説明

信号分配装置

【課題】信号を分配する際に他系統からの信号の回り込みを防止し、希望する信号のみを所定のレベルで取出すことができる信号分配装置を提供する。
【解決手段】デジタル系ヘッドエンド13の出力信号を方向性結合器29で主系統30と副系統40に分岐する。主系統30は入力信号を増幅器31で増幅してレベル補償し、レベル調整器32でレベル調整する。合成器17は、主系統30で増幅及びレベル調整された信号と他の再送信信号を合成し、分配器19によりE/O変換器20〜20へ分配し、光信号に変換して光ファイバ21〜21より出力する。副系統40は、方向性結合器29で分岐された信号を帯域制限フィルタ41で帯域制限して地上デジタル放送のみを抽出し、増幅器42で増幅してレベル補償し、レベル調整器43で所定レベルに調整した後、E/O変換器20Aで光信号に変換し、光ファイバ21Aにより再送信装置へ送出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCATVシステムのヘッドエンド装置において、高周波信号を分配する信号分配装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CATVシステムにおけるヘッドエンド装置は、例えば図2に示すように構成されている。図2において、11はアナログ系ヘッドエンド、12は衛星放送系ヘッドエンド、13はデジタル系ヘッドエンドである。
【0003】
上記アナログ系ヘッドエンド(HE)11は、例えばVHF帯用受信アンテナ14によりVHF帯のアナログTV放送を受信し、周波数変換及び増幅等を行なって出力する。
上記衛星放送系ヘッドエンド12は、衛星放送受信用アンテナ15によりBS放送、CS放送等を受信し、再変調及び増幅等を行なって出力する。
【0004】
上記デジタル系ヘッドエンド13は、例えばUHF帯用受信アンテナ16によりデジタル放送等を受信し、周波数変換及び増幅等を行なって出力する。
【0005】
そして、上記アナログ系ヘッドエンド11、衛星放送系ヘッドエンド12及びデジタル系ヘッドエンド13から出力される再送信信号は、合成器17により合成された後、同軸ケーブル等の伝送路18を介して分配器19に入力され、複数の信号に分配される。上記分配器19により分配された信号は、E/O(電気/光)変換器20〜20により光信号に変換されてヘッドエンド装置から出力され、光ファイバ21〜21によりシステム加入者宅等へ送られる。
【0006】
上記既存のヘッドエンド装置により種々の信号をサービスしている場合において、地上波デジタルの再送信のみ行なうサービスを追加する等、ある特定の放送帯域のみを抜き出すことが必要になる場合がある。
【0007】
例えば地上波デジタル放送において、ビルや山等の影響により電波の届かない不感地帯を生じた場合、ビルの屋上や山頂等に再送信装置を設け、上記ヘッドエンド装置から地上波デジタルの放送帯域のみを抜き出して上記再送信装置に送信する必要がある。
【0008】
上記のように既存のヘッドエンド装置において、地上波デジタルの再送信のみ行なうサービスを追加するような場合、従来では図3に示すようにデジタル系ヘッドエンド13の出力側に分配器22を設け、一方の分配信号を合成器17に入力し、他方の分配信号を新たに設置したE/O変換器20Aに入力し、このE/O変換器20Aから出力される光信号を光ファイバ21Aにより上記再送信装置へ送出している。上記分配器22としては、例えば磁性体に巻線を施してトランスを形成したものが一般に使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭54−26867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のように既存のヘッドエンド装置におけるデジタル系ヘッドエンド13の出力側に分配器22を設けて信号を分配することにより、地上波デジタルの放送帯域のみを抜き出して再送信装置に送信することができる。
【0010】
しかし、通常の分配器22を使用した場合、矢印aで示すように他の系統の信号が分配器22を経由して地上波デジタルの再送信系統に回り込むという問題を生じる。なお、他の系統の信号が分配器22を経由して地上波デジタルの再送信系統に回り込んだ場合、再送信装置にフィルタを設けることによって不要波を除去することは可能である。しかし、複数の再送信装置を設置するような場合には、不要波を除去するためのフィルタを各再送信装置に設けなければならず、フィルタを装着する手間が係ると共にコスト的にも問題となる。
【0011】
また、デジタル系ヘッドエンド13の出力信号を分配器22により分配するため、元の系統すなわち合成器17側の系統への供給レベルが不足するという問題を生じる。
【0012】
本発明は上記の課題を解決するためになされたもので、特定の信号源から出力される信号を分配する際に信号の回り込みを防止し、希望する信号のみを所定のレベルで取出すことができる信号分配装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
複数の信号源中の特定の信号源から出力される信号を主系統と副系統に分岐する方向性結合器と、前記主系統に設けられ、前記方向性結合器から出力される信号を増幅する第1の増幅器と、前記副系統に設けられ、前記方向性結合器で分岐された信号を帯域制限し、前記特定の信号源から出力される信号のみを抽出する帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタで抽出された信号を増幅する第2の増幅器とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、特定の信号源から出力される信号を方向性結合器により主系統と副系統に分岐することで、主系統から副系統への信号流出を抑えることができる。更に、各系統で増幅器を用いて信号増幅することにより、各系統の出力信号レベルを規定値に保つことができると共に、主系統から副系統への信号流出を更に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態を説明する。
図1は本発明に係る信号分配装置をヘッドエンド装置に実施した場合の構成例を示すブロック図である。なお、図3に示したヘッドエンド装置と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0016】
ヘッドエンド装置のデジタル系ヘッドエンド13から出力される信号は、方向性結合器29を介して主系統30へ送られる。この主系統30には、レベル補償を行なう増幅器31及び出力レベルを調整するアッテネータ等のレベル調整器32が設けられる。この主系統30で調整された信号は合成器17へ送られ、アナログ系ヘッドエンド11及び衛星放送系ヘッドエンド12から出力される再送信信号と合成され、分配器19により複数の信号に分配される。この分配器19で分配された信号は、それぞれE/O変換器20〜20により光信号に変換され、光ファイバ21〜21を介してシステム加入者宅等へ送出される。
【0017】
また、上記方向性結合器29で分岐された信号は、副系統40へ送られる。この副系統40には、必要帯域のみ、この実施例では地上デジタル放送のみを抽出する帯域制限フィルタ41が設けられると共に、信号を増幅してレベル補償を行なう増幅器42及び出力レベルを調整するアッテネータ等のレベル調整器43が設けられる。上記副系統40で調整された信号は、E/O変換器20Aへ送られて光信号に変換され、光ファイバ21Aにより上記再送信装置へ送出される。
【0018】
上記の構成において、デジタル系ヘッドエンド13から出力される地上波デジタル放送の再送信信号は、方向性結合器29によって主系統30と副系統40に分岐される。主系統30は、方向性結合器29を介して送られてくる信号に対し、増幅器31で増幅してレベル補償を行ない、レベル調整器32で規定レベルとなるようにレベル調整を行なった後、合成器17へ出力する。上記主系統30で増幅及びレベル調整された信号は、合成器17によりアナログ系ヘッドエンド11及び衛星放送系ヘッドエンド12から出力される再送信信号と合成された後、分配器19によりE/O変換器20〜20へ送られて光信号に変換され、光ファイバ21〜21を介してシステム加入者宅等へ送出される。
【0019】
一方、副系統40は、方向性結合器29で分岐された信号を帯域制限フィルタ41により帯域制限して地上デジタル放送のみを抽出し、増幅器42で増幅してレベル補償する。この増幅器42で増幅された信号のレベルをレベル調整器43で所定のレベルに調整する。そして、上記副系統40で調整された信号は、E/O変換器20Aへ送られて光信号に変換され、光ファイバ21Aにより上記再送信装置へ送出される。
【0020】
上記のようにデジタル系ヘッドエンド13から出力される信号を方向性結合器29により主系統30と副系統40に分岐することで、主系統30から副系統40への信号流出を抑えることができる。更に、主系統30及び副系統40でそれぞれ増幅器を用いて信号増幅することにより、各系統から出力される信号レベルを規定値に保つことができると共に、主系統30から副系統40への信号流出を更に抑えることができる。
【0021】
また、方向性結合器29を用いて信号を主系統30と副系統40に分岐する共に、主系統30の増幅器31及び副系統40の増幅器42で信号を増幅することにより、帯域制限フィルタ41に必要とされる性能、すなわち帯域外減衰特性を高性能なものにする必要がなくなり、安価なフィルタ特性のものを採用することができる。
【0022】
上記実施形態によれば、ヘッドエンド装置側で不要波を除去して地上デジタル放送のみを確実に抽出し、不感地帯に設けられる再送信装置に送出することができるので、再送信装置を複数設置する場合でも、各再送信装置に不要波を除去して地上デジタル放送のみを選択するフィルタを設ける必要がなく、フィルタ装着の手間を省略できると共にコストの低下を図ることができる。
【0023】
なお、上記実施形態では、ヘッドエンド装置から地上デジタル放送を抽出する場合について示したが、その他の特定放送波帯のみを抽出する場合に適用し得るものである。
【0024】
また、上記実施形態では、ヘッドエンドの出力信号をE/O変換器により光信号に変換して出力する場合について説明したが、光信号に変換することなく、電気信号をそのまま出力する場合においても同様にして実施し得るものである。
【0025】
また、本発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドエンド装置の構成を示すブロック図である。
【図2】従来のヘッドエンド装置の構成を示すブロック図である。
【図3】既存のヘッドエンド装置において、特定の放送帯域のみを抽出して出力する場合の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0027】
11…アナログ系ヘッドエンド(HE)、12…衛星放送系ヘッドエンド、13…デジタル系ヘッドエンド、14…VHF帯用受信アンテナ、15…衛星放送受信用アンテナ、16…UHF帯用受信アンテナ、17…合成器、18…伝送路、19…分配器、20〜20、20A…E/O(電気/光)変換器、21〜21、21A…光ファイバ、22…分配器、29…方向性結合器、30…主系統、31…増幅器、32…レベル調整器、40…副系統、41…帯域制限フィルタ、42…増幅器、43…レベル調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号源中の特定の信号源から出力される信号を主系統と副系統に分岐する方向性結合器と、
前記主系統に設けられ、前記方向性結合器から出力される信号を増幅する第1の増幅器と、
前記副系統に設けられ、前記方向性結合器で分岐された信号を帯域制限し、前記特定の信号源から出力される信号のみを抽出する帯域制限フィルタと、前記帯域制限フィルタで抽出された信号を増幅する第2の増幅器と、
を具備することを特徴とする信号分配装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−147765(P2008−147765A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−329592(P2006−329592)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(504378814)八木アンテナ株式会社 (190)
【Fターム(参考)】