説明

保護素子用劣化検出装置

【課題】簡易な構成であって、遠隔地にあっても保護素子の劣化を高精度で検出するような保護素子用劣化検出装置を提供することにある。
【解決手段】保護素子用劣化検出装置100は、状態検出ユニット10、送信装置20、信号処理部30、警報出力部40、光ケーブル50,60を備え、遠隔地にあるギャップレス避雷器200の劣化を検出する。この状態検出ユニット10は、温度センサと、温度センサとギャップレス避雷器200との間に介在して配置されて熱伝導率を向上させる熱伝導部と、温度センサを覆って外部環境からの熱伝導を少なくする断熱部と、を備え、ギャップレス避雷器200から伝導される温度を優先して温度センサに伝導する保護素子用劣化検出装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、簡易な構成で避雷用の保護素子の劣化を検出する保護素子用劣化検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電源回路用保安装置は、配電線から侵入する雷サージによる過電流・過電圧を低圧側へ流さないようにし、低圧側に接続される各種機器を保護する機能を有している。このため電源回路用保安装置は、雷サージの過電流・過電圧によるエネルギーを吸収するためのギャップレス避雷器、バリスタ等の保護素子を備えている。
さて、これら保護素子は雷サージの過電流・過電圧が繰り返して印加されることにより、保護機能の経時的な劣化が進み、保護素子の接地線に流れる漏れ電流が増加して発熱量が増大し、最終的には破壊に至ることが知られている。そこで、このような経時的劣化に対する対策が必要である。
【0003】
このような保護素子の劣化対策についての従来技術として、例えば、特許文献1(発明の名称:酸化亜鉛形避雷素子の熱暴走防止方法と熱暴走防止機能付き酸化亜鉛形避雷器)に記載された従来技術では、酸化亜鉛形避雷素子の異常発熱を利用して放電間隔(ギャップ)を生成することで電流を遮断し、発熱を停止させる発明が開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−203803号公報(段落番号0023,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来技術では、長期間にわたり劣化が進み、最終的に異常発熱に至って初めて保護素子の破壊(劣化の最終形態)が検出されるものである。
しかしながら、このような保護素子の破壊が起きたときに直ちに対策を実行できれば良いが、対策が施せない場合もあった。
【0006】
例えば、落雷があると、通常は電源回路用保安装置の設置場所まで保安員が直接確認に行き、必要な対策を行うのが一般的であった。しかしながら、電源回路用保安装置が速やかに直接確認に行ける場所に設置されているならば良いが、例えば、無人の山頂中継所に電源回路用保安装置が設置されている場合、冬季では登山ができずにそのまま長期間対策が遅れる等、保護素子の破損等の危険が直ちに解消できないものがあった。
そこで、無人の山頂中継所のような遠隔地に電源回路用保安装置がある場合、冬季到来の前に予め保安員が保護素子の劣化を直接確認して保守を行いたいという事情があるが、このような遠隔地所在の施設は多数あり、また、保護素子の破損等が確認時に発見されることはごくまれであり、電源回路用保安装置の保護素子の劣化を遠隔地で常時確認できるようにして必要最小限の効率的な保守を行いたいという要請があった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、簡易な構成であって、遠隔地にあっても保護素子の劣化を高精度で検出するような保護素子用劣化検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る保護素子用劣化検出装置は、
侵入する過電圧から機器を保護する保護素子の劣化を検出する保護素子用劣化検出装置であって、
保護素子の外側に配置され、保護素子の状態を示す状態信号を出力する状態検出ユニットと、
状態検出ユニットからの状態信号を伝送信号に変調して出力する送信装置と、
伝送信号を復調して状態データを取得して保護素子の劣化を検出するともに、保護素子の劣化を報知するための警報信号を生成し、この警報信号を出力する信号処理部と、
信号処理部からの警報信号を入力して警報を出力する警報出力部と、
を備える。
【0009】
また、本発明の請求項2に係る保護素子用劣化検出装置は、
請求項1に記載の保護素子用劣化検出装置において、
前記状態として保護素子の温度について検出し、状態信号として保護素子の温度信号を用いるものとし、
前記状態検出ユニットは、
温度センサと、
温度センサと保護素子との間に介在して配置され、熱伝導率を向上させる熱伝導部と、
温度センサを覆い、外部環境からの熱伝導を少なくする断熱部と、
を備え、保護素子から伝導される温度を優先して温度センサに伝導することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に係る保護素子用劣化検出装置は、
請求項1または請求項2に記載の保護素子用劣化検出装置において、
前記状態として保護素子の機械的歪みについて検出し、状態信号として保護素子の機械的歪みの移動による検出信号を用いるものとし、
前記状態検出ユニットは、
保護素子の機械的歪みを検出する検出体と、
検出体が所定量変位したときに検出信号を出力するスイッチと、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上のような本発明によれば、簡易な構成であって、遠隔地にあっても保護素子の劣化を高精度で検出するような保護素子用劣化検出装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について図に基づき以下に説明する。図1は本形態の保護素子用劣化検出装置の構成図である。
保護素子用劣化検出装置100は、図1で示すように、状態検出ユニット10、送信装置20、信号処理部30、警報出力部40、光ケーブル50,60を備える。この保護素子用劣化検出装置100は、保護素子の具体例であるギャップレス避雷器200の劣化を検出する。また、状態検出とは本形態では温度検出を意味する。全体構成はこのようになる。
【0013】
続いて各部について図を参照しつつ説明する。図2はギャップレス避雷器200への状態検出ユニット10の取付状態の説明図であって、図2(a)は正面図、図2(b)は底面図である。図3は状態検出ユニット10の拡大断面図である。
状態検出ユニット10は、ギャップレス避雷器200の外側であって表面に接触するように配置され、ギャップレス避雷器200の温度を検出して温度信号を送信装置20へ出力する。
【0014】
この状態検出ユニット10は、図3で示すように、温度センサ10a、熱伝導部10b、断熱部10cを備えている。温度センサ10aは温度計測機能を有し、温度信号を出力する。熱伝導部10bは、この温度センサ10aとギャップレス避雷器200との間に介在して配置されている。この熱伝導部10bは、熱伝導率が高い材質で構成され、さらに密着度を増して接触面積を増大させるというものであり、熱伝導率を向上させる機能を有している。
断熱部10cは、温度センサ10aへの熱伝導部10bの接触面以外の外表面を覆うことで、外部環境からの熱が伝わらないようにしている。
本形態ではこの状態検出ユニット10は、図2(a),(b)で示すように、取付け板10dによりギャップレス避雷器200の下側に保持固定されている。
このような構造を採用することで、外部環境の温度の影響を少なくすることができ、ギャップレス避雷器200から伝導される熱を優先して温度センサ10aに熱伝導することができる。
【0015】
図1に戻るが、送信装置20は、状態検出ユニット10からの温度信号を伝送信号に変換して出力する。ここでは、長距離伝送が可能な光ケーブル50を用いる。光ケーブル50はこの伝送信号を信号処理部30へ伝送する。光ケーブル50は、例えば、鉄塔に既設のOPGW等を利用し、誘導雷等から伝送信号を保護するような形態を採用することも可能である。この伝送信号はデジタル信号・アナログ信号等伝送形態に応じて各種伝送方式を採用することができる。
【0016】
図4は信号処理部30の外観図であって、図4(a)は側面図、図4(b)は正面図である。信号処理部30は、光ケーブル50を介して伝送された伝送信号を復調して温度データを取得する。そして、温度データが予め定められた設定温度データを超える場合にギャップレス避雷器200が劣化したと検出する。例えば、ギャップレス避雷器200では絶縁抵抗である酸化亜鉛素子(ZnO)の劣化が進むにつれて、接地線に流れる漏れ電流も増加するため、発熱温度が増大する。このため温度データが増大していくにつれて劣化が進行し、限界点となる設定温度データを超えた場合に保守交換が必要になったと判断できる。このような判断をした信号処理部30は、それぞれのギャップレス避雷器200に割り当てられたLED表示部31を点滅表示させて、異常を報知する。この点滅はリセットボタン32を押下することで、停止させることができる。さらに、信号処理部30は、ギャップレス避雷器200の劣化を報知するための警報信号を生成し、この警報信号を出力する。光ケーブル60は、この警報信号を警報出力部40へ伝送する。このような信号処理部30は、計6系統の光ケーブル50の接続が可能になされており、六個のギャップレス避雷器200の劣化を検出できる。
【0017】
図5は警報出力部40の外観図であって、図5(a)は背面図、図5(b)は側面図、図5(c)は正面図である。警報出力部40は、信号処理部30からの警報信号を入力して警報を出力する。警報出力部40は、図1でも示すように、警報出力線70、電源線80、接地線90が接続される。また、警報出力部40は、パワースイッチ41、パワーランプ42、リセットスイッチ43、アラームランプ44、ヒューズ45,光ケーブル入力端子46、アラーム端子47、電源端子48、FG端子49を備えている。警報出力は、本形態ではアラームランプ44を点滅させて警報を出力するものとする。なお、図示しないが、アラーム端子47を介して接続される表示部・スピーカなどにより遠隔地にいる保安員に視覚的・聴覚的な警報を出力するようにしても良い。
【0018】
本形態の保護素子用劣化検出装置100はこのようなものとなる。
なお、保護素子の具体例としてギャップレス避雷器200を例に挙げて説明したが、もちろんギャップレス避雷器200に限定する趣旨ではなく、ギャップ付き避雷器、バリスタ等の既存の避雷器を含めることが可能である。
【0019】
また、先に説明した保護素子用劣化検出装置100をさらに改良しても良い。例えば、状態検出ユニット10が計測する温度は外部環境に影響されることを配慮し、ギャップレス避雷器200と状態検出ユニット10が設置されている箇所で、新たに外部環境温度計測用の温度センサ(図示せず)を別途設け、ギャップレス避雷器200の設置環境による外部環境温度を計測して環境温度データとして出力し、信号処理部30が温度データと環境温度データを考慮してギャップレス避雷器200の劣化を検出しても良い。この劣化検出方式として、温度データから環境温度データの差分値である校正温度データを用い、校正温度データと設定温度データを比較するようにしても良い。このようにすれば、夏場と冬場のようにギャップレス避雷器200の表面温度が外部環境に影響される場合であっても、外部環境の温度をキャンセルすることで、純粋な発熱温度に近づけることができる。
【0020】
また、校正の他の方式として外部環境温度とギャップレス避雷器200の表面温度とに対応するギャップレス避雷器200の実質発熱温度を予め実験等により求めて信号処理部30の図示しないメモリに記憶させておき、外部環境温度と表面温度とを計測したときにこれら温度に対応する実質発熱温度を導き出すようにし、この実質発熱温度の経時的変化に注目して設定温度を超えるような場合に劣化を検出するようにしても良い。
保護素子用劣化検出装置100ではこれらのような構成を採用しても良い。
【0021】
続いて更なる改良形態について図を参照しつつ説明する。図6は、ギャップレス避雷器への状態検出ユニットの取付状態の説明図、図7はギャップレス避雷器への状態検出ユニットの組み付け図である。
図6で示すようにギャップレス避雷器200に改良形の状態検出ユニット11を取付ける。状態検出ユニット11は、図7で示すように、ベース11a、ナット板11b、カンチレバー11c(本発明の検出体の一具体例である)、スイッチ11d、熱伝導部11e、温度センサ11f、断熱部11g、ホルダ11hを備えている。
【0022】
ベース11aとナット板11bとで、ギャップレス避雷器200の張り出し部201を挟み込むように取付ける。そしてベース11aにカンチレバー11c、および、ON/OFFという二値の検出信号を出力するスイッチ11dからなる歪み検出ユニットを取付ける。さらに、熱伝導部11e、温度センサ11f、断熱部11g、ホルダ11hからなる温度検出ユニットも取付ける。
【0023】
歪み検出ユニットによる機械的な歪みの検出であるが、ギャップレス避雷器200にサージ電流が流れたとき、ギャップレス避雷器200の底面部が中央が膨らむように変形する。この際、カンチレバー11cが例えば外側に移動して、スイッチ11dのOFF状態にあった検出子を移動させて検出子をON状態にする。これによりスイッチ11dは検出信号を出力する。以後は図1で示すように、送信装置20が状態検出ユニット11のうちの歪み検出ユニットからの検出信号を伝送信号に変調して出力する。送信装置20からの伝送信号は、光ケーブル50,60を介して信号処理部30へ入力する。
【0024】
信号処理部30は、伝送信号を復調して状態データを取得して保護素子の劣化を検出するともに、ギャップレス避雷器200の劣化を報知するための警報信号を生成し、この警報信号を出力する。警報出力部40は、信号処理部30からの警報信号を入力して警報を出力する。
【0025】
なお、温度検出ユニットについては、温度センサ、熱伝導部、断熱部については符号は異なるものの同じ名称を付しており、同じ名称を付したものは同じ構成・機能を有するものとしてに重複する説明を省略している。このような温度検出ユニットは先に説明した機能を果たすため、発熱による異常を検出できる。
このように本形態によれば、温度に加えて機械的な歪みの検出もなされるため、ギャップレス避雷器200の劣化を確実に検出できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の保護素子用劣化検出装置の構成図である。
【図2】ギャップレス避雷器への状態検出ユニットの取付状態の説明図であって、図2(a)は正面図、図2(b)は底面図である。
【図3】状態検出ユニットの拡大断面図である。
【図4】信号処理部の外観図であって、図4(a)は側面図、図4(b)は正面図である。
【図5】警報出力部の外観図であって、図5(a)は背面図、図5(b)は側面図、図5(c)は正面図である。
【図6】ギャップレス避雷器への状態検出ユニットの取付状態の説明図である。
【図7】ギャップレス避雷器への状態検出ユニットの組み付け図である。
【符号の説明】
【0027】
100:保護素子用劣化検出装置
10:状態検出ユニット
10a:温度センサ
10b:熱伝導部
10c:断熱部
10d:取付け板
11:状態検出ユニット
11a:ベース
11b:ナット板
11c:カンチレバー
11d:スイッチ
11e:熱伝導部
11f:温度センサ
11g:断熱部
11h:ホルダ
20:送信装置
30:信号処理部
31:LED表示部
32:リセットボタン
40:警報出力部
41:パワースイッチ
42:パワーランプ
43:リセットスイッチ
44:アラームランプ
45:ヒューズ
46:光ケーブル入力端子
47:アラーム端子
48:電源端子
49:FG端子
50:光ケーブル
60:光ケーブル
70:警報出力線
80:電源線
90:接地線
200:ギャップレス避雷器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
侵入する過電圧から機器を保護する保護素子の劣化を検出する保護素子用劣化検出装置であって、
保護素子の外側に配置され、保護素子の状態を示す状態信号を出力する状態検出ユニットと、
状態検出ユニットからの状態信号を伝送信号に変調して出力する送信装置と、
伝送信号を復調して状態データを取得して保護素子の劣化を検出するともに、保護素子の劣化を報知するための警報信号を生成し、この警報信号を出力する信号処理部と、
信号処理部からの警報信号を入力して警報を出力する警報出力部と、
を備える保護素子用劣化検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の保護素子用劣化検出装置において、
前記状態として保護素子の温度について検出し、状態信号として保護素子の温度信号を用いるものとし、
前記状態検出ユニットは、
温度センサと、
温度センサと保護素子との間に介在して配置され、熱伝導率を向上させる熱伝導部と、
温度センサを覆い、外部環境からの熱伝導を少なくする断熱部と、
を備え、保護素子から伝導される温度を優先して温度センサに伝導することを特徴とする保護素子用劣化検出装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保護素子用劣化検出装置において、
前記状態として保護素子の機械的歪みについて検出し、状態信号として保護素子の機械的歪みの移動による検出信号を用いるものとし、
前記状態検出ユニットは、
保護素子の機械的歪みを検出する検出体と、
検出体が所定量変位したときに検出信号を出力するスイッチと、
を備えることを特徴とする保護素子用劣化検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−335794(P2007−335794A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−168587(P2006−168587)
【出願日】平成18年6月19日(2006.6.19)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(000145954)株式会社昭電 (22)
【Fターム(参考)】