説明

信号切替装置

【課題】装置の大型化及び高コスト化を避け、無瞬断でデジタル信号/アナログ信号の伝送系統を切り替えることが可能な信号切替装置を提供する。
【解決手段】デジタル信号/アナログ信号源20−1からの伝送信号と、デジタル信号/アナログ信号源20−2からの伝送信号とにそれぞれ重み付けを行い、これらの伝送信号を合成部12でアナログ合成した後、コンパレータ13で2値識別する。そして、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2のいずれかで信号断が発生した場合、重み係数制御部15により重み付け部11−1,11−2の重み係数を操作することで信号断が発生していない系の信号に出力を切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冗長構成を採る放送システムや通信システムにおいて、信号の出力系統を無瞬断で切り替える信号切替装置に関する。
【背景技術】
【0002】
社会インフラシステムである放送システムや通信システムは、信号(デジタル信号/アナログ信号)の安定供給のために冗長構成(2重化または3重化)を採っている。この種の社会インフラのシステムでは、信号を伝送している系統に障害が発生した場合、信号切替装置により、伝送系統を他の系統に切り替え、信号の断又は異常信号の発生等に対応するようにしている。
【0003】
上記信号切替装置では、伝送系統に異常が発生した場合、伝送系統を無瞬断で(デジタル信号では信号の欠落が無く、アナログ信号では切替点での波形の連続性を保って)他の系統へ切り替えることが望ましい(例えば、特許文献1参照)。この無瞬断の切り替え処理を実現するに当たり、デジタル信号を伝送する信号切替装置では、伝送系統毎に遅延回路を設け、障害の検出にかかる検出時間を解消するようにしていた。しかしながら、この方法では、系統毎に遅延回路を設置しなければならないため、装置が大型化し、高コストになるという問題がある。また、アナログ信号を伝送する信号切替装置では、適切な遅延時間を確保する方法が無いという問題がある。
【0004】
ところで、信号を出力する際に発生する異常のほぼすべてが、信号断によるものであり、信号における揺らぎの発生を原因にする故障モードはほとんど無い。それにも係らず、無瞬断を目的とした従来の信号切替装置は、遅延回路を備え、信号断及び揺らぎの発生の両方に対応して無瞬断で出力系統を切り替えることが可能な構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−326579号公報
【特許文献2】特開2005−348105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、デジタル信号を伝送する信号切替装置では、無瞬断で伝送系統を切り替えようとする場合、伝送系統毎に遅延回路を設置しているため、装置の大型化及び高コスト化を招いてしまっていた。また、アナログ信号を伝送する信号切替装置では、適切な遅延時間を確保する方法が無かった。
【0007】
この発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、装置の大型化及び高コスト化を避け、デジタル信号だけでなくアナログ信号でも無瞬断で信号系統を切り替えることが可能な信号切替装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る信号切替装置は、冗長構成を採る複数の伝送信号のうちいずれかをそれぞれ受信し、受信した伝送信号の信号レベルを個別に設定された重み値で調整した調整信号を生成する複数の重み付け部と、前記複数の調整信号をアナログ合成して合成信号とする合成部と、前記合成信号の信号レベルを予め設定された閾値レベルと比較して識別出力するコンパレータと、前記複数の伝送信号における信号断を個別に検出する断検出部と、前記複数の重み付け部のうち任意に指定された第1の重み付け部の重み値を前記受信した伝送信号の信号レベルを維持するように設定すると共に、その他の重み付け部の重み値を前記第1の重み付け部の重み値以下となるように設定し、前記断検出部により前記特定の重み付け部へ導出される伝送信号に信号断が検出された場合、前記その他の重み付け部のうち任意に指定された第2の重み付け部の重み値を前記受信した伝送信号の信号レベルを維持するように設定する重み制御部とを具備する。
【0009】
上記構成による信号切替装置では、冗長構成を採る複数の伝送信号それぞれに重み付けを行い、重み付けを行った伝送信号をアナログ合成する。そして、複数の伝送信号のうちいずれかに信号断が発生した場合、系統毎の伝送信号に付与される重み値を操作することで伝送信号の出力系統を切り替えるようにしている。これにより、後段へは常に信号が伝送されることとなり、無瞬断で系統の切り替えを行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、装置の大型化及び高コスト化を避け、デジタル信号だけでなくアナログ信号でも無瞬断で信号系統を切り替えることが可能な信号切替装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る信号切替装置が適用される放送システム又は通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る信号切替装置の機能構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の第3の実施形態に係る信号切替装置が適用される放送システム又は通信システムの機能構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら本発明に係る信号切替装置の実施の形態について詳細に説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る信号切替装置10が適用される放送システム又は通信システムの機能構成を示すブロック図である。デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2は、デジタル信号又はアナログ信号を生成し、後段へ出力する。以下では、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2から出力されるデジタル信号又はアナログ信号を伝送信号と称する。なお、本実施形態では、デジタル信号/アナログ信号源20−1からの伝送信号を現用系とし、デジタル信号/アナログ信号源20−2からの伝送信号を予備系とした冗長構成を採る放送システム又は通信システムにおける信号切替装置10について説明する。図1における信号切替装置10は、重み付け部11−1,11−2、アナログ合成部12、コンパレータ13、信号異常検出部14及び重み係数制御部15を具備する。
【0014】
重み付け部11−1,11−2は、重み係数制御部15により指定される重み係数を、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2からそれぞれ出力された伝送信号へ付与する。
【0015】
合成部12は、重み付け部11−1,11−2で重み付けされた伝送信号をアナログ合成し、コンパレータ13へ出力する。ここで、アナログ合成とは、受信信号をアナログ的に合成する処理をいう。
【0016】
コンパレータ13は、前記アナログ合成された伝送信号の信号レベルを予め設定された閾値レベルと比較し、この閾値レベルに基づいて、受信した合成信号を2値識別して出力する。
【0017】
信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2において発生する伝送信号の異常を個別に検出する。ここでの異常には、信号断及び伝送信号における揺らぎの発生が含まれる。
【0018】
重み係数制御部15は、信号異常検出部14による検出結果に基づいて重み付け部11−1,11−2の重み係数を指定する。
【0019】
次に、上記構成における動作を説明する。ここで、初期状態として、現用系に設置される重み付け部11−1の重み係数を「1」とし、予備系に設置される重み付け部11−2の重み係数を「0.3」とする。なお、ここで重み係数「1」とは、重み付け部に入力された信号の信号レベルをそのまま維持して出力することを示す。また、この「0.3」の重み係数は、実験により経験的に求められるものであり、この値に限定されるものではない。すなわち、実験により、所定の重み係数を付与した信号が、コンパレータ13で2値識別可能であり、この信号に揺らぎが発生した場合であっても重み係数「1」を付与した信号に対して位相変動を与えない場合、そのときの重み係数を上述の重み係数とする。
【0020】
また、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2から出力される伝送信号の信号レベルをXとし、コンパレータ13により2値識別可能な閾値レベルを「0.3X」とする。
【0021】
まず、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2は、それぞれ信号レベルXの伝送信号を出力する。重み付け部11−1は、デジタル信号/アナログ信号源20−1からのデジタル信号に対して、重み係数「1」を付与する。これにより、合成部12へ供給されるデジタル信号の信号レベルは「X」となる。また、重み付け部11−2は、デジタル信号/アナログ信号源20−2からの伝送信号に対して、重み係数「0.3」を付与する。これにより、合成部12へ供給される伝送信号の信号レベルは「0.3X」となる。合成部12は、両信号をアナログ合成し、信号レベル1.3Xの合成信号をコンパレータ13へ出力する。
【0022】
コンパレータは、信号レベル1.3Xの合成信号を、閾値レベル0.3Xで2値識別し、後段へ出力する。
【0023】
ここで、デジタル信号/アナログ信号源20−1における伝送信号が断となったとする。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1において信号断が発生したか否かを判断する。ここでの信号断の判断には、所定の処理時間がかかり、この処理時間の間は、現用系からの出力は合成部12へ出力されない。一方、デジタル信号/アナログ信号源20−2からの伝送信号は、重み付け部11−2で重み係数0.3が付与され、合成部12へ出力される。このため、コンパレータ13には、閾値レベル以上となる信号レベル0.3Xの合成信号が常に供給され、コンパレータ13はこの信号を閾値レベルと比較して2値識別することが可能である。すなわち、後段へ出力される伝送信号が途切れることはない。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1における信号断を検出すると、その検出結果を重み係数制御部15へ通知する。
【0024】
重み係数制御部15は、信号異常検出部14によりデジタル信号/アナログ信号源20−1における信号断が検出されると、重み付け部11−1の重み係数を「0」に指定すると共に、重み付け部11−2の重み係数を「1」に指定する。これにより、伝送信号を出力する主系統が、現用系から予備系へと切り替わる。合成部12では、信号レベル0の伝送信号と信号レベルXの伝送信号とが合成され、その合成信号がコンパレータ13へ供給される。
【0025】
信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2における信号断の発生を継続して監視する。そして、信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1の信号断が回復したことを検出した場合、重み係数制御部15へその旨を通知する。この通知を受けると、重み係数制御部15は、現用系へ出力を切り替える処理である切り戻しを実施する。すなわち、重み係数制御部15は、重み付け部11−1の重み係数を「1」に戻し、重み付け部11−2の重み係数を「0.3」に戻す。これにより、伝送信号を出力する主系統が、予備系から現用系へと切り替わる。合成部12からは、信号レベル1.3Xの合成信号がコンパレータ13へ送出されることとなる。
【0026】
さらに、重み付け部11−1の重み係数が「1」、重み付け部11−2の重み係数が「0.3」である場合に、デジタル信号/アナログ信号源20−2における伝送信号が断となったとする。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−2において信号断が発生したか否かを判断する。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−2における信号断を検出すると、その検出結果を重み係数制御部15へ通知する。重み係数制御部15は、信号異常検出部14からこの通知を受けると、重み付け部11−2の重み係数を「0」に指定する。これにより、合成部12からは、信号レベルXの合成信号がコンパレータ13へ供給される。
【0027】
信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1,20−2における信号断の発生を継続して監視する。そして、デジタル信号/アナログ信号源20−2の信号断が回復したことを検出した場合、重み係数制御部15へその旨を通知する。重み係数制御部15は、この通知を受けると、重み付け部11−2の重み係数を「0.3」に戻す。これにより、再び信号レベル1.3Xの合成信号がコンパレータ13へ送出されることとなる。
【0028】
以上のように、上記第1の実施形態では、現用系からの伝送信号と、予備系からの伝送信号とにそれぞれ重み付けを行い、これらの伝送信号をアナログ合成した後、コンパレータ13で2値識別する。そして、現用系又は予備系に信号断が発生した場合には、付与する重み係数を操作することで信号断が発生していない系の信号を導出するように出力系統を切り替える。
【0029】
ここで、両系に信号断が発生していない場合には、現用系における重み係数を「1」に指定し、予備系には重み係数「1」を付与した信号に対して位相差による揺らぎを与えない程度の重み係数(上述の例では0.3)を指定するようにしている。これにより、重み係数「0.3」が付与された信号は、重み係数「1」が付与された信号に対して位相変動を与えないため、後段へは現用系の伝送信号に基づいて2値識別された伝送信号が出力されることとなる。また、予備系の信号は、現用系の信号に対して影響を与えないため、予備系に信号における揺らぎが発生した場合であっても、後段へはその揺らぎの影響が及ばないようになっている。
【0030】
また、両系に信号断が発生していない場合には、予備系における重み係数には、コンパレータ13の閾値レベルを超える程度の値が指定されるようになっている。これにより、現用系において信号断が発生し、信号断の検出処理に所定の時間がかかる場合であっても、予備系からコンパレータ13の閾値レベルを超える伝送信号が出力されるため、後段への伝送信号の供給が途切れることはない。
【0031】
また、上記第1の実施形態では、伝送信号の信号断を検出した場合、信号断が検出された系統の重み付け部の重み係数を「0」とし、伝送信号が正常に伝送される系統の重み付け部の重み係数を「1」とするようにしている。これにより、信号断となったデジタル信号/アナログ信号源からの信号に揺らぎが発生した場合であっても、その影響を後段へ伝えることを防止することが可能である。
【0032】
これらのことから、本発明に係る信号切替装置は、従来のような遅延装置を必要とせず、伝送系統を無瞬断で切り替えることが可能となる。すなわち、装置の大型化及び高コスト化を避けて、冗長構成におけるデジタル信号/アナログ信号の無瞬断切り替えを実現することができる。
【0033】
なお、以下に本発明と、特許文献1及び特許文献2との相違点を説明する。
【0034】
特許文献1では、現用系及び予備系の信号を分配・合成することで、伝送系統を無瞬断で切り替える方法を提案している。しかし、特許文献1では、現用系の信号と予備系の信号との間の位相差による出力揺らぎを取り除くことができない点で本発明より効果として劣る。また、特許文献1では、分配・合成を行うことで無瞬断での切り替えを実現しているが、本発明では、信号にかかる重み係数を制御することで無瞬断を実現している。そのため、本発明と特許文献1とでは構成が異なる。
【0035】
また、特許文献2では、現用系及び予備系の信号を合成して出力する例が示されているが、特許文献2は、現用系からの信号と予備系からの信号とを合成させて、所定の信号レベルに達するようにするものであり、本発明が目的とする無瞬断による系統の切り替えに関するものではない。
【0036】
[第2の実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態に係る信号切替装置30の機能構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、現用系及び予備系によりクロック信号を伝送する放送システム又は通信システムにおける信号切替装置30について説明する。図2における信号切替装置30は、重み付け部11−1,11−2、アナログ合成部12、狭帯域フィルタ(BPF)16、コンパレータ13、信号異常検出部14及び重み係数制御部15を具備する。なお、図2において図1と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0037】
信号切替装置30は、現用系及び予備系それぞれにおけるクロック信号を受け取り、1系統の導出に切り替えて後段へ出力する。
【0038】
狭帯域フィルタ16には、例えばクリスタルフィルタ及びSAWフィルタが用いられる。狭帯域フィルタ16は、合成部12とコンパレータ13との間に挿入され、合成部12からの合成信号に対して帯域制限処理を行う。
【0039】
更新ラインクロック系の冗長切り替えでは、クロック信号の切り替えに加え、切り替え時のクロック信号の位相変化を抑圧することが必要な場合がある。このような場合、上記のようにコンパレータ13の入力段に狭帯域フィルタ16を挿入することで、重み付け部の重み係数の制御による伝送系統の無瞬断切り替えの際に発生する、切り替え前後での位相変動を抑圧することが可能となる。
【0040】
[第3の実施形態]
図3は、本発明の第3の実施形態に係る信号切替装置40が適用される放送システム又は通信システムの機能構成を示すブロック図である。なお、本実施形態では、デジタル信号/アナログ信号源20−1からの信号を現用系とし、その他のデジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−n(nは自然数)からの信号を予備系とした冗長構成を採る放送システム又は通信システムにおける信号切替装置40について説明する。図3における信号切替装置40は、重み付け部11−1〜11−n、アナログ合成部12、コンパレータ13、信号異常検出部14及び重み係数制御部17を具備する。なお、図3において図1と共通する部分には同じ符号を付して示し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
重み係数制御部17は、信号異常検出部14による検出結果に基づいて重み付け部11−1〜11−nの重み係数を指定する。
【0042】
上記構成における動作を説明する。ここで、初期状態として、現用系に設置される重み付け部11−1の重み係数を「1」とし、予備系に設置される重み付け部11−2〜11−nの重み係数を「0.3」とする。なお、この「0.3」の重み係数は、実験により経験的に求められるものであり、この値に限定されるものではない。すなわち、実験により、所定の重み係数を付与した信号が、コンパレータ13で2値識別可能である場合、そのときの重み係数を上述の重み係数とする。このとき、信号の揺らぎは予備系におけるいずれかの信号に発生し、かつ、予備系における全ての信号にこの揺らぎが発生することはないと仮定する。
【0043】
また、デジタル信号/アナログ信号源20−1〜20−nから出力される伝送信号の信号レベルをXとし、コンパレータ13により2値識別可能な閾値レベルを「0.3X」とする。
【0044】
まず、デジタル信号/アナログ信号源20−1〜20−nは、それぞれ信号レベルXの伝送信号を出力する。重み付け部11−1は、デジタル信号/アナログ信号源20−1からの伝送信号に対して、重み係数「1」を付与する。これにより、合成部12へ供給される伝送信号の信号レベルは「X」となる。また、重み付け部11−2〜11−nは、デジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−nからの伝送信号に対して、重み係数「0.3」を付与する。これにより、合成部12へ信号レベル「0.3X」の伝送信号が(n−1)系統供給される。合成部12は、これらの信号をアナログ合成し、信号レベル{X+0.3X(n−1)}の合成信号をコンパレータ13へ出力する。
【0045】
コンパレータは、信号レベル{X+0.3X(n−1)}の合成信号を、閾値レベル0.3Xで2値識別し、後段へ出力する。
【0046】
ここで、デジタル信号/アナログ信号源20−1における伝送信号が断となったとする。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1において信号断が発生したか否かを判断する。ここでの信号断の判断には、所定の処理時間がかかり、この処理時間の間は、現用系からの出力は合成部12へ出力されない。一方、デジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−nからの伝送信号は、重み付け部11−2〜11−nで重み係数0.3が付与され、合成部12へ出力される。このため、コンパレータ13には、閾値レベル以上となる信号レベル{0.3X(n−1)}の合成信号が常に供給され、コンパレータ13はこの信号を閾値レベルと比較して2値識別することが可能である。すなわち、後段へ出力される伝送信号が途切れることはない。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1における信号断を検出すると、その検出結果を重み係数制御部17へ通知する。
【0047】
重み係数制御部17は、信号異常検出部14によりデジタル信号/アナログ信号源20−1における信号断が検出されると、重み付け部11−1の重み係数を「0」に指定すると共に、信号断が発生していない重み付け部のうち任意に指定される特定の重み付け部の重み係数を「1」に指定する。これにより、伝送信号を出力する主系統が切り替わる。合成部12では、信号レベル0の伝送信号、信号レベルXの伝送信号及び信号レベル0.3Xの(n−2)系統の伝送信号が合成され、その合成信号がコンパレータ13へ供給される。
【0048】
信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1〜20−nにおける信号断の発生を継続して監視する。そして、信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1の信号断が回復したことを検出した場合、重み係数制御部17へその旨を通知する。この通知を受けると、重み係数制御部17は、現用系へ出力を切り替える処理である切り戻しを実施する。すなわち、重み係数制御部17は、重み付け部11−1の重み係数を「1」に戻し、重み係数が「1」であった重み付け部の重み係数を「0.3」に戻す。これにより、伝送信号を出力する主系統が、現用系へと切り替わる。合成部12からは、信号レベル{X+0.3X(n−1)}の合成信号がコンパレータ13へ送出される。
【0049】
さらに、重み付け部11−1の重み係数が「1」、重み付け部11−2〜11−nの重み係数が「0.3」である場合に、デジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−nのいずれかからの伝送信号が断となったとする。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−nにおいて信号断が発生したか否かを判断する。信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−2〜20−nのいずれかにおける信号断を検出すると、その検出結果を重み係数制御部17へ通知する。重み係数制御部17は、信号異常検出部14からこの通知を受けると、信号断を発生した系統の重み付け部の重み係数を「0」に指定する。これにより、合成部12からは、信号レベル{X+0.3X(n−2)}の合成信号がコンパレータ13へ供給される。
【0050】
信号異常検出部14は、デジタル信号/アナログ信号源20−1〜20−nにおける信号断の発生を継続して監視する。そして、信号断が回復したことを検出した場合、重み係数制御部17へその旨を通知する。重み係数制御部17は、この通知を受けると、重み係数が「0」であった重み付け部の重み係数を「0.3」に戻す。これにより、再び信号レベル{X+0.3X(n−1)}の合成信号がコンパレータ13へ送出されることとなる。
【0051】
以上のように、上記第3の実施形態では、複数系統により冗長構成を形成する放送システムにおいて、信号を伝送する主系統に信号断が発生した場合、各系統の信号に付与する重み係数を操作することで、信号断が発生していない系統のうちいずれかを主系統とするように系統を切り替える。
【0052】
ここで、いずれの系統にも信号断が発生していない場合には、現用系における重み係数を「1」に指定し、予備系の全ての重み係数を「0.3」に指定している。これにより、予備系におけるいずれかのデジタル信号/アナログ信号源からの信号に揺らぎが発生した場合であっても、その影響は、現用系及び予備系における正常な伝送信号により解消されることとなる。つまり、予備系のいずれかで発生した信号の揺らぎが後段へ影響を及ぼすことはない。なお、冗長数が増加するに従い、冗長系統の1系統で発生した信号の揺らぎの影響は希釈される。そのため、冗長系統の重み付け部の重み係数は、冗長数が増加するに従って「1」に近づけてもよい。
【0053】
また、いずれの系統にも信号断が発生していない場合には、予備系における重み係数には、コンパレータ13の閾値レベルを超える程度の値が指定されるようになっている。これにより、現用系において信号断が発生し、信号断の検出処理に所定の時間がかかる場合であっても、予備系からコンパレータ13の閾値レベルを超える伝送信号が出力されるため、後段への伝送信号の供給が途切れることはない。
【0054】
これらのことから、本発明に係る信号切替装置は、従来のような遅延装置を必要とせず、伝送系統を無瞬断で切り替えることが可能となる。すなわち、装置の大型化及び高コスト化を避けて、冗長構成におけるデジタル信号/アナログ信号の無瞬断切り替えを実現することができる。
【0055】
[その他の実施形態]
なお、この発明は上記各実施形態に限定されるものではない。例えば上記各実施形態では、現用系が回復すると、出力系統を予備系から現用系へ戻す、いわゆる切り戻しが行われる例について説明したが、これに限定される訳ではない。すなわち、現用系における重み係数を「0」に指定し、予備系における重み係数を「1」に指定した後に、現用系の信号断が回復した場合、現用系の重み係数を「0.3」に指定し、予備系における重み係数を「1」で維持する場合であっても同様に実施可能である。
【0056】
さらに、この発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0057】
10,30,40…信号切替装置
11−1,11−2〜11−n…重み付け部
12…アナログ合成部
13…コンパレータ
14…信号異常検出部
15,17…重み係数制御部
16…BPF
20−1,20−2〜20−n…デジタル信号/アナログ信号源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冗長構成を採る複数の伝送信号のうちいずれかをそれぞれ受信し、受信した伝送信号の信号レベルを個別に設定された重み値で調整した調整信号を生成する複数の重み付け部と、
前記複数の調整信号をアナログ合成して合成信号とする合成部と、
前記合成信号の信号レベルを予め設定された閾値レベルと比較して識別出力するコンパレータと、
前記複数の伝送信号における信号断を個別に検出する断検出部と、
前記複数の重み付け部のうち任意に指定された第1の重み付け部の重み値を前記受信した伝送信号の信号レベルを維持するように設定すると共に、その他の重み付け部の重み値を前記第1の重み付け部の重み値以下となるように設定し、前記断検出部により前記特定の重み付け部へ導出される伝送信号に信号断が検出された場合、前記その他の重み付け部のうち任意に指定された第2の重み付け部の重み値を前記受信した伝送信号の信号レベルを維持するように設定する重み制御部と
を具備することを特徴とする信号切替装置。
【請求項2】
前記重み制御部は、前記断検出部により、前記第1の重み付け部へ導出される伝送信号に信号断が検出された場合、前記第1の重み付け部から出力される調整信号の信号レベルが零となるように、前記第1の重み付け部の重み値を設定することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。
【請求項3】
前記重み制御部は、前記その他の重み付け部から出力された調整信号毎の信号レベルが前記閾値レベル以上となるように、前記その他の重み付け部の重み値を設定することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。
【請求項4】
前記重み制御部は、前記その他の重み付け部から出力された調整信号毎の信号レベルが前記閾値レベル以上となり、前記その他の重み付け部のいずれかで発生した調整信号の揺らぎが前記第1の重み付け部からの調整信号に影響を与えないように、前記その他の重み付け部の重み値を設定することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。
【請求項5】
前記合成部と前記コンパレータとの間に帯域通過フィルタをさらに具備することを特徴とする請求項1記載の信号切替装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−35835(P2011−35835A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−182689(P2009−182689)
【出願日】平成21年8月5日(2009.8.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】