信号伝送用ケーブル及び多心ケーブル
【課題】電気特性・機械特性に優れ、端末加工性に優れた信号伝送用ケーブル及び多心ケーブルを提供する。
【解決手段】内部導体2の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層3を有する内部絶縁心線4が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラック又は酸化チタンとニッケルを添加したスキン層5を有し、該スキン層5の外周に外部導体6を有し、該外部導体6の外周に絶縁体からなるシース層7を有する。
【解決手段】内部導体2の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層3を有する内部絶縁心線4が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラック又は酸化チタンとニッケルを添加したスキン層5を有し、該スキン層5の外周に外部導体6を有し、該外部導体6の外周に絶縁体からなるシース層7を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性・機械特性に優れ、端末加工性に優れた信号伝送用ケーブル及び多心ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、携帯電話などの小型電子機器において、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に使用されるケーブルには、EMI(不要輻射)、SKEW(クロックスキュー)に関する所定の電気特性が要求されるため、極細同軸ケーブル(特許文献1参照)が使用されている。
【0003】
図9に示されるように、極細同軸ケーブル91は、内部導体92の外周に絶縁体層93を有し、絶縁体層93の外周に外部導体94を有し、外部導体94の外周にシース95を有する。
【0004】
ノート型パソコンは、その本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送方式がパラレル伝送からシリアル伝送に移行しつつある。シリアル伝送に使用されるケーブルには、極細同軸ケーブルよりも厳しい電気特性が要求されるため、2心同軸ケーブル(特許文献2参照)、4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル(特許文献3,4参照)が使用されつつある。
【0005】
図10に示されるように、2心同軸ケーブル101は、内部導体102の外周に絶縁体層103を有する内部絶縁心線104が2本並べられ、その外周に外部導体105を有し、外部導体105の外周にシース106を有する。
【0006】
図11に示されるように、4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111は、内部導体112の外周に絶縁体層113を有する内部絶縁心線114が介在115の外周に4心で撚り合わされ、その外周に外部導体116を有し、外部導体116の外周に絶縁体からなるシース層117を有する。
【0007】
携帯電話については、2心同軸ケーブルが増えている。2心同軸ケーブルは、耐屈曲性、耐捻回性の要求が特に厳しくなっていると共に、諸受信機能増加のための内部アンテナの数が増えることによって、高いEMI特性が要求される。
【0008】
これらのケーブルは、複数本を並列にして使用され、その端末部分がフラットにされてコネクタ側の基板の上に接続される。この端末加工は、YAGレーザを用いたレーザ加工で行われるが、このときレーザ光により内部導体が損傷しないようにする必要がある。
【0009】
内部導体に損傷を与えることなく外部導体をレーザ加工で直接切断する技術として、内部導体を覆う絶縁体層の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックを0.025〜0.14wt%添加して「薄黒」に着色する技術(特許文献5)が提案されている。
【0010】
内部導体に損傷を与えることなく外部導体を切断し得るようにケーブルを構成する技術として、内部導体を覆う絶縁体層の主材料である樹脂に対し、レーザ光を全反射しやすい白色または金属色の添加剤、レーザ光を吸収しやすいカーボンブラック等の黒色の添加剤、金属酸化物などからなる色体が混在する粉末状の添加剤を添加する技術(特許文献6)が提案されている。
【0011】
これらのケーブルは、例えば、本体と液晶ディスプレイとの間で差動信号を伝送することから差動信号伝送用ケーブルとも呼ばれる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−352640号公報
【特許文献2】特開2003−22718号公報
【特許文献3】特開2003−132743号公報
【特許文献4】特表平9−511359号公報
【特許文献5】特開2005−251522号公報
【特許文献6】特開2004−192815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のケーブルには構造的に次の問題がある。
【0014】
図10の2心同軸ケーブル101は、断面が楕円形であるため、ケーブル周囲360度での対称性が悪く、携帯電話のように多軸で捻られる用途には適さない。
【0015】
図11の4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111は、ケーブルを曲げたり捻ったりするとき、4心の内部絶縁心線114同士の間隔が変化しやすいため、電気特性が不安定であり、電気特性のバラツキも大きい。また、内部絶縁心線114を0.5〜0.3mmピッチに並べる端末加工を施すと、外部導体116を構成している横巻された素線の先端が内部絶縁心線114の絶縁体層113に刺さって内部導体112と短絡してしまう不良が多発する。
【0016】
4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111において、内部絶縁心線114が4心で撚り合わされた外周に銅蒸着PETテープを押さえ巻きして外部導体116を構成する場合、電気特性は安定であるが、ケーブルが硬く、耐屈曲性、耐捻回性などの機械特性が悪く、携帯電話のように多軸で捻られる用途には適さない。
【0017】
また、従来のケーブルには、端末加工に関し、YAGレーザを用いたレーザ加工が困難であるという問題がある。それは、レーザ光が外部導体の隙間を透過して内部絶縁心線の絶縁体層を損傷させ、さらに内部導体を損傷させる。
【0018】
図9(特許文献1)の極細同軸ケーブル91は、絶縁体層93の厚さが60μmのような比較的厚肉の領域においては、絶縁抵抗試験の合格率が100%に達しており、絶縁特性が高いが、絶縁体層93の厚さが60μm未満(例えば、50μm、40μm)のような比較的薄肉の領域においては、絶縁特性が低い。したがって、カーボンブラックを絶縁体層93に添加した場合に、絶縁特性を高く維持するためには、絶縁体層93の厚さを増加させる必要があり、その結果、ケーブルの径が太くなる。
【0019】
また、内部絶縁心線を複数本有するケーブル(図10、図11)では、絶縁体層の色を全部黒にすると、内部絶縁心線の目視による識別が困難となる。その反面、黒以外の色を使用する場合、例えば、絶縁体層の色を1本のみ黒にし、他の絶縁体層の色を黒と識別可能な別々の色にすると、外部導体をレーザ加工で切断する際に、絶縁体層の色が黒以外の内部絶縁心線は、絶縁体層や内部導体に損傷を受ける。絶縁体層の色が黒である場合に絶縁体層や内部導体に損傷がない理由は完全に解明されているわけではないが、本発明者らは、黒色の絶縁体層には着色顔料としてカーボンブラックが添加されており、カーボンブラックは他の着色顔料に比べて光透過量が格段に小さいことから、光を遮断して内部導体の損傷を抑制する効果があり、また、カーボンブラックは他の着色顔料よりも光を吸収する特性があるため、レーザ光により発熱するものの、その発熱温度はフッ素樹脂の軟化温度(約302℃)よりも低いため、フッ素樹脂を溶かすまでには至らないことが原因であると考えている。
【0020】
また、特許文献6は、絶縁体層の主材料である樹脂に添加する添加剤の種類、組み合わせ、添加量が示されておらず、実用的でない。
【0021】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、電気特性・機械特性に優れ、端末加工性に優れた信号伝送用ケーブル及び多心ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明の信号伝送用ケーブルは、内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラックを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有するものである。
【0023】
また、本発明の信号伝送用ケーブルは、内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとニッケルを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有するものである。
【0024】
上記スキン層は、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていてもよい。
【0025】
上記スキン層は、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていてもよい。
【0026】
上記4心の内部絶縁心線は、上記絶縁体層に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれていてもよい。
【0027】
上記内部絶縁心線は、上記絶縁体層の厚さが40μm未満であってもよい。
【0028】
上記スキン層は、押出成型により形成されたもの、または抑え巻きにより形成されたものであってもよい。
【0029】
上記外部導体は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものであってもよい。
【0030】
本発明の多心ケーブルは、上記信号伝送ケーブルが複数本、フラットに配列されているものである。
【0031】
本発明の多心ケーブルは、上記信号伝送ケーブルが複数本、撚り合わされているものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0033】
(1)電気特性・機械特性に優れる。
【0034】
(2)レーザ加工に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0036】
図1に示されるように、本発明に係る信号伝送ケーブル1は、内部導体2の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層3を有する内部絶縁心線4が4心で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として2種の添加剤を添加したスキン層5を有し、該スキン層5の外周に外部導体(シールド)6を有し、該外部導体6の外周に絶縁体からなるシース層(ジャケット)7を有するものである。
【0037】
内部絶縁心線4の内部導体2は、複数本の銅合金線または銀めっき銅合金線を撚り合わせて形成するとよい。信号伝送ケーブル1をノートパソコンや携帯電話のヒンジ部に通すことを考慮すると、内部導体2のサイズは、40AWG(7/0.028〜0.032)〜44AWG(7/0.014〜0.018)が望ましい。
【0038】
内部絶縁心線4の絶縁体層3は、薄肉での押出が可能であることが望ましい。絶縁体層3は、6GHz以下の周波数、特に800MHzから1.9GHz帯域における誘電率、誘電正接が安定した材料からなることが望ましい。フッ素樹脂の中でも、PFAが望ましい。
【0039】
内部絶縁心線4は、絶縁体層3の厚さが40μm未満である。
【0040】
4心の内部絶縁心線4は、絶縁体層3に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれている。これにより、各内部絶縁心線4は、色が異なる。
【0041】
内部絶縁心線4が4心で撚り合わされたもの(コア8)の撚り合わせについては、撚り合わせピッチが撚り合わせ後の外径の30〜40倍であることが望ましい。撚り合わせの方向は、内部導体2の撚り合わせ方向と同じであることが望ましい。
【0042】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対して、着色顔料として2種の添加剤を添加したものである。添加剤には、次のようなものがある。
【0043】
酸化チタンは、銅からなる外部導体を切断する光波長(1064nm)に対し主に光反射剤として機能するものであり、カーボンブラック及びニッケルは、銅からなる外部導体を切断する光波長(1064nm)に対し主に光吸収剤として機能する。
【0044】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対してカーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていてもよい。この場合、スキン層5は灰色を呈する。
【0045】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対して酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていてもよい。この場合、スキン層5は黄色を呈する。
【0046】
スキン層5は、押出成型により形成されるか、または抑え巻きにより形成される。
【0047】
押出成型の場合、スキン層5は、コア8の全外周を被覆するのが好ましい。スキン層5は、薄肉での押出が可能であることが望ましい。スキン層5は、耐伸性と耐屈曲性が共に良好で、6GHz以下の周波数、特に800MHzから1.9GHz帯域における誘電率、誘電正接が安定した材料からなることが望ましい。フッ素樹脂の中でも、PFA(パーフロロアルコキシ;perfluoroalkoxy)が望ましい。
【0048】
このとき、スキン層5の厚さは、外部導体6が複数の素線からなる場合、その素線径の0.5〜1.0倍とすることが望ましい。
【0049】
抑え巻きの場合、スキン層5は、フッ素樹脂テープを押さえ巻きすることが望ましい。このとき、フッ素樹脂テープ同士が重ならないよう、突き合わせ巻きとするのが望ましい。
【0050】
外部導体6は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものが望ましい。必要に応じて、横巻きや網組を2重等の多重に行ってもよい。
【0051】
シース層7は、薄肉で、かつ、繰り返し曲げに強い材料で構成するのが望ましい。シース層7は、例えば、PFA等のフッ素樹脂からなる。
【0052】
信号伝送ケーブル1の外径は、信号伝送ケーブル1をノートパソコンや携帯電話の狭いヒンジ部に通すこと、及び繰り返し捻りを受けることを考慮すると、0.7mm以下であることが望ましい。
【0053】
以上の構成を有することにより、信号伝送ケーブル1は、曲げたり捻ったりした際に、コア8を形成している4心の内部絶縁心線4がスキン層5の中で一定の間隔を保つので、電気特性が安定である。特に特性インピーダンスが安定するため、アイパターン試験、クロストーク試験に良好な成績が出る。
【0054】
信号伝送ケーブル1は、4心の内部絶縁心線4の機械特性がスキン層5によって補強されるので、屈曲寿命(耐屈曲性)が著しく向上する。
【0055】
信号伝送ケーブル1は、コア8の撚り合わせ径が細くなるので、捻回寿命(耐捻回性)が向上する。
【0056】
信号伝送ケーブル1は、コア8がスキン層5によって保護されるので、外部導体6が素線を横巻きしたものであっても、捻回寿命が短縮されない。
【0057】
信号伝送ケーブル1は、内部絶縁心線4を0.5〜0.3mmピッチに並べる端末加工を施すとき、外部導体6を構成している横巻素線が絶縁体層3に刺さることがない。
【0058】
また、信号伝送ケーブル1は、スキン層5において、主材料であるフッ素樹脂に対して、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれるか、または、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれるので、外部導体6とスキン層5とをレーザ光で同時切断する際に生じる諸問題がなく、スキン層5の成形も容易である。
【0059】
すなわち、酸化チタンを単独で添加すると、酸化チタンは他の着色顔料に比して光を反射しやすい特性を有し、レーザ光を反射させることで周囲の絶縁材料を溶かすことができるため、外部導体とスキン層とを同時に切断する観点においては有利であるが、反面、酸化チタンは光を透過しやすい特性も併せ持つため、内部絶縁体と内部導体への損傷が大きい。そこで、本発明では、外部導体(Cu)を切断するレーザ光の光波長(1064nm)において光を吸収しやすく透過しにくい特性を有するカーボンブラックを酸化チタンと併用することで、レーザ光によって外部導体とスキン層とを同時に切断すると共に、レーザ光による内部絶縁体及び内部導体への損傷を防ぐことが可能になる。
【0060】
また、本発明者らは、酸化チタンに対する第2の添加剤として、外部導体(Cu)を切断するレーザ光の光波長(1064nm)において光を吸収しやすい特性を有するニッケルを選定し、酸化チタンとニッケルとを所定の割合で配合した場合にも、上記と同様に、レーザ光によって外部導体とスキン層とを同時に切断すると共に、レーザ光による内部絶縁体及び内部導体への損傷を防ぐことができることを見出した。
【0061】
また、信号伝送ケーブル1は、レーザ光が内部絶縁心線4に届くのを防ぐスキン層5があるので、各内部絶縁心線4の色を黒以外の種々の色にすることができる。各内部絶縁心線4の色を異ならせることにより、目視による識別が容易となる。
【0062】
以上のことから、信号伝送ケーブル1は、電気特性・機械特性に優れるだけでなく、端末加工性にも優れている。
【0063】
信号伝送ケーブル1は、複数本を組み合わせて一体の多心ケーブルとすることができる。
【0064】
図2に示されるように、本発明に係る多心ケーブル21は、これまで説明した信号伝送ケーブル1が複数本、フラットに配列されているものである。多心ケーブル21は、粘着テープ22上に信号伝送ケーブル1が所定ピッチで配置され、その上に粘着テープ22が設けられることにより、全体が一体化されている。
【0065】
この多心ケーブル21の端末部分のシース層7の所定位置にCO2レーザ光を照射して切れ込みを入れ、切断された端末側のシース層7を除去することで外部導体6を露出させる。露出した外部導体6の所定位置にYAGレーザ光(1064nm)を照射して切れ込みを入れ、切れ込みを入れた端末側の外部導体6及びスキン層5を除去することで内部絶縁体3を露出させる。露出した内部絶縁体3の所定位置にCO2レーザ光を照射して切れ込みを入れ、切断された端末側の内部絶縁体3を除去することで内部導体2を露出させる。さらに、接続すべき相手側(配線基板)の端子部分に内部導体2をはんだにて接続するとともに、グランドに外部導体6を接続して端末加工を終了する。このように、複数の信号電送ケーブルがフラットに配列されている多心ケーブル21によれば、全ての信号電送ケーブルに対して一回のYAGレーザ光の照射により外部導体6及びスキン層5を除去することができる。
【0066】
図3に示されるように、本発明の多心ケーブル31は、これまで説明した信号伝送ケーブル1が複数本、撚り合わされているものである。多心ケーブル31は、テンションメンバまたは中心介在32の外周に信号伝送ケーブル1が、例えば、16本撚り合わされ、その外周に押さえテープ33が設けられ、その押さえテープ33の外周にシース34が設けられる。
【0067】
これらの多心ケーブル21,31においても、内蔵されている信号伝送ケーブル1が電気特性・機械特性に優れ、レーザ加工に適しているので、ノート型パソコン、携帯電話などの小型電子機器において、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に好適である。
【実施例】
【0068】
電気特性と機械特性の評価のため、図1に示した本発明の信号伝送ケーブル1と図11示した従来の信号伝送ケーブルを表1の条件で作製した。作製した本発明の信号伝送ケーブル1を実施例#1,#2と呼び、従来の信号伝送ケーブルを従来例#1,#2と呼ぶ。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示されるように、実施例#1と従来例#1は、内部導体2に44AWG(7/0.025)を使用し、シース層7の外径が0.54mmである。実施例#2と従来例#2は、内部導体2に44AWG(7/0.02)を使用し、シース層7の外径が0.45mmである。実施例と従来例の相違はスキン層5の有無である。
【0071】
これら実施例と従来例のケーブルについて、以下に述べる試験方法で試験を行い、結果を表2にまとめ、電気特性、機械特性を評価した。
【0072】
【表2】
【0073】
表2は、各試料(ケーブル)について各試験で得られた数値を記入したものである。アイパターン試験から単独ノイズクロストーク測定試験までは、括弧外にアイハイトの値、括弧内にジッタの値を記入してある。
1)機械特性試験(屈曲試験)
図4に示されるように、垂れ下げたケーブル(試料ともいう)41の下端に荷重0.05N(50gf)の錘42を吊り下げ、ケーブル41の左右に湾曲した形の曲げジグ43を取り付ける。この状態で、曲げジグ43を動かすことにより、ケーブル41の曲げジグ43のR部分に位置する箇所に屈曲角度左右90度の曲げを加える。曲げ半径rは2mmとする。矢印4a,4b,4c,4dの順に曲げジグ43を動かして1サイクル(数えるときは1回)とする。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分となるよう、曲げジグ43が動く速度を決める。
【0074】
試料41として実施例、従来例のケーブルをそれぞれ1本ずつ用いる。上記サイクルを繰り返し、適宜回ごとにケーブルの両端間で内部導体の導通を調べる。導通があれば、継続して上記サイクルを繰り返す。導通が失われていれば、そのときの回数を屈曲寿命として記録する。
2)機械特性試験(捻回試験)
図5に示されるように、ケーブル(試料)51の一箇所を回転しない固定チャック52に取り付け、それより上部に長さd=20mmの試験対象箇所(捻回部53)を隔てた別の箇所を回転チャック54に取り付ける。図示しないが、ケーブル51の下端に荷重0.05N(50gf)の錘を吊り下げておく。この状態で回転チャック54を回転させることにより、捻回部に対して±180度の捻りを加える。回転チャック54は、まず+180度回転して元に戻し、−180度回転して元に戻すというように、矢印5a,5b,5c,5dの順に動かして1サイクル(数えるときは1回)とする。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が60回/分となるよう、回転チャック54が回転する速度を決める。
【0075】
試料51として実施例、従来例のケーブルをそれぞれ1本ずつ用いる。上記サイクルを繰り返し、適宜回ごとにケーブルの両端間で内部導体の導通を調べる。導通があれば、継続して上記サイクルを繰り返す。導通が失われていれば、そのときの回数を捻回寿命として記録する。
3)電気特性試験(特性インピーダンス測定試験)
図6に示されるように、真っ直ぐ延ばした状態の試料(ケーブル)61と曲げを入れた状態の試料62について、特性インピーダンスを測定する。測定器はデジタルサンプリングオシロスコープ(アジレントテクノロジー製:A86100A;以下同)63を用いる。曲げは、送信側コネクタ部より約20cmの箇所に入れる。曲げは、曲げ半径5mmで試料62を一回転させた曲げとする。
【0076】
試料61,62の一端を送信側とし、送信側では試料の内部導体のうち2本を各々COAX64を介してタイムコンバータ65に接続し、各タイムコンバータ65をそれぞれサンプリングヘッド66に接続する。試料の反対端は受信側とし、受信側では試料の内部導体の上記2本に各々50Ωの終端抵抗67を取り付ける。
【0077】
試料として実施例、従来例のケーブルを用いる。真っ直ぐ延ばした状態における特性インピーダンスと曲げを入れた状態における特性インピーダンスを測定・記録し、両者の差を記録する。
4)電気特性試験(アイパターン測定試験)
図7に示されるように、曲げを入れた状態の試料71について、差動信号を入力したときのアイパターンを観測し、アイハイトとジッタを測定する。測定器としてパルスジェネレータ72とデジタルサンプリングオシロスコープ73を用いる。曲げは、試料71の長手方向の中央部に入れる。曲げは、曲げ半径10mmで試料71を一回転させる曲げとする。
【0078】
試料71の一端を送信側とし、送信側では、パルスジェネレータ72の2つの出力端子に各々COAX74を介して試料71の内部導体のうち2本をそれぞれを接続する。試料71の反対端は受信側とし、受信側では試料71の内部導体の上記2本をデジタルサンプリングオシロスコープ73のサンプリングヘッドに接続する。
【0079】
この状態で、ビットレート1〜1000Mbpsの差動信号を試料に印加する。印加電圧は、1000mVとする。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ73の波形表示器75に現れるアイパターンを観測してアイハイト(mV)とジッタ(ps)を測定し、記録する。
5)電気特性試験(差動ノイズクロストーク測定試験)
図8に示されるように、曲げを入れた状態の試料81に差動信号とノイズを入力したときのクロストークを測定する。測定器として2台のパルスジェネレータ82とデジタルサンプリングオシロスコープ83を用いる。曲げは、試料81の長手方向の中央部に入れる。曲げは、曲げ半径10mmで試料81を一回転させる曲げとする。
【0080】
試料81の一端を送信側とし、送信側では、1台のパルスジェネレータ82の2つの差動出力端子に各々COAX84を介して試料81の内部導体のうち2本(図1中のa,b)をそれぞれを接続する。もう1台のパルスジェネレータ82の2つの差動出力端子に各々COAX84を介して試料81の内部導体のうち別の2本(図1中のc,d)をそれぞれを接続する。試料81の反対端は受信側とし、受信側では試料81の内部導体a,bをデジタルサンプリングオシロスコープ83のサンプリングヘッドに接続する。
【0081】
この状態で、ビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの差動信号からなる差動信号を内部導体a,bに印加すると共に、同様の差動信号(こちらはノイズとして使用する)を内部導体c,dに印加する。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ83の波形表示器85に現れるアイパターンを観測してアイハイトとジッタを測定し、記録する。
6)電気特性試験(単独ノイズクロストーク測定試験)
図8の構成において、ノイズの種類を変えてクロストークを測定する。すなわち、ビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの差動信号を内部導体a,bに印加すると共に、内部導体c,dのいずれか一方にビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの単独信号をノイズとして印加する。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ83の波形表示器85に現れるアイパターンを観測してアイハイトとジッタを測定し、記録する。
【0082】
表2を参照しつつ機械特性、電気特性の評価を行う。
【0083】
表1のように、実施例#1と従来例#1、また、実施例#2と従来例#2は、内部導体2のサイズ(断面積)が同じである。しかし、表2において屈曲特性を比較すると、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2より屈曲寿命が長いことが分かる。つまり、本発明のものは耐屈曲性に優れる。
【0084】
同様に、捻回特性を比較すると、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2より捻回寿命が長いことが分かる。つまり、本発明のものは耐捻回性に優れる。
【0085】
特性インピーダンスについて、内部導体2のサイズが同じ同士を比較すると、試料が真っ直ぐの状態(表2中「直」)と曲げ径10mmで曲げた状態(表2中「曲」)との差(曲げによる変化量;表2中「差」)は、実施例#1,#2のほうが小さい。つまり、本発明のものは曲げに対して特性インピーダンスが安定である。
【0086】
曲げ径10mmで曲げた状態でのアイパターンにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものはアイパターン特性が良好である。
【0087】
曲げ径10mmで曲げた状態での差動ノイズクロストークにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものは差動ノイズクロストーク特性が良好である。
【0088】
曲げ径10mmで曲げた状態での単独ノイズクロストークにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものは単独ノイズクロストーク特性が良好である。
【0089】
次に、端末加工性を評価するために、図1に示した本発明の信号伝送ケーブル1と同じ構造を有し、スキン層5のフッ素樹脂に添加する添加剤等の製造条件を表3のように異ならせた試料を作製した。作製した試料のうち、製造条件が本発明に従うものを実施例#3〜#8と呼び、製造条件が本発明に従わないものを比較例#1〜#11と呼ぶ。また、従来構造の試料も作製し、これを従来例#3と呼ぶ。
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示されるように、実施例#3〜#5は、添加剤が酸化チタン(酸化Ti)0.42〜1.52wt%、ニッケル(Ni)0.27〜0.85wt%の製造条件を満足し、スキン層5は黄色を呈する。
【0092】
実施例#6〜#8は、添加剤がカーボンブラック(C)0.09〜0.46wt%、酸化チタン(酸化Ti)0.33〜1.62wt%の製造条件を満足し、スキン層5は灰色を呈する。
【0093】
比較例#1〜#4は、添加剤として酸化チタン(酸化Ti)、ニッケル(Ni)を用い、スキン層5は黄色を呈するが、添加剤の添加量が製造条件を満足しない。
【0094】
比較例#5〜#8は、添加剤としてカーボンブラック(C)、酸化チタン(酸化Ti)を用い、スキン層5は灰色を呈するが、添加剤の添加量が製造条件を満足しない。
【0095】
比較例#9〜#11は、添加剤が1種類で色も異なる。
【0096】
なお、表3には示さないが、4心の内部絶縁心線4の絶縁体層3の色は、異ならせてあり、全ての実施例、比較例において、黒色、黄色、赤色、青色に統一した。
【0097】
端末加工の試験は次のように行う。
【0098】
各実施例、比較例、従来例について試料を10本ずつ用意する。10本の試料を1.5mmピッチで並べておき、CO2レーザを用いてシース層7を端末から3mmの位置で切断する。切断されたシース層7を機械的に剥離させ、外部導体6を端末から3mm露出させる。その後、外部導体6とスキン層5をYAGレーザで切断する。
【0099】
端末加工性の評価は、第1に、切断された外部導体6とスキン層5を同時に機械的に剥離させるときに、スキン層5の切れ残りがなく、外部導体6とスキン層5が完全に同時に剥離できることをもって同時切断を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0100】
第2に、YAGレーザで切断した箇所における内部絶縁心線4の絶縁体層3の絶縁抵抗が2×103MΩ/km以上であって、かつ、印加試験電圧A.C.300V×1分間に耐えられれば絶縁及び耐電圧を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。絶縁抵抗の測定、電圧印加は、内部導体2と絶縁体層3の間とする。
【0101】
第3に、スキン層5の厚さが均一(中心地±15%の公差)に成形できていれば、成形を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0102】
第4に、目視により4心の内部絶縁心線4を識別し、識別が容易であれば、識別を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0103】
表3を参照しつつ端末加工性の評価結果を説明する。
【0104】
比較例#1は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.60wt%と本発明の製造条件(上限1.52wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0105】
比較例#2は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が0.30wt%と本発明の製造条件(下限0.42wt%)よりも少ない。このため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解の効果が不十分であった。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に切断するには至らなかった。
【0106】
比較例#3は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.60wt%、ニッケルの含有量が0.90wt%と本発明の製造条件(酸化チタン上限1.52wt%、ニッケル上限0.85wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0107】
比較例#4は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.06wt%と本発明の製造条件(上限1.52wt%)よりも多い。酸化チタンの含有量が多いため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解としては十分であり、外部導体6とスキン層5とを同時に切断することができた。しかし、ニッケルの含有量が0.25wt%と本発明の製造条件(下限0.27wt%)より少ないため、ニッケルによるレーザ光の吸収量が少なく、結果として、スキン層5におけるレーザ光の透過量が多くなり、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0108】
比較例#5は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、カーボンブラックの含有量が0.08wt%と本発明の製造条件(下限0.09wt%)よりも少ない。このため、カーボンブラックによるレーザ光を吸収する効果が期待できず、スキン層5におけるレーザ光の透過量が多く、絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入ってしまった。
【0109】
比較例#6は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、カーボンブラックの含有量が0.50wt%と本発明の製造条件(上限0.46wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0110】
比較例#7は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.70wt%と本発明の製造条件(上限1.62wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0111】
比較例#8は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が0.3wt%と本発明の製造条件(下限0.33wt%)よりも少ない。このため、スキン層5の中で酸化チタンによってレーザ光が反射される時の熱吸収が小さく、スキン層5が溶けにくい。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。
【0112】
比較例#9は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンしか添加されておらず、しかも酸化チタンの含有量が少ない。このため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解の効果が不十分であった。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に切断するには至らなかった。また、スキン層5の中でレーザ光の透過率が極端に高いため、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0113】
比較例#10は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックしか添加されておらず、しかもカーボンブラックの含有量が少ない。このため、スキン層5の中でカーボンブラックによる熱吸収が小さく、スキン層5が溶けにくい。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。また、カーボンブラックの含有量が少ないため、スキン層5の中でレーザ光の透過率が高く、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0114】
比較例#11は、スキン層5の中でカーボンブラックによる熱吸収がスキン層5を溶かすのに不十分である。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。
【0115】
従来例#3は、スキン層がないため、4心の内部絶縁心線114の色を全て黒色にすることになる。このため、内部絶縁心線114の目視色による識別が不可となる。
【0116】
これら比較例#1〜#11、従来例#3に比べると、実施例#3〜#8は、同時切断も良、絶縁及び耐電圧も良、成形も良、識別も良となり、端末加工性がよいという結論が得られる。
【0117】
以上の実施例評価をまとめると、本発明は、スキン層5を有する構成により、機械特性、電気特性に優れ、スキン層5のフッ素樹脂に添加する添加剤とその量を適切に定めたので、端末加工性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態を示す信号伝送用ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す多心ケーブルの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す多心ケーブルの断面図である。
【図4】屈曲試験の概念図である。
【図5】捻回試験の概念図である。
【図6】特性インピーダンス測定試験の装置構成図である。
【図7】アイパターン測定試験の装置構成図である。
【図8】差動ノイズクロストーク測定試験及び単独ノイズクロストーク測定試験の装置構成図である。
【図9】従来の極細同軸ケーブルの断面図である。
【図10】従来の2心同軸ケーブルの断面図である。
【図11】従来の4心撚り合わせ一括シールド付きケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 信号伝送用ケーブル
2 内部導体
3 絶縁体層
4 内部絶縁心線
5 スキン層
6 外部導体
7 シース層
8 コア
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気特性・機械特性に優れ、端末加工性に優れた信号伝送用ケーブル及び多心ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ノート型パソコン、携帯電話などの小型電子機器において、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に使用されるケーブルには、EMI(不要輻射)、SKEW(クロックスキュー)に関する所定の電気特性が要求されるため、極細同軸ケーブル(特許文献1参照)が使用されている。
【0003】
図9に示されるように、極細同軸ケーブル91は、内部導体92の外周に絶縁体層93を有し、絶縁体層93の外周に外部導体94を有し、外部導体94の外周にシース95を有する。
【0004】
ノート型パソコンは、その本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送方式がパラレル伝送からシリアル伝送に移行しつつある。シリアル伝送に使用されるケーブルには、極細同軸ケーブルよりも厳しい電気特性が要求されるため、2心同軸ケーブル(特許文献2参照)、4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル(特許文献3,4参照)が使用されつつある。
【0005】
図10に示されるように、2心同軸ケーブル101は、内部導体102の外周に絶縁体層103を有する内部絶縁心線104が2本並べられ、その外周に外部導体105を有し、外部導体105の外周にシース106を有する。
【0006】
図11に示されるように、4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111は、内部導体112の外周に絶縁体層113を有する内部絶縁心線114が介在115の外周に4心で撚り合わされ、その外周に外部導体116を有し、外部導体116の外周に絶縁体からなるシース層117を有する。
【0007】
携帯電話については、2心同軸ケーブルが増えている。2心同軸ケーブルは、耐屈曲性、耐捻回性の要求が特に厳しくなっていると共に、諸受信機能増加のための内部アンテナの数が増えることによって、高いEMI特性が要求される。
【0008】
これらのケーブルは、複数本を並列にして使用され、その端末部分がフラットにされてコネクタ側の基板の上に接続される。この端末加工は、YAGレーザを用いたレーザ加工で行われるが、このときレーザ光により内部導体が損傷しないようにする必要がある。
【0009】
内部導体に損傷を与えることなく外部導体をレーザ加工で直接切断する技術として、内部導体を覆う絶縁体層の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックを0.025〜0.14wt%添加して「薄黒」に着色する技術(特許文献5)が提案されている。
【0010】
内部導体に損傷を与えることなく外部導体を切断し得るようにケーブルを構成する技術として、内部導体を覆う絶縁体層の主材料である樹脂に対し、レーザ光を全反射しやすい白色または金属色の添加剤、レーザ光を吸収しやすいカーボンブラック等の黒色の添加剤、金属酸化物などからなる色体が混在する粉末状の添加剤を添加する技術(特許文献6)が提案されている。
【0011】
これらのケーブルは、例えば、本体と液晶ディスプレイとの間で差動信号を伝送することから差動信号伝送用ケーブルとも呼ばれる。
【0012】
【特許文献1】特開2002−352640号公報
【特許文献2】特開2003−22718号公報
【特許文献3】特開2003−132743号公報
【特許文献4】特表平9−511359号公報
【特許文献5】特開2005−251522号公報
【特許文献6】特開2004−192815号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来のケーブルには構造的に次の問題がある。
【0014】
図10の2心同軸ケーブル101は、断面が楕円形であるため、ケーブル周囲360度での対称性が悪く、携帯電話のように多軸で捻られる用途には適さない。
【0015】
図11の4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111は、ケーブルを曲げたり捻ったりするとき、4心の内部絶縁心線114同士の間隔が変化しやすいため、電気特性が不安定であり、電気特性のバラツキも大きい。また、内部絶縁心線114を0.5〜0.3mmピッチに並べる端末加工を施すと、外部導体116を構成している横巻された素線の先端が内部絶縁心線114の絶縁体層113に刺さって内部導体112と短絡してしまう不良が多発する。
【0016】
4心撚り合わせ一括シールド付きケーブル111において、内部絶縁心線114が4心で撚り合わされた外周に銅蒸着PETテープを押さえ巻きして外部導体116を構成する場合、電気特性は安定であるが、ケーブルが硬く、耐屈曲性、耐捻回性などの機械特性が悪く、携帯電話のように多軸で捻られる用途には適さない。
【0017】
また、従来のケーブルには、端末加工に関し、YAGレーザを用いたレーザ加工が困難であるという問題がある。それは、レーザ光が外部導体の隙間を透過して内部絶縁心線の絶縁体層を損傷させ、さらに内部導体を損傷させる。
【0018】
図9(特許文献1)の極細同軸ケーブル91は、絶縁体層93の厚さが60μmのような比較的厚肉の領域においては、絶縁抵抗試験の合格率が100%に達しており、絶縁特性が高いが、絶縁体層93の厚さが60μm未満(例えば、50μm、40μm)のような比較的薄肉の領域においては、絶縁特性が低い。したがって、カーボンブラックを絶縁体層93に添加した場合に、絶縁特性を高く維持するためには、絶縁体層93の厚さを増加させる必要があり、その結果、ケーブルの径が太くなる。
【0019】
また、内部絶縁心線を複数本有するケーブル(図10、図11)では、絶縁体層の色を全部黒にすると、内部絶縁心線の目視による識別が困難となる。その反面、黒以外の色を使用する場合、例えば、絶縁体層の色を1本のみ黒にし、他の絶縁体層の色を黒と識別可能な別々の色にすると、外部導体をレーザ加工で切断する際に、絶縁体層の色が黒以外の内部絶縁心線は、絶縁体層や内部導体に損傷を受ける。絶縁体層の色が黒である場合に絶縁体層や内部導体に損傷がない理由は完全に解明されているわけではないが、本発明者らは、黒色の絶縁体層には着色顔料としてカーボンブラックが添加されており、カーボンブラックは他の着色顔料に比べて光透過量が格段に小さいことから、光を遮断して内部導体の損傷を抑制する効果があり、また、カーボンブラックは他の着色顔料よりも光を吸収する特性があるため、レーザ光により発熱するものの、その発熱温度はフッ素樹脂の軟化温度(約302℃)よりも低いため、フッ素樹脂を溶かすまでには至らないことが原因であると考えている。
【0020】
また、特許文献6は、絶縁体層の主材料である樹脂に添加する添加剤の種類、組み合わせ、添加量が示されておらず、実用的でない。
【0021】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、電気特性・機械特性に優れ、端末加工性に優れた信号伝送用ケーブル及び多心ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明の信号伝送用ケーブルは、内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラックを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有するものである。
【0023】
また、本発明の信号伝送用ケーブルは、内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとニッケルを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有するものである。
【0024】
上記スキン層は、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていてもよい。
【0025】
上記スキン層は、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていてもよい。
【0026】
上記4心の内部絶縁心線は、上記絶縁体層に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれていてもよい。
【0027】
上記内部絶縁心線は、上記絶縁体層の厚さが40μm未満であってもよい。
【0028】
上記スキン層は、押出成型により形成されたもの、または抑え巻きにより形成されたものであってもよい。
【0029】
上記外部導体は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものであってもよい。
【0030】
本発明の多心ケーブルは、上記信号伝送ケーブルが複数本、フラットに配列されているものである。
【0031】
本発明の多心ケーブルは、上記信号伝送ケーブルが複数本、撚り合わされているものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
【0033】
(1)電気特性・機械特性に優れる。
【0034】
(2)レーザ加工に適する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0036】
図1に示されるように、本発明に係る信号伝送ケーブル1は、内部導体2の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層3を有する内部絶縁心線4が4心で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として2種の添加剤を添加したスキン層5を有し、該スキン層5の外周に外部導体(シールド)6を有し、該外部導体6の外周に絶縁体からなるシース層(ジャケット)7を有するものである。
【0037】
内部絶縁心線4の内部導体2は、複数本の銅合金線または銀めっき銅合金線を撚り合わせて形成するとよい。信号伝送ケーブル1をノートパソコンや携帯電話のヒンジ部に通すことを考慮すると、内部導体2のサイズは、40AWG(7/0.028〜0.032)〜44AWG(7/0.014〜0.018)が望ましい。
【0038】
内部絶縁心線4の絶縁体層3は、薄肉での押出が可能であることが望ましい。絶縁体層3は、6GHz以下の周波数、特に800MHzから1.9GHz帯域における誘電率、誘電正接が安定した材料からなることが望ましい。フッ素樹脂の中でも、PFAが望ましい。
【0039】
内部絶縁心線4は、絶縁体層3の厚さが40μm未満である。
【0040】
4心の内部絶縁心線4は、絶縁体層3に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれている。これにより、各内部絶縁心線4は、色が異なる。
【0041】
内部絶縁心線4が4心で撚り合わされたもの(コア8)の撚り合わせについては、撚り合わせピッチが撚り合わせ後の外径の30〜40倍であることが望ましい。撚り合わせの方向は、内部導体2の撚り合わせ方向と同じであることが望ましい。
【0042】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対して、着色顔料として2種の添加剤を添加したものである。添加剤には、次のようなものがある。
【0043】
酸化チタンは、銅からなる外部導体を切断する光波長(1064nm)に対し主に光反射剤として機能するものであり、カーボンブラック及びニッケルは、銅からなる外部導体を切断する光波長(1064nm)に対し主に光吸収剤として機能する。
【0044】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対してカーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていてもよい。この場合、スキン層5は灰色を呈する。
【0045】
スキン層5は、主材料であるフッ素樹脂に対して酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていてもよい。この場合、スキン層5は黄色を呈する。
【0046】
スキン層5は、押出成型により形成されるか、または抑え巻きにより形成される。
【0047】
押出成型の場合、スキン層5は、コア8の全外周を被覆するのが好ましい。スキン層5は、薄肉での押出が可能であることが望ましい。スキン層5は、耐伸性と耐屈曲性が共に良好で、6GHz以下の周波数、特に800MHzから1.9GHz帯域における誘電率、誘電正接が安定した材料からなることが望ましい。フッ素樹脂の中でも、PFA(パーフロロアルコキシ;perfluoroalkoxy)が望ましい。
【0048】
このとき、スキン層5の厚さは、外部導体6が複数の素線からなる場合、その素線径の0.5〜1.0倍とすることが望ましい。
【0049】
抑え巻きの場合、スキン層5は、フッ素樹脂テープを押さえ巻きすることが望ましい。このとき、フッ素樹脂テープ同士が重ならないよう、突き合わせ巻きとするのが望ましい。
【0050】
外部導体6は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものが望ましい。必要に応じて、横巻きや網組を2重等の多重に行ってもよい。
【0051】
シース層7は、薄肉で、かつ、繰り返し曲げに強い材料で構成するのが望ましい。シース層7は、例えば、PFA等のフッ素樹脂からなる。
【0052】
信号伝送ケーブル1の外径は、信号伝送ケーブル1をノートパソコンや携帯電話の狭いヒンジ部に通すこと、及び繰り返し捻りを受けることを考慮すると、0.7mm以下であることが望ましい。
【0053】
以上の構成を有することにより、信号伝送ケーブル1は、曲げたり捻ったりした際に、コア8を形成している4心の内部絶縁心線4がスキン層5の中で一定の間隔を保つので、電気特性が安定である。特に特性インピーダンスが安定するため、アイパターン試験、クロストーク試験に良好な成績が出る。
【0054】
信号伝送ケーブル1は、4心の内部絶縁心線4の機械特性がスキン層5によって補強されるので、屈曲寿命(耐屈曲性)が著しく向上する。
【0055】
信号伝送ケーブル1は、コア8の撚り合わせ径が細くなるので、捻回寿命(耐捻回性)が向上する。
【0056】
信号伝送ケーブル1は、コア8がスキン層5によって保護されるので、外部導体6が素線を横巻きしたものであっても、捻回寿命が短縮されない。
【0057】
信号伝送ケーブル1は、内部絶縁心線4を0.5〜0.3mmピッチに並べる端末加工を施すとき、外部導体6を構成している横巻素線が絶縁体層3に刺さることがない。
【0058】
また、信号伝送ケーブル1は、スキン層5において、主材料であるフッ素樹脂に対して、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれるか、または、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれるので、外部導体6とスキン層5とをレーザ光で同時切断する際に生じる諸問題がなく、スキン層5の成形も容易である。
【0059】
すなわち、酸化チタンを単独で添加すると、酸化チタンは他の着色顔料に比して光を反射しやすい特性を有し、レーザ光を反射させることで周囲の絶縁材料を溶かすことができるため、外部導体とスキン層とを同時に切断する観点においては有利であるが、反面、酸化チタンは光を透過しやすい特性も併せ持つため、内部絶縁体と内部導体への損傷が大きい。そこで、本発明では、外部導体(Cu)を切断するレーザ光の光波長(1064nm)において光を吸収しやすく透過しにくい特性を有するカーボンブラックを酸化チタンと併用することで、レーザ光によって外部導体とスキン層とを同時に切断すると共に、レーザ光による内部絶縁体及び内部導体への損傷を防ぐことが可能になる。
【0060】
また、本発明者らは、酸化チタンに対する第2の添加剤として、外部導体(Cu)を切断するレーザ光の光波長(1064nm)において光を吸収しやすい特性を有するニッケルを選定し、酸化チタンとニッケルとを所定の割合で配合した場合にも、上記と同様に、レーザ光によって外部導体とスキン層とを同時に切断すると共に、レーザ光による内部絶縁体及び内部導体への損傷を防ぐことができることを見出した。
【0061】
また、信号伝送ケーブル1は、レーザ光が内部絶縁心線4に届くのを防ぐスキン層5があるので、各内部絶縁心線4の色を黒以外の種々の色にすることができる。各内部絶縁心線4の色を異ならせることにより、目視による識別が容易となる。
【0062】
以上のことから、信号伝送ケーブル1は、電気特性・機械特性に優れるだけでなく、端末加工性にも優れている。
【0063】
信号伝送ケーブル1は、複数本を組み合わせて一体の多心ケーブルとすることができる。
【0064】
図2に示されるように、本発明に係る多心ケーブル21は、これまで説明した信号伝送ケーブル1が複数本、フラットに配列されているものである。多心ケーブル21は、粘着テープ22上に信号伝送ケーブル1が所定ピッチで配置され、その上に粘着テープ22が設けられることにより、全体が一体化されている。
【0065】
この多心ケーブル21の端末部分のシース層7の所定位置にCO2レーザ光を照射して切れ込みを入れ、切断された端末側のシース層7を除去することで外部導体6を露出させる。露出した外部導体6の所定位置にYAGレーザ光(1064nm)を照射して切れ込みを入れ、切れ込みを入れた端末側の外部導体6及びスキン層5を除去することで内部絶縁体3を露出させる。露出した内部絶縁体3の所定位置にCO2レーザ光を照射して切れ込みを入れ、切断された端末側の内部絶縁体3を除去することで内部導体2を露出させる。さらに、接続すべき相手側(配線基板)の端子部分に内部導体2をはんだにて接続するとともに、グランドに外部導体6を接続して端末加工を終了する。このように、複数の信号電送ケーブルがフラットに配列されている多心ケーブル21によれば、全ての信号電送ケーブルに対して一回のYAGレーザ光の照射により外部導体6及びスキン層5を除去することができる。
【0066】
図3に示されるように、本発明の多心ケーブル31は、これまで説明した信号伝送ケーブル1が複数本、撚り合わされているものである。多心ケーブル31は、テンションメンバまたは中心介在32の外周に信号伝送ケーブル1が、例えば、16本撚り合わされ、その外周に押さえテープ33が設けられ、その押さえテープ33の外周にシース34が設けられる。
【0067】
これらの多心ケーブル21,31においても、内蔵されている信号伝送ケーブル1が電気特性・機械特性に優れ、レーザ加工に適しているので、ノート型パソコン、携帯電話などの小型電子機器において、本体と液晶ディスプレイとの間の信号伝送に好適である。
【実施例】
【0068】
電気特性と機械特性の評価のため、図1に示した本発明の信号伝送ケーブル1と図11示した従来の信号伝送ケーブルを表1の条件で作製した。作製した本発明の信号伝送ケーブル1を実施例#1,#2と呼び、従来の信号伝送ケーブルを従来例#1,#2と呼ぶ。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示されるように、実施例#1と従来例#1は、内部導体2に44AWG(7/0.025)を使用し、シース層7の外径が0.54mmである。実施例#2と従来例#2は、内部導体2に44AWG(7/0.02)を使用し、シース層7の外径が0.45mmである。実施例と従来例の相違はスキン層5の有無である。
【0071】
これら実施例と従来例のケーブルについて、以下に述べる試験方法で試験を行い、結果を表2にまとめ、電気特性、機械特性を評価した。
【0072】
【表2】
【0073】
表2は、各試料(ケーブル)について各試験で得られた数値を記入したものである。アイパターン試験から単独ノイズクロストーク測定試験までは、括弧外にアイハイトの値、括弧内にジッタの値を記入してある。
1)機械特性試験(屈曲試験)
図4に示されるように、垂れ下げたケーブル(試料ともいう)41の下端に荷重0.05N(50gf)の錘42を吊り下げ、ケーブル41の左右に湾曲した形の曲げジグ43を取り付ける。この状態で、曲げジグ43を動かすことにより、ケーブル41の曲げジグ43のR部分に位置する箇所に屈曲角度左右90度の曲げを加える。曲げ半径rは2mmとする。矢印4a,4b,4c,4dの順に曲げジグ43を動かして1サイクル(数えるときは1回)とする。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が30回/分となるよう、曲げジグ43が動く速度を決める。
【0074】
試料41として実施例、従来例のケーブルをそれぞれ1本ずつ用いる。上記サイクルを繰り返し、適宜回ごとにケーブルの両端間で内部導体の導通を調べる。導通があれば、継続して上記サイクルを繰り返す。導通が失われていれば、そのときの回数を屈曲寿命として記録する。
2)機械特性試験(捻回試験)
図5に示されるように、ケーブル(試料)51の一箇所を回転しない固定チャック52に取り付け、それより上部に長さd=20mmの試験対象箇所(捻回部53)を隔てた別の箇所を回転チャック54に取り付ける。図示しないが、ケーブル51の下端に荷重0.05N(50gf)の錘を吊り下げておく。この状態で回転チャック54を回転させることにより、捻回部に対して±180度の捻りを加える。回転チャック54は、まず+180度回転して元に戻し、−180度回転して元に戻すというように、矢印5a,5b,5c,5dの順に動かして1サイクル(数えるときは1回)とする。試験速度は、単位時間に行われるサイクルの回数が60回/分となるよう、回転チャック54が回転する速度を決める。
【0075】
試料51として実施例、従来例のケーブルをそれぞれ1本ずつ用いる。上記サイクルを繰り返し、適宜回ごとにケーブルの両端間で内部導体の導通を調べる。導通があれば、継続して上記サイクルを繰り返す。導通が失われていれば、そのときの回数を捻回寿命として記録する。
3)電気特性試験(特性インピーダンス測定試験)
図6に示されるように、真っ直ぐ延ばした状態の試料(ケーブル)61と曲げを入れた状態の試料62について、特性インピーダンスを測定する。測定器はデジタルサンプリングオシロスコープ(アジレントテクノロジー製:A86100A;以下同)63を用いる。曲げは、送信側コネクタ部より約20cmの箇所に入れる。曲げは、曲げ半径5mmで試料62を一回転させた曲げとする。
【0076】
試料61,62の一端を送信側とし、送信側では試料の内部導体のうち2本を各々COAX64を介してタイムコンバータ65に接続し、各タイムコンバータ65をそれぞれサンプリングヘッド66に接続する。試料の反対端は受信側とし、受信側では試料の内部導体の上記2本に各々50Ωの終端抵抗67を取り付ける。
【0077】
試料として実施例、従来例のケーブルを用いる。真っ直ぐ延ばした状態における特性インピーダンスと曲げを入れた状態における特性インピーダンスを測定・記録し、両者の差を記録する。
4)電気特性試験(アイパターン測定試験)
図7に示されるように、曲げを入れた状態の試料71について、差動信号を入力したときのアイパターンを観測し、アイハイトとジッタを測定する。測定器としてパルスジェネレータ72とデジタルサンプリングオシロスコープ73を用いる。曲げは、試料71の長手方向の中央部に入れる。曲げは、曲げ半径10mmで試料71を一回転させる曲げとする。
【0078】
試料71の一端を送信側とし、送信側では、パルスジェネレータ72の2つの出力端子に各々COAX74を介して試料71の内部導体のうち2本をそれぞれを接続する。試料71の反対端は受信側とし、受信側では試料71の内部導体の上記2本をデジタルサンプリングオシロスコープ73のサンプリングヘッドに接続する。
【0079】
この状態で、ビットレート1〜1000Mbpsの差動信号を試料に印加する。印加電圧は、1000mVとする。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ73の波形表示器75に現れるアイパターンを観測してアイハイト(mV)とジッタ(ps)を測定し、記録する。
5)電気特性試験(差動ノイズクロストーク測定試験)
図8に示されるように、曲げを入れた状態の試料81に差動信号とノイズを入力したときのクロストークを測定する。測定器として2台のパルスジェネレータ82とデジタルサンプリングオシロスコープ83を用いる。曲げは、試料81の長手方向の中央部に入れる。曲げは、曲げ半径10mmで試料81を一回転させる曲げとする。
【0080】
試料81の一端を送信側とし、送信側では、1台のパルスジェネレータ82の2つの差動出力端子に各々COAX84を介して試料81の内部導体のうち2本(図1中のa,b)をそれぞれを接続する。もう1台のパルスジェネレータ82の2つの差動出力端子に各々COAX84を介して試料81の内部導体のうち別の2本(図1中のc,d)をそれぞれを接続する。試料81の反対端は受信側とし、受信側では試料81の内部導体a,bをデジタルサンプリングオシロスコープ83のサンプリングヘッドに接続する。
【0081】
この状態で、ビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの差動信号からなる差動信号を内部導体a,bに印加すると共に、同様の差動信号(こちらはノイズとして使用する)を内部導体c,dに印加する。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ83の波形表示器85に現れるアイパターンを観測してアイハイトとジッタを測定し、記録する。
6)電気特性試験(単独ノイズクロストーク測定試験)
図8の構成において、ノイズの種類を変えてクロストークを測定する。すなわち、ビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの差動信号を内部導体a,bに印加すると共に、内部導体c,dのいずれか一方にビットレート1〜1000Mbps、印加電圧1000mVの単独信号をノイズとして印加する。このとき、デジタルサンプリングオシロスコープ83の波形表示器85に現れるアイパターンを観測してアイハイトとジッタを測定し、記録する。
【0082】
表2を参照しつつ機械特性、電気特性の評価を行う。
【0083】
表1のように、実施例#1と従来例#1、また、実施例#2と従来例#2は、内部導体2のサイズ(断面積)が同じである。しかし、表2において屈曲特性を比較すると、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2より屈曲寿命が長いことが分かる。つまり、本発明のものは耐屈曲性に優れる。
【0084】
同様に、捻回特性を比較すると、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2より捻回寿命が長いことが分かる。つまり、本発明のものは耐捻回性に優れる。
【0085】
特性インピーダンスについて、内部導体2のサイズが同じ同士を比較すると、試料が真っ直ぐの状態(表2中「直」)と曲げ径10mmで曲げた状態(表2中「曲」)との差(曲げによる変化量;表2中「差」)は、実施例#1,#2のほうが小さい。つまり、本発明のものは曲げに対して特性インピーダンスが安定である。
【0086】
曲げ径10mmで曲げた状態でのアイパターンにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものはアイパターン特性が良好である。
【0087】
曲げ径10mmで曲げた状態での差動ノイズクロストークにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものは差動ノイズクロストーク特性が良好である。
【0088】
曲げ径10mmで曲げた状態での単独ノイズクロストークにおいては、50〜1000Mbpsでは、実施例#1,#2のほうが従来例#1,#2よりアイハイトが大きく、かつ、ジッタが小さいことが分かる。つまり、本発明のものは単独ノイズクロストーク特性が良好である。
【0089】
次に、端末加工性を評価するために、図1に示した本発明の信号伝送ケーブル1と同じ構造を有し、スキン層5のフッ素樹脂に添加する添加剤等の製造条件を表3のように異ならせた試料を作製した。作製した試料のうち、製造条件が本発明に従うものを実施例#3〜#8と呼び、製造条件が本発明に従わないものを比較例#1〜#11と呼ぶ。また、従来構造の試料も作製し、これを従来例#3と呼ぶ。
【0090】
【表3】
【0091】
表3に示されるように、実施例#3〜#5は、添加剤が酸化チタン(酸化Ti)0.42〜1.52wt%、ニッケル(Ni)0.27〜0.85wt%の製造条件を満足し、スキン層5は黄色を呈する。
【0092】
実施例#6〜#8は、添加剤がカーボンブラック(C)0.09〜0.46wt%、酸化チタン(酸化Ti)0.33〜1.62wt%の製造条件を満足し、スキン層5は灰色を呈する。
【0093】
比較例#1〜#4は、添加剤として酸化チタン(酸化Ti)、ニッケル(Ni)を用い、スキン層5は黄色を呈するが、添加剤の添加量が製造条件を満足しない。
【0094】
比較例#5〜#8は、添加剤としてカーボンブラック(C)、酸化チタン(酸化Ti)を用い、スキン層5は灰色を呈するが、添加剤の添加量が製造条件を満足しない。
【0095】
比較例#9〜#11は、添加剤が1種類で色も異なる。
【0096】
なお、表3には示さないが、4心の内部絶縁心線4の絶縁体層3の色は、異ならせてあり、全ての実施例、比較例において、黒色、黄色、赤色、青色に統一した。
【0097】
端末加工の試験は次のように行う。
【0098】
各実施例、比較例、従来例について試料を10本ずつ用意する。10本の試料を1.5mmピッチで並べておき、CO2レーザを用いてシース層7を端末から3mmの位置で切断する。切断されたシース層7を機械的に剥離させ、外部導体6を端末から3mm露出させる。その後、外部導体6とスキン層5をYAGレーザで切断する。
【0099】
端末加工性の評価は、第1に、切断された外部導体6とスキン層5を同時に機械的に剥離させるときに、スキン層5の切れ残りがなく、外部導体6とスキン層5が完全に同時に剥離できることをもって同時切断を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0100】
第2に、YAGレーザで切断した箇所における内部絶縁心線4の絶縁体層3の絶縁抵抗が2×103MΩ/km以上であって、かつ、印加試験電圧A.C.300V×1分間に耐えられれば絶縁及び耐電圧を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。絶縁抵抗の測定、電圧印加は、内部導体2と絶縁体層3の間とする。
【0101】
第3に、スキン層5の厚さが均一(中心地±15%の公差)に成形できていれば、成形を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0102】
第4に、目視により4心の内部絶縁心線4を識別し、識別が容易であれば、識別を良と評価する。そうでなければ不良と評価する。
【0103】
表3を参照しつつ端末加工性の評価結果を説明する。
【0104】
比較例#1は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.60wt%と本発明の製造条件(上限1.52wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0105】
比較例#2は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が0.30wt%と本発明の製造条件(下限0.42wt%)よりも少ない。このため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解の効果が不十分であった。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に切断するには至らなかった。
【0106】
比較例#3は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.60wt%、ニッケルの含有量が0.90wt%と本発明の製造条件(酸化チタン上限1.52wt%、ニッケル上限0.85wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0107】
比較例#4は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンとニッケルを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.06wt%と本発明の製造条件(上限1.52wt%)よりも多い。酸化チタンの含有量が多いため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解としては十分であり、外部導体6とスキン層5とを同時に切断することができた。しかし、ニッケルの含有量が0.25wt%と本発明の製造条件(下限0.27wt%)より少ないため、ニッケルによるレーザ光の吸収量が少なく、結果として、スキン層5におけるレーザ光の透過量が多くなり、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0108】
比較例#5は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、カーボンブラックの含有量が0.08wt%と本発明の製造条件(下限0.09wt%)よりも少ない。このため、カーボンブラックによるレーザ光を吸収する効果が期待できず、スキン層5におけるレーザ光の透過量が多く、絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入ってしまった。
【0109】
比較例#6は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、カーボンブラックの含有量が0.50wt%と本発明の製造条件(上限0.46wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0110】
比較例#7は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が1.70wt%と本発明の製造条件(上限1.62wt%)よりも多い。このため、スキン層5を形成するとき材料が硬くて流動性が悪くなり、成形後のスキン層5の厚さが不均一となって、成形が不良と評価される。
【0111】
比較例#8は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックと酸化チタンを添加するものにおいて、酸化チタンの含有量が0.3wt%と本発明の製造条件(下限0.33wt%)よりも少ない。このため、スキン層5の中で酸化チタンによってレーザ光が反射される時の熱吸収が小さく、スキン層5が溶けにくい。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。
【0112】
比較例#9は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂に酸化チタンしか添加されておらず、しかも酸化チタンの含有量が少ない。このため、スキン層5の中でのレーザ光の反射による絶縁材料の溶解の効果が不十分であった。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に切断するには至らなかった。また、スキン層5の中でレーザ光の透過率が極端に高いため、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0113】
比較例#10は、スキン層5の主材料であるフッ素樹脂にカーボンブラックしか添加されておらず、しかもカーボンブラックの含有量が少ない。このため、スキン層5の中でカーボンブラックによる熱吸収が小さく、スキン層5が溶けにくい。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。また、カーボンブラックの含有量が少ないため、スキン層5の中でレーザ光の透過率が高く、内部絶縁心線4の絶縁体層3にレーザ光による溶けの損傷が入り、絶縁及び耐電圧が不良と評価される。
【0114】
比較例#11は、スキン層5の中でカーボンブラックによる熱吸収がスキン層5を溶かすのに不十分である。この結果、外部導体6とスキン層5が同時に剥離しにくくなり、同時切断は不良と評価される。
【0115】
従来例#3は、スキン層がないため、4心の内部絶縁心線114の色を全て黒色にすることになる。このため、内部絶縁心線114の目視色による識別が不可となる。
【0116】
これら比較例#1〜#11、従来例#3に比べると、実施例#3〜#8は、同時切断も良、絶縁及び耐電圧も良、成形も良、識別も良となり、端末加工性がよいという結論が得られる。
【0117】
以上の実施例評価をまとめると、本発明は、スキン層5を有する構成により、機械特性、電気特性に優れ、スキン層5のフッ素樹脂に添加する添加剤とその量を適切に定めたので、端末加工性にも優れる。
【図面の簡単な説明】
【0118】
【図1】本発明の一実施形態を示す信号伝送用ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態を示す多心ケーブルの断面図である。
【図3】本発明の一実施形態を示す多心ケーブルの断面図である。
【図4】屈曲試験の概念図である。
【図5】捻回試験の概念図である。
【図6】特性インピーダンス測定試験の装置構成図である。
【図7】アイパターン測定試験の装置構成図である。
【図8】差動ノイズクロストーク測定試験及び単独ノイズクロストーク測定試験の装置構成図である。
【図9】従来の極細同軸ケーブルの断面図である。
【図10】従来の2心同軸ケーブルの断面図である。
【図11】従来の4心撚り合わせ一括シールド付きケーブルの断面図である。
【符号の説明】
【0119】
1 信号伝送用ケーブル
2 内部導体
3 絶縁体層
4 内部絶縁心線
5 スキン層
6 外部導体
7 シース層
8 コア
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラックを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有することを特徴とする信号伝送ケーブル。
【請求項2】
内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとニッケルを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有することを特徴とする信号伝送ケーブル。
【請求項3】
上記スキン層は、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送ケーブル。
【請求項4】
上記スキン層は、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていることを特徴とする請求項2記載の信号伝送ケーブル。
【請求項5】
上記4複数本の内部絶縁心線は、上記絶縁体層に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれていることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項6】
上記内部絶縁心線は、上記絶縁体層の厚さが40μm未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項7】
上記スキン層は、押出成型により形成されたもの、または抑え巻きにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項8】
上記外部導体は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の信号伝送ケーブルが複数本、フラットに配列されていることを特徴とする多心ケーブル。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の信号伝送ケーブルが複数本、撚り合わされていることを特徴とする多心ケーブル。
【請求項1】
内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本で撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとカーボンブラックを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有することを特徴とする信号伝送ケーブル。
【請求項2】
内部導体の外周にフッ素樹脂を主材料とする絶縁体層を有する内部絶縁心線が複数本撚り合わされ、その外周にフッ素樹脂を主材料とし、着色顔料として酸化チタンとニッケルを添加したスキン層を有し、該スキン層の外周に外部導体を有し、該外部導体の外周に絶縁体からなるシース層を有することを特徴とする信号伝送ケーブル。
【請求項3】
上記スキン層は、カーボンブラックが0.09〜0.46wt%、酸化チタンが0.33〜1.62wt%含まれていることを特徴とする請求項1記載の信号伝送ケーブル。
【請求項4】
上記スキン層は、酸化チタンが0.42〜1.52wt%、ニッケルが0.27〜0.85wt%含まれていることを特徴とする請求項2記載の信号伝送ケーブル。
【請求項5】
上記4複数本の内部絶縁心線は、上記絶縁体層に、それぞれ異なる色の絶縁材料が含まれていることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項6】
上記内部絶縁心線は、上記絶縁体層の厚さが40μm未満であることを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項7】
上記スキン層は、押出成型により形成されたもの、または抑え巻きにより形成されたものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項8】
上記外部導体は、銀めっき或いはすずめっき硬銅線または銀めっき或いはすずめっき銅合金線が横巻きされたもの、または銀めっき銅合金線が網組されたものであることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載の信号伝送ケーブル。
【請求項9】
請求項1〜8いずれか記載の信号伝送ケーブルが複数本、フラットに配列されていることを特徴とする多心ケーブル。
【請求項10】
請求項1〜8いずれか記載の信号伝送ケーブルが複数本、撚り合わされていることを特徴とする多心ケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−311120(P2008−311120A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158691(P2007−158691)
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年6月15日(2007.6.15)
【出願人】(300055719)日立電線ファインテック株式会社 (96)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】
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