の入力データを加算し、2回目以降はアキュムレータとA/D変換器の入力データを加算し、その処理の切替えはセレクタ230で選択される。最後のn回目のみ加算結果をバッファメモリに書き込みする。
【0031】
ディジタルフィルタ200はnサンプル移動平均化のフィルタであり、図3に示すように本来はn次FIRタイプで構成される。しかし、図5(a)のフィルタ構成に示すように、ディジタルフィルタ200の後にデシメーション1があり、ディジタルフィルタの出力データは1/nに間引かれる。そのためディジタルフィルタ処理で実質必要な加算回数は1/(n−1)となり、図6のように加算器1個で対応可能となる。また、メモリ及びレジスタにより実現するn−1個の遅延器(Z-1)から、総和の途中データを格納するアキュムレータレジスタ1個に置き換えることが可能となる。
【0032】
この結果、ディジタルフィルタ200の構成をn次FIRタイプから図6に示す構成に置き換えることにより、回路規模を1/(n−1)に大幅に削減できる。
【0033】
図8は、本発明に係るディジタル保護リレーを単一のプリント基板に実装した場合の全体構成図である。図8に示すディジタル保護リレー装置は、複数の入力変換器10a〜10m,複数のアナログフィルタ11a〜11m,複数のA/D変換器12a〜12m,タイミング制御回路100,ディジタルフィルタ200,バッファメモリ300,オシレータ400,CPU600,システムバス500,メインメモリ700,入出力部800,通信部900,アナログ電源1000,ディジタル電源2000によって構成される。また上記に示す構成要素はプリント基板3000に搭載され、アナログ電源1000とディジタル電源は、アナログ電源層1010とアナロググランド層1020、ディジタル電源層2010とディジタルグランド層2020に分離して上記に示す各構成要素に供給される。
【0034】
複数のアナログフィルタ11a〜11mとA/D変換器12a〜12mは、プリント基板3000の一箇所に集中配置し、アナログ電源層1010とアナロググランド層1020によりアナログ電源1000から電源が共通供給される。これにより、複数のアナログフィルタ11a〜11mとA/D変換器12a〜12mは、ディジタル電源2000を用いるCPU600やタイミング制御回路100等の各要素から発生するディジタルノイズの影響を受けずに済む。
【0035】
また複数のアナログ入力に応じたアナログフィルタ11a〜11mとA/D変換器12a〜12mは、アナログ電源層1010とアナロググランド層1020を共通に利用することにより、複数のアナログ入力間におけるA/D変換器誤差を無くすることができる。
【0036】
以上本発明によれば、入力変換器10a〜10mごとに専用のA/D変換器12a〜12mを設けることで、サンプリングホールド回路と、時分割方式でアナログ信号を多重化する高速なマルチプレクサを不要とし、またA/D変換器のオーバサンプリングにおいては、高速なA/D変換器を用いなくても一般のA/D変換器を複数個使用で対応できる。
【0037】
さらに、入力変換器10a〜10mごとに専用のA/D変換器12a〜12mを設けたことにより、複数のアナログ入力に対してサンプリングのタイミングを揃えられるので、各アナログ入力のサンプリングのずれによる位相誤差を無くすることができる。
【符号の説明】
【0038】
10a〜10m 入力変換器
11a〜11m アナログフィルタ
12a〜12m A/D変換器
100 タイミング制御回路
200 ディジタルフィルタ
300 バッファメモリ
400 オシレータ
500 システムバス
600 CPU
700 メインメモリ
800 入出力部
900 通信部
1000 アナログ電源
1010 アナログ電源層
1020 アナロググランド層
2000 ディジタル電源
2010 ディジタル電源層
2020 ディジタルグランド層
3000 プリント基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統の各相に設けられ、前記各相に流れる交流電流をアナログ交流電気量として取り込む入力変換器と、
前記入力変換器によって取り込まれたアナログ交流電気量をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力される各相のディジタル電気量に対して前記A/D変換に伴う変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行い所定のサンプリング周波数で前記フィルタ演算処理結果をメモリへ書き込むディジタルフィルタ手段と、
前記メモリから前記フィルタ演算処理結果を読出し前記電力系統の事故の有無を判断する保護リレー演算を行うリレー演算手段と、を有し、
前記A/D変換手段は前記入力変換器ごとに設けられ、前記ディジタルフィルタ手段が前記メモリへ書き込むサンプリング周波数よりも高い周波数で前記A/D変換することを特徴とする保護制御装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記ディジタルフィルタ手段は、前記フィルタ演算処理結果を前記メモリへ書き込むサンプリング周波数よりも高い周波数で前記フィルタ演算処理を行い、
前記リレー演算手段は、前記サンプリング周波数よりも低い周波数で前記保護リレー演算を行うことを特徴とする保護制御装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記A/D変換手段および前記ディジタルフィルタ手段は前記サンプリング周波数のn倍(nは2以上の整数)で前記A/D変換および前記フィルタ演算処理を行い、
前記リレー演算手段は、前記サンプリング周波数のm分の1(mは2以上の整数)の周波数で前記保護リレー演算を行うことを特徴とする保護制御装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記入力変換器から取り込まれたアナログ交流電気量に対し前記A/D変換手段の変換周波数を基準として1次遅れ要素のローパスフィルタによるアナログフィルタ処理を行い、該処理結果を前記A/D変換手段へ出力するアナログフィルタ手段を備えることを特徴とする保護制御装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記A/D変換手段から出力されるディジタル交流電気量の加算結果が格納されるレジスタと、
前記レジスタに格納される加算結果か予め設定された初期設定値かのどちらか一方を選択し出力するセレクタ部と、
前記セレクタ部からの出力と前記A/D変換手段から出力されるディジタル交流電気量とを加算し前記レジスタへ加算結果を格納する加算部とから成ることを特徴とする保護制御装置。
【請求項6】
電力系統に流れる交流電流を各相ごとにアナログ交流電気量として取り込む複数の入力変換器と、
前記アナログ交流電気量を前記入力変換器の出力毎にA/D変換する複数のA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力される各相のディジタル電気量に対して前記A/D変換に伴う変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行うディジタルフィルタ手段と、
前記フィルタ演算処理結果が書き込まれるメモリ手段と
前記メモリ手段から前記フィルタ演算処理結果を読出し前記電力系統の事故の有無を判断する保護リレー演算を行うリレー演算処理手段と、
前記A/D変換の周波数、前記フィルタ演算処理の周波数、前記メモリ手段への書き込み周波数および前記保護リレー演算の周波数を決定するタイミング制御信号を前記各手段へ出力するタイミング制御回路と、を有し、
前記タイミング制御回路は、前記メモリ手段へのタイミング制御信号よりも高い周波数で前記A/D変換手段へタイミング制御信号を出力することを特徴とする保護制御装置。
【請求項7】
請求項6において、
前記タイミング制御回路は、前記リレー演算手段へのタイミング制御信号よりも高い周波数で前記メモリ手段へタイミング制御信号を出力することを特徴とする保護制御装置。
【請求項8】
電力系統の各相毎に設けられ、前記各相に流れる交流電流をアナログ交流電気量として取り込む入力変換器と、
前記入力変換器によって取り込まれたアナログ交流電気量に対してA/D変換を行うA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力される各相毎のディジタル電気量に対して前記A/D変換の変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行い、該フィルタ演算処理結果をメモリへ書き込むディジタルフィルタ手段と、
前記メモリから前記フィルタ演算処理結果を読出し、高調波を除去する高調波除去フィルタ処理を行い、該高調波除去フィルタ処理結果から前記電力系統事故を判断する保護リレー演算を行う中央処理手段と、を有し、
前記各手段が行う前記A/D変換から前記保護リレー演算までの処理周波数を多段階に間引くことを特徴とする保護制御装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記フィルタ演算処理の周波数よりも低い周波数で該フィルタ演算処理結果を前記メモリへ格納し、
前記高調波除去フィルタ処理の周波数よりも低い周波数で前記保護リレー演算を行うことを特徴とする保護制御装置。
【請求項10】
電力系統の各相毎に設けられ、前記各相に流れる交流電流をアナログ交流電気量として取り込む入力変換器と、
前記入力変換器によって取り込まれたアナログ交流電気量をA/D変換するA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力される各相毎のディジタル電気量に対して前記A/D変換に伴う変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行うディジタルフィルタ手段と、
前記フィルタ演算処理結果を間引いてメモリへ格納する第1のデシメーション手段と、
前記メモリから間引かれた前記フィルタ演算処理結果を読出し、高調波を除去する高調波除去フィルタ処理を行うCPUと、
該高調波除去フィルタ処理結果を間引いて前記電力系統の保護リレー演算の処理へ出力する第2のデシメーション手段を有し、
前記A/D変換手段は前記入力変換器ごとに設けられることを特徴とする保護制御装置。
【請求項11】
電力系統から複数の回線を介して取り込まれたアナログ交流電気量を各回線ごとにA/D変換する複数のA/D変換手段と、
前記A/D変換手段から出力されるディジタル電気量に対して前記A/D変換の誤差を除去するフィルタ演算処理を行うディジタルフィルタ手段と、
前記フィルタ演算処理結果が書き込まれ、前記電力系統の保護リレー演算を行うCPUによって読出し可能なメモリと、を有し、
前記複数のA/D変換手段は同一基板上に設けられ、前記ディジタルフィルタ手段が前記メモリへ書き込むサンプリング周波数よりも高い周波数で前記A/D変換することを特徴とする保護制御基盤。
【請求項12】
電力系統から複数の回線を介してアナログ交流電気量を取り込み、
前記アナログ交流電気量をディジタル量へ前記回線ごとにA/D変換し、
前記ディジタル量に対して前記A/D変換による変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行い、
前記電力系統の事故の有無を判断する保護リレー演算に前記フィルタ演算処理結果を間引いて使用することを特徴とする保護制御方法。
【請求項13】
請求項12において、
間引いて取り込まれた前記フィルタ演算処理結果に対して高調波を除去する高調波除去フィルタ処理を行い、
該高調波除去フィルタ処理結果をさらに間引いて保護リレー演算に使用することを特徴とする保護制御方法。
【請求項14】
電力系統の各相に設けられ、前記各相に流れる交流電流をアナログ交流電気量として取り込む複数の入力変換器と、
前記複数の入力変換器から取り込まれたアナログ交流電気量に対して折り返し誤差防止のフィルタ処理を行う複数のアナログフィルタ手段と、
前記複数のアナログフィルタ手段からの出力をA/D変換する複数のA/D変換手段と、
前記複数のA/D変換手段から出力される各相のディジタル電気量に対して前記A/D変換に伴う変換誤差を除去するフィルタ演算処理を行い所定のサンプリング周波数で前記フィルタ演算処理結果をメモリへ書き込むディジタルフィルタ手段と、
前記メモリから前記フィルタ演算処理結果を読出し前記電力系統の事故の有無を判断する保護リレー演算を行うリレー演算手段と、
前記複数のアナログフィルタ手段,前記複数のA/D変換手段,前記ディジタルフィルタ手段および前記リレー演算手段が実装されるプリント基板と、を有し、
前記A/D変換手段は前記入力変換器ごとに設けられ、前記ディジタルフィルタ手段が前記メモリへ書き込むサンプリング周波数よりも高い周波数で前記A/D変換することを特徴とする保護制御装置。
【請求項15】
請求項14において前記プリント基板上にさらに、
前記複数のアナログフィルタ手段および前記複数のA/D変換手段へアナログ電源層を介して電源を供給するアナログ電源と、
前記ディジタルフィルタ手段および前記リレー演算手段へディジタル電源層を介して電源を供給するディジタル電源と、が実装されることを特徴とする保護制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−135709(P2011−135709A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293716(P2009−293716)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】