信号機システム
【課題】
通過する車両数を経路に応じて予測し各信号機の点灯の最適化を行い、あるいは緊急自動車が円滑に交差点を通過できかつ隣接信号機への影響を低減する。
【解決手段】
信号機の組212(A〜D)と、車両Cに搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、通信装置が受信した車両情報に基づき各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置とを備えた信号機システムであり、信号灯制御装置は、通信装置が受信した車両情報を参照して、一定時間内に通過する車両数を推定し、通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする。
通過する車両数を経路に応じて予測し各信号機の点灯の最適化を行い、あるいは緊急自動車が円滑に交差点を通過できかつ隣接信号機への影響を低減する。
【解決手段】
信号機の組212(A〜D)と、車両Cに搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、通信装置が受信した車両情報に基づき各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置とを備えた信号機システムであり、信号灯制御装置は、通信装置が受信した車両情報を参照して、一定時間内に通過する車両数を推定し、通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過する車両数を経路に応じて予測し各信号機の点灯の最適化を行う信号機システム、および緊急自動車が円滑に交差点を通過できかつ隣接信号機への影響を低減できる信号機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号機を制御する種々のシステムが知られており、多くの信号機では、交通量の変化を車両センサにより随時監視し、交通量の変化に応じて赤信号や青信号の点灯時間を変更するといったタイムシーケンスによる制御を行っている(特許文献1等参照)。
また、緊急自動車が交差点を通過するときに、緊急自動車に搭載した無線機からの車両情報に応じて、タイムシーケンスによる制御から緊急自動車の進路を一時的に優先する制御に切り換え、緊急自動車が通過したときはタイムシーケンスによる制御に戻すことも行われている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−084486
【特許文献2】特願2000−223274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術は、高速道路におけるように通行車両数を把握できる場合には効果を発揮するが、通行車両数を把握しにくい一般道路では最適な制御ができない場合がある。もちろん、車両センサを多数の箇所に設けておき管制施設で交通状況をほぼ完全に把握して信号機を制御することも可能であろうが、車両センサの設置場所の確保が容易ではないし、管理も容易ではない。
【0005】
また、特許文献2の技術では、緊急自動車の進路が確保されるように信号機を一時的に制御する。通常、信号機は、隣接する交差点の他の信号機と連携してタイムシーケンスにより制御されることが多いが、このような信号機に適用する場合には、緊急自動車の進路優先制御の開始や終了が、前記のタイムシーケンスと無関係に(すなわち、突然に)行われるため、当該交差点での事故の危険が高くなる。
【0006】
本発明の目的は、車両に搭載した無線機から信号を受信し、当該受信信号に含まれる情報に基づき、各信号構成色の点灯比を変更する車間通信機能付きの信号機システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の信号機システムは以下を要旨とする。
(1)
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHを受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システム。
【0008】
(1)の態様において、信号機システムは、車両に搭載した無線機から、各信号機に設けた通信装置への送信を高速で行うことで、交通管理を行うことができる。この送信信号は、ITS(Intelligent Transportation Systems)において車両に搭載した無線機から発信される同報通信信号(700MHz帯)を用いることができる。
【0009】
「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期動作する一組の信号機を意味し、この「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機とから構成されていてもよい。
【0010】
車両センサにより交差点を通過するであろう車両数を予測して信号機を制御する場合、車両センサの設置場所が確保できないといった問題が生じる。本発明の信号機システムでは、各車両の無線機が車両情報VHを信号機システムに送信するので、このような問題は生じない。
【0011】
また、本発明の信号機システムは、自律したシステムとしても使用でき、事故処理や道路工事に際して使用される移動式の信号機への適用が好適である。
【0012】
(2)
前記信号灯制御装置は、前記通信装置が受信した車両情報VHを参照して、一定時間(単位時間)内に通過する車両数を推定し、
通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、
通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする、
ことを特徴とする(1)に記載の信号機システム。
【0013】
(3)
前記車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHには、少なくとも車両識別情報ID、位置情報PSおよび方位情報DRが含まれていることを特徴とする(1)または(2)に記載の信号機システム。
【0014】
車両情報VHには、車両識別情報IDは車両に固有の数値等であり、位置情報PSはGPS端末機能を用いて取得され、方位情報DRは位置情報PSの履歴等から予測される。また、車両情報VHには、上記の情報のほか、車両の速度情報VLや車種情報TYが含まれてもよい。
【0015】
(4)
交差点に設けられた信号機の組と、
緊急自動車に搭載した無線機から発信される優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信する通信装置と、
前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信しないときは、前記各信号機を通常のタイムシーケンスにより制御する通常モードで制御し、前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、各信号機を緊急自動車の走行を優先する緊急自動車優先モードで制御する信号灯制御装置と、
を備えたことを特徴とする信号機システム。
【0016】
(4)の態様においても、「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期して動作する一組の信号機を意味し、「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機から構成されていてもよい。
【0017】
(4)の態様においても、車両に搭載した無線機から発信される電波の周波数には限定はなく、日本国では、運転支援システムの周波数帯である700MHz帯である。(4)の態様においても、信号機システムにおける通信装置には、種々の機能が搭載される。
車両に搭載した無線機、信号機システムにおける通信装置や信号灯制御装置の開発には専用の開発用回路ボードを使用できる。
【0018】
(4)の態様は、各信号機の点灯がタイムシーケンスにより制御されている信号機システムに適用される。通常、この信号機システムは、他の信号機システムと連携(同期)している。緊急自動車と信号機システムの通信装置との通信には、周知のディジタル伝送技術が適用される。
【0019】
緊急自動車は、警光灯を点灯し、通常はサイレンを鳴らしている車両である。緊急自動車の通信装置は、緊急自動車から発信される優先走行要求RQを、秘密キーにより受け付けることができる。
(4)の態様でも、車両情報VHには、車両位置情報や走行方向情報が含まれていることもあるし、含まれていないこともある。
【0020】
(5)
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、前記信号機の組の全てについて赤信号を点灯し、
前記緊急自動車が通過した後は、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする(4)に記載の信号機システム。
【0021】
(5)の態様では、信号制御モードを緊急自動車優先モードに移行し、すぐに緊急自動車が通過したために、タイムシーケンスに切り換わる場合には、赤信号から極めて短い時間だけ緑信号に変化し、すぐに黄信号を経て赤信号に変化するという事態、あるいは、赤信号から黄信号に変化し、すぐに赤信号に変化するという事態が生じる。これにより、一般車は、無理なアクセル操作をしたり、誤ったブレーキ操作をしたりするため、交差点事故が生じる可能性がある。
【0022】
これを防ぐために、(5)の態様では、緊急自動車が通過した場合において、赤信号の後から黄信号に変化するまでの時間が極めて短くなってしまうとき、または、赤信号の後黄信号となってしまうときには、信号灯制御装置は、赤信号後に緑信号や黄信号に変化させずに、赤信号を継続するように信号機を制御する。これにより、上記の交差点事故が生じることはなくなる。
【0023】
(6)
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、当該緊急自動車が通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続し、
前記緊急自動車が通過した後は、当該緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする(4)に記載の信号機システム。
(6)の態様は(5)の態様と同様、緊急自動車が信号機を通過するときに適用される。
【0024】
(6)の態様においても、「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期して動作する一組の信号機を意味し、「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機から構成されていてもよい。
【0025】
(6)の態様においても、車両に搭載した無線機から発信される電波(車両搭載の通信機から発信される電波)の周波数には限定はなく、たとえば日本国では700MHz帯である。
(6)の態様においても、信号機システムにおける受信機には、種々の機能が搭載される。したがって、車両載発信機や、信号機システムにおける受信機や信号灯制御装置の開発には専用の開発用回路ボードを使用できる。
【0026】
(6)の態様は、各信号機の点灯がタイムシーケンスにより制御されている信号機システムに適用される。通常、この信号機システムは、他の信号機システムと連携(同期)している。
緊急自動車と信号機システムの通信装置との通信には、周知のディジタル伝送技術が適用される。
【0027】
緊急自動車は、警光灯を点灯し、通常はサイレンを鳴らしている車両である。緊急自動車の通信装置は、緊急自動車から発信される優先走行要求RQを、秘密キーにより受け付けることができる。
【0028】
(6)の態様でも、車両情報VHには、車両位置情報や走行方向情報が含まれていることもあるし、含まれていないこともある。また、信号機システムにおける通信装置は、車両情報VHとしてIDのみが含まれる電波を受信し、信号強度や信号強度変化から車両の存在やその概略速度を認識することもできる。
【0029】
(5)の態様では、緊急自動車が通過した後に、タイムシーケンスに切り換えた場合には、黄信号を経ずに赤信号に移行し、あるいは極めて短い時間だけ赤信号が点灯した後に緑信号に切り変わるといった事態が生じる。
【0030】
これを防ぐために、(6)の態様では、緊急自動車が通過したときは、緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機の表示は、緑信号から黄信号を経て赤信号に移行させるので、交差点内での事故発生を少なくできる。また、(6)の態様の信号機システムでは、信号機の点灯を制御しても、他の信号機システムとの連携が崩されることがないので交通が混乱することはない。
【0031】
(7)
前記緊急自動車に搭載した無線機から発信される前記車両情報VHには、少なくとも車両識別情報ID、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする(4)から(6)の何れかに記載の信号機システム。
【0032】
車両情報VHには、IDおよび当該車両がGPS等から取得した位置情報等を含むことができる。この場合には、信号機システムにおける通信装置は、車両位置や速度を正確に認識することができる。
【0033】
(8)
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHを受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システムであって、
前記通信装置は、
アンテナにより受信した無線周波数帯信号を任意周波数に低下させて他の回路に出力する復調回路と、
前記他の回路から入力した任意周波数の信号を無線周波数に上昇させて前記アンテナに出力する変調回路と、
前記アンテナを、前記復調回路と前記変調回路の何れかに切り替えるスイッチ回路と、
を内蔵した開発用のRF集積回路を備え、
RF集積回路は、前記他の回路とは独立して集積化され、かつ、
前記復調回路は、受信した無線周波数信号を、低周波数の信号に変換するとともに、
前記変調回路は、低周波数の信号を、無線周波数信号に変換することを特徴とする交差点安全走行システム。
【発明の効果】
【0034】
車両が位置情報を信号機に渡すことで、信号機は自律して信号点灯状態を変更することができる。
信号の点灯サイクルが短くなることはないので、信号機の組が他の信号機の組とリンクしていても、本発明他の信号への影響を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の信号機システムの構成を示す図であり、(A)は押しボタン式の信号機に適用した例を示す図、(B)は通過車両の交通量に応じて青信号と赤信号との点灯比を変更する例を示す図、(C)および(D)は緊急自動車を優先走行させる例を示す図である。
【図2】本発明の信号機システムが適用される第1実施形態を示す図である。
【図3】第1実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図4】第1実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図5】本発明の信号機システムが適用される第2実施形態を示す図である。
【図6】第2実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図7】第2実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図8】本発明の信号機システムが適用される第3実施形態を示す図である。
【図9】第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図10】第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図11】制御方法を改良した第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図12】制御方法を改良した第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図13】本発明の信号機システムが適用される第4実施形態を示す図である。
【図14】第4実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図15】第4実施形態の信号機システムにおいて、緊急自動車から優先走行要求が、ある信号機の青信号点灯時にあったときの信号制御のタイムチャートである。
【図16】第4実施形態の信号機システムにおいて、緊急自動車から優先走行要求が、ある信号機の赤信号点灯時にあったときの信号制御のタイムチャートである。
【図17】本発明の信号機システムに使用される通信装置を示す図であり、RF集積回路が物理層回路とMAC回路と接続された様子を示すブロック図である。
【図18】図17のRF集積回路の復調回路および変調回路を細分して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の信号機システムの実施形態を説明する。第1実施形態は、押しボタン式の信号機に本発明を応用したもので、図1(A)に示すように、信号機システム1は、信号機111A,111Bおよび112A,112Bと、通信装置12と、記憶装置13と、信号灯制御装置14とを備えている。
【0037】
信号機111A,111Bは、図2にも示すように、道路R0を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機112A,112Bは、横断歩道Zを渡る歩行者を規制する、押しボタンBにより動作する信号機(押しボタン式信号機)である。
図1(A)の信号機システム1において、通信装置12は、各車両Cから発信される車両情報VHを受信する。記憶装置13はこの車両情報VHを記憶する。記憶装置13には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL1が用意されており、信号灯制御装置14は、TBL1を参照して各信号機111A,111Bおよび112A,112Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0038】
図1(A)の信号機システム1の動作を、図3のフローチャートおよび図4のタイムチャートにより説明する。
信号機システム1では、通信装置12が周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置13に記憶している(S11)。ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報を含むことができる。
まず、信号機システム1は、車両通行モードで信号機を駆動しているものとする。車両通行モードでは、信号機111A,111Bが緑信号を表示しており、歩行者用の信号機112A,112Bは赤信号を表示している。
【0039】
信号機システム1では、信号灯制御装置14が押しボタンBが押されたか否かを監視している。信号灯制御装置14は、押しボタンBが押されると(S120)、押しボタン機能を停止し(S130)、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されたか否かを判断する(S140)。信号灯制御装置14は、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されていないとき(S140の「YES」)は、ただちに、制御モードを歩行者横断モードに移行させる(S150)。すなわち、信号灯制御装置14は、歩行者横断モードでは、車両情報VHを記憶装置13から呼び出し、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL1を参照して、信号切換え待ち時間Teを決定する。
【0040】
信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。そして、歩行者横断モードが終了した後に、制御モードを歩行者横断モードから車両通行モードに移行する。
【0041】
信号切換え待ち時間Teは、通行車両数が少ないときは短く、通行車両数が多いときは長く設定される。
たとえば、通過車両数がゼロのときは、図4(A)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teをゼロに設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、ただちに信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。これと同時に、
【0042】
また、通過車両数がゼロではないが少ないときは、図4(B)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teにやや小さめの値を設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、やや短い信号切換え待ち時間Teの後、信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。
【0043】
さらに、通過車両数が多いときは、図4(C)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teに大きい値を設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、長い信号切換え待ち時間Teの後、信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。
S140において、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されているときは(S140の「NO」)は、信号灯制御装置14は、所定時間経過後に歩行者横断モードに移行する。すなわち、遅れ時間Tdと信号切換え待ち時間Teとを加えて信号機を駆動する(S160)。そして、信号灯制御装置14は、歩行者横断モードが終了したときは、制御モードを、車両通行モードに移行させる(S170)。
【0044】
本発明の第2実施形態は、交差点の信号機に本発明を応用したもので、信号機システム2は、図1(B)に示すように、信号機211A,211Bおよび212A,212Bと、通信装置22と、記憶装置23と、信号灯制御装置24とを備えている。図5にも示すように、信号機211A,211Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機212A,212Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。
【0045】
図1(B)の信号機システム2において、通信装置22は、周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置23に記憶している(S21)。記憶装置23には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL2が用意されており、信号灯制御装置24は、TBL2を参照して各信号機211A,211Bおよび212A,212Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0046】
図1(B)の信号機システム2の動作を、図6のフローチャートおよび図7のタイムチャートにより説明する。
信号機システム2では、通信装置22が周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置23に記憶している(S21)。ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報を含むことができる。
【0047】
まず、図1(B)の信号機システム2では、信号機211A,211Bが緑信号を表示しており、歩行者用の信号機212A,212Bは赤信号を表示している。
信号灯制御装置24が車両情報VHを記憶装置23から呼び出し、次の信号点灯サイクルで交差点を通過する第1道路R1および第2道路R2の車両数を推定している(S210)。
そして、信号灯制御装置24は、通過車両数に応じて、時間設定テーブルTBL2を参照して第1道路R1と第2道路R2の緑信号点灯時間および赤信号点灯時間をそれぞれ設定する(S220)。
【0048】
たとえば、第1道路R1と第2道路R2の通過車両数がほぼ同じときは、本実施形態では、図7(A)のタイムチャートに示すように、各信号機211A,211B,212A,212Bの緑信号Gと赤信号Rとの時間割合がほぼ同じである。
これに対し、第2道路R2の通過車両数が第1道路R1の通過車両数よりも多いときは、図7(B)のタイムチャートに示すように、信号機211A,211Bの緑信号Gの時間が、信号機212A,212Bの緑信号Gの時間よりも長くなる。
【0049】
本発明の第3実施形態は、緊急自動車の優先走行を信号機により実現するもので、信号機システム3は、図1(C)に示すように、信号機311A,311Bおよび312A,312Bと、通信装置32と、記憶装置33と、信号灯制御装置34とを備えている。図8にも示すように、信号機311A,311Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機312A,312Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。
【0050】
図1(C)の信号機システム3において、通信装置32は、周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置33に記憶している(S31)。記憶装置33には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL3が用意されており、信号灯制御装置34は、TBL3を参照して各信号機311A,311Bおよび312A,312Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0051】
本実施形態の信号機システム3(図1(C)参照)の動作を、図9のフローチャートおよび図10のタイムチャートにより説明する。
信号機システム3では、通信装置32は、緊急自動車Pから車両情報VHを受信することができる。
ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報のほか、優先走行要求RQを含むことができる。
なお、本実施形態では、緊急自動車Pが第1道路R1を走行していても、第2道路R2を走行していても、信号機311A,311B,312A,312Bに対する制御に差異はない。
【0052】
まず、図1(C)の信号機システム3では、信号機311A,311B,312A,312Bが通常モードで信号を表示しているときに(S310)、通信装置32が緊急自動車Pから優先走行要求RQが受信したものとする(S320)。
【0053】
これにより、制御モードは緊急自動車優先モードに移行する。すなわち、優先走行要求時に緑信号であるときは黄信号を経た後赤信号に移行し、赤信号であるときは赤信号を維持する(S330)。この後、緊急自動車Pが交差点を通過すると(S340の「YES」)、全ての信号機は通常モードで制御される(S310)。
【0054】
図10(A)に、通常モードでの信号の移り変わりを示し、図10(B)に、緊急自動車優先モードでの典型的な信号の移り変わりを示している。
優先走行要求時に、たとえば信号機311A,311Bが黄信号である場合において、図10(C)に示すように、黄信号が短過ぎる事態が生じることがある。
そこで、本実施形態では、図11のフローチャートに示すように、図9のS330の処理を「優先走行要求時に緑信号であるときは黄信号を経て赤信号に移行し、赤信号であるときは赤信号を維持し、黄信号であるときは黄信号を通常時間点灯した後赤信号に移行する」処理に変更することができる。
【0055】
また、緊急自動車Pが交差点を通過するタイミングが、本来の信号切換えシーケンスにおける信号切り替わりタイミングの直前である場合には、図10(D)に示すように、たとえば信号機312A,312Bは赤信号から極めて短い時間で緑信号に変化し、この後黄信号に変化した後赤信号に変化することがあるし、図10(E)に示すように、赤信号から黄信号に変化するといった、通常モードではありえない信号の変化が生じることがある。
そこで、本実施形態では、図11のフローチャートに示すように、「信号機の何れかが、緊急自動車通過時に緑信号であり残り緑信号時間が短時間のときは、当該信号機の緑信号および続く黄信号を赤信号に変更する」処理および、「信号機の何れかが、緊急自動車通過時に黄信号であるときは黄信号を赤信号に変更する」処理を、図9に示した処理に追加することができる(S350)。
【0056】
このような緊急自動車優先モードでの処理を、図12(A)の通常モードでの処理に対比させて、図12(B),(C),(D)により説明する。
図12(B)では、図10(C)に示すような事態が生じないような制御を示しており、優先走行要求時に、信号機311A,311Bが黄信号であったために、当該黄信号Yを通常時間点灯した後、赤信号Rに移行させている。
図12(C)では、図10(D)に示すような事態が生じないような制御を示しており、緊急自動車通過時に信号機312A,312Bが緑信号であり残り緑信号時間が短時間であったため、信号機312A,312Bの緑信号Gおよび続く黄信号Yを赤信号Rに変更している。
図12(D)では、図10(E)に示すような事態が生じないような制御を示しており、緊急自動車通過時に信号機312A,312Bが黄信号Yであったため、信号機312A,312Bの黄信号Yを赤信号Rに変更している。
【0057】
本発明の第4実施形態は、第3実施形態と同様、緊急自動車Pの優先走行を信号機により実現するもので、信号機システム4は、図1(D)に示すように、信号機411A,411Bおよび412A,412Bと、通信装置42と、記憶装置43と、信号点灯制御装置44とを備えている。
第4実施形態は、図13に示すように、信号機411A,411Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機412A,412Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。本実施形態では、緊急自動車Pが第1道路R1を走行している場合と、第2道路R2を走行している場合とでは、信号機411A,411Bに対する制御、信号機412A,412Bに対する制御は異なる。
【0058】
本実施形態では、信号点灯制御装置44は、通信装置42が車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照してつぎの処理を行う。
すなわち、信号点灯制御装置44は、緊急自動車Pが交差点を通過する前は、当該緊急自動車Pが通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続する。そして、緊急自動車Pが通過した後は、当該緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する。
【0059】
本実施形態における信号機システム4の動作を、図14のフローチャートおよび図15,図16のタイムチャートにより説明する。
信号機システム4では、通信装置32は、緊急自動車Pから車両情報VHを受信することができる。
ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報のほか、優先走行要求RQを含むことができる。
【0060】
本実施形態では、信号点灯制御装置44は、通常モードで信号機を制御するとともに(S410)、優先走行要求RQがあったか否かを監視している(S420)。信号点灯制御装置44は、優先走行要求RQがあると、制御を緊急自動車優先モードに移行させる(S420)。
そして、信号点灯制御装置44は、信号機411A,411B、412A,412Bが設置された交差点を緊急自動車Pが通過したか否かを監視しており(S430)、通過したときは、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL4を参照して、信号機と間での時間補償を行う(S440)。
【0061】
図15(A)は通常モードでの処理を示しており、図15(B),(C),(D)は、緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機411A,411Bが青信号のときに優先走行要求RQがあった場合を示している。
図15(B)では、信号機411A,411Bの青信号の時間が長くも短くもなっていないので、各信号機との間での時間補償は行わない。
図15(C)では、信号機411A,411Bの青信号の時間を長くしたので、信号機411A,411Bの赤信号の時間も長くする、すなわち信号機412A,412Bの青信号の時間を長くして、各信号機との間での時間補償を行っている。
図15(D)でも、信号機411A,411Bの青信号の時間を長くしたので、信号機411A,411Bの赤信号の時間も長くする、すなわち信号機412A,412Bの青信号の時間を長くして、各信号機との間での時間補償を行っている。
図15(C),(D)からもわかるように、上記の補償の後は、他の信号機の制御とリンクした通常のタイムシーケンスによる制御が行われる。
【0062】
図16(A)は通常モードでの処理を示しており、図16(B),(C),(D)は、緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機411A,411Bが赤信号のときに優先走行要求RQがあった場合を示している。
図16(B)では、信号機411A,411Bを本来よりも早く青信号にしたので(信号機412A,412Bを本来よりも早く赤信号にしたので)、信号機411A,411Bの青信号の時間を短くする(信号機412A,412Bの青信号の時間を長くする)ことで、各信号機との間での時間補償を行っている。
【0063】
図16(C),図16(D)も同様に、信号機411A,411Bを本来よりも長い時間青信号にしたので(信号機412A,412Bを本来よりも短い時間赤信号にしたので)、信号機411A,411Bの青信号の時間を短くする(信号機412A,412Bの青信号の時間を長くする)ことで、各信号機との間での時間補償を行っている。
図16(C),(D)からもわかるように、上記の補償の後は、他の信号機の制御とリンクした通常のタイムシーケンスによる制御が行われる。
【0064】
図17および図18は通信装置12に搭載されるRF集積回路を示す説明図である。図17において、RF集積回路RFICは、復調回路RCと、変調回路TRと、スイッチ回路SWとを備えている。RF集積回路RFICは、物理層回路PHYとメディアアクセス回路MACからなる回路に接続され、回路はコンピュータCPUに接続されている。
【0065】
復調回路RCは、アンテナにより受信した無線周波数帯信号(ここでは、715M〜725MHzの信号)を任意周波数(5MHzから20MHz)に低下させて物理層回路PHYに出力する。変調回路TRは、物理層回路PHYから入力した任意周波数(5MHzから20MHz)の信号を無線周波数(715M〜725MHzの信号)に上昇させてアンテナANTに出力する。
【0066】
物理層回路PHYは、典型的にはインタフェース回路である。本実施形態では、アナログ/ディジタルコンバータA/D,ディジタル/アナログコンバータD/Aが、物理層回路PHYとRF集積回路RFICとの間に設けられているが、物理層回路PHYに設けることができるし、RF集積回路RFICに設けることができる。物理層回路PHYは、メディアアクセス回路MACに接続されており、復調回路RCからの信号はメディアアクセス回路MACに渡され、メディアアクセス回路MACからの信号は変調回路TRに渡される。アンテナANDは、スイッチ回路SWを介して、復調回路RCと変調回路RCとに接続される。スイッチ回路SWは、外部からの切替え信号SCにより、アンテナANTを復調回路RCと変調回路RCの何れかに切り替えることができる。
【0067】
なお、復調回路RCは、図18に示すように、中間周波数変換回路RC1と、低周波数変換回路RC2とから構成できる。中間周波数変換回路RC1はスイッチ回路SWを介して入力した無線周波数信号を中間周波数に変換し、さらに低周波数変換回路RC2により5〜25MHz程度の周波数に変換する。そして、これらの周波数信号うちの特定の周波数信号を、図17の物理層回路PHYに出力する。また、図18に示すように、変調回路RCは、中間周波数変換回路TR1と、さらに高周波数変換回路TR2とから構成できる。物理層回路PHYからの周波数信号のうちの特定の周波数信号を中間周波数変換回路TR1により中間周波数に変換する。さらに、この中間周波数の信号を高周波数変換回路TR2により無線周波数(700MHz帯)の信号に変調し、スイッチ回路SWを介して、アンテナANTに出力している。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4 信号機システム
12,22,32,42 通信装置
13,23,33,43 記憶装置
14,24,34,44 信号灯制御装置
111A,111B,112A,112B,211A,211B,212A,212B,311A,311B,312A,312B,411A,411B,412A,412B 信号機
B 押しボタン
C 車両
G 緑信号
P 緊急自動車
R 赤信号
R0 道路
R1 第1道路
R2 第2道路
TBL1,TBL2,TBL3,TBL4 時間設定テーブル
Td 遅れ時間
Te 信号切換え待ち時間
Y 黄信号
Z 横断歩道
【技術分野】
【0001】
本発明は、通過する車両数を経路に応じて予測し各信号機の点灯の最適化を行う信号機システム、および緊急自動車が円滑に交差点を通過できかつ隣接信号機への影響を低減できる信号機システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、信号機を制御する種々のシステムが知られており、多くの信号機では、交通量の変化を車両センサにより随時監視し、交通量の変化に応じて赤信号や青信号の点灯時間を変更するといったタイムシーケンスによる制御を行っている(特許文献1等参照)。
また、緊急自動車が交差点を通過するときに、緊急自動車に搭載した無線機からの車両情報に応じて、タイムシーケンスによる制御から緊急自動車の進路を一時的に優先する制御に切り換え、緊急自動車が通過したときはタイムシーケンスによる制御に戻すことも行われている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−084486
【特許文献2】特願2000−223274
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の技術は、高速道路におけるように通行車両数を把握できる場合には効果を発揮するが、通行車両数を把握しにくい一般道路では最適な制御ができない場合がある。もちろん、車両センサを多数の箇所に設けておき管制施設で交通状況をほぼ完全に把握して信号機を制御することも可能であろうが、車両センサの設置場所の確保が容易ではないし、管理も容易ではない。
【0005】
また、特許文献2の技術では、緊急自動車の進路が確保されるように信号機を一時的に制御する。通常、信号機は、隣接する交差点の他の信号機と連携してタイムシーケンスにより制御されることが多いが、このような信号機に適用する場合には、緊急自動車の進路優先制御の開始や終了が、前記のタイムシーケンスと無関係に(すなわち、突然に)行われるため、当該交差点での事故の危険が高くなる。
【0006】
本発明の目的は、車両に搭載した無線機から信号を受信し、当該受信信号に含まれる情報に基づき、各信号構成色の点灯比を変更する車間通信機能付きの信号機システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の信号機システムは以下を要旨とする。
(1)
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHを受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システム。
【0008】
(1)の態様において、信号機システムは、車両に搭載した無線機から、各信号機に設けた通信装置への送信を高速で行うことで、交通管理を行うことができる。この送信信号は、ITS(Intelligent Transportation Systems)において車両に搭載した無線機から発信される同報通信信号(700MHz帯)を用いることができる。
【0009】
「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期動作する一組の信号機を意味し、この「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機とから構成されていてもよい。
【0010】
車両センサにより交差点を通過するであろう車両数を予測して信号機を制御する場合、車両センサの設置場所が確保できないといった問題が生じる。本発明の信号機システムでは、各車両の無線機が車両情報VHを信号機システムに送信するので、このような問題は生じない。
【0011】
また、本発明の信号機システムは、自律したシステムとしても使用でき、事故処理や道路工事に際して使用される移動式の信号機への適用が好適である。
【0012】
(2)
前記信号灯制御装置は、前記通信装置が受信した車両情報VHを参照して、一定時間(単位時間)内に通過する車両数を推定し、
通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、
通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする、
ことを特徴とする(1)に記載の信号機システム。
【0013】
(3)
前記車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHには、少なくとも車両識別情報ID、位置情報PSおよび方位情報DRが含まれていることを特徴とする(1)または(2)に記載の信号機システム。
【0014】
車両情報VHには、車両識別情報IDは車両に固有の数値等であり、位置情報PSはGPS端末機能を用いて取得され、方位情報DRは位置情報PSの履歴等から予測される。また、車両情報VHには、上記の情報のほか、車両の速度情報VLや車種情報TYが含まれてもよい。
【0015】
(4)
交差点に設けられた信号機の組と、
緊急自動車に搭載した無線機から発信される優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信する通信装置と、
前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信しないときは、前記各信号機を通常のタイムシーケンスにより制御する通常モードで制御し、前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、各信号機を緊急自動車の走行を優先する緊急自動車優先モードで制御する信号灯制御装置と、
を備えたことを特徴とする信号機システム。
【0016】
(4)の態様においても、「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期して動作する一組の信号機を意味し、「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機から構成されていてもよい。
【0017】
(4)の態様においても、車両に搭載した無線機から発信される電波の周波数には限定はなく、日本国では、運転支援システムの周波数帯である700MHz帯である。(4)の態様においても、信号機システムにおける通信装置には、種々の機能が搭載される。
車両に搭載した無線機、信号機システムにおける通信装置や信号灯制御装置の開発には専用の開発用回路ボードを使用できる。
【0018】
(4)の態様は、各信号機の点灯がタイムシーケンスにより制御されている信号機システムに適用される。通常、この信号機システムは、他の信号機システムと連携(同期)している。緊急自動車と信号機システムの通信装置との通信には、周知のディジタル伝送技術が適用される。
【0019】
緊急自動車は、警光灯を点灯し、通常はサイレンを鳴らしている車両である。緊急自動車の通信装置は、緊急自動車から発信される優先走行要求RQを、秘密キーにより受け付けることができる。
(4)の態様でも、車両情報VHには、車両位置情報や走行方向情報が含まれていることもあるし、含まれていないこともある。
【0020】
(5)
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、前記信号機の組の全てについて赤信号を点灯し、
前記緊急自動車が通過した後は、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする(4)に記載の信号機システム。
【0021】
(5)の態様では、信号制御モードを緊急自動車優先モードに移行し、すぐに緊急自動車が通過したために、タイムシーケンスに切り換わる場合には、赤信号から極めて短い時間だけ緑信号に変化し、すぐに黄信号を経て赤信号に変化するという事態、あるいは、赤信号から黄信号に変化し、すぐに赤信号に変化するという事態が生じる。これにより、一般車は、無理なアクセル操作をしたり、誤ったブレーキ操作をしたりするため、交差点事故が生じる可能性がある。
【0022】
これを防ぐために、(5)の態様では、緊急自動車が通過した場合において、赤信号の後から黄信号に変化するまでの時間が極めて短くなってしまうとき、または、赤信号の後黄信号となってしまうときには、信号灯制御装置は、赤信号後に緑信号や黄信号に変化させずに、赤信号を継続するように信号機を制御する。これにより、上記の交差点事故が生じることはなくなる。
【0023】
(6)
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求RQを含む車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、当該緊急自動車が通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続し、
前記緊急自動車が通過した後は、当該緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする(4)に記載の信号機システム。
(6)の態様は(5)の態様と同様、緊急自動車が信号機を通過するときに適用される。
【0024】
(6)の態様においても、「信号機の組」は、同一の横断歩道、同一の交差点における同期して動作する一組の信号機を意味し、「信号機の組」は、車両の規制を行う信号機のみにより構成されてもよいし、車両の規制を行う信号機と歩行者の規制を行う信号機から構成されていてもよい。
【0025】
(6)の態様においても、車両に搭載した無線機から発信される電波(車両搭載の通信機から発信される電波)の周波数には限定はなく、たとえば日本国では700MHz帯である。
(6)の態様においても、信号機システムにおける受信機には、種々の機能が搭載される。したがって、車両載発信機や、信号機システムにおける受信機や信号灯制御装置の開発には専用の開発用回路ボードを使用できる。
【0026】
(6)の態様は、各信号機の点灯がタイムシーケンスにより制御されている信号機システムに適用される。通常、この信号機システムは、他の信号機システムと連携(同期)している。
緊急自動車と信号機システムの通信装置との通信には、周知のディジタル伝送技術が適用される。
【0027】
緊急自動車は、警光灯を点灯し、通常はサイレンを鳴らしている車両である。緊急自動車の通信装置は、緊急自動車から発信される優先走行要求RQを、秘密キーにより受け付けることができる。
【0028】
(6)の態様でも、車両情報VHには、車両位置情報や走行方向情報が含まれていることもあるし、含まれていないこともある。また、信号機システムにおける通信装置は、車両情報VHとしてIDのみが含まれる電波を受信し、信号強度や信号強度変化から車両の存在やその概略速度を認識することもできる。
【0029】
(5)の態様では、緊急自動車が通過した後に、タイムシーケンスに切り換えた場合には、黄信号を経ずに赤信号に移行し、あるいは極めて短い時間だけ赤信号が点灯した後に緑信号に切り変わるといった事態が生じる。
【0030】
これを防ぐために、(6)の態様では、緊急自動車が通過したときは、緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機の表示は、緑信号から黄信号を経て赤信号に移行させるので、交差点内での事故発生を少なくできる。また、(6)の態様の信号機システムでは、信号機の点灯を制御しても、他の信号機システムとの連携が崩されることがないので交通が混乱することはない。
【0031】
(7)
前記緊急自動車に搭載した無線機から発信される前記車両情報VHには、少なくとも車両識別情報ID、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする(4)から(6)の何れかに記載の信号機システム。
【0032】
車両情報VHには、IDおよび当該車両がGPS等から取得した位置情報等を含むことができる。この場合には、信号機システムにおける通信装置は、車両位置や速度を正確に認識することができる。
【0033】
(8)
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報VHを受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システムであって、
前記通信装置は、
アンテナにより受信した無線周波数帯信号を任意周波数に低下させて他の回路に出力する復調回路と、
前記他の回路から入力した任意周波数の信号を無線周波数に上昇させて前記アンテナに出力する変調回路と、
前記アンテナを、前記復調回路と前記変調回路の何れかに切り替えるスイッチ回路と、
を内蔵した開発用のRF集積回路を備え、
RF集積回路は、前記他の回路とは独立して集積化され、かつ、
前記復調回路は、受信した無線周波数信号を、低周波数の信号に変換するとともに、
前記変調回路は、低周波数の信号を、無線周波数信号に変換することを特徴とする交差点安全走行システム。
【発明の効果】
【0034】
車両が位置情報を信号機に渡すことで、信号機は自律して信号点灯状態を変更することができる。
信号の点灯サイクルが短くなることはないので、信号機の組が他の信号機の組とリンクしていても、本発明他の信号への影響を極力抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の信号機システムの構成を示す図であり、(A)は押しボタン式の信号機に適用した例を示す図、(B)は通過車両の交通量に応じて青信号と赤信号との点灯比を変更する例を示す図、(C)および(D)は緊急自動車を優先走行させる例を示す図である。
【図2】本発明の信号機システムが適用される第1実施形態を示す図である。
【図3】第1実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図4】第1実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図5】本発明の信号機システムが適用される第2実施形態を示す図である。
【図6】第2実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図7】第2実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図8】本発明の信号機システムが適用される第3実施形態を示す図である。
【図9】第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図10】第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図11】制御方法を改良した第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図12】制御方法を改良した第3実施形態の信号機システムにおける信号制御のタイムチャートである。
【図13】本発明の信号機システムが適用される第4実施形態を示す図である。
【図14】第4実施形態の信号機システムにおける信号制御のフローチャートである。
【図15】第4実施形態の信号機システムにおいて、緊急自動車から優先走行要求が、ある信号機の青信号点灯時にあったときの信号制御のタイムチャートである。
【図16】第4実施形態の信号機システムにおいて、緊急自動車から優先走行要求が、ある信号機の赤信号点灯時にあったときの信号制御のタイムチャートである。
【図17】本発明の信号機システムに使用される通信装置を示す図であり、RF集積回路が物理層回路とMAC回路と接続された様子を示すブロック図である。
【図18】図17のRF集積回路の復調回路および変調回路を細分して示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の信号機システムの実施形態を説明する。第1実施形態は、押しボタン式の信号機に本発明を応用したもので、図1(A)に示すように、信号機システム1は、信号機111A,111Bおよび112A,112Bと、通信装置12と、記憶装置13と、信号灯制御装置14とを備えている。
【0037】
信号機111A,111Bは、図2にも示すように、道路R0を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機112A,112Bは、横断歩道Zを渡る歩行者を規制する、押しボタンBにより動作する信号機(押しボタン式信号機)である。
図1(A)の信号機システム1において、通信装置12は、各車両Cから発信される車両情報VHを受信する。記憶装置13はこの車両情報VHを記憶する。記憶装置13には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL1が用意されており、信号灯制御装置14は、TBL1を参照して各信号機111A,111Bおよび112A,112Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0038】
図1(A)の信号機システム1の動作を、図3のフローチャートおよび図4のタイムチャートにより説明する。
信号機システム1では、通信装置12が周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置13に記憶している(S11)。ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報を含むことができる。
まず、信号機システム1は、車両通行モードで信号機を駆動しているものとする。車両通行モードでは、信号機111A,111Bが緑信号を表示しており、歩行者用の信号機112A,112Bは赤信号を表示している。
【0039】
信号機システム1では、信号灯制御装置14が押しボタンBが押されたか否かを監視している。信号灯制御装置14は、押しボタンBが押されると(S120)、押しボタン機能を停止し(S130)、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されたか否かを判断する(S140)。信号灯制御装置14は、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されていないとき(S140の「YES」)は、ただちに、制御モードを歩行者横断モードに移行させる(S150)。すなわち、信号灯制御装置14は、歩行者横断モードでは、車両情報VHを記憶装置13から呼び出し、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL1を参照して、信号切換え待ち時間Teを決定する。
【0040】
信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。そして、歩行者横断モードが終了した後に、制御モードを歩行者横断モードから車両通行モードに移行する。
【0041】
信号切換え待ち時間Teは、通行車両数が少ないときは短く、通行車両数が多いときは長く設定される。
たとえば、通過車両数がゼロのときは、図4(A)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teをゼロに設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、ただちに信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。これと同時に、
【0042】
また、通過車両数がゼロではないが少ないときは、図4(B)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teにやや小さめの値を設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、やや短い信号切換え待ち時間Teの後、信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。
【0043】
さらに、通過車両数が多いときは、図4(C)のタイムチャートに示すように、信号切換え待ち時間Teに大きい値を設定して信号機111A,111Bおよび112A,112Bを制御する。すなわち、押しボタンBが押されると、長い信号切換え待ち時間Teの後、信号機111A,111Bの表示が緑信号Gから黄信号Yを経て赤信号Rに変更される。
S140において、所定時間遡った期間内に押しボタンBが押されているときは(S140の「NO」)は、信号灯制御装置14は、所定時間経過後に歩行者横断モードに移行する。すなわち、遅れ時間Tdと信号切換え待ち時間Teとを加えて信号機を駆動する(S160)。そして、信号灯制御装置14は、歩行者横断モードが終了したときは、制御モードを、車両通行モードに移行させる(S170)。
【0044】
本発明の第2実施形態は、交差点の信号機に本発明を応用したもので、信号機システム2は、図1(B)に示すように、信号機211A,211Bおよび212A,212Bと、通信装置22と、記憶装置23と、信号灯制御装置24とを備えている。図5にも示すように、信号機211A,211Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機212A,212Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。
【0045】
図1(B)の信号機システム2において、通信装置22は、周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置23に記憶している(S21)。記憶装置23には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL2が用意されており、信号灯制御装置24は、TBL2を参照して各信号機211A,211Bおよび212A,212Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0046】
図1(B)の信号機システム2の動作を、図6のフローチャートおよび図7のタイムチャートにより説明する。
信号機システム2では、通信装置22が周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置23に記憶している(S21)。ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報を含むことができる。
【0047】
まず、図1(B)の信号機システム2では、信号機211A,211Bが緑信号を表示しており、歩行者用の信号機212A,212Bは赤信号を表示している。
信号灯制御装置24が車両情報VHを記憶装置23から呼び出し、次の信号点灯サイクルで交差点を通過する第1道路R1および第2道路R2の車両数を推定している(S210)。
そして、信号灯制御装置24は、通過車両数に応じて、時間設定テーブルTBL2を参照して第1道路R1と第2道路R2の緑信号点灯時間および赤信号点灯時間をそれぞれ設定する(S220)。
【0048】
たとえば、第1道路R1と第2道路R2の通過車両数がほぼ同じときは、本実施形態では、図7(A)のタイムチャートに示すように、各信号機211A,211B,212A,212Bの緑信号Gと赤信号Rとの時間割合がほぼ同じである。
これに対し、第2道路R2の通過車両数が第1道路R1の通過車両数よりも多いときは、図7(B)のタイムチャートに示すように、信号機211A,211Bの緑信号Gの時間が、信号機212A,212Bの緑信号Gの時間よりも長くなる。
【0049】
本発明の第3実施形態は、緊急自動車の優先走行を信号機により実現するもので、信号機システム3は、図1(C)に示すように、信号機311A,311Bおよび312A,312Bと、通信装置32と、記憶装置33と、信号灯制御装置34とを備えている。図8にも示すように、信号機311A,311Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機312A,312Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。
【0050】
図1(C)の信号機システム3において、通信装置32は、周囲の各車両Cから車両情報VHを受信し、これを記憶装置33に記憶している(S31)。記憶装置33には、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL3が用意されており、信号灯制御装置34は、TBL3を参照して各信号機311A,311Bおよび312A,312Bの点灯時間を決定しこれら信号を制御する。
【0051】
本実施形態の信号機システム3(図1(C)参照)の動作を、図9のフローチャートおよび図10のタイムチャートにより説明する。
信号機システム3では、通信装置32は、緊急自動車Pから車両情報VHを受信することができる。
ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報のほか、優先走行要求RQを含むことができる。
なお、本実施形態では、緊急自動車Pが第1道路R1を走行していても、第2道路R2を走行していても、信号機311A,311B,312A,312Bに対する制御に差異はない。
【0052】
まず、図1(C)の信号機システム3では、信号機311A,311B,312A,312Bが通常モードで信号を表示しているときに(S310)、通信装置32が緊急自動車Pから優先走行要求RQが受信したものとする(S320)。
【0053】
これにより、制御モードは緊急自動車優先モードに移行する。すなわち、優先走行要求時に緑信号であるときは黄信号を経た後赤信号に移行し、赤信号であるときは赤信号を維持する(S330)。この後、緊急自動車Pが交差点を通過すると(S340の「YES」)、全ての信号機は通常モードで制御される(S310)。
【0054】
図10(A)に、通常モードでの信号の移り変わりを示し、図10(B)に、緊急自動車優先モードでの典型的な信号の移り変わりを示している。
優先走行要求時に、たとえば信号機311A,311Bが黄信号である場合において、図10(C)に示すように、黄信号が短過ぎる事態が生じることがある。
そこで、本実施形態では、図11のフローチャートに示すように、図9のS330の処理を「優先走行要求時に緑信号であるときは黄信号を経て赤信号に移行し、赤信号であるときは赤信号を維持し、黄信号であるときは黄信号を通常時間点灯した後赤信号に移行する」処理に変更することができる。
【0055】
また、緊急自動車Pが交差点を通過するタイミングが、本来の信号切換えシーケンスにおける信号切り替わりタイミングの直前である場合には、図10(D)に示すように、たとえば信号機312A,312Bは赤信号から極めて短い時間で緑信号に変化し、この後黄信号に変化した後赤信号に変化することがあるし、図10(E)に示すように、赤信号から黄信号に変化するといった、通常モードではありえない信号の変化が生じることがある。
そこで、本実施形態では、図11のフローチャートに示すように、「信号機の何れかが、緊急自動車通過時に緑信号であり残り緑信号時間が短時間のときは、当該信号機の緑信号および続く黄信号を赤信号に変更する」処理および、「信号機の何れかが、緊急自動車通過時に黄信号であるときは黄信号を赤信号に変更する」処理を、図9に示した処理に追加することができる(S350)。
【0056】
このような緊急自動車優先モードでの処理を、図12(A)の通常モードでの処理に対比させて、図12(B),(C),(D)により説明する。
図12(B)では、図10(C)に示すような事態が生じないような制御を示しており、優先走行要求時に、信号機311A,311Bが黄信号であったために、当該黄信号Yを通常時間点灯した後、赤信号Rに移行させている。
図12(C)では、図10(D)に示すような事態が生じないような制御を示しており、緊急自動車通過時に信号機312A,312Bが緑信号であり残り緑信号時間が短時間であったため、信号機312A,312Bの緑信号Gおよび続く黄信号Yを赤信号Rに変更している。
図12(D)では、図10(E)に示すような事態が生じないような制御を示しており、緊急自動車通過時に信号機312A,312Bが黄信号Yであったため、信号機312A,312Bの黄信号Yを赤信号Rに変更している。
【0057】
本発明の第4実施形態は、第3実施形態と同様、緊急自動車Pの優先走行を信号機により実現するもので、信号機システム4は、図1(D)に示すように、信号機411A,411Bおよび412A,412Bと、通信装置42と、記憶装置43と、信号点灯制御装置44とを備えている。
第4実施形態は、図13に示すように、信号機411A,411Bは第1道路R1を通行する各車両Cを規制する信号機であり、信号機412A,412Bは第2道路R2を通行する各車両Cを規制する信号機である。本実施形態では、緊急自動車Pが第1道路R1を走行している場合と、第2道路R2を走行している場合とでは、信号機411A,411Bに対する制御、信号機412A,412Bに対する制御は異なる。
【0058】
本実施形態では、信号点灯制御装置44は、通信装置42が車両情報VHを受信したときは、当該車両情報VHを参照してつぎの処理を行う。
すなわち、信号点灯制御装置44は、緊急自動車Pが交差点を通過する前は、当該緊急自動車Pが通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続する。そして、緊急自動車Pが通過した後は、当該緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する。
【0059】
本実施形態における信号機システム4の動作を、図14のフローチャートおよび図15,図16のタイムチャートにより説明する。
信号機システム4では、通信装置32は、緊急自動車Pから車両情報VHを受信することができる。
ここで、車両情報VHは、車両位置や車両方向を表す可変情報や車両種などを表す固定情報のほか、優先走行要求RQを含むことができる。
【0060】
本実施形態では、信号点灯制御装置44は、通常モードで信号機を制御するとともに(S410)、優先走行要求RQがあったか否かを監視している(S420)。信号点灯制御装置44は、優先走行要求RQがあると、制御を緊急自動車優先モードに移行させる(S420)。
そして、信号点灯制御装置44は、信号機411A,411B、412A,412Bが設置された交差点を緊急自動車Pが通過したか否かを監視しており(S430)、通過したときは、信号切換え待ち時間設定テーブルTBL4を参照して、信号機と間での時間補償を行う(S440)。
【0061】
図15(A)は通常モードでの処理を示しており、図15(B),(C),(D)は、緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機411A,411Bが青信号のときに優先走行要求RQがあった場合を示している。
図15(B)では、信号機411A,411Bの青信号の時間が長くも短くもなっていないので、各信号機との間での時間補償は行わない。
図15(C)では、信号機411A,411Bの青信号の時間を長くしたので、信号機411A,411Bの赤信号の時間も長くする、すなわち信号機412A,412Bの青信号の時間を長くして、各信号機との間での時間補償を行っている。
図15(D)でも、信号機411A,411Bの青信号の時間を長くしたので、信号機411A,411Bの赤信号の時間も長くする、すなわち信号機412A,412Bの青信号の時間を長くして、各信号機との間での時間補償を行っている。
図15(C),(D)からもわかるように、上記の補償の後は、他の信号機の制御とリンクした通常のタイムシーケンスによる制御が行われる。
【0062】
図16(A)は通常モードでの処理を示しており、図16(B),(C),(D)は、緊急自動車Pの走行経路の交通を規制する信号機411A,411Bが赤信号のときに優先走行要求RQがあった場合を示している。
図16(B)では、信号機411A,411Bを本来よりも早く青信号にしたので(信号機412A,412Bを本来よりも早く赤信号にしたので)、信号機411A,411Bの青信号の時間を短くする(信号機412A,412Bの青信号の時間を長くする)ことで、各信号機との間での時間補償を行っている。
【0063】
図16(C),図16(D)も同様に、信号機411A,411Bを本来よりも長い時間青信号にしたので(信号機412A,412Bを本来よりも短い時間赤信号にしたので)、信号機411A,411Bの青信号の時間を短くする(信号機412A,412Bの青信号の時間を長くする)ことで、各信号機との間での時間補償を行っている。
図16(C),(D)からもわかるように、上記の補償の後は、他の信号機の制御とリンクした通常のタイムシーケンスによる制御が行われる。
【0064】
図17および図18は通信装置12に搭載されるRF集積回路を示す説明図である。図17において、RF集積回路RFICは、復調回路RCと、変調回路TRと、スイッチ回路SWとを備えている。RF集積回路RFICは、物理層回路PHYとメディアアクセス回路MACからなる回路に接続され、回路はコンピュータCPUに接続されている。
【0065】
復調回路RCは、アンテナにより受信した無線周波数帯信号(ここでは、715M〜725MHzの信号)を任意周波数(5MHzから20MHz)に低下させて物理層回路PHYに出力する。変調回路TRは、物理層回路PHYから入力した任意周波数(5MHzから20MHz)の信号を無線周波数(715M〜725MHzの信号)に上昇させてアンテナANTに出力する。
【0066】
物理層回路PHYは、典型的にはインタフェース回路である。本実施形態では、アナログ/ディジタルコンバータA/D,ディジタル/アナログコンバータD/Aが、物理層回路PHYとRF集積回路RFICとの間に設けられているが、物理層回路PHYに設けることができるし、RF集積回路RFICに設けることができる。物理層回路PHYは、メディアアクセス回路MACに接続されており、復調回路RCからの信号はメディアアクセス回路MACに渡され、メディアアクセス回路MACからの信号は変調回路TRに渡される。アンテナANDは、スイッチ回路SWを介して、復調回路RCと変調回路RCとに接続される。スイッチ回路SWは、外部からの切替え信号SCにより、アンテナANTを復調回路RCと変調回路RCの何れかに切り替えることができる。
【0067】
なお、復調回路RCは、図18に示すように、中間周波数変換回路RC1と、低周波数変換回路RC2とから構成できる。中間周波数変換回路RC1はスイッチ回路SWを介して入力した無線周波数信号を中間周波数に変換し、さらに低周波数変換回路RC2により5〜25MHz程度の周波数に変換する。そして、これらの周波数信号うちの特定の周波数信号を、図17の物理層回路PHYに出力する。また、図18に示すように、変調回路RCは、中間周波数変換回路TR1と、さらに高周波数変換回路TR2とから構成できる。物理層回路PHYからの周波数信号のうちの特定の周波数信号を中間周波数変換回路TR1により中間周波数に変換する。さらに、この中間周波数の信号を高周波数変換回路TR2により無線周波数(700MHz帯)の信号に変調し、スイッチ回路SWを介して、アンテナANTに出力している。
【符号の説明】
【0068】
1,2,3,4 信号機システム
12,22,32,42 通信装置
13,23,33,43 記憶装置
14,24,34,44 信号灯制御装置
111A,111B,112A,112B,211A,211B,212A,212B,311A,311B,312A,312B,411A,411B,412A,412B 信号機
B 押しボタン
C 車両
G 緑信号
P 緊急自動車
R 赤信号
R0 道路
R1 第1道路
R2 第2道路
TBL1,TBL2,TBL3,TBL4 時間設定テーブル
Td 遅れ時間
Te 信号切換え待ち時間
Y 黄信号
Z 横断歩道
【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報に基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システム。
【請求項2】
前記信号灯制御装置は、前記通信装置が受信した車両情報を参照して、一定時間内に通過する車両数を推定し、
通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、
通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号機システム。
【請求項3】
前記車両に搭載した無線機から発信される車両情報には、少なくとも車両識別情報、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の信号機システム。
【請求項4】
交差点に設けられた信号機の組と、
緊急自動車に搭載した無線機から発信される優先走行要求を含む車両情報を受信する通信装置と、
前記優先走行要求を含む車両情報を受信しないときは、前記各信号機の点灯をタイムシーケンスにより制御する信号灯制御装置と、
を備えたことを特徴とする信号機システム。
【請求項5】
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求を含む車両情報を受信したときは、当該車両情報を参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、前記信号機の組の全てについて赤信号を点灯し、
前記緊急自動車が通過した後は、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする請求項4に記載の信号機システム。
【請求項6】
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求を含む車両情報を受信したときは、当該車両情報を参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、当該緊急自動車が通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続し、
前記緊急自動車が通過した後は、当該緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする請求項4に記載の信号機システム。
【請求項7】
前記緊急自動車に搭載した無線機から発信される前記車両情報には、少なくとも車両識別情報、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載の信号機システム。
【請求項8】
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システムであって、
前記通信装置は、
アンテナにより受信した無線周波数帯信号を任意周波数に低下させて他の回路に出力する復調回路と、
前記他の回路から入力した任意周波数の信号を無線周波数に上昇させて前記アンテナに出力する変調回路と、
前記アンテナを、前記復調回路と前記変調回路の何れかに切り替えるスイッチ回路と、
を内蔵した開発用のRF集積回路を備え、
RF集積回路は、前記他の回路とは独立して集積化され、かつ、
前記復調回路は、受信した無線周波数信号を、低周波数の信号に変換するとともに、
前記変調回路は、低周波数の信号を、無線周波数信号に変換する、
ことを特徴とする交差点安全走行システム。
【請求項1】
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報に基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システム。
【請求項2】
前記信号灯制御装置は、前記通信装置が受信した車両情報を参照して、一定時間内に通過する車両数を推定し、
通過車両数が少ない経路の交通を規制する信号機については赤信号の点灯時間を長くし、
通過車両数が多い経路の交通を規制する信号機については緑信号の点灯時間を長くする、
ことを特徴とする請求項1に記載の信号機システム。
【請求項3】
前記車両に搭載した無線機から発信される車両情報には、少なくとも車両識別情報、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする請求項1または2に記載の信号機システム。
【請求項4】
交差点に設けられた信号機の組と、
緊急自動車に搭載した無線機から発信される優先走行要求を含む車両情報を受信する通信装置と、
前記優先走行要求を含む車両情報を受信しないときは、前記各信号機の点灯をタイムシーケンスにより制御する信号灯制御装置と、
を備えたことを特徴とする信号機システム。
【請求項5】
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求を含む車両情報を受信したときは、当該車両情報を参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、前記信号機の組の全てについて赤信号を点灯し、
前記緊急自動車が通過した後は、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする請求項4に記載の信号機システム。
【請求項6】
前記信号点灯制御装置は、前記通信装置が前記優先走行要求を含む車両情報を受信したときは、当該車両情報を参照して、
前記緊急自動車が前記交差点を通過する前は、当該緊急自動車が通過する信号機について緑信号を点灯し、タイムシーケンスによらずに当該緑信号の点灯を継続し、
前記緊急自動車が通過した後は、当該緊急自動車の走行経路の交通を規制する信号機について、緑信号点灯時間を短くする時間補償を行い、この後、前記タイムシーケンスに同期して各信号機を駆動する、
ことを特徴とする請求項4に記載の信号機システム。
【請求項7】
前記緊急自動車に搭載した無線機から発信される前記車両情報には、少なくとも車両識別情報、位置情報および方位情報が含まれていることを特徴とする請求項4から6の何れかに記載の信号機システム。
【請求項8】
信号機の組と、
車両に搭載した無線機から発信される車両情報を受信する通信装置と、
前記通信装置が受信した車両情報VHに基づき前記各信号機の点灯を制御する信号灯制御装置と、
を備えた信号機システムであって、
前記通信装置は、
アンテナにより受信した無線周波数帯信号を任意周波数に低下させて他の回路に出力する復調回路と、
前記他の回路から入力した任意周波数の信号を無線周波数に上昇させて前記アンテナに出力する変調回路と、
前記アンテナを、前記復調回路と前記変調回路の何れかに切り替えるスイッチ回路と、
を内蔵した開発用のRF集積回路を備え、
RF集積回路は、前記他の回路とは独立して集積化され、かつ、
前記復調回路は、受信した無線周波数信号を、低周波数の信号に変換するとともに、
前記変調回路は、低周波数の信号を、無線周波数信号に変換する、
ことを特徴とする交差点安全走行システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2012−8752(P2012−8752A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143345(P2010−143345)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(502119299)コスモリサーチ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(502119299)コスモリサーチ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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