説明

保護手袋、これを用いた防護保護手袋、及び防護手袋の損傷検知方法

【課題】強酸や強アルカリなど有害物質を取り扱う作業の際に防護手袋の内側に着用され、防護手袋の表面が損傷して該有害物質が防護手袋から内側に浸入した場合、侵入した有害物質が接触した保護手袋の部分の変色により該防護手袋の損傷を検知して損傷した防護手袋の使用中止や交換を促し、有害物質との接触による手指の薬傷を未然に予防できる保護手袋を提供する。
【解決手段】手袋表面に人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層を配し、該呈色層の内側にオレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を配したことを特徴とする樹脂製又はゴム製の保護手袋であって、有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋を外側に、上記保護手袋を内側に着用し、前記保護手袋の呈色により、前記防護手袋の損傷を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強酸や強アルカリなど人体に有害な物質を取り扱う作業で用いられる保護手袋、防護保護手袋、及び防護手袋の損傷検知方法に関し、更に詳しくは、防護手袋を外側に、保護手袋を内側に着用して有害物質を取り扱う際において、防護手袋の表面が損傷して該有害物質が防護手袋から内側に浸入した場合、侵入した有害物質が接触した保護手袋の部分の変色により該防護手袋の損傷を検知して損傷した防護手袋の使用中止や交換を促し、その結果、有害物質との接触による手指の薬傷を未然に予防する保護手袋、該保護手袋を外側の防護手袋とともに用いた防護保護手袋、及び防護手袋の損傷検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属のめっきなどの金属の加工工場や精密機械の製造工場、機械加工工場などでは、強酸性、強アルカリ性薬液など人体に有害な物質を取り扱う作業が行われており、これらの有害物質による薬傷を防止するため、耐水性、耐薬品性の樹脂製あるいはゴム製の防護手袋を着用して作業が行われている。しかしながら、この防護手袋に孔が開いている場合、たとえこの孔がピンホール程度の小さなものであったとしても、この孔から有害物質が防護手袋の内部に進入し手指に接触して薬傷を引き起こす。そこで、このような事故を未然に防止するため、製品の出荷前や使用前にピンホールの有無について検査が行われている。
【0003】
このような検査は、従来、製造後又は使用前に該手袋内に圧縮空気を注入し、ピンホールから空気を噴出させて、噴出した空気を水中で泡状にしたり(特許文献1)、噴出した空気による温度変化を観測したり(特許文献2)、噴出時に起こる超音波を観測する(特許文献3及び特許文献4)ことにより行われる。これらの検査により製造や加工工程で形成される損傷が検知され、薬傷が予防される。
【0004】
しかしながら、上記のような検査によりピンホール等の損傷がないことが確認された防護手袋を着用して作業する場合であっても、使用による防護手袋の磨耗や疲労等の劣化や鋭利な部材との接触や衝突によって、人体に有害な物質を扱う作業中に、防護手袋が破損して損傷が生じることも多い。作業中に損傷が生じた場合、この損傷から手袋内に有害な物質が侵入し、手指に薬傷を引き起こすことになる。このような場合、しばしば作業に気をとられて手指の損傷に気付くのが遅れ、手袋の内部で薬傷が重篤になることがある。
このような事態を回避するには、手袋の破損後できるだけ早く損傷を検知してその手袋の使用を中止し、新しい手袋に取り替える必要があるが、上記した作業前の検査方法では作業中に生じる損傷を検知することは不可能であるため、作業者の皮膚感覚により、即ち、薬傷が引き起こされたことによる痛みにより損傷が生じたことを知るのが実情であり、さらに、作業に熱中するあまり対処が遅れ、薬傷が重篤になることもある。
また、耐薬品性手袋の素材としてはクロロスルホン化ポリエチレン樹脂やクロロプレンゴム(特許文献5)などがあげられる。しかしながら、ごれらの素材では必ずしも耐薬品性が十分ではなく不安が残る場合があった。
【特許文献1】特開平5−10843号公報
【特許文献2】特開平7−128179号公報
【特許文献3】特開平7−151635号公報
【特許文献4】特開平7−218377号公報
【特許文献5】特開平5−230702号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は上記従来技術の問題点を解消するために、人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる樹脂製又はゴム製の保護手袋を開発した(PCT/JP2007/589)。
この保護手袋は、有害物質が接触した部分が明確な変色を示すことにより、外側に着用した防護手袋からの有害物質の侵入、即ち、該防護手袋に有害物質の侵入を許すピンホール等の損傷が発生したことを知らせ、手指の薬傷等を未然に防ぐ優れた効果を示すものであるが、耐薬品性が必ずしも十分でない場合があることが判った。
【0006】
本発明はかかる実情に鑑み、上記のような問題点を解消し、有害物質の侵入による薬傷を防ぐために出来るだけ早く損傷の発生及び損傷の個所を検知でき、更に浸透してきた薬品に対し十分な耐薬品性を有する樹脂層を設けた保護手袋、該保護手袋を外側の保護手袋とともに用いた防護保護手袋、及び防護手袋の損傷検知方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は上記問題点を解消するべく鋭意研究の結果、人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層と、該呈色層の内側に配した特定の樹脂からなる耐薬品層とからなる保護手袋が、通常の防護手袋の内側に着用することにより、外側の防護手袋の損傷の有無及び損傷の個所を素早く検知することが可能であり、更に、特定の樹脂の優れた耐薬品性により、浸透した薬品による保護手袋の劣化を防止し、これにより薬傷を未然に防ぐことができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明の請求項1は、手袋表面に人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層を配し、該呈色層の内面にオレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を配したことを特徴とする樹脂製又はゴム製の保護手袋を内容とする。
【0008】
本発明の請求項2は、オレフィン系ブロック共重合体がスチレンとオレフィンとのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護手袋を内容とする。
【0009】
本発明の請求項3は、オレフィン系ブロック共重合体がスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護手袋を内容とする。
【0010】
本発明の請求項4は、呈色層がポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の保護手袋を内容とする。
【0011】
本発明の請求項5は、呈色反応を示す物質がクマリン骨格を有する蛍光染料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保護手袋を内容とする。
【0012】
本発明の請求項6は、クマリン骨格を有する蛍光染料がオキサゾリルクマリン系染料又はチアゾリルクマリン系染料であることを特徴とする請求項5に記載の保護手袋を内容とする。
【0013】
本発明の請求項7は、人体に有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋と、該防護手袋の内側に重ねて使用される請求項1乃至6のいずれか1 項に記載の保護手袋とからなることを特徴とする多重の防護保護手袋を内容とする。
【0014】
本発明の請求項8は、人体に有害な物質を取り扱う作業を行うに際し、人体に有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋を外側に、請求項1乃至6のいずれか1 項に記載の保護手袋を内側に着用し、前記保護手袋の呈色により、前記防護手袋の損傷を検知することを特徴とする防護手袋の損傷検知方法を内容とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の保護手袋は、人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有し且つ優れた耐薬品層を有してなるので、耐薬品性を有する防護手袋の内側に着用すると、外側に着用した防護手袋が損傷して内部に人体に有害な物質が侵入した際、更なる侵入を防止するとともに保護手袋に付着または含有されている呈色反応を示す物質がこの人体に有害な物質と反応して呈色することにより保護手袋が変色し、これにより外側に着用した防護手袋の損傷の有無及び損傷個所が容易に検知される。これにより該防護手袋の使用中止又は交換が促され、薬傷を未然に予防することができる。
【0016】
耐薬品層はオレフィン系ブロック共重合体からなり、オレフィン系ブロック共重合体がスチレンとオレフィンとのブロック共重合体であるのが好ましく、特にスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体である場合は、保護手袋がアンサポート型、サポート型のいずれの場合であっても耐薬品性に優れるため、たとえ人体に有害な物質が本発明の保護手袋に到達した場合でも、該手袋を通して作業者の手指に触れるまでに長時間を要するので、それだけ長時間に亘って防護することができるので好ましい。
【0017】
呈色層の素材がポリウレタン樹脂又はアクリル樹脂である場合は、保護手袋がアンサポート型、サポート型のいずれの場合であっても、透湿性を有するので、水系の薬液を扱う際には人体に有害な物質が呈色層内部に浸透し、呈色層内部に含有された呈色物質も呈色させるため、呈色反応がより鮮やかになり、保護手袋は鮮やかに呈色し、ひと目で防護手袋の破損を検知することができるので好ましい。
【0018】
人体に有害な物質としては、酸やアルカリが例示でき(例えば塩酸、硫酸、硝酸、弗酸、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液など)、呈色反応を示す物質としては、染料、顔料、指示薬等が例示できる。
人体に有害な物質が酸である場合に、染料としてクマリン骨格を有する蛍光染料を使用すると、樹脂やゴムを染色、着色しやすいばかりでなく、黄蛍光色のクマリン骨格を有する蛍光染料が酸と反応して赤色に変化するため、呈色が確認しやすく、防護手袋の損傷が検知しやすくなる。このクマリン類としてはオキサゾリルクマリン系染料又はチアゾリルクマリン系染料が好ましく、この場合、色調の変化も顕著になり、防護手袋の損傷も検知しやすくなる。
保護手袋は人体に有害な物質の侵入を防止する耐薬品層(内面側)と人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を含む呈色層(外面側)の組から構成することができる。この場合、耐薬品層と呈色層が同じ物質であっても良い。
【0019】
上記のように、本発明の保護手袋は、人体に有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋の内側に重ねて使用される。これにより、外側に着用した防護手袋が損傷して内部に人体に有害な物質が侵入したとしても、内側に着用した保護手袋により手指を保護できるため薬傷を防ぐことができるばかりでなく、内側の保護手袋が呈色することにより外側の防護手袋の損傷を検知できるため、損傷した防護手袋の使用の中止や交換が促される。本発明の保護手袋は、単に防護手袋の損傷を検知できるばかりでなく、防護手袋の損傷の個所を検知することも可能であり、例えば、必要に応じ、損傷部分を修理することも可能である。なお、外側の防護手袋を透明又は半透明とすると、内側の保護手袋の呈色を外側の防護手袋を脱ぐことなしに観察できるので、作業中であっても容易且つ迅速に防護手袋の破損を検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の保護手袋は、人体に有害な物質を扱う作業を行うときに防護手袋の内側に着用して、防護手袋の損傷による手指の薬傷を防ぐためのものであり、手袋表面に人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層を配し、その内面にオレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を配したことを特徴とする。
ここで防護手袋とは、従来より薬傷防止を目的として使用されてきた手袋を指す。
また、ここでいう人体に有害な物質とは、酸性溶液、アルカリ性溶液、毒薬、劇薬、重金属など、直接触れると人体に悪影響を及ぼす物質全般を指す。
また、ここでいう呈色反応とは、色の変化が目で確認できる反応全てを指し、発色や変色する反応のみならず、色素が無色や透明に変化する反応も含まれる。
【0021】
人体に有害な物質(以下、単に有害物質という)と呈色反応を示す物質(以下、単に呈色物質という)としては、有害物質との反応により色調の変化が目で確認できる限り特に限定されないが、染料、顔料、指示薬が例示でき、複数の呈色物質を混合して使用することも可能である。
【0022】
本発明において、呈色物質を保護手袋に付着又は含有させ呈色層を形成させる方法としては特に限定されず、呈色物質の性質に合わせて公知の方法を採用することができる。例えば、呈色物質が染料の場合は水に分散させて加熱した染料液の中に手袋を浸漬させることにより呈色層の素材であるゴムや樹脂の表面に染料を付着(染着、着色)する方法、この染料を付着した布を呈色層の素材であるゴムや樹脂の表面に張り付ける方法が例示でき、顔料や指示薬の場合は呈色層の素材であるゴム又は樹脂に直接配合する(練り込み)ことにより含有させた後でこれを手袋型に成形する方法や、呈色層の素材であるオルガノゾル、樹脂溶液、ラテックス等に混合して被覆材料とした後でこれを手袋に被覆する方法、呈色物質を布やフィルムに付着又は含有させた被覆材料を手袋に被覆する方法、等例示できる。勿論、染料の場合も、顔料や指示薬と同様の方法で用いることもできる。
呈色層を形成する素材は、呈色物質が有害物質と反応した際にそれを確認できる素材であれば、特に制限されず、例えば、上記のように、手袋を形成する素材であるゴムや樹脂、被覆材料を形成するオルガノゾル、樹脂溶液、ラテックス、更には、布やフィルム等である。特に、水との相性がよいポリウレタン樹脂やポリアクリル樹脂である場合、有害物質が呈色層内部に浸透し、呈色層内部に含有された呈色物質も呈色させることができるため、呈色反応がより鮮やかになり、保護手袋は鮮やかに呈色し、ひと目で防護手袋の破損を検知することができるので好ましい。
【0023】
本発明における呈色物質としては、呈色層の素材である樹脂やゴムを着色しやすく、各種薬品との反応性が高く色変化が速く鮮明である点で染料が好適である。
本発明における呈色物質として使用可能な染料としては、人体に有害な物質と呈色反応を示す限り特に限定されず、縮合系、アゾ系、アントラキノン系、ピリミジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、キノフタロン系、トリフェニルメタン系などから適宜選択することができる。
染料の付着方法も特に限定されず、分散、直接、カチオン、酸性、反応、建て染めなど公知の付着(染着、着色)方法が全て好適に使用できる。また、染料を樹脂又はゴム中に含有させることにより着色してもよい。なお、工程短縮及び色落ち防止の観点からは、染料を樹脂またはゴム中含有させるほうが好ましい。
【0024】
染料の使用量は染料の種類、呈色の度合等により適宜決定することができるが、付着(染着、着色)する場合の染料の使用量は、手袋の重量1重量部に対し0.00001〜0.05重量部が好ましい。0.00001重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、0.05重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。また染料を樹脂またはゴムに含有させる場合の染料の使用量は、樹脂又はゴム固形分100重量部に対し0.001〜5重量部程度である。0.001重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、5重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。
【0025】
染料の中では、呈色反応が鮮やかな点で蛍光染料が特に好ましく、例えば、ナフタルイミド骨格、カチオン性または非カチオン性クマリン骨格、キサンテノジキノリジン骨格、アザキサンテン骨格、ナフトラクタム骨格、アズラクトン骨格、フルオレセイン骨格、エオシン骨格、オキサジン骨格、チアジン骨格、ジオキサジン骨格、アゾ、アゾメチンまたはメチン型のポリカチオン性蛍光着色料の単独物または混合物等が挙げられる。
【0026】
蛍光染料の中で、カチオン性または非カチオン性クマリン骨格を有する蛍光染料は、手袋の素材である樹脂やゴムを特に着色しやすいばかりでなく、有害物質と反応して鋭敏な色変化を示すため特に好適に使用できる。更に、オキサゾリルクマリン系染料又はチアゾリルクマリン系染料は、樹脂やゴムに対して着色性が良好で、色合いも良く、また有害物質に対する変色が鮮明であるので特に好ましい。
【0027】
なお、蛍光染料の場合、通常の染料よりも大量の染料が必要になる傾向があるため、添加量は、手袋の重量1重量部に対し0.001〜0.05重量部が好ましい。0.001重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、0.05重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。また呈色物質を含有させる場合の含有量は、呈色層の樹脂又はゴム固形分100重量部に対し0.01〜5重量部である。0.01重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、5重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。
【0028】
なお、オキサゾリルクマリン系染料又はチアゾリルクマリン系染料等のクマリン類については、特公昭51−6266号公報や特開昭56−59872号公報に詳述されている。
このような物質を含む染料としては、ダイアニックス(登録商標) ルミナス イエロー(Dianix Luminous Yellow)10G:ダイスター(Dystar Texilfarben GmbH & Co.) 社製、カヤロン(登録商標) ポリエステル フラビン(Kayalon Polyester Flavine)FG−S:日本化薬株式会社製、カヤノール(登録商標) ブリル フラビン(Kayanol Bril,Flavine)FL:日本化薬株式会社製、ナイロサン(登録商標) B フラビン(NYLOSAN B FLAVINE)E8GZ125:クラリアントジャパン株式会社製、等が市販されている。
【0029】
本発明における呈色物質として使用可能な顔料としては、人体に有害な物質と呈色反応を示す限り特に限定されず、有機顔料、無機顔料のいずれもが使用可能ではあるが、鉱物系無機顔料は無機錯体が反応して構造変化を示し易く、呈色反応が見分け易いため好ましい。具体的には、ウルトラマリンブルー、マラカイト等が挙げられる。
【0030】
顔料は、通常の場合、樹脂又はゴム中に直接配合することにより含有させて手袋を着色する。
顔料の使用量は顔料の種類、呈色の度合等により適宜決定することができるが、呈色層の樹脂又はゴム固形分100重量部に対し0.01〜20重量部が好ましい。0.01重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、20重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。
【0031】
本発明における呈色物質として使用可能な指示薬としては、人体に有害な物質と呈色反応を示す限り特に限定されないが、メチルオレンジ、メチルレッド、フェノールフタレイン、チモールブルー、リトマス等のpH指示薬、メチレンブルー、バリアミンブルーB、ジフェニルアミン、フェロインなどの酸化還元指示薬、エリオクロムブラックTなどの金属指示薬等が挙げられる。
【0032】
指示薬は手袋に付着又は含有させることができるが、樹脂又はゴムとの親和性が低いため、樹脂又はゴム中に含有させるのが好ましい。
指示薬の使用量は指示薬の種類、呈色の度合等により適宜決定することができるが、呈色層の樹脂又はゴム固形分100重量部に対し0.001〜1重量部が好ましい。0.001重量部未満では色変化が小さくなるので損傷の検出が容易でなく、一方、1重量部を超えても色変化は一定となり却って不経済となる。
【0033】
樹脂又はゴム内部への呈色物質の拡散速度を高め染着性を高めるキャリアーとしては特に制限なく、公知のものを使用でき、例えば、トリクロロベンゼン、o−フェニルフェノール、p−フェニルフェノール、メチルナフタレン等が挙げられ、これらは単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いられる。
【0034】
本発明において、耐薬品層として使用できる素材としては、外側の防護手袋から内側に侵入した有害物質から作業者の手指を保護できるものであり、主成分としてオレフィン系ブロック共重合体が用いられる。オレフィン系ブロック共重合体のオレフィン系ブロックのモノマーとしては例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2―ブテン、イソブチレン、1−ペンテン、3−メチルー1−ブテン、2−メチルー2−ブテン、1−ヘキセン、2,3−ジメチルー2−ブテン、1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のエチレン系炭化水素をあげることができる。更にジエン系炭化水素、アセチレン系炭化水素をあげることもでき、これらをモノマーとして使用した場合、後の工程で水添され飽和型になっていることが耐薬品性の点で好ましい。これらは単独で使用してもよく、複数合わせて使用しても良い。中でもゴム弾性と耐薬品性の点からオレフィン系ブロックはイソブチレンをモノマーとして使用することが好ましい。オレフィン以外のブロックはビニル系ブロックであり、例えばスチレン、メチルスチレン、ブチルスチレン、ビニルトルエン、塩化ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリルなどをあげることができる。中でも重合容易性、ガラス転移温度のコントロール容易性から物性などの点からビニル系ブロックはスチレンをモノマーとして使用することが好ましい。特にオレフィン系ブロック共重合体としてはスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体、スチレンーエチレンブチレン系ブロック共重合体を使用することが好ましい。中でも耐薬品性、配合容易性、加工容易性からスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体を用いることが好ましく、スチレン成分が10〜40重量%、イソブチレン成分が90〜60重量%でることが耐薬品性と柔軟性の物性バランスから好ましい。また数平均分子量は40,000〜500,000であることが好ましく、40,000未満では耐薬品性等の物性が悪くなり、500,000を超えると成形性が悪くなる傾向がある。スチレンーイソブチレン系ブロック共重合体としては、SIBSTAR(登録商標)102T(株式会社カネカ製)をあげることができる。ここで主成分とは耐薬品層の固形分の80%以上である場合を指し、軟化剤、安定剤等既知の添加剤を添加することができるが、耐薬品性の樹脂本来の耐薬品性を活用するため95%以上が好ましく、99%以上がより好ましい。
【0035】
耐薬品層の厚みは用途に応じて適宜決定することができるが、耐薬品層が手袋の素材自体である場合は、手袋の厚みであり、また、手袋の表面に被覆されるフィルム又は被覆層(コーティング)の場合は厚みは0.02mm〜0.5mm程度が好ましい。0.02mm未満であると手袋作成時にピンホールが発生することがあり、0.5mmを超えると防護手袋の内側に着用したときに、ごわつく場合がある。
耐薬品層は、上記した呈色層の内側に配置される。耐薬品層は必ずしも呈色層の内面に接している必要はなく、両者の間にゴムや樹脂の層(例えば、手袋の樹脂やゴムの層)が介在してもよい。
【0036】
本発明の保護手袋の素材として使用できる樹脂又はゴムとしては、外側の防護手袋から内側に侵入した有害物質から作業者の手指を保護できるものであれば特に限定されない。樹脂としてはポリアクリル酸エステル樹脂などのアクリル樹脂、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等が例示でき、単独又は必要に応じ2種以上組み合わせて用いることができる。また、オレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を同時に保護手袋の素材とすることもできる。
これらの中で、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂は染料との親和性がよく、簡単な方法で綺麗に着色できるばかりでなく、保護手袋の表面に付着した染料が効率よく呈色反応を起こすためその変色が観察し易くなり、これにより防護手袋の損傷が検知しやすくなるため好ましい。
【0037】
ゴムとしては天然ゴム(NR)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、イソプレンゴム(IR)、フッ素ゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム等が例示でき、単独で又は必要に応じ2種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
本発明の保護手袋は、樹脂又はゴムを手袋型に成形してなる所謂アンサポート型としてもよいし、また繊維製手袋の表面に前記樹脂又はゴムを被覆してなる所謂サポート型であってもよい。
本発明の保護手袋の製造方法は特に限定されず、公知の方法が全て使用でき、例えば、アンサポート型手袋の場合は、樹脂またはゴムの原料液に手型を浸漬する方法や、手型表面に原料液を散布する方法等を挙げることができる。またサポート型手袋の場合は手型に繊維製手袋を被せた後、樹脂またはゴムの原料液に該繊維性手袋を被せた手型を浸漬する方法や、手型の繊維性手袋の表面に原料液を散布する方法等が例示できる。その他、平面のフィルムを手袋形状に切り抜いて2枚の縁を張り合わせて手袋形状としてもよいし、布の上にフィルムをラミネートしたものを手袋形状に切り抜いて縁を張り合わせてもよい。また、市販の防水性、耐薬品性のアンサポート又はサポート型手袋を用いることもできる。
【0039】
なお、本発明の保護手袋をアンサポート型にする場合、該保護手袋の内面にはスリップオン加工や植毛加工がほどこされていても良い。
また、本発明の保護手袋をサポート型にする場合、繊維製手袋の材料としては用途に応じて適宜決定することができるが、例えばポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアラミド繊維、ビニロン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリアクリレート繊維、ポリエチレン繊維、アセテート繊維、レーヨン繊維、ポリノジック繊維、綿等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせて使用しても良い。中でも風合いがよい点、汎用性の点などから、ポリエステル繊維、ポリアクリレート繊維、ポリアミド繊維、綿が好ましい。
【0040】
本発明の保護手袋は、単独で着用して、例えば、呈色(変色)により取り扱っている物質が人体に有害かどうかの検知に使用することも可能であるが、好ましくは、通常用いられる、有害物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋の内側に重ねて使用される。このように重ねて使用すると、作業中に外側の防護手袋が損傷してそこから有害物質が侵入し保護手袋に到達した場合、保護手袋に付着又は含有された呈色物質が有害物質と反応して呈色することにより保護手袋が変色するため、これを観察することにより外側の防護手袋の損傷の有無及び損傷場所を検知でき、損傷した防護手袋の使用中止又は交換が促される。この結果、有害物質は内側の保護手袋に遮られてその内部には達しないため、手指は保護され薬傷を防ぐことができる。
【実施例】
【0041】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。なお、以下の実施例及び比較例において、%及び部は特に断らない限り、重量%及び重量部を表す。
【0042】
実施例1
手型に被せたナイロン繊維製手袋の表面にポリウレタン(PU)樹脂溶液(原料:クリスボン8166、大日本インキ化学工業社製)をDMFで固形分10%に調整した溶液を用いて湿式法にて発泡樹脂被膜を作成し、その上からさらにスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)樹脂(原料:SIBSTAR102T、株式会社カネカ製)のキシレン溶液(固形分25%)を浸漬塗布し乾燥させ耐薬品層を作成し、次いで、この耐薬品層の上に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とpH指示薬チモールブルー (関東化学株式会社製) 0.1部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成し、手型から離型し着色PU表面のサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋を再度手型に被せ、その上に袖付の耐水性クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)製手袋(ダイローブ(登録商標)A95、ダイヤゴム株式会社製)を更に被せ98%硫酸水溶液に指先から約15cmの手首部分までを60分間浸漬した後、引き上げて手袋表面を軽く水洗してCSM製手袋を手型からはずしたところ、内側の着色手袋に色やその他の変化はなかった。
次に、前記CSM製手袋の人差し指の指先部分に縫い針で孔を開け、同様に着色手袋を被せた手型の上にこのCSM製手袋を被せ、98%硫酸水溶液に指先から約15cmの手首部分までを60分間浸漬した後、引き上げて軽く表面を水洗し、CSM製手袋を手型からはずしたところ、内側の手袋表面の人差し指の指先部分に直径約10mmの赤色の斑点が見られ、外側のCSM製手袋での損傷の発生が検知されることが確認された。また、耐薬品層の腐食は全く確認されず、外側のCSM製手袋の損傷から濃硫酸が侵入しても手指は保護され、安全であることが確認された。
【0043】
実施例2
手型をスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)樹脂(原料:SIBSTAR102T、株式会社カネカ製)のキシレン溶液(固形分25%)中に浸漬し引上げ乾燥させ耐薬品層を作成し、次いで、この耐薬品層の上に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とDianix Luminous Yellow 10G(Dystar Texilfarben GmbH & Co.社製)3部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成して手型から離型し着色PU表面のアンサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋について、実施例1と同じ方法で呈色性及び耐薬品性のテストを実施したところ、内側の手袋表面の人差し指の指先部分に直径約10mmの赤色の斑点が見られ、外側のCSM製手袋での損傷の発生が検知されることが確認された。また、耐薬品層の腐食は全く確認されず、外側のCSM製手袋の損傷から濃硫酸が侵入しても手指は保護され、安全であることが確認された。
【0044】
実施例3
手型をNBRラテックス配合物(固形分でNBRラテックス(Nipol(登録商標) Latex Lx−550、日本ゼオン株式会社製)100部、水酸化カリウム0.5部、硫黄1部、酸化亜鉛1部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛0.2部、酸化チタン1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部を水で固形分35%に調整しよく攪拌した物)に40%硝酸カルシウムメタノール溶液を塗布した手型を浸漬し、乾燥・加硫後、スチレンーイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)樹脂(原料:SIBSTAR102T、株式会社カネカ製)のキシレン溶液(固形分25%)中に浸漬し引上げ乾燥させ耐薬品層を作成し、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とDianix Luminous Yellow 10G(Dystar Texilfarben GmbH & Co.社製)3部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成して手型から離型し着色PU表面のアンサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋について、実施例1と同じ方法で呈色性及び耐薬品性のテストを実施したところ、内側の手袋表面の人差し指の指先部分に直径約10mmの赤色の斑点が見られ、外側のCSM製手袋での損傷の発生が検知されることが確認された。また、耐薬品層の腐食は全く確認されず、外側のCSM製手袋の損傷から濃硫酸が侵入しても手指は保護され、安全であることが確認された。
【0045】
比較例1
手型に被せたナイロン繊維製手袋の表面にポリウレタン(PU)樹脂溶液(原料:クリスボン(登録商標)8166、大日本インキ化学工業社製)をDMFで固形分10%に調整した溶液を用いて湿式法にて発泡樹脂被膜を作成し、その上からさらにクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)(原料:TOSO−CSM TS−340、東ソー株式会社製)とその4倍量のトルエンからなる溶液を塗布し乾燥させ耐薬品層を作成し、次いで、この耐薬品層の上に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とpH指示薬チモールブルー (関東化学株式会社製) 0.1部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成し、手型から離型し着色PU表面のサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋について、実施例1と同じ方法で呈色性及び耐薬品性のテストを実施したところ、内側の手袋表面の人差し指の指先部分に直径約10mmの赤色の斑点が見られ、外側のCSM製手袋での損傷の発生が検知されることが確認された。しかし、耐薬品層に直径約10mmの腐食が確認され、安全性に問題があった。
【0046】
比較例2
手型にクロロプレン(CR)ラテックス配合物(固形分でCRラテックス(原料:スカイプレン(登録商標)ラテックスLA−502、東ソー株式会社製)100部、硫黄1部、酸化亜鉛3部、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛1部、酸化チタン1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ1部を水で固形分45%に調整しよく攪拌した物)に40%硝酸カルシウムメタノール溶液を塗布した手型を浸漬し、乾燥・加硫後に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とpH指示薬チモールブルー (関東化学株式会社製) 0.1部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成し、手型から離型し着色PU表面のアンサポート型手袋について、実施例1と同じ方法で呈色性及び耐薬品性のテストを実施したところ、内側の手袋表面の人差し指の指先部分に直径約10mmの赤色の斑点が見られ、外側のCSM製手袋での損傷の発生が検知されることが確認された。しかし、耐薬品層に直径約10mmの腐食が確認され、安全性に問題があった。
【0047】
実施例4
手型に被せたナイロン繊維製手袋の表面にポリウレタン(PU)樹脂溶液(原料:クリスボン8166、大日本インキ化学工業社製)をDMFで固形分10%に調整した溶液を用いて湿式法にて発泡樹脂被膜を作成し、その上からさらにスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体(SIBS)樹脂(原料:SIBSTAR102T、株式会社カネカ製)のキシレン溶液(固形分25%)を浸漬塗布し乾燥させ耐薬品層を作成し、次いで、この耐薬品層の上に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とpH指示薬チモールブルー (関東化学株式会社製) 0.1部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成し、手型から離型し着色PU表面のサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋を再度手型に被せ、着色手袋と手型との間にPH試験紙を挿入したものを36%塩酸に指先から約15cmの手首部分までを60分間浸漬した後、引き上げて手袋表面を軽く水洗して手型からはずしたところ、着色手袋の呈色層は赤色に変色するとともに腐食が見られたが、耐薬品層の腐食は確認されなかった。従って、着色手袋は単体でも有害な物質により呈色(着色)するので、取り扱っている物質が有害かどうかを検知するとともに、手指を守る保護手袋として使用可能であった。
【0048】
比較例3
手型に被せたナイロン繊維製手袋の表面にポリウレタン(PU)樹脂溶液(原料:クリスボン(登録商標)8166、大日本インキ化学工業社製)をDMFで固形分10%に調整した溶液を用いて湿式法にて発泡樹脂被膜を作成し、その上からさらにクロロスルホン化ポリエチレン(CSM)(原料:TOSO−CSM TS−340、東ソー株式会社製)とその4倍量のトルエンからなる溶液を塗布し乾燥させ耐薬品層を作成し、次いで、この耐薬品層の上に、PU樹脂溶液(原料:UST-125HV 、大日本インキ化学工業社製、固形分約25%)100 部とpH指示薬チモールブルー (関東化学株式会社製) 0.1部をキシレンとMEKの1:1希釈液にて調整した溶液(固形分12%)を用いて乾式法にて呈色層を作成し、手型から離型し着色PU表面のサポート型手袋を得た。得られた手袋の表面は黄色であった。
得られた着色手袋について、実施例4と同じ方法で呈色性及び耐薬品性のテストを実施したところ、着色手袋は赤色に変色したが、呈色層及び耐薬品層とも腐食と塩酸の透過が見られ、安全性に問題があり、保護手袋として使用できないものであった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
叙上のとおり、本発明の保護手袋は、人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層の内面に耐薬品性に優れたオレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を配したので、有害物質から手指を守る防護手袋の内側に着用することにより、外側の防護手袋が損傷し内部に有害物質が侵入した場合でも、耐薬品層により手指が内側の保護手袋に保護されて薬傷を防ぐばかりでなく、この保護手袋が変色して防護手袋の損傷の有無及び損傷個所を知らせるので、損傷した防護手袋の使用中止、補修や速やかな交換を可能とし、手指を薬傷から守ることができる。
従って、本発明の保護手袋は、例えば、金属のめっき工場や精密機械の製造や加工工場等で有害物質を扱う作業を行う場合において、防護手袋の内側に着用する保護手袋として頗る有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋表面に人体に有害な物質と呈色反応を示す物質を付着又は含有してなる呈色層を配し、該呈色層のの内側にオレフィン系ブロック共重合体からなる耐薬品層を配したことを特徴とする樹脂製又はゴム製の保護手袋。
【請求項2】
オレフィン系ブロック共重合体がスチレンとオレフィンとのブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護手袋。
【請求項3】
オレフィン系ブロック共重合体がスチレンーイソブチレン系ブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の保護手袋。
【請求項4】
呈色層がポリウレタン樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の保護手袋。
【請求項5】
呈色反応を示す物質がクマリン骨格を有する蛍光染料であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保護手袋。
【請求項6】
クマリン骨格を有する蛍光染料がオキサゾリルクマリン系染料又はチアゾリルクマリン系染料であることを特徴とする請求項5に記載の保護手袋。
【請求項7】
人体に有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋と、該防護手袋の内側に重ねて使用される請求項1乃至6のいずれか1 項に記載の保護手袋とからなることを特徴とする多重の防護保護手袋。
【請求項8】
人体に有害な物質を取り扱う作業を行うに際し、人体に有害な物質を通さない耐薬品層を有する防護手袋を外側に、請求項1乃至6のいずれか1 項に記載の保護手袋を内側に着用し、前記保護手袋の呈色により、前記防護手袋の損傷を検知することを特徴とする防護手袋の損傷検知方法。