説明

信号処理装置及び信号処理方法

【課題】データの転送時間を短縮する。
【解決手段】データをメモリ22に転送するデータ転送部15と、前記データを解析する解析部21と、解析部21がメモリ22から読み込むアドレス空間と、データ転送部15がメモリ22に書き込むアドレス空間が重複しないように調停する調停部24とを備える。調停部によって、解析部21がデータ解析を行っているのと並行して、メモリにデータを転送できるため、データの転送開始からデータの解析終了までの時間を短縮することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び信号処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、イメージセンサ(例えば、CMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ)で撮像した画像データを保存し、その保存された画像データに対して画像処理を行って、所望の情報を抜き出すことが行われてきた。その際、データ解析ユニットの外部に設置された画像処理ユニットは、イメージセンサで撮像した画像データを画像処理ユニットに接続されたメモリ(以下、外部メモリと称す)に保存する。そして、前記画像処理ユニットは、CPU(Central Processing Unit)からの要求によって、当該外部メモリから画像処理を行う画像データを読み出し、外部バスを経由してデータを、データ解析ユニット内部のメモリに転送していた。
【0003】
画像処理ユニットがデータを転送する際には、一般にCPUのデータ転送負荷を軽減するために、CPUを介さないデバイス間のデータ転送、いわゆるDMA(Direct Memeory Access)転送を行う。DMA転送では、バスマスタであるDMAコントローラが設けられており、DMAコントローラは、外部メモリから直接、内部メモリにデータを転送することができる。このように、DMAコントローラを設けることにより、CPUのデータ転送負荷を軽減することができることにより、CPUは、より高度な演算処理を優先的に行うことができ、システム全体として効率的な処理が可能となる。
【0004】
例えば、特許文献1では、DMAによるデータ転送において、転送するデータ量が多い場合、少量データを多数転送する場合、または転送先デバイスの処理速度が遅い場合であっても、効率的にバスを使用することによって、システム全体の処理効率を低下させないデータ転送装置が示されている。
【0005】
図3に、従来の信号処理装置のブロック構成図の例を示す。図3に示す従来の信号処理装置は、データ解析部50と、外部処理部40と、汎用データバス60と、外部メモリ42とから構成されている。データ解析部50は、解析部51と、メモリ52と、内部バス53と、調停部54とを有している。外部処理部40は、DMA転送部41を有している。
【0006】
外部処理部40によって処理されたデータが、DMA転送部41に汎用データバス61で接続された外部メモリ42に保存されているものとする。当該外部メモリ42からデータ解析部50にデータが読み込まれる際には、データは外部メモリ42とDMA転送部41とを繋ぐ汎用データバス61を通る。そして、汎用データバス61を通ったデータは、データ解析部50の内部バス53とDMA転送部41とを繋ぐ汎用データバス60を通って、データ解析部50のメモリ52に読み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−263399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、汎用データバス60および汎用データバス61は転送速度が遅く、データの転送に長い時間を要するという問題があった。
また、解析部51が、メモリ52からデータを読み出すために内部バス53を使用している時に、調停部54に対して、DMA転送部41が、内部バス53を介してメモリ52にデータを転送するために内部バス使用要求をした場合、内部バス53が競合してしまう。この場合、解析部51が内部バスを使用している間、DMA転送部41は、内部バス53を使用することができず、データを転送することができない。その結果、転送時間が増加してしまうという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、データの転送時間を短縮した信号処理装置及び信号処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様である信号処理装置は、データをメモリに転送するデータ転送部と、前記データを解析する解析部と、前記解析部が前記メモリから読み込むアドレス空間と、前記データ転送部が前記メモリに書き込むアドレス空間が重複しないように調停する調停部と、を備えることを特徴とする。
上記信号処理装置によれば、調停部によって、解析部がデータ解析を行っているのと並行して、メモリにデータを転送できるため、データの転送開始からデータの解析終了までの時間を短縮することができる。
【0011】
上記信号処理装置の前記データ転送部と前記メモリ間には、データを転送するための専用データバスを備えるものであってもよい。
これによれば、内部バスを使わず専用のバスでデータを転送するため、内部バスの競合をすることがなくなり、データの転送時間を短縮することができる。
【0012】
上記信号処理装置の前記データ転送部で転送する前記データを選択する転送データ選択部を更に備えるものであってもよい。
これによれば、データを分割して転送することができるため、メモリの容量よりも大きな処理データを転送することができる。
【0013】
本発明の一態様である信号処理方法は、データをメモリに転送するデータ転送手順と、前記データを解析する解析手順と、前記解析手順により前記メモリから読み込むアドレス空間と、前記データ転送手順により前記メモリに書き込むアドレス空間が重複しないように調停する調停手順と、を有することを特徴とする。
上記信号処理方法によれば、調停手順によって、演算手順がデータ解析を行っているのと並行して、メモリにデータを転送できるため、データの転送開始からデータの解析終了までの時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述のように、データの転送時間を短縮できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態における信号処理装置のブロック構成図である。
【図2】本発明の実施形態におけるデータ転送のタイミングチャートである。
【図3】従来の信号処理装置のブロック構成図の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態における信号処理装置のブロック構成図である。信号処理装置は、データ解析部20と、外部処理部10と、汎用データバス30と、割込バス32と、専用データバス31と、センサ11とから構成されている。
【0017】
センサ11は、イメージセンサ(例えば、CMOSイメージセンサまたはCCDイメージセンサ)である。センサ11は、対象(例えば、物体、風景等)を撮像し、撮像したアナログ信号をA/D変換部12に出力する。ここで、センサ11は、マイクロホンなど他のセンサであってもよい。
【0018】
データ解析部20は、解析部21と、メモリ22と、内部バス23と、調停部24と、インターフェース25と、割込部26とから構成されている。
解析部21は、調停部24に内部バス23の使用を要求する信号であるバス使用要求信号(バスリクエスト)を出力し、調停部24からバス使用権を取得する。
また、解析部21は、内部バス23の使用を終了すると、調停部24に内部バス23の使用を開放する信号であるバス開放信号を出力し、調停部24に解析部21への内部バス23の割り当てを開放させる。
また、解析部21は、割込部26から入力された割込み信号に基づいて、汎用データバス30を介して、データ転送部15に転送要求信号を出力し、処理の結果を転送するように指示する。
また、解析部21は、調停部24から入力されたメモリ22内のアドレスを使って、メモリ22からデータを読み込み、データ処理を行う。
【0019】
調停部24は、解析部21から入力されたバス使用要求信号に基づいて、バス使用権を解析部21に出力する。
また、調停部24は、解析部21から入力されたバス開放信号に基づいて、内部バス23の割り当てを開放する。
【0020】
また、調停部24は、メモリ22においてデータを書き込む開始アドレスと終了アドレスをインターフェース25に通知する。また、調停部24は、メモリ22においてデータを読み込む開始アドレスと終了アドレスを解析部21に通知する。
これによって、解析部21がメモリ22から読み込むアドレス空間と、インターフェース25がメモリ22に書き込むアドレス空間が重複しないように調整することができる。また、調停部24は、メモリ22のアドレス空間を多次元配列にする事により、アクセス可能なアドレス空間を拡張するバンク切り替えによって、解析部21とインターフェース25がアクセスするアドレス空間を区別してもよい。
【0021】
インターフェース25は、調停部24から入力されたメモリ22の開始アドレスを起点として、調停部24から入力された終了アドレスまでの範囲内で、専用データバス31を介してデータ転送部15から入力された画像処理済データをメモリ22に書き込む。
【0022】
割込部26は、データ転送部15から入力された転送完了割込み信号に基づいて、解析部21に現在の処理を中断して、転送指示信号を出力するよう要求する割込み信号を出力する。
【0023】
外部処理部10は、A/D変換部12と、画像処理部14と、転送データ選択部13と、データ転送部15とから構成されている。
A/D変換部12は、センサ11から入力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、転送データ選択部13に出力する。
【0024】
転送データ選択部13は、A/D変換部12から入力された画像データをメモリ22の容量に応じて分割し、分割したデータのうち転送するデータを選択し、選択したデータを画像処理部14に出力する。
【0025】
画像処理部14は、転送データ選択部13から入力された3つの分割データにそれぞれ処理A、処理Bおよび処理Cを加え、各画像処理済データ(それぞれデータA、データB、データCと称す)を生成し、当該各画像処理済データをデータ転送部15に出力する。
【0026】
データ転送部15は、汎用データバス30を介して解析部21から入力された転送要求信号に基づいて、専用データバス31を介して、転送データ選択部13から入力されたデータをインターフェース25に出力する。
また、データ転送部15は、処理したデータの転送が完了すると、割込バス32を介して、転送が完了したことを通知する割込み信号(転送完了割込み信号)を割込部26に出力する。
【0027】
続いて、図2のタイミングチャートを用いて、データ転送の処理の流れを説明する。まず、解析部21は、データ転送部15に対して、処理Aを施した画像データであるデータAを転送するように指示する(図2に示すt20の時点)。次に、データ転送部15は、転送データ選択部13に対して、センサ11からA/D変換部12を介して入力された画像データを、一度にメモリ22に書き込めるデータ量に収まるように分割する。本実施例では、転送データ選択部13は、画像データを3つに分割し、分割データを生成し、当該分割データのうち1つ目の分割データを画像処理部14に出力する。
【0028】
次に、画像処理部14は、転送データ選択部13から入力され1つ目の分割データに対して、処理Aを施してデータAを生成し、当該データAをデータ転送部15に出力する。次に、データ転送部15は、画像処理部14から入力されたデータAを、専用データバス31とインターフェース25を介して、メモリ22へ転送する(図2に示すt10の時点)。このように、専用データバス31を介する転送のため、このデータ転送で、内部バス23が競合することはない。
【0029】
処理Aを施した画像データの転送が終了すると、データ転送部15は、割込バス32を介して、転送が完了したことを通知する信号を割込部26に出力する。次に、割込部26は、データ転送部15から入力された通知信号に基づいて、解析部21に現在の処理を中断して、転送指示信号を出力するよう要求する割込み信号(転送完了割込み信号)を出力する(図2に示すt11の時点)。
【0030】
次に、解析部21は、割込部26から入力された割込み信号に基づいて、汎用データバス30を介して、データ転送部15に処理Bが加えられた画像データであるデータBを転送するよう指示する(図2に示すt21の時点)。また、それと同時に、解析部21は、メモリ22からデータAを読み込み、データ解析を行う(図2に示すt21の時点)。
【0031】
次に、データ転送部15は、転送データ選択部13に対して、分割した3つのデータのうち2つ目のデータを要求する。次に、転送データ選択部13は、データ転送部15から入力された要求に基づいて、分割した3つのデータのうち2つ目のデータを画像処理部14に出力する。次に、画像処理部14は、転送データ選択部13から入力された2つ目の分割データに対して、処理Bを施してデータBを生成し、当該データBをデータ転送部15に出力する。次に、データ転送部15は、画像処理部14から入力されたデータBを、専用データバス31とインターフェース25を介して、メモリ22へ転送する(図2に示すt12の時点)。
【0032】
データBの転送が終了すると、データ転送部15は、割込バス32を介して、転送が完了したことを通知する信号を割込部26に出力する。次に、割込部26は、データ転送部15から入力された通知信号に基づいて、解析部21に現在の処理を中断して、転送指示信号を出力するよう要求する割込み信号(転送完了割込み信号)を出力する(図2に示すt13の時点)。
【0033】
次に、解析部21は、データAの解析が終了し(図2に示すt22の時点)、かつ割込部26から割込み信号が入力されると(図2に示すt13の時点)、汎用データバス30を介して、データ転送部15に処理Cが施された画像データであるデータCを転送するよう指示する(図2に示すt23の時点)。また、それと同時に、解析部21は、メモリ22からデータBを読み込み、データ解析を行う(図2に示すt23の時点)。
【0034】
次に、データ転送部15は、転送データ選択部13に対して、分割した3つのデータのうち3つ目のデータを要求する。次に、転送データ選択部13は、データ転送部15から入力された要求に基づいて、分割した3つのデータのうち3つ目のデータを画像処理部14に出力する。次に、画像処理部14は、転送データ選択部13から入力された3つ目の分割データに対して、処理Cを施してデータCを生成し、当該データCをデータ転送部15に出力する。次に、データ転送部15は、画像処理部14から入力されたデータCを、専用データバス31とインターフェース25を介して、メモリ22へ転送する(t14の時点)。
【0035】
データCの転送が終了すると、データ転送部15は、割込バス32を介して、転送が完了したことを通知する信号を割込部26に出力する。次に、割込部26は、データ転送部15から入力された通知信号に基づいて、解析部21に転送が完了したことを通知する割込み信号(転送完了割込み信号)を出力する(図2に示すt15の時点)。
【0036】
次に、解析部21は、処理Bの画像処理済データの解析が終了し(図2に示すt24の時点)、かつ割込部26から割込み信号が入力されると(図2に示すt15の時点)、メモリ22からデータCを読み込み、データ解析を行う(図2に示すt15の時点)。
【0037】
このようにして、外部処理部10が画像処理と画像処理データの転送を行うのと並列で、データ解析部20はデータの解析を行うことができるので、データの転送開始からデータの解析終了までの時間を短縮することができる。
また、内部バスを使わず専用のバスでデータを転送するため、内部バスの競合をすることがなくなり、データの転送時間を短縮することができる。
更に、データを分割して転送することができるため、メモリの容量よりも大きなデータを転送することができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0039】
10 外部処理部
11 センサ
12 A/D変換部
13 画像処理部
14 転送データ選択部
14 データ転送部
20 データ解析部
21 解析部
22 メモリ
23 内部バス
24 調停部
25 インターフェース
26 割込部
30 汎用データバス
31 専用データバス
32 割込バス
40 外部処理部
41 DMA転送部
42 外部メモリ
50 データ解析部
51 解析部
52 メモリ
53 内部バス
54 調停部
60 汎用データバス
61 汎用データバス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データをメモリに転送するデータ転送部と、
前記データを解析する解析部と、
前記解析部が前記メモリから読み込むアドレス空間と、前記データ転送部が前記メモリに書き込むアドレス空間が重複しないように調停する調停部と、
を備えることを特徴とする信号処理装置。
【請求項2】
前記データ転送部と前記メモリ間には、データを転送するための専用データバスを備えることを特徴とする請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記データ転送部で転送する前記データを選択する転送データ選択部を更に備えることを特徴とする請求項1または2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
データをメモリに転送するデータ転送手順と、
前記データを解析する解析手順と、
前記解析手順により前記メモリから読み込むアドレス空間と、前記データ転送手順により前記メモリに書き込むアドレス空間が重複しないように調停する調停手順と、
を有することを特徴とする信号処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−150625(P2011−150625A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12961(P2010−12961)
【出願日】平成22年1月25日(2010.1.25)
【出願人】(300052246)株式会社ホンダエレシス (105)
【Fターム(参考)】